説明

光学的情報検証装置

【課題】相対的に移動する二次元コードを撮像して当該二次元コードの品質を検証し得る光学的情報検証装置において、検出精度の低下を抑えることができ、より適切に検証を行い得る構成を提供することを目的とする。
【解決手段】光学的情報検証装置1では、基準コードCが付された基準媒体Sが移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で、基準コードCを受光センサ23により撮像する。そして、検出手段によって検出された位置検出パターンFPの移動方向の長さ及び移動方向と直交する横方向の長さと、メモリ35に記憶される基準情報とに基づき、受光センサ23で撮像された撮像画像の移動方向における単位画素当たりの長さ及び横方向における単位画素当たりの長さを特定可能な補正情報を、補正情報生成手段(制御回路40)により生成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
QRコード(登録商標)などの二次元コードは、従来より工業製品等に貼付される製品のラベルやフィルムといった表示媒体に印刷され、その多くは当該製品の流通管理等に用いられている。このような二次元コードは、主に、紙やポリエチレンフィルム等の表示媒体に印刷されるが、その印刷寸法や反射率を仕様通りに正しく設定して印刷したつもりでも、印刷条件の違いによっては異なった印刷品質になる場合がある。また、市場に出回ってからは、環境の変化などにより、印刷品質が劣化するのが一般的である。そして、光学情報の印刷品質の劣化は、当該二次元コードを付された製品管理に影響を与えることが懸念される。このようなことから、二次元コードの印刷品質を検証する装置が開発されている。
【0003】
この種の検証装置では、二次元コードの印刷品質をより精度良く検証するために、当該装置の補正(校正)が行われることがある。例えば、このような技術として、下記特許文献1、2のようなものが知られている。
【0004】
特許文献1には、バーコードが正しく記載されているか否かを検証するためのバーコード検証機(1)の出力補正方法に関する技術が開示されている。そして、特許文献1では、反射率が既知の白色基準板(5)と黒色基準板(6)とからの反射光を予めにスキャナで読込み、更にバーコード(10)からの反射光の読込みを行い、白色基準板(5)の白色反射出力(Rw)及び黒色基準板(6)の黒色反射出力(Rb)と、バーコードの標本反射出力(Rx)とを画素毎に対比し演算することで、光源の配光ムラの補正を行うようにしている。
【0005】
特許文献2には、テストチャートを使用したデジタル複合機(1)の補正方法に関する技術が開示されている。そして、特許文献2では、階調が段階的に変化する複数のパッチ(321)を配列したテストチャート原稿のテストチャート記録面を読み取って目標データを取得するとともに、テストチャート原稿の複写物のテストチャート複写面を読み取ってサンプリングデータを取得し、サンプリングデータを目標データに近づける、望ましくは一致させる補正特性を生成し、当該補正特性により画像データを補正することにより、通常原稿を複写する際に複写物において原稿の色を再現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−96060号公報
【特許文献2】特開2008−271344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記検証装置では、検証対象物(表示媒体)を搬送させながら(相対的に移動させながら)、同時に、この検証対象物に付された二次元コードを検証すべき場合がありうる。しかしながら、特許文献1、2に代表される従来の検証装置では、検証対象物を移動させながら検証することは想定しておらず、移動した二次元コードを適切に検証し得るものではなかった。
【0008】
例えば、検証対象物を搬送させながら二次元コードの品質(二次元コードを構成する各セルの太さ等)を検証しようとした場合、二次元コードが動的に変化している状態で撮像しなければならないため、二次元コードのコード画像に歪みが生じやすく、二次元コードの形状を正確に反映した画像が得られにくいという問題が生じる。従って、何ら措置を講じない場合には、静止した状態の検証対象物を検証する場合と比較して検証精度の低下が避けられない。また、移動する二次元コードを撮像して検証を行う場合、二次元コードの各位置に均一に照明光を照射して撮像することが難しいため、撮像された二次元コードのコード画像において画素値のバラツキが生じやすく、このバラツキが検証精度に影響を及ぼすことが懸念される。従って、このような問題を効果的に解消し得る構成が望まれる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、相対的に移動する二次元コードを撮像して当該二次元コードの品質を検証し得る光学的情報検証装置において、検出精度の低下を抑えることができ、より適切に検証を行い得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、第1の発明は、所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードの品質を検証する装置として構成され、予め定められた形状の基準コードが付された基準媒体を用いて校正を行うことが可能とされた光学的情報検証装置であって、前記基準媒体が前記移動方向に前記所定速度で相対的に移動した状態で前記基準コードを撮像する撮像手段と、前記基準コードの所定の基準部分における前記移動方向の大きさ及び前記移動方向と直交する横方向の大きさを特定可能な基準情報として記憶する記憶手段と、前記撮像手段により撮像された前記基準コードのコード画像における前記基準部分の前記移動方向の長さと、前記基準部分の横方向の長さを検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記基準部分の前記移動方向の長さ及び前記横方向の長さと、前記記憶手段に記憶される前記基準情報とに基づき、前記撮像手段で撮像された撮像画像の前記移動方向における単位画素当たりの長さ及び前記横方向における単位画素当たりの長さを特定可能な補正情報を生成する補正情報生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードの品質を検証する装置として構成され、複数の基準パターンが前記移動方向に並ぶように配されてなる基準媒体を用いて校正を行うことが可能とされた光学的情報検証装置であって、前記基準媒体が前記移動方向に前記所定速度で相対的に移動した状態で前記複数の基準パターンを撮像する撮像手段と前記複数の基準パターンのいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する画素値検出手段と、前記画素値検出手段によって検出された前記選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を生成する補正情報生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、予め定められた形状の基準コードが付された基準媒体を用いて校正を行うことが可能なように構成されており、基準媒体が移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で基準コードを撮像手段により撮像すると共に、基準コードの所定の基準部分における移動方向の大きさ及び移動方向と直交する横方向の大きさを特定可能な基準情報として記憶手段により記憶するようにしている。また、撮像手段により撮像された基準コードのコード画像における基準部分の移動方向の長さと、基準部分の横方向の長さを検出手段により検出するようにしている。そして、検出手段によって検出された基準部分の移動方向の長さ及び横方向の長さと、記憶手段に記憶される基準情報とに基づき、撮像手段で撮像された撮像画像の移動方向における単位画素当たりの長さ及び横方向における単位画素当たりの長さを特定可能な補正情報を、補正情報生成手段により生成するようにしている。
【0013】
この構成によれば、移動する物体に付された二次元コードの品質を検証し得る高精度な検証装置を実現できる。移動する二次元コードを撮像して品質を検証する場合、静止した二次元コードを撮像して検証を行う場合と比較して移動方向の長さや横方向の長さが変化してしまい、正確な検証が行い難いという懸念があるが、上記構成によれば、記憶手段に予め記憶される基準情報(基準コードの所定の基準部分における移動方向の大きさ及び横方向の大きさを特定可能な情報)と、実際に撮像されたコード画像における基準部分の移動方向の長さ及び横方向の長さとに基づいて、撮像画像の移動方向における単位画素当たりの長さ及び横方向における単位画素当たりの長さがどの程度に変化しているかを特定しうる補正情報を生成できるようになる。従って、所定方向に移動する二次元コードを実際に撮像して検証する際には、得られたコード画像に対し上記補正情報に基づく補正(即ち、移動方向及び横方向の変化を反映させた補正)を行い、各位置の実際の大きさを正確に把握した上で検証を行うことができるため、より高精度な検証が可能となる。また、検証に際し、複雑な移動制御や管理等を行わずとも容易に且つ正確に検証を行うことができるため、コスト面でも有利になる。
【0014】
請求項2の発明では、複数の基準パターンが移動方向に並ぶように配されてなる基準媒体を用いて校正を行うことが可能なように構成されており、基準媒体が移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で複数の基準パターンを撮像手段により撮像するようにしている。また、複数の基準パターンのいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を画素値検出手段により検出するようにしている。更に、画素値検出手段によって検出された選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を、補正情報生成手段により生成するようにしている。
【0015】
この構成によれば、移動する物体に付された二次元コードの品質を検証し得る高精度な検証装置を実現できる。特にこの構成では、基準媒体の移動方向に複数の基準パターンが並べられているため、1回の移動動作でこれら基準パターンを撮像することができ、その中の少なくともいずれかの基準パターンを画素値補正用のパターンとして利用できるため、単一の基準パターンのみで補正を行う場合と比較して補正の自由度が高まり、複数の補正パターンをそれぞれ別個で移動させて補正を行うような方式と比較して所望の補正情報をより短時間で生成できるようになる。
【0016】
請求項3の発明では、基準媒体は、基準コードに加え複数の基準パターンが移動方向に並ぶように配されてなるものであり、撮像手段は、基準媒体が移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で、基準コードに加え、複数の基準パターンを撮像可能とされている。更に、複数の基準パターンのいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する画素値検出手段が設けられており、補正情報生成手段は、画素値検出手段によって検出された選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を生成可能とされている。この構成によれば、請求項1の効果に加え、請求項2の効果をも奏する光学的情報検証装置を実現できる。
【0017】
請求項4の発明では、基準コードは、公開領域と、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域とを有する一部非公開コードであり、公開領域に少なくとも所定情報が記録され、非公開領域に少なくとも基準情報が記録されている。また、暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能な解読キー記憶手段と、撮像手段によって一部非公開コードが撮像された場合に、少なくとも公開領域のデータを解読する解読手段と、公開領域に記録された所定情報を検出する所定情報検出手段とが設けられている。そして、解読手段は、所定情報検出手段によって所定情報が検出され、解読キー記憶手段に解読キーが記憶されていることを条件として非公開領域のデータを解読し、補正情報生成手段は、解読手段により非公開領域のデータが解読されたことを条件として補正情報を生成するようにしている。
【0018】
この構成では、非公開領域のデータが解読されたことを条件として補正情報を生成するようにしているので、例えば、正規の基準コード以外の情報コード(非公開領域を有しない情報コード、解読キーで解読できない非公開領域を有する情報コード等)に基づいて補正が行われようとした場合に、補正処理を行わないようにすることができる。従って、誤った補正が行われにくくなり、誤った補正に起因する検証精度の低下を効果的に防止することができる。
【0019】
請求項5の発明では、一部非公開コードからなる基準コードの非公開領域に少なくとも有効期限情報が記録されている。そして、補正情報生成手段は、非公開領域に記録された有効期限情報に基づいて、基準コードが有効期限内のものであるか否かを判定し、有効期限内のものである場合に補正情報を生成するようにしている。この構成では、基準コードが有効期限内であると判定された場合に補正情報を生成するようにしているため、有効期限を過ぎて、経時変化などによって劣化した情報コードを用いて補正が行われることを効果的に防ぐことができる。また、有効期限情報を非公開領域で管理しておくことができるため、有効期限に関する情報を第三者に知らせないようにすることができ、セキュリティ性を高めることができる。
【0020】
請求項6の発明では、一部非公開コードからなる基準コードの非公開領域に少なくとも各機種に対応した補正対象項目に関する情報が記録されている。また、光学的情報検証装置の機種を判別する判別手段が設けられている。さらに、非公開データ内には、各機種に対応した補正対象項目が記憶されており、補正情報生成手段は、判別手段で判別される機種と、非公開データ内に記録される各機種に対応する補正対象項目に基づき、当該光学的情報検証装置での補正対象項目を決定し、その決定された補正対象項目の補正情報を生成するようにしている。
【0021】
照明光の照射バランスや搬送速度などは、機種毎に異なる場合があるため、これら機種固有の特性に応じた補正対象項目を予め非公開データ内に記憶しておき、機種に応じて対応する補正対象項目を決定するようにすれば、機種毎に細かな設定を行わずに済み、機種毎により適切な補正を行うことができる。また、このような機種毎の補正対象項目を非公開領域で管理しておくことができるため、このようなノウハウを第三者に知らせないようにすることができ、セキュリティ性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(A)は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置の構成を概略的に例示する説明図であり、図1(B)は、照明光源の構成を概略的に例示する説明図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置の校正に用いられる基準媒体の一例を概略的に説明する説明図である。
【図4】図4は、基準媒体に配される一部非公開コードを概略的に説明する説明図である。
【図5】図5は、一部非公開コードのデータ構成を例示する説明図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置で行われる校正処理の流れを例示するフローチャートである。
【図7】図7は、単位画素当たりの長さを算出する方法を説明する説明図である。
【図8】図8は、基準パターンの明度分布を例示する図である。
【図9】図9は、基準パターンの明度分布を例示する図である。
【図10】図10は、基準パターンの明度分布を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る光学的情報検証装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
まず、本実施形態に係る光学的情報検証装置1の構成を図1及び図2に基づいて説明する。
なお、図1(A)は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置の構成を概略的に例示する説明図であり、図1(B)は、照明光源の構成を概略的に例示する説明図である。また、図2は、光学的情報検証装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態の光学的情報検証装置1は、所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードの品質を検証する装置として構成されている。即ち、検証対象物(表示媒体)を搬送させながら、同時に、この検証対象物に付された二次元コードを検証できるように構成されている。図1(A)に示すように、光学的情報検証装置1は、主に、ABS樹脂等の合成樹脂からなるハウジング11と、このハウジング11内に収容される回路部20等から構成されている。
【0025】
ハウジング11は、一端側に、読取口11aを備えている。この読取口11aは、後述する回路部20の受光センサ23に入射する入射光を導入可能となっている。なお、光学的情報検証装置1は、この読取口11aが、搬送される検証対象物Rと向かい合うように配置されており、例えば、図略の置台等に載置されていてもよく、また、固定部材(図示略)等を用いて所定位置(所定の高さ)に固定されていてもよい。
【0026】
回路部20は、ハウジング11の内部に収容されているプリント配線板15及び光学系等により構成されている。即ち、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ23、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系から構成されている。そして、これらはプリント配線板15に実装されたり、あるいはハウジング11内に内装されている。
【0027】
ここで、回路部20の構成について図2を参照して後述する。図2に示すように、回路部20を構成する光学系は、照明光源21、受光センサ23、結像レンズ27等から構成されている。照明光源21は、照明光を発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等とから構成されている。本実施形態では、図1(B)に示すように、6つのLED21aが設けられており、それぞれ個別に明るさを調整できるようになっている。そして、このように構成される照明光源21は、ハウジング11の読取口11aを介して検証対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。なお、LED21aの数は複数であれば特に6つに限定されず、5つ以下でもよく、また、7つ以上でもよい。
【0028】
受光センサ23は、検証対象物Rや二次元コードQに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサがこれに相当する。この受光センサ23は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板15に実装されている。なお、受光センサ23は、「撮像手段」の一例に相当する。
【0029】
結像レンズ27は、外部からハウジング11を介して入射する入射光を集光して受光センサ23の受光面23aに像を結像可能な結像光学系として機能しうるもので、例えば鏡筒とこの鏡筒に収容される複数の集光レンズとにより構成されている。なお、図2には示されていないが、図1に示すように、二次元コードQ等に反射して読取口11aに入射した反射光Lrの光路を変更する反射鏡26が設けられている。
【0030】
次にマイコン系の構成概要を説明する。図2に示すように、マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、操作スイッチ42、発光部43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。このマイコン系は、その名の通り、マイコン(情報処理装置)として機能しうる制御回路40およびメモリ35を中心に構成されるもので、前述した光学系により撮像された二次元コードQの画像信号等をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。また、制御回路40は、当該光学的情報検証装置1の全体のシステムに関する制御も行っている。なお、制御回路40は、「解読手段」の一例に相当し、撮像された検証対象物Rの画像から二次元コードQを抽出して解読するように機能する。
【0031】
光学系の受光センサ23から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ23およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0032】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばROM、RAM(DRAM、SRAM等)、その他の不揮発性メモリなどがこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、所定のバッファ領域やこのほか制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理に利用する作業領域等も確保可能に構成されている。また、ROMには、例えば各種処理等を実行可能な所定プログラムや照明光源21、受光センサ23等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。なお、メモリ35は、「記憶手段」の一例に相当する。また、メモリ35は、暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能となっており、「解読キー記憶手段」の一例に相当する。
【0033】
制御回路40は、光学的情報検証装置1全体の制御を可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェースとからなり、メモリ35と共に情報処理装置を構成し情報処理機能を有する。本実施形態では、制御回路40に対し、操作スイッチ42、発光部43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。これにより、制御回路40は、例えば、操作スイッチ42の監視や管理、またインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、さらには読み取った2次元コードQの評価結果を表示可能な液晶表示器46の画面制御や外部機器とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0034】
(基準媒体の構成)
次に、本実施形態の特徴的構成について詳述する。
なお、図3は、光学的情報検証装置の校正に用いられる基準媒体の一例を概略的に説明する説明図である。図4は、基準媒体に配される一部非公開コードを概略的に説明する説明図である。図5は、一部非公開コードのデータ構成を例示する説明図である。
【0035】
本発明では、所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードQの品質を検証する装置として構成される当該光学的情報検証装置1の校正を、所定の基準媒体Sを用いて行うようにしている。この基準媒体Sは、例えば、記録紙などの紙状部材から構成されていてもよく、また、記録紙などよりも厚みのある板状部材(例えば樹脂製のシートなど)から構成されていてもよい。さらに、図3で例示する基準媒体Sには、予め定められた形状の基準コードC(詳細は後述)と、所定方向に延びる複数本の基準パターンP1、P2、P3とが形成されている。
【0036】
(基準コードの構成)
次に、基準コードCの構成について説明する。基準コードCは、公開領域と、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域とを有する一部非公開コードから構成されている。以下、このような基準コードCを「一部非公開コードC」ともいう。一部非公開コードCは、図4に示すように、暗号化キーを用いずに読み取りが可能となる非暗号化データ(公開データ)が記録される公開領域Caと、暗号化キーによって暗号化された暗号化データ(非公開データ)が記録される非公開領域Cbと、誤り訂正符号が記録される誤り訂正領域とを備えている。更に、本実施形態では、公開領域Caには所定の公開情報(例えば、「校正用のシートです。」などの情報)と、後述する「校正用」を示す校正用識別子(所定情報)とが少なくとも記録されている。また、非公開領域Cbには、一部非公開コードCの1セルの大きさを特定する情報(図5の例では、「1セル0.5mm」)と、3つの基準パターンP1、P2、P3の位置情報(基準コードCからの位置)及び反射率と、基準媒体Sの有効期限情報等が記録されている。
【0037】
次に、一部非公開コードCのデータ構成について説明する。図5は、一部非公開コードCのデータ構成を例示する説明図である。例えば、特開2009−9547公報、特開2008−299422公報などに開示された技術を好適に用いることができる。図5には、これら公報の技術を用いた場合の一部非公開コードCのデータ構成を例示しており、このうち、「公開データ」は、所定の開示データをJISの基本仕様(JISX0510:2004)に従って符号化したものである。また、「非公開データ」は、所定の暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データをJISの基本仕様(JISX0510:2004)に従って符号化したものであり、本実施形態では、校正に必要な情報などが記録されている。
【0038】
なお、一部非公開コードCの生成方法や生成される一部非公開コードCの具体的構成はこの例に限られるものではなく、一部領域に暗号化データを記録し、他の領域に非暗号化データを記録した二次元コードを生成可能な方法であれば、これら公報に記載された方法以外の方法で生成されていてもよい。また、非公開領域の暗号化方式も、公知の方法であればよく、例えば秘密鍵暗号方式であってもよく、公開鍵暗号方式であってもよい。
【0039】
更に、本実施形態で用いられる一部非公開コードCは、公開領域Caに記録されるデータ内において所定位置(図5の例では公開領域Caの終わりを示す終端子の直前)に「校正用」を示す校正用識別子(所定情報)が設けられている。この一部非公開コードCを読み取る場合、読取装置は、先頭から終端子までのデータを公知のQRコード(登録商標)と同様の方法で読み取り、その際に、上記所定位置に校正用識別子があるか否かを判断することになる。そして、上記所定位置に校正用識別子が存在する場合には、その校正用識別子の後に続く非公開領域Cbのデータを読み取ることになる。この非公開領域Cbのデータは上述したように暗号化キーによって暗号化されているため、光学的情報検証装置1内に暗号化キーに対応する解読キーが存在する場合のみ解読できる。例えば、非公開領域Cbのデータが秘密鍵暗号方式で暗号化されている場合、光学的情報検証装置1内に暗号化キーと同一の解読キーが存在する場合のみ解読できることになる。
【0040】
なお、図3の例では、基準コードCは外形が略矩形状(略正方形状或いは略長方形状)とされており、当該基準コードCの外形を構成する一対の辺の向きが搬送方向に沿って配され、これらとは異なる一対の辺の向きが搬送方向と直交する幅方向に沿って配されるようになっている。つまり、基準コードCの縦方向の向きがほぼ搬送方向の向きとなっており、基準コードCの横方向の向きがほぼ幅方向(搬送方向と直交する方向)の向きとなっている。
【0041】
(基準パターンの構成)
基準パターンP1、P2、P3は、いずれも所定方向(図3の例では搬送方向と直交する方向(幅方向))に沿って延びるラインパターンとして構成されており、図3の例では搬送方向に並んで配置されている。これら基準パターンP1、P2、P3はそれぞれの濃度が異なるように構成され、それぞれの反射率も異なるように構成されている(例えば、P1が1%、P2が50%、P3が99%)。なお、図3の例では、基準パターンP1が黒色のラインパターンとして構成され、基準パターンP2が灰色のラインパターンとして構成され、基準パターンP3が白色のラインパターンとして構成されている。これら基準パターンP1、P2、P3の幅(ライン幅)は、共通の特定幅とされており、基準パターンP1、P2、P3における隣接するパターン同士の間隔も同一のパターン間隔とされている。また、一部非公開コードCとこの一部非公開コードCに最も近い基準パターンP1の距離は予め定められた特定距離とされている。
【0042】
(校正処理)
次に、当該光学的情報検証装置1において行われる校正処理について、図6に示すフローチャート及び、図7〜図10等を用いて説明する。なお、図6の校正処理を行う光学的情報検証装置1は、例えば、工場などに設けられ、ベルトコンベアなどの上に載せられた検証対象物(表示媒体)に付された二次元コードQを検証可能に構成されている。また、図6は、第1実施形態に係る光学的情報検証装置で行われる校正処理の流れを例示するフローチャートである。図7は、単位画素当たりの長さを算出する方法を説明する説明図である。図8〜10は、基準パターンの明度分布を例示する図である。
【0043】
まず、ベルトコンベアなどの上に、図3に示したような基準媒体Sが載せられて、基準媒体Sが移動方向(搬送方向)に所定速度で相対的に移動した状態で、基準コードC(二次元コードQ)が撮像されて、読み取りが開始される(ステップS1)。撮像の際の搬送過程では、情報コードCの縦方向(上記一対の辺C1、C2の方向)を搬送方向の向きとし、情報コードCの横方向(上記一対の辺C3、C4の方向)及び基準パターンP1、P2、P3の長手方向を搬送方向と直交する向きとするように基準媒体Sの姿勢を保ちつつ当該基準媒体Sの搬送が行われる。S1では、まずこのように搬送される基準媒体Sにおいて、情報コードCを撮像し、情報コードCのコード画像を取得する。そして、このコード画像において公開領域Caを公知のデコード方法で解読し、公開領域Caに記録された情報を読み出すと共に公開領域Caに所定情報(校正用識別子)が記録されているか否かを判断する(S2)。なお、本構成では、S1、S2の処理を実行する制御回路40が「所定情報検出手段」の一例に相当し、公開領域Caに記録された所定情報(校正用識別子)を検出するように機能する。
【0044】
このとき、ステップS2にて、所定情報が検出されなかった場合には(S2でNo)、後述のステップS4からの処理がなされることなく、通常の二次元コードQ(非公開領域Cb等を有しない二次元コード)を解読する場合と同様の公知の読取処理(例えば、QRコードに対する公知のデコード処理)がなされ(ステップS3)、当該処理が終了する。
【0045】
一方、ステップS2にて、所定情報(校正用識別子)が検出された場合には(S2でYes)、基準コードCの暗号化キーに対応する解読キーがメモリ35に記憶されていることを条件として、非公開領域Cbのデータの読取処理を行う(ステップS4)。つまり、本構成では、データの先頭から終端子までの間のデータ領域(公開領域)に記録されるデータの中に所定情報(校正用識別子)が含まれるか否かを確認し、含まれていない場合には、データの先頭から終端を示す識別子(終端子)までの間のデータ領域(公開領域)を公知のデコード方法で解読することになる。一方、データの先頭から終端子までの間のデータ領域(公開領域)に所定情報(校正用識別子)が含まれている場合には、終端子の後に続く領域(非公開領域Cb)のデコードを試みる。非公開領域Cbに記録されるデータは、暗号化後のデータを「0」「1」に対応するセルに置き換えたものであるため、非公開領域Cbの解読の際には、非公開領域Cbのセルを「0」「1」のデータに置き換えた後、メモリ35に記憶される解読キーを用いて復号化する。このような復号化が成功した場合には非公開領域Cbに記録された非公開データを読み出す(ステップS5)。
【0046】
非公開領域Cbに記録される非公開データの中には、基準コード(一部非公開コード)Cの1セル(所定の基準部分)における縦方向(基準コードCのセル(所定の基準部分)の移動方向)の大きさ、及び横方向(セル(所定の基準部分)の移動方向と直交する方向)の大きさを特定し得る情報(基準情報)が記録される。なお、本構成では、基準コードCの各セルが縦横同サイズの正方形状とされており、図5では、1セルあたりの縦方向の大きさ及び横方向の大きさが「0.5mm」であることを示す情報(0.5mm/1セル)が記録されている。また、非公開領域Cbの非公開データには、3つの基準パターンP1、P2、P3のそれぞれの位置情報及び反射率と、基準媒体Sの有効期限情報等が含まれている。基準パターンP1、P2、P3の位置情報は、基準媒体S内における当該基準パターンP1、P2、P3の位置及び形状を特定し得る情報であればよく、例えば、各基準パターンP1、P2、P3の長手方向の長さ及びそれぞれのライン幅W1、W2、W3を特定する情報、情報コードCから基準パターンP1(情報コードCに最も近い基準パターン)までの搬送方向における実際の距離L1、パターン間の距離(基準パターンP1、P2間の距離L2及び基準パターンP2、P3間の距離L3)を特定する情報などを含んでいる。また、基準パターンP1、P2、P3の反射率の情報は、各基準パターンP1、P2、P3の反射率そのものであってもよく、反射率を間接的に特定し得る情報(濃度情報)であってもよい。基準媒体Sの有効期限情報は、基準コードCの作成者等によって任意に指定される情報であり、例えば有効期限の年月日を示す情報とされている。S5では、以上のような非公開データを読み出したあと、これらをメモリ35へ書き込む。
【0047】
次に、ステップS6にて、位置検出パターンFP(撮像画像内でのコード位置を検出するためのパターン)の縦横セル幅を実際に撮像されたコード画像から計測し、1セルの画素の割り当てを行う。この処理では、まず、撮像された基準コードCのコード画像において位置検出パターンFPの移動方向(搬送方向)の長さと及び横方向(搬送方向と直交する方向)の長さを検出する。上記位置検出パターンFPは公知のQRコード(登録商標)の位置検出パターンとして構成され、規格上、縦横7セル(7行×7列のセル配列)で構成されており、正方形状をなしている。このような位置検出パターンFPが所定方向(当該パターンの列方向)にある程度の搬送速度で移動している場合、このような位置検出パターンFPを撮像したときには、位置検出パターンFPの撮像画像は、例えば図7に示すように搬送方向(当該位置検出パターンFPの列方向)に縮むことになり、長方形状となる。S6では、まずこのような長方形状の位置検出パターン画像における縦サイズ(縦の画素数)及び横サイズ(横の画素数)を検出する。なお、図7の例では、撮像された位置検出パターン画像の縦サイズ(縦の画素数)が7画素分であり、横サイズ(横の画素数)が7画素分である場合を示している。
【0048】
そして、以上のようなデータを基に、縦方向及び横方向のそれぞれにおいて1セルあたり何画素割り当てるべきかを算出する。基準コードCにおける各セルの縦方向及び横方向の実際のサイズは上述の非公開領域Cbに予め記憶されており、図5の例では、1セルにおいて縦方向及び横方向のいずれのサイズも0.5m(0.5mm/1セル)とされている。このような場合、図7のような位置検出パターン画像が得られたとき、横方向は1セルあたり2画素と特定でき、セルの横サイズは実際には1セルあたり0.5mmであるため、1画素に相当する横方向の絶対値Bは、B=0.5/2=0.25mmとなる。また、図7の例では、縦方向は1セルあたり1画素と特定でき、セルの縦サイズは実際には1セルあたり0.5mmであるため、1画素に相当する縦方向の絶対値Aは、A=0.5mm/1=0.5mmとなる。そして、このように算出された横方向及び縦方向における単位画素当たりの長さを補正情報としてメモリ35に記憶する。
【0049】
このような補正情報があれば、図6のような処理の後に実際に運用する場合において、基準コードCの搬送と同様の搬送速度及び同様の配置関係で検出対象となる情報コード(検証物)を撮像した場合に、そのコード画像の縦方向の長さや横方向の長さを正確に検出できるようになる。例えば、得られたコード画像において縦方向の長さが画素N個分であった場合には、この画素数Nと上述の1画素に相当する縦方向の絶対値Aとを掛け合わせたN×Aが検出対象となる情報コードの実際の縦方向の長さと特定できる。同様に、得られたコード画像において横方向の長さが画素M個分であった場合には、この画素数Mと上述の1画素に相当する縦方向の絶対値Bとを掛け合わせたM×Bが検出対象となる情報コードの実際の横方向の長さと特定できる。ここでは、検出対象となる情報コード全体の実際の縦サイズ及び横サイズの算出方法を例示したが、この検出対象コードの各セルや位置検出パターンなどの各部分の縦サイズ及び横サイズについても同様に算出することができる。なお、本構成では、制御回路40が「検出手段」及び「補正情報生成手段」の一例に相当する。
【0050】
次に、ステップS7にて、基準パターンP1〜P3の読み取りを行う。図6の処理では、例えばS1において基準コードCの画像と共に基準パターンP1〜P3の画像をも撮像しており、S7では、これら基準パターンP1〜P3を検出すると共に、各基準パターンP1〜P3の縦方向所定位置において撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する。本構成では、例えば受光センサ23が2000画素のラインセンサとして構成されており、受光センサ23は撮像タイミング毎に横方向にライン状に撮像するようになっている。従って、例えば基準パターンP1の縦方向所定位置では、当該基準パターンP1を長手方向全体に亘ってライン状に撮像しており、基準パターンP2の縦方向所定位置では、当該基準パターンP2を長手方向全体に亘ってライン状に撮像している。同様に、基準パターンP3の縦方向所定位置では、当該基準パターンP3を長手方向全体に亘ってライン状に撮像している。図8〜図10では、このように得られる各基準パターンP1〜P3の撮像画像(ライン画像)においてレンズ中心が1000画素位置にある場合の明度分布(0〜255階調)の例を示している。なお、図8〜図10では、縦軸を、画素値(明度値)とし、横軸を画素位置としている。図8〜図10に示すように、ラインセンサでの撮像の特性上、いずれの基準パターンの画像においてもレンズ中心から離れるほど、画素値(明度値)が小さくなる傾向にある。具体的には、各基準パターンP1〜P3の撮像画像(ライン画像)における、受光センサ23の中心画素位置(1000画素位置)の画素値(明度値)と各ライン画像の両端画素位置(図8〜図10の例では受光センサ23の両端画素)の画素値(明度値)との差αを補正情報としてメモリ35に記憶する。
【0051】
なお、本構成では、3つの基準パターンP1〜P3が設けられているが、補正用の選択パターンとしていずれの基準パターンを用いるかは、作業者による設定(例えば操作スイッチ42を用いた指定)に基づいて決定してもよく、周囲環境の明るさ等に基づいて自動的に決定してもよい。或いは、非公開領域Cb内に基準パターンP1〜P3のいずれを用いるかを記憶するようにしておき、その記憶内容に基づいていずれかの基準パターンを選択パターンとして選択するようにしてもよい。いずれにしても、S7では、上記いずれかの方法で1つの選択パターンを選択することとなる。
【0052】
例えば、選択パターンが基準パターンP1である場合には、図6のような処理の後に実際に運用する場合において、補正情報αに基づいて各画素値の均一化を図るように補正処理を行うことができる。例えば、受光センサによって各タイミング毎に生成されるライン画像に対して、幅方向両端側となるにつれて補正量を大きくするように画像補正を行うようにしてもよい。例えば図8のような場合、まず、最も高い画素値(図8の例ではライン画像中心位置の画素値と所定の基準値(この基準値は基準パターン毎に定められる値である)との差βを求め、このβは、ライン画像を全体的に底上げする底上げ補正量(全画素それぞれの画素値に追加する画素値)とする。更に、ライン画像の各画素位置での個別補正量(上記βに追加する追加量)を求める。この個別補正量は、幅方向両端での個別補正量(追加量)をα(即ち、ライン画像における幅方向中央画素値と幅方向両端の画素値との差)とし、幅方向中心の個別補正量を0とし、幅方向両端からセンサ中心(レンズ中心)に近づくのに比例して個別補正量が徐々に少なくなるように個別補正量を決定すればよい。このように、ライン画像を構成する各画素の画素値に対し、全画素共通の底上げ補正量βと各画素固有の個別補正量が追加されるように補正される。
【0053】
なお、αを用いた均一化の方法は上記方法に限られない。例えば、図1(B)のように基準媒体Sの幅方向中心に照明光を照射する中心側照射部22、及び基準媒体Sの幅方向両側部に照明光をそれぞれ照射する側部照射部24、25をそれぞれ設け、中心側照射部22に与える駆動電流を所定値とすると共に、側部照射部24、25に与える駆動電流を補正情報αに対応する電流値とするようにしてもよい。この場合、中心側照射部22の駆動電流と側部照射部24、25の駆動電流の差がαに対応した値となるように制御し、例えばαが大きいほど中心側照射部22の駆動電流と側部照射部24、25の駆動電流の差を大きくし、αが小さいほど駆動電流の差を小さくすればよい。
【0054】
なお、上記説明では反射率が最も低い黒色の基準パターンP1を選択パターンとした場合の補正方法を説明したが、反射率50%の灰色の基準パターンP2を選択パターンとして用いる場合も、反射率99%の白色の基準パターンP3を選択パターンとして用いる場合も同様の方法で補正を行うことができる。
【0055】
また、補正方法は上記方法に限られず、例えば、各画素の反射率を測定し、画素毎にメモリ35に予め記憶された反射率と対比し演算することで、補正量を決定するようにしてもよい。この場合、例えば、特開平8−96060号公報などに開示された技術を好適に用いることができる。
なお、本構成では、制御回路40が「画素値検出手段」の一例に相当する。
【0056】
次に、ステップS8にて、メモリ35に記憶された有効期限情報に基づいて、基準コードCが有効期限内のものであるか否かを判定し、有効期限内のものである場合には(ステップS8でYes)、得られた補正情報に基づき光学的情報検証装置1の校正を実施し(ステップS9)、当該処理を終了する。一方、ステップS8にて、基準コードCが有効期限を過ぎていると判定された場合には(S8でNo)、光学的情報検証装置1の校正を行わず、警告(例えば、アラーム音を鳴らしたり、基準コードCが有効期限を過ぎている旨のメッセージを表示するなど)を行い、当該処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本第1実施形態に係る光学的情報検証装置1では、予め定められた形状の基準コードCが付された基準媒体Sを用いて校正を行うことが可能なように構成されており、基準媒体Sが移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で基準コードCを受光センサ23により撮像すると共に、基準コードCの所定の基準部分における移動方向の大きさ及び移動方向と直交する横方向の大きさを特定可能な基準情報としてメモリ35により記憶するようにしている。また、受光センサ23により撮像された基準コードCのコード画像における基準部分の移動方向の長さと、基準部分の横方向の長さを検出手段(制御回路40)により検出するようにしている。そして、検出手段によって検出された基準部分の移動方向の長さ及び横方向の長さと、メモリ35に記憶される基準情報とに基づき、受光センサ23で撮像された撮像画像の移動方向における単位画素当たりの長さ及び横方向における単位画素当たりの長さを特定可能な補正情報を、補正情報生成手段(制御回路40)により生成するようになっている。
【0058】
この構成によれば、移動する物体に付された二次元コードQの品質を検証し得る高精度な検証装置を実現できる。移動する二次元コードQを撮像して品質を検証する場合、静止した二次元コードQを撮像して検証を行う場合と比較して移動方向の長さや横方向の長さが変化してしまい、正確な検証が行い難いという懸念があるが、上記構成によれば、メモリ35に予め記憶される基準情報(基準コードCの所定の基準部分における移動方向の大きさ及び横方向の大きさを特定可能な情報)と、実際に撮像されたコード画像における基準部分の移動方向の長さ及び横方向の長さとに基づいて、撮像画像の移動方向における単位画素当たりの長さ及び横方向における単位画素当たりの長さがどの程度に変化しているかを特定しうる補正情報を生成できるようになる。従って、所定方向に移動する二次元コードQを実際に撮像して検証する際には、得られたコード画像に対し上記補正情報に基づく補正(即ち、移動方向及び横方向の変化を反映させた補正)を行い、各位置の実際の大きさを正確に把握した上で検証を行うことができるため、より高精度な検証が可能となる。また、検証に際し、複雑な移動制御や管理等を行わずとも容易に且つ正確に検証を行うことができるため、コスト面でも有利になる。
【0059】
また、基準媒体Sは、基準コードCに加え複数の基準パターンP1〜P3が移動方向に並ぶように配されてなるものであり、受光センサ23は、基準媒体Sが移動方向に所定速度で相対的に移動した状態で、基準コードCに加え、複数の基準パターンP1〜P3を撮像可能とされている。更に、複数の基準パターンP1〜P3のいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する画素値検出手段(制御回路40)が設けられており、補正情報生成手段は、画素値検出手段によって検出された選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を生成可能とされている。
【0060】
この構成によれば、移動する物体に付された二次元コードQの品質を検証し得る高精度な検証装置を実現できる。特にこの構成では、基準媒体Sの移動方向に複数の基準パターンP1〜P3が並べられているため、1回の移動動作でこれら基準パターンP1〜P3を撮像することができ、その中の少なくともいずれかの基準パターンを画素値補正用のパターンとして利用できるため、単一の基準パターンのみで補正を行う場合と比較して補正の自由度が高まり、複数の補正パターンをそれぞれ別個で移動させて補正を行うような方式と比較して所望の補正情報をより短時間で生成できるようになる。
【0061】
また、基準コードCは、公開領域Caと、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域Cbとを有する一部非公開コードであり、公開領域Caに少なくとも所定情報が記録され、非公開領域Cbに少なくとも基準情報が記録されている。また、暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能なメモリ35と、受光センサ23によって一部非公開コードが撮像された場合に、少なくとも公開領域Caのデータを解読する解読手段(制御回路40)と、公開領域Caに記録された所定情報を検出する所定情報検出手段とが設けられている。そして、解読手段は、所定情報検出手段によって所定情報が検出され、メモリ35に解読キーが記憶されていることを条件として非公開領域Cbのデータを解読し、補正情報生成手段は、解読手段により非公開領域Cbのデータが解読されたことを条件として補正情報を生成するようにしている。
【0062】
この構成では、非公開領域Cbのデータが解読されたことを条件として補正情報を生成するようにしているので、例えば、正規の基準コードC以外の情報コード(非公開領域Cbを有しない情報コード、解読キーで解読できない非公開領域Cbを有する情報コード等)に基づいて補正が行われようとした場合に、補正処理を行わないようにすることができる。従って、誤った補正が行われにくくなり、誤った補正に起因する検証精度の低下を効果的に防止することができる。
【0063】
また、一部非公開コードからなる基準コードCの非公開領域Cbに少なくとも有効期限情報が記録されている。そして、補正情報生成手段は、非公開領域Cbに記録された有効期限情報に基づいて、基準コードCが有効期限内のものであるか否かを判定し、有効期限内のものである場合に補正情報を生成するようにしている。この構成では、基準コードCが有効期限内であると判定された場合に補正情報を生成するようにしているため、有効期限を過ぎて、経時変化などによって劣化した情報コードを用いて補正が行われることを効果的に防ぐことができる。また、有効期限情報を非公開領域Cbで管理しておくことができるため、有効期限に関する情報を第三者に知らせないようにすることができ、セキュリティ性を高めることができる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
上記実施形態では、基準媒体Sに3つの基準パターンP1、P2、P3が移動方向に並ぶように配置されている例を示したが、これに限定されず、基準パターンの数は2つでもよく、また4つ以上配置されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、基準コードCが公開領域Caと、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域Cbとを有する一部非公開コードから構成されている例を示したが、基準コードCは、他の二次元コードから構成されていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、さらに、「非公開データ」には、光学的情報検証装置1の各機種に対応した補正対象項目に関する情報が記録されていてもよい。そして、光学的情報検証装置1の機種を判別し、判別される機種と、非公開データ内に記録される各機種に対応する補正対象項目に基づき、当該光学的情報検証装置1での補正対象項目を決定し、その決定された補正対象項目の補正情報を生成するようにしてもよい。なお、制御回路40は、「判別手段」の一例に相当する。
【0068】
具体的には、当該光学的情報検証装置1の機種を特定する機種情報をメモリ35に記憶しておくようにし、非公開データの中に機種毎の補正対象項目を記録しておくようにすればよい。例えば、機種Aの補正対象項目は項目A,B、機種Bの補正対象項目は項目A、機種Cの補正対象項目は項目Bといった具合に対応付けるデータを非公開データの中に含ませておけば、メモリ35から自身の機種情報を読み出し且つ非公開データを解読したときに、自身の補正対象項目が何であるかを特定できるようになる。この場合、例えば項目AがS6での補正情報に基づく上記補正であり、項目BがS7での補正情報に基づく上記補正である場合、自身の機種が機種Aであれば、S6での補正情報に基づく上記補正及びS7での補正情報に基づく上記補正をいずれも行うべきであることが判明する。
【0069】
照明光の照射バランスや搬送速度などは、機種毎に異なる場合があるため、これら機種固有の特性に応じた補正対象項目(照度、画像の歪みなど)を予め非公開データ内に記憶しておき、機種に応じて対応する補正対象項目を決定するようにすれば、機種毎に細かな設定を行わずに済み、機種毎により適切な補正を行うことができる。また、このような機種毎の補正対象項目を非公開領域Cbで管理しておくことができるため、このようなノウハウを第三者に知らせないようにすることができ、セキュリティ性を高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…光学的情報検証装置
11…ハウジング
11a…読取口
15…プリント配線板
20…回路部
21…照明光源
21a…LED
23…受光センサ(撮像手段)
26…反射鏡
27…結像レンズ
35…メモリ(記憶手段、解読キー記憶手段)
40…制御回路(解読手段、検出手段、補正情報生成手段、画素値検出手段、判別手段)
42…操作スイッチ
46…液晶表示器
C…基準コード
Ca…公開領域
Cb…非公開領域
FP…位置検出パターン
P1、P2、P3…基準パターン
Q…二次元コード
R…検証対象物
S…基準媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードの品質を検証する装置として構成され、予め定められた形状の基準コードが付された基準媒体を用いて校正を行うことが可能とされた光学的情報検証装置であって、
前記基準媒体が前記移動方向に前記所定速度で相対的に移動した状態で前記基準コードを撮像する撮像手段と、
前記基準コードの所定の基準部分における前記移動方向の大きさ及び前記移動方向と直交する横方向の大きさを特定可能な基準情報として記憶する記憶手段と、
前記撮像手段により撮像された前記基準コードのコード画像における前記基準部分の前記移動方向の長さと、前記基準部分の横方向の長さを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記基準部分の前記移動方向の長さ及び前記横方向の長さと、前記記憶手段に記憶される前記基準情報とに基づき、前記撮像手段で撮像された撮像画像の前記移動方向における単位画素当たりの長さ及び前記横方向における単位画素当たりの長さを特定可能な補正情報を生成する補正情報生成手段と、
を備えたことを特徴とする光学的情報検証装置。
【請求項2】
所定の移動方向に所定速度で相対的に移動する二次元コードの品質を検証する装置として構成され、複数の基準パターンが前記移動方向に並ぶように配されてなる基準媒体を用いて校正を行うことが可能とされた光学的情報検証装置であって、
前記基準媒体が前記移動方向に前記所定速度で相対的に移動した状態で前記複数の基準パターンを撮像する撮像手段と
前記複数の基準パターンのいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する画素値検出手段と、
前記画素値検出手段によって検出された前記選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を生成する補正情報生成手段と、
を備えたことを特徴とする光学的情報検証装置。
【請求項3】
前記基準媒体は、前記基準コードに加え複数の基準パターンが前記移動方向に並ぶように配されてなるものであり、
前記撮像手段は、前記基準媒体が前記移動方向に前記所定速度で相対的に移動した状態で、前記基準コードに加え、前記複数の基準パターンを撮像可能とされ、
更に、前記複数の基準パターンのいずれかの基準パターンを選択パターンとし、その選択パターンの撮像画像を構成する各画素の画素値を検出する画素値検出手段が設けられており、
前記補正情報生成手段は、前記画素値検出手段によって検出された前記選択パターンの撮像画像の各画素値を均一化するための画素毎の補正情報を生成可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報検証装置。
【請求項4】
前記基準コードは、公開領域と、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域とを有する一部非公開コードであり、前記公開領域に少なくとも所定情報が記録され、前記非公開領域に少なくとも前記基準情報が記録されたものであり、
更に、前記暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能な解読キー記憶手段と、
前記撮像手段によって前記一部非公開コードが撮像された場合に、少なくとも前記公開領域のデータを解読する解読手段と、
前記公開領域に記録された前記所定情報を検出する所定情報検出手段と、
が設けられており、
前記解読手段は、前記所定情報検出手段によって前記所定情報が検出され、前記解読キー記憶手段に前記解読キーが記憶されていることを条件として前記非公開領域のデータを解読し、
前記補正情報生成手段は、前記解読手段により前記非公開領域のデータが解読されたことを条件として補正情報を生成することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の光学的情報検証装置。
【請求項5】
前記基準コードは、公開領域と、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域とを有する一部非公開コードであり、前記公開領域に少なくとも所定情報が記録され、前記非公開領域に少なくとも有効期限情報が記録されたものであり、
更に、前記暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能な解読キー記憶手段と、
前記撮像手段によって前記一部非公開コードが撮像された場合に、少なくとも前記公開領域のデータを解読する解読手段と、
前記公開領域に記録された前記所定情報を検出する所定情報検出手段と、
が設けられており、
前記解読手段は、前記所定情報検出手段によって前記所定情報が検出され、前記解読キー記憶手段に前記解読キーが記憶されていることを条件として前記非公開領域のデータを解読し、
前記補正情報生成手段は、前記非公開領域に記録された前記有効期限情報に基づいて、前記基準コードが有効期限内のものであるか否かを判定し、有効期限内のものである場合に補正情報を生成することを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報検証装置。
【請求項6】
前記基準コードは、公開領域と、暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録された非公開領域とを有する一部非公開コードであり、前記公開領域に少なくとも所定情報が記録され、前記非公開領域に少なくとも各機種に対応した補正対象項目に関する情報が記録されたものであり、
更に、前記暗号化キーに対応する解読キーを記憶可能な解読キー記憶手段と、
前記撮像手段によって前記一部非公開コードが撮像された場合に、少なくとも前記公開領域のデータを解読する解読手段と、
前記公開領域に記録された前記所定情報を検出する所定情報検出手段と、
前記光学的情報検証装置の機種を判別する判別手段と、
が設けられており、
前記解読手段は、前記所定情報検出手段によって前記所定情報が検出され、前記解読キー記憶手段に前記解読キーが記憶されていることを条件として前記非公開領域のデータを解読し、
前記非公開データ内には、各機種に対応した補正対象項目が記憶されており、
前記補正情報生成手段は、前記判別手段で判別される機種と、前記非公開データ内に記録される各機種に対応する補正対象項目に基づき、当該光学的情報検証装置での補正対象項目を決定し、その決定された補正対象項目の補正情報を生成することを特徴とする請求項1、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の光学的情報検証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84188(P2013−84188A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224797(P2011−224797)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】