説明

光学的情報読取装置

【課題】同一の情報コードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制し得る光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】第1のデコード結果がデコードされると、このバーコードに対して照射状態が変更された状態で当該バーコードからの反射光を受光した受光センサ28から出力される受光信号に基づいてデコードされる第2のデコード結果と上記第1のデコード結果とが比較される。そして、比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、情報コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置では、誤読を防止するために、同じ情報コードについて複数回デコード処理を実施した後に各デコード結果を比較して、これら各デコード結果が一致する場合にのみ読み取り成功としている。
【0003】
特に、下記特許文献1に開示される光学情報読取装置では、デコード処理が実行される前に、前回取り込んだバーコードデータのバー総本数に対する今回取り込んだバー総本数の変化度合いを確認し、この変化度合いが許容範囲内である場合にのみ、デコード処理を実行する。したがって、適切な画像読取のために行うデコード処理自体は1回でよく、従来のように複数回デコードし、そのデコードデータ同士を比較する方法に比べて、高速読取を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−250169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、情報コードに照明光を照射して読み取り作業をする際、この照明光の照射状態によっては鏡面反射等が生じて黒色(暗色)と判別すべき領域を白色(明色)と誤判別してしまい、このような誤判別する領域が多い場合には、デコードが失敗することとなる。しかしながら、鏡面反射等が弱いために上述のような誤判別する領域がわずかであると、デコードが成功してデコード結果が得られてしまう場合がある。この場合、同一の情報コードについて第2回目のデコード処理をしても、その照射状態が変化しないために、デコード結果が一致して誤読してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、同一の情報コードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制し得る光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の光学的情報読取装置は、情報コード(C)に対して照明光(L1,L2)を照射する照明手段(21,21a,21b)と、前記情報コードからの反射光を受光する受光手段(28)と、前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記情報コードをデコードするデコード手段(40)と、前記デコード手段によるデコード結果を出力可能な出力手段(40)と、を備える光学的情報読取装置(10)であって、前記照明手段から照射される前記照明光の前記情報コードに対する照射状態を変更可能な照射状態変更手段(40)と、前記情報コードからの反射光を受光した前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記デコード手段により第1のデコード結果がデコードされると、この情報コードに対して前記照射状態変更手段により照射状態が変更された状態で当該情報コードからの反射光を受光した前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記デコード手段によりデコードされる第2のデコード結果と前記第1のデコード結果とを比較する比較手段(40)と、を備え、前記出力手段は、前記比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を出力することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記照明手段は、複数の光源(22a〜22e,23a〜23e)を備えており、前記照射状態変更手段は、前記複数の光源のうちの少なくともいずれか1つを点灯状態および消灯状態のいずれかに変更することで、前記照明手段の照射状態を変更することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記照射状態変更手段は、前記複数の光源のうちの一部の光源群(22)により照明光が照射される状態から他の光源群(23)により照明光を照射する状態に変更することで、前記照明手段の照射状態を変更し、前記一部の光源群および前記他の光源群は、互いの照射方向が異なるようにそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記複数の光源は、一直線上であって、端部側に位置する光源ほどその照射方向が中央側に向かうように傾斜して配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を前記出力手段により出力する照射状態変更モードと、同じ情報コードについて前記照射状態変更手段により前記照射状態を変更することなくそれぞれデコードされたデコード結果が一致する場合にこのデコード結果を前記出力手段により出力する通常モードと、のいずれかのモードに切り替え可能なモード切替手段(40)を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、受光手段は、受光素子が一方向に並ぶ一次元センサからなることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、上記第1のデコード結果がデコードされると、この情報コードに対して照射状態変更手段により照射状態が変更された状態で当該情報コードからの反射光を受光した受光手段から出力される受光信号に基づいてデコード手段によりデコードされる第2のデコード結果と上記第1のデコード結果とが比較手段により比較される。そして、比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果が出力手段により出力される。
【0014】
これにより、同一の情報コードについて、第1のデコード結果を得たときの照射状態と、第2のデコード結果を得たときの照射状態とが異なるため、鏡面反射等の照射状態に起因して両デコード結果のいずれか一方のデコード結果が誤った結果であったとしても、この一方のデコード結果と他方のデコード結果が一致することもない。
したがって、同一の情報コードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制することができる。
【0015】
請求項2の発明では、照射状態変更手段により、複数の光源のうちの少なくともいずれか1つを点灯状態および消灯状態のいずれかに変更されて、照明手段の照射状態が変更されるので、当該照射状態の変更を容易に実施することができる。
【0016】
請求項3の発明では、照射状態変更手段により、複数の光源のうちの一部の光源群により照明光が照射される状態から他の光源群により照明光を照射する状態に変更することで、照明手段の照射状態が変更され、一部の光源群および他の光源群は、互いの照射方向が異なるようにそれぞれ配置される。このように予め照射方向が異なるように一部の光源群と他の光源群とが配置されることから光の当て方が異なるため、一部の光源群による照射状態と他の光源群による照射状態とが異なり、照射状態の変更を確実かつ容易に実施することができる。
【0017】
請求項4の発明では、複数の光源は、一直線上であって、端部側に位置する光源ほどその照射方向が中央側に向かうように傾斜して配置されるため、各光源を一直線上に配置する場合であっても、少ない個数の光源でより広い領域を照射することができる。これにより、各光源が一直線上に配置される配置方向の長さを短くすることができ、これら各光源を有する照明手段の省スペース化を図ることができる。
【0018】
請求項5の発明では、モード切替手段により、比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を出力手段により出力する照射状態変更モードと、同じ情報コードについて照射状態変更手段により照射状態を変更することなくそれぞれデコードされたデコード結果とが一致する場合にこのデコード結果を出力手段により出力する通常モードと、のいずれかのモードに切り替えられる。
【0019】
上述した通常モードでは、全ての光源を使用して照明光を情報コードに照射できるので、一部の光源を使用して照明光を情報コードに照射する場合と比較して、読み取り成功率が向上して読取作業性が向上する場合がある。そこで、読取作業性よりも誤読防止を重視する場合には、照射状態変更モードに切り替え、誤読防止よりも読取作業性を重視する場合には、通常モードに切り替えることで、作業者が重視する作業環境に応じたモードを選択することができる。
【0020】
請求項6の発明のように、受光手段を、受光素子が一方向に並ぶ一次元センサから構成しても、同一の情報コードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1の照明光源による照射状態を示す説明図であり、図2(A)は第1照射状態を示し、図2(B)は第2照射状態を示す。
【図3】強い鏡面反射により受光波形が影響を受けてデコードが失敗した例を示す波形図である。
【図4】同じ情報コードについて照射状態を変えて受光した受光波形の変化を説明するための波形図である。
【図5】第1実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図6】第2実施形態における照明光源による照射状態を示す説明図であり、図6(A)は第1照射状態を示し、図6(B)は第2照射状態を示す。
【図7】第3実施形態における照明光源による照射状態を示す説明図であり、図7(A)は第1照射状態を示し、図7(B)は第2照射状態を示す。
【図8】第4実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。図2は、図1の照明光源21による照射状態を示す説明図であり、図2(A)は第1照射状態を示し、図2(B)は第2照射状態を示す。
【0023】
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、物品に付されたバーコードなどの一次元コードや二次元コード等の情報コードを光学的に読み取る装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0024】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、2種類の照射状態を実現するために複数の光源を備えており、これら各光源は、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとからそれぞれ構成されている。この照明光源21は、具体的には、図1および図2に示すように、第1光源群22を構成する3つの光源22a,22b,22cと、第2光源群23を構成する3つの光源23a,23b,23cとが、一直線上であって交互に配置されて構成されている。
【0025】
これにより、照明光源21は、図1および図2(A)に示すように、第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cから照明光L1が照射される第1照射状態と、図2(B)に示すように、第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cから照明光L2が照射される第2照射状態との、異なる2種類の照射状態を照射可能に構成される。なお、照明光源21は、特許請求の範囲に記載の「照明手段」の一例に相当し得る。
【0026】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、情報コードC等に照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一方向に並べて配列した一次元センサ(例えば、ラインセンサ)が、これに相当する。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。
【0027】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光L1または照明光L2が情報コードCにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0028】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46等から構成されている。
【0029】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0030】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、上述したコード画像情報格納領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する設定変更処理、解析処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源21、受光センサ28等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。なお、メモリ35は、特許請求の範囲に記載の「記憶手段」の一例に相当し得る。
【0031】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有すると共に、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46等が接続されている。
【0032】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、情報コードCの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該光学的情報読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御等を可能にしている。
【0033】
次に、このように構成される光学的情報読取装置10について、同一の情報コードに対して照射状態を変更して得たデコード結果を比較してデコードの成否を判断する読取処理について、以下に説明する。
情報コードに照明光を照射して読み取り作業をする際、この照明光の照射状態によっては鏡面反射等が生じて黒色(暗色)と判別すべき領域を白色(明色)と誤判別する場合がある。例えば、強い鏡面反射が生じているために、図3に例示するように、上述のような誤判別する領域(図3に示す一点鎖線楕円参照)が多い受光波形が得られる場合には、デコードが失敗することとなる。このように強い鏡面反射が生じている場合には、デコードが成功することもなく失敗してしまうので、情報コードを誤読することもない。
【0034】
しかしながら、鏡面反射等が弱いために、図4(A)に例示するように、上述のような誤判別する領域(図4(A)に示す一点鎖線楕円参照)がわずかに生じている受光波形が得られると、デコードが成功してデコード結果が得られてしまう場合がある。この場合、同一の情報コードについて第2回目のデコード処理をしても、その照射状態が変化しないためにほぼ同じ受光波形が得られて、デコード結果が一致して誤読してしまう。
【0035】
そこで、本実施形態に係る読取処理では、同一の情報コードに対して照射状態を変更して得たデコード結果を比較してデコードの成否を判断する。1回目の撮像で鏡面反射等に起因して誤読してしまう受光波形(図4(A)参照)が得られても、2回目の撮像で照射状態を1回目の撮像時と変えることで、鏡面反射の影響がなくなるか異なる位置に誤判別する領域(図4(B)に示す一点鎖線楕円参照)が生じた受光波形が得られるため、照射状態を変更して得た2つのデコード結果が一致しない場合にデコード失敗とすることで、鏡面反射等の照射状態に起因する誤読が防止されるからである。
【0036】
以下、制御回路40にて実行される読取処理について図5を用いて詳細に説明する。図5は、第1実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。なお、本読取処理では、バーコードを読み取り対象としているが、これに限らず、QRコード(登録商標)やデータマトリックコード、マキシコード等の二次元コードを読み取り対象としても同様の効果を奏する。
【0037】
本実施形態では、使用者がトリガースイッチ42のオン操作等を行うことで、制御回路40により図5に示す読取処理が開始され、ステップS101に示す第1照射処理がなされる。この処理では、照明光源21の第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cから照明光L1が第1照射状態として照射される(図2(A)参照)。
【0038】
次に、ステップS103に示す撮像処理がなされ、第1照射状態として照射された照明光L1がバーコードにて反射してその反射光Lrが読取口を介して結像レンズ27に入射すると、受光センサ28の受光面28aには結像レンズ27によってバーコードの像、つまりコード画像が結像される。これにより、受光センサ28を構成する各受光素子が露光され、それら各受光素子からバーコードの像に応じた受光信号がそれぞれ出力される。
【0039】
続いて、ステップS105に示すデコード処理がなされ、上記撮像処理により得られたコード画像に対して公知のデコード処理が実施される。この処理により、文字データ等がデコードされると、ステップS107に示す判定処理にてYesと判定されて、ステップS109に示すデコード結果記憶処理がなされる。この処理では、上記ステップS105に示すデコード処理にて得られたデコード結果が第1のデコード結果としてメモリ35に記憶される。なお、デコード処理が失敗した場合には、ステップS107にてNoと判定されて、ステップS103に示す撮像処理からの処理がなされる。
【0040】
上述のように第1のデコード結果がメモリ35に記憶されると、ステップS111に示す第2照射処理がなされる。この処理では、照明光源21の第1光源群22の各光源22a,22b,22cが消灯し、第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cから照明光L2が第2照射状態として照射される照射状態に変更される(図2(B)参照)。なお、第1照射処理および第2照射処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「照射状態変更手段」の一例に相当し得る。
【0041】
次に、ステップS113に示す撮像処理がなされ、第2照射状態として照射された照明光L2が、上述のようにデコードされた同じバーコードに照射され、このバーコードにて反射してその反射光Lrが受光センサ28にて受光されると、当該バーコードの像に応じた受光信号が出力される。
【0042】
続いて、ステップS115に示すデコード処理がなされ、上記撮像処理により得られたコード画像に対して公知のデコード処理が実施される。この処理により、文字データ等がデコードされる場合には、ステップS117にてYesと判定され、デコードが失敗する場合には、ステップS117にてNoと判定されて、ステップS113に示す撮像処理からの処理がなされる。なお、ステップS105,S115に示すデコード処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得る。
【0043】
ステップS117にてYesと判定されると、ステップS119に示す判定処理において、上記ステップS115に示すデコード処理にて得られたデコード結果(以下、第2のデコード結果という)と、メモリ35に記憶される第1のデコード結果とが一致するか否かについて判定される。ここで、同一のバーコードについて、第2のデコード結果と第1のデコード結果とが一致する場合には(S119でYes)、受光波形に鏡面反射等の照射状態に起因した誤判別する領域が含まれておらずデコードが成功しているとして、ステップS121に示す出力処理がなされる。この処理では、一致するデコード結果が、読取対象のバーコードとして符号化された文字データ等であるとして通信インタフェース等を介して上位システムに出力される。
【0044】
一方、同一のバーコードについて、第2のデコード結果と第1のデコード結果とが異なると、鏡面反射等の照射状態に起因して両デコード結果の少なくともいずれか一方のデコード結果が誤った結果となっていると判断することができる。そこで、両デコード結果が異なることから、ステップS119にてNoと判定される場合には、ステップS121に示す出力処理を実施することなく、上記ステップS101からの処理が実施される。なお、ステップS119に示す判定処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「比較手段」の一例に相当し得る。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、上記第1のデコード結果がデコードされると、このバーコードに対して照射状態が変更された状態で当該バーコードからの反射光を受光した受光センサ28から出力される受光信号に基づいてデコードされる第2のデコード結果と上記第1のデコード結果とがステップS119に示す判定処理により比較される。そして、比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果が出力される。
【0046】
これにより、同一の情報コードについて、第1のデコード結果を得たときの第1照射状態と、第2のデコード結果を得たときの第2照射状態とが異なるため、鏡面反射等の照射状態に起因して両デコード結果のいずれか一方のデコード結果が誤った結果であったとしても、この一方のデコード結果と他方のデコード結果が一致することもない。
したがって、同一の情報コードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制することができる。
【0047】
また、第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cを照射状態にするか、第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cを照射状態にすることで、照明光源21の照射状態第1照射状態および第2照射状態のいずれかに変更されるので、当該照射状態の変更を短時間で容易に実施することができる。
【0048】
なお、第1光源群22は、3つの光源22a,22b,22cにより構成されることに限らず、2つまたは4つ以上の光源により構成されてもよい。また、第2光源群23は、3つの光源23a,23b,23cにより構成されることに限らず、2つまたは4つ以上の光源により構成されてもよい。また、光源22a,22b,22cおよび光源23a,23b,23cは、一直線上に配置されることなく所望される照射状態に応じて配置されてもよい。また、このように構成される照明光源21の各光源のうちの少なくともいずれか1つを点灯状態、点滅状態および消灯状態のいずれかに変更することで、照明光源21の照射状態を変更しても、当該照射状態の変更を容易に実施することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光学的情報読取装置10について図6を参照して説明する。図6は、第2実施形態における照明光源21aによる照射状態を示す説明図であり、図6(A)は第1照射状態を示し、図6(B)は第2照射状態を示す。
本第2実施形態に係る光学的情報読取装置10では、上述した照明光源21に代えて照明光源21aを採用する点が、上記第1実施形態に係る光学的情報読取装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の光学的情報読取装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図6(A),(B)に示すように、照明光源21aは、第1光源群22を構成する3つの光源22a,22b,22cと、第2光源群23を構成する3つの光源23a,23b,23cとが、互いの照射方向が異なるようにそれぞれ配置されて構成されている。
【0051】
これにより、照明光源21aは、図6(A)に示すように、第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cから照明光L1が照射される第1照射状態と、図6(B)に示すように、第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cから照明光L2が照射される第2照射状態との、異なる2種類の照射状態を照射可能に構成される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cと、第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cとは、互いの照射方向が異なるようにそれぞれ配置されることから光の当て方が異なるため、第1光源群22による第1照射状態と第2光源群23による第2照射状態との照射方向が異なるので、照射状態の変更を確実かつ容易に実施することができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る光学的情報読取装置10について図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態における照明光源21bによる照射状態を示す説明図であり、図7(A)は第1照射状態を示し、図7(B)は第2照射状態を示す。
本第2実施形態に係る光学的情報読取装置10では、上述した照明光源21に代えて照明光源21bを採用する点が、上記第1実施形態に係る光学的情報読取装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の光学的情報読取装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0054】
図7(A),(B)に示すように、照明光源21bは、第1光源群22を構成する2つの光源22d,22eと、第2光源群23を構成する2つの光源23d,23eとを備えており、一直線上であって、中央側に光源22d,22eが配置されるとともに端部側に光源23d,23eが配置されるように構成されている。特に、各光源22d,22e,23d,23eは、端部側に位置する光源ほどその照射方向が中央側に向かうように傾斜して配置されている。
【0055】
これにより、照明光源21bは、図7(A)に示すように、第1光源群22を構成する各光源22d,22eから照明光L1が照射される第1照射状態と、図7(B)に示すように、第2光源群23を構成する各光源23d,23eから照明光L2が照射される第2照射状態との、異なる2種類の照射状態を照射可能に構成される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、照明光源21bを構成する各光源22d,22e,23d,23eは、一直線上であって、端部側に位置する光源ほどその照射方向が中央側に向かうように傾斜して配置されるため、各光源を一直線上に配置する場合であっても、少ない個数の光源でより広い領域を照射することができる。これにより、各光源22d,22e,23d,23eが一直線上に配置される配置方向の長さを短くすることができ、これら各光源22d,22e,23d,23eを有する照明光源21bの省スペース化を図ることができる。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る光学的情報読取装置10について図8を参照して説明する。図8は、第4実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
本第4実施形態に係る光学的情報読取装置10では、上述した読取処理について図5に示すフローチャートに代えて図8に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る光学的情報読取装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の光学的情報読取装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0058】
本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、モード切替スイッチが設けられており、読取処理を開始する前にこのモード切替スイッチを操作することで、上記読取処理において、照射状態変更モードと通常モードとのいずれかのモードに切り替えられるように構成される。ここで、照射状態変更モードは、上述したステップS119に示す判定処理により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を出力するモードである。また、通常モードは、同じ情報コードについて照射状態を変更することなくそれぞれデコードされたデコード結果が一致する場合にこのデコード結果を出力するモードである。
【0059】
以下、本第4実施形態における読取処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
本実施形態では、使用者がトリガースイッチ42のオン操作等を行うことで、制御回路40により図8に示す読取処理が開始されると、ステップS201に示す判定処理がなされ、照射状態変更モードが選択されているか否かについて判定される。ここで、モード切替スイッチが照射状態変更モードを選択するように操作されている場合には(S201でYes)、上述した第1実施形態と同様に、ステップS101以降の処理がなされる。
【0060】
一方、モード切替スイッチが通常モードを選択するように操作されている場合には(S201でNo)、ステップS203に示す全照射処理がなされ、第1光源群22を構成する各光源22a,22b,22cと第2光源群23を構成する各光源23a,23b,23cとの全ての光源から照明光が照射される。なお、モード切替スイッチおよびステップS201に示す判定処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「モード切替手段」の一例に相当し得る。
【0061】
このように全光源から照明光が照射された状態で、ステップS205に示す撮像処理およびステップS207に示すデコード処理が、ステップS103に示す撮像処理およびステップS105に示すデコード処理と同様になされ、デコードが成功すると(S209でYes)、ステップS211に示すデコード結果記憶処理がなされ、そのデコード結果が第1のデコード結果としてメモリ35に記憶される。
【0062】
このように第1のデコード結果がメモリ35に記憶されると、照明光源21による照射状態を変更することなく、ステップS213に示す撮像処理およびステップS215に示すデコード処理が、ステップS113に示す撮像処理およびステップS115に示すデコード処理と同様になされる。そして、デコードが成功すると(S217でYes)、ステップS119に示す判定処理において、上記ステップS115に示すデコード処理にて得られたデコード結果(以下、第2のデコード結果という)と、メモリ35に記憶される第1のデコード結果とが一致するか否かについて判定される。
【0063】
ここで、同一のバーコードについて、第2のデコード結果と第1のデコード結果とが一致する場合には(S219でYes)、ステップS121に示す出力処理がなされて、一致するデコード結果が出力される。一方、両デコード結果が異なることから、ステップS219にてNoと判定される場合には、ステップS121に示す出力処理を実施することなく、上記ステップS201からの処理が実施される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、モード切替スイッチの操作に応じて、照射状態変更モードと通常モードとのいずれかのモードに切り替えられる。
【0065】
上述した通常モードでは、全ての光源22a,22b,22c,23a,23b,23cを使用して照明光をバーコードに照射できるので、一部の光源を使用して照明光をバーコードに照射する場合と比較して、読み取り成功率が向上して読取作業性が向上する場合がある。そこで、読取作業性よりも誤読防止を重視する場合には、照射状態変更モードに切り替え、誤読防止よりも読取作業性を重視する場合には、通常モードに切り替えることで、作業者が重視する作業環境に応じたモードを選択することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、照射状態変更モードと通常モードとのいずれかのモードに切り替えるモード切替手段として、モード切替スイッチを採用しているが、これに限らず、情報を操作入力するための操作部や外部装置から入力される情報に応じてステップS201における判定処理にて判定することで、照射状態変更モードと通常モードとのいずれかのモードに切り替えるように構成されてもよい。
【0067】
なお、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)受光センサ28は、受光素子を一方向に並べて配列した一次元センサから構成されることに限らず、受光素子を2次元に配列したエリアセンサから構成されても、同一のバーコードに対する各デコード結果を比較してデコードの成否を判断する場合における誤読を抑制することができる。
【0068】
(2)照明光源21,21a,21bは、第1光源群22から照明光が照射される照射状態と第2光源群23から照明光が照射される照射状態とを切り替えることで、第1照射状態と第2照射状態とを変更するように構成されることに限らず、各光源のうち少なくとも1つの照射方向をアクチュエータ等で変更することで、第1照射状態と第2照射状態とを変更するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…光学的情報読取装置
21,21a,21b…照明光源(照明手段)
22…第1光源群
22a,22b,22c,22d,22e…光源
23…第2光源群
23a,23b,23c,23d,23e…光源
28…受光センサ(受光手段)
40…制御回路(デコード手段,出力手段,照射状態変更手段,比較手段,モード切替手段)
L1,L2…照明光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードに対して照明光を照射する照明手段と、
前記情報コードからの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記情報コードをデコードするデコード手段と、
前記デコード手段によるデコード結果を出力可能な出力手段と、
を備える光学的情報読取装置であって、
前記照明手段から照射される前記照明光の前記情報コードに対する照射状態を変更可能な照射状態変更手段と、
前記情報コードからの反射光を受光した前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記デコード手段により第1のデコード結果がデコードされると、この情報コードに対して前記照射状態変更手段により照射状態が変更された状態で当該情報コードからの反射光を受光した前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記デコード手段によりデコードされる第2のデコード結果と前記第1のデコード結果とを比較する比較手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を出力することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記照明手段は、複数の光源を備えており、
前記照射状態変更手段は、前記複数の光源のうちの少なくともいずれか1つを点灯状態および消灯状態のいずれかに変更することで、前記照明手段の照射状態を変更することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記照射状態変更手段は、前記複数の光源のうちの一部の光源群により照明光が照射される状態から他の光源群により照明光を照射する状態に変更することで、前記照明手段の照射状態を変更し、
前記一部の光源群および前記他の光源群は、互いの照射方向が異なるようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、一直線上であって、端部側に位置する光源ほどその照射方向が中央側に向かうように傾斜して配置されることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記比較手段により比較された両デコード結果が一致する場合にこのデコード結果を前記出力手段により出力する照射状態変更モードと、同じ情報コードについて前記照射状態変更手段により前記照射状態を変更することなくそれぞれデコードされたデコード結果が一致する場合にこのデコード結果を前記出力手段により出力する通常モードと、のいずれかのモードに切り替え可能なモード切替手段を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記受光手段は、受光素子が一方向に並ぶ一次元センサからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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