説明

光学的情報読取装置

【課題】 イメージセンサから出力される画素データ信号に基づいて情報コードの認識に適した画像を誤りなく且つ高速に形成する。
【解決手段】 工場での検査・調整工程において、画像範囲情報取得手段30は、撮像画像において読取対象Rに対応した画像範囲と本体ケースの部分に対応した画像範囲とを識別し、各画像範囲とイメージセンサ16が出力する画素データ信号との対応関係をメモリ29に記憶する。その後のバーコードの読み取り時において、消去制御回路31は、イメージセンサ16から読取対象Rに対応した画像部分の画素データ信号を入力する時には消去制御回路25をそのまま通過させ、本体ケース12に対応した画像部分の画素データ信号を入力する時には、消去制御回路25において画素データ信号をLレベル(黒色)に固定し、その部分の画像を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサから出力される画素データ信号に基づいて画像データを構築し、その画像データから情報コードを読み取る光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的情報読取装置例えばバーコード読取装置は、ケース内にイメージセンサを備えており、ケースに設けられた読取口を介して撮像した画像からバーコードを読み取るようになっている。このとき、ケースの読取口全体を通して見える画像が欠けることなく得られるように、イメージセンサの視野の広さよりも読取口の大きさを小さく構成し、ケース内の一部の領域が視野に入るように光学系が設定されている。その結果、イメージセンサから出力される画素データ信号に基づいて形成される画像には、読取対象の画像のみならず、その両側部分にケース内部の画像も含まれている。特許文献1には、このケース内部の画像の光度に基づいて照明用発光ダイオードの劣化を検出する技術が示されている。
【特許文献1】特開平10−334178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光学的情報読取装置において、イメージセンサから順次出力される各画素のデータ信号(画素データ信号)に基づいて画像を形成し情報コードを読み取る際に、以下に説明する2つの問題がある。
【0004】
(1)画像データからバーコードを読み取る場合、バーコードの両側に所定幅以上のスタートマージンとストップマージンが必要となる。バーコードの認識は、これらのマージンを手掛かりに行われる。図9は、バーコード読取装置の読取機構(光学系)を模式的に示すとともに、イメージセンサに結像する画像、2値化された画素データ信号および消去処理を行った後の画像を対応付けながら示している。読取対象に表示されているバーコードBを含む画像は、結像レンズ2を通してケース1内部に設けられたイメージセンサ3に映される。
【0005】
イメージセンサ3が撮像する画像には、読取口1aを通して見えるバーコードBが含まれているが、その他に照明光を受けた読取口1a付近のケース1の内壁が白く撮像されている(ケース1の内壁の色が白の場合)。その結果、白地に黒で印刷されたバーコードBの認識処理において、白く撮像されたケース1内部の画像がバーコードBのスタートマージンまたはストップマージンと誤認識されてしまう。そこで、マイコンを用いたソフトウェア処理により、撮像された画像のうちケース1内部の画像部分(図9でハッチングを施した部分)を黒レベルに変更する消去処理を行なっている。しかしながら、画像の情報量が多くなると、消去処理に要する時間ひいては読み取り時間が増大してしまう。
【0006】
(2)高速処理を実現するため、イメージセンサ3は、画素データ信号を入力するマイコン等から与えられるクロックに同期して画素データ信号を出力し、マイコンは、画素データ信号のエッジ(白パターンと黒パターンの境界)を割り込み要求信号として、割り込み処理において各エッジ間の画素データ信号のレベル判定およびタイマを用いたエッジ間隔の測定を行う。図10は、この画素データ信号の取り込みに関するタイミングチャートを示している。
【0007】
(a)は正常に取り込まれる場合を示している。マイコンは、時刻t1でイメージセンサ3から出力される画素データ信号の初期レベル(Hレベル:白色に対応)を入力し、続いて時刻t2からクロックの出力を開始して最初のエッジ入力(時刻t3)までの画素データ信号のレベルを初期レベルと同じ白色と判定する。その後も、実際の画素データ信号のレベルを検出することなく、エッジ入力(時刻t4、t5、…)ごとに順次レベルを反転(黒色、白色、…)することによりレベル判定を行う。
【0008】
(b)はレベルが誤判定される場合を示している。時刻t1でイメージセンサ3から出力される画素データ信号が一時的にLレベル(黒色に対応)になっていると、マイコンはそれを初期レベルと誤認識するので、その後レベルがHレベル(白色)に復帰しても、時刻t2から最初のエッジが入力される時刻t3までの画素データ信号のレベルを初期レベルと同じ黒色と誤判定してしまう。一旦レベル判定を誤ると、それ以降の各期間でも全てレベル判定を誤ってしまう。
【0009】
そこで、従来は、バーコードを構成する全てのバーを検出した後にバーの数を計数し、その計数値と正常値とを比較することによりレベルの誤判定を検出していた。しかしながら、これでは上述した第1の問題と同様にソフトウェア処理に要する時間ひいては読み取り時間が増大してしまう。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、イメージセンサから出力される画素データ信号に基づいて情報コードの認識に適した画像を誤りなく且つ高速に形成できる光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した手段によれば、ケース内に収められたイメージセンサは、ケースに設けられた読取口より広い視野となるような結像光学系を有している。製造後の検査・調整工程などにおいて、イメージセンサにより撮像された特定の画像について読取対象に対応した画像範囲とケースの部分に対応した画像範囲とを識別し、これらの各画像範囲とイメージセンサが出力する画素データ信号との対応関係(位置関係)を求めて不揮発性メモリ等に記憶する。
【0012】
信号処理回路は、この記憶された対応関係に基づいて、イメージセンサから出力される一連の画素データ信号のうち読取対象に対応した画像範囲の画素データ信号をそのまま通過させて画像データ形成手段に与え、ケースの部分に対応した画像範囲の画素データ信号を所定レベルに固定した上で画像データ形成手段に与える。これにより、画素データ信号の伝送時に、スタートマージンまたはストップマージンとして誤認定される虞のあるケースの部分に対応した画像の信号が消去(所定レベルに固定)されるので、画像データ形成手段は、入力した画素データ信号をそのまま用いて(つまりソフトウェアによる消去処理を行うことなく直ちに)画像データを構築することができ、画像形成を高速化することができる。
【0013】
請求項2に記載した手段によれば、ゼブラパターン例えば幅狭な黒色のバーと白色のバーが当該バーに垂直な方向に交互に連続的に並んだ構成を持つパターンを撮像し、信号処理回路をそのまま(所定レベルへの固定がなされることなく)通過した画素データ信号を用いて構築した画像におけるゼブラパターンの特徴の有無に基づいて上記対応関係を求める。これにより、ケース内壁面とは明らかに異なる特徴により、確実に上記繰り返し幅に相当する分解能以下の誤差で上記対応する位置関係を求めることができる。
【0014】
請求項3に記載した手段によれば、画像データ形成手段は、はじめにイメージセンサから出力される画素データ信号の初期レベルを入力し、その後クロックに同期してイメージセンサから出力される画素データ信号の入力を開始してそのエッジを順次検出する。そして、エッジ検出ごとに、画素データ信号の入力開始時または前回のエッジ検出時から今回のエッジ検出時までの期間に入力した画素データ信号のレベルを初期レベルを基に順次反転させながら求め、そのレベルを求めた画素データ信号に基づいて画像データを構築する。この方法によれば、画素データ信号の高速伝送が可能となる。
【0015】
イメージセンサから出力される画素データ信号は、信号処理回路を介して画像データ形成手段に入力される。信号処理回路は、少なくとも画素データ信号の初期レベルの入力時からクロックに同期した画素データ信号の入力開始時までの期間において、イメージセンサから出力される画素データ信号を所定レベルに固定するので、初期レベル入力時と画素データ信号の入力開始時とで必ずレベルが一致し、両者のレベル不一致によるレベルの誤判定を防止することができる。これにより、ソフトウェアによる確認処理が不要となり(または軽減でき)、情報コードの認識に用いる画像を誤りなく且つ高速に形成することができる。
【0016】
請求項4に記載した手段によれば、イメージセンサは、読取口を有するケース内に収められ、その収容状態で読取口より広い視野となるような結像光学系を有している。を有している。この場合、信号処理回路は、上述した画素データ信号の初期レベルの入力時からクロックに同期した画素データ信号の入力開始時までの期間に加え、さらにイメージセンサから出力される画素データ信号のうちケースの部分に対応した画像範囲の画素データ信号についても所定レベルに固定する。これにより、画素データ信号の伝送時に、スタートマージンまたはストップマージンとして誤認定される虞のあるケースの部分に対応した画像の信号が消去され、画像形成の一層の高速化が図れる。
【0017】
請求項5に記載した手段によれば、イメージセンサから画像データ形成手段の入力端子に至る入力ラインにANDゲートを設け、出力ポートから出力される消去制御信号により上記ANDゲートを開閉する。これにより、画像データ形成手段の入力端子には、画素データ信号のレベル固定期間においてLレベルが入力され、画素データ信号の通過期間においてイメージセンサからの画素データ信号がそのまま入力される。
【0018】
請求項6に記載した手段によれば、イメージセンサと画像データ形成手段の入力端子との間にスイッチ回路が設けられている。画素データ信号の通過期間では、スイッチ回路が閉状態とされるので、イメージセンサから画像データ形成手段に画素データ信号がそのまま伝送される。一方、画素データ信号のレベル固定期間では、スイッチ回路が開状態とされるので、画像データ形成手段の入力端子には抵抗を介して所定レベルが与えられる。
【0019】
請求項7に記載した手段によれば、入出力ポートは、画素データ信号の通過期間において入力ポートに設定されるので、イメージセンサから画像データ形成手段の入力端子に至る入力ラインから電気的に切り離される。一方、上記入出力ポートは、画素データ信号のレベル固定期間において出力ポートに設定され、所定レベルを持つ消去制御信号を出力するので、上記入力ラインのレベルを電気的に所定レベルに固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の光学的情報読取装置を、バーコード(一次元コード)を読み取るハンディタイプのバーコード読取装置(ハンディターミナル)に適用した第1の実施形態について、図1ないし図5を参照しながら説明する。
【0021】
図3は、バーコード読取装置11の外観を示している。バーコード読取装置11は、ユーザが片手で持って操作可能な大きさの縦長形状をなす本体ケース12内の先端側に、ラベル等の読取対象Rに記録されたバーコードBを撮像するための読取機構を配設して構成されている。本体ケース12の先端面には、横長の矩形状をなし透光性を有する読取口12aが設けられている。本体ケース12の上面部には、表示部13やキー操作部14が設けられており、本体ケース12の左右の側面部には、読取指示用のトリガキー15が設けられている。
【0022】
図1は、バーコード読取装置11の電気的構成を示すブロック図である。上記読取機構は、イメージセンサ16、結像レンズ17、照明部18、マーカ光照射部19等を備えて構成されている。イメージセンサ16は、例えばCCDラインセンサからなり、本体ケース12内に上記読取口12aを向いて配設されている。結像レンズ17は、図示しない鏡筒内に複数枚のレンズを配設して構成されており、イメージセンサ16と読取口12aとの間に配設されている。
【0023】
照明部18は、照明光源となる複数個のLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光および拡散する照明用レンズとを、結像レンズ17の周囲部に、読取口12aに向けて複数組配設することにより構成されている。この照明部18により、本体ケース12の読取口12aを通して読取対象R(バーコードB)に照明光が照射される。また、照明部18からの照明光は広がりを持つため、本体ケース12の読取口12a付近の内壁部分にも照射される。バーコードBからの反射光は読取口12aを通して入射され、結像レンズ17を通してイメージセンサ16の受光面に結像され、バーコードBの画像が撮影されるようになっている。イメージセンサ16の撮像範囲(結像光学系視野)は、読取口12aよりも広く設定されている。
【0024】
図1に示すように、バーコード読取装置11の制御回路は、マイクロコンピュータ(マイコン)20を主体として構成されている。マイコン20は、上述したキー操作部14およびトリガキー15から操作信号を入力するとともに、表示部13に対し表示データを出力するようになっている。また、外部インタフェース部21を介して外部機器との間で通信を行うことも可能となっている。
【0025】
イメージセンサ16は、クロック発生回路22から出力されるクロックに同期して、各画素のデータ信号(以下、画素データ信号という)を順次出力するようになっている。この画素データ信号は、増幅回路23で増幅され、2値化回路24で2値化された後、後述する消去処理回路25(図2参照)を介してマイコン20に入力されるようになっている。また、マイコン20は、照明駆動回路26を介して上記照明部18(複数個のLED)を制御し、マーカ駆動回路27を介して上記マーカ光照射部19を制御するようになっている。
【0026】
マイコン20は、本発明でいう画像データ形成手段に相当し、消去処理回路25を介して入力した画素データ信号に基づいて画像データを構築し、その画像データからバーコードBを判別し、デコードする機能を有している。
【0027】
マイコン20は、CPU、RAM、ROM、電気的書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROMまたはフラッシュメモリ)、入力ポート、出力ポート、入出力ポート、タイマなどを備えている。ここで、画像メモリ28は、イメージセンサ16から出力された画素データ信号に基づいて構築される画像データを記憶するためのメモリで、メモリ29は、後述する画像範囲情報を記憶するEEPROMである。
【0028】
マイコン20内に示した画像範囲情報取得手段30は、CPUにより実行される画像範囲情報取得処理(後述)を機能ブロックにより示したものである。また、消去制御回路31は、出力ポート32を介して消去制御信号を出力するとともに、クロック発生回路22に対しクロックの発生を制御するクロック制御信号を出力するようになっている。これら消去制御回路31と出力ポート32およびマイコン20の外部に設けられた消去処理回路25は、信号処理回路33を構成している。消去制御信号は、後述する画素データ信号のレベル固定期間においてLレベルとなり、画素データ信号の通過期間においてHレベルとなる。
【0029】
図2は、信号処理回路33を構成する消去処理回路25を示している。
図2(a)に示す消去処理回路25aは、2値化回路24から出力される画素データ信号とマイコン20の出力ポート32から出力される消去制御信号を入力とするANDゲート34を備えており、そのANDゲート34の出力信号がマイコン20に入力されている。
【0030】
図2(b)に示す消去処理回路25bは、2値化回路24とマイコン20の入力端子との間にスイッチ35を備えている。このスイッチ35(スイッチ回路に相当)は、出力ポート32から出力される消去制御信号がHレベルの時にオンとなり、Lレベルの時にオフとなる。上記マイコン20の入力端子とグランドGND(電圧ラインに相当)との間には抵抗36が接続されている。
【0031】
図2(c)に示す消去処理回路25cは、2値化回路24からマイコン20の入力端子に至る入力ラインに抵抗37を備えており、マイコン20の入出力ポート38と上記入力端子が直接接続されている。この図2(c)に示す構成の場合には、マイコン20において出力ポート32に替えて入出力ポート38が用いられている。入出力ポート38は、画素データ信号のレベル固定期間において出力ポートに切り替えられてLレベルを出力し、画素データ信号の通過期間において入力インピーダンスが高インピーダンスとなる入力ポートに切り替えられる。
【0032】
なお、図1に示すように、バーコード読取装置11は、バッテリ39と、該バッテリ39の電圧に基づいて制御用電源電圧を生成する電源回路40を備えている。この制御用電源電圧は、マイコン20をはじめとして上述した各回路に供給されている。
【0033】
次に、本実施形態の作用について図4および図5も参照しながら説明する。
バーコード読取装置11によりバーコードBを読み取る場合、ユーザは、本体ケース12を読取対象Rから適当な距離だけ離した状態で、横長のバーコードBが記録された読取対象Rに対して読取口12aをほぼ平行となるようにセットする。この場合、マーカ光がマーカ光照射部19から読取対象Rに照射されるので、ユーザは、読取口12aと読取対象Rとの位置合わせを行うことができる。
【0034】
この状態で、ユーザがトリガキー15をオン操作すると、マーカ光が消灯されるとともに照明部18のLEDが点灯する。照明光は、読取口12aを通して読取対象R(バーコードB)に照射されるが、照明光の一部は、読取口12a付近の本体ケース12の内壁部分にも照射される。バーコードBからの反射光は、読取口12aを通して入射されて結像レンズ17を通してイメージセンサ16の受光面に結像される。
【0035】
マイコン20がクロック発生回路22に対しクロックの出力を指令するクロック制御信号を出力すると、イメージセンサ16はクロックに同期して画素データ信号を順次出力する。この画素データ信号は、増幅回路23、2値化回路24および消去制御回路25を介してマイコン20に入力され、マイコン20は、入力される画素データ信号のエッジ(明暗が変化する点)を割り込み要求信号として、割り込み処理において各エッジ間の画素データ信号のレベル判定およびタイマを用いたエッジ間隔の測定を行う。この画素データ信号に基づく画像データが画像メモリ28に記憶される。
【0036】
図4は、バーコード読取装置11の読取機構(光学系)を模式的に示すとともに、イメージセンサ16に結像する画像、2値化された画素データ信号、消去制御信号、消去処理回路25の出力信号および画像メモリ28に形成される画像を位置関係において対応付けながら示している。画素データ信号のHレベルは白色に対応し、Lレベルは黒色に対応している。既に説明したように、イメージセンサ16が読取口12aを通して撮像する画像には、バーコードBを含む読取対象Rの画像の他に、本体ケース12の読取口12a付近が照明により白く撮像されている。
【0037】
そこで、工場での検査・調整工程において、図5に示すように幅狭な黒色のバーと白色のバーがバーに垂直な方向に交互に連続的に並んだ構成を持つゼブラパターンZを撮像し、その画像データを画像メモリ28に格納する。このとき、出力ポート32はHレベルの消去制御信号を出力しており(図2(c)では入出力ポート38を入力ポートに切り換えた状態)、2値化回路24から出力される画素データ信号はそのままマイコン20に入力されている。
【0038】
マイコン20は、画像範囲情報取得手段30として機能し、撮像画像におけるゼブラパターンZの特徴の有無に基づいて読取対象Rに対応した画像範囲(図5に示すA2)と本体ケース12の部分に対応した画像範囲(図5に示すA1、A3)とを識別し、これらの各画像範囲A1〜A3とイメージセンサ16が出力する画素データ信号との対応関係、すなわちどの画素が読取対象Rに対応した画像を捉え、どの画素が本体ケース12の部分に対応した画像を捉えているかという位置関係(画像範囲情報)を求める。求めた画像範囲情報はメモリ29に記憶される。
【0039】
この画像範囲情報の設定以降のバーコードBの読み取り時において、マイコン20がイメージセンサ16から画素データ信号を入力する時、消去制御回路31は、クロックの発生とともに出力ポート32(または入出力ポート38)を介して消去制御信号を出力する。すなわち、メモリ29に記憶された画像範囲情報に基づいて、読取対象Rに対応した画像部分の画素データ信号を入力する時には消去制御信号をHレベルとし(または入出力ポート38を入力ポートに切り換え)、本体ケース12に対応した画像部分の画素データ信号を入力する時には消去制御信号をLレベルとする。イメージセンサ16により撮像された画像の両端部分が本体ケース12に対応した画像となるため、一連の画素データ信号のうち先頭の部分と最後の部分に対応して消去制御信号がLレベルとなる。
【0040】
図2に示す消去制御回路25は、消去制御信号がHレベルの時(または入出力ポート38が入力ポートに切り換えられている時)、2値化回路24から出力される画素データ信号をそのまま通過させる。一方、消去制御信号がLレベルの時、2値化回路24から出力される画素データ信号をLレベル(黒色)に固定する。図4においてハッチングを施した部分が、黒色に変更された(消去された)画像部分である。
【0041】
このように、本実施形態によればイメージセンサ16により撮像された画像のうち本体ケース12に対応した画像部分を黒色に消去するので、当該部分がバーコードBのスタートマージンまたはストップマージンとして誤認識されることがない。この消去処理は、画像メモリ28に格納された画像データに対して行われるのではなく、イメージセンサ16からマイコン20への画素データ信号の伝送時に信号処理回路33によって電気的に行われる。
【0042】
従って、マイコン20は、入力した画素データ信号をそのまま用いてすなわちソフトウェアによる消去処理を行うことなく直ちに画像メモリ28に画像データを構築することができ、画像の形成を高速化することができる。その結果、バーコードBの読み取り時間を短縮でき、バーコード読取装置11の使い勝手が向上する。また、消去処理を行う信号処理回路33のうち新たに追加が必要となる消去制御回路25は、図2に示すように極めて構成が簡単であり、回路基板やコストの増大を極力抑えることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明をバーコード読取装置(ハンディターミナル)に適用した第2の実施形態について図6および図7を参照しながら説明する。
図6は、バーコード読取装置の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態のバーコード読取装置41は、第1の実施形態のバーコード読取装置11から画像範囲情報取得手段30とメモリ29を除いた構成となっている。バーコード読取装置41の外観は図3に示したものと同様であり、消去処理回路25の構成は図2に示したとおりである。また、以下においては消去処理回路25が図2(a)に示すものである場合を例に説明するが、図2(b)、(c)に示す消去処理回路25b、25cについても同様である。
【0044】
上述したように、高速処理を実現するため、イメージセンサ16は、クロックに同期して画素データ信号を出力し、マイコン20は、入力される画素データ信号のエッジを割り込み要求信号として画素データ信号のレベル判定およびタイマを用いたエッジ間隔の測定を行う。
【0045】
図7は、画素データ信号の取り込みに関するタイミングチャートを示している。波形は、上から順にクロック、イメージセンサ16から出力される画素データ信号、消去制御信号、消去処理回路25を介してマイコン20に入力される画素データ信号、マイコン20に対する割り込み制御信号および画像メモリ28に書き込まれる画像データを示している。なお、図10に示すタイミングと同じタイミングには、同じ時刻表記t1、t2、t3、…を用いている。
【0046】
マイコン20は、時刻t1でイメージセンサ16から出力される画素データ信号の初期レベルを入力するが、それよりも前の時刻taにおいて出力ポート32を通してLレベルの消去制御信号を出力する。その後クロックの出力を開始して画素データ信号の入力を開始する時刻t2よりも後の時刻tcまでの期間、消去制御信号をLレベルに保持する。これにより、時刻taからtcまでの期間においてマイコン20に入力される画素データ信号はLレベルに固定され、初期レベルは必ずLレベル(黒色)になる。
【0047】
マイコン20は、時刻t2から最初のエッジ入力(時刻tc)までの画素データ信号のレベルを初期レベルと同じ黒色と判定する。その後も、実際の画素データ信号のレベルを検出することなく、エッジ入力(時刻t3、t4、t5、…)ごとに順次レベルを反転(白色、黒色、白色、…)することによりレベル判定を行う。
【0048】
このようにすると、初期レベルの入力時(時刻t1)と画素データ信号の入力開始時(時刻t2)とで必ずレベルが一致する(本実施形態ではLレベル:黒色)。その結果、両時点でのレベル不一致によるレベルの誤判定(図10(b)参照)を防止することができる。マイコン20は、入力した画素データ信号をそのまま用いてすなわちソフトウェアによるレベル固定処理を行うことなく直ちに画像メモリ28に画像データを構築することができ、画像の形成を高速化することができる。
【0049】
なお、時刻tcまでの期間ではマイコン20に入力する画素データ信号を強制的にLレベルにしているため、入力開始時刻t2から時刻tcまでの期間においては、実際にイメージセンサ16から出力される画素データ信号とマイコン20が入力する画素データ信号のレベルが異なる場合がある。しかしながら、第1の実施形態で説明したように、上記期間を含む画素データ信号の先頭部分の画像は、読取対象Rに対応した画像ではなく本体ケース12の内壁部分に対応した画像であるため、バーコードBの認識に用いられることはなく認識上の影響はない。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせてなる第3の実施形態について図8を参照しながら説明する。
本実施形態のバーコード読取装置の構成は図1ないし図3に示す通りである。図8は、画素データ信号の取り込みに関するタイミングチャートを示しており、図7に示すタイミングと対応するタイミングには、同じ時刻表記ta、tb、tc、t1、t2、t3、…を用いている。
【0051】
消去制御回路31(図1参照)は、初期レベルの入力時刻t1より前の時刻taで消去制御信号をLレベルとした後、本体ケース12(図3、図4参照)に対応した画像部分の画素データ信号を入力する期間そのLレベルを保持する。そして、読取対象Rに対応した画像部分の画素データ信号の入力を開始する時刻tcにおいて消去制御信号をLレベルからHレベルにする。その後、読取対象Rに対応した画像部分の画素データ信号を入力する期間そのHレベルを保持する。
【0052】
この制御によれば、第2の実施形態と同様に、初期レベルの入力時(時刻t1)と画素データ信号の入力開始時(時刻t2)とで必ずレベルが一致し、両時点でのレベル不一致によるレベルの誤判定を防止することができる。また、第1の実施形態と同様に、画素データ信号の伝送時に、イメージセンサ16により撮像された画像のうち本体ケース12に対応した画像部分が消去されるので、当該部分がバーコードBのスタートマージンまたはストップマージンとして誤認識されることがない。そして、入力した画素データ信号をそのまま用いてすなわちソフトウェアによる消去処理や確認処理を行うことなく適正な画像データを構築することができ、画像の形成を高速化することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
上記各実施形態ではバーコードBの読み取りを例に説明したが、本発明の光学的情報読取装置は、バーコード(一次元コード)の他に、QRコード等の二次元コードなど多数種類の情報コードの読み取りにも適用できる。
【0054】
図2(a)に示す回路において、AND回路(ANDゲート34)は、NAND、NOR、OR、XORなどを用いた他の論理回路(ゲート)で代替することができる。
図2(b)に示す回路において、スイッチ回路(スイッチ35)は、FETなどを用いた半導体スイッチ回路とすることができる。
図2(c)に示す回路において、画素データ信号が入力されるマイコン20の端子は、所定レベルに固定する時以外はハイインピーダンスになっていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態であるバーコード読取装置の電気的構成を示すブロック図
【図2】消去処理回路の3つの構成例を示す図
【図3】バーコード読取装置の外観図
【図4】バーコード読取装置の読取機構、並びに、結像画像、2値化された画素データ信号、消去制御信号、消去処理回路の出力信号および形成画像を示す図
【図5】画像範囲情報の求め方の説明図
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図7】画素データ信号の取り込みに関するタイミングチャート
【図8】本発明の第3の実施形態を示す図7相当図
【図9】従来技術を示す図4相当図
【図10】(a)正常に取り込まれる場合および(b)レベルが誤判定される場合を分けて示す図7相当図
【符号の説明】
【0056】
図面中、11、41はバーコード読取装置(光学的情報読取装置)、12は本体ケース(ケース)、12aは読取口、16はイメージセンサ、20はマイクロコンピュータ(画像データ形成手段)、30は画像範囲情報取得手段、32は出力ポート、33は信号処理回路、34はANDゲート、35はスイッチ(スイッチ回路)、36は抵抗、38は入出力ポートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取口を有するケース内に収められ、その収容状態で前記読取口より広い視野を有する結像光学系を備えたイメージセンサを具備し、このイメージセンサにより撮像された画像から読取対象に表示されたバーコードを読み取る光学的情報読取装置において、
前記イメージセンサにより撮像された特定の画像について前記読取対象に対応した画像範囲と前記ケースの部分に対応した画像範囲とを識別し、これらの各画像範囲と前記イメージセンサが出力する画素データ信号との対応関係を求めて記憶する画像範囲情報取得手段と、
この画像範囲情報取得手段により記憶された前記対応関係に基づいて、前記イメージセンサから出力される一連の画素データ信号のうち前記読取対象に対応した画像範囲の画素データ信号をそのまま通過させ、前記ケースの部分に対応した画像範囲の画素データ信号を所定レベルに固定する信号処理回路と、
前記イメージセンサから前記信号処理回路を介して入力した画素データ信号に基づいて画像データを構築する画像データ形成手段とを備えていることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記画像範囲情報取得手段は、前記イメージセンサによりゼブラパターンが撮像された状態で、前記信号処理回路をそのまま通過した画素データ信号を用いて構築した画像における前記ゼブラパターンの特徴の有無に基づいて、前記各画像範囲と画素データ信号との対応関係を求めることを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
クロックに同期して画素データ信号を出力するイメージセンサと、
このイメージセンサから出力される画素データ信号の初期レベルを入力した後、前記クロックに同期して前記イメージセンサから出力される画素データ信号のエッジを順次検出し、そのエッジ検出ごとに該エッジ検出までの期間に入力した画素データ信号のレベルを前記初期レベルを基に順次反転させながら求め、そのレベルを求めた画素データ信号に基づいて画像データを構築する画像データ形成手段とを備え、
この構築された画像データから読取対象に表示された情報コードを読み取る光学的情報読取装置において、
少なくとも、前記画像データ形成手段による画素データ信号の初期レベルの入力時から前記クロックに同期した画素データ信号の入力開始時までの期間において、前記イメージセンサから出力される画素データ信号を所定レベルに固定する信号処理回路を備え、
前記画像データ形成手段は、前記イメージセンサから前記信号処理回路を介して前記画素データ信号を入力するように構成されていることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記イメージセンサは、読取口を有するケース内に収められ、その収容状態で前記読取口より広い視野を有する結像光学系を備え、
前記イメージセンサにより撮像された特定の画像について前記読取対象に対応した画像範囲と前記ケースの部分に対応した画像範囲とを識別し、これらの各画像範囲と前記イメージセンサが出力する画素データ信号との対応関係を求めて記憶する画像範囲情報取得手段を備え、
前記信号処理回路は、前記画像範囲情報取得手段により記憶された前記対応関係に基づいて、前記イメージセンサから出力される画素データ信号のうち前記ケースの部分に対応した画像範囲の画素データ信号についても前記所定レベルに固定するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記信号処理回路は、
前記画素データ信号のレベル固定期間においてLレベルとなり、前記画素データ信号の通過期間においてHレベルとなる消去制御信号を出力する出力ポートと、
前記イメージセンサから出力される画素データ信号と前記出力ポートから出力される消去制御信号を入力とするANDゲートとを備え、
このANDゲートの出力端子が前記画像データ形成手段の入力端子に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記信号処理回路は、
前記イメージセンサと前記画像データ形成手段の入力端子との間に介在し消去制御信号のレベルに応じて開閉動作するスイッチ回路と、
前記画素データ信号のレベル固定期間において前記スイッチ回路を開状態に制御し、前記画素データ信号の通過期間において前記スイッチ回路を閉状態に制御する消去制御信号を出力する出力ポートと、
前記画像データ形成手段の入力端子と前記所定レベルに対応した電圧ラインとの間に介在する抵抗とを備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記信号処理回路は、
前記画素データ信号のレベル固定期間において前記所定レベルを持つ消去制御信号を出力し、前記画素データ信号の通過期間において信号入力状態となる入出力ポートを備え、
前記イメージセンサから前記画像データ形成手段の入力端子に至る入力ラインが前記入出力ポートに接続されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の光学的情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−79783(P2007−79783A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265218(P2005−265218)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】