説明

光学的情報読取装置

【課題】情報コードからの反射光に鏡面反射光が入り込んだ状態をより確実に検出し、誤読を回避する光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】光学的情報読取装置1は、バーコードBからの反射光を受光し、情報コードの各パターンごとに反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光センサ26と、この受光センサ26から出力される電気信号の信号波形を閾値と比較した結果に基づいて信号波形を明色領域と暗色領域とに区分けする二値化回路33とを備え、二値化回路33により区分けされた明色領域及び暗色領域に基づいてデコード処理を行う。信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号の変化量、又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値を超えているか否かを判断する判断手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在において提供されている光学的情報読取装置では、明色パターンと暗色パターンとからなる情報コード(バーコード等)から反射光を受光し、その反射光を解析することでコード情報を読み取る構成のものが一般的である。この種の光学的情報読取装置では、例えば情報コードからの反射光をラインセンサやエリアセンサなどの受光センサで受光し、この受光センサからの出力波形を閾値と比較することで明色パターンに対応する部分(明色領域)と暗色パターンに対応する部分(暗色領域)を特定している。そして、それら明色領域と暗色領域の配列に基づいてデコード処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような光学的情報読取装置では、情報コードを受光センサで受光して画像データを得る際に、装置外からの外乱光(屋内の照明光源や屋外の太陽光など)や装置自身の照明光などによって鏡面反射が生じる場合がある。この鏡面反射光がデコードに及ぼす影響は、装置の配置(特に読み取りの向き)、露光条件、信号の増幅度合いなどによって変化する可能性が高く、例えば、情報コードからの反射光の中に強い鏡面反射光が混ざり込んでしまうと、特に暗色パターンからの反射光が通常の光量(即ち鏡面反射が生じていないときの光量)よりも大幅に増加してしまい、明色パターンと判断されるレベルに達してしまうことになる。このような現象が生じると、本来的に暗色パターンとして認識されるべき位置が明色パターンとして認識されてしまい、桁落ちや誤読が発生して正確な解読が阻害される虞がある。
【0005】
一方、光学的情報読取装置において読み取りの精度を向上しようとする技術として、例えば特許文献1のようなものも提供されている。特許文献1のバーコードリーダでは、CCD(12)において、複数本のラインセンサ(10a、10b、10c)が設けられており、CCD駆動回路(14)によりラインセンサ毎に異なる露光時間を設定している。そして、このように異なる感度で設定されたラインセンサ毎に画像データが生成され、各画像データが順次解読されるようになっている。
【0006】
上記技術によれば、所望の感度の画像データを選択することができるため、適切な感度のデータを得やすくなるが、上述の鏡面反射光の問題は解消することが難しい。特に、鏡面反射光の光量は暗色パターンで生じる反射光の通常の光量と比較して格段に大きいレベルであるため、感度を2〜3段階に設定しても、暗色パターンがかき消される可能性が高い。そして、このような理由により桁落ちや誤読が発生しまった場合に、迅速かつ適切な対応をとり難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、情報コードからの反射光に鏡面反射光が入り込んだ状態をより確実に検出することができ、誤読回避のための適切な対応をとりやすい光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
明色パターンと暗色パターンとが配列されてなる情報コードを読み取り可能な光学的情報読取装置であって、
前記情報コードからの反射光を受光し、前記情報コードの各パターンごとに前記反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光手段と、
前記受光手段により出力される前記電気信号の信号波形を閾値と比較すると共に、その比較に基づいて前記信号波形を明色領域と暗色領域とに区分けする二値化手段と、
前記二値化手段により区分けされた前記明色領域及び前記暗色領域に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
前記信号波形に含まれる前記暗色パターンに対応した複数の前記電気信号の変化量、又は前記明色パターンに対応した複数の前記電気信号の変化量が閾値を超えているか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号の変化量、又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値を超えているか否かを判断する判断手段を備えている。
このように暗色パターンに対応した複数の電気信号、又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量を閾値と比較しているため、予め用意した基準(閾値)に照らして変化量が妥当であるか否かを把握することできる。そして、変化量が異常な状態(閾値を超える状態)となったときには、この状態を確実に検出し、誤読回避に役立てることができる。
例えば、情報コードの一部がスポット的に鏡面反射するような撮像状態のときには、鏡面反射部分の受光波形が想定される正常な波形と大きく異なることになるため、解読時に誤読が生じる懸念がある。しかしながら、本発明では、このような鏡面反射が生じているか否かを電気信号の変化量に基づいて適切に把握することができ、その検出結果を誤読回避に役立てることができる。特に、鏡面反射が生じている場合、受光波形において鏡面反射部分の受光量が局所的に大きくなるため、このような鏡面反射が生じていない場合と比較すると、暗色パターン又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が大きくなる可能性が大きい。従って、本発明のように暗色パターン又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量を閾値と比較する方法を用いれば、情報コードのコード画像に鏡面反射部分が含まれたときにその状態を確実に把握することができ、原因不明のまま誤読されてしまうといった事態を回避し易くなる。
【0010】
請求項2の発明において、デコード手段は、判断手段により前記変化量が閾値を超えていると判断された場合に、当該変化量の判断元となる信号波形に対するデコード処理を中止している。
取得された信号波形において、暗色パターンに対応した複数の電気信号、又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値を超えている場合、当該信号波形は異常部分(鏡面反射部分等)を含んでいる可能性が高く、この信号波形に対してそのままデコード処理を行うと誤読が生じる虞がある。本発明では、上記のような場合に当該信号波形(変化量の判断元となる信号波形)に対するデコード処理を中止しているため、鏡面反射等に起因する誤読を効果的に防止することができる。
【0011】
請求項3の発明では、判断手段により変化量が閾値を超えていると判断された場合に、受光手段での露光時間を、当該変化量の判断元となる信号波形を取得したときの前回時間から変更する露光制御手段が設けられている。そして、デコード手段は、判断手段により変化量が閾値を超えていると判断された場合に、受光手段での露光時間が前回時間から変更された後に得られた信号波形に基づいてデコード処理を再実行している。
このように、変化量が閾値を超えていると判断され、鏡面反射等が生じている可能性が高い場合に露光時間を変更して再び受光波形を取得すれば、露光環境の変化及び時間経過に起因して鏡面反射が低減或いは除去されている可能性が高まり、このように再取得された受光波形に基づいてデコード処理を再実行すれば、正確なデコード結果が得られる可能性を高めることができる。
【0012】
請求項4の発明では、判断手段により変化量が閾値を超えていると判断された場合に報知処理を行う報知手段が設けられている。
この構成によれば、変化量が閾値を超えていると判断され、鏡面反射等が生じている可能性が高い場合にその旨をユーザに知らしめることができる。従って、ユーザはこのような状態を迅速に把握して適切な対応をとりやすくなる。
【0013】
請求項5の発明では、判断手段は、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号、又は明色パターンに対応した複数の電気信号のいずれかにおいて、少なくともN番目の電気信号のピークレベルとN−1番目の電気信号のピークレベルとの差が所定値以上であるか否かを判断することにより、変化量が閾値を超えているか否かを判断している。
このように、明色パターン又は暗色パターンの電気信号において、直近の信号同士を比較して変化量を求め、この変化量を閾値と対比すれば、局所的に大きな受光量が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の内部構成を概略的に説明する説明図である。
【図2】図2は、図1の光学的情報読取装置の電気的構成について概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、図1の光学的情報読取装置で行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】図4は、受光センサによるバーコードの撮像について概念的に説明する説明図である。
【図5】図5(A)は、受光センサからの正常な出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図であり、図5(B)は鏡面反射が生じているときの受光センサからの出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。
【図6】図6は、図5(B)の受光波形の一部を拡大して説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図面を参照しつつ説明する。
(全体構成)
まず、図1、図2等を参照し、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の全体構成について概説する。なお、図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の内部構成を概略的に説明する説明図である。また、図2は、図1の光学的情報読取装置の電気的構成について概略的に例示するブロック図である。
【0016】
図1、図2に示す光学的情報読取装置1は、バーコード等の情報コードを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、図1に示すように、ケース2によって外郭が構成され、このケース2の内部に各種電子部品が収容された構成をなしている。この光学的情報読取装置1には、主として、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等の光学系と、増幅回路31、二値化回路33、A/D変換回路34、制御回路40、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系などが設けられている。
【0017】
光学系は、照明光源20、受光センサ26、光学フィルタ28、結像レンズ27等から構成されている。
照明光源20は、例えば、赤色のLEDと、このLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等を備え、赤色の照明光Lfを照射する構成をなしている。本実施形態では、読取口3の近くにおいて受光の妨げにならない位置に照明光源20が設けられており、ケースに形成された読取口3を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rとしては、例えば、樹脂材料、金属材料、紙等の様々な物体などが挙げられ、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、このような読取対象物Rにおいて、印刷、ダイレクトマーキングなどによる加工、或いは表示装置による表示等によって示された情報コードを読み取るように構成されている。
【0018】
なお、以下の説明では、情報コードとしてバーコードBを例示して説明する。このバーコードBは、明色パターンとしてのスペースSpと暗色パターンとしてのバーBaとが所定方向に並び且つそれらが交互に配置されてなるものであり、各スペースSpやバーBaの長手方向は、その所定方向と直交する方向となっている。
【0019】
受光センサ26は、読取対象物RやバーコードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサによって構成されている。この受光センサ26は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光面26aで受光し得るように基板10(図1)に実装されている。また、受光センサ26は、制御回路40から設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が入力される構成をなしており、制御回路40からの各パルスの入力と同期させて各受光素子の信号が順番に出力される構成となっている。なお、受光センサ26は、「受光手段」の一例に相当し、バーコードBからの反射光を受光し、バーコードBの各パターンごと(即ち、各バー毎、各スペース毎)に反射光の強度に応じた電気信号を出力するように機能している。
【0020】
なお、以下の説明では、受光センサ26がラインセンサとして構成される例を代表例として説明する。この代表例では、例えば、受光センサ26の各受光素子において、受光量が大きいほど低い電位の受光信号が出力されるようになっている。
【0021】
光学フィルタ28は、照明光Lfに対応する所定周波数帯の光を通過させ、当該所定周波数帯以外の光を抑制する機能を有している。また、結像レンズ27は、ケースに形成された読取口3に入射する反射光Lrを集光し、受光センサ26の受光面26aにバーコードBのコード画像を結像するように構成されている。
【0022】
マイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40及びメモリ(図示略)を中心として構成され、前述した光学系によって撮像されたバーコードBの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。なお、上記メモリ(図示略)は、半導体メモリ装置であり、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリのうちのRAMには、画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域などが確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源20、受光センサ26等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0023】
制御回路40は、光学的情報読取装置1全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるものであり、情報処理機能を有している。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)が接続されており、本実施形態の場合、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。また、通信インタフェース48には、光学的情報読取装置1の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどを接続できるようになっている。
【0024】
増幅回路31は、例えば公知の増幅回路によって構成されており、受光センサ26の出力側に設けられ、受光センサ26から出力される受光信号を入力信号として、この入力信号を増幅した信号を出力するように構成されている。なお、増幅回路31内又はこれとは別回路としてローパスフィルタ回路なども設けられている。
【0025】
二値化回路33は、受光センサ26における複数の受光素子からの信号波形を二値化する機能を有しており、より詳しくは増幅回路31から出力される増幅信号を二値データに変換するように機能している。この二値化回路は、例えば、増幅回路31からの出力信号を設定された閾値と比較し、閾値以上の場合にはHレベル信号を出力し、閾値未満の場合にはLレベル信号を出力するようになっている。なお、二値化回路33から出力される信号は、バーコードBのパターンデータとして、制御回路40設けられたメモリ、又は制御回路40に接続されたメモリ(図示略)に蓄積されるようになっている。
本実施形態では、二値化回路33が「二値化手段」の一例に相当し、受光センサ26から出力される電気信号の信号波形を閾値と比較すると共に、その比較に基づいて信号波形を明色領域と暗色領域とに区分けするように機能する。
【0026】
A/D変換回路34は、二値化回路33によって二値化される前の信号波形(即ち、増幅回路31から出力された信号波形)をデジタルデータに変換し、制御回路40に出力している。なお、A/D変換回路34は、制御回路40を主体とするマイクロコンピュータの一部として構成されていてもよく、別部品として構成されていてもよい。
【0027】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、商用電源或いは電池などから供給される電力に基づいて電源電圧を発生させる電源回路なども設けられている。なお、図1では、電源回路や電池等については省略して示している。
【0028】
(読取処理)
次に、本実施形態に係る光学的情報読取装置1で行われる読取処理について図3〜図5等を参照して説明する。図3は、図1の光学的情報読取装置で行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。図4は、受光センサによるバーコードの撮像について概念的に説明する説明図である。図5(A)は、受光センサからの正常な出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図であり、図5(B)は鏡面反射が生じているときの受光センサからの出力信号(受光波形)を概念的に説明する説明図である。
【0029】
図3に示す読取処理は、例えば電源投入、或いは、外部装置(外部コンピュータ等)からの指示等をトリガとして制御回路40によって実行されるものであり、まず、露光処理を行う(S1)。この処理では、照明光源20を点灯しつつ受光センサ26を駆動しており、受光センサ26は、例えば図4のように、バーコードBの各バーと交差する方向のライン領域AR1を撮像する。このときの受光センサ26の露光時間は予め定めら設定値となるように制御される。例えば、図3の処理開始直後はデフォルトの設定値で制御され、S5の処理の後には、S5で設定された設定値に制御されるようになっている。
【0030】
露光時間が設定値となるように露光処理(S1)がなされた後には、受光センサ26から受光信号を出力する(S2)。この処理は、受光センサ26を構成する受光素子毎に、S1の露光処理で蓄積された電荷に応じた信号を出力する処理であり、一端側の受光素子から順番に受光信号を出力する。
【0031】
受光センサ26では、例えば数百或いは数千の受光素子がライン状に配列されており、順次出力される各受光素子からの信号は、増幅回路31によって増幅され、その増幅信号が二値化回路33及びA/D変換回路に入力されることになる。A/D変換された増幅信号は制御回路40に入力され、当該制御回路40にて波形解析に用いられる。
【0032】
各受光素子から出力される信号が増幅回路31によって増幅された信号は、例えば図5(A)或いは図5(B)のような受光波形として表わされることになる。なお、図5の例は、各受光素子の位置を横軸、各受光素子に対応した信号のレベル(各受光素子での受光量に対応する各レベル)を縦軸として、受光素子の位置と受光量との関係を示している。また、図5(A)では、受光波形と対応付けてバーコードBを示しており、受光波形の各山或いは各谷がどのパターンに対応しているかを概念的に説明している。この受光波形では、基本的に、暗色パターンに対応する部分が山として表わされ、明色パターンに対応する部分が谷として表わされている。なお、以下の説明では、通常時(鏡面反射が生じていない場合)に図5(A)のように受光波形が得られるバーコードBを撮像する場合において、図5(B)のような受光波形が得られた場合を例に挙げて説明する。なお、図6では、図5(B)の一部を拡大して示している。
【0033】
S2で受光信号を取り込んだ後には、制御回路40に入力された受光波形(増幅信号)を参照し、振幅値を測定する(S3)。このS3の処理では、所定の振幅算出方法に従って、図5(B)のような受光波形から振幅値を算出する。振幅算出方法は、波形解析における公知の様々な方法を適用することができる。例えば、1周期毎に山と谷の差(変動値)を求め、全範囲における変動値の平均を振幅値としてもよい。或いは、全受光波形における最大値と最小値の差を求め、この差を振幅値としてもよい。これに限らず、公知の様々な方法で振幅値を求めることができる。
【0034】
そして、S3で得られた振幅値が予め定められた閾値V1以下の場合には、S4にてNoに進み、S5において露光条件を変更し、S1以降の処理を繰り返す。S5では、例えば、現在(S5の処理実行直前)の露光時間よりも長くするように露光時間を更新して再設定する。
【0035】
一方、S3で得られた振幅値が予め定められた閾値V1を超える場合には、S4にてYesに進み、図5のように得られた受光波形において、各バーBaに対応する部分(即ち、受光波形の各山の部分)の各ピークレベルを求める(S6)。なお、図5(B)では、受光波形の一例を示しており、各バーBaに対応する部分を符号B1、B2、B3・・・で示している。
【0036】
そして、S6で得られた各値(各バーBaに対応する部分(即ち、受光波形の各山の部分)の各ピークレベル)に基づいて、各バー部分(各山)のピークレベルと、その直前のバー部分のピークレベルとの差(変化量(Bn-1−B))を求め、この差(Bn-1−B)の絶対値が閾値ΔV2を超えているか否かを判断する(図6も参照)。即ち、Nが2からNa(Naは全体のバー数)となるまで、各Nのときの変化量(Bn-1−B))を求め、得られた各値(各変化量)の中に閾値ΔV2を超える値があるか否かを判断する。
【0037】
本実施形態では、S7の処理を行う制御回路40が「判断手段」の一例に相当し、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値ΔV2を超えているか否かを判断するように機能する。具体的には、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号において、N番目の電気信号のピークレベルとN−1番目の電気信号のピークレベルとの差((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2以上であるか否かを判断することにより、変化量が閾値を超えているか否かを判断している(但し、Nは2以上且つNa(Naは全体のバー数)以下の自然数である)。
【0038】
S7において変化量((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2を超えていると判断される場合には、S7にてYesに進み、S5の処理を行う。一方、絶対値が閾値ΔV2以下の場合には、S7にてNoに進み、その判断元の信号波形(即ち、直近のS2で生成された信号波形)に基づいてデコード処理を行う(S8)。
【0039】
なお、本実施形態では、図3の処理を行う制御回路40が「デコード手段」の一例に相当し、二値化回路33により区分けされた明色領域及び暗色領域に基づいてデコード処理を行うように機能する。更に、S7の処理において変化量((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2を超えていると判断された場合に、当該変化量((Bn-1−B)の絶対値)の判断元となる信号波形に対するデコード処理を中止するように機能する。
【0040】
S7でYesに進む場合(即ち、S7にて変化量((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2を超えていると判断された場合)、その後のS5の処理では、受光センサ26での露光時間を増加させるように再設定する。また、本実施形態では、S8のデコード処理が失敗した場合にも、S9にてNoに進み、S5の処理を行っている。この場合にも、受光センサ26での露光時間を増加させるように再設定している。なお、S8のデコード処理が成功した場合には、S9にてYesに進み、図3の読取処理を終了することになる。
【0041】
本実施形態では、図3の処理を行う制御回路40が「露光制御手段」の一例に相当し、S7にて変化量((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2を超えていると判断された場合に、受光センサ26での露光時間を、当該変化量の判断元となる信号波形を取得したときの前回時間から変更するように機能しており、具体的には、受光センサ26での露光時間を、当該変化量((Bn-1−B)の絶対値)の判断元となる信号波形を取得したときの前回時間から変更するように機能している。
【0042】
また、本実施形態では、図3の処理を行う制御回路40が「デコード手段」の一例に相当し、二値化回路33により区分けされた明色領域及び暗色領域に基づいてデコード処理を行うように機能し、更に、S7の処理において変化量が閾値を超えていると判断された場合に、当該変化量の判断元となる信号波形に対するデコード処理を中止するように機能する。また、S7にて変化量((Bn-1−B)の絶対値)が閾値ΔV2を超えていると判断された場合、その後のS5の処理で露光時間が前回時間から変更された後にS1、S2の処理を経て得られた信号波形に基づいてデコード処理を再実行するように機能している。
【0043】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係る光学的情報読取装置1には、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値を超えているか否かを判断する「判断手段」が設けられている。
このように暗色パターンに対応した複数の電気信号の変化量を閾値と比較しているため、予め用意した基準(閾値)に照らして変化量が妥当であるか否かを把握することできる。そして、変化量が異常な状態(閾値を超える状態)となったときには、この状態を確実に検出し、誤読回避に役立てることができる。
例えば、バーコードBの一部がスポット的に鏡面反射するような撮像状態のときには、図5(B)のように、鏡面反射部分の受光波形が想定される正常な波形(図5(A)参照)と大きく異なることになるため、解読時に誤読が生じる懸念がある。しかしながら、本発明では、このような鏡面反射が生じているか否かを電気信号の変化量に基づいて適切に把握することができ、その検出結果を誤読回避に役立てることができる。特に、鏡面反射が生じている場合、受光波形において鏡面反射部分の受光量が局所的に大きくなるため、このような鏡面反射が生じていない場合と比較すると、暗色パターン又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が大きくなる可能性が大きい。従って、本発明のように暗色パターン又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量を閾値と比較する方法を用いれば、情報コードのコード画像に鏡面反射部分が含まれたときにその状態を確実に把握することができ、原因不明のまま誤読されてしまうといった事態を回避し易くなる。
【0044】
また、本実施形態では、S7の処理において変化量が閾値を超えていると判断された場合に、当該変化量の判断元となる信号波形に対するデコード処理を中止している。
取得された信号波形において、暗色パターンに対応した複数の電気信号、又は明色パターンに対応した複数の電気信号の変化量が閾値を超えている場合、当該信号波形は異常部分(鏡面反射部分等)を含んでいる可能性が高く、この信号波形に対してそのままデコード処理を行うと誤読が生じる虞がある。本発明では、上記のような場合に当該信号波形(変化量の判断元となる信号波形)に対するデコード処理を中止しているため、鏡面反射等に起因する誤読を効果的に防止することができる。
【0045】
また、本実施形態では、「露光制御手段」が設けられており、この「露光制御手段」は、S7の処理において変化量が閾値を超えていると判断された場合に、受光センサ26での露光時間を、当該変化量の判断元となる信号波形を取得したときの前回時間から変更するように制御を行っている。そして、このように変化量が閾値を超えていると判断された後にS5において露光時間が前回時間から変更されてからS1、S2で得られた信号波形に基づいてデコード処理を再実行している。
このように、変化量が閾値を超えていると判断され、鏡面反射等が生じている可能性が高い場合に露光時間を変更して再び受光波形を取得すれば、露光環境の変化及び時間経過に起因して鏡面反射が低減或いは除去されている可能性が高まり、このように再取得された受光波形に基づいてデコード処理を再実行すれば、正確なデコード結果が得られる可能性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態では、信号波形に含まれる暗色パターンに対応した複数の電気信号において、N番目の電気信号のピークレベルとN−1番目の電気信号のピークレベルとの差が所定値(閾値ΔV2)以上であるか否かを判断することにより、変化量が閾値を超えているか否かを判断している。
このように、暗色パターンの電気信号において、直近の信号同士を比較して変化量を求め、この変化量を閾値と対比すれば、局所的に大きな受光量が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
上記実施形態では、S5の処理の例として露光時間を変更する例を示したが、条件の変更方法はこのような方法に限られない。例えば、S31で設定される増幅率を変更するようにしてもよい。例えば、S4でNoとなる場合、或いは、S7、S9でNoとなる場合に、更新前の値よりも増幅率を大きくするように撮像条件を変更する構成としてもよい。
【0049】
上記実施形態では、(Bn-1−B)の絶対値が閾値ΔV2を超えていると判断される場合に、露光条件を変更していたが、このような処理に代えて、或いはこのような処理と共に報知処理を行うようにしてもよい。例えば、S7にてYesに進む場合(即ち、変化量Bn-1−Bが閾値ΔV2を超えていると判断される場合)に、所定のエラー情報を液晶表示器46に表示し、その後、S5の処理を行うようにしてもよい。エラー情報とは、様々な情報が考えられ、「エラー」といった表示だけであってもよく、「エラーです。もう一度読み取りを行って下さい」といったコメント情報などであってもよい。
この構成によれば、(Bn-1−B)の絶対値が閾値ΔV2を超えていると判断され、鏡面反射等が生じている可能性が高い場合にその旨をユーザに知らしめることができる。従って、ユーザはこのような状態を迅速に把握して適切な対応をとりやすくなる。
この場合、制御回路40及び液晶表示器46が「報知手段」の一例に相当し、変化量(Bn-1−B)が閾値を超えていると判断された場合に報知処理を行うように機能する。
なお、報知する媒体は液晶表示器46に限られることはなく、例えばブザーを鳴動させたり、LED等のランプを点灯させる方法であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、S6、S7での変化率の算出方法として、隣接する2つの山のピークレベルの差を算出していたが、このような方法に限られない。例えば、図6のように隣接する2つの谷のボトムレベル(下方ピーク)の差を算出し、この差が閾値ΔV2を超えているか否かを判断するようにしてもよい。図6の別例を用いる場合、S7の処理において、各スペース部分(各谷)のボトムレベルSと、その直前のスペース部分のボトムレベルSn-1との差(変化量(Sn-1−S))を求め、この差(Sn-1−S)の絶対値が閾値ΔV2を超えているか否かを判断する。この判断はnが2〜Na(Nbはスペースの個数)の範囲で行う(但し、nは自然数)。そして、nがいずれかの値のときに変化量(Sn-1−S)が閾値ΔV2を超えている場合にはS7にてYesに進み、超えていない場合にはS7にてNoに進むようにする。なお、このように2つの谷のボトムレベルの差を求める場合、各谷のボトムレベルを「ピークレベル」として扱う。
また、このような例、或いは上記代表例に限られることはなく、隣接する3以上の山の最大値と最小値の差を「変化量」とし、この変化量がΔV2を超えているか否かを判断するようにしてもよい。或いは隣接する3以上の谷の最大値と最小値の差を「変化量」とし、この変化量がΔV2を超えているか否かを判断するようにしてもよい。
また、受光波形を構成する全部の山の各ピークレベルの中から最大値と最小値を求め、これら最大値と最小値の差を「変化量」とし、この変化量がΔV2を超えているか否かを判断するようにしてもよい。或いは、受光波形を構成する全部の谷の各ボトムレベルの中から最大値と最小値を求め、これら最大値と最小値の差を「変化量」とし、この変化量がΔV2を超えているか否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…光学的情報読取装置
26…受光センサ(受光手段)
33…二値化回路(二値化手段)
40…制御回路(デコード手段、判断手段、露光制御手段、報知手段)
46…液晶表示器(報知手段)
B…情報コード
Ba…バー(暗色パターン)
Sp…スペース(明色パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明色パターンと暗色パターンとが配列されてなる情報コードを読み取り可能な光学的情報読取装置であって、
前記情報コードからの反射光を受光し、前記情報コードの各パターンごとに前記反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光手段と、
前記受光手段により出力される前記電気信号の信号波形を閾値と比較すると共に、その比較に基づいて前記信号波形を明色領域と暗色領域とに区分けする二値化手段と、
前記二値化手段により区分けされた前記明色領域及び前記暗色領域に基づいてデコード処理を行うデコード手段と、
前記信号波形に含まれる前記暗色パターンに対応した複数の前記電気信号の変化量、又は前記明色パターンに対応した複数の前記電気信号の変化量が閾値を超えているか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記デコード手段は、前記判断手段により前記変化量が前記閾値を超えていると判断された場合に、当該変化量の判断元となる前記信号波形に対するデコード処理を中止することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記判断手段により前記変化量が前記閾値を超えていると判断された場合に、前記受光手段での露光時間を、当該変化量の判断元となる前記信号波形を取得したときの前回時間から変更する露光制御手段を備え、
前記デコード手段は、前記判断手段により前記変化量が前記閾値を超えていると判断された場合、前記受光手段での露光時間が前記前回時間から変更された後に得られた前記信号波形に基づいてデコード処理を再実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記判断手段により前記変化量が前記閾値を超えていると判断された場合に報知処理を行う報知手段を有してなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記信号波形に含まれる前記暗色パターンに対応した複数の前記電気信号、又は前記明色パターンに対応した複数の前記電気信号のいずれかにおいて、少なくともN番目の前記電気信号のピークレベルとN−1番目の前記電気信号のピークレベルとの差が所定値以上であるか否かを判断することにより、前記変化量が前記閾値を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208824(P2012−208824A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75087(P2011−75087)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】