説明

光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置

【課題】2つの屈折率分布間の距離を、精度よく、非破壊で、高速に測定可能な光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置を実現する。
【解決手段】光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体60の距離が0.7λ以上15λ以下であり、2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上であり、散乱光強度の角度分布またはある角度での散乱光強度の波長分布を角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの領域の距離を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置に関し、特に、2つの凸部のような2つの屈折率分布を発生する部材(後記するが、これを本明細書及び発明では「光散乱体」という)間の距離を精密に測定する技術であって、高密度記録媒体のデータ読み出しや、集積回路の微細金属配線の間隔のオンライン検査に適用可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学的に高密度記録に記録し、これを計測、読取する技術として、相変化型記録、ホログラム記録、2スリット回折等の手段がある。
【0003】
相変化型記録は、相転移温度以上の高温を与えた後、急冷すると結晶構造が非結晶化(アモルファス)し、一方で、徐冷すると再び結晶化する材料を記録層として用い、両状態の反射率の差を用いて情報の記録を行い、また再生を行う手段である(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
ホログラム記録では、データを空間変調器で変調された物体光と参照光の2つの光を記録媒体上で干渉させ、その干渉縞を記録媒体に物理変化として記録し、再生時には参照光のみ照射して回折光を読み取る手段である(非特許文献2参照)。
【0005】
2スリット回折は、1つの光源からの光を2つのスリットを通して干渉させ、スリットとスリットの距離により、変化した干渉縞を読み取る手段である(非特許文献3参照)。
【0006】
2スリットの散乱についてはヤングの実験が知られている。スリットの場合には、光軸方向に高さ(深さ)のある屈折率を発生する手段ではないので、散乱体の材質や厚さ考える必要はなく、散乱光の角度分布について、フラウンホーファー回折の近似を用いて簡便に求めることができる。この角度分布は、角度の正弦に対して、周期的に変動することが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
また、フラウンホーファー回折近似を用いて、複数の2スリット間の距離を得ることができる(非特許文献2参照)。非特許文献2では特殊なフーリエ変換を用いているが、このフーリエ変換については、すでに知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
スリットでなく、凹凸のある形状のときには、FDTD(時間領域差分)法や境界要素法を使って光散乱強度を計算できることは知られている(例えば、非特許文献4、5参照)。しかし、これらの方法は、計算時間がかかったり、異なる形状に適用するためにプログラムを書きなおす必要があったりして、様々な形状を比較検討するのには不適である。また、光散乱強度の精度については信頼性が低い。
【0009】
他方、凹凸が周期的に変化するときには、RCWA(厳密結合波解析)を用いることができる。RCWAはFDTD法や境界要素法より、簡便に計算でき、計算速度が速く、精度も良いことがすでに知られている(例えば、非特許文献6、7)。しかし、孤立した凹凸については、RCWAは一般には適用できない。
【0010】
これまで、孤立した2つの凹凸、より一般的には2つ屈折率を発生する部材の散乱光の角度分布や波長分布から、2屈折率を発生する部材間の距離をフーリエ変換で求めた研究例はない。従来法では、屈折率を発生する部材を、光軸方向に高さのないスリットとして近似して特殊なフーリエ変換をしている(非特許文献2参照)。他方、別のいくつかの方法でこの距離が求められている。
【0011】
屈折率を発生する部材間の距離の光学的測定技術の第一の例として、回折格子の間隔をX線回折により求める方法がある(非特許文献8参照)。この方法は、等間隔に多数並んだ屈折率を持つ部材の間隔を求めるのに有効である。
【0012】
屈折率を発生する部材間の距離の光学的測定手法の第二の例として、3次元的に複数の方向の入射光について、それぞれの散乱光の角度分布を集めることで、凹凸像を得る方法がある(非特許文献2)。この像から、2つの屈折率を発生する部材の重心間の距離を精密に求めることができる。一方で、一方向の入射光についてのデータで、屈折率を発生する部材間の距離を短時間に測定するには不向きである。
【0013】
屈折率を発生する部材間の距離の光学的測定手法の第三の例として、共焦点顕微鏡がある。共焦点顕微鏡は、対物レンズからの光が試料面に垂直方向にすすむとき、水平方向の分解能はレンズの集光径で決まる。この水平方向の分解能は回折限界のため、0.3波長程度が限界である(非特許文献9)。しかし、垂直方向の分解能は非常に高い。同じ原理で、レンズを用いて凹凸を観測すれば、記録媒体の段差が小さくても読み取りができる。
【0014】
光学的記録媒体の例として、相変化型光ディスクがある。この媒体は、結晶とアモルファスで光の散乱特性が異なることを利用して、1と0を記録する(特許文献2参照)。この最大記録密度は、レンズの集光径できまり、1ビットあたり、0.8波長角程度が規格とされている(非特許文献1)。ディスク1枚で1層当たり25Mbyteのものが市販されている。
【0015】
光学的記録媒体の別の例としてホログラムがある。この媒体は、位相情報を屈折率分布として記録する方法であり、記録は物体光と参照光を用いてなされ、物体光の再生は参照光でなされる(非特許文献10)。物体光を碁盤目状に区切った空間光変調器(SLM)とし、各升目を透過する場合と透過しない場合を1と0に対応させることでデジタルデータを記録できる。
【0016】
1層当たりの記録密度は相変化型光ディスクより高いが、材料が特殊なことと読み取りエラーが多いことが課題である。そのため、品質管理が難しい。記録密度については、記録層に厚みがあり、重ねて記録できるので、高密度にできる。ディスク1枚で200Mbyteのものが発表されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2001−096919号公報
【特許文献2】特開2006―331901号公報
【特許文献3】特開2007−264613号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】清水 明彦ら:”相変化型光ディスクへの多値記録技術”、Ricoh Technical Report、28、2002年、p .34〜p .41
【非特許文献2】Yoshinori Nishino, Yukio Takahashi, Naoko Imamoto, Tetsuya Ishikawa,Kazuhiro Maeshima著、”Three-Dimensional Visualization of a Human Chromosome Using Coherent X-Ray Diffraction" Physical Review Letters, 102巻, 018101号、2009年、p .1〜p .4
【非特許文献3】谷田貝 豊彦著:”光とフーリエ変換”、朝倉書店、1992年
【非特許文献4】Ronald E. Mickens編, ”Advances in the Applications of Nonstandard Finite Difference Schemes”, World Scientific、2006年
【非特許文献5】加川 幸雄, 武田 毅と榎園 正人著:”電気・電子境界要素法―基礎と応用 (計算電気・電子工学シリーズ) ”、森北出版、2001年
【非特許文献6】M. G. Moharamと T. K. Gaylord著, “Diffraction analysis of dielectric surface-relief gratings,” Journal of Optical Society of America. 72巻,1982年、p .1385 〜p .1392
【非特許文献7】M. G. Moharam, Drew A. Pommet, Eric B. Grann, T.K. Gaylord著:” Stable implementation of the rigorous coupled-wave analysis for surface-relief gratings:enhanced transmittance matrix approach.” Journal of Optical Society of America A、12巻、5号、1995年, p .1077〜p .1086
【非特許文献8】Ronald L. Jones, Tengjiao Hu, Eric K. Lin, Wen-Li Wu, Rainer Kolb, Diego M. Casa, Patrick J. Bolton, and George G. Barclay著:”Small angle x-ray scattering for sub-100 nm pattern characterization”,APPLIED PHYSICS LETTERS, 83巻, 2003年, p .4059〜p .4061
【非特許文献9】高森 信之、山本 真樹、森 豪、田島 秀春、高橋 明:”ZnO 超解像技術を用いた大容量次世代Blu-ray Disc”、シャープ技報、第90号、2004年、p .31〜p .36
【非特許文献10】服部 覚、佐藤 伸:”ホログラフィックデータストレージの技術動向”、東亞合成研究年報 TREND 2005、8巻,2005年、p .26〜p .28
【非特許文献11】志村 努:”光メモリーの現状と今後の展望”、 応用物理、第79巻、第12号、2010年、 p .1059〜p .1064
【非特許文献12】Yoshiyasu Ito, Katsuhiko Inaba, Kazuhiko Omote, Yasuo Wada, and Susumu Iked著:” Characterization of Submicron-scale Periodic Grooves by Grazing Incidence Ultra-small-angle X-ray Scattering”, Japanese Journal of Applied Physics, 46巻, 2007年, p . L773〜p . L775
【非特許文献13】Masato Hoshino and Sadao Aoki著:” Laser Plasma Soft X-ray Microscope with Wolter Mirrors for Observation of Biological Specimens in Air”, Japanese Journal of Applied Physics, 45巻, 2006年, p .989〜p .994
【非特許文献14】辻内順平著:”光学概論I―基礎と幾何光学―”、朝倉書店、2002年
【非特許文献15】Shinya Yoshioka and Shuichi Kinoshita著:” Wavelength-selective and anisotropic light-diffusing scale on the wing of the Morpho butterflyM.” Proceedings of the Royal Society London B、271巻、2004年, p . 581〜p . 587
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
2つの屈折率を発生する部材間の距離について、フラウンホーファー回折に基づいたスリットのような光軸方向に高さのない形状に適用される距離の測定方法を、例えば凹凸等の高さのある形状に適用すると、次のような問題があることが本発明より明らかとなっている。
(1)屈折率を発生する部材の形状によっては、フーリエ変換によって得られる距離が、実際の距離と異なる。
(2)屈折率を発生する部材の形状が同じでも、高さや幅が異なる場合、フーリエ変換によって得られる距離が、実際の距離と異なる。
(3)上記(1)(2)のように高さの影響が考慮できないので、平板に埋め込まれており、平板と屈折率差が小さいが高さのある領域について、取り扱いができない。
【0020】
また、スリットを記録媒体に用いた場合、次のような問題がある。
(1)透過率が低くなるので多層化が難しい。
(2)多数の屈折率を発生する部材がある場合、端の屈折率を発生する部材からの距離を求めるには、端の屈折率を発生する部材にあたる入射光の輝度を上げるという光源側の工夫がいる。
(3)スリットの作成が面倒であり、さらに、いったんスリットを形成するとスリットの位置を変更できないので、書き換えができない等の問題がある。
【0021】
また、従来の光記録技術である相変化型記録は、記録密度が記録用レンズの集光径によって制約を受けるため、記録密度を上げるのが難しいという問題がある。また、ホログラム記録は、その実施に必要な装置は複雑であり、さらに、記録面の屈折率分布も複雑であるため、記憶媒体等の作成、品質管理等が面倒であるという問題がある。一方、従来の計測技術である共焦点顕微鏡についても、対物レンズの集光径によって制約を受けるため、計測精度を上げるのが難しいという問題がある。
【0022】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、2つの屈折率を発生する部材による光の散乱パターンと2つの屈折率を発生する部材間の距離および分布の形状の関係を明らかにして、2つの屈折率を発生する部材間の距離を、精度よく、非破壊で、高速に測定する技術を実現することを課題とする。
【0023】
また、本発明は、多層化が可能で記録密度を大きく向上でき、記録媒体の作成、品質検査が容易にでき、計測が非破壊で高精度にできる、高密度記録媒体の計測、読取等に利用可能な光学的計測技術を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求めることを特徴とする光学的測定方法を提供する。
【0025】
2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長は、所定の波長範囲λからλ(λ≦λ)を使用し、100×λ>λであって、前記2つの光散乱体の屈折率nは、空気の屈折率nと異なり、前記2つの光散乱体は、互いに同じ種類の形状で1組または2組以上が、互いに距離wm(m=1,2,3・・・mmax)を隔てて、屈折率n1の平板上に存在する構成、または屈折率n(n≠n)の平板内部に存在する構成であり、2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度は、該散乱光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で、2つの光散乱体を通った光が干渉した光を測定し、この2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向は、入射光と光散乱体を結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって、2つの光散乱体を結ぶ軸方向を含まない範囲の方向であることが好ましい。λとλの範囲は、光源や散乱光測定機の測定範囲と2つの光散乱体を通った散乱光が干渉できる距離wによって制約を受けるため、100×λ>λであることが好ましい。
【0026】
2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλからλであり(ここでλ1≦λ)、空気の屈折率がn、2つの光散乱体を設けた平板の屈折率がnであり、2つの光散乱体は、互いに同じ種類の形状で1組または2組以上設けられており、屈折率がn(n≠n)で、各組の2つの光散乱体間の距離がwm(m=1,2,3・・・mmax)であって、平板上に存在する構成または屈折率がn(n≠n)で、2つの光散乱体間の距離がwmで平板内部に存在する構成であり、2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度は、該散乱光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で干渉させることによって測定することが好ましい。また、2つの領域に隣接して距離wm+1の別の2つの領域が存在する場合は、wm+1のいずれかはwmと同じではない方が、違う距離として認識できるので好ましい。さらに、n−nの絶対値が2.5以下である方が、透過光を多くできるので好ましい。
【0027】
2つの屈折発生体の重心を結ぶ軸を含み入射光に平行な平面における光散乱体の断面が矩形、楕円形または正弦形の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換し、三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することが好ましい。
【0028】
この光学的測定方法では、2つの屈折発生体の重心を結ぶ軸を含み入射光に平行な平面における2つの光散乱体の断面の面積が5%以上異なるときに、ピークの横軸から読み取った2つの光散乱体の距離を1%以上補正するようにしてもよい。
【0029】
この光学的測定方法では、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで求められた2つの光散乱体間の距離を、2つの光散乱体の高さや幅が異なるとき、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法で得られた光散乱分布についてフーリエ変換した結果に基づいて、補正するようにしてもよい。
【0030】
本発明は上記課題を解決するために、円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.7λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読aみ取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
【0031】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.05λ以上5λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の矩形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1としてもよい。
【0032】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.1λ以上10λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の正弦形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1としてもよい。
【0033】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.5λ以上5λ以下で、高さdが0.25v以上2v以下の三角形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧d、v≧vとして、0.7<(v/d)/(v/d)<1.5としてもよい。
【0034】
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された三つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.7λ以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、前記三つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、三つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
【0035】
この光学的記録媒体では、各組の2つの光散乱体について、それぞれの光散乱体の重心を直線で結び断面を切り出したときに、平均の充填係数が30〜60%であることが好ましい。
【0036】
この光学的記録媒体では、各組の2つの発生体は、平板に埋め込まれており、光または熱が付与されると屈折率が変わり、信号を記録または消去することが可能な構成としてもよい。
【0037】
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が600以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【0038】
この光学的測定装置では、光源からの光の強度分布を、半値幅の縦横比を2倍以上に長くする手段を設けた構成としてもよい。
【0039】
この光学的測定装置では、光源からの光を通過させ、2つの光散乱体に照射するための長さと幅を調整したスリットと、散乱光を平行光にする開口数0.8以上のレンズを備えていることが好ましい。
【0040】
この光学的測定装置では、2つの光散乱体に対して入射光側に置いた光源からの光を集光するためのフレネルゾーンプレートと幅10μm以下のスリットと、散乱光の光散乱強度角度分布を測るゴニオメータと幅1cm以下のスリット付きPINフォトダイオードとを備えている構成としてもよい。
【0041】
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度の所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する分光手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が1000以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【0042】
この光学的測定装置では、前記測定手段は、光源からの光を曲げると同時にほぼ同じ強さに分けるハーフミラー及びミラーと、ハーフミラーとミラーの距離をマイクロメータで機械的に調整する手段と、を備えている構成としてもよい。
【0043】
本発明は上記課題を解決するために、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.4λ以上100λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得て、角度の正弦または1/波長を横軸としたデータを元に、フーリエ変換したときのピークの横軸を算出することで、2つの光散乱体間の距離を求めることを特徴とする光学的測定方法を提供する。
【0044】
2つの光散乱体は、3つ以上の光散乱体S(m=1,2,3・・・)があるときの2つであり、そのうち1つの光散乱体Sだけの散乱強度を変えて測定し、変える前と後の波長分布または角度分布を比較することで、光散乱体Sと他の散乱体の距離を測定することが好ましい。
【0045】
2つの光散乱体に対して入射光路の前方にピンホールまたはスリット設けるとともに、該ピンホールまたはスリットと光散乱体との間にレンズを配置して2つの光散乱体に光源からの光を集光し、散乱光の光散乱強度角度分布の角度が前記レンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、ピンホールの直径またはスリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに2つの光散乱体の散乱光を平行化するために光散乱強度角度分布の中央付近の角度または所定の散乱角度の軸上に別のレンズを配置し、さらに、散乱光を計測するためのイメージセンサを備えていることが好ましい。
【0046】
白色光源の光を集光するために、ピンホールまたはスリットと該光源の間に第1のレンズを配置し、2つの光散乱体に集光するために前記ピンホールまたはスリットと2つの光散乱体との間に第2のレンズを配置し、散乱光の所定の散乱角度が第2のレンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ピンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、前記ピンホールの直径または前記スリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに光散乱体の散乱光を集光するために所定の散乱角度の軸上に第3のレンズを配置し、第3のレンズと受光部を、受光部に該散乱光の焦点が来るよう配置し、さらに、受光部で受けた光をスペクトラムアナライザに伝播させる機構を備え、受光部を100μm以下の精度で動かせるようにすることが好ましい。
【0047】
本発明は上記課題を解決するために、円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。光散乱体の組のとりかたの構成は二つある。一つは、円形の軌道の接線方向に隣り合う、光散乱体間の距離を求め情報とする構成である。もう一つは、異なる径の円形の軌道を同心円状に形成し、円の中心方向に直線を引き、同じ直線状に乗った光散乱体間の距離を求め情報とする構成である。
【0048】
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.7λ以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、前記3つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、3つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
【0049】
直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域では、入射光波長の最小値をλとするとき、各光散乱体が互いに距離0.4λ以上100λ以下離れており、且つ、前記領域の最も端にある光散乱体だけが光または熱で屈折率を0.01以上または吸光係数α[cm−1]を1以上変えられるようにすることが好ましい。
【0050】
本発明は上記課題を解決するために、直線上に形成された2つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であり、前記領域では、光散乱体が10〜300nm離れており、ある散乱体Sから40μm以下の距離にある散乱体S(m=2,3・・・)のうち少なくとも1つが散乱体Sとの間を結ぶ軸と試料面に垂直な別の軸を含む平面内において、別の軸について非対称であり、かつ、Sと略相似であり、しかも、入射角をθ、散乱角をθとするとき、該領域の散乱はθ=0の入射光に対して10°<θの範囲において最大の散乱強度を与えるθと−θの散乱強度A(角度)の比A(θ)/A(−θ)が2以上であることを特徴とする光学的記録媒体を提供する。
【0051】
最も端の光散乱体が測定波長範囲内での吸収がなく、他の光散乱体に一部の測定波長のみを透過または散乱するものがあり、測定波長である入射光波長の最小値をλとするとき、他の光散乱体間の距離に、λの半分未満のものがあるようにすることが好ましい。
【0052】
最も端の光散乱体以外の散乱体について、特定の偏光が選択的に反射されるよう複屈折を与え、散乱光を偏光選択でき、散乱光を端の散乱体を含め選択的に検出できるようにすることが好ましい。特定の偏光とは、ある方向の直線偏光や円偏光である。
【0053】
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、入射光は、略平行光であり、反射光を測定する反射による散乱光を集光または平行化するレンズと同じレンズの中心から外れた部分に光を入射させ、光散乱体への入射平面内で40°<|θ|とできることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【0054】
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、入射光は、試料面に垂直なZ軸について、Z軸となす角θzが、40°<θz<90°である入射角θzに60%以上の光量(W単位)があり、Z軸について軸対称であることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【0055】
本発明では、上記いずれかの測定方法に用いることができ、光散乱を波長ごとにノッチフィルタで3つ以上に分け、受光することで、波長ごとの角度分布を計測することを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【0056】
上記いずれかの測定方法に用いることができ、直線上に形成された3つ以上の光散乱体に対して用いることができ、時間変調のある入射光AとBの二つを用い、入射光Aと入射光Bの照射部分は隣接しておりかつ、各照射部分の範囲の大きさは、入射光波長の最小値をλとするとき、0.4λ以上100λ以下であり、入射光AとBの時間変調のタイミングをずらすことができ、該時間変調を測定可能な時間分解能を持っていることを特徴とする光学的測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0057】
本発明によると次のような効果が生じる。
(1)回折限界の制約がない方法のため、従来より10倍以上の精度で、孤立した2つの光散乱体間の距離を測定可能となる。
(2)屈折率の違いはわずかでも、光軸方向に長い光散乱体があれば、検出できる。
(3)フーリエ変換を使うのでノイズに対して強い。
(4)光学的記録媒体の記録密度が大きく向上でき、作成、品質検査が容易にできる。
(5)計測が、非破壊で高速、高精度でできる。
【0058】
本発明は、上記のような効果が生じるので、本発明の技術を使用することを前提とした光学的記録媒体、その光学的読取、光学測定等に広く応用できる。応用としては、主に次の2つがある。
【0059】
(1)光学的記録媒体、光学的読取
光学的記録媒体としては、凸と凸あるいは凹と凹の間隔を記録データとする光学的記録媒体に適用可能である。単純な凹凸構造なので、光学的記録媒体の作製や品質検査が容易になる。凹凸の周囲との屈折率差が小さくても、光軸方向に高さがあるので十分光を拡散させることができる。たとえば、相変化で屈折率を変えて記録する場合に有効である。また、透過率を高くできるので、一枚のディスクに複数の記録層を設ける場合にも有効である。
【0060】
(2)光学測定方法、測長装置
光学測定方法、測長装置に適用すると、高速で精度の高い検査が可能となる。投影像でなく、光軸方向の分布を含めた重心で距離を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の光散乱体の形状を示す図であり、(a)は光散乱体が矩形である構成を示し、(b)は光散乱体が矩形で複数ある構成を示し、(c)は光散乱体が正弦凸部であることを示す図である。
【図2】(a)、(b)は、光散乱体が三角形である構成を示す図であり、(c)は充填係数の定義を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例1の光学的測定方法及び光学的測定装置の全体構成を説明する図である。
【図4】本発明の光散乱強度角度分布を示す図である。
【図5】本発明の光散乱強度角度分布のフーリエ変換を示す図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の光散乱体が複数ある場合において、2つの光散乱体の組の組み合わせ方、及び複数の組とビームスポットの位置関係を示す図である。
【図7】本発明の光学的測定試験2の結果であり、距離w/λを3,4,5と変えたときの散乱角に対する相対散乱強度分布を示すグラフである。
【図8】図7の相対散乱強度分布をフーリエ変換後の相対散乱強度を示す図。
【図9】FTディスクの測定系を示す図であって、本発明に係る光学的記録媒体を適用したディスク(FTディスク)の光学的測定装置(光学的読取装置)を説明する図である。
【図10】FTディスクの光散乱体(ピット)の並びと、移動するビームスポットの位置関係を示す図である。
【図11】本発明の光散乱体が複数存在する多点の光散乱用に形成された、複数の矩形凸部の構成を示す図である。
【図12】本発明の左端の光散乱体が高い複数の矩形の光散乱体の構成、及び光散乱体とビームスポットの位置関係の例を示す図である。
【図13】本発明の光学的測定試験3で得られる光散乱強度角度分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図14】本発明の光学的測定試験4で得られる光散乱強度角度分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図15】散乱角を47.2°または19.5°としたときの、三角形の光散乱体による光散乱強度波長分布(光散乱強度の波長依存性)を示す図である。
【図16】図15に示す光散乱強度波長分布についてフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図17】本発明の実施例2の光学的測定方法及び光学的測定装置を説明する全体構成を示す図である。
【図18】本発明の光学的測定試験6で得られた正弦凸部の光散乱体による光散乱強度角度分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図19】本発明の実施例4において、光学的測定試験7によって得られた、順に並べられた矩形、三角形、矩形形、正弦の光散乱体による光散乱強度角度分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図20】本発明の実施例4において、光学的測定試験8で得られた結果であり、順に並べられた三角形、矩形、三角形、矩形、正弦の光散乱体による光散乱強度波長分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図21】本発明の実施例5において、光学的測定試験9によって得られる光散乱強度波長分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図であり、片方の矩形のサイズが変化したときの2つの光散乱体間の距離のずれを説明する図である。
【図22】本発明の実施例6を説明する図であり、平板に埋め込まれた光散乱体の矩形格子を示す図である。
【図23】本発明の実施例6において、光学的測定試験9によって得られる結果であり、埋め込まれた矩形格子の光散乱体による光散乱強度波長分布をフーリエ変換したときの相対散乱強度を示す図である。
【図24】光源からの光をハーフミラーとミラーで二つに分ける装置、方法を示す図である。
【図25】光源からの光をフレネルゾーンプレートとスリットで光散乱体に当てる装置、方法を示す図である。
【図26】端の光散乱体を含んだ光散乱と含まない光散乱を得る方法を示す図である。
【図27】端からの距離に対応するピークが強調されたことを示す図である。
【図28】斜め入射での光散乱の計測方法を示す図である。
【図29】三角形の凸部による透過光の波長分布を示す図である。
【図30】光散乱波長分布の実験・解析結果と計算結果を比較する図である。
【図31】蝶の羽の反射光の波長分布を示す図である。
【図32】光散乱体の間隔とピークの分離の関係を示す図である。
【図33】プリズムを用いて光散乱体に斜めに光を入射させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明に係る光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置を実施するための形態を、図面を参照して、まず発明の原理、構成を説明して、さらに実施例に基づいて以下に説明する。
【0063】
(発明の原理)
本発明者らは、光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置等の研究開発を通して、反射光または透過光を照射した際に光の屈折率分布を発生する部材である孤立した2つの凸部(矩形や三角形等の凸部)について、RCWAで精度良く散乱光を計算する手段を検討した結果、計算対象を工夫することで計算できることを見出した。
【0064】
このように光の屈折率分布を発生する凸部等の部材を、本明細書では、「光散乱体」と称する。なお、このRCWAによる計算手法自体は、光強度分布等の解析に通常用いられる周知の計算手段であり、本発明の特徴とする構成ではない。
【0065】
RCWAによる計算によって、孤立した2つの光散乱体間の距離(正確には、2つの光散乱体のそれぞれ重心を結ぶ距離)が30λ以下であれば、計算上の周期を、距離+17λ以上とすることで散乱パターンの包絡線を得ることができた。この手段を用いることで、これまで計算例が少なく、精度も低かった2つの光散乱体の散乱パターンを、ある程度の精度で数多く得ることができた。
【0066】
従来、2つのスリットについては、その散乱光強度分布の計算をする手段はあるが、矩形や三角形等の突起のような、光軸方向に高さのある2つの光散乱体については散乱光の強度分布の計算は困難で、簡便な手段はなく、どのような分布か明らかでなかった。
【0067】
本発明者らは、図1(a)に示すように、光散乱体60の形状が矩形の凸部の場合には、図4に示すように、光散乱体60に起因する散乱パターン(図4では相対散乱強度で示す)は、散乱角θ(入射光20の光軸に対する透過または反射による散乱光30の角度。より正確には、2つの光散乱体60の重心を結ぶ直線と入射光20の直線を含む面内において、2つの光散乱体60の重心を結ぶ直線に垂直な方向に対する角度である。図1参照)に対して、周期的に変化するという知見を得た。
【0068】
また、この周期が2つの光散乱体間の距離(正確には、受光側の屈折率×2つの光散乱体間の距離w)によって定まることを見出した。「受光側の屈折率」とは、図1において基板側から散乱強度を計測し散乱光測定機と基板の間に別の屈折率層がない場合は、平板(基板)の屈折率であり、空気層等別の屈折率層が存在するか、凹凸側から空気層等の中で計測する場合は、空気層等の屈折率となる。このように屈折率によって、2つの光散乱体間の距離が変化する理由は、図1における角度θが散乱光測定機と光屈折率発生体の間の屈折率で変化するためである。「2つの光散乱体間の距離」は、正確には、2つの光散乱体60の重心間の距離である。
【0069】
さらに、この結果を散乱角θの正弦を横軸として、フーリエ変換すると、詳細は実施例1で説明するが、図5に示すように、横軸が2つの光散乱体60間の距離wに対応したピークが得られるという知見を得た。要するに、ピークのでている横軸の箇所は、光散乱体60間の距離wに対応した部分である。この知見に基づき、2つの光散乱体間の距離を求めることが可能となる。
【0070】
図2(a)、(b)は、光散乱体70が三角形の凸部の形状をしている。このように光散乱体70が三角凸部の形状をしている場合には、光散乱体70に起因する散乱パターンは、散乱角に対しては周期的でないこともあるが、図15に示すように、ある散乱角θで観測した波長に対しては、周期的に変動することを見出した。また、この周期が2つの光散乱体70間の距離w、w1によって定まることを見出した(図15のw/λ参照)。
【0071】
さらに、この図15に示す光散乱強度分布を、波長λを横軸として、フーリエ変換すると、図16に示すように、横軸が距離に対応したピークが得られるという知見が得られた。この知見は、2つの光散乱体70間の距離を求めるのに応用できる。
【0072】
上記のとおり、同じまたはほぼ同じ種類の形状の2つの光散乱体間の距離については、光散乱強度角度分布または光散乱強度波長分布をフーリエ変換することで、高速・高精度に算出できる。本発明では、フーリエ変換を使うことで、検出がノイズに強くなり、繰り返し測定が不要なので高速に測定可能である。なお、本明細書で、2つの光散乱体について「同じ種類の形状」における「種類」とは、三角形、矩形、正弦等の形状の種類を言う。従って、「同じ種類の形状」例えば、とは、2つの光散乱体が共に、三角形、矩形、正弦等の形状の種類について同じ意味で使用する。
【0073】
光散乱の計測は、実施例において後記するが、CCDイメージセンサを用いることで高速にできる。フーリエ変換は、2つの光散乱体の形状が矩形または矩形に近いときには、角度分布(図4に示す散乱角に対する光散乱強度)から、三角形または三角形に近いときには波長分布(図15に示す波長λに対する光散乱強度)から算出して行われる。なお、本明細書記載の実施例では、光散乱の計測は、CCDイメージセンサを用いる例で説明するが、CMOSイメージセンサ(相補型金属酸化膜半導体)を用いてもよい。
【0074】
ここで、光散乱体が「矩形に近い」と「三角形に近い」の数学的な意味は、散乱特性に影響する高さと幅(図1(a)ではvで示される)の2つのパラメータのうち、幅の影響が大きい場合が三角形であり、高さの影響も大きい場合が矩形である(星野鉄哉、伊藤雅英、谷田貝豊彦:”高次の回折効率を持つ透明回折格子の簡便な特性予測”、第35回光学シンポジウム予稿集、2010年、p .23〜p .26参照)。
【0075】
本発明の基本的な原理は以上のとおりであるが、より細かい点を補足すると、次のとおりである。なお、本明細書では、光散乱体の寸法を表現するとして、「高さ」、「深さ」、「高さまたは深さ」という用語を使用しているが、いずれも光散乱体の下端と上端の間の長さ寸法を表現しており同じである。
【0076】
2つの光散乱体の、それぞれの高さや幅が、互いに異なっているときには、測定データをフーリエ変換をして読み取った距離が、実際の距離とずれてしまう。そこで、光散乱体の高さや幅が別の手段により分かっている場合には、ずれの大きさを計算し補正する。ずれ補正の計算には、計算条件をうまく設定することで、RCWA法を適用する。つまり、周期構造でない孤立構造について、正しい計算ができるよう、計算上の周期等を設定する。
【0077】
矩形で高さが違う場合は高さの違いに応じて、計算された距離がずれる。各光散乱体が、中心軸に対して、線対称でない場合も、計算した距離が上から見た距離とはずれる。これを逆に利用して、高さの違いや、分布の線対称からのずれを知ることができる。
【0078】
例えば、幅が同じで、高さが未知で奥行きが幅や高さに比べて十分大きい2つの矩形が存在したとする。上面からしか観察できない場合や、光散乱体が平板に埋まっている場合が、これに相当する。あらかじめ、予想される高さの近傍で、2つの高さのずれと距離のずれの関係を計算しておく。光散乱を計測して、角度分布または波長分布から本願で述べているやり方に従い距離を計算した結果、測定値と距離がずれれば、あらかじめ計算した距離と対応させることで、高さのずれを見積もることができる。
【0079】
光散乱体を、光学的記録媒体として適用するとき、温度変化により材料が伸縮すると、2つの光散乱体間の距離が変わることにより、読み取りデータが変化してしまう。これを防ぐために、校正用のデータを、余分に付け加え、どの程度伸縮したかを知ることができる。
【0080】
例えば、長さを校正することで、線膨脹係数の大きな材料でも正確な値が出るので、ポリイミドや無機ガラスなど特殊な材料だけでなく、ポリカーボネートやアクリルなどの汎用の透明材料が使えるようになる。
【0081】
(発明の構成)
上述のような原理に基づいて発明した本発明の構成について、光学的測定方法、光学的記録媒体、光学的測定装置を以下説明する。
【0082】
<光学的測定方法>
本発明の光学的測定方法についてまず、基本的な構成を説明する。2つの光散乱体に光を入射させ、その透過よる散乱光の強度分布を測定する。この測定の条件は、光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の距離が0.7λ以上15λ以下であり、2つの光散乱体での全光線透過率または光線反射率が50%以上である。全光線透過率または全光線反射率が50%以上である方が、多層の屈折率分布を測る際に、散乱強度を十分取ることができるので好ましい。
【0083】
なお、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の距離は、上記のとおり、0.7λ以上15λ以下であることが好ましいが、0.4λ以上100λ以下でも可能である。
【0084】
全光線透過率と全光線反射率の測定方法は、波長が200nm以上の場合は、日本工業規格のJIS K7375に従う。波長が200nm以下では、2つの屈折発生体を結ぶ軸を含み入射光と平行な平面内において、全光線透過率は全ての透過光を、全光線反射率はすべての反射光を測定する。
【0085】
上記測定により得られた光散乱強度の角度分布(光散乱強度角度分布)、またはある角度での光散乱強度の波長分布(光散乱強度波長分布)を、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体の距離を求めることができる。
【0086】
ここで、入射光の波長は、測定対象とする散乱光の波長に対応する波長である。例えば、入射光の波長分布が200nmから800nmである場合でも、測定対象の波長が400から700nmであれば、ここで光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値λとする波長は400nmである。
【0087】
屈折率は、複素屈折率を用いる。2つの光散乱体は、ほぼ同じ屈折率をもっており、光散乱体の位置はその重心とする。2つの光散乱体の距離は、2つの光散乱体のそれぞれの位置の間の長さとする。全光線透過率は、光散乱体の重心を通る波長λの光が、透過散乱される光量と入射光量の比率である。
【0088】
図4に示すように、光散乱強度分布が散乱角を横軸とする場合(光散乱強度角度分布の場合)は、角度の正弦に対する光散乱強度についてフーリエ変換する(図5参照)。また、図15に示すように、光散乱強度分布が波長を横軸とする場合(光散乱強度波長分布の場合)は、1/波長に対する光散乱強度についてフーリエ変換する。フーリエ変換後のグラフのピークはゼロ近傍とそれ以外に生じる(図16参照)。
【0089】
光散乱強度分布が角度を横軸とする場合おけるフーリエ変換後のグラフ(図5参照)では、ゼロ近傍以外のピークの横軸の値を散乱光の観測される側(例.空気中、水中等)の複素屈折率の実部nで割った値が、2つの光散乱体の距離に対応している。この屈折率は、空気中での散乱光観測では空気の屈折率で1、水中での観測では水の屈折率で1.3となる。
【0090】
ある散乱角θでの光散乱強度波長分布について、フーリエ変換したグラフのピークの横軸は、[実部n×sin(散乱角度)]で割った値が、2つの光散乱体の距離に対応している。散乱角度は、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、2つの光散乱体重心を結ぶ直線に垂直な方向に対する角度である。
【0091】
上記本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλからλである(ここでλ≦λ)。ここで、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲とは、フーリエ変換等の解析に用いる波長範囲であり、通常、入射光の波長分布より狭い範囲となる。測定対象である2つの光散乱体は、次のような態様がある。
【0092】
ア.2つの光散乱体の組は、1つでも2以上あってもよい。図1(b)では光散乱体60が3つあり、2つの光散乱体の組が2つある構成を示している。m=1,2として、wが2つの光散乱体の距離、vが幅、dが高さ、hが奥行きである。mが2以上の場合には、w(m),v(m+1),d(m+1),h(m+1)をそれぞれの大きさに対応させる。
イ.光散乱体は、平板(基板)の上に設けられていても(図1参照)、平板の内部に埋め込まれて形成されていても(図22参照)よい。
ウ.光散乱体が平板(基板)の上に設けられている場合は、その屈折率は平板と同じであっても異なっていてもよい。
エ.光散乱体が平板の内部に形成されている場合は、その屈折率は平板と異なる。
【0093】
これを整理すると、つぎのようになる。本発明では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλからλであり(ここでλ≦λ)、空気の屈折率をn、光散乱体が形成されている基板である平板の屈折率をnとするとき、屈折率n(n≠n)で距離wm(m=1,2,3・・・mmax)の2つの光散乱体の1または2以上の組が平板上に存在するか、または、屈折率n(n≠n1)で距離wmの2つの光散乱体の1または2以上の組が平板内部に存在する。
【0094】
散乱光の測定は、2つの光散乱体それぞれで散乱した光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で干渉させることによって測る。2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向とは、入射光と光散乱体を結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって軸方向を含まない範囲である。
【0095】
即ち、散乱光は、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において、2つの光散乱体の重心を結ぶ直線に垂直な方向に対して、±90°の範囲について観測する。図1(a)においては、光散乱体を結ぶ軸は平板に平行な方向であり、透過光の観測範囲はθが±90°の範囲となり、反射光の観測範囲はθが180±90°の範囲となる。
【0096】
図2(a)に示すような3つの光散乱体60の場合は、光散乱体60がおおよそ同じ種類の形(矩形)であり、距離wm離れた2つの光散乱体60に隣接して、距離wm+1の別の組の2つの光散乱体60が存在する。
【0097】
m+1は必ずしもwmと同じではなく、各光散乱体60について、その近傍の光散乱体を通る光との光路差または光吸収量に差がある。光散乱体60は、周囲と屈折率が異なっていればよい。平板の中に平板と屈折率の異なる光散乱体が埋め込まれている場合がひとつである。あるいは、光散乱体が平板と同じ屈折率であっても、凸部となっているか、あるいは、逆に凹部であればよい。
【0098】
このように、複数の2つの光散乱体60の組のそれぞれについて、2つの光散乱体60間の距離が、様々な値の場合についても、距離を測定することができる。
【0099】
なお、透過光を観測する場合と反射光を観測する場合では、範囲が反対になる。光散乱体が同じ種類の形、例えば、矩形同士や三角形同士である場合、それぞれの領域の散乱分布が似ているため解析が容易になり、得られる信号強度も強い。なお、λ、λはUV可視域では、400−800nm、硬X線領域では0.05−0.25nm、軟X線領域では1−4nmである。
【0100】
光散乱体の断面が矩形または矩形に近い場合には、光散乱強度角度分布についての解析が、容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換する方が、解析が容易であり、フーリエ変換後の信号強度も強い。
【0101】
従って、本発明に係る光学的測定方法においては、光散乱体の断面が矩形、または矩形に近い楕円若しくは正弦の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換することが好ましく、光散乱体の断面が三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することが好ましい。
【0102】
なお、矩形と三角形の中間の形状、たとえば、正弦形、台形の場合には、どちらの方法を用いてもよいが、散乱光の角度分布の方が、入射光を単色にできるので、実施上では制約が比較的少ない。
【0103】
2つの光散乱体の重心を結ぶ直線と入射光の直線を含む面内において2つの光散乱体のそれぞれの断面の面積が異なると、2つの光散乱体間の実際の距離と本願の方法でフーリエ変換後に得られるピークの横軸から読み取った距離がずれる。例えば、2つの光散乱体の幅が同じであっても高さが5%異なると、フーリエ変換後の距離が実際の距離から1%以上ずれる。そこで、あらかじめ幅や高さの違いを別の方法で測定し、横軸から読み取った距離に補正を行うことでより正確な距離を得ることができる。
【0104】
従って、本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体の大きさが5%以上異なるときには、ピークの横軸から読み取った2つの光散乱体の距離を1%以上補正することが好ましい。
【0105】
フラウンホーファー近似より高い精度の結果を得ることが可能な、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法を用いることで、2つの光散乱体による光散乱の角度分布を正確に求めることができる。
【0106】
例えば、幅が同じで、高さが異なる矩形の光散乱体から求めた距離は、同じ幅のスリットでフラウンホーファー近似を適用した結果とは異なる。ここではRCWA(厳密結合波解析)をフーリエモーダル法に含める。
【0107】
従って、本発明に係る光学的測定方法では、フーリエ変換して得られた距離wについて、2つの光散乱体の高さや幅が異なるとき、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法で得られた光散乱分布についてフーリエ変換した結果に基づいて、2つの光散乱体の距離を補正することが好ましい。
【0108】
直線上に3個の光散乱体があるとき、計測される距離の数は、3個の組み合わせである3となり、3個の光散乱体の位置関係を把握するのは難しい。この考察から、3個以上の光散乱体の距離を計測するのは難しいことが分かる。
【0109】
これを解決する方法として、左端(あるいは右端)の光散乱体を大きくすることが挙げられる。他の光散乱体の散乱光よりも、左端の光散乱体による散乱光が強くなるために、左端の光散乱体からの距離を選択的に計測できる。
【0110】
例えば、図1に示すような光散乱体S〜Sがある構成において、Sから他の光散乱体S、S、Sまでのそれぞれの距離を求める場合には、欲しい信号は、Sから他の光散乱体S、S、Sまでのそれぞれの距離3λ、4λ、5λに対応する信号であり、不要な信号はS〜S間の距離λ、2λに対応する信号である。
【0111】
例えば、光散乱体S、S、S、Sについて、左端の光散乱体をSとした場合、図13で示されるように、欲しい信号(図13の矢印で示した光散乱体Sから光散乱体S、S、Sのそれぞれの距離に対応する信号)以外の他の2つの信号(光散乱体S、S、S間の距離に対応する信号)に対応するピーク(図13の矢印で示されていない横軸の目盛1と2(1、2は図示されていない)にあるふたつのピーク)を、欲しい信号(図13の矢印で示した光散乱体Sから光散乱体S、S、Sのそれぞれの距離に対応する信号)に対応するピーク(図13の3つの矢印で示すピーク)に比べて相対的に小さくできる。
【0112】
距離3λ、4λ、5λに相当するピークを大きくするためのひとつの方法として、左端の散乱体の散乱体のサイズを大きくするという方法がある。散乱体の高さが0.2λまでは、Sの散乱強度が増大するので、見掛け上、距離3λ、4λ、5λに相当するピークを大きくできる。実際、図13で、左端の散乱体の散乱体のサイズを大きくすると、矢印の3λ、4λ、5λに相当するピークが大きくなることが分かる。
【0113】
左端の光散乱体を大きくすることで、左端の散乱体からの距離を計測する方法では、他の光散乱体間の散乱光を完全に除外することは難しい。そこで、左端の光散乱体のサイズや位置を変え、変える前と後で、左端の散乱体とその他の散乱体間の散乱光が変化することを利用する方法を考えた。この方法で、他の光散乱体間の散乱光をほぼ完全に除外することができる。
【0114】
左端の光散乱体の散乱強度を変える方法として、散乱体の高さや幅を変える方法がある。本発明者らは、本発明の研究開発の過程で、矩形の散乱体の高さと幅が0.2λ以下であるとき、その散乱強度は、高さに比例するこという知見を得た。
【0115】
解析方法の例として、左端の光散乱体の、散乱強度を強くして、強くする前の信号強度で割る方法がある。散乱強度を強くする前の散乱光の角度分布をフーリエ変換したグラフをF0(n×wcalc/λ)、強くした後のグラフをF1(n×wcalc/λ)とする。F1(n×wcalc/λ)/F0(n×wcalc/λ)は、左端の光散乱体の散乱光に由来する強度が大きくなり、左端以外の光散乱体に由来する散乱光はあまり変わらないので、左端の光散乱体からの距離に相当するピークだけが強くなる。その結果、左端の光散乱体からの距離が分かる。
【0116】
このような方法(左端の光散乱体の散乱強度を変える方法)は、左端の散乱体の大きさを変えるだけでなく、光吸収を変える方法や左端の散乱体に当てる光の強度を変えることでも実現できる。さらに、似たような方法として、左端の散乱体の位置を変えるやり方や、左端の散乱体のみ入射光の入射角度を変えるやり方が挙げられる。
【0117】
また、本発明者らは、本発明の研究開発の過程で、入射角度を試料面に垂直な方向に対して斜めにずらすことで、分解能を向上させることができるという知見も得た。さらに、散乱光の波長分布を測定する場合には、反射光の測定では正反射角、透過光の測定では直進の透過光の角度からの角度が大きいほど、分解能が向上するという知見も得た。
【0118】
このような測定をする光学系として、光源、第1のレンズ、ピンホール(または第1のスリット)、第2のレンズ、試料の散乱体、第3のレンズ、受光部(第2のスリットまたは光ファイバの先端)の順で並べられた光学系が考えられる。ここで、受光部は第3のレンズで集光された光を受ける部分であって、試料の散乱光の焦点位置に置かれる。第3のレンズと光ファイバの先端の間に遮るものがない場合は光ファイバの先端が受光部に該当するが、該先端とレンズの間に第2のスリットを置く場合は、該スリットが受光部に該当するよう配置する。散乱体と受光部の間に第2のレンズを置く理由は、散乱光を集めて信号強度を稼ぐためと、散乱体の特定の部分の特定の散乱角度だけを選択して観測するためである。
【0119】
ピンホールまたは第1のスリットは、光軸方向に0.1mm単位で精密に移動できるような可動部に固定されている構成とすることが好ましい。試料の散乱体の固定台には、3軸方向にμm単位で精密に移動できる可動部があり、かつ、入射光の光軸と測定する散乱光の光軸を含む面内で回転できる回転軸がある構成とすることが好ましい。さらに、受光部の固定台には、散乱光の光軸を含む3軸方向にμm単位で精密に移動できる可動部があり、かつ、入射光の光軸と測定する散乱光の光軸を含む面内で回転できる回転軸がある構成とすることが好ましい。
【0120】
以上の可動部や、回転軸を用いることで、光軸合わせが容易かつ正確にできる。例えば、光源からの光をピンホール1またはスリット1に通したのち、レンズを通して散乱体への入射光を作る光学系において、レンズの位置を調節して、倍率を0.5倍から2倍まで調整するということも容易に行うことができる。倍率を変えることで、測定対象となる距離を変えられる。光軸合わせは、最初は目視で行い、さらに厳密には光量をモニターして、最大の信号が得られるよう可動部を調整することで行う。
【0121】
<光学的記録媒体>
本発明に係る光学的測定方法では、2つの光散乱体を光学的に測定し、その距離を測定することができる点を特徴とするが、この2つの光散乱体の組を多数(n個)、円形の軌道上に沿って直列的に作成し、光学的記録媒体として応用可能である。多数の2つの光散乱体の組について、2つの光散乱体間の距離w1〜nが、一定でなく、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上が0.7λ以上2λ以下の距離を持つのが記録密度を高める上で好ましい。
【0122】
また、別の光学的記録媒体の構成として、径の異なる円形の軌道を同心円状に複数形成し、円の中心方向に向かって、直列的に作成されている構成がある。この場合は、隣接する円と円の間に多数の2つの光散乱体の組があり、2つの光散乱体間の距離w1〜nが、一定でなく、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上が0.7λ以上2λ以下の距離を持つ。
【0123】
なお、多数の2つの光散乱体間の距離w1〜nのうち90%以上については、上記のとおり、0.7λ以上15λ以下であることが好ましいが、0.4λ以上2λでも可能である。
【0124】
このような本発明に係る光学的記録媒体においては、2つの光散乱体の間隔が短すぎると、発明に係る光学的測定方法にて、フーリエ変換した後のピークが分離しない。また、2つの光散乱体の間隔が長すぎると光学的記録媒体の記録密度が小さくなる。光学的記録媒体の記録密度は、円形の軌道の単位長さ当たりの、ビット数で求めることができる。
【0125】
1ビットは0または1を与える情報量を表し、2進数では1単位となっている。2ビットでは2で情報量は4である。2穴の間隔を16階調で変化させる多値記録により0から15まで記録できたとすると、2で4ビットの情報量を記録できたことになる。これは距離wを1.2λから1.6λまで、間隔0.025λの精度で測定できれば可能となる。1ビットを一つの穴に対応させる従来方式では2つの穴で2ビット記録できる。2つの穴で多値記録する場合、4ビット記録できれば情報量の密度は倍になる。
【0126】
通常、光学的記録媒体の読み取り用波長λは、300から500nmにあることが多く、405nmが好まれる。光散乱体の幅や高さは、光散乱強度が、検出するために十分なだけ大きくし、かつ、記録密度を高くするのに障害にならないよう小さくする。
【0127】
そして、2つの光散乱体の距離は、フーリエ変換後のピークが分離するのに十分大きくし、且つ記録密度を高くするのに障害にならないように決める。2つの光散乱体の大きさの違いは、高い記録密度と、十分なフーリエ変換後のピーク強度を得られるよう設定するのが好ましい。ここで、大きさとは、2つの光散乱体の形状が同じ矩形や三角である場合、その高さおよび幅を意味する。
【0128】
このようなことを考慮し、本発明者らは最適な構成を検討した結果、光散乱体の形状を矩形、正弦形、三角形とした場合における幅、高さについて検討した。その結果は、それぞれ次のとおりである。
【0129】
本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を矩形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.05λ以上5λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の矩形であって、2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、ひとつの形状の幅と高さをv、dとし、もうひとつの形状の幅高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1とすることが好ましいことが分かった。
【0130】
なお、2つの光散乱体の距離は、上記のとおり、0.7λ以上であることが好ましいが、0.4λ以上でも可能である。
【0131】
また、本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を正弦形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.1λ以上10λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の正弦形であって、2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、ひとつの形状の幅と高さをそれぞれv、dとし、もうひとつの形状の幅高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1とすることが好ましいことが分かった。
【0132】
なお、2つの光散乱体の距離は、上記のとおり、0.7λ以上であることが好ましいが、0.4λ以上でも可能である。
【0133】
さらに、本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体を三角形とする場合には、各光散乱体の形状は、幅vが0.5λ以上5λ以下で、高さdが0.25v以上2v以下の三角形であって、2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、ひとつの形状の幅と高さをそれぞれv、dとし、もうひとつの形状の幅高さをv、dとするとき、d≧dとして、v≧vとして、0.7<(v/d)/(v/d)<1.5とすることが好ましいことが分かった。
【0134】
なお、2つの光散乱体の距離は、上記のとおり、0.7λ以上であることが好ましいが、0.4λ以上でも可能である。
【0135】
本発明に係る光学的記録媒体の光散乱体は、二つだけでなく、三つ以上から成る構成としてもよい。三つ以上を一組とする場合は、別の組との間隔は情報としては扱わないのが好ましい。距離情報を得るための解析が、複雑になるためである。このように三つ以上の光散乱体を設ける場合には、複数の光散乱体のうち一つの光散乱体だけ、大きな光散乱強度をもたせることで、その光散乱体から他の光散乱体までの距離を与えるピークを大きくすることができる。大きな光散乱強度をもつ光屈折率発生体以外の光屈折率発生体同士でも、ピークが発生するが、相対的に小さくなる。
【0136】
つまり、フーリエ変換後のピークにおいて、他のピークと区別できる。大きな光散乱強度をもたせるには、該当する光散乱体だけを、サイズを大きくするか、まわりの屈折率との差を大きくする方法がある。
【0137】
このようなことを考慮して、本発明に係る光学的記録媒体では、3つ以上の光散乱体を含む拡大的な構成においては、各光散乱体が互いに距離が0.7λ以上離れており、各光散乱体が直線上に存在しており、さらに、この拡大的な構成のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい構成とすることが好ましい。
【0138】
なお、2つの光散乱体の距離は、上記のとおり、0.7λ以上であることが好ましいが、0.4λ以上でも可能である。
【0139】
本発明に係る光学的記録媒体では、2つの光散乱体について、それぞれの光散乱体の重心を直線で結び、該直線を含み入射光に平行な平面で断面を切り出したときに、平均の充填係数が30−60%であることが好ましい。
【0140】
ここで、充填係数は、図2(c)のような、入射光20と2つの光散乱体70の重心を結ぶ直線72を含む面内にあって、さらにいずれかの重心を含みその直線72に対して垂直な2つの平面74に挟まれた領域において、2つの光散乱体に接する2つの直線76に囲まれた領域78における2つの光散乱体の面積の和の割合で定義する。要するに、[領域78における2つの光散乱体の面積の和]/[領域78の面積]である。充填係数が50%に近い方が、光散乱強度が大きくなる。
【0141】
本発明に係る光学的記録媒体を平板(基板)に実装する構造としては、平板の上に2つの光散乱体が凸部として形成されている構成だけでなく、平板内に2つの光散乱体が埋め込まれた矩形格子であり、平板の表面はほぼ平坦な構成としてもよい(実施例6、図22参照)。
【0142】
このような光学的記録媒体は、平板の表面がほぼ平坦であるために、光散乱体以外の凹凸で散乱する光量を減らすことができる。また、光または熱で2つの光散乱体の屈折率を変えれば、信号を記録または消去することが可能となる。
【0143】
以上、本発明に係る光学的記録媒体の構成について説明したが、本発明に係る光学的記録媒体は、例えば、2つの光散乱体である凸部と凸部の間隔を記録データとする光学的記録媒体であり、単純な凹凸構造なので、作製や品質検査が容易になる。
【0144】
また、凹凸の周囲との屈折率差が小さくても、光軸方向に高さがあるので十分光を拡散させることができる。たとえば、相変化で屈折率を変えて記録する構成としても有効である。また、透過率を高くできるので、一枚のディスクに複数の記録層を多層化して設ける構成としても有効である。
【0145】
本発明に係る光学的記録媒体を適用したディスク(本明細書では「FTディスク」と称する)と他の記録方式との多重記録の比較を表1に示す。表1において、「Blu-ray」は、現行のブルーレイディスクの記録方式、ホログラムはホログラム記録方式、FTは本願の記録方式を意味している。
【0146】
記録方式の「多層化」は、一枚のディスクの面に平行にディスクの内側に何層も重ねる方式である(非特許文献11参照)。「吸収波長による多重化」は、例えば、赤を吸収する色素と青を吸収する色素を同じピットに配置することで、赤い光と青い光で別の情報を得て、多重化する。「入射角多重」は入射角度を変えたときに、別の情報が取り出せるよう、記録に角度選択性を持たせることで、多重化する(非特許文献11)。
【0147】
「強度変調」は、例えば、異なるピットで反射強度を変えることで、反射強度に応じた数値を割り当てることで多重化する手段である。
【0148】
本発明者らは、本発明の研究開発の過程において、直線上に形成された三つ以上の光散乱体のうち、最も端の散乱体の散乱強度を変えることで、それを起点とした距離計測ができるという知見を得た。そのような目的に使える記録媒体としては、最も端にある光散乱体だけが、光または熱で光散乱体の屈折率を0.01以上または吸光係数α[cm−1]を1以上変えられる媒体が挙げられる。このとき、他の光散乱体の屈折率または吸光係数α[cm−1]は変わらないことが好ましい。
【0149】
さらに、本発明者らは、本発明の研究開発の過程において、直線上に形成された二つ以上の光散乱体に対し、光散乱体の試料面に垂直な軸からずらして光を入射することで、分解能が向上するという知見を得た。そのような、測定方法に好適な光学的記録媒体として、ある散乱体Sから40μm以下の距離にある散乱体S(m=2,3・・・)のうち、少なくとも1つがSとの間を結ぶ軸と試料面に垂直な軸を含む平面内において、上記垂直な軸について非対称であることを特徴とする光学的記録媒体が挙げられる。
【0150】
非対称とすることで、斜めからの入射光を観測方向に効率よく曲げることができる。代表的でかつ作製の容易な非対称な形状として、不等辺三角形や左右非対称の台形が挙げられる。また、各光散乱体の散乱の角度分布を統一して、測定しやすくするために、各光散乱体の形状は略相似である構成とすることが好ましい。
【0151】
このような光散乱体は、各散乱体を含む試料面に垂直な軸と平行に入射する光に対して、非対称な散乱特性を持つ。つまり、光散乱体が垂直入射光に対して10°<θd1の範囲において最大の散乱強度を与えるθd1と−θd1の散乱強度A(角度)の比A(θd1)/A(−θd1)が2以上となることが期待できる。この散乱角度分布の異方性を利用して散乱強度の強くなる角度で効率的に斜め入射光の散乱を計測できる。
【0152】
計測で重要な因子は、2つの散乱体がどのくらい近づいても、別の散乱体として計測できるかを示す分解能と、2つの散乱体の距離をどの程度正確に計測できるかを示す精度に分けられる。本発明の光学的測定方法では、回折限界より10倍以上高い精度で計測できるが、分解能については、回折限界の倍以上とするのは困難である。精度が高くても分解能が低くては、記録媒体における散乱体の密度を高められず、記録密度を上げるのは難しい。本発明の光学的測定方法における高い精度を、記録密度の向上に生かすためには、隣接する散乱体の散乱光を別の方法で、分離することになる。一つは、隣接する散乱体の散乱光の波長分布を変える方法である。
【0153】
たとえば、左端を白色の散乱体とし、右に赤緑青のそれぞれの波長を散乱ピークに持つ散乱体を並べ、散乱光の観測角度を固定し、その波長分布を計測すると、赤い領域と、緑の領域と、青い領域とでそれぞれの距離に相当する異なる3つの情報が得られる。角度分布の計測の場合には、散乱光を赤緑青の3つのフィルタのいずれかに通して、それぞれのフィルタについて計測してもよい。
【0154】
同様の方法は、複屈折のある散乱体を用いて散乱光の偏光を隣接する散乱体で変えても可能である。この場合は、受光部の前に偏光子を入れて、直交するそれぞれの偏光を計測する。
【0155】
【表1】

【0156】
表1に示すように、FTディスクの特徴は以下のようになる。
(1)多層化
対物レンズによる集光・測定で、ディスク内垂直位置を選択することが可能である。
(2)吸収波長多重化
凹凸だけでなく、光吸収でも散乱がおこるので波長多重化可能である。
(3)入射角多重
入射角を変えても、像は同じである。
(4)強度変調
反射あるいは透過量を変えることで、多値化が可能となる。
【0157】
<光学的測定装置>
本発明に係る光学的測定装置について、以下説明する。本発明に係る光学的測定装置の基本的な構成として、図3に示すように、2つの光散乱体に照射する光の光源90と、2つの光散乱体60に照射され、反射または透過された散乱光を受光する散乱光測定機160を備えている。散乱光測定機160は、例えば、CCDイメージセンサ(CCD:電荷結合素子)から構成する(実施例1参照)。以下の実施例では、イメージセンサは、CCDイメージセンサを用いた例で説明するが、CMOSイメージセンサ(相補型金属酸化膜半導体)を用いてもよい。
【0158】
光源からの光を2つの光散乱体に均等に照射する手段として、図24に示すように、ハーフミラー490とミラー500を設け、光源90からスリット110と通して入射した光470を、曲げると同時にほぼ同じ強さの入射光100に分けビームスプリッタ120及び対物レンズ130と通して、測定対象物140に照射する構成としてもよい。また、入射光の強度を高めるために、ハーフミラー490とビームスプリッタ120の間、およびミラー500とビームスプリッタ120の間にレンズを置いてもよい。
【0159】
このような構成により、ハーフミラー490とミラー500の距離をマイクロメータで機械的に調整し、光源90からの光470を2つの光散乱体の形成された測定対象物140にちょうど合うように均等に分布させることで、高い光散乱強度を得ることができる。なお、図中、160は、散乱光測定機である。
【0160】
また、光源からの光の強度分布を半値幅の縦横比を2倍以上に長くした方が良い。半値幅はビームスポット内の光の強度分布の最大値の半分を持つ境界で囲まれた強度分布の幅である。半値幅の縦横は、該強度分布の幅で最大のものを縦とし、縦に直交する方向の幅を横とする。図10において、光の強度分布が楕円でなく円形に近いと、トラック340の隣のトラックにも光が当たり、散乱光に隣のトラックからの光も含まれてしまうということと、円形であることによりビームスポットの面積が広がり、集光度が落ちて、結果として散乱光の強度が弱くなることによる。
【0161】
散乱光を受光するCCDイメージセンサとしては、一辺の画素が600以上で応答時間100μs以下のものが良い。このように、空間分解能の高いCCDイメージセンサで受光することで、高い精度で距離を測ることができ、さらに、応答時間を短くすることで、測定速度を向上できる。
【0162】
本発明に係る光学的測定装置では、光源からの光を2つの光散乱体に均等に照射する手段として、光源からの光を長さと幅を調整したスリットを通して2つの光散乱体に当て、散乱光を開口数0.8以上のレンズで平行光にして照射または透過させる構成としてもよい。この場合でも、上記同様に、一辺の画素数が600以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサで受光する。
【0163】
このような構成とすると、上記同様に、高い精度で距離を測ることができる。さらに、応答時間を短くすることで、測定速度を向上できる。そして、開口数の大きいレンズを使うことで、広い散乱角度の光を拾えるので、得られる距離の分解能が向上する。
【0164】
本発明に係る光学的測定装置として、図25のように、2つの光散乱体70を測定対象物の前の入射光100側にフレネルゾーンプレート510と幅10μm以下のスリット110を置き、光源90からの入射光100の散乱光の角度分布について、ゴニオメータ400と、幅1cm以下のスリット390と、PINフォトダイオードとを備えた散乱光測定機410とで光散乱強度を測る構成としてもよい。なお、370はスリットであり、380はゴニオメータ400で移動して測定する測定点を示す。
【0165】
散乱光測定機410は、粉末X線回折装置としてX線散乱光の測定に使われている市販の装置を用いればよい。市販の装置としては、例えば、Rigaku製の試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV がある。
【0166】
ただし、本願では、波長の数倍のサイズの光散乱体間の距離を計測するため、従来の条件ではmm程度であったX線のビームスポットを、数μm以下のせまい範囲に照射することが好ましい。そのためには、最適なフレネルゾーンプレート510を選択し、平行な入射光100を用意することになる。平行な入射光100がないと限られた範囲に、フレネルゾーンプレート510で集光するのが難しいからである。
【0167】
なお、強く平行な入射光としては、高エネルギー加速器による放射光がある。実験室内で、狭い領域に平行で強い入射光を作る方法の例として、非特許文献12、13がある。
【0168】
本発明に係る光学的測定装置では、光源からの光を、2つの光散乱体に当てた後、ある散乱角度の散乱光を分光し、一辺の画素が1000以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサで受ける構成としてもよい。
【0169】
このような構成では、光源としては、可視光域では波長分布のあるキセノンランプや水銀ランプを用いることができる。また、一辺の画素を1000以上とし、十分画素の数を多くすることで、フーリエ変換後のピークの分解能を上げることができる。応答時間を十分小さくすることで、計測時間を実用になるよう短くすることができる。
【0170】
本発明に係る光学的記録媒体を適用したディスク(FTディスク)の光学的測定装置(光学的読取装置)を図9に示す。この光学的測定装置では、光源90から出た入射光100はスリット110及びビームスプリッタ120を通ってから、対物レンズ130で集光され、FTディスク280にビームスポット290として照射され、FTディスク280の表面に形成された光散乱体で散乱(散乱光300)される。
【0171】
光散乱強度は、散乱光測定機160で計測され、その結果が計算機170に読み込まれ、フーリエ変換される。散乱光測定機160は、角度分布の測定ではCCDイメージセンサを使用する。波長分布の測定では分光器とCCDイメージセンサを使用する。
【0172】
FTディスク280は、図10に示すように、円周上に複数の光散乱体(ピット)340が間隔をおいて並べられて構成されており、光源90からのビームスポット320が、FTディスク280が回転すると、相対的に実線の状態から点線の状態に移動する。
【0173】
実線320及び左側の点線で示すビームスポット320は、2つの光散乱体340を含む領域を照射する状態を示しており、真ん中の点線330が一つだけの光散乱体340を含む領域を照射する状態を示している。
【0174】
本発明の光学的測定装置を記録装置として利用する場合を考慮すると、記録装置としては、記録密度と読み取り速度が重要である。読み取り速度に関しては、本発明の光学的測定装置では、フーリエ変換を行うため、信号のONOFFから直接データを読み取る場合に比べ、計測に時間がかかる。
【0175】
それを補う手段として、イメージセンサまたはスペクトラムアナライザで測定したデータについて、フーリエ変換をFTチップを並列に用いて行うことができる。あるいは、散乱光の角度分布のフーリエ変換をレンズを用いて光学的に行うことも可能である。その場合は、レンズを含めた光学系で散乱光の角度分布を、RCWAやFDTD法、境界要素法などの波動光学に基づいた方法を用いて計算をすることになる。レンズを含めた光学系の計算結果と実験結果を比較することで、厳密な距離を求めることができる。
【0176】
また、一旦、電気信号に変換してからフーリエ変換を行うので、電気信号に変換するのにも時間がかかる。それを補う一つの手段として、散乱光の情報を、光ファイバや光増幅器を通して送信し、最終的なユーザまで、直接データを受け渡しする方法が挙げられる。
【0177】
記録密度に関しては、斜め入射により光学的記録媒体の記録密度を向上させることができる。その手段として、反射光測定と同じレンズの中心から外れた部分に光を入射させ、入射平面内で40°<|θ|とすることができる。
【0178】
媒体の光学的測定装置(光学的読取装置)読み取り装置として、信号強度を稼ぐためには、なるべく広い角度範囲から光を入射するのが好ましい。例えば、試料面に垂直なZ軸について、Z軸となす角θzが、40°<θz<90°である入射角θzに60%以上の光量(W単位)があり、Z軸について軸対称であることで実現できる。
【0179】
また、斜め入射による、光学的記録媒体の記録密度向上を最大限に生かすためには、入射平面内で40°<θまたは−40°>θであって、sin(θ)−sin(θ)>sin(40°)であることが好ましい。sin(θ)−sin(θ)が大きいほど、分解能を高くできる。
【0180】
分解能を向上させ、記録密度を向上する手段の一つとして、隣接する散乱体の散乱特性を変える方法がある。異なる色情報を持つ場合には、カラーフィルタやノッチフィルタを使うことで実現できる。波長の異なる複数の信号を含む散乱光を、ノッチフィルタで3つ以上に分け、色ごとにフィルタした後に検出することで、分解能を向上できる。カラーフィルタの代わりに偏光子を使えば、偏光情報で分離できる。寿命の異なる蛍光体を使えば、時間分解測定して散乱強度の減衰を解析することで、寿命情報で分離できる。
【0181】
直線上に形成された三つ以上の光散乱体を含む領域の各散乱体間の距離を解析する場合、端の散乱体からの距離が分かれば計測できる。このためには、本発明者らは、左端の散乱体からの散乱強度を変えればよいという知見を得た。
【0182】
散乱強度を変える手段の一つとして、入射光AとBの二つを用い、左端の散乱体には入射光Aを、それ以外の散乱体には入射光Bを照射し、入射光Aの入射角を1°以上90°以下変えて散乱光の角度分布を測定する方法が挙げられる。
【0183】
もう一つの手段として、パルスを用いた時間分解計測が挙げられる。時間変調のある入射光AとBの二つを用い、最も端の散乱体には入射光Aを、その他の散乱体には入射光Bを照射でき、入射光AとBの時間変調のタイミングがずれており、該時間変調を測定可能な時間分解能で計測することで実現できる。
【0184】
時間変調のある入射光は、多層化された光学的記録媒体にも適用できる。複数層にわたり直線上に形成された三つ以上の光散乱体に適用でき、スリットまたはピンホールもしくは導波路を通る時間変調のある入射光AとBの光源を用い、入射光AとBの光源、レンズ、光検出器の順に並んでおり、光散乱体が三つ以上形成された直線と垂直な断面について、入射光の軸から10°以上ずれた光散乱を検出する。
【0185】
多層化された光学的記録媒体の各層には、レンズの焦点位置は、光軸方向に長くてもよい。各層で光散乱体が三つ以上形成された直線と垂直な断面について散乱体に異方性を持たせ、散乱光を光散乱体が三つ以上形成された直線の軸周りに入射光の光軸に対して斜め方向に出射させ、光検出器の検出位置を変えることで、各層の信号を別々に検出することが可能である。
【実施例1】
【0186】
以下さらに、本発明の実施例について、説明する。本発明の実施例1を説明する。実施例1では、2つの光散乱体60は、互いにサイズ及び形状が同じであり、図1(a)に示すように、形状は矩形であり、奥行き(図中、紙面に垂直方向の幅)が測定範囲に比べて十分大きい充填係数が50%の矩形の凸部であり、基材である平板40上に形成されている。
【0187】
光散乱体60が多数ある場合には、図1(b)のように、m番目の形状の高さまたは深さと幅をd、vとし、m=1,2,3、・・・とする。また、m番目とm+1番目の光散乱体60の重心間の距離をwとする。
【0188】
平板40と光散乱体60の屈折率はともに1.5である。dsは平板の厚みであり計算上は無限大と考える。dは光散乱体60の高さであり、wは2つの光散乱体の間(重心間)の距離であり、本実施例1では、光散乱体60の幅はw/5(充填係数が20%)とした。ΛはRCWAにおける計算上の周期である。入射光20は平板40に垂直な方向から入射し、散乱光の一部が散乱角θ方向に進む。
【0189】
(光学的測定試験1)
本実施例1において、2つの光散乱体の組について、次のような条件1で実証的な光学的測定試験1を行う。その結果を、図4及び図5で説明する。光散乱体の配置は、図1(a)のようにする。図1(a)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図6(a)のように配置する。

条件1:
w=1.2λまたは1.4λ、1.6λ、1.8λ
v=w/5
d=0.25×v
奥行き:h=1000λ
【0190】
ここで、光学的測定には、光源としてアルゴンレーザーの波長λ=0.5145μmの光を用いる。このとき、奥行きh、h、hは、測定領域つまり光の当たっているビームスポットの領域に対して十分大きいと考える。
【0191】
実施例1の光散乱体60の作製は次のようにして行うことができる。1mm厚の透明なガラス基板(平板の材料)にネガ型電子線レジストを乾燥後膜厚が2μとなるようスピンコートする。ガラスきりで1cm角にガラスを切り出す。目的とするパターンを電子線で露光する。露光したレジストを洗い流す。四塩化炭素や酸素などの混合ガスでドライエッチングを行いガラス基板に溝を掘り、残ったレジストを溶剤で洗い流して試料とする。
【0192】
図3は、本願発明の光学的測定方法及び光学的測定装置の全体構成を説明する図であり、また、光学的測定方法及び光学的測定装置により、光散乱体60を反射で測定する場合の配置を示す図である。
【0193】
光源90から出た光は、スリット110を通ってから、対物レンズ130で集光され、2つの光散乱体60で散乱される。対物レンズ130で平行化された散乱光150の光散乱強度は、散乱光測定機160(角度分布の測定ではCCDイメージセンサを使用。波長分布の測定では分光器とCCDイメージセンサを使用。)で計測され、その結果が計算機170に読み込まれ、フーリエ変換される。
【0194】
2つの光散乱体60及び平板(ガラス基板)40から成る測定対象物(試料)140は、裏面反射を防ぐためにダブプリズムに透明接着剤を用いて平板40の裏面をはりつけてもよい。
【0195】
対物レンズ130は、スリット110のサイズにあわせて、中心部分を平らにする方が、2つの光散乱体60に入射光が当たり、かつ、反射散乱光150が対物レンズ130で平行光となるので、好ましい。2つの光散乱体60に入射光を当てるために、スリット110の代わりに、縦横で焦点距離の異なる楕円レンズを用いてもよい。
【0196】
対物レンズ130は、開口数NAが0.8以上1未満のものを用いるのが好ましい。NAが大きいと検出される角度範囲を広くできる。ビームスポットのサイズを奥行き方向(h方向:図3の紙面に垂直な方向)に1.6λ、水平軸の方向(w方向:図3の紙面に沿って上下方向)に4λとなるよう光源からの光をスリット110で遮るのが好ましい。
【0197】
この散乱光の角度分布のRCWAによる計算結果は図4のようになる。計算では奥行き方向h方向は無限大として、奥行きのh方向の散乱の影響は考えていない。Λ=31λとし、入射角は、h方向に直交する面内において、θ=0°とした。入射角について、h方向に直交する面内にする理由および、θを0°とする理由は、測定及び解析を容易にするためである。横軸は散乱角度である。横軸をsin(θ)に直すと、図4は一定間隔で並ぶので、そのまま、離散的フーリエ変換を行うことができる。
【0198】
図5はその結果であり、横軸をλ/n倍することで2つの光散乱体の距離wcalcを得ることができる。したがって、横軸は空気の屈折率n×wcalc/λに対応している。n=1なので横軸はwcalc/λとなる。ピークの横軸が1.2,1.4,1.6,1.8となり、実際に、2つの光散乱体の間の距離wに対応していることが分かる。
【0199】
2つの光散乱体200の組190を複数設けた場合の、それらの並べ方と入射光のビームスポット180の関係の例を図6に示す。2つの光散乱体200は、図6(a)に示すように、1組ずつ別々にする構成としてもよいし、図6(b)に示すように、一つの光散乱体200を左右の光散乱体の組210で共有する構成としてもよい。
【0200】
(光学的測定試験2)
本実施例1において、試験1と同様にして、次のような条件2の2つの光散乱体について、実証的な光学的測定試験2を行った。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さまたは深さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図1(b)のようにする。また、ビームスポットは図6(b)のように配置する。

条件2:
=3λ
=4λ
=5λ
=v=v=v=0.5λ
=d=d=d=0.5λ
=h=h=1000λ
【0201】
光学的測定試験2の結果を、図7及び図8に示す。図7は、散乱角に対する相対散乱強度を示すグラフである。図8は、図7の光散乱強度分布をフーリエ変換して示される相対散乱強度分布である。図8において、wcalc/λ=3, 4, 5の位置にピークがあり、2つの光散乱体の距離が3λ,4λ,5λであることを示している。
【0202】
(光学的測定試験3)
図11は、光散乱体60が複数存在する多点の光散乱用に形成された、複数の矩形凸部の構成を示している。図12は、同様に多点の光散乱用に形成された複数の矩形の光散乱体の構成例、及び光散乱体200、360とビームスポット350の位置関係の例を示している。この構成例では、左端の光散乱体360の高さが他の光散乱体200より高い。
【0203】
図11に示す構成について、次のような条件3で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験1の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw,w,wを求める光学的測定試験3を行った。
【0204】
ここでは、平板40と複数の光散乱体60の屈折率は1.5とした。dm2が高さ、vm2が幅、wm1が左端の矩形からm1+1番目の矩形までの距離を示している。ここでm1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図11のようにする。

条件3:
=3λ
=4λ
=5λ
=v=v=v=Minimum(w−w,w−w,w)/5
=v
=d=d=v/2
=h=h=h=1000λ
Minimum()は最小値を選ぶ関数である。
【0205】
図13は、光学的測定試験3で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフである。図13に示すように、3、4、5λにピークが出て、w,w,wに対応していることも分かる。また、w−w(図11参照)に対応する2λのピークが小さいことが分かる。以上のように、最も端の光散乱体の光散乱強度を大きくすることで、左端の光散乱体360と他の光散乱体200との間の距離を求めることができる。
【0206】
図11に示す構成及びこの光学的測定方法の利点の一つは、一度に得られる情報量が多いので、単位時間当たりのデータの取得量を増やすことができる点である。もう一つの利点は、一つのピークを基準に他のピークの大きさを規格化することで、強度変調ができることである。強度変調により、さらに、情報量を増やすことができる。
【0207】
(光学的測定試験4)
図11に示す構成について、次のような条件4の複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験1の場合と同様に作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw,w,wを求める光学的測定試験4を行った。
【0208】
光学的測定試験4は、光学的測定試験3と同様、矩形の光散乱体の多点間の距離計測であるが、間隔を変えて比較した。すべての間隔をr倍している。rは0.6から0.9まで変えた。ここでは、平板40と複数の光散乱体60の屈折率は1.5とした。dm2が高さ、vm2が幅、wm1が左端の矩形からm1+1番目の矩形までの距離を示している。ここでm1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図11のようにする。

条件4:
r=0.6,0.7,0.8または0.9
=3λ×r
=4λ×r
=5λ×r
=v=v=v=Minimum(w−w,w−w,w)/5
=v
=d=d=v/2
=h=h=h=1000λ
Minimum()は最小値を選ぶ関数である。
【0209】
図14は、光学的測定試験4で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフである。図11に示すように垂直入射では、rが0.6、0.7では、ピークの分離が悪いことから、光散乱体の距離は0.7から0.8λに最小値の測定限界があることが分かる。
【0210】
光学的測定試験4は次のように行う。計測には波長λ=0.5145μmのアルゴンレーザーを用いる。図11において、ビームスポット350のサイズを、奥行きは最小のhm2(m=1,2,3,4)より十分小さくなるように、横方向は最大のwm1より十分大きくなるように設定する。
【0211】
例えば、奥行きh方向に1.6λ、水平軸のw方向(図11の左右方向)に7λとなるよう設定する。計算では奥行き方向hは無限大として、奥行き方向hの散乱の影響は考えていない。また、入射光20は空気と平板40の界面に対して、垂直入射とした。
【0212】
光学的測定装置は、図17のようにレーザー光をスリットを通し、さらに、光散乱体である光散乱体及び平板から成る試料面に隣接して設置したスリットを通して散乱させる。光散乱体が矩形凸部である場合、レーザー光を長さ3mm幅10μmのスリットを通して、2つの光散乱体60に照射して光を散乱させる。検出は、ゴニオメータとスリット付きPINフォトダイオード(CCDを用いてもよい)により行い、角度と光散乱強度を検出する。
【0213】
光学的測定装置によって光散乱強度角度分布を測定し、この測定データのデータ処理において、横軸を屈折率×(角度の正弦)として、フーリエ変換を行うと、前記図14に示すように、ゼロ以外にピークがでる。このピークの横軸が矩形の光散乱体の多点間の距離である。屈折率は、散乱光検出機器と光散乱体の間を満たす媒体の屈折率で、空気中では1である。
【実施例2】
【0214】
本発明の実施例2を説明する。実施例2では、2つの光散乱体70は互いにサイズ及び形状が同じであり、図2(a)、(b)に示すように、形状は二等辺三角形の凸部であり、基材である平板40上に形成されている。この図2(a)、(b)に示す例では、wは2つの光散乱体70間の距離であり、これは、二等辺三角形の凸部の底部の左右方向の幅と同じである。
【0215】
(光学的測定試験5)
図2(a)に示す2つの光散乱体70が二等辺三角形の凸部である構成について、次のような条件5で二等辺三角形凸部及び平板40から成る試料を作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度からwを求める光学的測定試験5を行う。図2(a)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図6(a)のように配置する。
【0216】
ここでは、平板40と複数の光散乱体70の屈折率は1.5とした。dが光散乱体70のそれぞれの高さ、vが2つの光散乱体70間の距離である。hは奥行きである。

条件5:
w=λ
v=λ
d=λ
奥行き:h=1000λ
【0217】
試料の作製は、機械加工で金型に1μm間隔で2つの三角形の溝を掘る。作成した金型を用い、2mm厚の透明なアクリルの板にUV硬化で、UV硬化樹脂を転写する。これを試料とする。
【0218】
図17は、光学的測定試験5において透過で測定する場合の光学的測定方法及び光学的測定装置を説明する全体構成を示す。キセノンランプの白色光源である光源90からの入射光100を、長さ3mm幅10μmのスリット110を通して、試料の2つの光散乱体70に照射し散乱させ、スリット370を通して出射する。スリット110と光源90の間と光散乱体70とスリット110の間のいずれかまたは両方にレンズを置いて入射光100の強度を上げてもよい。
【0219】
散乱光測定機(スペクトラムアナライザ(分光器とCCDイメージセンサでできている))410を、ゴニオメータ400で測定点380の位置の角度に固定し、スリット390付きで、波長ごとの光散乱強度を検出する。さらに、光散乱強度を光源90の波長の強度分布で規格化され、その光散乱強度は、計算機170に読み込まれ、フーリエ変換される。
【0220】
図15は、光学的測定試験5によって得られた2つの光散乱体が三角形の場合に関する、ある散乱角θでの透過光散乱強度の波長依存性を示すグラフである。散乱角θを47.2°または19.5°とした。計算ではΛ=47λとした。
【0221】
図16は、図15のグラフに示すある散乱角θでの光散乱強度の波長依存性を、フーリエ変換し、さらに、数値処理したものである。このフーリエ変換及び数値処理は次のようにした。w/λ=1とすると、w/λ軸のサンプリング間隔が0.05であり、この値は全測定幅/観測数N=9/180で求まる。ここで、9は、波長λから波長λまで測定するとき(ただし、λ<λ)、w(1/λ−1/λ)で、180は等間隔に取った観測点数である。
【0222】
例えば、波長変化に伴う光散乱強度の変動周期が2のとき、逆数の0.5、周期が3.3のとき、逆数の0.3がフーリエ変換で得られる。変動周期は、光散乱体の幅やアスペクト比に鈍感で、測定散乱角θとwと屈折率nで決まる。屈折率は、光散乱体から測定器までの間が大気中の場合、空気の屈折率の1である。
【0223】
変動周期がLとなった時、w/λ=1に対応する周期をLとすると、実際のwはL/Lで与えられる。ここで、Lはnsinθである。nは測定系の媒体の屈折率である。
【実施例3】
【0224】
本発明の実施例3を説明する。実施例3では、3以上の複数の光散乱体が備わっており、複数の光散乱体80は正弦凸部である、複数の正弦凸部の光散乱体80は、基材である平板上に形成され、互いにサイズ及び形状が同じである。
【0225】
(光学的測定試験6)
実施例3について、図1(c)に示すように、正弦凸部として形成された4つの光散乱体80と基材である平板40から成る試料を作成し、次の条件6について、光学的測定試験6として、光散乱体の多点間の距離計測を行った。図1(c)の2つの光散乱体は形状とサイズが同じである。また、ビームスポットは図6(a)のように配置する。wは2つの光散乱体間の距離、vは光散乱体の幅、dは高さ、hは奥行きである。

条件6:
w=3λ、4λ、または5λ
v=w
d=v/2
h=1000λ
【0226】
光学的測定試験6では、試料の作製は次のように行った。1mm厚の透明なガラス基板に可視域で透明なポジ型電子線レジストを乾燥後膜厚が2μmとなるようスピンコートする。ガラスきりで1cm角にガラスを切り出す。目的とするパターンを電子線で露光する。四塩化炭素や酸素などの混合ガスでドライエッチングを行いガラス基板に溝を掘って、さらに残ったレジストを溶剤で除去して試料とする。
【0227】
図18は、光学的測定試験6で得られる光散乱強度角度分布のデータを計算し、フーリエ変換を行った結果を示すグラフである。w=3λ、w=4λ、w=5λに相当するピークがあることが分かる。
【実施例4】
【0228】
本発明の実施例4を説明する。実施例4では、3以上の複数の光散乱体を備えたものであり、複数の光散乱体は矩形凸部、三角形凸部及び正弦凸部のいずれも有するものである。
【0229】
(光学的測定試験7)
実施例4の構成例1として、複数の光散乱体として、図示はしないが、矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部の4つの光散乱体が順番で並べられ、基材である平板上に形成された試料について、光学的測定試験7を行った。試料の作製は、実施例3の光学的測定試験6で使用した試料と同様にできる。
【0230】
光学的測定試験7では、次の条件7で、複数の光散乱体(順次並べられた矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部)の多点間の距離計測を行った。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図11のようにする。

条件7:
=6λ
=7.5λ
=9λ
=v=λ/4
=v=λ/2
=λ/2
=d=d=λ/4
=h=h=h=1000λ
【0231】
図19は、光学的測定試験7によって得られた光散乱強度角度分布についてフーリエ変換を行った結果である。図19において、w=6λ、w=7.5λ、w=9λに相当するピークがあることが分かる。矩形と矩形の距離に相当するwのピークがやや大きくなっている。
【0232】
(光学的測定試験8)
実施例4の構成例2として、複数の光散乱体として、図示はしないが、三角形凸部、矩形凸部、三角形凸部、矩形凸部及び正弦凸部の5つ光散乱体が順番で並べられ、基材である平板上に形成された試料について、次の条件8で、多点間の距離計測を内容とする光学的測定試験8を行った。
【0233】
複数の光散乱体と平板から成る試料の作製は、実施例3の光学的測定試験6で使用した試料と同様に作成した。ここで、vm2を光散乱体の幅、dm2を高さ、hm2を奥行き、wm1を各光散乱体の重心間の距離と定義する。m1=1,2,・・・、m2=1,2,3、・・・とした。光散乱体の配置は、図11のようにする。

条件8:
=3λ
=4λ
=5λ
=6λ
=λ
=v=λ/4
=v=λ/2
=v
=d=d=d=v/2
=h=h=h=h=1000λ
【0234】
図20は、光学的測定試験8によって得られたある角度における光散乱強度波長分布を計算し、横軸を1/λとしてフーリエ変換を行った後、1/(nsin(θ))倍した結果である。nは測定系の媒体の屈折率で、通常は空気の屈折率である。
【0235】
計算する波長範囲は、波長最長を最も短い屈折率分布間の距離程度とし、波長最短をその半分以下とするのが好ましい。ここでは波長をλからλ/6まで変えた。データは1/波長を0.02/λ間隔で計算し、251点分計算した。さらに、0.02/λ間隔でゼロを加え、全部で2048点とするゼロフィリングをした後、離散的フーリエ変換を行った。
【0236】
変換後の各値それぞれに、共役な値を掛けて、絶対値の二乗を得た。得られた値について、横軸を1/(nsin(θ))倍して、フーリエ変換の結果とした。横軸を1/(nsin(θ))倍したときに、観測角が、30°以下では、分解能が悪いので、35°以上とした。
【0237】
図20において、三角形凸部と三角形凸部の間のw=4λに相当する矢印で示したピークが最も大きく、次に大きいのが、三角形凸部と正弦凸部の間のw=6λに相当するピークである。三角形凸部と矩形凸部の間のピークは、それらに比べてかなり小さい。このように、左端の三角形凸部と形状が似ている方が、大きいピークが得られる。なお、これらのピークの横軸の値は、図20のように、実際の距離より15%ほど大きめになった。
【実施例5】
【0238】
本発明の実施例5を説明する。実施例5では、2つの光散乱体は互いに異なるサイズの矩形凸部であり、基材である平板上に形成されている。
【0239】
(光学的測定試験9)
実施例5について、下記の条件9で、光学的測定試験8として異なるサイズの矩形凸部の2点間の距離計測を行った。試料の作製は、実施例2の光学的測定試験5における試料の作製と同様の方法である。ここでは、平板と複数の光散乱体の屈折率は1.5とした。wは2つの光散乱体間の間隔であり、d、dが光散乱体のそれぞれの高さ、v、vが2つの光散乱体の横幅である。h、hは奥行きである。

条件9:
=3λまたは6λ
=w/2
=v
=v×x
=v
=h=1000λ
ここでx=0.9〜1.1である。
【0240】
図21は、光学的測定試験9によって得られた光散乱強度角度分布について、フーリエ変換を行って得られたグラフである。フーリエ変換で求めた距離が、片方の矩形凸部のサイズが変化したときに、真の値からどのくらいずれるかを示している。ここで矩形凸部の幅は約0.9から1.1倍まで変化させた。2つの矩形凸部の高さと幅が異なると、計算値が真の値とずれることが分かる。
【実施例6】
【0241】
本発明の実施例6を説明する。実施例6では、2つの光散乱体440は、図22に示すように、平板430内に埋め込まれた矩形格子として形成されている。
【0242】
(光学的測定試験10)
実施例6について、平板430に埋め込まれた矩形格子として形成された2つの光散乱体440の2点間の距離計測をする光学的測定試験10を行った。測定対象物(試料)420は、平板430と平板に埋め込まれた2つの矩形の屈折発生体440から成るものであり、この試料420の作製は、有機の光導波路の作製と同様で、次のとおりである。
【0243】
2mm厚のガラス板に屈折率を調整した樹脂をスピンコートする。熱で硬化後、ネガ型電子線レジストをスピンコートする。目的とする形状に露光する。未露光部のレジストとその下の屈折率を調整した樹脂を溶剤で洗い流す。ガラス板と同じ屈折率の樹脂でスピンコートする。熱で硬化する。ドライエッチングで目的とする光散乱体が表面に出るまで削る。
【0244】
光学的測定試験10の条件10は次のとおりである。n,n,nはそれぞれ、空気、板、板に埋め込まれた光散乱体の屈折率である。wは2つの光散乱体間の間隔であり、d、dが光散乱体のそれぞれの高さまたは深さ、vが2つの光散乱体間の横幅である。h、hは奥行きである。

条件10:
=3λ
=v=w/2
=d=v
=h=1000λ
=1
=1.5
=1.5+δ
但し、δ=−0.02,−0.01,0.01,0.02である。
【0245】
図23は、光学的測定試験10によって得られた光散乱強度角度分布について、フーリエ変換を行って得られたグラフであり、ピークの屈折率依存性を表している。屈折率差が小さいとピークの大きさは小さくなる一方で、ピークの横軸は動かない。
【実施例7】
【0246】
図24は、本発明の実施例7を説明する図である。この図24についてはすでに説明したとおり、2つのハーフミラー490とミラー500とで入射光を二つに分け、それぞれを2つの光散乱体に別々に照射する構成である。このような構成を用いて、入射光を二つに分けることで、本発明の光学的測定装置において、散乱体ごとに別々に光を当てることができる。また、ハーフミラーを通った光480あるいは入射光100の片方に、減光フィルタまたは光チョッパーを入れることで、2つの入射光の強度比を調整することができる。
【実施例8】
【0247】
図25は、本発明の実施例8を説明する図である。図25の構成はすでに説明したが、フレネルゾーンプレート510で光を集光すると同時に、スリット110を光散乱体70に近付ける構成である。このような構成を採用し、スリット110を光散乱体70に近付けることで入射光100の輝度を上げることができる。
【実施例9】
【0248】
本発明の実施例9を説明する。実施例9では、端の散乱体からの距離を選択的に測定する方法を示す。光源600からの入射光610を、可変スリット620及びレンズ630を順次通過させて、4つの光散乱体S(m=1、2、3、4)を備えた板光散乱板660に照射する。
【0249】
この実施例9では、左端のSだけの散乱強度を変えて測定する。可変スリット620の大きさを変えることで、集光スポットが、左端のSを含む場合(入射光分布640参照)と、含まない場合(入射光分布650参照)を作り出している。
【0250】
(光学的測定試験11)
図11に示す構成について、次のような条件11で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験1の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw,w,wを求める光学的測定試験11を行った。

条件11:
=3λ
=4λ
=5λ
=v=v=v=λ/5
=0またはv
=d=d=v/2
=h=h=h=1000λ

【0251】
=0のときは散乱強度が弱く、d=vのときは散乱強度が強い。d=0とd=vの切り替えは、例えば、図26にように、可変スリット620を使って、上記のとおり入射光の照射範囲を切り替えることで実現できる。図26では、可変スリット620の幅を狭めたときに、左端の散乱体Sが照射されないようにすることで、左端の散乱体Sの散乱光がなくなるので、実質的にd=0とすることができる。
【0252】
散乱強度が弱いときの散乱光の角度分布をフーリエ変換したグラフをF0(n×wcalc/λ)、後のグラフをF1(n×wcalc/λ)とする。図27(a)はF1(n×wcalc/λ)/F0(n×wcalc/λ)の結果である。左端の矩形から、他の散乱体への距離に相当するn×wcalc/λ=3,4,5のピークが強調されていることが分かる。
【0253】
F1(n×wcalc/λ)−F0(n×wcalc/λ)の場合にも、縦軸のスケールが異なるのみで、ほぼ相似な分布が得られる。図27(a)では横軸が6から10までの間に、振動しているピークがみられる。この振動は、角度分布が無限の周期的関数でなく、有限の周期的関数であることによる。
【0254】
この振動を抑えるために、窓関数を角度分布に掛けた後に、フーリエ変換を行う(非特許文献3参照)。ここでは、窓関数として、散乱角0度を中心に対称で山形の、eを基底とする指数関数を用いた。この条件で計算した、F1(n×wcalc/λ)−F0(n×wcalc/λ)の結果を図27(b)に示す。横軸が6以上の振動が抑えられており、n×wcalc/λ=3,4,5のピークだけが強調された。
【実施例10】
【0255】
本発明の実施例10を説明する。実施例10では、斜めから光を入射して波長分布を測定する方法と測定結果を示す。
【0256】
図28は、実施例10の光学的測定装置を示し、白色光源670、入射光用球面レンズ700、ピンホールまたはスリット690、入射光用球面レンズ710、試料の散乱体760、検出光用球面レンズ720、受光部(光ファイバ750の先端またはスリット)の順で並べられた光学系を備えている。
【0257】
この図では分光器730は受光用光ファイバ750とつながっており、光ファイバ750の先端はゴニオメータ400上に配置され、レンズで集光された焦点に該先端の中心部が来るように微調整できる。ゴニオメータ400は、第1の回転ステージ740の上に乗っている。また、試料は3軸ゴニオメータ770の上に、3軸ゴニオメータ770は第2の回転ステージ772の上に乗っている。
【0258】
第1の回転ステージ740は受光用光ファイバ750を、第2の回転ステージ772は試料を、同じ回転軸774の周りに回転する。第1の回転ステージ740と第2の回転ステージ772は同じ回転軸774の周りに独立に回転できる。試料は3軸ゴニオメータ770上であって、試料の中心が回転軸774上となるように置かれる。同じ回転軸であることで、光ファイバ用の第1の回転ステージ740を回したときに、試料のほぼ同じ位置からの散乱光を計測できる。
【0259】
直観的な例を挙げると、赤道上を回転する人工衛星(集光位置)から、地球を観察すると、北極南極(試料)は、地軸上(回転軸774)上にあるので、ほぼ同じ場所をみることができるが、北極南極からずれた場所は、人工衛星が回ると、同じ方向には見えなくなる。
【0260】
また、試料用の第2の回転ステージ772を回したときに、集光位置はほぼ同じであるため、受光部を動かすことなく、試料からの散乱光を計測できる。直観的な例を挙げると、扇風機の中心軸は、ほぼ同じ位置に見えるが、羽の部分は、回転によって異なる場所に見える。
【0261】
なお、光源は、白色光源670を使用しているが、広い波長範囲で強い強度を持つものが好ましい。可視UV光の測定では100W以上のハロゲンランプやキセノンランプ使うことができる。重水素ランプとタングステンランプの組み合わせを用いてもよい。
【0262】
球面レンズ700、710、720や光ファイバ750の材質はUV光を通す石英を用いた。光源に用いるライトガイド(図示せず)も石英が好ましい。なお、UV光が必要でない場合は色消しレンズを用いてもよい。分光器730は分解能1nm程度で、感度が高いものが好ましい。
【0263】
ところで、図28は、反射光を測定する構成を示しているが、透過光の測定は、白色光源670を含む入射部分の配置が試料の背面側に配置変更される構成となるだけである。
【0264】
光学的測定試験11において左端の散乱体Sだけ入射光を変調する方法として、光学的測定試験11に記載のスリット幅を変える方法のほかに次の2つの方法がある。また、以下の光源670は散乱光の波長分布を計測する場合は、白色光源であるが、散乱光の角度分布を計測する場合は、単色光源でよい。
【0265】
方法1:
図28において、光源670とレンズ700の間に第3のスリットを設け、レンズ700による集光点がスリット690のスリット開口部に来るように配置する。ゴニオメータ680をピエゾ素子で動くようにして、スリット690の位置を精密に制御する。レンズ700による集光点の範囲とスリット690の開口部を精密にずらすことで、レンズ710による試料への集光範囲を制御することができる。この結果、左端の散乱体Sだけの照射強度を変調できる。
【0266】
集光範囲の確認には、ズームレンズとUSBカメラの組み合わせを用いることができる。ズームレンズで像を100倍程度に拡大し、USBカメラで、コンピュータに画像データを転送し、ディスプレイで表示させることができる。
【0267】
方法2:
図28において、光源670内に、スリットの短軸の幅と同じオーダーの距離だけ離れた2つの発光部を並べる。好ましくは2つのコアを発光部とする持つ光導波路である。また、試料としては、図26の4つの散乱体660を用いる。第1の発光部からの光を、光散乱体Sに照射し、第2の発光部からの光を、他の光散乱体S、S、Sに照射する。第1の発光部からの光を変調することで、散乱体Sの照射強度を変調できる。
【0268】
(実験例)
次に、図28に示す光学的測定装置を使用して、三角形の回折格子(試料の散乱体760。以下、回折格子760という。)の凸部二つを狙って、入射光のビームスポットのサイズを調整し、散乱光の波長分布を測定した実験例を示す。
【0269】
白色光源670には重水素ランプとタングステンランプの組み合わせを用い、入射光用には幅5μm長さ3mmのスリットを用いた。スリット690に光源からの光が集光されるよう、レンズ700の位置を調整した。回折格子760の縞方向とスリット690の長さ方向が平行になるようにスリット690の傾きを調整した。さらに、入射光の焦点に回折格子760が来て、かつ、短軸方向の長さが回折格子周期の倍となるように、レンズ710および回折格子760の位置を調整した。
【0270】
散乱光は、レンズ720を通した後、光ファイバ750の先端で受けた。散乱光の集光点が光ファイバ750の先端の中心にある入光部のコア近傍に来るよう暗室内で目視で調整した。光ファイバ750は分光器730につないだ。分光器730はオーシャンオプティクス社製HR2000を用いた。
【0271】
分光器730で散乱光を計測しながら、計測される光の強度が最も強くなるよう、スリット690の光軸方向の位置と回折格子(試料の散乱体)760の位置の3軸方向の位置をおよび、光ファイバ750の先端の3軸方向の位置を、ゴニオメータ740に付属のマイクロメータで調整した。
【0272】
図29では、異なる周期を持つ3つの三角回折格子それぞれの透過散乱光の波長分布を、図29(a)、(b)、(c)に示す。該波長分布は、スリット690を通りレンズ710で集光された光の波長分布で、測定された透過散乱光の波長分布を割り算することで規格化されている。図29(a)は周期1.8μm、図29(b)は周期3μm、図29(c)は周期5μmであり、いずれも凸部が二等辺三角形で、高さ/幅が0.48であり、屈折率1.52のUV硬化樹脂でできている。
【0273】
それぞれの入射角θi3と散乱角θd1は表2に示すとおりである。この表2は、光散乱波長分布の測定および解析条件と解析結果を示している。入射角は回折格子の板の中でなく空気中での値である。また、解析した1/λの範囲は表で示したように、おおよそ1から3(μm−1)である。解析範囲が図29のそれぞれの図において、1±0.3(μm−1)および3±0.3(μm−1)の範囲で、範囲の端部が谷となるよう調整した。
【0274】
【表2】

【0275】
次に、散乱光の上記図29に示す波長分布から、図30を求める方法を、説明する。入射角をθi3とし散乱角をθd1とし、それぞれの角度を測定している媒体(通常は空気)の屈折率をそれぞれ、n、nとする。λ<λとして、1/λが1/λから1/λまで等間隔に変化させ、観測数をN個とる。
【0276】
フーリエ変換後の横軸をq = |n sin(θi3) - n1 sin(θd1)|で割り算する。横軸の最小値を0、最大値を{(N -1)/ [q(1/λ1-1/λ2)]}として、フーリエ変換された値をプロットする。実際には、最大値の半分以下の領域をプロットしている。
【0277】
一方、白色光源を偏光子を通さずにそのまま使う実験について、シミュレーションで計算する場合は、次のようにする。TEモードとTMモードで別々に計算し(特許文献3を参照)、足した値を用いて波長分布とする。波長分布のフーリエ変換以下は上述の方法と同じである。なお、本願の例では、TEモードとTMモードの与える波長分布の周期に大きな違いはないので、片方の偏光で代用してもよい。
【0278】
図30(a)は、図29(a)をフーリエ変換した結果である。また、図30(b)は、図29(b)の散乱光を設計値を元に計算した図をフーリエ変換した結果である。極大値の横軸の値がそれぞれの距離に相当していることが分かる。
【0279】
これらの結果を表2にまとめた。回折格子作製の設計値wと、実験値wexpと計算値wcalcがよく一致していることが分かり、本願発明による測定の正しさが裏付けられた。
【0280】
回折格子の次に2種の蝶の羽について、反射光の波長分布を計測した。前記回折格子の測定との違いは、透過でなく反射の測定である点と、生体のため形状が複雑な点である。これにより、一般の凹凸形状への適用可能性を検討する。蝶AはCelastrina argiolus Linnaeus(雄)であり、蝶BはMorpho menelaus (雄)である。
【0281】
蝶の測定には、スリット690の代わりに50μmφのピンホールを用いた。レンズ710による集光点の断面は25μmφとなるように調整した(非特許文献14)。白色光源670にはハロゲンランプを用いた。蝶の羽の鱗粉は楕円形状であり、羽の面内で鳩の羽のように、楕円の長軸方向に重なって並んでいる。羽の面に垂直に計測した時の反射率が最も高くなる入射光の軸と、羽の面に垂直な軸を含む面に平行に光を入射させている。
【0282】
図31が測定結果である。図31の(a)と(b)が蝶Aの、(c)と(d)が蝶Bの羽の反射光の波長分布である。入射角をθi1とし散乱角をθd1とするとき、θi1とθd1の組をθi1d1で表すと、図31の(a)と(c)のθi1d1は30°-0°であり、(b)と(d)の θi1d1は45°-(−10°)である。該測定結果は、ピンホールを通り入射光用球面レンズ710で集光された光の波長分布で、試料の反射光の波長分布を割り算することで規格化されている。この規格化によって、各波長ごとに、試料に入射した光に対する、試料の反射光の強度が分かる。
【0283】
蝶A、Bともに大きいブロードなピークと短波長領域の小さいが鋭いピークとが観測される。ブロードなピークは、蝶の羽の面に垂直方向の構造由来と帰属され(非特許文献15参照)、小さいが鋭いピークは、蝶の羽の面に水平方向の構造に由来すると推定される。図中の矢印はほぼ等間隔であり、蝶Bの光学的な周期構造に由来すると思われる。
【0284】
本願発明の測定装置、方法を用いて、この散乱体(蝶の羽に含まれる散乱体)の間隔を計算する場合、フーリエ変換する代わりに矢印の間隔の逆数および角度の正弦値からも見積もることができる。間隔の逆数を前出の変数qで割ればよい。(c)が39μm、(d)が35μmとなり、近い値が得られた。
【0285】
このように、回折格子のように単純な形状だけでなく、複雑な形状にも適用可能であることが示された。また、フーリエ変換を行わなくても、光散乱強度波長分布がフーリエ変換後のピークの横軸の逆数に相当する周期で変動することを利用して、フーリエ変換後のピークの横軸を求めることができることが分かった。
【0286】
本発明の光学的測定装置、方法では、散乱光をレンズで集光し、1mm程度の直径を持つ受光部の中心に正確に集光しているが、これには特定の場所だけを観察できるという利点がある。例えば、蝶については、蝶の羽を羽に平行な面と入射平面を含む直線方向に動かして計測することで、散乱光の波長分布のブロードで大きなピークの横軸の値が、140μm周期で変化することが分かった。
【0287】
この周期は、SEMによっても確認している。140μmは、図31(c)(d)より求めた散乱体の間隔の約4倍に相当しており、蝶の羽が光学的にはさらに微細な構造よりできているとすれば、実験結果を説明できる。このように、散乱光をレンズで集光し、受光部の中心に正確に集光することで、特定の場所の構造だけを測定できる。
【実施例11】
【0288】
本発明の実施例11を説明する。実施例11では、斜めから光を入射して角度分布あるいは波長分布を計測したとき、どの程度分解能が向上するかを示す。
【0289】
(光学的測定試験12)
図11に示す構成について、次のような条件12で複数の矩形の光散乱体を、前記光学的測定試験1の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から矩形の光散乱体の多点間の距離計測でw,w,wを求める光学的測定試験12を行った。

条件12:
=3rλ
=4rλ
=5rλ
=v=v=v=λ/5
=v
=d=d=v/2
=h=h=h=1000λ
ただし、rは0.1から2までの変数。
【0290】
図32(a)は、条件12に相当する試料の光散乱体の概ねの構成を示し、1〜4は光散乱体の左端からの順番を示す。散乱角度分布をフーリエ変換した結果を図32(b)(c)に示す。図32(b)(c)の横軸縦軸は図19と同様にして得られる。散乱角度分布を測定する受光部は空気中にあり、空気の屈折率nは1である。図32(b)のθi2は25°、図32(c)のθi2は45°とした。(b)のrを0.4から0.6まで変え、(c)のrを0.3から0.5まで変えた。ここでの入射角θi2は、光散乱体およびその基材の屈折率n=1.5中での値である。
【0291】
θi2が45°では空気中からはほとんど入射できないが、図33に示すように、凹凸780を備えた試料の試料面820(基材の裏面)に、ほぼ同じ屈折率のプリズム830を、やはりほぼ同じ屈折率の、UV硬化樹脂ではりつけ、プリズム830の斜面から光790を入射角θiで入射させ、光800を散乱角θで散乱させる。810は、試料面820に垂直な軸である。
【0292】
図32から、入射角25°ではrが0.6以上で、入射角45°ではrが0.5以上で、ピークを分離できていることが分かる。図14(光学的測定試験4で得られた光散乱強度角度分布をフーリエ変換したグラフ)から、入射角0°ではrが0.8以上でピークが分離できていたことから、入射角を大きくすることで、分解能が向上することが分かる。入射角を45°より大きい70°とすれば、rが0.4でも十分ピークを分離できる。したがって、この場合の分解能は0.4λまでできることになる。
【0293】
(光学的測定試験13)
次に図11に示す構成で矩形の代わりに二等辺三角形の場合について、透過の波長分布から距離を求める検討を行った。次のような条件13で複数の三角形の光散乱体を、前記光学的測定試験1の場合と同様な作製法で作製し、これに光を照射し、光散乱をRCWA法にて計算し、光散乱強度から三角形の光散乱体の多点間の距離計測でw,w,wを求める光学的測定試験13を行った。観測角は45°で固定し、入射角θi2を変えた。

条件13:
=3rλ
=4rλ
=5rλ
=λ/5
=v=v=λ/10
=v
=d=d=v/10
=h=h=h=1000λ
ただし、rは0.1から2までの変数。
【0294】
1/λを2から4まで変え、1/λについて波長分布のフーリエ変換を行い、各ピークの分離を調べた。rを0.1刻みで変えた結果、分解能/λはθi2が0、25、45°のとき、この順で、1.0、0.7、0.7となり、やはり、斜めから入射することで、分解能が向上することが分かった。
【0295】
以上の検討から、斜め入射により、角度分布または波長分布をフーリエ変換し距離を算出する場合において、分解能が向上することが分かった。
【0296】
以上、本発明に係る光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0297】
以上の構成から成る本発明に係る光学的記録媒体、該光学的記録媒体の光学的測定方法及び光学的測定装置は、光記録装置、高密度光記録媒体、光学的測長装置など広い分野で適用可能である。特に、高速、高精度、非破壊、非接触が求められる測長方法として有用である。特に、高密度記録媒体のデータ読み出しや、集積回路の微細金属配線の間隔を長さを校正なしで、高速、高精度に算出することができ、製造工程のオンライン検査に利用できる。
【符号の説明】
【0298】
20 入射光
30 散乱光
40 平板
60 矩形凸部の光散乱体
70 三角形凸部の光散乱体
72 2つの光散乱体の重心を結ぶ直線
74 光散乱体の重心を含み直線72に対して垂直な平面
76 2つの光散乱体に接する直線
78 平面74と直線76に囲まれた領域
80 正弦凸部の光散乱体
90 光源
100 入射光
110 スリット
120 ビームスプリッタ
130 対物レンズ
140 測定対象物(矩形凸部と平板から成る試料)
150 散乱光
160 散乱光測定機
170 計算機
180 ビームスポット
190 光散乱体の組
200 矩形の光散乱体
210 光散乱体の組
280 FTディスク
290 ディスク上のビームスポット
300 散乱光
320 2点を含むビームスポット
330 1点のみ含むビームスポット
340 光散乱体(記録用ピットとして使用される)
350 4つ光散乱体を照射するビームスポット
360 左端の光散乱体
370 スリット
380 測定点
390 スリット
400 ゴニオメータ
410 散乱光測定機
420 測定対象物(試料)
430 基材である平板
440 平板に埋め込まれた光散乱体
470 光源の光
480 ハーフミラーを通った光
490 ハーフミラー
500 ミラー
510 フレネルゾーンプレート
600 光源
610 入射光
620 可変スリット
630 レンズ
640 端の散乱体を含む入射光分布
650 端の散乱体を含まない入射光分布
660 4つの散乱体
670 白色光源
680 ゴニオメータ
690 ゴニオメータ上のピンホールまたはスリット
700 入射光用球面レンズ
710 入射光用球面レンズ
720 検出光用球面レンズ
730 分光器
740 第1の回転ステージ
750 光ファイバ
760 試料の凹凸
770 3軸ゴニオメータ
772 第2の回転ステージ
774 2つの回転ステージの回転軸
776 第2の回転ステージの回転方向
778 第1の回転ステージの回転方向
780 試料の凹凸
790 入射角θの光
800 散乱角θの光
810 試料面に垂直な軸
820 試料面
830 プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求めることを特徴とする光学的測定方法。
【請求項2】
2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長は、所定の波長範囲λからλ(λ≦λ)を使用し、100×λ>λであって、前記2つの光散乱体の屈折率nは、空気の屈折率nと異なり、前記2つの光散乱体は、互いに同じ種類の形状で1組または2組以上が、互いに距離w(m=1,2,3・・・mmax)を隔てて、屈折率nの平板上に存在する構成、または屈折率n(n≠n)の平板内部に存在する構成であり、
2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度は、該散乱光を、2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向で、2つの光散乱体を通った光が干渉した光を測定し、
この2つの光散乱体を結ぶ軸から外れた方向は、入射光と光散乱体を結ぶ軸を含む面内においては、軸となす角度を入射光の進行方向と同じ向きに180°、または、入射光の進行方向と逆向きに180°とした範囲にあって、2つの光散乱体を結ぶ軸方向を含まない範囲の方向であることを特徴とする請求項1記載の光学的測定方法。
【請求項3】
2つの屈折発生体の重心を結ぶ軸を含み入射光に平行な平面における光散乱体の断面が矩形、楕円形または正弦形の場合には、光散乱強度角度分布を角度の正弦を横軸としてフーリエ変換し、三角形の場合には、ある角度で観測した光散乱強度波長分布について、波長を横軸としてフーリエ変換することを特徴とする請求項1または2の記載の光学的測定方法。
【請求項4】
2つの光散乱体の断面の面積が5%以上異なるときに、ピークの横軸から読み取った2つの光散乱体の距離を1%以上補正することを特徴とする請求項3に記載の光学的測定方法。
【請求項5】
フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで求められた2つの光散乱体間の距離を、2つの光散乱体の高さや幅が異なるとき、フーリエモーダル法、時間領域差分法(FDTD法)または境界要素法で得られた光散乱分布についてフーリエ変換した結果に基づいて、補正することを特徴とする請求項1または2記載の光学的測定方法。
【請求項6】
円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.7λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、
前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体。
【請求項7】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.05λ以上5λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の矩形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1であることを特徴とする請求項6記載の光学的記録媒体。
【請求項8】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.1λ以上10λ以下で、高さdが0.05v以上2v以下の正弦形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧dとして、(d−d)/d<4であり、v≧vとして、(v−v)/v<0.1であることを特徴とする請求項6記載の光学的記録媒体。
【請求項9】
各組の光散乱体の形状は、それぞれ幅vが0.5λ以上5λ以下で、高さdが0.25v以上2v以下の三角形であって、各組の2つの光散乱体の距離wが0.7λ1以上であり、各組の2つの光散乱体のうち、ひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとし、もうひとつの光散乱体の幅、高さをv、dとするとき、d≧d、v≧vとして、0.7<(v/d)/(v/d)<1.5であることを特徴とする請求項6記載の光学的記録媒体。
【請求項10】
直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、請求項1記載の2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.7λ以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、
前記3つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定し、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、3つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体。
【請求項11】
各組の2つの光散乱体について、それぞれの光散乱体の重心を直線で結び、該直線を含む平面で断面を切り出したときに、平均の充填係数が30〜60%であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の光学的記録媒体。
【請求項12】
各組の2つの発生体は、平板に埋め込まれており、光または熱が付与されると屈折率が変わり、信号を記録または消去することが可能な構成であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の光学的記録媒体。
【請求項13】
光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、
前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が600以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置。
【請求項14】
光源からの光の屈折発生体近傍での強度分布を、入射光の方向に垂直な平面で切りだしたときに、半値幅の縦横比が2倍以上に長くなるような構成としたことを特徴とする請求項13記載の光学的測定装置。
【請求項15】
光源からの光を通過させ、2つの光散乱体に照射するための長さと幅を調整したスリットと、散乱光を平行光にする開口数0.8以上のレンズと、を備えていることを特徴とする請求項13または14記載の光学的測定装置。
【請求項16】
2つの光散乱体に対して入射光側に置いたフレネルゾーンプレートと幅10μm以下のスリットと、散乱光の光散乱強度角度分布を測るゴニオメータと幅1cm以下のスリット付きPINフォトダイオードと、を備えていることを特徴とする請求項13記載の光学的測定装置。
【請求項17】
光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.7λ以上15λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度の所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を光学的に測定する分光手段と、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、2つの光散乱体間の距離を求める手段とを備えた光学的測定装置であって、
前記測定手段は、光源と、散乱光を受光する一辺の画素が1000以上で応答時間100μs以下のCCDイメージセンサと、を備えていることを特徴とする光学的測定装置。
【請求項18】
前記測定手段は、光源からの光を曲げると同時にほぼ同じ強さに分けるハーフミラー及びミラーと、ハーフミラーとミラーの距離をマイクロメータで機械的に調整する手段と、を備えていることを特徴とする請求項13ないし17のいずれかに記載光学的測定装置。
【請求項19】
光を散乱させて測定・解析するための入射光波長の最小値をλとするとき、周囲と屈折率の異なる2つの光散乱体の間の距離が0.4λ以上100λ以下であり、前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得て、角度の正弦または1/波長を横軸としたデータを元に、フーリエ変換したときのピークの横軸を算出することで、2つの光散乱体間の距離を求めることを特徴とする光学的測定方法。
【請求項20】
2つの光散乱体は、3つ以上の光散乱体S(m=1,2,3・・・)があるときの2つであり、そのうち1つの光散乱体Sだけの散乱強度を変えて測定し、変える前と後の波長分布または角度分布を比較することで、光散乱体Sと他の散乱体の距離を測定することを特徴とする請求項1、2または19の記載の光学的測定方法。
【請求項21】
2つの光散乱体に対して入射光路の前方にピンホールまたはスリット設けるとともに、該ピンホールまたはスリットと光散乱体との間にレンズを配置して2つの光散乱体に光源からの光を集光し、散乱光の光散乱強度角度分布の角度が前記レンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、ピンホールの直径またはスリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに2つの光散乱体の散乱光を平行化するために光散乱強度角度分布の中央付近の角度または所定の散乱角度の軸上に別のレンズを配置し、さらに、散乱光を計測するためのイメージセンサを備えたことを特徴とする請求項1、5または19記載の光学的測定方法。
【請求項22】
白色光源の光を集光するために、ピンホールまたはスリットと該光源の間に第1のレンズを配置し、2つの光散乱体に集光するために前記ピンホールまたはスリットと2つの光散乱体との間に第2のレンズを配置し、散乱光の所定の散乱角度の角度が第2のレンズの光軸から20°以上ずれた角度を含み、前記ピンホールまたはスリットを通過できる光源からの光の強度が10μW以上であり、前記ピンホールの直径または前記スリットの短軸の幅が100μm以下であり、さらに光散乱体の散乱光を集光するために所定の散乱角度の軸上に第3のレンズを配置し、第3のレンズと受光部を、受光部に該散乱光の焦点が来るよう配置し、さらに、受光部で受けた光をスペクトラムアナライザに伝播させる機構を備え、受光部を100μm以下の精度で動かせることを特徴とする請求項1、5または19記載の光学的測定方法。
【請求項23】
円形の軌道の上に2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、
前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体。
【請求項24】
直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、各光散乱体が互いに距離が0.7λ以上離れており、且つ、前記領域のもっとも端にある光散乱体の光路差が、他の光散乱体の光路差の平均の1.5倍以上で最も大きいか、または吸収係数が他の光散乱体の平均の1.5倍以上で最も大きい光学的記録媒体であって、
前記3つ以上の光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、3つ以上の光散乱体相互間の距離が求められる構成であることを特徴とする光学的記録媒体。
【請求項25】
直線上に形成された3つ以上の光散乱体を含む領域では、入射光波長の最小値をλとするとき、各光散乱体が互いに距離0.4λ以上100λ以下離れており、且つ、前記領域の最も端にある光散乱体だけが光または熱で屈折率を0.01以上または吸光係数α[cm−1]を1以上変えられることを特徴とする請求項24に記載の光学的記録媒体。
【請求項26】
直線上に形成された2つ以上の光散乱体を含む領域を有し、該領域では、2つの光散乱体の組が多数形成されており、2つの光散乱体間の距離が、2つの光散乱体の組毎に一定ではなく、かつ、2つの光散乱体間の距離を求めるための測定波長範囲がλ以上とするとき、全ての2つの光散乱体の組の90%以上について、2つの光散乱体間の距離が0.4λ以上2λ以下である光学的記録媒体であって、
前記2つの光散乱体の全光線透過率または全光線反射率が50%以上である条件において、前記2つの光散乱体によって生じる散乱光の光散乱強度角度分布または所定の散乱角度での光散乱強度波長分布を得ることができ、角度の正弦または1/波長を横軸としてフーリエ変換し、フーリエ変換後のピークの横軸を読み取ることで、各組の2つの光散乱体間の距離が求められる構成であり、
前記領域では、光散乱体が10〜300nm離れており、ある散乱体Sから40μm以下の距離にある散乱体S(m=2,3・・・)のうち少なくとも1つが散乱体Sとの間を結ぶ軸と試料面に垂直な別の軸を含む平面内において、別の軸について非対称であり、かつ、Sと略相似であり、しかも、入射角をθ、散乱角をθとするとき、該領域の散乱はθ=0の入射光に対して10°<θの範囲において最大の散乱強度を与えるθと−θの散乱強度A(角度)の比A(θ)/A(−θ)が2以上であることを特徴とする光学的記録媒体。
【請求項27】
最も端の光散乱体が測定波長範囲内での吸収がなく、他の光散乱体に一部の測定波長のみを透過または散乱するものがあり、測定波長である入射光波長の最小値をλとするとき、他の光散乱体間の距離に、λの半分未満のものがあることを特徴とする請求項24ないし26のいずれかに記載の光学的記録媒体。
【請求項28】
最も端の光散乱体以外の散乱体について、特定の偏光が選択的に反射されるよう複屈折を与え、散乱光を偏光選択でき、散乱光を端の散乱体を含め選択的に検出できることを特徴とする請求項24ないし26のいずれかに記載の光学的記録媒体。
【請求項29】
請求項1ないし5、および請求項21ないし22のいずれかの光学的測定方法に用いることができ、入射光は、略平行光であり、反射による散乱光を集光または平行化するレンズと同じレンズの中心から外れた部分に光を入射させ、光散乱体への入射平面内で40°<|θ|とできることを特徴とする光学的測定装置。
【請求項30】
請求項1ないし5、および請求項20ないし22のいずれかの光学的測定方法に用いることができ、入射光は、試料面に垂直なZ軸について、Z軸となす角θzが、40°<θz<90°である入射角θzに60%以上の光量(W単位)があり、Z軸について軸対称であることを特徴とする光学的測定装置。
【請求項31】
請求項1ないし5、および請求項20ないし22のいずれかの光学的測定方法に用いることができ、光散乱を波長ごとにノッチフィルタで3つ以上に分け、受光することで、波長ごとの角度分布を計測することを特徴とする光学的測定装置。
【請求項32】
請求項20ないし21のいずれかの光学的測定方法に用いることができ、直線上に形成された3つ以上の光散乱体に対して用いることができ、時間変調のある入射光AとBの二つを用い、入射光Aと入射光Bの照射部分は隣接しておりかつ、各照射部分の範囲の大きさは、入射光波長の最小値をλとするとき、0.4λ以上100λ以下であり、入射光AとBの時間変調のタイミングをずらすことができ、該時間変調を測定可能な時間分解能を持っていることを特徴とする光学的測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−195045(P2012−195045A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39189(P2012−39189)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】