説明

光学的測定装置

【課題】光路長を補正して吸光度の測定精度を向上させる光学的測定装置を提供する。
【解決手段】光源8からの光が、測定槽1内の反応液を透過する透過光量を測定する第1の受光部15と、この第1の受光部15で測定した透過光量より液体試料の濃度を計算する計算部16と、測定槽1内の反応液内を進行する、光源部19からの光の光路長を測定する光路長測定部20を設けるとともに、この光路長測定部20が測定した光路長に基づいて、液体試料の濃度を補正する補正部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料の濃度を測定する光学的測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学的測定装置の構成は以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、液体試料と試薬を入れて反応させ、その反応液を充填する測定槽と、この測定槽に光を照射する光源部と、この光源部からの光が、前記測定槽内の反応液を透過する透過光量を測定する受光部と、この受光部で測定した透過光量より前記液体試料の濃度を計算する計算部と、を備えた構成となっていた(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−145450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光学的測定装置の課題は、液体試料の濃度の測定精度が低いことであった。
すなわち、従来の光学的測定装置は、液体試料に試薬を反応させ、この反応液に光を照射し、この光の透過光量に基づいて液体試料の濃度を測定する構成となっていたが、この測定に関しては、測定槽内の反応液内を進行する光源部からの光の光路長のばらつきが影響するので、この測定槽の寸法ばらつきが原因となって、その結果、液体試料の濃度の測定精度が低くなってしまうのであった。
【0006】
そこで本発明は、光学的測定装置の液体試料の濃度の測定精度を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために本発明にかかる光学的測定装置は、液体試料と試薬を入れて反応させ、その反応液を充填する測定槽と、この測定槽に光を照射する光源部と、この光源部からの光が、前記測定槽内の反応液を透過する透過光量を測定する第1の受光部と、この第1の受光部で測定した透過光量より前記液体試料の濃度を計算する計算部と、を備え、前記測定槽内の反応液内を進行する、光源部からの光の光路長を測定する光路長測定部を設けるとともに、この光路長測定部が測定した光路長に基づいて、前記計算部で算出した液体試料の濃度を補正する補正部と、を設け、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、液体試料と試薬を入れて反応させ、その反応液を充填する測定槽と、この測定槽に光を照射する光源部と、この光源部からの光が、前記測定槽内の反応液を透過する透過光量を測定する第1の受光部と、この第1の受光部で測定した透過光量より前記液体試料の濃度を計算する計算部と、を備え、前記測定槽内の反応液内を進行する、光源部からの光の光路長を測定する光路長測定部を設けるとともに、この光路長測定部が測定した光路長に基づいて、前記計算部で算出した液体試料の濃度を補正する補正部と、を設けたものであるので、光学的測定装置の液体試料の濃度の測定精度を高めることができる。
【0009】
すなわち、本発明においては、液体試料の濃度の測定精度に影響をあたえる、測定槽内の反応液内を進行する光源部からの光の光路長を測定し、その測定結果に基づいて、液体試料の濃度を補正するので、液体試料の濃度の測定精度を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置の主要部の構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置の主要部の斜視図
【図3】本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置の主要部の断面図
【図4】本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置の測定部の模式図
【図5】共焦点走査方式による光路長測定装置の模式図
【図6】光路長測定原理を説明するためのフローチャート
【図7】光路長測定における反射光量変化を示す概念図
【図8】本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる光学的測定装置の実施の一形態について、添付図面を交えて説明する。なお添付図面は、理解を容易にするために模式的な図を示している。
【0012】
まず、この実施の形態にかかる光学的測定装置の全体構成について、図1、図2、図3を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態にかかる光学的測定装置の主要部であるの測定槽1の構成図である。
【0014】
図1に示すように、光学的測定装置の主要部であるの測定槽1は、3枚の基板によって基本的には構成されている。この3枚の基板の中央に位置するのは、スペーサ基板2であって、スペーサ基板2は、ほぼ中央の測定槽1の位置に円形の開孔部を設け、それに連結した流路部1aの部分も開孔した状態で構成されている。このスペーサ基板2を、上方と下方から光透過性基板3、4で挟みこむように形成しているのであるが、測定槽1の上面を形成する光透過性基板3には、スペーサ基板2の流路部1aの端部に対向した位置に、試料導入口5を設けており、流路部1aの他端部に対向した位置には、空気孔6が設けられている。測定槽1の下面を形成する光透過性基板4は、平面形状をしており、この3枚の基板をサンドイッチ状に貼り合わせることで、図2に示すような測定槽のユニットが構成される。
【0015】
図2に示す測定槽ユニットにおいては、液体試料を試料導入口5から入れると、この液体試料は、流路部1aを空気孔6の方向へ向けて流れ、ほぼ中央部に位置する測定槽1内に充填されることとなる。この測定槽をA−A’断面にて断面図としたものを図3に示す。
【0016】
図3に示すように、測定槽1は、上面を光透過性基板3、下面を光透過性基板4によって構成されている。下面には、試薬7が設けられており、流路1aを経て、測定槽1に充填された液体試料と混ざり合って、反応液となるように設けられている。
【0017】
図4は光学的測定装置の測定部の構成図である。図4において、光源部19は、光源8となる例えば半導体レーザ、半導体レーザより出射された光を平行な光に変換するコリメートレンズ9、測定槽1に導く対物レンズ11で構成され、光源8からの光を集光して測定槽1に照射する。光源部19からの光が測定槽1に充填された反応液の透過する光を受光する第1の受光部15、液体試料の濃度を算出する計算部16、光路長を測定する光路長測定部20は、光源部19からの光が測定槽1の反射した光の光路を変更するダイクロイックミラー10、ダイクロイックミラー10を反射した光を結像する結像レンズ12、非合焦点時の反射光を遮断するピンホール13、ピンホール13を通過した反射光を受光する第2の受光部14、受光した光量に基づいて膜厚を計算する演算部17で構成され、光路長を算出し補正を行う補正部18を設けた光学的測定装置となっている。
【0018】
次に、この光学的測定装置による液体試料中の被検知成分濃度の測定とその補正方法について説明する。まず、光透過性基板3に設けられた試料導入口5から液体試料を入れると、毛細管現象により流路部1aの内部を移動し、測定槽1に液体試料が供給される。測定槽1では試薬7が溶解され、被検知成分の濃度に応じた濃さに呈色反応を起こし、あるいは被検知成分の濃度に応じた反応液が生成される。その結果、測定槽1の反応液は、被検知成分の濃度に応じた透光性を示す。
【0019】
測定槽1へ試薬導入から一定時間経過したのち、光源8より測定槽1に光を照射し、そのときの透過光量を第1の受光部15で受光される。この第1の受光部15での透過光量に基づいて、試薬7と反応させた液体試料の吸光度を計算部16で算出される。
【0020】
次に、光源8より測定槽1に光を照射し、測定槽1の上面と下面で反射した反射光量を第2の受光部14で受光される。この第2の受光部14での反射光量に基づいて、反射光量がピークとなるZ軸位置を求め、光路長を算出する。
【0021】
吸光度から濃度を求める場合、吸光度Aは、A=K(吸光係数)×C(濃度)×L(光路長)で求められる。すでに算出された吸光度と光路長を用いて、被検知成分の濃度(C)が演算される。
【0022】
なお、吸光度と光路長は同一光学系を用いて測定が可能であるため、スペースを小さくでき、またコストも抑えることができる。
【0023】
共焦点走査方式による光路長測定構成図を図5示す。光源8からの光は、コリメートレンズ9で平行光にされ、ダイクロイックミラー10を透過して対物レンズ11で収束され、測定槽1に照射される。測定槽1の表面で反射した光は、ダイクロイックミラー10で反射し、結像レンズ12により結像されて、ピンホール13を通過して第2の受光部14で受光される。
【0024】
図6は光路長測定を行うときのフローチャートである。対物レンズをZ軸方向に設定された開始位置(最高位置)から終了位置(最低位置)まで駆動させ、各ピクセルのZ軸位置毎の反射光を受光する。光透過性基板3の下面に焦点があったときは、反射光はすべてピンホール13を通過し、反射光量は大きくなる。これに対し、焦点位置が光透過性基板3と4の間にあったときは、反射光はピンホール13での位置でフォーカスせず、大部分は遮られるので、反射光量は小さくなる。したがって、対物レンズをZ軸方向に上下させると、その反射光量は図7のように変化して焦点の合ったところで最大となる。このピーク位置から光路長が算出される。
【0025】
図8は、本発明のブロック図である。光源部19から光を照射し、測定槽1内の反応液を透過する透過光量を第1の受光部15で受光する。この第1の受光部15での透過光量に基づいて、液体試料の濃度を計算部16で算出される。次に、光路長測定部20では、光源部19から光を照射し、測定槽1の上面と下面で反射した反射光量を第2の受光部14で受光し、ピーク位置からZ軸を求め、光路長が算出される。補正部18で算出された吸光度と光路長を用いて、被検知成分の濃度が演算される。光路長を測定することで光路長のばらつきが補正されるので、測定槽1の成型精度や測定環境温度による膨張による光路長変動の影響を低減することが可能となるので、液体試料の濃度の測定精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明は、液体試料と試薬を入れて反応させ、その反応液を充填する測定槽と、この測定槽に光を照射する光源部と、この光源部からの光が、前記測定槽内の反応液を透過する透過光量を測定する第1の受光部と、この第1の受光部で測定した透過光量より前記液体試料の濃度を計算する計算部と、を備え、前記測定槽内の反応液内を進行する、光源部からの光の光路長を測定する光路長測定部を設けるとともに、この光路長測定部が測定した光路長に基づいて、前記計算部で算出した液体試料の濃度を補正する補正部と、を設けたものであるので、光学的測定装置の液体試料の濃度の測定精度を高めることができる。
【0027】
すなわち、本発明においては、液体試料の濃度の測定精度に影響をあたえる、測定槽内の反応液内を進行する光源部からの光の光路長を測定し、その測定結果に基づいて、液体試料の濃度を補正するので、液体試料の濃度の測定精度を高めることができるのである。
【0028】
したがって、液体試料に試薬を反応させ、この反応液に光を照射し、この光の透過光量に基づいて液体試料の濃度を測定する光学的測定装置に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 測定槽
1a 流路部
2 スペーサ基板
3、4 光透過性基板
5 試料導入口
6 空気孔
7 試薬
8 光源
9 コリメートレンズ
10 ダイクロイックミラー
11 対物レンズ
12 結像レンズ
13 ピンホール
14 第2の受光部
15 第1の受光部
16 計算部
17 演算部
18 補正部
19 光源部
20 光路長測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料に試薬を反応させ、この反応液に光を照射し、この光の透過光量に基づいて液体試料の濃度を測定する光学的測定装置であって、
液体試料と試薬を入れて反応させ、その反応液を充填する測定槽と、
この測定槽に光を照射する光源部と、
この光源部からの光が、前記測定槽内の反応液を透過する透過光量を測定する第1の受光部と、
この第1の受光部で測定した透過光量より前記液体試料の濃度を計算する計算部と、を備え、
前記測定槽内の反応液内を進行する、光源部からの光の光路長を測定する光路長測定部を設けるとともに、この光路長測定部が測定した光路長に基づいて、前記計算部で算出した液体試料の濃度を補正する補正部と、を設けた光学的測定装置。
【請求項2】
前記測定槽は、側面に液体試料を導入する流路を備え、上面と下面を光透過性基板で覆った構成とした請求項1に記載の光学的測定装置。
【請求項3】
前記光源部は、測定槽の上面より光を照射し、下面から透過した透過光量を前記第1の受光部で測定する構成とした請求項1または2に記載の光学的測定装置。
【請求項4】
前記光路長測定部は、前記光源部からの光の、測定槽の上面と下面との反射光に基づいて光路長を測定する構成とした請求項2または3に記載の光学的測定装置。
【請求項5】
前記光路長測定部は、前記光源部からの光の、測定槽の上面と下面との反射光を第2の受光部で受光し、光路長を測定する構成とした請求項2から4のいずれか一つに記載の光学的測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−194089(P2012−194089A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58839(P2011−58839)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】