説明

光学的計測装置

【課題】位相シフト法による干渉縞を用いた高さ計測装置において、位相シフト画像に内包する各種ノイズ成分の影響を抑制し高精度な光学的計測装置を提供する。
【解決手段】測定対象物の測定面の高さと上記測定面の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係を所定の演算式に数式化するとともに、上記測定対象物の測定面の高さと測定面の高さに応じた上記複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との組合せを、同数式化した所定の演算式に基いて演算し、この演算により求めた位相情報を位相コード変換テーブルに反映させることによって、上記測定対象物の測定面の高さを計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば半導体ウエハ、液晶ディスプレ、ガラス基板、機械部品の表面テクスチャ、金属膜のような微小物体の段差面等の高さを、波長の異なる単色光を利用して計測する光学的計測装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今例えば図5に、そのような従来の微小物体の段差面等の高さを計測する光学的計測装置の構成の一例を示している。この光学的計測装置は、複数の異なる波長の光(例えばR・G・B)を発生する第1、第2、第3の光発生手段L1、L2、L3と、これら第1,第2,第3の光発生手段からの各波長の光を波長毎に分岐選択して透過させる第1,第2,第3の狭帯域フィルタF1、F2、F3と、それら第1,第2,第3の狭帯域フィルタF1、F2、F3を介して分岐された光を所定の方向に向けて合流させるとともに、測定対象物Wの測定面への照射光と参照ミラーMRへの参照光との2つの光に分けて照射する第1、第2、第3、第4のビームスプリッタB1、B2、B3、B4と、上記参照光を形成する参照ミラーRMと、該参照ミラーRMを左右両方向に回転させる回転駆動手段Dと、測定対象物Wと、該測定対象物Wを光軸方向に所定量だけ微小移動して光路長を変えるナノステージSTと、該ナノステージSTにより光路長を変えられた各波長の光による干渉画像を波長ごとに選択して撮影するための狭帯域フィルタを内蔵しているCCD等の撮像手段(カメラ)CAMとを備えて構成されている。
【0003】
上記第1,第2,第3の複数の光発生手段L1、L2、L3から照射されたR・G・B各波長の光は、上記第1,第2,第3の狭帯域フィルタF1、F2、F3を介して波長毎に正確に分岐された後に、先ず第1,第2,第3のビームスプリッタB1、B2、B3でそれぞれ第4のビームスプリッタB4方向に反射され、同第4のビームスプリッタB4部分で測定対象物Wへの照射光と参照ミラーRMへの参照光との2つの光に分けられて照射されるようになっている。
【0004】
そして、測定対象物Wからの反射光、及び参照ミラーRMからの反射光は、それぞれ再び第4のビームスプリッタB4部分で合流して干渉像を形成しながら、撮像手段CAMに入力され、その波長こどの干渉画像を撮像することで、各波長ごとの干渉画像が観察される。
【0005】
すなわち、上述のナノメータステージSTを光軸方向に数ナノメートル単位で微小移動させ、光路長を所望の所定の距離(ΔL)毎に変化させると、上記ナノメータステージST上に設置されている測定対象物Wの測定面からの反射光と参照光との光路長に差異が生じて干渉状態が変化するため、形成される干渉画像の明るさは正弦波状に変わっていく。これは光路長の差異が、第1,第2,第3の光発生手段L1、L2、L3の波長の1波長分だけ変化すれば、像の明るさは各波長の1周期分変化する位相として記録できることを意味する。
【0006】
今例えば、上記ナノメータステージSTを光軸方向に所定の距離移動させる時の移動量の単位(ΔL)として、光の波長の約数となる単位波長(例えば波長が660nmならば、5nm、10nm等)を選定し、この単位量(単位波長ΔL)ごとに各波長の光の明るさ変化を求めると、図6のように単位量(単位波長ΔL)ごとの明るさ変化の位相として記録することができる。
【0007】
また図7のように、段差面を持つサンプルを測定対象物Wとして用いた場合、光路長の差異は測定対象物Wの表面の凹凸に応じて場所ごとに異なるため、干渉画像中の明るさ変化の分布は各画素によって異なっており、この各画素ごとの明るさの違いは、上記ナノメータステージSTを光軸方向に移動させる時の単位量(単位波長ΔL)ごとの明るさ変化量に相当する。
【0008】
つまり、図6のように、単位量(単位波長ΔL)ごとの明るさ変化の位相を予め求めて記録しておけば、干渉画像中の各画素ごとの明るさ変化から、「1周期の単位量(単位波長ΔL)に対する単位量あたりの測定回数の割合」を導き、さらに「測定回数の割合」と「単位量(単位波長ΔL)」との積算によって各画素間の相対高さHを求めることができる。
【0009】
ところで、図6から分るように、正弦波状の明るさ変化は波長の1周期で元に戻るため、1波長の光源だけでは光路長の差異が1波長分となる高さまでしか干渉縞として表現できない。また、図5に示した計測装置の構成から分るように、光路長の差異は第4のビームスプリッタB4から測定対象物Wまでの距離の往復間で生じるため、光路長の差異が1波長分となる高さ、すなわち1波長で計測可能な高さHは、光源波長の半分(λ/2)となる。
【0010】
このように1波長の光源での計測可能な高さHは、光源波長の半分(λ/2)に限られ、しかも1枚の干渉画像だけでは測定対象物Wのどの部分が突出しているのか、或いは凹んでいるのかがわからず、単に各画素間での相対的な高さしか判断できない。
【0011】
そこで、上記図5の計測装置では、複数の異なる波長の光源を使用して、図8のように位相シフトするようにしている。このようにすれば、光路長の差異による明るさ変化の周期は各波長に依存しているので、可干渉距離内での数周期の干渉縞を観察すると、各光源波長の半分(λ/2)で繰り返される明るさ変化が、波長によって少しずつずれて繰り返されることになる。
【0012】
つまり、図9のように、ある1つの波長が1周期を終えて原点に戻っても、他の波長がまだ変化の途中にあるので、複数波長の明るさの組合せを利用すれば、単一波長の場合の計測距離より遥かに長い距離での、明るさ変化と位相シフト量との記録をとることができる。
【0013】
これは、例えば図10のように、可干渉距離内で現れる各波長の干渉縞の明るさ変化のズレを、単位量(単位波長ΔL)ごとの明るさの組合せとみなし、光源(波長)1と光源(波長)2との明るさ変化の組合せを位相コード変換テーブルとして記録しておけば、各波長の明るさ変化をλ/2より細かな分解能で分割することができる上、いずれの光源波長の1波長分よりも大きい距離での計測が可能になることを意味している。
【0014】
例えば、図10のように、単位量(単位波長ΔL)で見て、光源1では0−4の5段階、光源2では0-3の4段階で評価している場合、その組み合わせ数は20種類となる。これは単一波長での計測可能な高さと比べると、光源1では4倍、光源2では5倍に計測可能な距離が増加することを意味する。
【0015】
これら2つの波長を用いて、同じ明るさ変化の組合せが再び現れるまでの数値を一覧表にすれば、例えば図11のような位相コード変換テーブルになる。なお、図11は、説明を簡単にするために、一例として2波長の場合で作成しているが、上述の図5の3つの波長の光を利用すれば、3次元構造となる。
【0016】
そして、このような位相コード変換テーブルを利用して高さ計測をするためには、上述した図5の計測装置を用いて、上記ナノメータステージSTを光軸方向に上記単位量(単位波長ΔL)ごとに移動させて干渉縞の明るさを変化させながら、上述した図7のような段差を持つ測定対象物Wの干渉縞画像を撮像するか、或いは同図5の計測装置の参照ミラーRMを故意に傾け、同参照ミラーRMと測定対象物Wとの間の反射光の光路長に差異を設けて干渉縞の明るさを変化させた干渉縞画像を撮像することなどにより、各画素位置ごとの複数波長による干渉縞の位相の組合せを求めて、それらをパラメータとして各波長の位相コード変換テーブルを参照するようにすれば、所望の高さHを算出することができる(特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特願2009-028723号(平成21年2月10日出願の明細書および図面)
【特許文献2】特願2007-219054号(平成19年8月24日出願の明細書および図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、上記のような従来の計測装置の場合、上述のように事前に画像データを準備しなければならないことから、当該画像取得時点でノイズ(例えば振動、カメラの熱雑音など)を内包している問題がある。
【0019】
すなわち、上記図11の位相コード変換テーブル作成のためには、上述のように複数枚の位相シフト画像、または参照ミラーRMを故意に傾けて、参照ミラーRMと測定対象物Wとの反射光の光路に差異を設けて干渉縞の明るさを変化させた干渉縞画像を事前に準備しておかなければいけないが、以下のような理由により、各種のノイズ成分を内包してしまう。
【0020】
例えば、複数波長での干渉縞の明るさ変化の組合せから位相コード変換表を作成する際、上記ナノメータステージSTを、ある単位量(単位波長ΔL)ごとに移動させて、その時に得た明るさ変化の組合せをシフト量(=高さ=単位波長×測定回数)に対応させて、コード表を作成していたが、その場合にナノメータステージSTのヒステリシスによる位置ズレやナノメータステージST駆動時の振動などによるノイズ成分を画像情報内に内包してしまう。
【0021】
また、複数の画像を取得する間に、CCD等撮像カメラ特有の熱雑音やショット雑音がランダムに発生することで、画像間の位相情報に差異が生じることもある。
【0022】
また、次に測定光の波長が区切りの良い数値でないことによる問題もある。
【0023】
例えば干渉縞を発生させるための光源波長が、450nm、600nmのような区切りのよい数値となるのは稀で、453nm、667nmのような端数となりやすく、また、他の光学部品の影響で、本来想定している波長域からずれてしまうこともある。そのため、仮にナノメータステージSTを単位量(単位波長ΔL)ごとに移動させることができたとしても、図5のナノメータステージSTの上下動による位相シフトでの明るさ変化を、波長[nm]のような物理的な単位量(例えば450nm、600nmに対する、5nmや10nmのような公約数等)で分割してコード表を作成することができず、コード表の軸方向データが光源波長と不整合となってしまい、高さ情報を規則正しく並べることができなくなる。
【0024】
さらに、波長[nm]のような物理的な単位量で分割しやすくするために、例えば453nm→450nm、607nm→605nmのように近似量とするようにしても、コード間の高さデータに不整合が生じてしまい、測定対象の高さが高くなるほどコード間の不整合による影響を受けて誤差が累積していくため、例えば上記特許文献2中に示されているような、補正作業を別途付随させていく必要が生じる。
【0025】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、段差面等の高さと段差面等の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像の画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係を数式化し、段差面等の高さと段差面等の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像の画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との組合せを、同数式による演算によって求めた位相情報を反映させた位相分割方式のものとすることによって、上述のような問題を生じさせることなく、微小物体の高さ等を正確に計測することができるようにした光学的計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明は、同目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0027】
(1) 請求項1の発明
この発明の課題解決手段は、複数の異なる波長の光を発生する光発生手段と、この光発生手段から発せられた光を上記複数の波長の光に分岐し、それぞれ光路長の異なる別々の光路を通した後に再び重ね合わせて、それら光路長の差に応じた干渉縞を生じさせる干渉縞発生手段と、この干渉縞発生手段によって生じた干渉縞を撮像する撮像手段と、この撮像手段で得た干渉縞画像から、上記光の波長ごとの明るさ変化と位相との関係を解析する画像解析手段と、測定対象物の測定面の高さに応じて干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相を上記光の複数の異なる波長ごとに求めて、当該測定面の高さと位相とを組み合わせた位相コード変換テーブルと、上記画像解析手段によって得た位相情報をパラメータとして、上記位相コード変換テーブルを参照することにより、上記測定対象物の測定面の高さを求める高さ演算手段とを備えてなる光学的計測装置であって、上記測定対象物の測定面の高さと上記測定面の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係を所定の演算式に数式化するとともに、上記測定対象物の測定面の高さと同測定面の高さに応じた上記複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との組合せを、同数式化した所定の演算式に基いて演算し、この演算により求めた位相情報を上記位相コード変換テーブルに反映させることによって、上記測定対象物の測定面の高さを計測するようにしたことを特徴としている。
【0028】
以上の構成では、従来のように、明るさ変化と位相の組合せを表す単位量を、上記ナノメータステージSTを光軸方向に移動させる時の単位量として取得した画像をもとに位相コード変換テーブルを作成するのではなくて、上記測定対象物の測定面の高さと上記測定面の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係を所定の演算式に数式化するとともに、上記測定対象物の測定面の高さと同測定面の高さに応じた上記複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との組合せを、同数式化した所定の演算式に基いて演算し、この演算により求めた位相情報を上記位相コード変換テーブルに反映させ、それによって、上記測定対象物の測定面の高さを計測するようにしている。
【0029】
したがって、例えば分光器などによって、光源の中心波長を予めデータとして取得しておけば、計算によって求まる高さ計測が可能な範囲において、波長を異にする複数の光源からの光の干渉によって得られる干渉縞の位相変化と高さとの関係(組み合わせ)を位相をコード変換テーブルとして記録することができるようになるため、位相をシフトさせるためのナノメータステージによる位置ズレや、ナノメータステージ駆動時の振動による雑音、またはCCD等撮像カメラ特有の雑音、さらに複数の光源の中心波長のズレによる位相コード変換テーブルのデータ不整合、或いは同複数の光源の中心波長ズレに対応した別途の補正作業に起因する問題を解消することができる。
【0030】
従来法では、上述のように複数枚の位相シフト画像、または参照ミラーRMを故意に傾けることで、参照ミラーRMと測定対象物Wとの反射光の光路に差異を設け、干渉縞の明るさを変化させた干渉縞画像を予め複数枚準備するうちに、作成した位相コード変換テーブルに各種のノイズ成分を内包してしまうため、複数の波長の光(R・G・B)による干渉画像をもとに高さデータへ変換しても、後述する図3の画像のように精度の悪い演算結果となってしまう。
【0031】
一方、この発明によると、段差面等の高さと、段差面等の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像の画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係が正確に反映され、図4のように、高精度に表面形状を表すことができる。
【0032】
(2) 請求項2の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、所定の演算式に基く干渉画像内各点の光の明るさ変化に対応した位相情報の演算は、予じめ光発生手段からの各光の中心波長をデータとして取得して置き、同取得した光の中心波長を基にして演算するようになっていることを特徴としている。
【0033】
このような構成の場合、上述の如く、例えば分光器などによって、光源である発生手段からの光のの中心波長を予めデータとして取得しておけば、計算によって求まる高さ計測が可能な範囲において、波長を異にする複数の光源からの光の干渉によって得られる干渉縞の位相変化(シフト量)と高さとの関係(組み合わせ)を位相コード変換テーブルとして正確に記録することができるため、従来のような位相をシフトさせるためのナノメータステージによる位置ズレや、ナノメータステージ駆動時の振動による雑音、またはCCD等撮像カメラ特有の雑音、さらに複数の光源の中心波長のズレによる位相コード変換テーブルのデータ不整合、或いは同複数の光源の中心波長ズレに対応した別途の補正作業に起因する問題等を解消することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上の結果、本願発明によると、前述した従来の光学的計測装置の問題を略確実に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明の実施の形態に係る複数の波長の光(RGB)の干渉画像を利用した微小物体の高さ等の光学的計測装置の位相コード変換テーブル作成過程における位相シフト量と干渉縞の各色の周期との関係を示す図(後述の図9のデータ高さを正規化した図)である。
【図2】本願発明の実施の形態に係る複数の波長の光(RGB)の干渉画像を利用した微小物体の高さ等の光学的計測装置の位相コード変換テーブル作成過程における波長1のコードと波長2のコードの関係を示す図(高さデータを格納する順番を示す図)である。なお、図中の0〜7は、干渉縞明るさ変化の位相の組合せから求まった高さデータを格納するインデックスの配置が、位相の組合せによって変化していく順番を表している。
【図3】従来の複数の波長の光(RGB)による干渉画像から測定対象物の高さを算出し、高さデータをグレイスケールで表現した画像である。干渉画像から求めた位相組み合わせからの高さ変換では、従来例(波長ベース)で作成した改善前の位相コード変換テーブルを利用している。なお、複数の波長の光(RGB)による干渉画像は、図4と同じものを使用している。
【図4】本願発明の実施の形態に係る複数の波長の光(RGB)による干渉画像から測定対象物の高さを算出し、高さデータをグレイスケールで表現した画像である。干渉画像から求めた位相組み合わせからの高さ変換では、本願発明(位相ベース)で作成した改善後の位相コード変換テーブルを利用しており、改善向上効果を示している。なお、複数の波長の光(RGB)による干渉画像は、図3と同じものを使用している。
【図5】本願発明が前提とする従来例に係る光の干渉画像を利用した光学的計測装置の構成(共通)を示す図である。
【図6】同装置における光路長の変化に対した測定対象物からの反射光と参照光との干渉状態の変化による測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)を示す説明図である。
【図7】同装置における測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)に対応した位相差Δθから測定対象物の高さの差を測定できることを示す説明図である。
【図8】同装置における各波長の光の位相シフト量と干渉縞の明るさとの関係を示すサイン波形図である。
【図9】同装置における複数のレーザ光の光路長変化による明るさ変化が、レーザ光の波長によって決まるため、複数のレーザ光を組み合わせることによって波長以上の計測ができることを示す説明図(位相シフト量と干渉縞の各色の周期との関係を示す図)である。
【図10】同装置において光路長をΔL毎に移動させて明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コードの組み合わせで1波長以上の長さを計測する場合のコード化方法を示す説明図である。
【図11】同装置における位相コードを高さに変換する位相コード−高さ変換テーブルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本願発明を実施するための形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0037】
先ず図1は、本願発明の実施の形態における光学的計測装置の位相コード変換テーブル作成過程における位相シフト量(高さ)と干渉縞の各色の周期との関係を示す図(前述の図9の光源毎のデータ高さを正規化した図)である。
【0038】
また、図2は、同本実施の形態の光学的計測装置の位相コード変換テーブル作成過程における波長1のコードと波長2のコードの関係を示す図(高さデータを格納する順番を示す図)である。
【0039】
なお、図中の0〜7は、干渉縞明るさ変化の位相の組合せから求まった高さデータを格納するインデックスの配置が、位相の組合せによって変化していく順番を表している。
【0040】
また、図3は、従来の波長分割方式の位相コード変換テーブルを採用して、複数の波長の光(RGB)による干渉画像から測定対象物の高さを算出し、同高さデータをグレイスケールで表現した測定面画像図である。
【0041】
また、図4は、位相分割方式の位相コード変換テーブルを採用した、本願発明の実施の形態に係る複数の波長の光(RGB)による干渉画像から測定対象物の高さを算出し、同高さデータをグレイスケールで表現した測定面画像図である。
【0042】
また、図5は、本願発明が前提とする前述した従来例に係る光の干渉画像を利用した光学的計測装置の構成(共通)を示す図である。
【0043】
この実施の形態の場合、上述した図5の装置構成を利用する点では従来例と全く同様であるが、従来のように明るさ変化と位相の組合せを表す単位量を、ナノメータステージSTを光軸方向に移動させる時の単位量として取得した画像をもとに位相コード変換テーブルを作成するのではなく、予じめ光源である第1,第2,第3の光発生手段L1〜L3の光の中心波長をデータとして取得しておき、同取得した各光源の中心波長を基に、ソフトウェアで、以下に述べるような数式(1)〜(5)を用い、同式(1)〜(5)中に含まれる単位量(単位位相θ)を基に干渉縞の明るさ(輝度)変化の位相情報を計算し、この位相情報を前述した図11の位相コード変換テーブルへ反映させるようにしたことを特徴としている。
【0044】
【数1】

【0045】
すなわち、この実施の形態では、先ず図5の第1,第2,第3の光発生手段L1〜L3の3種類の波長の光源(R・G・B)による干渉縞の明るさ変化(輝度変化)に対応する数式を上記(1)〜(5)とし、以下の手順[1]〜[5]でコード表を作成する。
【0046】
これら(1)〜(5)式の内、(1)式は高さ計測が可能なレンジを示しており、また(2)〜(4)式は上述した第1,第2,第3の光発生手段L1〜L3のRGB各光源の波長に対応した高さ(位相シフト量)演算式であり、縞となって現れる高さHと位相θとの関係を示している。さらに、(5)式は、測定対象物Wの段差面等の測定面の高さは、本来R・G・B何の波長の光で測定しても同一である筈であるから、上記(2)〜(4)で演算したR・G・B各波長ごとの高さの差が最小(理論的にはゼロ)になることを示している。
【0047】
[1]先ず上記R・G・B3種類の光源波長の中心波長(λ)と半値全幅(Δλ)を求め、上述の数式(1)に基づいて各光源R・G・Bの中心波長での単位量(単位位相θ)の計測可能な範囲(計測レンジL)を算出する。
【0048】
そして、式(2)〜(4)中の変数 i、j、k の組合せを全て求める。これは、位相差が1波長を越える場合の各単位位相θの組合せを表しており、測定対象物Wの高さHに応じた光源波長の位相変化が1波長を越えた場合でも、高さデータが図11の位相コード変換テーブル内に収まるようなインデックスの組合せを調べることに相当する。
【0049】
[2]続いて、先に求めた変数i、j、kの組合せごとに、上記R・G・B各光源の波長に対応した演算式(2)〜(4)中の単位量(単位位相θ・・・単位は[rad]であり、図11の位相コード変換テーブルのインデックスに相当する)の組合せを、全てソフトウェアで計算する。
【0050】
これらの式(2)〜(4)は、単位量の組合せが、位相差が1波長以下である場合の単位位相θの組合せであることを表し、またR・G・B複数光源による干渉縞位相のすべての組合せが、1波長内の変化量として図11の位相コード変換テーブルに収まるようなインデックスを作成することに相当する。
【0051】
例えば、各波長による干渉縞の明るさ(輝度)変化1周期(360 [rad])を、位相 5 [rad]単位で分割して図11の位相コード変換テーブルを作成する場合、各波長に相当する光軸成分を72[個](= 360[rad]÷5[rad])とすることができ、例えば2つの波長の光源を用いるとすれば、その場合の位相の組合せは72×72=5,184 通りとなる。
【0052】
[3]そこで、予め計算した単位位相θの組合せを、上記式(2)〜(4)に代入し、さらに周期中の順番(何番目か)を示す変数 i、j、k の組合せを変化させ、上記R・G・B各波長に該当する高さHR、HG、HBを演算する(但し、上記変数i、j、kは、式(1)の計測レンジ範囲内から選出する)。
【0053】
ここで、上記HR、HG、HBはR・G・B3種類の異なる波長によって算出される高さ(位相シフト量)、λはR・G・B各光源の3種類の各波長、θは同各波長λから得た干渉縞の明るさ(輝度値)変化の位相量を表し、i,j,kはゼロを含む定数項(0,1,2,3・・・)を表す。
【0054】
[4]続いて、上述の式(5)を基に、R・G・B各波長に該当する高さHR、HG、HBの差異が最も少なくなる組合せを求める。
【0055】
これは、位相差が1波長を越える場合の各単位位相θi,θj,θkの組合せを表しており、測定対象物Wの段差面の高さHに応じたR・G・B各光源波長の位相変化が1波長を越えた場合でも、高さデータが図11の位相コード変換テーブル内に収まるようなインデックスの組合せを調べることに相当する。
【0056】
[5]そして、上記高さHR、HG、HBの差異が最も少なくなるときの、同高さHR、HG、HBの平均値を求め、該当するインデックスに格納する。
【0057】
このようにして、干渉縞明るさ変化の位相の組合せに応じて、検出高さHを格納していくと、例えば図2のように、位相コード値が0から1へと移り、波長1が1波長分変化すれば1から2へと飛んで、さらに2から3へと移り、続いて波長2が1波長分変化すれば3から4へ飛んで、さらに4から5へと移る、という操作が適用範囲(計測レンジLの範囲内)まで繰り返されていくことになる。
【0058】
このような構成の場合、例えば分光器などによって、上記R・G・B3つの波長の光源の中心波長を予めデータとして取得しておけば、計算によって求まる高さ計測が可能な範囲(計測レンジL)において、波長を異にするR・G・B各光源からの光の干渉によって得られる干渉縞の位相変化と高さとの関係(組み合わせ)を位相をコード変換テーブルとして正確に記録することができるため、従来の位相をシフトさせるためのナノメータステージによる位置ズレや、ナノメータステージ駆動時の振動による雑音、またはCCD等撮像カメラ特有の雑音、さらに複数の光源の中心波長のズレによる位相コード変換テーブルのデータ不整合、或いは同複数の光源の中心波長ズレに対応した別途の補正作業に起因する問題を解消することができる。
【0059】
今、先ず図3に、前述した従来の波長分割方式によって作成した位相コード変換テーブルを用いて所定の測定対象物Wの段差面(上下方向の下から1/3のライン部分に上下方向の段差がある)の左右方向の高さを測定した時の測定画像図を、また図4に、上記本実施の形態の位相分割方式によって作成した位相コード変換テーブルを用いて同様の測定対象物Wの段差面(上下方向の下から1/3のライン部分に上下方向の段差がある)の左右方向の高さを測定した時の測定画像図を示す。
【0060】
これら図3,図4の画像データを対比すると明らかなように、図3の測定画像の場合には、左側から右側方向に次第に高さHが高くなる段差面の高さ変化のコントラスト(低い方から高い方に次第に薄くなる)が必ずしも明確でなく、実際には左側から右側にかけて次第に高さが高くなっているにもかかわらず、中央部で画像が乱れてしまっており、また左右方向の高さ変化を示す下方側の波形図(チャート)も乱れており、正確な画像データとなっていない。
【0061】
一方、これに対して、図4の場合には、左右方向の高さの変化に応じたコントラストの変化も明瞭で、下方側の左右方向の高さの変化を示す波形図、また上下方向の段差部を表わす右側の波形図も、それぞれ略正確に表わされている。したがって、上述した本実施の形態の光学的計測装置によると、従来のように、ノイズ成分に影響されることなく、高精度な測定が可能になることが分る。
【0062】
なお、以上の場合、図3,図4において、その測定対象面は、図示上下方向の略中央部が選ばれている。
【符号の説明】
【0063】
L1,L2,L3は第1,第2,第3の光発生手段、B1〜B4は第1〜第4のビームスプリッタ、CAMは撮像手段、F1〜F3は狭帯域フィルタ、RMは参照光ミラー、STはナノメータステージ、Wは測定対象物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる波長の光を発生する光発生手段と、この光発生手段から発せられた光を上記複数の波長の光に分岐し、それぞれ光路長の異なる別々の光路を通した後に再び重ね合わせて、それら光路長の差に応じた干渉縞を生じさせる干渉縞発生手段と、この干渉縞発生手段によって生じた干渉縞を撮像する撮像手段と、この撮像手段で得た干渉縞画像から、上記光の波長ごとの明るさ変化と位相との関係を解析する画像解析手段と、測定対象物の測定面の高さに応じて干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相を上記光の複数の異なる波長ごとに求めて、当該測定面の高さと位相とを組み合わせた位相コード変換テーブルと、上記画像解析手段によって得た位相情報をパラメータとして、上記位相コード変換テーブルを参照することにより、上記測定対象物の測定面の高さを求める高さ演算手段とを備えてなる光学的計測装置であって、上記測定対象物の測定面の高さと上記測定面の高さに応じた複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との関係を所定の演算式に数式化するとともに、上記測定対象物の測定面の高さと同測定面の高さに応じた上記複数の異なる波長の光による干渉縞画像内の各点の明るさが変化する部分の位相との組合せを、同数式化した所定の演算式に基いて演算し、この演算により求めた位相情報を上記位相コード変換テーブルに反映させることによって、上記測定対象物の測定面の高さを計測するようにしたことを特徴とする光学的計測装置。
【請求項2】
所定の演算式に基く干渉画像内各点の光の明るさ変化に対応した位相情報の演算は、予じめ光発生手段からの各光の中心波長をデータとして取得して置き、同取得した光の中心波長を基にして演算するようになっていることを特徴とする請求項1記載の光学的計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−154765(P2012−154765A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13669(P2011−13669)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】