説明

光学的観察システムおよび被検体の観察方法

【課題】マウス等の小動物の脳等の働きを、小動物の自由な動作を許容しつつ光学的に観察する。
【解決手段】被検体Aに固定され、被検体Aの動作とともに移動させられる可搬装置2と、被検体Aの外部に配置された外部装置3と備え、可搬装置2が、光源と、光源からの光を被検体Aの観察対象部位に照射する照明光学系と、観察対象部位からの光を導光する検出光学系と、検出光学系により導光された光を検出し電気信号に変換する光検出器と、光検出器から出力された電気信号を無線により送信する送信器5とを備え、外部装置3が、可搬装置2から送信されてきた電気信号を受信する受信器20と、受信器20により受信された電気信号を処理する信号処理部21とを備える光学的観察システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的観察システムおよび被検体の観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マウス等の小動物から発せられる放射線を電位信号として検出し、検出された電位信号を無線によって解析装置に送信する観察システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0298700号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マウス等の脳の働きは光学的に検出することが可能であり、特許文献1の電位信号を検出する観察システムでは観察することができない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、マウス等の小動物の脳等の働きを、小動物の自由な動作を許容しつつ光学的に観察することができる光学的観察システムおよび被検体の観察方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、被検体に固定され、被検体の動作とともに移動させられる可搬装置と、前記被検体の外部に配置された外部装置と備え、前記可搬装置が、光源と、該光源からの光を被検体の観察対象部位に照射する照明光学系と、前記観察対象部位からの光を導光する検出光学系と、該検出光学系により導光された光を検出し電気信号に変換する光検出器と、該光検出器から出力された電気信号を無線により送信する送信器とを備え、前記外部装置が、前記可搬装置から送信されてきた電気信号を受信する受信器と、該受信器により受信された電気信号を処理する信号処理部とを備える光学的観察システムを提供する。
【0006】
本発明によれば、可搬装置を被検体に固定し、可搬装置に設けられた光源から発せられた光を照明光学系によって被検体の観察対象部位に照射すると、観察対象部位から戻る光が、検出光学系によって導光されて光検出器により検出され、電気信号に変換される。そして、電気信号は可搬装置に設けられた送信器により送信され、被検体の外部に配置された外部装置の受信器により受信される。そして、受信器により受信された電気信号は、信号処理部において処理される。これにより、被検体に固定した可搬装置により光学的に検出された情報を被検体から離れた場所において処理することができる。したがって、マウス等の被検体の脳等の働きを、被検体の自由な動作を許容しつつ光学的に観察することができる。
【0007】
上記発明においては、前記照明光学系が、前記光源からの光を集光するコレクタレンズと、該コレクタレンズにより集光された光を集光して前記観察対象部位に照射する対物レンズとを備え、前記コレクタレンズおよび前記対物レンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されていてもよい。
このようにすることで、光源からの光がコレクタレンズにより集光され、対物レンズを介して観察対象部位に効率的に照射される。この場合に、コレクタレンズおよび対物レンズをGRINレンズまたは非球面レンズにより構成することで、照明光学系全体をコンパクトに構成することができ、被検体に搭載されて被検体とともに移動する可搬装置の軽量化を図り、被検体の運動を阻害することなく光学的な観察を行うことができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記コレクタレンズにより集光された前記光源からの光を前記対物レンズの瞳にリレーするリレーレンズを備え、該リレーレンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されていてもよい。
このようにすることで、コレクタレンズにより集光された光源からの光がリレーレンズによりリレーされ、光束径を細く維持することができる。これにより、光束がケラれることを防止しつつ、ポイント照明を行うことができる。また、このリレーレンズをGRINレンズまたは非球面レンズにより構成することで、照明光学系全体をコンパクトに構成することができ、被検体に搭載されて被検体とともに移動する可搬装置の軽量化を図り、被検体の運動を阻害することなく光学的な観察を行うことができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記検出光学系が、前記対物レンズにより集光された前記観察対象部位からの光を前記光検出器にリレーするリレーレンズを備え、該リレーレンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されていてもよい。
このようにすることで、観察対象部位から発せられた光が対物レンズにより集光された後、リレーレンズによってリレーされて光検出器により検出される。このリレーレンズをGRINレンズまたは非球面レンズにより構成することで、検出光学系全体をコンパクトに構成することができ、被検体に搭載されて被検体とともに移動する可搬装置の軽量化を図り、被検体の運動を阻害することなく光学的な観察を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、被検体に該被検体とともに移動させられる可動装置を固定して、該可動装置の光源からの光を前記被検体の観察対象部位に照射するステップと、前記可搬装置が、前記観察対象部位からの光を検出し、電気信号に変換するステップと、前記可搬装置が、電気信号に変換された検出光の情報を無線により送信するステップと、前記可搬装置から送信されてきた電気信号を、前記被検体の外部に配置された外部装置により受信して処理するステップとを含む被検体の観察方法を提供する。
【0011】
上記発明においては、前記可搬装置が、前記光源からの光の射出および前記観察対象部位からの光の集光を行う対物レンズを備えるとともに、該対物レンズが前記観察対象部位に刺される尖端を備えていてもよい。
また、上記発明においては、前記観察対象部位が、前記被検体の脳であってもよい。
また、前記観察対象部位からの光が、蛍光または発光であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マウス等の小動物の脳等の働きを、小動物の自由な動作を許容しつつ光学的に観察することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学的観察システムを示す全体構成図である。
【図2】図1の光学的観察システムの装置本体の内部の光学部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る光学的観察システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光学的観察システム1は、図1に示されるように、マウス等の小動物等の被検体Aに固定される可搬装置2と、被検体Aから離れた位置に配置される外部装置3とを備えている。
【0015】
可搬装置2は、図1に示されるように、被検体Aの頭部に固定される装置本体4と、胴部に固定される送信部5とを備えている。装置本体4は、図2に示されるように、LED光を射出するLED等の光源6と、該光源6からのLED光を観察対象部位Bに照射する照明光学系7と、観察対象部位Bにおいて発生した蛍光を導光する検出光学系8と、該検出光学系8により導光された蛍光を検出する光検出器9とを備えている。
【0016】
照明光学系7は、光源6から発せられたLED光を集光するコレクタレンズ10と、光路を90°折り曲げるプリズム11と、LED光内の所定の励起波長帯域のLED光のみを透過させる励起フィルタ12と、該励起フィルタ12を通過したLED光をリレーするリレーレンズ13と、該リレーレンズ13によりリレーされたLED光を反射して90°偏向する一方、蛍光を透過するダイクロイックミラー14と、該ダイクロイックミラー14により反射されたLED光を観察対象部位Bに集光する対物レンズ15とを備えている。
【0017】
コレクタレンズ10、リレーレンズ13および対物レンズ15は、GRINレンズによって構成されている。対物レンズ15は、被検体A(例えば、脳組織)に容易に刺される尖端15aを有するとともに、LED光を90°偏向して側方に射出させる偏向面15bを有している。
【0018】
検出光学系8は、対物レンズ15により集光されダイクロイックミラー14を透過した蛍光内に含まれる励起波長帯域の光を遮断し蛍光のみを透過させるバリアフィルタ16と、該バリアフィルタ16を透過した蛍光をリレーするリレーレンズ17とを備えている。リレーレンズ17もGRINレンズによって構成されている。
【0019】
光検出器9は、例えば、フォトダイオードであり、蛍光を受光するとその強度に応じた電気信号を出力するようになっている。
送信部5は、例えば、光検出器9から出力された電気信号を、無線により外部に送信する送信器(図示略)と、可搬装置3全体に電力供給を行うバッテリ(図示略)とを備えている。
【0020】
外部装置3は、送信器により可搬装置2から送られてきた電気信号を受信する受信器20と、該受信器20により受信された電気信号を処理する信号処理部21と、モニタ22を備えている。信号処理部21は、電気信号から画像を生成する画像化処理と、生成された画像をモニタ22に表示する表示処理とを行うようになっている。
【0021】
このように構成された本実施形態に係る光学的観察システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る光学的観察システム1を用いてマウス等の被検体Aの光学的な観察を行うには、可搬装置2の装置本体4に備えられた対物レンズ15の尖端15aを被検体Aの観察対象、例えば、脳に刺して、装置本体4を被検体Aの頭部に固定する。また、バッテリを含む比較的重量の大きな送信部5は被検体Aの胴体にベルト等によって固定する。
【0022】
そして、光源6を作動させLED光を射出させると、射出されたLED光はコレクタレンズ10により集光され、プリズム11により偏向され、励起フィルタ12を通過した励起波長帯域のLED光がリレーレンズ13によりリレーされた後、ダイクロイックミラー14により反射されて対物レンズ15を介して観察対象部位Bに照射される。対物レンズ15は偏向面15bを有しているので、LED光は90°偏向されて、対物レンズ15を刺した方向に対して側方に位置する観察対象部位Bに照射される。
【0023】
観察対象部位Bにおいて発生した蛍光は、対物レンズ15により集光され、ダイクロイックミラー14を透過して、バリアフィルタ16により励起波長帯域のLED光が除去されたものがリレーレンズ17によりリレーされて光検出器9により検出される。光検出器9においては、蛍光の強度に応じた強度の電気信号が出力され、送信部5に送られる。
【0024】
送信部5においては、装置本体4から送られてきた電気信号が送信器によって無線により外部に送信される。
外部装置3においては、送信器から送られてきた電気信号が受信され、信号処理部21によって画像化された後、モニタ22に表示される。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る光学的観察システム1によれば、被検体Aに搭載した装置本体4が、観察対象部位BにLED光を照射することにより発生した蛍光を検出し、電気信号に変換して出力し、無線によって外部に送信するので、被検体Aの動きを拘束することなく、自由に活動させた状態での観察対象部位Bの状態を光学的に観察することができるという利点がある。
【0026】
この場合において、本実施形態に係る光学的観察システム1によれば、コレクタレンズ10、リレーレンズ13,17および対物レンズ15をGRINレンズによって構成しているので、照明光学系7および検出光学系8がコンパクトに構成され、可搬装置2を小型軽量に構成することができる。その結果、被検体Aにかかる負担を軽減して、活動を阻害することを防止し、ストレスの少ない自由な活動状態における観察を行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、コレクタレンズ10、リレーレンズ13,17および対物レンズ15をGRINレンズによって構成したが、これに代えて、非球面レンズによって構成してもよい。また、照明光学系7にリレーレンズ13を配置することにより、観察対象部位Bに対して照明範囲を絞ったポイント照明を可能としたが、これに代えて、リレーレンズ13を用いることなく、広域照明を行うことにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、観察対象部位において発生した蛍光を検出しているが、例えば、ルシフェラーゼなどのレポータ分子による発光を検出することにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
A 被検体
B 観察対象部位
1 光学的観察システム
2 可搬装置
3 外部装置
5 送信部(送信器)
6 光源
7 照明光学系
8 検出光学系
9 光検出器
10 コレクタレンズ
13 リレーレンズ
15 対物レンズ
17 リレーレンズ
20 受信器
21 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に固定され、被検体の動作とともに移動させられる可搬装置と、
前記被検体の外部に配置された外部装置と備え、
前記可搬装置が、光源と、該光源からの光を被検体の観察対象部位に照射する照明光学系と、前記観察対象部位からの光を導光する検出光学系と、該検出光学系により導光された光を検出し電気信号に変換する光検出器と、該光検出器から出力された電気信号を無線により送信する送信器とを備え、
前記外部装置が、前記可搬装置から送信されてきた電気信号を受信する受信器と、該受信器により受信された電気信号を処理する信号処理部とを備える光学的観察システム。
【請求項2】
前記照明光学系が、前記光源からの光を集光するコレクタレンズと、該コレクタレンズにより集光された光を集光して前記観察対象部位に照射する対物レンズとを備え、
前記コレクタレンズおよび前記対物レンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されている請求項1に記載の光学的観察システム。
【請求項3】
前記コレクタレンズにより集光された前記光源からの光を前記対物レンズの瞳にリレーするリレーレンズを備え、
該リレーレンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されている請求項2に記載の光学的観察システム。
【請求項4】
前記検出光学系が、前記対物レンズにより集光された前記観察対象部位からの光を前記光検出器にリレーするリレーレンズを備え、
該リレーレンズが、GRINレンズまたは非球面レンズにより構成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学的観察システム。
【請求項5】
被検体に該被検体とともに移動させられる可動装置を固定して、該可動装置の光源からの光を前記被検体の観察対象部位に照射するステップと、
前記可搬装置が、前記観察対象部位からの光を検出し、電気信号に変換するステップと、
前記可搬装置が、電気信号に変換された検出光の情報を無線により送信するステップと、
前記可搬装置から送信されてきた電気信号を、前記被検体の外部に配置された外部装置により受信して処理するステップとを含む被検体の観察方法。
【請求項6】
前記可搬装置が、前記光源からの光の射出および前記観察対象部位からの光の集光を行う対物レンズを備えるとともに、該対物レンズが前記観察対象部位に刺される尖端を備える請求項5に記載の被検体の観察方法。
【請求項7】
前記観察対象部位が、前記被検体の脳である請求項5または請求項6に記載の被検体の観察方法。
【請求項8】
前記観察対象部位からの光が、蛍光または発光である請求項5から請求項7のいずれかに記載の被検体の観察方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19806(P2013−19806A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154172(P2011−154172)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】