説明

光学的情報処理装置、及び光学的情報処理装置のトラッキング制御方法

【課題】情報信号を記録再生するための多層の記録層と、トラッキング制御信号(TES)を検出するための専用のガイド層が互いに異なる層であるグルーブレス多層ディスクに対応した光学情報装置においては、対象となる記録層の違いにより記録層とガイド層間の層間隔が異なる場合においても、常に安定にTESを検出する必要がある。
【解決手段】ホログラフィック回折格子などを用いて前記ガイド層上に互いにデフォーカスした複数のTES検出用光スポットを照射させる。これら各光スポットから各々個別にTESを検出し、さらにこれらを加算処理した信号をトラッキング制御に用いることで、TES検出のデフォーカス・ダイナミックレンジを飛躍的に拡大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報記録媒体(以下、光ディスクと記す。)に光学的に情報信号を記録、あるいは該光ディスクに記録された情報信号を再生する光学情報装置に係り、特に複数の記録層が積層された多層光ディスクの記録または再生に適した光学的情報処理装置、及び光学的情報処理装置のトラッキング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている光ディスクには、片面1層に4.7GB(Giga Byte)もの記録容量を有するDVDディスクやさらに大容量のブルーレイ・ディスク Blu-ray Disc)等がある。
そして最近では、これまでの情報信号記録層(以下簡単のため、この情報信号記録層を単に記録層と記す。)が1層もしくは2層のタイプ以外にも、大容量化を目的として3層以上の記録層を積層した所謂多層光ディスクが提案され、その規格化および実用化が急速に進められている。
【0003】
この多層光ディスクにおいては、大容量化を実現する一つのディスク構成として、記録層に集光照射される記録/再生用の光スポットをトラッキング制御するために用いられるトラッキング制御信号検出するためのトラッキング制御専用ディスク層(以下簡単のため、このディスク層をガイド層と記す。)を前記記録層とは別に配置し、このガイド層にのみトラッキング制御信号を検出するための連続的な案内溝(グルーブ)等を設けた所謂『グルーブレス多層ディスク』が注目されている。
【0004】
ところで、上記のようなグルーブレス多層ディスクの記録、再生に対応した光ピックアップでは、例えば特許文献1に開示されているように、前記記録層と前記ガイド層の各々に独立した光スポットを集光させ、前記ガイド層上に集光させた光スポット(以下、この光スポットを簡単のため、集光スポットGと記す。)からトラッキング制御信号を検出し、このトラッキング制御信号により前記集光スポットGのトラッキング制御を行うと共に、それに追従させるようにして前記記録層上に集光された信号光スポット(以下、この光スポットを簡単のため、集光スポットRと記す。)をトラッキング制御する方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−67939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したグルーブレス多層ディスク対応の光ピックアップでは、当然のことながら、前記集光スポットGをガイド層上に、集光スポットRを所定の記録層上に共に回折限界まで集光させておく必要がある。
しかしながら、グルーブレス多層ディスクでは、1枚のディスク内に複数の記録層およびガイド層が所定厚さの層間隔を隔てて積層した構成になっているため、記録層とガイド層との層間隔は対象となる記録層ごとに異なった間隔になる。
【0007】
このため、例えば前記特許文献1に開示されている光ピックアップのように、同一の対物レンズによって前記集光スポットGと集光スポットRを共に集光させる構成で、かつ該集光スポットGと集光スポットRとの光軸方向に関する集光スポット間隔が固定されていると、対象となる記録層とガイド層間の層間隔が前記集光スポット間隔と一致しない場合、例えば集光スポットRが所定の記録層上に回折限界まで集光された状態で照射されている一方で、ガイド層上に照射される集光スポットGが回折限界まで集光されずデフォーカスしてしまい、結果的にトラッキング制御信号が正しく検出できないという不具合が生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点を鑑み、簡単な光学系構成で、記録層とガイド層の層間隔が対象となる記録層によって異なるグルーブレス多層光ディスクにおいても、常に安定的にトラッキング制御信号を検出する光学的情報処理装置、光学的情報処理装置のトラッキング制御方法、その検出方式を用いてグルーブレス多層対応光ディスクに対応した光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、特許請求の範囲に記載の発明によって達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録層とガイド層の層間隔が対象となる記録層によって異なるグルーブレス多層光ディスクにおいても、常に安定的にトラッキング制御信号を検出することができる光学的情報処理装置、光学的情報処理装置のトラッキング制御方法、グルーブレス多層光ディスク対応の光ピックアップを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光学情報装置の一例を示した概略構成図およびブロック図。
【図2】グルーブレス多層光ディスクの概略構成と本発明においてそこに照射される集光スポットの一例を示した概略斜視図。
【図3】グルーブレス多層光ディスクの各層に集光照射される光スポットの照射状態の一例を示すディスク主要部の概略断面図。
【図4】本発明による光検出器および各種制御信号検出回路の構成の一例とその検出面に照射される検出光スポットの状態および検出信号の状態の一例を示した概略平面図およびブロック図。
【図5】本発明による光検出器および各種制御信号検出回路の構成の一例とその検出面に照射される検出光スポットの状態および検出信号の状態の別な一例を示した概略平面図およびブロック図。
【図6】本発明による光検出器および各種制御信号検出回路の構成の一例とその検出面に照射される検出光スポットの状態および検出信号の状態のさらに別な一例を示した概略平面図およびブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明による光学情報装置の一実施例を示した概略構成図およびブロック図である。
光学情報装置の構成要素の一つである光ピックアップ装置30内には、情報信号を記録、あるいは記録された情報信号を再生するために、グルーブレス多層ディスク内の所定の記録層上に集光照射される第1の光ビームを発する第1の半導体レーザ光源1と、所定のトラッキング制御信号を検出するために前記ディスク内のガイド層上に集光照射される第2の光ビームを発する第2の半導体レーザ光源21が具備されている。前記第1の半導体レーザ光源1を発した第1の光ビーム100(図中に破線で示す)は波長選択性プリズム2、偏光ビームスプリッタ(PBS)3、カップリングレンズ4、立上げミラー(図示せず)、4分の1波長板5等を順次透過して対物レンズ6に至り、この対物レンズ6によってグルーブレス多層光ディスク300内に設けられた記録層群301内の所定の記録層上に集光照射される。
【0014】
このグルーブレス多層光ディスク300は、複数の記録層が所定の層間隔を隔てて積層された記録層群301と、その奥側(図の上側)に所定の案内溝を設けたガイド層302を配置した構成になっている。そして前記の光ビーム100は、前記対物レンズ6によって、この積層された複数の記録層群301中の所定の記録層上に集光照射され集光スポットRを形成する。
一方、第2の半導体レーザ光源21を出射した第2の光ビーム200(図中に実線で示す)は、補助レンズ22によって所定の発散状態に変換された後、ホログラフィック回折格子23に入射し、該回折格子23をそのまま透過する0次光ビームと+1次および−1次回折光ビームの合計3本の光ビームに回折分離され、それぞれ所定の方向に進行していく。
【0015】
この時、回折格子23は所定の不等間隔曲線状の格子溝パターンを備えたホログラフィック格子になっている。このため、この格子で回折分離された±1次回折光ビームは0次光ビームに対して互いに共役な正または負のレンズパワーが付加され、その発散状態が0次光ビームに対して、一方は緩和、他方は強調されて出射される。
そしてこのホログラフィック回折格子23により3本の光ビームに回折分離した光ビーム200は、波長選択性プリズム2で反射された後、前記光ビーム100とほぼ同様の光路を辿りPBS3、カップリングレンズ4、立上げミラー(図示せず)、4分の1波長板5を順次透過して対物レンズ6に至り、この対物レンズ6によって光ビーム100と同様グルーブレス多層光ディスク300内に集光照射されて、このディスク300内に配置された前記ガイド層302上に各々独立した3個の集光スポットGを形成する。
なおこの集光スポットRおよびGの詳細については、後ほど改めて説明する。
【0016】
次に、前記光ディスク300の記録層群301内の所定の記録層上あるいはガイド層上に形成された集光スポットRおよびGは、それぞれのディスク層で反射されて復路光ビームとなり再び対物レンズ6に到る。そしてさらに往路光ビームと同様の光路を逆に辿りPBS3に達した後、このPBSで反射されて複合プリズム7に入射し、この複合プリズム7内に設けられた波長選択性ミラー面によって集光スポットRの復路光ビームと集光スポットGの復路光ビームとで別々の光路に分離される。
このうち集光スポットRの復路光ビームは、前記波長選択性ミラー面を透過した後、所定の非点収差を付加するために配置された円筒レンズ8を経て光検出器9内に配置された検出面91に入射する。
【0017】
なおこの円筒レンズ8によって付加される非点収差は、後述するように検出面91から得られる検出信号から非点収差方式によってフォーカス制御信号を生成するために用いられる。
一方、集光スポットGの復路光ビームは、前記波長選択性ミラー面で反射された後、さらに光路変更用反射面で反射されて、前記光検出器9内に前記検出面91とは別に配置された検出面92に入射する。
なお、この光検出器9内の光検出面91および92の構成や信号検出方式に関する具体的な内容については、後ほど改めて説明する。
【0018】
検出面91で検出された信号は、フォーカス制御信号生成回路501、記録層用トラッキング制御信号生成回路502および信号再生回路504に送られる。
一方、検出面92で検出された信号は、ガイド層用トラッキング制御信号生成回路503に送られる。
フォーカス制御信号生成回路501で生成されたフォーカス制御信号は、アクチュエータ駆動回路506でフォーカスアクチュエータ駆動信号に変換されたのち対物レンズ6を2次元駆動するために設けたレンズアクチュエータ10に供給され、これによって対物レンズ6のフォーカス制御が実施される。
【0019】
なお記録層用トラッキング制御信号生成回路502で生成された第1のトラッキング制御信号は、既に情報信号が記録された記録層からその情報信号を再生する場合に用いられ、前記フォーカス制御信号同様アクチュエータ駆動回路506でトラッキングアクチュエータ駆動信号に変換されたのちレンズアクチュエータ10に供給され、対物レンズ6のトラッキング駆動制御が実施される。そしてこのトラッキング制御により、記録層上に情報信号列によって形成された記録トラック上に前記集光スポットRを正しくトレースさせる。その結果、記録された情報信号が正しく検出されて前記信号再生回路504を経て再生信号として出力される。
【0020】
これに対して、ガイド層用トラッキング制御信号生成回路503で生成された第2のトラッキング制御信号は、未記録状態の記録層に新たに情報信号を記録する際に用いられる。
すなわち、集光スポットGと集光スポットRは、前記したように同一の対物レンズ6によってそれぞれ光ディスク300内のガイド層302上および記録層群301内の所定の記録層上に集光照射されている。
【0021】
したがって、ガイド層用トラッキング制御信号生成回路503で生成された第2のトラッキング制御信号を前記のアクチュエータ駆動回路506に供給してトラッキングアクチュエータ駆動信号に変換したのち、レンズアクチュエータ10に供給して対物レンズ6のトラッキング駆動制御を行うことで、光ディスク内のガイド層上の照射された前記集光スポットGをトラッキング制御し、それに追従させることで記録層上に集光照射された前記集光スポットRを同時にトラッキング制御することができる。
なお、前記第1あるいは第2のトラッキング制御うちどちらの制御信号をアクチュエータ駆動回路506に供給するかは、切り替えスイッチ回路505によって選択的に切り替える構成になっている。
【0022】
また記録層用レーザ光源1とガイド層用レーザ光源21のレーザ発光出力はレーザ発光出力モニタ(図示せず)から得られたレーザ出力モニタ信号に基づいてレーザ駆動回路507によりコントロールされる。
そして前記フォーカス制御信号生成回路501、記録層用トラッキング制御信号生成回路502、ガイド層用トラッキング制御信号生成回路503、信号再生回路504、切り替えスイッチ回路505、レーザ駆動回路507などは所定のコントロール回路500により常にその動作状態がコントロールされる。
【0023】
次に図2を用いて、多層光ディスク300内の各層に集光照射される集光スポットRおよびGの照射状態について説明する。
図2は、グルーブレス多層ディスクの具体的構造の一例およびそれに集光照射される集光スポットRおよびGの照射状態の一例を示した概略斜視図である。
本図において、図1に記載の構成要素と同じ構成要素には同じ番号を付している。ただし本図は、図を見やすくする目的から図1に対して上下を反転させて描いた図になっている。
【0024】
また本来、グルーブレス多層ディスク300は、複数の記録層が所定の層間隔を隔てて積層された記録層群301とディスクの半径方向(X軸方向)に関して所定の周期で、かつ接線方向(Y軸方向)に沿って所定の案内溝もしくはピット列が配置されたガイド層302を具備しているが、図2では簡単のため、記録層群301を構成する複数の記録層のうちほぼ中間の位置に配置された記録層1層だけを抽出し記録層301として描いている。
今、半導体レーザ光源1を発した第1のレーザ光ビーム100は、所定の往路光路を経たのち対物レンズ6により多層光ディスク300内の記録層301上に集光照射され、集光スポット101を形成する。この集光スポット101が前記した集光スポットRに相当する。
【0025】
一方、半導体レーザ光源21を発した第2のレーザ光ビーム200は、前記のようにホログラフィック回折格子23によって0次光ビームおよび±1次回折光ビームの計3本の光ビームに回折分離されたのち所定の往路光路を経て対物レンズ6に到り、この対物レンズ6により多層光ディスク300内のガイド層302上に集光照射され、3個の集光スポット201a、201b、201cを形成する。この3個の集光スポット201a、201b、201cが前記の集光スポットGに相当する。
【0026】
なお、この3個の集光スポット201a、201b、201cは、前記のようにホログラフィック回折格子23によって回折分離させた光ビームによって形成された集光スポットである。このうち中央部の集光スポット201aは、前記ホログラフィック回折格子23をそのまま透過した0次光ビームから形成された集光スポットである。一方、ガイド層に形成された案内溝に沿って集光スポット201aを前後から挟むように配置された集光スポット201b,201cは、前記ホログラフィック回折格子23によって回折分離した±1次回折光から各々形成された集光スポットであり、中央部の集光スポット201aに対して光軸方向(図のZ軸方向)についても互いに逆向きに所定量だけにデフォーカスしている。
【0027】
すなわち集光スポット201b,201cは、集光スポット201aの回折限界位置(集光スポットが最も小さく集光される位置)を中心として、光軸方向(図のZ軸方向)とディスク接線方向(図のY軸方向)で形成されるの面(Y−Z面)内でかつ互いに逆向きの方向にほぼ同じ距離だけ乖離した位置に回折限界が形成されている。
今、図2に示すように、集光スポット101の回折限界位置がちょうど記録層301上に一致する状態(以下、この状態をジャストフォーカスと記す。)の時に、同時に集光スポット201aの回折限界位置もガイド層302上に略一致するよう両集光スポットの相対間隔を調整しておくと、自動的に集光スポット201bおよび201cは図2内に示すように、互いに反対向きに所定量だけでデフォーカスした集光スポットとなってガイド層302上を照射することになる。
【0028】
なお、図2に示した例では、一例として集光スポット201aおよび201b、201cがガイド層302の案内溝方向すなわちディスク接線方向(図のY軸方向)に沿って等間隔に隔てられた位置に照射されている例を示しているが、本発明はそれに限定されるものではない。
集光スポット201a、201b、201cの配置は、互いに同じ位置に重なることを除けば、ガイド層302上のどのような位置に照射しても構わない。
【0029】
またガイド層上に照射される集光スポットGの個数についても、本発明は図1、図2に示す実施例のように3個に限定されるものではない。例えば第2の光ビーム200を回折分離するホログラフィック回折格子23の格子溝断面形状などを工夫し、±1次回折光だけではなく、さらに高次の回折光まで所定の回折効率で回折分離するようにして、5個、7個、9個…のようにガイド層302上に照射される集光スポットGの個数を増やしても一向に構わない。
【0030】
さらに、複数の集光スポットGを形成させるための光学素子は、図1の例に示したホログラフィック回折格子に限定されるものではない。少なくとも互いに所定量だけ光軸方向にデフォーカスした複数の集光スポットを前記ガイド層上に照射できる機能を備えた光学素子であれば一向に構わない。
更に云うならば、図2では一例として、ガイド層302はディスク半径方向(X軸方向)について一定の周期で連続的な案内溝を配置した構造を示したが、これに限定されるものでない。たとえば、ガイド層302上に前記のような連続的な案内溝ではなく、所定のピット列を配置させた構造であっても一向に構わない。
【0031】
図3は、図2で示した例のように多層光ディスクの記録層群301内の所定の記記録層上に記録層用集光スポット101を、ガイド層上302に3個のガイド層用集光スポットすなわち201a、201b、201cを照射する場合に、各層に集光照射される光スポットの照射状態を示したディスク主要部の概略断面である。
なお本図においては簡単のため、記録層群301は対物レンズ6から遠い側よりL0,L1,L2の3層の記録層が積層されている例を示しているが、当然のことながら本発明では積層される記録層数に制限はなく、4層以上の記録層が積層されていても一向に構わない。
【0032】
また本図も図2と同じく、図1に対して上下を反転させて描いている。
図3において、(a)が図2で説明した集光スポット照射状態を再現している。すなわち、記録層用の集光スポット101が記録層群301のうち真中の記録層L1にジャストフォーカスした場合を示しており、この場合は3個のガイド層用集光スポット201a、201b、201cのうち真中にある201aがガイド層302上に略ジャストフォーカスしている。一方、他のガイド層用集光スポット201bおよび201cは、それぞれ所定量だけデフォーカスした状態でガイド層302上に照射されている。ただし、集光201bは、その回折限界位置がガイド層302より更に奥側(図の下側)にあり、集光201cは、逆にその回折限界位置がガイド層302より手前側(図の上側)にある。
【0033】
これに対して図3(b)は、記録層用の集光スポット101が記録層群301のうち最も手前側(図の上側)の記録層L2にジャストフォーカスした場合を示しており、この場合は3個のガイド層用集光スポット201a、201b、201cのうち図の向かって右端にある201bがガイド層302上に略ジャストフォーカスしている。一方、他のガイド層用集光スポット201aおよび201cは、各々の回折限界位置がいずれもガイド層302より手前側(図の上側)に来るように所定量だけデフォーカスした状態でガイド層302上に照射されている。
【0034】
また図3(c)は、記録層用の集光スポット101が記録層群301のうち最も奥側(図の下側)の記録層L0にジャストフォーカスした場合を示しており、この場合は3個のガイド層用集光スポット201a、201b、201cのうち図の向かって左端にある201cがガイド層302上にほぼジャストフォーカスしている。一方、他のガイド層用集光スポット201aおよび201bは、各々の回折限界位置がガイド層302より奥側(図の下側)に来るようにそれぞれ所定量だけデフォーカスした状態でガイド層302上に照射されている。
【0035】
次に図4、図5および図6は、光ピックアップ30内に配置された光検出器9の構造と、多層光ディスク300内に集光照射される各光スポットの照射状態がそれぞれ前記図3の(a)、(b)、(c)で示される状態の時に、この光検出器9内の各検出面にどのような光ビームが照射され、そこからどのような信号が検出されるかを説明するために描かれた光ピックアップ主要部の概略平面図である。
本図において、図1の実施例と同じ構成要素には同じ番号を付している。
光検出器9内には、前記記録層用集光スポット101のディスク反射光ビームが復路光ビーム102となって集光照射する光検出面91と、前記ガイド層用集光スポット201a、201b、201cのディスク反射光ビームがそれぞれ復路光ビーム202a、202b、202cとなって集光照射する3つの独立した光検出面92a、92b、92cからなる光検出面92が具備されている。
【0036】
このうち光検出面91は、例えば図に示すように十字型の分割線で4分割されており、各分割検出面から得られた検出信号は、フォーカス制御信号生成回路501と記録層用トラッキング制御信号生成回路502と信号再生回路504に供給される。
このうち、フォーカス制御信号生成回路501からは非点収差方式によるフォーカス制御信号が出力され、この制御信号を用いて対物レンズ6のフォーカス制御を実行する。
またトラッキング制御信号生成回路502からは、ディファレンシャル・フェイズ・ディテクション(DPD)方式によるトラッキング制御信号(DPD信号)が出力され、記録済みの記録層を再生する際にはこのDPD信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御を実行する。
さらに信号再生回路504からは、記録済みの記録層からの再生信号が出力される。
【0037】
なお、これらのフォーカスおよびトラッキング制御信号検出方式や記録済み情報信号の再生方式およびその検出原理などについては、いずれも既に公知の事項であるため詳しい説明は省略する。
また本発明においてフォーカス制御信号やトラッキング制御信号の検出方式は、当然のことながら前述の非点収差方式やDPD方式に限定されるものではない。
一方、未記録の記録層に新たに情報信号を記録する際は、光検出面92から検出される信号からガイド層用トラッキング制御信号生成回路503を経て生成されたガイド層用集光スポットのトラッキング信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御が実施される。
【0038】
すなわち、光検出面92を構成する3つの独立した光検出面92a、92b、92cは、それぞれ光ディスク上でディスクの接線方向に対応した方向(図中のY軸方向)にほぼ沿った方向に延びる直線状の分割線によって、図の上下方向に2分割されている。そして各2分割領域のからの信号を、それぞれガイド層用トラッキング制御信号生成回路503内の減算器503a、503b、503cで減算処理することで、ガイド層用集光スポット201a、201b、201c各々に対応する復路光ビーム202a、202b、202cからプッシュプル方式によるトラッキング制御信号(プッシュプル信号)が独立に得られる。なお、プッシュプル方式によるトラッキング制御信号の検出方式やその原理については、既に公知の事項であるため詳しい説明は省略する。
【0039】
ところで前述したように、図3の(a)では中央の集光スポット201aのみがガイド層302上にほぼジャストフォーカスしており、他の集光スポットは所定量だけデフォーカスしているため、図4においては、この集光スポット201aに対応する復路光ビーム202aが入射する光検出面92aから得られるプッシュプル信号が最も信号振幅が大きくかつ信号品質も良好である。
一方、他の光検出面92bおよび92cから得られるプッシュプル信号は、光検出面92aから得られるプッシュプル信号に比べ極端に信号振幅が小さくなっている。
【0040】
したがって、これらの各プッシュプル信号を加算器503dで加算処理してもその加算処理後の信号は、光検出面92aから得られるプッシュプル信号とほぼ同等の良質なトラッキング制御信号になっている。そこで、この加算処理後の信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御を行うことにより、正しいトラッキング制御が実行できる。
次に図5は、図3の(b)に示すように向かって右端の集光スポット201bのみがガイド層302上にほぼジャストフォーカスしている際の光検出器9の状態を示している。この場合は、集光スポット201bに対応する復路光ビーム202bが入射する光検出面92cから得られるプッシュプル信号が最も信号振幅が大きくかつ信号品質も良好である。そして先程の図4の場合と同様、他の光検出面92aおよび92bから得られるプッシュプル信号は、光検出面92cから得られるプッシュプル信号に比べ極端に信号振幅が小さくなっている。
【0041】
このため、これらの各プッシュプル信号を加算器503dで加算処理してもその加算処理後の信号は、光検出面92bから得られるプッシュプル信号とほぼ同等の良質なトラッキング制御信号になっている。そこで図4と同じくこの加算処理後の信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御を行うことにより、正しいトラッキング制御が実行できる。
さらに図6においても図4、図5と同様である。すなわち、図6は、図3の(c)に示すように向かって左端の集光スポット201cのみがガイド層302上にほぼジャストフォーカスしている際の光検出器9の状態を示している。この場合は、集光スポット201c対応する復路光ビーム202cが入射する光検出面92cから得られるプッシュプル信号が最も信号振幅が大きくかつ信号品質も良好である。そして先程の図4の場合と同様、他の光検出面92aおよび92bから得られるプッシュプル信号は、光検出面92cから得られるプッシュプル信号に比べ極端に信号振幅が小さくなっている。
【0042】
このため、これらの各プッシュプル信号を加算器503dで加算処理してもその加算処理後の信号は、光検出面92cから得られるプッシュプル信号とほぼ同等の良質なトラッキング制御信号になっている。そこで図4と同じくこの加算処理後の信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御を行うことにより、正しいトラッキング制御が実行できる。
このように、記録層用集光スポット101がどの記録層群301内のどの記録層上にジャストフォーカスした状態であっても、常にガイド層302に照射されたガイド層用集光スポットから良好なトラッキング制御信号を検出することができ、このトラッキング制御信号を用いて対物レンズ6のトラッキング制御を実施することで、記録層用集光スポット101とガイド層用集光スポットの両方を正しくトラッキング制御することができる。
【0043】
なお、図3および図4乃至図6で説明した実施例では、記録層用集光スポット101が記録層群301内のどの記録層上にジャストフォーカスした状態であっても、ガイド層302上に照射される複数の集光スポットのうち少なくともどれか一つの集光スポットがガイド層上にジャストフォーカスする例を示したが、本発明はそれに限定されるものではない。
例えば記録層数がガイド層に集光照射される光スポットの数よりも多くなると、記録層用集光スポット101がある所定の記録層にジャストフォーカスした際に、ガイド層に集光照射されるガイド層用の集光スポットのいずれもがガイド層上にジャストフォーカスしないようなケースも考えられる。しかしながらこのような場合であっても、図4乃至図6に示すように、各ガイド層用集光スポットから得られるプッシュプル信号を加算処理すると、加算後の信号は複数の信号のうちで最も信号振幅が大きくかつ信号品質も良好なプッシュプル信号とほぼ同等な品質となるため、常に良好なトラッキング制御信号を得ることができる。
【0044】
また逆に、本発明は各ガイド層用集光スポットから得られるプッシュプル信号を加算処理する方式に限定されるものではない。
例えば、あえて加算処理せずに各ガイド層用集光スポットから得られるプッシュプル信号をそれぞれ独立にモニタしておき、その時々で最も信号振幅が大きく信号品質が良好なプッシュプル信号を選択してこれをトラッキング制御信号として用いるような方式でも一向に構わない。
また図1および図4乃至図6の実施例では、ガイド層用集光スポットからプッシュプル方式でトラッキング制御信号を検出した例をしめしたが、当然のことながら本発明はそれに限定されるものではない。他の既に公知のフォーカスおよびトラッキング制御信号検出方式を採用しても一向に構わない。
【0045】
例えば、ガイド層302に連続した案内溝ではなく所定のピット列を設けることにより、ガイド層用集光スポット201a、201b、201cから得られる各トラッキング制御信号も、前記した記録層用集光スポット101と同じくDPD方式で検出することができる。このようなDPD方式を用いると、プッシュプル方式を用いた場合のような対物レンズの変位に起因するトラッキング制御信号のオフセットの問題を回避できるという利点がある。
なおこのようにDPD方式を用いた場合でも、前記したように各ガイド層用集光スポットから得られたDPD信号を加算処理するか、または選択処理することにより、記録層用集光スポットが複数ある記録層のうちのどの記録層にジャストフォーカスしても常に良好なトラッキング制御を行うことができる。
【0046】
更に云うならば、本発明は図1の実施例で示した光学情報装置の構成に限定されるものではない。少なくとも、グルーブレス多層光ディスクのガイド層に互いに光軸方向にデフォーカスした光スポットを集光照射し、この各ガイド層用集光スポットからそれぞれ独立にトラッキング制御信号を検出する構成であればどのような構成の光学情報装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1,21…半導体レーザ光源、6…対物レンズ、9…光検出器、23…ホログラフィック回折格子、300…グルーブレス多層光ディスク、301…記録層、302…ガイド層、101…記録層用集光スポット、201a,201b,201c…ガイド層用集光スポット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層以上の記録層と所定の案内溝またはピット列を設けたガイド層とを備えた光ディスクを記録媒体とする光学的情報処理装置であって、
前記記録層に記録された情報信号を再生し、或いは前記記録層に情報信号を記録するための第1の光ビームを発生する第1の光源と、
前記ガイド層が備える案内溝またはピット列を検出するための第2の光ビームを発生する第2の光源と、
該第2の光ビームが照射され該第2の光ビームを互いに光軸方向に所定間隔だけ離れた位置に集光スポットを形成する少なくとも2本以上の光ビームに分割する光学素子と、
前記第1の光ビームと第2の光ビームの前記光学素子で分割された光ビームが照射され、前記第1の光ビームを前記複数の記録層のいずれか1層に集光照射し、前記第2の光ビームの前記光学素子で分割された光ビームを前記ガイド層に照射する対物レンズと、
前記第1の光ビームの前記記録層からの反射光ビームと、前記第2の光ビームの前記光学素子で分割された光ビームの前記ガイド層からの少なくとも2本以上の反射光ビームを個別に検出する光検出器と、
該光検出器が検出した前記第1の光ビームの前記記録層からの反射光ビームの検出信号に基づき前記記録層に記録された情報信号を再生処理する信号再生回路と、
前記光検出器が検出した前記第2の光ビームの前記ガイド層からの少なくとも2本以上の反射光ビームの検出信号に基づき前記対物レンズの前記記録層に対するトラッキング位置を制御するためのトラッキング制御信号生成回路
を有することを特徴とする光学的情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的情報処理装置において、
前記トラッキング制御信号生成回路は、
前記第2の光ビームを前記光学素子で分割した光ビームを前記光検出器で個別に検出した検出信号のうちの複数を加算して前記対物レンズの前記記録層に対するトラッキング位置を制御する
ことを特徴とする光学的情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学的情報処理装置において、
前記光学素子は、不等間隔曲線状の格子溝パターンを備えたホログラフィック回折格子であることを特徴とする光学的情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学的情報処理装置において、
前記光学素子で分割された光ビームは、前記第2の光ビームの0次光(透過光)と+1次回折光と−1次回折光であることを特徴とする光学的情報処理装置。
【請求項5】
少なくとも3層以上の記録層と所定の案内溝またはピット列を設けたガイド層とを備えた光ディスクを記録媒体とし、該光ディスクに照射した光の反射光に基づき前記記録層に対するトラッキング制御をする光学的情報処理装置のトラッキング制御方法であって、
一つの光源が発生した光ビームを少なくとも2本以上に分割した光ビームを前記ガイド層に照射して得た反射光に基づき、前記記録層に対するトラッキング位置を制御する
ことを特徴とする光学的情報処理装置のトラッキング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−248243(P2012−248243A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117765(P2011−117765)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】