説明

光学的情報読取装置及び光学的情報読取装置の制御方法

【課題】 より簡単な構成で、読取り時における手ぶれの影響を排除することができる光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】 情報コード読取装置を構成する制御回路は、CCDエリアセンサによって撮像が行なわれる期間に、角速度センサによって検出されたCCDエリアセンサの移動量が所定範囲内であればデコード処理を行なうよう。そして、検出された移動量が所定範囲を超えた場合はCCDエリアセンサに撮像を再試行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光センサによって受光された画像データについてデコード処理を行なうことで、前記画像に含まれている情報を読取る光学的情報読取装置、及びその装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや2次元コードなどの情報コードを読取るための装置は、紙や商品などにモノクロ印刷されているコードを読取るため、LEDやレーザなどの光源より読取り対象に光を照射して、その反射光を受光センサで読取るようにしている。また、そのような読取装置に対しては、情報コードの貼付位置からより離れた距離においても読み取りが可能となるようにしたいという要望があるが、そのような状態における読み取りでは所謂「手ぶれ」が問題になってくる。
【0003】
ところで、デジタルカメラやハンディタイプのデジタルビデオなどにおいては、「手ぶれ」を補正するための技術が考案されている。例えば、特許文献1には、シャッタが押されて露光を指示した後に、所定の時間が経過するまで露光を禁止することで、手ぶれの影響を低減するようにしたカメラが開示されている。また、特許文献2には、角速度センサによって手ぶれを検知すると、補正用のレンズを変位させることで手ぶれ補正を行なうようにした装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−218970号公報
【特許文献2】特開2003−57707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術を、情報コード読取装置に適用することを想定すると、以下のような問題がある。即ち、情報コード読取装置においては、多数の情報コードを連続的に読取る場合が多く、夫々の読取りを極力短時間内に行うことが要求される。従って、特許文献1のように、読取り操作のタイミングと当該操作に応じて画像が読取られるタイミングとの間にずれが生じると、操作感(若しくは、読取りレスポンス)が悪化することが避けられない。
【0005】
また、特許文献2に開示されている技術では、良好な操作感を得ることはできるが、補正用レンズを駆動するための複雑な構成及び制御を追加する必要があり、コストアップして装置が大型化するという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡単な構成で、読取り時における手ぶれの影響を排除することができる光学的情報読取装置、及びその装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の光学的情報読取装置によれば、制御手段は、受光センサによって撮像が行なわれる期間に、移動量検出センサによって検出された受光センサの移動量が所定範囲内であればデコード手段によるデコード処理を許可する。即ち、画像を撮像している途中で受光センサが大きく移動した場合には、その際に得られた画像データをデコード処理しても正しい情報を得ることはできない。従って、受光センサの移動量が所定範囲内である場合に撮像された画像データのデコード処理を許可すれば、「手ぶれ」の影響がなく適切に得られた画像データだけをデコードすることができる。そして、デコード処理の許否判断は、移動量検出センサの検出結果に基づき迅速に行なうことができるので、ユーザの操作感を損なうことがなく、また、複雑な補正機構を設ける必要がない。
【0007】
請求項2記載の光学的情報読取装置によれば、制御手段は、検出された移動量が所定範囲を超えた場合は受光センサに撮像を再試行させるので、撮像された画像データのデコード処理が実行されるまで撮像が繰り返される。従って、ユーザは、デコード処理が実行されなかった場合に自身の操作で撮像を再試行させる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0008】
請求項3記載の光学的情報読取装置によれば、制御手段は、検出された移動量の評価を、露光期間と取込み期間との間(即ち、ブランキング期間)に行う。従って、そのブランキング期間に移動量の評価を行なうことで、評価を行うための時間を余分に確保する必要がなくなる。また、その評価結果により、デコード処理がされない画像データを不要に取り込んでしまうことを防止できる。
【0009】
請求項4又は5記載の光学的情報読取装置によれば、移動量検出センサを、加速度センサ(請求項4)又は角速度センサ(請求項5)で構成するので、受光センサの移動量を加速度又は角速度として検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図5に示す情報コード読取装置(光学的情報読取装置)1は、手持ち可能なケースからなる本体2を主体とするもので、その本体2には、多数のスイッチ3、液晶表示器4などが設けられている。また、本体2内には、プリント配線基板5が配設されており、このプリント配線基板5の一方の面に前記キースイッチ3群および液晶表示器4などが取り付けられ、他方の面に二次元画像検出手段としてエリアセンサ、例えばCCDエリアセンサ(受光センサ)6および結像レンズ7などが取り付けられている。
【0011】
本体2の前面開口部は読取口8とされ、この読取口8の近くに位置するようにして本体2内に配設されたプリント配線基板9には、その中央に形成された孔9aの周囲に位置して照明手段としてのLED10が配設されている。また、CCDエリアセンサ6が取り付けられている支持基板20の裏面側には、2つの角速度センサ(移動量検出センサ)21X,21Yが取り付けられている。これらの角速度センサ21X,21Yは、CCDエリアセンサ6の移動量を角速度として検出するために配置されており、夫々主に水平(X)方向,垂直方向(Y)について移動量を検出する(図5(b)参照)。
【0012】
図6は、情報コード読取装置1の電気的構成を示すもので、読取対象部分を撮像する撮像部11、A/D変換器12、2値化回路13、クロック発生回路14、アドレス発生回路15、画像メモリ16、制御手段としての制御回路17、ホストコンピュータなどとの間でデータの送受を行う入出力回路18、ブザー19、前述のスイッチ3群および液晶表示器4などから構成されている。
【0013】
上記撮像部1は、前記CCDエリアセンサ6、読取対象部を照明する照明手段としての前記LED10、読取対象部分からの反射光をCCDエリアセンサ6上に結像する前記結像レンズ7から構成されている。
CCDエリアセンサ6は、二次元画像を読取ると、その二次元画像をクロック発生回路14から出力される駆動パルスに同期して横方向の走査線信号としてA/D変換器12に出力する。A/D変換器12は、CCDエリアセンサ6から出力されたアナログの走査線信号を多段階のレベルからなるデジタル信号に変換する。そして、2値化回路13は、A/D変換器12から出力されたデジタル信号を所定のしきい値で2値化する。
【0014】
一方、クロック発生回路14は、CCDエリアセンサ6へ出力するパスル信号よりも充分に細かいクロックパルスをアドレス発生回路15に出力する。アドレス発生回路15は、クロック発生回路14から出力されるパルスをカウントして画像メモリ16に対するアドレスを発生させる。そして、制御回路(制御手段,デコード手段)17は、2値化回路13から出力される2値化された走査線信号を画像信号(画像情報)としてアドレス発生回路15により定められた画像メモリ16のアドレスに記憶させる。また、制御回路17に対しては、角速度センサ21X,21Yのセンサ信号が与えられている。尚、制御回路17は、CPU、RAM、ROMなどを備えたマイクロコンピュータシステムで構成されている。
【0015】
次に、本実施例の作用について図1乃至図4も参照して説明する。図2は、制御回路17によって実行される制御内容につき、本発明の要旨に係る部分を中心として示すフローチャートである。制御回路17は、ユーザによる操作に応じて情報コードの読取り処理を開始すると、LED10を点灯させて読み取り対象の露光を行うと共に、角速度センサ21X,21Yのセンサ信号を参照して、その露光期間におけるCCDエリアセンサ6(=読取装置1)の移動量を計測する(ステップS1)。
【0016】
露光が終了すると、制御回路17は、ステップS1で計測された移動量の評価を行なう(ステップS2)。そして、評価結果が「OK」であれば、CCDエリアセンサ6が読取った画像データの取込み処理を行ない(ステップS3)、評価結果が「NG」であれば、ステップS1に戻って露光並びに移動量の計測を再試行する。
ここで、ステップS2における移動量の評価は、図3に示すように、ステップS1における「露光」と、ステップS3における「取込み」との間であるブランキング期間に行われることになる。即ち、このように、「露光」,「取込み」,後述する「デコード」の処理フェーズを周期的に繰り返す情報コード読取装置においては、夫々の処理の移行期間として通常「ブランキング」が設定されており、その「ブランキング」の期間に移動量評価を行なうことで、従来構成に比較して処理時間を余分に必要とすることがない。
【0017】
一例として、図3に示す「露光」,「取込み」,「デコード」の処理は夫々30ms程度の期間で行うように設定されている。また、「露光」の期間において、実際にLED10が点灯されて露光か実施される期間は、例えば、1/125=8msを標準時間として、実際の読み取りの成否状況に応じて制御回路17により調整(延長,短縮)が行なわれるようになっている。
【0018】
更に、ステップS2における移動量の評価は、露光期間における移動量が、読み取り対象とする情報コードの明暗パターンを判別できるか否かに応じて設定される。例えば、図4に示すように、2次元コードの一種であるQRコード(登録商標)の場合は、図中に示す明暗パターンの単位幅W(但し、CCDエリアセンサ6上に結像された状態での寸法)に対して、約0.8W以内が許容範囲となる。即ち、露光期間が8msであれば、0.8W/8msをしきい値として評価する。従って、この許容範囲は、読み取り対象となる情報コードのサイズと、読取装置1が許容する最大読取り距離とに応じて設定される。
【0019】
再び図2を参照する。ステップS3において画像データの取り込みが行われると、制御回路17は、取り込まれた画像データについてデコード処理を行ない(ステップS4)、そのデコード結果について判定を行い(ステップS5)、判定結果が「OK」であれば読取り処理は完了となり、判定結果が「NG」であればステップS1に戻って露光並びに移動量の計測を再試行する。
【0020】
以上のフローチャートに従って読取り処理を実行した場合の処理の流れの例を、図1(a)〜(c)に示す。図1(a)は、1回目の露光時において計測された移動量の評価結果が「OK(○)」となったケースであり、その後に「取込み」,「デコード(OK)」を行なって処理を終了する。図1(b)は、1回目の露光時における移動量の評価結果が「NG(×)」となり、2回目の露光時における評価結果が「OK」となったケースであり、「露光」を2回続けて試行している。図1(c)は、1〜3回目の露光時における移動量の評価結果が「NG(×)」となり、4回目の露光時における評価結果が「OK」となったケースであり、「露光」を4回続けて試行している。
【0021】
また、図1(d)は、比較のため、従来の読取装置における一般的な処理の流れを示すものである。即ち、最初の「露光」のフェーズにおいて読取装置が大きく移動してしまった場合には、「デコード」のフェーズにおいてその読取り結果が「NG」であったことが判明する。従って、その時点から「露光」,「取込み」,「デコード」の全てを繰り返し再試行しなければならず、処理に時間がかかってしまうことが明らかである。
【0022】
以上のように本実施例によれば、情報コード読取装置1を構成する制御回路17は、CCDエリアセンサ6によって撮像が行なわれる期間に、角速度センサ21X,21Yによって検出されたCCDエリアセンサ6の移動量が所定範囲内であればデコード処理を行なうようにした。従って、たとえ読み取り対象との距離が離れている場合でも、「手ぶれ」の影響がなく適切に得られた画像データだけをデコードすることができる。そして、デコード処理の許否判断は、角速度センサ21X,21Yの検出結果に基づき迅速に行なうことができるので、ユーザの操作感を損なうことがなく、また、複雑な補正機構を設ける必要がない。
【0023】
そして、角速度センサ21X,21Yは、加速度センサのように検出結果がセンサ自身の重量によって影響を受ける(即ち、自身が移動することで発生する加速度成分が影響する)ことがないので、CCDエリアセンサ6の移動量をより精度良く検出することができる。
また、制御回路17は、検出された移動量が所定範囲を超えた場合はCCDエリアセンサ6に撮像を再試行させるので、ユーザは、デコード処理が実行されなかった場合に自身の操作で撮像を再試行させる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0024】
更に、制御回路17は、検出された移動量の評価を、露光期間と取込み期間との間におけるブランキングの期間に行うので、評価を行うための時間を余分に確保する必要がなくなる。また、その評価結果により、デコード処理がされない画像データを不要に取り込んでしまうことを防止できる。
【0025】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形が可能である。
受光センサは、その他例えばCMOSイメージセンサなどを用いても良い。
移動量検出センサは、2軸方向について検出が可能な構成であれば1つだけ使用すれば良い。また、角速度センサ21に替えて、移動量の検出精度に問題がない場合は加速度センサを用いても良い。
移動量の評価処理は、必ずしも「ブランキング」の期間に行なう必要はなく、評価処理を行なうための期間を別途設定しても良い。
【0026】
また、露光期間における移動量評価が「NG」であった場合は、ユーザに対して報知を行うと共にその時点で処理を停止し、情報コードの撮像を再試行するどうかはユーザに選択させても良い。
2次元コードに限ることなく、バーコードの読み取りに適用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例であり、(a)〜(c)は図2のフローチャートに従って読取り処理を実行した場合、(d)は比較のため従来の読取装置における一般的な処理の流れを示す図
【図2】情報コード読取装置の制御回路によって実行される制御内容につき、本発明の要旨に係る部分を中心として示すフローチャート
【図3】「露光」,「取込み」,「デコード」の処理フェーズを示すタイミングチャート
【図4】情報コードの一例として、QRコードを示す図
【図5】(a)は情報コード読取装置の縦断側面図、(b)はCCDエリアセンサが搭載されている支持基板の背面図
【図6】情報コード読取装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【符号の説明】
【0028】
図面中、1は情報コード読取装置(光学的情報読取装置)、6はCCDエリアセンサ(受光センサ)、17は制御回路(制御手段,デコード手段)、21X,21Yは角速度センサ(移動量検出センサ)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子を配列してなる受光センサと、
この受光センサの移動量を検出するための移動量検出センサと、
前記受光センサによって受光された画像データについて、デコード処理を行なうデコード手段と、
前記受光センサによって撮像が行なわれる期間に、前記移動量検出センサによって検出された移動量が所定範囲内である場合、前記デコード手段によるデコード処理を許可するように制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動量検出センサによって検出された移動量が前記所定範囲を超えた場合は、前記受光センサに撮像を再試行させることを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動量検出センサによって検出された移動量の評価を、前記受光センサに受光させるための露光期間と、前記受光センサが受光して出力したデータを前記デコード手段が取り込むための取込み期間との間におけるブランキング期間に行うことを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記移動量検出センサは、加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記移動量検出センサは、角速度センサであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
複数の受光素子を配列してなる受光センサによって撮像が行なわれる期間における、当該受光センサ移動量が所定範囲内である場合に、受光センサによって受光された画像データについてデコード処理を許可することを特徴とする光学的情報読取装置の制御方法。
【請求項7】
検出された受光センサの移動量が前記所定範囲を超えた場合は、前記受光センサに撮像を再試行させることを特徴とする請求項6記載の光学的情報読取装置の制御方法。
【請求項8】
前記移動量の評価を、前記受光センサに受光させるための露光期間と、前記受光センサが受光して出力したデータをデコード手段が取り込むための取込み期間との間におけるブランキング期間に行うことを特徴とする請求項6又は7記載の光学的情報読取装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−31603(P2006−31603A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212935(P2004−212935)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】