説明

光学的情報読取装置

【課題】読取口を保護する保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を防止し得る光学的読取装置を提供する。
【解決手段】撮像処理により撮像された撮像画像P1、P2とメモリに記憶された撮像画像P1、P2とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域S1、S2がある場合に、この暗色系領域S1,S2の不変割合が第1の閾値よりも大きくなると、当該暗色系領域S1、S2が不変領域として検出される。そして、上記不変領域が検出されるとき、この不変領域を撮像処理により撮像された撮像画像P1、P2から除いた画像に対して、デコード処理によりデコードがなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、情報コード(光学的情報)を光学的に読み取る光学的情報読取装置として、下記特許文献1に開示されるハンディーターミナルが知られている。このハンディーターミナルには、その前面にデータ取込口としての開口部が形成されるとともに、その側面にデータ取込口より連続する開口部が形成される。これら開口部は、外部からの光の反射を防止し得る適宜コーティングがなされた透明板により閉塞されている。また、ハンディーターミナル内には、主にデータシンボル(情報コード)に所定光量を照射する照射装置と、読み込まれた情報を取り込む情報取込装置とがそれぞれ配設されている。このハンディーターミナルでは、データ取込口が無反射コーティング透明板により閉塞されることで、照射装置が外部に露呈することがなくなるため、キズが付いたり汚れ等が付着して照射光量が著しく損失される不具合を抑制している。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されるバーコードリーダでは、バーコードからの反射光の明度をCCDで取り込むと、その情報がA/D変換部により所定数の階調からなるグレースケールで量子化される。この量子化された情報は、グレースケールの分布を算出してこの算出した分布を解析してしきい値を設定することで、二値化される。そして、この二値化データから識別部によりバーコードの配列パターンが識別されると、この配列パターンがデータ変換部により英数字などのコードデータに変換されることで、バーコードの読み取りが完了する。このように、バーコード自体がかすれてしまった場合であっても、取り込んだ反射光を即時的に二値化するのではなく、一旦グレースケールで取り込み、その傾向を考慮して二値化することで、バーコードが示す情報をより正確に読み取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−228518号公報
【特許文献2】特開平09−297807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、店舗や入場口等に設置されるバーコードや二次元コードなどの情報コードを光学的に読み取る定置式光学的情報読取装置では、読取口が上向きに配置される場合が多く、筐体内部に配置されて情報コードからの反射光を読取口を介して受光する受光手段等を保護するために、当該開口部に透光可能な防塵プレートが配設される。
【0006】
しかしながら、読取口を保護する防塵プレートなどの保護部材に対して汚れの付着や損傷等が生じると、読み取りが失敗するだけでなく、撮像した汚れや損傷等を暗色系領域と判断することで誤読してしまう場合がある。このような誤読は、定置式の読取装置だけでなく、携帯式の読取装置や上記特許文献1に開示されるハンディーターミナル等でも起こりうる問題である。また、上記特許文献2に開示されるバーコードリーダでは、バーコード自体のかすれに関して補正できても、上述した保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を防止することはできないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、読取口を保護する保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を防止し得る光学的読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の光学的情報読取装置は、情報コード(C)からの反射光(Lr)を読取口(13)を介して受光することで当該情報コードを撮像する撮像手段(28)と、前記撮像手段により撮像された前記情報コードのコード画像に基づいて当該情報コードをデコードするデコード手段(40)と、を備える光学的情報読取装置(10)であって、前記反射光が透光可能であって前記読取口内を保護するように当該読取口を覆う保護部材(14)と、前記撮像手段により撮像された撮像画像(P1,P2)が逐次記憶される記憶手段(35)と、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された前記撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域(S)を不変領域として検出する検出手段(40)と、を備え、前記デコード手段は、前記検出手段により前記不変領域が検出されるとき、この不変領域を前記撮像手段により撮像された前記撮像画像から除いた画像に対してデコードすることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記デコード手段は、前記検出手段により検出された前記不変領域が前記コード画像に含まれるときには、この不変領域が前記コード画像に対して占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度である場合に限り、当該コード画像に対してデコードすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光学的情報読取装置において、前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された複数の撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像に対して前記形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める割合(Sr)がデコードに影響を及ぼす程度である場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記検出手段により前記不変領域が検出されると、前記保護部材のメンテナンスを促すメンテナンス情報を報知する報知手段(43)を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光学的情報読取装置において、前記報知手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像に対して前記検出手段により検出された前記不変領域の占める割合(Sr)がデコードに影響を及ぼす程度である場合に、前記メンテナンス情報を報知することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の光学的情報読取装置において、前記検出手段は、電源投入時に限り、この電源投入時に前記撮像手段により撮像された撮像画像と前記記憶手段に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、撮像手段により撮像された撮像画像と記憶手段に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域が検出手段により不変領域として検出される。そして、検出手段により上記不変領域が検出されるとき、この不変領域を撮像手段により撮像された撮像画像から除いた画像に対して、デコード手段によりデコードがなされる。
【0016】
これにより、読取口を覆って保護する保護部材に対して汚れの付着や損傷等が生じることから当該汚れや損傷等が暗色系領域として撮像される場合でも、この暗色系領域が上記不変領域として検出されて、この不変領域を除いた画像に対してデコードがなされる。このため、上記不変領域の原因となる保護部材に生じた汚れや損傷等がデコード結果に影響を及ぼすこともない。
したがって、読取口を保護する保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明では、検出手段により検出された上記不変領域がコード画像に含まれるときには、この不変領域がコード画像に対して占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度、例えば2%以下程度である場合に限り、当該コード画像に対してデコードがなされる。すなわち、上記不変領域がコード画像に対して占める割合がデコードに影響を及ぼす程度、例えば2%を超える程度である場合には、デコードが実施されないので、上記不変領域の原因となる保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を確実に防止することができる。
【0018】
請求項3の発明では、撮像手段により撮像された撮像画像と記憶手段に記憶された複数の撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域が検出手段により上記不変領域として検出される。このように複数の撮像画像を用いて比較することで、上記不変領域の検出精度を向上させることができる。
【0019】
請求項4の発明では、撮像手段により撮像された撮像画像に対して形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める割合がデコードに影響を及ぼす程度、例えば3%を超える程度である場合に、この暗色系領域が検出手段により上記不変領域として検出される。すなわち、撮像画像に対して形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度、例えば3%以下程度である場合には、上記不変領域が検出されることなくデコードが実施される。このため、デコードに影響を及ぼさない程度の汚れや損傷等が保護部材に生じた場合では、上記不変領域が検出されないため、撮像された撮像画像から不変領域を除く画像処理が実施されることもないので、画像処理に関して不要な処理をなくすことができる。
【0020】
請求項5の発明では、検出手段により上記不変領域が検出される場合、すなわち、保護部材に対して汚れの付着や損傷等が生じた場合には、上記メンテナンス情報が報知手段により報知されて、使用者に対して保護部材のメンテナンスが促される。このメンテナンス情報の報知に応じて保護部材の清掃や交換等がなされることで、撮像手段による撮像時に上記不変領域が撮像されることもないので、保護部材に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を確実に防止することができる。
【0021】
請求項6の発明では、撮像手段により撮像された撮像画像に対して検出手段により検出された上記不変領域の占める割合がデコードに影響を及ぼす程度、例えば3%を超える程度である場合に、上記メンテナンス情報が報知手段により報知される。すなわち、上記不変領域の占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度、例えば3%以下程度である場合には、上記メンテナンス情報が報知手段により報知されることもない。このため、デコードに影響を及ぼさない程度の汚れや損傷等が保護部材に生じた場合では、上記メンテナンス情報が報知されないため、過度のメンテナンス情報の報知を避けて適切な時期でのメンテナンス情報の報知を実施することができる。
【0022】
請求項7の発明では、電源投入時に限り、検出手段により上記不変領域が検出されて報知手段によりメンテナンス情報が報知されるため、日常の始業点検がセルフチェックでき安心して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る光学的情報読取装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の光学的情報読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】図4(A)は、撮像処理にて撮像された撮像画像を例示する説明図であり、図4(B)は、メモリに記憶された撮像画像を例示する説明図である。
【図5】第2実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置10を概略的に示す斜視図である。図2は、図1の光学的情報読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、定置式の読取装置であって、ABS樹脂等の合成樹脂からなるケース11によって外郭が構成され、このケース11の内部には、バーコードや二次元コード等の情報コードの読み取りを行う回路20(後述)が収容されている。なお、図1では、光学的情報読取装置10により、携帯端末Tの表示画面に表示される情報コードを読み取る状態を例示している。
【0025】
ケース11の上面12は、略平面状に形成されており、この上面12の中央には、矩形状に形成される読取口13が形成されるとともに、この読取口13内を保護するように当該読取口13を覆う保護部材として読取窓(防塵プレート)14が設けられている。この読取窓14は、当該読取装置10から出射される照明光および情報コードCからの反射光を透過可能な透明のアクリル樹脂やガラス等から形成されている。また、読取窓14をケース11に設けることにより、ケース11内部への塵や埃などの異物の侵入を防止している。
【0026】
次に、光学的情報読取装置10の回路20の電気的構成について説明する。
図2に示すように、回路20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0027】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図2では、情報コードCが表示画面に表示された携帯端末Tに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。なお、照明光Lfは、上述のように、読取窓14を介してケース11外へ出射される。
【0028】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、情報コードCまたは携帯端末T等に照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。なお、受光センサ28は、特許請求の範囲に記載の「撮像手段」の一例に相当し得る。
【0029】
結像レンズ27は、外部から読取窓14を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光Lfが情報コードCにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aに情報コードCの像を結像させている。
【0030】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40等から構成されている。このマイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40およびメモリ35を中心として構成され、上述した光学系によって撮像された情報コードCの画像信号をハードウェア的及びソフトウェア的に信号処理し得るものである。
【0031】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力され所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、メモリ35に入力されると、画像データ蓄積領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0032】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、上述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理、解析処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源21、受光センサ28等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。なお、メモリ35は、特許請求の範囲に記載の「記憶手段」の一例に相当し得る。
【0033】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるもので、メモリ35とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有する。この制御回路40は、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)と接続可能に構成されており、本実施形態の場合、制御回路40には、LEDなどからなる発光部43や、各種操作キーなどからなる操作部47、通信インタフェース48等が接続されている。
【0034】
これにより、制御回路40は、例えば、情報コードの読み取りやメンテナンスに関する情報を通知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯や、操作部47から入力される操作信号に応じた光学的情報読取装置10の動作の制御、外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。なお、発光部43は、特許請求の範囲に記載の「報知手段」の一例に相当し得る。
【0035】
次に、このように構成される光学的情報読取装置10の制御回路40にて実行される読取処理について、図を用いて説明する。図3は、第1実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。図4(A)は、撮像処理にて撮像された撮像画像P1を例示する説明図であり、図4(B)は、メモリ35に記憶された撮像画像P2を例示する説明図である。
【0036】
本実施形態のように、読取口13が上向きに配置される定置式の光学的情報読取装置10では、読取口13を保護する読取窓14に汚れ等が付着しやすいだけでなく、読取口13にかざした携帯電話などが接触することで読取窓14に損傷等が生じる場合がある。この場合、読取口13にかざされた情報コードを撮像するときに、汚れや損傷等が反射光を遮るため暗色系領域として撮像されてしまい、この暗色系領域のために撮像した情報コードを誤読してしまう場合がある。このような誤読は、定置式の読取装置だけでなく、携帯式の読取装置でも生じる問題である。
【0037】
そこで、本実施形態に係る読取処理では、読取口13を保護する読取窓14に対して汚れの付着や損傷等が生じたことで、これら汚れや損傷等が暗色系領域として撮像される場合でも、この暗色系領域に起因する誤読を防止するための処理がなされる。
以下、制御回路40にて実行される読取処理について図3に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0038】
光学的情報読取装置10が作動状態になり、制御回路40により読取処理が開始されると、図3のステップS101に示す判定処理にて、撮像可能状態であるか否かについて判定される。そして、操作部47に対する所定の操作、例えばトリガスイッチが操作されて、光学的情報読取装置10が撮像可能状態になると(S101でYes)、ステップS103に示す撮像処理がなされる。この処理では、照明光源21から照明光Lfが、読取窓14を介して上方に照射される。そして、そして、読取口13にかざされた情報コードなどにて反射された反射光Lrが受光センサ28にて受光されることにより受光センサ28から出力される信号に基づいて撮像画像が取得される。
【0039】
このように撮像画像が取得されると、ステップS105に示すコード位置検出処理がなされる。この処理では、取得された撮像画像に情報コードが含まれる場合に、その情報コードが撮像画像に占めるコード位置を検出する。例えば、取得された撮像画像にQRコード(登録商標)が含まれる場合には、QRコードの位置検出パターン(ファインダパターン)を抽出することで、当該QRコードが撮像画像に占めるコード位置を検出することができる。
【0040】
ここで、撮像された画像に情報コードが含まれていない場合には(S107でNo)、上述したステップS103に示す撮像処理からの処理が繰り返される。そして、読取口13に読み取らせたい情報コードがかざされることで、撮像された画像に情報コードが含まれており、そのコード位置が検出されると(S107でYes)、ステップS109に示す暗色系領域抽出がなされる。
【0041】
この処理では、上記ステップS103にて撮像された撮像画像と、後述するようにメモリ35に記憶された撮像画像とについて、共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域を抽出するための処理がなされる。そして、ステップS111に示す全画像比率判定処理にて、上述のように抽出された暗色系領域の撮像画像に占める割合(以下、不変割合Srという)が第1の閾値Saよりも大きいか否かについて判定される。ここで、第1の閾値Saは、デコードに影響を及ぼさない程度の値であり、例えば、3%に設定されている。
【0042】
ここで、抽出された暗色系領域の不変割合Srが上記第1の閾値Sa以下であるか、そもそも暗色系領域が抽出されない場合には(S111でNo)、読取窓14に対してデコードに影響を及ぼす程度の汚れの付着や損傷等が生じていないとして、ステップS115に示すデコード処理がなされる。この処理では、撮像された撮像画像のうち情報コードに相当するコード画像に対して公知のデコード処理が実施される。なお、ステップS115に示すデコード処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得る。
【0043】
このデコード処理によるデコードが成功して、情報コードとして符号化された文字データ等が取得されると(S117でYes)、ステップS119に示すデータ送信処理がなされ、上記デコード処理により取得された文字データ等が通信インタフェース48を介して外部機器等の上位システムに送信(出力)される。
【0044】
このように取得された文字データ等が送信されるか、ステップS115に示すデコード処理が失敗すると(S117でNo)、ステップS121に示す全画像比率判定処理にて、上記暗色系領域抽出処理にて抽出された暗色系領域の不変割合Srが第2の閾値Sbよりも大きいか否かについて判定される。ここで、第2の閾値Sbは、デコードに影響を及ぼさない程度の値であり、例えば、3%に設定されている。なお、本実施形態では、第1の閾値Saおよび第2の閾値Sbは、双方とも3%に設定されているが、これに限らず、互いに異なる値に設定されてもよい。
【0045】
ここで、抽出された暗色系領域の不変割合Srが上記第2の閾値Sb以下であるか、そもそも暗色系領域が抽出されない場合には(S121でNo)、読取窓14に対してデコードに影響を及ぼす程度の汚れの付着や損傷等が生じていないとして、ステップS123に示す画像保存処理がなされる。この処理では、上記撮像処理にて撮像された撮像画像がメモリ35に記憶される。このように、上記撮像処理にて撮像された撮像画像は、順次メモリ35に記憶されることとなる。そして、上記ステップS101に示す判定処理からの処理が繰り返される。なお、メモリ35に記憶される撮像画像は、例えば、リングバッファ形式により古い撮像画像に上書き保存されることで記憶容量を制限するように記憶されてもよいし、所定の期間内に限り記憶されてもよい。
【0046】
一方、読取窓14に対してデコードに影響を及ぼす程度の汚れの付着や損傷等が生じており、上記撮像処理にて図4(A)に例示するように情報コードC1を含む撮像画像P1が撮像され、メモリ35に図4(B)に例示するように情報コードC2を含む撮像画像P2が記憶されていると、上記暗色系領域抽出処理では、図4(A),(B)の双方に共通する暗色系領域S1と暗色系領域S2とが抽出される。そして、このように抽出された2つの暗色系領域S1および暗色系領域S2のうち、暗色系領域S1の不変割合Srが第1の閾値Saよりも大きくなると(S111でYes)、ステップS113に示す不変領域除外処理がなされる。
【0047】
この処理では、上述のように抽出された暗色系領域S1が不変領域として検出され、この不変領域を上記撮像処理にて撮像された撮像画像P1から除外した画像が生成される。そして、この不変領域が除外された画像に対して、ステップS115に示すデコード処理がなされる。これにより、上記不変領域の原因となる読取窓14に生じた汚れや損傷等がデコード結果に影響を及ぼすことを防止することができる。なお、ステップS111に示す判定処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「検出手段」の一例に相当し得る。
【0048】
ここで、双方に共通する暗色系領域が図4(A),(B)に例示する暗色系領域S2のみであり、この暗色系領域S2の不変割合Srが第1の閾値Sa以下であると(S111でNo)、この暗色系領域S2を撮像画像から除外することなく、撮像処理にて撮像された撮像画像について上記デコード処理によりデコード処理がなされることとなる。
【0049】
なお、ステップ111に示す判定処理では、上述のように抽出された暗色系領域の不変割合Srが第1の閾値Saよりも大きくなる場合に、この暗色系領域を不変領域として検出することに限らず、以下のようにして、不変領域を検出してもよい。
すなわち、撮像画像を複数の分割エリア(例えば、128の分割エリア)に分割して、双方に共通する暗色系領域が隣接するN以上の分割エリア(例えば、4つの分割エリア)にまたがるように検出されるときに、当該暗色系領域を不変領域として検出してもよい。これにより、不変割合Srを算出する必要もないので、不変領域を容易に検出することができる。
【0050】
また、読取窓14に対してデコードに影響を及ぼす程度の汚れの付着や損傷等が生じていることから、図4(A),(B)に例示するように、上記暗色系領域抽出処理にて抽出された暗色系領域S1の不変割合Srが第2の閾値Sbよりも大きくなると(S121でYes)、ステップS125に示す報知処理がなされる。
【0051】
この処理では、制御回路40により制御されて、発光部43が読取窓14の清掃や修理・交換などのメンテナンスを促すメンテナンス情報を報知するために所定の色に発光する。このように発光する発光部43を視認した使用者は、読取窓14に対してデコードに影響を及ぼす程度の汚れの付着や損傷等が生じていることを認識するので、使用者に対して適切な時期に読取窓14のメンテナンスを促すことができる。
【0052】
なお、ステップ121に示す判定処理でも、上記ステップS111に示す判定処理と同様に、撮像画像を複数の分割エリアに分割して、双方に共通する暗色系領域が隣接するN以上の分割エリアにまたがるように検出されるときに、上記メンテナンス情報を報知してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、撮像処理により撮像された撮像画像とメモリ35に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域の不変割合Srが第1の閾値Saよりも大きくなると(S111でYes)、当該暗色系領域が不変領域として検出される。そして、上記不変領域が検出されるとき、この不変領域を撮像処理により撮像された撮像画像から除いた画像に対して、デコード処理によりデコードがなされる。
【0054】
これにより、読取口13を覆って保護する読取窓14に対して汚れの付着や損傷等が生じることから当該汚れや損傷等が暗色系領域Sとして撮像される場合でも、この暗色系領域Sが上記不変領域として検出されて、この不変領域を除いた画像に対してデコードがなされる。このため、上記不変領域の原因となる読取窓14に生じた汚れや損傷等がデコード結果に影響を及ぼすこともない。
したがって、読取口13を保護する読取窓14に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を防止することができる。
【0055】
特に、撮像処理により撮像された撮像画像に対して形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める不変割合Srがデコードに影響を及ぼさない程度に設定される第1の閾値Saより大きい程度である場合に、この暗色系領域が上記不変領域として検出される。すなわち、撮像画像に対して形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度である場合には、上記不変領域が検出されることなくデコードが実施される。このため、デコードに影響を及ぼさない程度の汚れや損傷等が読取窓14に生じた場合では、上記不変領域が検出されないため、撮像された撮像画像から不変領域を除く画像処理が実施されることもないので、画像処理に関して不要な処理をなくすことができる。
【0056】
また、撮像処理により撮像された撮像画像に対して抽出された暗色系領域の占める不変割合Srが上記第2の閾値Sbより大きい程度である場合、すなわち、読取窓14に対して汚れの付着や損傷等が生じた場合には、上記メンテナンス情報が発光部43の発光により報知されて、使用者に対して読取窓14のメンテナンスが促される。このメンテナンス情報の報知に応じて読取窓14の清掃や交換等がなされることで、撮像処理による撮像時に上記不変領域が撮像されることもないので、読取窓14に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を確実に防止することができる。
【0057】
特に、撮像処理により撮像された撮像画像に対して抽出された暗色系領域の占める不変割合Srがデコードに影響を及ぼす程度に設定される第2の閾値Sbより大きい程度である場合に、上記メンテナンス情報が発光部43の発光により報知される。すなわち、上記不変領域の占める不変割合Srがデコードに影響を及ぼさない程度である場合には、上記メンテナンス情報が発光部43の発光により報知されることもない。このため、デコードに影響を及ぼさない程度の汚れや損傷等が読取窓14に生じた場合では、上記メンテナンス情報が報知されないため、過度のメンテナンス情報の報知を避けて適切な時期でのメンテナンス情報の報知を実施することができる。
【0058】
なお、メンテナンス情報を報知する報知手段として、発光部43の発光状態を利用することに限らず、例えば、所定の情報を表示可能な液晶表示器等にメンテナンスを促すメンテナンス情報を表示してもよい。
【0059】
なお、第1実施形態の第1変形例として、上記ステップS109に示す暗色系領域抽出処理では、撮像処理により撮像された撮像画像とメモリ35に記憶された複数の撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を抽出してもよい。この場合、抽出された暗色系領域の不変割合Srが上記第1の閾値Saよりも大きくなると(S111でYes)、抽出された暗色系領域が不変領域として検出される。このように複数の撮像画像を用いて比較することで、上記不変領域の検出精度を向上させることができる。
【0060】
また、第1実施形態の第2変形例として、上記ステップS121に示す判定処理およびステップS125に示す報知処理は、電源投入時に限り、実施してもよい。これにより、電源投入時に限り、上記不変領域が検出されて不変割合Srが第2の閾値Sbよりも大きくなると(S121)、上記報知処理にてメンテナンス情報が報知されるため、日常の始業点検がセルフチェックでき安心して使用することができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光学的情報読取装置について図5を参照して説明する。図5は、第2実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
本第2実施形態に係る光学的情報読取装置10では、読取窓14に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を確実に防止するため、上述した読取処理について図3に示すフローチャートに代えて図5に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る光学的情報読取装置と主に異なる。
【0062】
本第2実施形態では、検出された上記不変領域が、撮像画像のうち情報コードが占める領域であるコード画像に含まれるときには、この不変領域がコード画像に対して占める割合(以下、第2不変割合S2rという)がデコードに影響を及ぼさない程度の値に設定される第3の閾値Sc以下程度である場合に限り、当該コード画像に対してデコードがなされる。ここで、第3の閾値Scは、デコードに影響を及ぼさない程度の値であり、例えば、2%に設定されている。
【0063】
すなわち、図5に示す読取処理のように、ステップS111にてYesと判定された後に、ステップS112に示すコード画像比率判定処理にて、不変領域の第2不変割合S2rが第3の閾値Scよりも大きいか否かについて判定される。そして、第2不変割合S2rが第3の閾値Sc以下であると(S112でNo)、上記不変領域除外処理以降の処理がなされて、デコード処理が実施される。一方、第2不変割合S2rが第3の閾値Scより大きくなると(S112でYes)、デコード処理を実施することなく、ステップS121に示す判定処理以降の処理がなされる。
【0064】
このように、第2不変割合S2rが第3の閾値Scより大きくなる場合、すなわち、上記不変領域がコード画像に対して占める割合がデコードに影響を及ぼす程度である場合には、デコードが実施されないので、上記不変領域の原因となる読取窓14に生じた汚れや損傷等に起因する誤読を確実に防止することができる。また、この場合には、上記不変領域除外処理がなされることもないので、制御回路40に対する処理負荷を軽減することができる。
【0065】
なお、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上述した各実施形態では、本発明に係る光学的情報読取装置を、上方に読取口13が設けられる定置式の読取装置に適用して説明したが、これに限らず、上方と異なる方向に読取口13が設けられる定置式の読取装置に適用してもよいし、携帯型の読取装置に適用してもよい。
【0066】
(2)上述した各実施形態では、複数の明色系セルおよび暗色系セルが規定の位置に配列されるように表示される表示面、例えば、複数の白及び黒からなるキャリブレーションボードを撮像処理により撮像し、この撮像により得られた撮像画像とメモリ35に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を不変領域として検出してもよい。これにより、上記規定の位置と異なる位置にある暗色系領域が上記不変領域となるため、当該不変領域を容易かつ確実に検出することができる。
【0067】
また、明色系セルのみからなる表示面を撮像処理により撮像し、この撮像により得られた撮像画像とメモリ35に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を不変領域として検出してもよい。
また、明色系セルのみからなる表示面を撮像処理により撮像し、この撮像により得られた撮像画像に暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を不変領域として検出してもよい。
また、上述した表示面を撮像して不変領域を検出する処理は、電源投入時に限り実施してもよい。
【0068】
(3)上述した光学的情報読取装置10は、操作部47に対する所定の操作に応じて撮像可能状態になることに限らず、例えば、常時撮像可能な状態に維持されるように構成されてもよい。このように構成される場合には、上記ステップS101における判定処理が廃止されることとなる。
【符号の説明】
【0069】
10…光学的情報読取装置
13…読取口
14…読取窓(保護部材)
28…受光センサ(撮像手段)
35…メモリ(記憶手段)
40…制御回路(デコード手段,検出手段)
43…発光部(報知手段)
C,C1,C2…情報コード
P1,P2…撮像画像
S…暗色系領域
Sr…不変割合
Sa…第1の閾値
Sb…第2の閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードからの反射光を読取口を介して受光することで当該情報コードを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記情報コードのコード画像に基づいて当該情報コードをデコードするデコード手段と、
を備える光学的情報読取装置であって、
前記反射光が透光可能であって前記読取口内を保護するように当該読取口を覆う保護部材と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像が逐次記憶される記憶手段と、
前記撮像手段により撮像された前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された前記撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を不変領域として検出する検出手段と、を備え、
前記デコード手段は、前記検出手段により前記不変領域が検出されるとき、この不変領域を前記撮像手段により撮像された前記撮像画像から除いた画像に対してデコードすることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記デコード手段は、前記検出手段により検出された前記不変領域が前記コード画像に含まれるときには、この不変領域が前記コード画像に対して占める割合がデコードに影響を及ぼさない程度である場合に限り、当該コード画像に対してデコードすることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された複数の撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像に対して前記形状および輝度が変化しない暗色系領域の占める割合がデコードに影響を及ぼす程度である場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記検出手段により前記不変領域が検出されると、前記保護部材のメンテナンスを促すメンテナンス情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像に対して前記検出手段により検出された前記不変領域の占める割合がデコードに影響を及ぼす程度である場合に、前記メンテナンス情報を報知することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記検出手段は、電源投入時に限り、この電源投入時に前記撮像手段により撮像された撮像画像と前記記憶手段に記憶された撮像画像とに共通して形状および輝度が変化しない暗色系領域がある場合に、この暗色系領域を前記不変領域として検出することを特徴とする請求項5または6に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58033(P2013−58033A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195198(P2011−195198)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】