説明

光学積層体の製造方法、光学積層体及び面光源装置

【課題】有機EL素子の光取り出し効率を向上させることができ、美観に優れ、且つ高い紫外線吸収機能を有する光学積層体を高い生産性で実施しうる光学積層体の製造方法、並びにその製造方法により製造された光学積層体及び面光源装置を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の表側の面に設けられた光学機能層と、前記基材の裏側の面に設けられた紫外線吸収機能を有する接着層とを備える光学積層体の製造方法であって、前記基材の表側の面に前記光学機能層を形成し、前記基材及び前記光学機能層を有する複層物(a)を得る工程(A)と、前記複層物(a)の裏側の面に前記接着層を設ける工程(C)とを含む、光学積層体の製造方法;それにより製造された光学積層体及び面光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法、光学積層体及びそれを備える面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線により有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が劣化することを防止するために、紫外線吸収層を設けた有機EL表示装置が提案されている(特許文献1)。
また、有機EL素子中の発光体から装置外への光取り出し効率を向上するために、有機EL素子の出光面にプリズムシートを形成する検討がなされている(特許文献2)。特許文献2には、いわゆる2P(フォトポリマー)法を用いて、基材と、所定の凹凸構造が形成された型との間に紫外線硬化性樹脂を配置し、この光硬化性樹脂に紫外線を照射して当該樹脂を硬化せて、プリズムシートを作製する方法が開示されている。2P法は、複雑な凹凸構造を表面に有する層を高い生産性で形成しうるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−103028号公報
【特許文献2】国際公開第2009/081750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2P法においては、紫外線を用いて紫外線硬化性樹脂を硬化させる際に、かかる樹脂の層の反対側から、基材及び存在する場合はその他の層を透過させて紫外線を照射する必要がある。従って、有機EL素子の劣化の防止のために基材等の層に紫外線吸収剤を含有するものを用いた場合、紫外線硬化性樹脂への紫外線の到達が阻害され、生産性が低下する。生産性を上げるため紫外線の照度を高めると、紫外線及び熱による基材及びその他の層の劣化(変色、変形等)が発生し易い。
【0005】
基材に紫外線吸収剤を添加せず、硬化させる樹脂に紫外線吸収剤を添加すると、硬化させる樹脂までは、紫外線吸収剤による到達の阻害を受けずに紫外線を到達させることができる。しかしながら、この場合、硬化させる樹脂の厚さ方向に紫外線の到達量の不均一が生じ、硬化させる樹脂に複雑な形状を付与する上で不利である。しかも有機EL素子の劣化防止のために吸収することが求められるUVA(315〜380nm)を吸収する紫外線吸収剤を添加すると、硬化させる樹脂が着色し、装置の美観を損ねるという問題点もある。
【0006】
従って、本発明の目的は、有機EL素子の光取り出し効率を向上させることができ、美観に優れ、且つ高い紫外線吸収機能を有する光学積層体を高い生産性で実施しうる光学積層体の製造方法、並びにその製造方法により製造された光学積層体及び面光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明者らは検討した結果、光取り出し効率を向上させるための光学機能層を、特定の順序で形成することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、下記のものが提供される。
【0008】
〔1〕 基材と、
前記基材の表側の面に設けられた光学機能層と、
前記基材の裏側の面に設けられた紫外線吸収機能を有する接着層と
を備える光学積層体の製造方法であって、
前記基材の表側の面に前記光学機能層を形成し、前記基材及び前記光学機能層を有する複層物(a)を得る工程(A)と、
前記複層物(a)の裏側の面に前記接着層を設ける工程(C)とを含む、光学積層体の製造方法。
〔2〕 〔1〕に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(A)が、
前記基材の表側の面に紫外線硬化性の未硬化樹脂を塗布し、前記未硬化樹脂の層を形成する工程(A1)と、
前記未硬化樹脂の層に凹凸構造を有する型を接触させる工程(A3)と、
前記基材の裏側から紫外線を照射して、前記未硬化樹脂の層を硬化させ、硬化した樹脂からなる光学機能層を得る工程(A4)と、
前記型を、前記光学機能層から剥離する工程(A5)と
を含む光学積層体の製造方法。
〔3〕 〔2〕に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(A1)の終了後前記工程(A4)の開始前に、前記未硬化樹脂の層を加熱する工程(A2)をさらに含む光学積層体の製造方法。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体が、前記接着層の前記基材と反対側に設けられるセパレーターをさらに備え、
前記製造方法が、前記セパレーターに前記紫外線吸収機能を有する接着層を形成し、前記セパレーター及び前記接着層を有する複層物(b)を得る工程(B)をさらに含み、
前記工程(C)が、前記複層物(a)と前記複層物(b)とを貼り合わせる工程である、光学積層体の製造方法。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材の、波長365nmの光の透過率が80%以上である光学積層体の製造方法。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材が、重量平均分子量が3.5万以上の脂環式構造含有重合体樹脂からなるフィルムを含む光学積層体の製造方法。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材、前記光学機能層、および前記接着層の少なくともいずれかが、光拡散性を付与する粒子を含む光学積層体の製造方法。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法で製造された光学積層体。
〔9〕 有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面光源装置であって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子よりも出光面側に、〔8〕に記載の光学積層体を用いて形成された、光学機能層、基材及び接着層をさらに備える面光源装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法では、本発明の目的は、有機EL素子の光取り出し効率を向上させることができ、美観に優れ、且つ高い紫外線吸収機能を有する本発明の光学積層体を、高い生産性で実施しうる。
【0010】
本発明の面光源装置は、有機EL素子の光取り出し効率を向上させることができ、美観に優れ、高い紫外線吸収機能に基づく高い耐久性を有し、且つ高い生産性で製造しうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造される本発明の光学積層体の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した光学積層体を線1a−1bを通る面で切断した断面を示す断面図である。
【図3】図3は、工程(A1)により得られた、基材及び未硬化樹脂の層からなる複層物の断面の例を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、工程(A3)における型の接触を行った状態の断面の例を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、工程(A3)〜(A5)を行うより具体的な態様を示す概略図である。
【図6】図6は、工程(A5)における剥離を行った後の、基材及び光学機能層からなる複層物(a)の断面の例を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、工程(B)により得られた、複層物(b)を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、図1及び図2に示した光学機能層111の表面10Uの構造を拡大して模式的に示す部分上面図である。
【図9】図9は、光学機能層111を、図8の線10aを通り光学積層体の主面に垂直な面で切断した断面を示す部分断面図である。
【図10】図10は、本発明の面光源装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す面光源装置10を、図11中の線1a−1bを通り、基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔概要〕
本発明の製造方法は、基材と、前記基材の表側の面に設けられた光学機能層と、前記基材の裏側の面に設けられた紫外線吸収機能を有する接着層とを備える、任意に前記接着層の前記基材と反対側に設けられるセパレーターをさらに備える光学積層体の製造方法である。本発明の製造方法は、かかる製造方法により得られた光学積層体である。
【0013】
図1は、本発明の製造方法により製造される本発明の光学積層体の一例を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した光学積層体を線1a−1bを通る面で切断した断面を示す断面図である。図1に示す光学積層体100は、セパレーター141、接着層131、基材121、及び光学機能層111がこの順に積層された構造を有し、光学機能層111の表面10Uは、凹部113及び凹部113の周囲に位置する平坦部114からなる凹凸構造を有している。
【0014】
本発明の製造方法は、前記基材の表側の面に前記光学機能層を形成し、前記基材及び前記光学機能層を有する複層物(a)を得る工程(A)と、前記複層物(a)の裏側の面に前記接着層を設ける工程(C)とを含む。
【0015】
〔工程(A)〕
工程(A)において、光学機能層の形成は、基材の表側の面に行う。光学機能層は、基材の表側の面に直接接する層として形成することができる。本願において、基材の「表側」とは、単に説明の便宜上相対的に、基材の裏側(即ち、基材の、接着層を設ける側)と反対側であることを示すものである。以下の説明においては、別に断らない限り、基材の表側を基材の上面とし、裏側を下面として図示及び説明する。
工程(A)において、光学機能層は、紫外線硬化性の未硬化樹脂の層を基材上に形成し、これを硬化させて所望の形状の層とすることにより形成しうる。具体的には、工程(A)は:
・前記基材の表側の面に紫外線硬化性の未硬化樹脂を塗布し、前記未硬化樹脂の層を形成する工程(A1)と、
・前記未硬化樹脂の層に凹凸構造を有する型を接触させる工程(A3)と、
・前記基材の裏側から紫外線を照射して、前記未硬化樹脂の層を硬化させ、硬化した樹脂からなる光学機能層を得る工程(A4)と、
・前記型を、前記光学機能層から剥離する工程(A5)と
を含むことができる。
【0016】
かかる工程(A1)、(A3)、(A4)及び(A5)のより具体的な例を、図3〜図6を参照して説明する。
図3は、工程(A1)により得られた、基材及び未硬化樹脂の層からなる複層物の断面の例を概略的に示す断面図である。図4は、工程(A3)における型の接触を行った状態の断面の例を概略的に示す断面図である。図5は、工程(A3)〜(A5)を行うより具体的な態様を示す概略図である。図6は、工程(A5)における剥離を行った後の、基材及び光学機能層からなる複層物(a)の断面の例を概略的に示す断面図である。
【0017】
まず、図3に示す通り、工程(A1)として、基材121の表側の面12Uに紫外線硬化性の未硬化樹脂を塗布し、未硬化樹脂の層116を形成する。
未硬化樹脂を塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リップコート法、ダイコート法、キャピラリーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。未硬化樹脂の塗布量は特に限定されないが、硬化後に得られる光学機能層の厚みが所望の厚さとなるよう調節することができる。
【0018】
工程(A1)を行った後、任意に、未硬化樹脂の層を加熱する工程(A2)を行うことができる。かかる加熱は、具体的には、未硬化樹脂の層を、基材と共に、熱風ヒーター、赤外線ヒーター等の装置を用いて加熱することにより行うことができる。かかる加熱の温度範囲の下限は好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上とすることができる。一方上限は好ましくは120℃以下、より好ましくは90℃以下とすることができる。加熱時間は、下限は10秒以上、より好ましくは30秒以上とすることができる。一方上限は好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下とすることができる。かかる加熱を行うことにより、基材と光学機能層との密着性を向上させることができる。工程(A2)は、工程(A4)を実施する前に行うことができるが、作業の容易性等の観点から、特に工程(A3)を実施する前に行うことが好ましい。
【0019】
工程(A1)を行った後、又は工程(A1)の終了後工程(A3)の開始前に工程(A2)を行った場合は工程(A2)の後、工程(A3)を行うことができる。工程(A3)は、図4の例に示す通り、未硬化樹脂の層116に、凹凸構造を有する型101を接触させることにより行うことができる。型101は、未硬化樹脂の層116の上側(即ち、基材121が接する側と反対側)の面11Uに接するよう接触させることができる。かかる接触により、未硬化樹脂の層116の上側の面11Uに凹凸構造を付与することができる。
工程(A3)に用いる型としては、所望の形状を有する金型を用いることができる。また、金型としてロール状の形状を有するものを用いることにより、長尺の形状を有する光学積層体をインラインで高効率に製造することができる。ロール状の形状を有する金型の作製は、ロールに直接所望の型を形成する方法と、ベルト状の金属またはプラスチックに形成した型を、ロールに固定する方法があるが、作業の容易性、コストの観点から、ベルト状の材料に作製した型をロールに固定する方法が好ましい。
【0020】
工程(A3)において、型を未硬化樹脂の層に接触させる際には、未硬化樹脂の層及び基材に、これらを型に押し当てるよう圧力を加えることが好ましい。具体的には、図4に示す例において、基材121の下側の面12Lに、ニップロールを当てて、未硬化樹脂の層及び基材を型101方向に押し当てるよう圧力を加えることができる。かかる加圧を行うことにより、未硬化樹脂の層の上側の面の形状を、型の形状に良好に追従させることができ、高品質な凹凸構造を有する光学機能層を得ることができる。
【0021】
工程(A3)は、より具体的には、ロール状の形状の型及びニップロールを用いて連続的に行うことが、生産効率を高めうるため好ましい。具体的には図5の例に示す通り、未硬化樹脂の層116及び基材121を有する複層物を、矢印A5の方向に搬送し、ロール状の型101及びニップロール51の間を通し、ニップロール51で複層物を型101に押し当てるよう圧力を加えることにより、工程(A3)を達成することができる。
【0022】
工程(A3)を行った後、又は工程(A3)の終了後工程(A4)の開始前に工程(A2)を行った場合は工程(A2)の後、工程(A4)を行うことができる。工程(A4)では、基材の裏側から紫外線を照射して、未硬化樹脂の層を硬化させ、硬化した樹脂からなる光学機能層を得る。
図4の例を再び参照して説明すると、かかる紫外線は、基材121の下側の光源から、基材121の裏側の面12Lに向けて照射する。照射された紫外線は、基材121を透過して未硬化樹脂の層116に達し、未硬化樹脂の層116を硬化させる。これにより、未硬化樹脂の層116は硬化し、光学機能層となる。
【0023】
工程(A3)をロール状の形状の型及びニップロールを用いて連続的に行う場合、工程(A4)は、未硬化樹脂の層及び基材を有する複層物が、ロール状の型に接しているがニップロールからは離れた段階で行うことができる。図5を再び参照して説明すると、工程(A4)は、矢印A5方向に搬送される複層物が、ニップロール51からは離れたが型101には接している領域52において実施することができる。これにより、効率的な生産を行うことができる。また、工程(A4)をより効果的に行うために、あらかじめ型の表面に離型剤を塗布しても良い。離型剤は、シリコン系、フッ素系、脂肪酸系のものを用いることができる。
【0024】
工程(A3)において照射する紫外線の波長は、未硬化樹脂を硬化しうる波長から適宜選択することができる。例えば、未硬化樹脂が含有する光重合開始剤が反応しうる波長に適合する波長であって、且つ市販の紫外線照射装置及び市販の紫外線吸収剤が利用可能な波長として容易に利用可能な波長を、適宜選択することができる。
【0025】
波長が短すぎると、基材の損傷が発生しやすくなり、一方波長が長すぎると、可視領域に近づき層の着色等をもたらしうるため、340nm〜400nmの波長領域内の光を好ましく用いることができる。より具体的には、365nmの波長を含む紫外線を用いることができる。紫外線の照射量の下限は、300mJ/cm以上であることが好ましく、500mJ/cm以上であることがより好ましい。一方上限は、5000mJ/cm以下であることが好ましく、3000mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0026】
工程(A4)を行った後、工程(A5)の剥離を行うことにより、図5に示す通り、基材121と、その上側に形成された光学機能層111とを有する複層物(a)を得ることができる。工程(A3)〜(A5)で用いる型としてロール状の形状を有するものを採用した場合、工程(A5)は、単に工程(A3)〜(A5)でのロール状の型の回転及び複層物の搬送を継続することにより達成し得る。
【0027】
工程(A)により得られた複層物(a)は、必要に応じてロール状に巻き取り、工程(C)に用いるまで保存することができる。巻き取りに先立ち、必要に応じて、光学機能層側の面上に、さらに保護フィルムを重ねて、巻き取りによる光学機能層表面の損傷を低減することができる。
【0028】
工程(A)により得られた複層物(a)には、工程(C)に供する前に、必要に応じて、さらに任意の層を形成することができる。例えば、複層物(a)の光学機能層側の面上に、ハードコート層等の任意に設けうる層を、必要に応じて設けることができる。
【0029】
〔工程(B)〕
本発明の製造方法は任意に、セパレーターに紫外線吸収機能を有する接着層を形成し、セパレーター及び接着層を有する複層物(b)を得る工程(B)をさらに含むことができる。図7は、工程(B)により得られた、複層物(b)を概略的に示す断面図である。図7において、セパレーター141の上側の面14Uに、接着層131が形成されており、これにより、セパレーター141及び接着層131を有する複層物(b)が得られている。接着層の形成は、接着剤を塗布して接着剤の層を形成し、これに必要に応じて乾燥等の処理を施すことにより行うことができる。
【0030】
工程(B)により得られた積層物(b)は、工程の簡略化のため、直ちに次の工程(C)に供することが好ましいが、必要に応じてロール状に巻き取り、工程(C)に用いるまで保存することもできる。巻き取る場合は、通常、巻き取りに先立ち、接着層側の面上に、さらに第2のセパレーターを重ねて、接着層を保護することができる。
【0031】
〔工程(C)〕
工程(C)では、複層物(a)の裏側の面に接着層を設ける。接着層は、基材の裏側の面に直接接する層として形成することができるが、工程(A)の終了後工程(C)の開始前に、基材の裏側の面上に任意の層を設けた場合、その層上に設けることができる。
【0032】
工程(C)は、複層物(a)の裏側の面に、上記工程(B)で述べた方法と同様の方法により直接接着層を形成するか、又は他の層上で形成した接着層を複層物(a)の裏側の面に貼付することにより行うことができる。
【0033】
工程(B)を行なった場合、工程(C)は、複層物(a)と複層物(b)とを貼り合わせることにより行うことができる。貼り合わせは、通常、複層物(a)の基材側の面(図5の例では、基材121の下側の面12L)と、複層物(b)の接着層側の面(図6の例では、接着層131の上側の面13U)とを接触させ、さらに必要に応じてニップロールで圧搾することにより行うことができる。
【0034】
本発明では、工程(C)に先立ち工程(A)を行うことにより、光取り出し効率を向上させる機能及び高い紫外線吸収機能を有する光学積層体を、高い生産性で製造することが可能となる。
【0035】
即ち、本発明の製造方法では、紫外線吸収機能を有する層を接着層とし、さらに、かかる接着層を、光学機能層と反対側の基材面に、光学機能層を形成した後に設けるため、光学機能層の形成において、紫外線吸収機能を有する層により紫外線の照射が妨害されない。したがって、光学機能層の形成において紫外線の照射を高効率で行うことが可能となり、光学機能層を高い生産性で形成することができる。
【0036】
特に、本発明の製造方法において、工程(A)として、上に工程(A1)、(A3)、(A4)及び(A5)を含む方法を用いることにより、凹凸構造を有する光学機能層を2P法により高い精度で形成することができ、且つ紫外線吸収機能を有する層により2P法の実施が妨げられることがない。より具体的には、有機EL素子発光層を劣化させるUVA(315〜380nm)の波長範囲を含む広い波長範囲の紫外線を効果的に吸収することができる光学積層体を、2P法の実施に都合がよい365nm付近の紫外線を用いて、効率的に製造することがが可能となる。そのため、高い光学的機能と、高い生産性と、製品の紫外線吸収機能とを両立させることができる。
【0037】
〔任意の工程〕
本発明の製造方法は、工程(A)〜(C)以外に、任意の工程を含むことができる。例えば、工程(A)に先立ち、基材の表側の面にコロナ処理等の任意の易接着化の処理を行うことができる。また、工程(C)に先立ち、基材の裏側の面にコロナ処理等の任意の易接着化の処理を行うことができる。
【0038】
また、本発明の製造方法において、上に述べた基材、光学機能層、接着層及びセパレーター以外に、任意の層を形成することができる。例えば、無機バリア層、帯電防止層、ハードコート層、導電性付与層、汚染防止層を形成することが出来る。これらの任意の層は、その材料を所望の面上に塗布し硬化させる方法、又は、熱圧着により貼付する方法などの方法により設けることができる。
【0039】
以下においては、本発明の製造方法に用いる材料、及び本発明の光学積層体の製造方法により形成される各層の具体例について説明する。
【0040】
〔基材〕
本発明に用いる基材としては、光学積層体の基材として用いうる任意のフィルム(以下、「基材フィルム」という。)を用いることができる。または、基材フィルムと、易接着層、帯電防止層等の任意の層とを含む複層物を、基材として用いることもできる。
基材フィルムの材料の例としては、具体的には、易接着層及びその他の隣接する層との密着性、光学積層体の部材としての強度、透明性などの観点から、脂環式構造含有重合体樹脂を好ましく挙げることができる他、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、及び(メタ)アクリル樹脂を挙げることができる。
【0041】
〔基材フィルム:脂環式構造含有重合体樹脂〕
脂環式構造含有重合体樹脂とは、脂環式構造含有重合体と、必要に応じてその他の任意の成分とを含有する樹脂である。
【0042】
脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有し、通常、非晶性の熱可塑性重合体である。脂環式構造含有重合体中の脂環構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0043】
脂環式構造含有重合体を構成する脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0044】
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0045】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造含有重合体として、これらの重合体のうち1種類のみを単独で含有してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含有してもよい。
【0046】
脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定することができる。脂環式構造含有重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で規定することができる。基材の機械的強度及び成型加工性などを高度にバランスさせるという観点から、かかる重量平均分子量の下限は、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上とすることができる。一方かかる重量平均分子量の上限は、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下とすることができる。
また特に、脂環式構造含有重合体の重量平均分子量の下限は、35,000以上であることが、本発明の製造方法における取り扱い性の向上のため、特に好ましい。具体的には、当該下限以上の分子量を有することにより、脆さが低減し、それにより、工程(A)終了後の巻き取りや、光学積層体からセパレーターを剥離する際に基材がダメージを受けることを低減することができ、特に好ましい。
【0047】
脂環式構造含有重合体樹脂が含有しうる任意の成分としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を挙げることができる。
これらの添加剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲とすることができる。例えば、脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
【0048】
特に、脂環式構造含有重合体樹脂が紫外線吸収剤を含有する場合は、かかる紫外線吸収剤としては、工程(A4)に用いられる波長以外の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を用いることが好ましい。製品たる光学積層体が、工程(A4)に用いられる波長の紫外線をも吸収することが求められる場合は、接着層においてそのような波長の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を添加することができる。そのような態様で、基材と接着層において異なる波長を吸収する紫外線吸収剤を組み合わせて用いることにより、広い波長範囲において紫外線吸収機能を有する光学積層体を容易に製造することが可能となる。
【0049】
基材を構成する材料は、高い透明性を有するものが好ましい。例えば、当該材料を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である透明性を有するものが好ましい。
【0050】
基材フィルムは、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよい。複数の層からなるものである場合、基材フィルムは、複数枚のフィルムを接着剤又は粘着剤で貼り合わせたものであってもよく、また共押出等の製造方法により異なる材料からなる複数の層が形成されたものであってもよい。また、基材フィルムは、延伸等の操作を経ない等方なものであってもよく、延伸等の操作により異方性が付与されたものであってもよい。
【0051】
基材は、粒子を含有し、拡散性を有するものとすることができる。具体的には例えば、上で述べた基材フィルムの材料として粒子を含有するものを用い、粒子を含有する基材を調製し、これを本発明に用いることができる。基材が粒子を含有する場合、粒子の含有割合は、基材に対して1〜30重量%とすることができる。基材が含有しうる粒子の例としては、後述する、光学機能層が含有し得る粒子の例と同様のものを挙げることができる。
【0052】
〔基材フィルムの製造方法〕
基材フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、前述の樹脂などを公知のフィルム成形法で成形することによって得ることができる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、環境負荷が低く、製造作業が容易で、且つ製造効率が高いため好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
【0053】
〔易接着層〕
基材は、基材フィルムに加えて、易接着層を有しうる。易接着層は、基材の表側及び/又は裏側の面に位置するよう設けることができる。基材が易接着層を有することにより、基材と光学機能層との密着性、及び/又は基材と接着層との密着性を向上させることができる。易接着層は、好ましくは基材フィルムの面に直接接して設けられる。基材はさらに、基材フィルムと易接着層との間に、帯電防止層、拡散性付与層等の機能層を有してもよい。
易接着層を形成するための材料としては、好ましくは、いわゆる水系ウレタン樹脂を用いることができる。水系ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂が、水等の水系の媒体に分散した状態で含有する組成物である。このような水系ウレタン樹脂を基材フィルム上に塗布し硬化させることによって、ウレタン樹脂を含む易接着層を形成することができる。水系ウレタン樹脂を基材フィルム上に塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。水系ウレタン樹脂の塗布量は特に限定されないが、乾燥後の厚みとして、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜2μmがより好ましく、0.03〜1μmが特に好ましい。前記範囲内にあると、基材と易接着層との十分な接着強度が得られ、かつ、フィルムのそりなどの欠陥のない光学積層体を提供することができる。水系ウレタン樹脂の塗膜を硬化させる方法は、特に限定されないが、例えば、80℃〜130℃程度の温度で乾燥させ、水系の媒体を揮発させることにより、硬化させることができる。
【0054】
〔基材の形状及び物性〕
基材の厚さは、特に限定されないが、その下限は10μm以上とすることができる。またその上限は500μm以下とすることができる。
【0055】
基材は、長尺のフィルムであることが、製造効率の観点から好ましい。ここで、「長尺」とは、その幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。基材フィルムを長尺のフィルムとし、その上に光学機能層等の他の層を連続的に形成して長尺の複層物(a)を得て、さらにこれを用いて長尺の光学積層体を得て、これを必要に応じて所望の形状に裁断することにより、効率的な製造を行うことができる。
【0056】
基材は、工程(A4)の実施の容易さの観点から、紫外線の透過率の高いものであることが好ましい。ただし、紫外線の広い波長領域において高い透過率を有することは必要ではなく、工程(A4)に用いるのに適合した波長の紫外線の透過率が高い基材であれば、好ましく用いることができる。具体的には、工程(A4)に用いる光の透過率が80%以上であることが好ましい。より具体的には、波長365nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。さらにより具体的には、波長365nmの光の透過率が80%以上であり、且つ波長300nmの光の透過率が20%以下であるものを、好ましく用いることができる。
【0057】
〔光学機能層の材料:未硬化樹脂〕
本発明において、光学機能層を形成するための材料としては、通常、紫外線硬化性の未硬化樹脂を用いる。
未硬化樹脂としては、特に限定するものではないが、1分子あたり1以上のイソシアネート基を含み且つ1分子あたり1以上の重合性不飽和基を含むモノマー(以下、モノマーAという。)、及び重合性不飽和基を1分子あたり3以上有し、かつイソシアネート基を含まないモノマー(以下、モノマーBという。)を含む組成物(以下、組成物Yという。)を用いることができる。組成物Yを用いることにより、光学機能層を、易接着層との高い密着性及び高い表面硬さを兼ね備えるものとすることができる。
【0058】
かかる重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基を挙げることができる。
【0059】
モノマーAの具体例としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、及びm−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネートが挙げられる。これらの中で、取り扱い性や化学的安定性、および工業的入手の観点から考えると、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、及び1,1−ビス[(メタ)アクロイルオキシメチル]エチルイソシアネートが好ましい。
【0060】
モノマーBの具体例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール等)ポリアルキレンオキサイド付加体トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサカプロラクトネートヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドオクタ(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0061】
組成物Yは、モノマーA及びモノマーBに加えて、他に任意のモノマーを含有することができる。かかる任意のモノマーとしては、イソシアネート基を含まず、重合性不飽和基を1分子あたり1つ有するモノマー(以下において「モノマーC」という。)、及びイソシアネート基を含まず、重合性不飽和基を1分子あたり2つ有するモノマー(以下において「モノマーD」という。)を挙げることができる。
【0062】
モノマーCの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、p−tert−ブチルフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、オクチルフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化O−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ドデシルフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンモノメチロール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のビニルエーテル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルフォルムアミド、N−アクリロイルモルフォリン等のN−ビニルアミド化合物を挙げることができる。
【0063】
モノマーDの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等)ポリアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、アルキルジヒドロキシベンゼンポリアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、等の各種アクリレート;フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジn−ブチル等のフマル酸エステル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等のビニルエーテルを挙げることができる。
【0064】
組成物Yにおいては、モノマー全量(モノマーA、モノマーB、並びにモノマーC及びモノマーD等他の任意のモノマーの合計)中のイソシアネート基の含有割合が0.25mmol/g以上であり、且つ、モノマー全量中の前記モノマーBの割合が15重量%以上であることが好ましい。組成物Yが、かかる割合でイソシアネート基及びモノマーBを含有することにより、イソシアネートに基づく易接着層との高い密着性、及び架橋に基づく高い表面硬さを高いレベルで兼ね備える光学機能層を得ることができる。
【0065】
組成物Yにおいては、モノマー全量中の酸価が、所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、酸価の上限は5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましい。かかる全モノマーの酸価は、各モノマーの酸価と、全モノマーに含まれる各モノマーの割合から求めることができる。酸価をかかる低い範囲とすることにより、組成物Yの保存安定性が向上し、光学機能層の製造の実施が容易となる。即ち、組成物Yを調製してから使用するまでの間、粘度の上昇等の性状の変化を起こしにくいため、組成物Yの調製を使用の直前に行わなければならないといった、工程上の制限が少なくなる。
【0066】
組成物Yは、モノマーA、モノマーB、及び他の任意のモノマー(モノマーC及びモノマーD等)に加えて、必要に応じ任意の成分を含有することができる。具体的には、重合開始剤、粒子、溶媒、マット剤、スリップ剤、帯電防止剤、界面活性剤を含有することができる。
重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤を例示することができる。特に、工程(A4)を容易とする観点から、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤とは、感光して(即ち光の照射に反応して)作用を発現する重合開始剤であり、ここで重合のための光とは、可視光線のみならず、紫外線、赤外線、及びその他のエネルギー線を含みうるが、組成物Yに紫外線硬化性を付与する観点から、光重合開始剤は、紫外線により作用を発現する開始剤であることが好ましい。また、重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0067】
可視光線又は紫外線に感光するラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1,2−ベンジル−2−メチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、1,2−ヒドロオキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン又はその誘導体;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−トリメチルシリルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィドなどのベンゾフェノン又はその誘導体;ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン又はその誘導体;メチルフェニルグリオキシレート、ベンゾインジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキル−1−ナフトイル)−4−メトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキル−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニリルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,6−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0068】
光学機能層は、好ましくは粒子を含有する。このような好ましい光学機能層を得るため、組成物Yは、粒子を含有することができる。光学機能層が粒子を含有することにより、光学機能層内での光の拡散を起こし、それにより取り出し効率を高めることができる。
【0069】
粒子は、透明であっても、不透明であってもよい。粒子の材料としては、金属及び金属化合物、並びに樹脂等を用いることができる。金属化合物としては、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物としては、具体的には例えば銀、アルミのような反射率が高い金属、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタンなどの金属化合物を挙げることができる。一方樹脂としては、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。特に、シリコーン樹脂が、分散性、耐湿熱性の点から特に好ましい。なお、粒子の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0070】
粒子の形状は、球状、円柱状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状とすることができる。
粒子の粒径は好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。ここで粒径とは、体積基準の粒子量を、粒子径を横軸にして積算した積算分布における50%粒子径のことである。粒径が大きいほど、所望の効果を得るために必要な粒子の含有割合は多くなり、粒径が小さいほど、含有量は少なくてすむ。従って、粒径が小さいほど、観察角度による色味の変化の低減、及び光取り出し効率の向上等の所望の効果を、少ない粒子で得ることができる。なお、粒径は、粒子の形状が球状以外である場合には、その同等体積の球の直径を粒径とする。
【0071】
粒子が透明な粒子であり、且つ粒子が樹脂中に含まれる場合において、粒子の屈折率と、樹脂の屈折率は、それらの差が0.05〜0.5であることが好ましく、0.07〜0.5であることがより好ましい。ここで、粒子及び樹脂の屈折率は、どちらがより大きくても良い。粒子と樹脂の屈折率が近すぎると拡散効果が得られず色味ムラは抑制されず、逆に差が大きすぎると拡散が大きくなり色味ムラは抑制されるが光取出効果が低減することになる。
【0072】
組成物Y中の粒子の含有割合は、粒子及びモノマー全量の合計中の粒子の割合として、3〜50重量%であることが好ましい。
【0073】
組成物Yが含有しうる溶媒としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。但し、光学機能層を形成する際の便宜上、組成物Yは特に溶媒を添加せず調製し、硬化の際に溶媒を揮発させる処理を必要としないものとすることが好ましい。
【0074】
組成物Yの調製方法は、特に限定されず、例えば、上記成分を混合することにより得ることができる。
組成物Yの性状は、特に限定されないが、その粘度が、送液、塗布、塗布後の硬化等の操作に適した範囲であることが好ましい。具体的には、粘度の下限は5cP以上であることが好ましく、30cP以上であることがより好ましい。一方粘度の上限は500cP以下であることが好ましく、100cP以下であることがより好ましい。
【0075】
〔光学機能層の形状及び性状〕
続いて本発明の製造方法により製造される光学積層体中の光学機能層について説明する。光学機能層のヘイズは、フィルムに対する要求に応じて0%〜95%とすることができる。光学機能層のヘイズを0%〜20%とすると、取り出し効率、正面輝度を共に高めることができる。光学機能層のヘイズを75%〜95%とすると、光取り出し効率、観察角度による色味の変化を共に低減することができる。ヘイズは、例えば上に述べた粒子の含有割合を適宜調整することにより調節しうる。
【0076】
光学機能層は、好ましくは工程(A3)において凹凸構造を有する型により付与された凹凸構造を有する。かかる凹凸構造を有することにより、本発明の光学積層体を表示装置、光源装置等の光学装置の光取り出し面に設ける部材として用いた際、良好な取り出し効率を達成することができる。
凹凸構造は、具体的には、斜面を含む複数の凹部と、前記凹部の周囲に位置する平坦部とを含む凹凸構造を好ましく挙げることができる。ここで「斜面」とは、基材の面方向と平行でない角度をなす面である。一方、平坦部上の面は、基材の面方向と平行な面とすることができる。
【0077】
かかる凹凸構造を、図8及び図9を参照してより詳細に説明する。図8は、図1及び図2に示した光学機能層111の表面10Uの構造を拡大して模式的に示す部分上面図である。図9は、光学機能層111を、図8の線10aを通り光学積層体の主面に垂直な面で切断した断面を示す部分断面図である。
【0078】
複数の凹部113のぞれぞれは正四角錐形状の窪みであり、従って凹部113の斜面11A〜11Dは同一の形状であり、底辺11E〜11Hは正方形を構成する。線10aは、一列の凹部113の全ての頂点11Pの上を通る線であり、且つ凹部113の底辺11E及び11Gと平行な線である。
【0079】
凹部113は、一定の間隔をおいて、直交する2配置方向に連続して配置されている。かかる2配置方向のうち一方の方向Xは底辺11E及び11Gと平行である。この方向Xにおいて、複数の凹部113は一定の間隔11Jをおいて整列している。2配置方向のうちの他方の方向Yは11F及び11Hと平行である。この方向Yにおいて複数の凹部113は一定の間隔11Kをおいて整列している。
【0080】
凹部113のそれぞれを構成する斜面11A〜11Dが平坦部114となす角(斜面11B及び11Dについては、それぞれ図9に示す角11L及び11M)は例えば60°に設定され、これにより、凹部113を構成する正四角錐の頂角、即ち頂点11Pにおいて相対向する斜面がなす角(斜面11B及び11Dがなす角については、図9に示す角11N)も60°となっている。
【0081】
このように、光学積層体の光学機能層が、複数の凹部と、各凹部の周囲に位置する平坦部とを含む構成を有することにより、かかる面を面光源装置の装置出光面にあたる表面とした際に、光取り出し効率を高め、且つ観察角度による色味の変化を低減することができ、しかも、外部衝撃により凹凸構造の欠け等が生じるのを防止でき、ひいては装置出光面の機械的強度を向上させることができる。
【0082】
光学積層体が上記の凹凸構造を有する光学機能層を備える場合、光学機能層側から出光する光における半球状全方位での色度座標のx座標およびy座標の少なくともいずれかの変位を、上記の構成をとらない場合に比べ低減させることができる。このため、本発明の面光源装置において、光学積層体が凹凸構造を有する光学機能層を備える場合、観察角度による色味の変化を抑えることができる。かかる半球状全方位での色度の変位を測定する方法として、例えば装置出光面の法線方向(即ち凹部を無視して巨視的に見た装置出光面に垂直な方向)上に分光放射輝度計を設置し、法線方向を0°とした時その装置出光面を−90〜90°まで回転させられる機構を付与することで、各方向で測定した発光スペクトルから色度座標を算出できるため、その変位を算出できる。
【0083】
凹凸構造を、光学積層体に垂直な方向から観察した場合における、平坦部が占める面積と凹部が占める面積との合計に対する、平坦部が占める面積の割合(以下、「平坦部割合」という。)を適宜調節することにより、面光源装置の光取り出し効率を向上させることができる。具体的には、平坦部割合を10〜75%とすることにより、良好な光取り出し効率を得ることができ、且つ装置出光面の機械的強度を高めることができる。
【0084】
凹凸構造において、凹部は、例えば、上に述べた角錐形状に加え、円錐形状、球面の一部の形状、溝状の形状、及びこれらを組み合わせた形状を有しうる。角錐形状は、前記凹部113として例示するように底面が正方形である四角錐としうるが、これに限られず、三角錐、五角錐、六角錐、底面が正方形でない四角錐などの角錐形状とすることもできる。さらに、本願でいう円錐及び角錐は、その頂部が尖った通常の円錐及び角錐のみならず、先端が丸みを帯びた形状、又は平らに面取りされた形状(錐台状の形状等)をも包含しうる。
【0085】
凹凸構造における凹部の深さは、特に限定されないが、凹凸構造が形成された表面を様々な方向(出光面と平行な面内の様々な方向)に沿って測定した中心線平均粗さの最大値(Ra(max))として、1〜50μmの範囲内とすることができる。また、好ましい凹部の深さは、光学機能層の厚さに対して相対的に定めることができる。例えば、光学機能層の材料として、凹凸構造の耐久性の維持に有利な硬質の材料を用いた場合、光学機能層の厚さを薄くしたほうが、光学積層体の可撓性を高めることが可能となり、面光源装置の製造工程における光学積層体の取り扱いが容易となる。具体的には、図9に示す凹部の深さ16Dに対する光学機能層111の厚さ16Eの割合は、1:1〜1:3であることが好ましい。
【0086】
光学機能層の厚さは、その下限が1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、一方その上限が50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらにより好ましい。特に、前記上限以下の厚さであることにより、硬化収縮による光学積層体のカール等の変形を防ぎ、良好な形状の積層体とすることができる。
【0087】
本発明において、凹部の斜面と、出光面とがなす角は40〜70°であることが好ましく、45〜60°であることがより好ましい。例えば凹部の形状が四角錐である場合、その頂角(図9における角11P)は、60〜90°となることが好ましい。また、観察角度による色味の変化を最小限にしつつ光取り出し効率も高めるという観点からは、斜面と基材の面とがなす角は大きいほうが好ましく、具体的には例えば55°以上とすることが好ましく、60°以上とすることがさらにより好ましい。この場合、かかる角の上限は、光学機能層の耐久性の維持を考慮し、70°程度とすることができる。
【0088】
凹凸構造において、複数の凹部は、任意の態様で配列することができる。例えば、複数の凹部を、表面上の2以上の方向に沿って配列することができる。より具体的には、図1及び図8に示した凹部113のように、直交する2方向に沿って配列することができる。
【0089】
2以上の方向に凹部を配列した場合において、それらのうち1方向以上の方向に、隣り合う凹部間の隙間を設け、かかる隙間により平坦部を構成することができる。例えば、図8に示す凹部113の配列では、直交する2方向において、それぞれ間隔11J及び11Kの隙間を設けて、かかる隙間により平坦部114を構成している。このような構成を採用することにより、良好な光取り出し効率と、積層体表面の機械的強度とを両立させることができる。
【0090】
〔接着層〕
接着層を形成するための接着剤は、狭義の接着剤(23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaであり、常温で粘着性を示さない、いわゆるホットメルト型の接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。具体的には、本発明の製造方法により得られた光学積層体を面光源装置の製造に適用した際に得られる面光源装置において、隣接する層(基材、及び、例えば面光源装置の基板)近い屈折率を有し、紫外線吸収機能を有し、且つ可視光の少なくとも一部の波長を透過しうるものを適宜用いることができる。より具体的には、アクリル系接着剤(粘着剤を含む)が挙げられる。
接着剤は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤を含有することにより、良好な紫外線吸収機能を有する接着層を得ることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾオキサジン系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、アゾメチン系、インドール系、酸化亜鉛系、酸化セリウム系酸化チタン系を用いることができる。また、必要に応じて、ヒンダードアミン系光安定剤を併用することもできる。接着層100重量%中の紫外線吸収剤の含有割合は、下限が0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。一方上限は10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。紫外線吸収剤の量は、接着層の厚さに応じて適宜調整することができる。
【0091】
接着層の厚さは、5μm〜100μmであることが好ましい。接着層の各波長における光線透過率は、290nm〜360nmで5%以下、360nm〜380nmで40%以下であることが好ましい。
【0092】
接着層は、粒子を含有し、拡散性を有するものとすることができる。具体的には例えば、上で述べた接着層を形成するための接着剤として粒子を含有するものを用い、これを本発明に用いることができる。接着層が粒子を含有する場合、粒子の含有割合は、接着層に対して、1〜30重量%とすることができる。接着層が含有しうる粒子の例としては、上に述べた、光学機能層が含有し得る粒子の例と同様のものを挙げることができる。
【0093】
本発明の製造方法においては、基材、光学機能層、および接着層のいずれかが、光拡散性を付与する粒子を含むことが好ましい。かかる粒子を含むことにより、光取り出し効率をさらに向上させることができる。2P法の実施に際して紫外線の照射を、かかる粒子を含む層を透過させて行う場合、紫外線が硬化される層に到達することが妨げられ、樹脂が硬化されにくい。このことは、紫外線吸収機能を有する光学積層体を製造する場合特に大きな問題となる。本発明の製造方法では、紫外線照射を効率的に行うことができるため、各層粒子を含有する場合であっても、2P法による製造を効率的に行うことができる。
【0094】
基材、光学機能層、および接着層のそれぞれにおける粒子の含有割合の好ましい範囲は、上に述べた通りであるが、基材、光学機能層、および接着層の全体における粒子の含有割合は、ヘイズ値で85〜99%とすることができる。
【0095】
〔セパレーター〕
工程(B)に用いるセパレーターとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の材料からなるセパレーターフィルムを用いることができる。または、セパレーターフィルムと、その他の任意の層とからなるものを用いることもできる。かかる任意の層の例としては、離型処理層、帯電防止層等の層を挙げることができる。
【0096】
〔面光源装置〕
本発明の製造方法により得られた本発明の光学積層体は、各種の表示装置、光源装置、照明装置等を製造するために用いることができる。特に、以下に述べる本発明の面光源装置の製造に用いることができる。
本発明の面光源装置は、有機EL素子を備える面光源装置であって、有機EL素子よりも出光面側に、前記本発明の光学積層体を用いて形成された、光学機能層、基材及び接着層をさらに備える。
具体的には、本発明の光学積層体がセパレーターを含まない場合はそのまま、含む場合はセパレーターを剥離し光学機能層、基材及び接着層をこの順に備える複層物とし、有機EL素子の出光面上に貼付することにより、本発明の面光源装置を得ることができる。
【0097】
〔面光源装置の具体例〕
図10は、本発明の面光源装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図11は、図10に示す面光源装置10を、図11中の線1a−1bを通り、基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。面光源装置10は、図1及び図2に示した光学積層体100からセパレーター141を剥離したもの、即ち、光学機能層111、基材121及び接着層131を備える複層物を備える。
【0098】
面光源装置10は、矩形の平板状の構造を有する装置である。面光源装置10は、有機EL素子用基板151と、有機EL素子用基板151の一方の面156に接して設けられた透明電極層161と、透明電極層161に接して設けられた発光層162と、発光層162に接して設けられた反射電極層163とを備える。透明電極層161、発光層162及び反射電極層163は、有機EL素子160を構成する。面光源装置10はさらに、任意の構成要素として、有機EL素子160の、装置出光面とは反対側の表面165側に封止基板171を有する。
【0099】
面光源装置10はさらに、有機EL素子用基板151の他方の面157に、接着層131、基材121及び光学機能層111を含む複層物を備える。
【0100】
発光層162からの光は、透明電極層161を透過するか、又は反射電極層163で反射され、発光層162及び透明電極層161を透過して、装置出光面側に向かう。有機EL素子160から出光した光の多くは、有機EL素子用基板151、接着層131、基材121、及び光学機能層111を、この順に透過して、表面10Uから出光する。したがって、光学機能層111の表面10Uは、面光源装置10の装置出光面となる。
【0101】
このように、発光層162からの光が、光学機能層111を透過して出光することにより、光学機能層111の表面10Uの凹凸構造により、光取り出し効率を向上させることができる。また、接着層131、基材121及び光学機能層111等の層が拡散性を有する場合は、それによりさらに光が拡散された状態で出光され、その結果、観察角度による出光面の色味の変化を抑制することができる。
【0102】
また、基材121が脂環式構造含有重合体樹脂からなるものである場合、水蒸気及び酸素等の外気中の発光層を劣化させる成分が装置出光面側から発光層へ到達することを防止するので、寿命の長い装置とすることができる。
【0103】
〔面光源装置の有機EL素子〕
前記有機EL素子160として例示するように、本発明の面光源装置は有機EL素子を備え、かかる有機EL素子は、透明電極層と、反射電極層等の前記透明電極層に対向する電極層と、これらの電極層間に設けられ、電極から電圧を印加されることにより発光する発光層とを有するものとすることができる。
【0104】
有機EL素子は、基板上に素子を構成する電極、発光層等の層を形成し、さらにそれらの層を覆う封止部材を設け、基板と封止部材で発光層等の層を封止した構成とされるのが一般的である。通常、ここでいう基板側から出光する素子はボトムエミッション型、封止部材側から出光する素子はトップエミッション型と呼ばれる。本発明の面光源装置は、これらのいずれであってもよい。
【0105】
本発明において、有機EL素子を構成する発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。発光層中の発光材料は1種類に限られず、また発光層も1層に限られず、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせとすることができる。これにより、白色又はそれに近い色の光を発光するものとしうる。
【0106】
有機EL素子はさらに、電極間に、発光層に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の他の層をさらに有することもできる。有機EL素子はさらに、電極に通電するための配線、発光層の封止のための周辺構造等の任意の構成要素を備えることもできる。
【0107】
有機EL素子の、光学積層体中の透明電極層に対向する電極は、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。図10及び図11に示す有機EL素子160のように、透明電極層161に対向する電極163を反射電極とすることにより、光学機能層111側に出光する有機EL素子とすることができる。また、両方の電極を透明電極とし、さらに、出光面から遠いほうの透明電極よりもさらに出光面から遠い位置に反射部材を有することにより、出光面側への出光を達成することもできる。
【0108】
電極及びその間に設ける層を構成する材料としては、特に限定されないが、具体例として下記のものを挙げることができる。
透明電極の材料としてはITO等を挙げることができる。
正孔注入層の材料としてはスターバースト系芳香族ジアミン化合物等を挙げることができる。
正孔輸送層の材料としてはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
黄色発光層のホスト材料としては同じくトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができ、黄色発光層のドーパント材料としてはテトラセン誘導体等を挙げることができる。
緑色発光層の材料としては、ピラゾリン誘導体などがあげられる。
青色発光層のホスト材料としてはアントラセン誘導体等を挙げることができ、青色発光層のドーパント材料としてはペリレン誘導体等を挙げることができる。
赤色発光層の材料としては、ユーロピウム錯体などを上げることができる。
電子輸送層の材料にはアルミニウムキノリン錯体(Alq)等を挙げることができる。
陰極材料にはフッ化リチウムおよびアルミニウムをそれぞれ用い、これらを順次真空成膜により積層させたものを挙げることができる。
【0109】
上記のもの又はその他の発光層を適宜組み合わせて積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層を得ることができる。補色関係の組み合わせは、黄/青、又は緑/青/赤等とすることができる。
【0110】
〔面光源装置の用途〕
本発明の面光源装置は、照明器具及びバックライト装置等の光源装置としての用途に用いうる。
前記照明器具は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、光源を保持する部材、電力を供給する回路等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、筐体、電力を供給する回路、出光する光をさらに均一にするための拡散板、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置の用途は、液晶表示装置等、画素を制御して画像を表示させる表示装置、並びに看板等の固定された画像を表示させる表示装置のバックライトとして用いることができる。
【0111】
〔その他〕
本発明は、前記具体例には限定されず、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲内で、任意の変更を施すことができる。
例えば、本発明の光学積層体は、上述した層の他にも任意の層をさらに含むものであってもよい。かかる任意の層は、例えば光学機能層の表面の凹凸構造の上にさらに設けられたコーティング層であってもよく、かかるコーティング層が、本発明の面光源装置の装置出光面の凹凸構造を規定するものであってもよい。
また、上記実施形態の例示において、光学機能層の表面の全面に分布する凹部として、同一の形状からなるもののみが分布しているものを示したが、凹凸構造において、異なる形状の凹部が混在していてもよい。例えば、大きさの異なる角錐形状の凹部が混在していたり、角錐形状の凹部と円錐形状の凹部が混在していたり、複数の角錐が組み合わされた形状のものと単純な角錐形状とが混在していてもよい。
また、上記具体例において、凹凸構造を構成する平坦部の幅、及び隣り合う平坦部の間隔については、常に一定のものを示したが、平坦部の幅が狭いものと広いものとが混在していてもよく、また、平坦部の間隔が狭い箇所と広い箇所とが混在していてもよい。そのようにして、平坦部の高さ、幅、及び間隔の1以上の要素において、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差が設けられている態様とすることにより、干渉による虹ムラを抑制することができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下の実施例において、材料の量比を表す「部」「%」は、別に断らない限り重量比を表す。
【0113】
<実施例1>
(1−1.基材の調製)
熱可塑性ノルボルネン樹脂(Tg143℃、重量平均分子量37.5万)のペレットを、熱風乾燥機を用いて100℃で4時間乾燥したのち押出機に供給した。溶融樹脂温度230℃でT型ダイスから押し出し、引き取り速度18.0m/分で巻き取り、幅400mm、長さ250mのフィルム1を得た。
【0114】
得られたフィルム1の一方の面に、コロナ放電処理装置(春日電機社製)を用いて、放電量500W・分/mで、コロナ処理を施した。
水系ウレタン樹脂(スーパーフレックス210、第一工業製薬社製)20部、架橋剤(アジピン酸ジヒドラジド、和光純薬社製)1部、架橋剤(デナコールEX−521、ナガセケムテックス社製)0.5部、シリカ粒子(スノーテックXL、日産化学社製)4部、及び純水80部からなる、易接着層形成用の塗布液を調製した。
塗布液を、フィルム1のコロナ処理面に、グラビアコーターを用いて、乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、95℃で乾燥して易接着層を形成し、(易接着層)−(フィルム1)の層構成を有する基材1を得た。基材1は、ロール状に巻き取った。
得られた基材1を分光光度計(V−570JASCO社製)で測定すると、波長365nmにおける透過率は91%であった。
【0115】
(1−2.転写ロールの調製)
頂角60°、底辺25μm、の正四角錐が30μmのピッチで並んだ(即ち、隣接する四角錐間に5μmの平坦部が存在する)形状を有する直径300mm、長さ400mmの円筒形状の転写ロールを調製した。
【0116】
(1−3.工程(A1):未硬化樹脂の層の形成)
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート3部、トリメチロールプロパントリアクリレート50部、エトキシ化フェニルアクリレート47部、シリコーン粒子(トスパール110、平均粒子系2.0μm、モメンティブマテリアル社製)20部、及び光開始剤(イルガキュアー184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)3部を混合し、紫外線硬化性の塗布液を調製した。
【0117】
(1−1)で得られた基材1を搬送速度10m/分で繰り出して、易接着層側の面に、紫外線硬化性の塗布液を、ダイコーターを用いて、塗布膜厚15μmで塗布し、未硬化樹脂の層を形成し、(未硬化樹脂の層)−(易接着層)−(フィルム1)の層構成を有する複層物を得た。
【0118】
(1−4.工程(A2)〜(A4):凹凸構造の転写、硬化及び剥離)
(1−3)で得られた複層物を、転写ロールに押し当てて、直径100mmのゴムロールでニップした。この際、未硬化樹脂の層が転写ロールに、フィルム1がゴムロールに接するように複層物を通した。
転写ロールが未硬化樹脂の層に接している間に、複層物のフィルム1側の面に、Dバルブ(フュージョン社製)を用いて、積算光量1500mJ/cmで紫外線を照射した。これにより、紫外線が、フィルム1及び易接着層を透過して未硬化樹脂の層に達し、未硬化樹脂の層が硬化し、光学機能層が形成され、(光学機能層)−(易接着層)−(フィルム1)の層構成を有する複層物(a)を得た。複層物(a)は、ロール状に巻き取った。複層物(a)の表面を顕微鏡観察したところ、光学機能層が、転写ロール表面から転写された凹凸形状を有していることが確認できた。
【0119】
(1−5.工程(B):接着層の形成)
アクリルポリエステル共重合体(サイビノールAT352、サイデン化学社製)100部、酢酸エチル30重量部、トルエン10重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製)0.05部、及び紫外線吸収剤(TINUVIN109 チバスペシャリティーケミカル社製、ベンゾトリアゾール化合物)1.5部を混合し、接着層形成用の塗布液を調製した。
セパレーターとして、厚さ25μmのポリエステルセパレーターフィルム(パナピールPET25 TP−01パナック社製)を用意した。送り出しロールから10m/分の条件でセパレーターを繰り出し、その一方の表面に、塗布液を、ドライ膜厚が35μmになるように塗布した後、90℃のオーブンで乾燥して、(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する複層物(b)を得た。
【0120】
(1−6.工程(C):複層物(a)と複層物(b)との貼付)
(1−4)で得た複層物(a)のフィルム1側の面に、コロナ放電処理装置(春日電機社製)を用いて、放電量500W・分/mの条件でコロナ放電処理を施した。この面と、(1−5)で得た複層物(b)の接着層側の面とを接触させ、ニップロールで圧搾し、(光学機能層)−(易接着層)−(フィルム1)−(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する光学積層体1を得た。得られた光学積層体1は、ロール状に巻き取った。
【0121】
(1−7.面光源装置1の製造)
厚み0.7mmのガラス基板の一方の面に、透明電極層100nm、ホール輸送層10nm、黄色発光層20nm、青色発光層15nm、電子輸送層15nm、電子注入層1nm、および反射電極層100nmを、この順に形成した。ホール輸送層から電子輸送層までは全て有機材料により形成した。黄色発光層および青色発光層はそれぞれ異なる発光スペクトルを有している。
【0122】
透明電極層から反射電極層までの各層を形成した材料は、それぞれ下記の通りである:
・透明電極層;錫添加酸化インジウム(ITO)
・ホール輸送層;4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)
・黄色発光層;ルブレン1.5重量%添加 α−NPD
・青色発光層;イリジウム錯体10重量%添加 4,4’−ジカルバゾリル−1,1’−ビフェニル(CBP)
・電子輸送層;フェナンスロリン誘導体(BCP)
・電子注入層;フッ化リチウム(LiF)
・反射電極層;Al
【0123】
透明電極層の形成方法は、ITOターゲットとした反応性スパッタリング法にて行い、表面抵抗を10Ω/□以下とした。また、ホール注入層から反射電極層までの形成は、真空蒸着装置内に透明電極層を既に形成したガラス基板を設置し、上記のホール輸送層から反射電極層までの材料を抵抗加熱式により順次蒸着させることにより行なった。系内圧は5x10−3 Paで、蒸発速度は0.1〜0.2nm/sで行った。
【0124】
さらに、電極層に通電のための配線を取り付け、さらにホール輸送層から反射電極層までを封止部材により封止し、有機EL発光装置1を作製した。
【0125】
(1−6)で得られた光学積層体のセパレーターを剥離し、接着層を露出させた。露出させた接着層を、有機EL発光装置1の出光面側のガラス表面に貼り付けて、面光源装置1を得た。
【0126】
<実施例2>
(2−1.光学積層体2の製造)
下記の点を変更した他は、実施例1の(1−2)〜(1−6)と同様にして、(光学機能層)−(基材2)−(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する光学積層体2を得た。
・基材1に代えて、基材2(両面易接着ポリエステルフィルム、ルミラーU34、厚さ100μm、波長365nmの透過率87%、東レ社製)を用いた。
・紫外線吸収剤として、TINUVIN109に代えて、BONASORB UA−3912(オリエント化学工業社製、インドール系化合物)を用いた。
・工程(1−6)のコロナ放電処理は省略した。
【0127】
(2−2.面光源装置2の製造)
光学積層体1に代えて光学積層体2を用いた他は、実施例1の(1−7)と同様にして、面光源装置2を得た。
【0128】
<比較例1>
(C1−1.基材−セパレーター複層物の製造)
実施例1の(1−5)と同様にして、複層物(b)を得た。得られた複層物(b)の接着層側の面と、基材2(実施例2で用いたものと同一)の一方の面とを貼り合わせ、ニップロールで圧搾し、(基材2)−(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する複層物を得た。得られた複層物は、ロール状に巻き取った。
得られた複層物の波長365nmにおける透過率を分光光度計(V−570、JASCO社製)で測定すると、8%であった。
【0129】
(C1−2.未硬化樹脂の層の形成)
(C1−1)で得た複層物を搬送速度10m/分で繰り出して、基材2側の面に、実施例1の(1−3)で用いたものと同様の紫外線硬化性の塗布液を、ダイコーターを用いて、塗布膜厚15μmで塗布し、未硬化樹脂の層を形成し、(未硬化樹脂の層)−(基材2)−(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する複層物を得た。
【0130】
(C1−3.凹凸構造の転写、硬化及び剥離)
(1−3)で得られた複層物に代えて、(C1−2)で得られた複層物を用いた他は、実施例1の(1−4)と同様にして、(光学機能層)−(基材2)−(接着層)−(セパレーター)の層構成を有する光学積層体3を得た。
得られた光学積層体3は、表面にタック感があり、未硬化樹脂の層の硬化が著しく不十分であり、したがってこのような方法での光学積層体の生産は、生産性が劣ることがわかった。
【0131】
<比較例2>
(1−5)において、接着層形成用の塗布液に紫外線吸収剤を添加しなかった他は、実施例1の(1−1)〜(1−6)と同様にして、光学積層体4を得た。
光学積層体1に代えて光学積層体4を用いた他は、実施例1の(1−7)と同様にして、面光源装置4を得た。
【0132】
<面光源装置の評価>
実施例1、実施例2及び比較例2で得られた面光源装置1、2及び4について、出光面に光を照射することによる発光素子の劣化の程度を評価した。
面光源装置に、直流電圧5Vを印加し発光させ、出向面からの正面方向の輝度を輝度計(大塚電子社製、MCPD−7000)を用いて測定した。その後、キセノンランプからの光を面発光装置の出光面に6mW/cm(波長405nm)で7時間照射した。照射後に、照射前の輝度測定と同様の手順で輝度を測定した。
面光源装置1及び2においては、照射後の輝度が、照射前の輝度に比べてそれぞれ10%及び8%低下した。面光源装置4においては、照射後の輝度が、照射前の輝度に比べて40%低下した。このように、光学積層体として紫外線吸収剤を含むものを使用すると、有機EL素子の光劣化を抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0133】
10:面光源装置
10U:光学機能層表面
11A〜11D:斜面
11E〜11H:凹部底辺
100:光学積層体
111:凹凸構造を有する光学機能層
113:凹部
114:平坦部
121:光学積層体基材
131:接着層
141:セパレーター
151:有機EL素子基板
160:有機EL素子
161:透明電極層
162:発光層
163:反射電極層
171:封止基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表側の面に設けられた光学機能層と、
前記基材の裏側の面に設けられた紫外線吸収機能を有する接着層と
を備える光学積層体の製造方法であって、
前記基材の表側の面に前記光学機能層を形成し、前記基材及び前記光学機能層を有する複層物(a)を得る工程(A)と、
前記複層物(a)の裏側の面に前記接着層を設ける工程(C)とを含む、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(A)が、
前記基材の表側の面に紫外線硬化性の未硬化樹脂を塗布し、前記未硬化樹脂の層を形成する工程(A1)と、
前記未硬化樹脂の層に凹凸構造を有する型を接触させる工程(A3)と、
前記基材の裏側から紫外線を照射して、前記未硬化樹脂の層を硬化させ、硬化した樹脂からなる光学機能層を得る工程(A4)と、
前記型を、前記光学機能層から剥離する工程(A5)と
を含む光学積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(A1)の終了後前記工程(A4)の開始前に、前記未硬化樹脂の層を加熱する工程(A2)をさらに含む光学積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体が、前記接着層の前記基材と反対側に設けられるセパレーターをさらに備え、
前記製造方法が、前記セパレーターに前記紫外線吸収機能を有する接着層を形成し、前記セパレーター及び前記接着層を有する複層物(b)を得る工程(B)をさらに含み、
前記工程(C)が、前記複層物(a)と前記複層物(b)とを貼り合わせる工程である、光学積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材の、波長365nmの光の透過率が80%以上である光学積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材が、重量平均分子量が3.5万以上の脂環式構造含有重合体樹脂からなるフィルムを含む光学積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材、前記光学機能層、および前記接着層の少なくともいずれかが、光拡散性を付与する粒子を含む光学積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法で製造された光学積層体。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面光源装置であって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子よりも出光面側に、請求項8に記載の光学積層体を用いて形成された、光学機能層、基材及び接着層をさらに備える面光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−128097(P2012−128097A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278317(P2010−278317)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】