光学系、交換レンズ及びそれを有する撮像装置
【課題】 光路中に樹脂よりなる光学素子を用いたとき、この光学素子に紫外光が集光するのを軽減し、樹脂よりなる光学素子の光学特性の劣化を防止し、良好なる光学性能が得られる光学系及びそれを有する撮像装置を得る。
【解決手段】 樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されていること。
【解決手段】 樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系及びそれを有する撮像装置に関し、例えば銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
最近のデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に用いられる光学系にはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂より成るレンズやフィルター等の光学素子が多く用いられている。
【0003】
樹脂より成る光学素子は、成型により容易に製造できることや、形状の自由度が高い等の特長がある。又、熱可塑性、紫外線硬化などの特性を用いれば、接着が容易となる。又、微細構造の転写などが容易である等の特長がある。そのため樹脂より成る光学素子は光学系中においてプラスティックモールドレンズ、接合光学面における接着剤、回折光学素子、ピント板、画像センサー用のマイクロレンズ、カラーフィルターとして使われている。
【0004】
一方、光学系を構成する光学素子の光学面には、多くの場合、反射防止のための反射防止構造が施されている。
【0005】
樹脂より成る光学素子の光学面に、誘電体より成る反射防止膜を蒸着することは技術的に難しい。このため、近年、樹脂より成る光学素子の光学面に、誘電体の反射防止多層膜の代わりに、可視光波長よりも短い微細な凹凸周期構造(凹凸部)を設けて反射防止効果を得ることが行われている(特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1では光学面に微細な周期構造の凹凸部を複数形成し、反射防止を図った光学素子を開示している。
【0007】
一方、特許文献2では微細な凸部または凹部を複数、千鳥状に配列、または、開口部の平面視形状が6角形に配列させ反射防止を行った反射防止素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−157119号公報
【特許文献2】特開2006−10831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、樹脂は炭素原子の共有結合による高分子からなるため、紫外光が多く入射すると、物理的及び化学的に変化してくる。これは、照射された紫外光のエネルギーにより高分子内の結合が切断されるためである。又、樹脂は結合ごとに結合エネルギーが決まっており、その結合エネルギーに相当する紫外光の波長が決まってくる。
【0010】
例えば、C−C結合の結合エネルギーは346kJ/molであり、これに相当する紫外光の波長はλ=347.2nmとなる。
【0011】
同様に、C=C結合の結合エネルギーは340kJ/molで波長はλ=353.3nmである。C−O結合の結合エネルギーは386kJ/molで波長はλ=311.2nmである。C=O結合の結合エネルギーが374kJ/molで波長はλ=321.2nmである。
【0012】
これより短い波長の光が樹脂に照射されると各結合が切断される可能性がある。この波長300nm〜400nmの紫外光によりこれらの結合が影響を受ける事が樹脂より成る光学素子を用いたときの光学性能の劣化の原因である。
【0013】
樹脂の屈折率を高めるためにS(硫黄)元素が用いられている。このC−S結合の結合エネルギーは269kJ/molと低い結合エネルギーである。そのため容易にC−S結合が破壊され、S元素の影響で樹脂が黄色化する事もある。
【0014】
一般にレンズに用いられる硝材は、紫外光の吸収率が高い。また、一般的な可視光に対する増透多層膜は紫外光の透過率が低い。そのため、一般のレンズ系(光学系)では紫外光の透過率が低い。
【0015】
このため、レンズ系の像側に配置された樹脂より成る光学部材への紫外光の照射光量は比較的低くなる。このため、樹脂より成る光学素子に入射することによる紫外光による影響はほとんどない。
【0016】
しかしながら紫外光が集中して樹脂より成る光学素子に入射すると紫外光の影響が無視できなくなってくる。
【0017】
一方、レンズ系に用いられている反射防止多層膜は可視光に関しては高い反射防止特性を持っている。しかしながら、紫外光に対しては増反射膜として作用する。
【0018】
図13は、一般的な反射防止膜の分光特性の説明図である。図13に示すように、一般的な反射防止膜は、可視光全域で反射率を抑える様に最適化設計すると、紫外光と赤外光の波長領域で反射率が増加する。反射防止多層膜では屈折率の低い誘電体のL層と屈折率の高い誘電体のH層を光路長が約1/4波長になるような膜厚で積層し、干渉させることにより反射を打ち消しあうように構成されている。
【0019】
しかしながら、紫外光や、赤外光では逆に干渉により反射を強め合う事になる。
【0020】
図7、図8は、後述する本発明の撮像装置の参考例としての撮像装置と、それに用いられる一般的な光学系を模式的に表したときの要部断面図である。
【0021】
1は光学系であり、交換レンズ(撮影系)より成っている。2は一眼レフレックスカメラであり、光学系1が着脱可能に装着されている。iは物体側(光入射側)から数えたレンズの番号を示し、Giは光学系1を構成する第iレンズである。
【0022】
3、4は第1レンズG1の物体側と像側の光学面である。
【0023】
5、6は第2レンズG2の物体側と像側の光学面である。
【0024】
7、8は第3レンズG3の物体側と像側の光学面である。
【0025】
第4レンズG4は複合非球面レンズより成り、物体側の光学面9にはプラスティック樹脂(樹脂)のモールド形成により成る非球面層(光学素子)9aが形成されている。光学面9、10より成るレンズ素子9bの材料は通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面である。
【0026】
11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。12は光源である。13はファインダーである。
【0027】
図7では、太陽などの強い点光源12からの紫外光が第1レンズG1の光学面3、4を透過し、第2レンズG2の光学面5、6を通過する。そして第3レンズG3の光学面7、および第2レンズG2の光学面6の反射防止多層膜で反射して、この結果、面反射ゴーストとなって樹脂より成る光学素子9aに結像する事がある。
【0028】
また、図8に示すように、光学系1の一部分のレンズ素子がズーミングや、フォーカシングにより移動して特定の位置にあるとき、視野外の光源12からの紫外光がゴーストとなって撮像素子11に結像する場合もある。
【0029】
特許文献1では、微細な凹凸部が規則的な周期ピッチで繰り返し配置された構造を用いている。このため、可視光に関して反射光が十分微小であっても、紫外光に関しては、多くの回折光を発生させてしまう。
【0030】
例えば、図9に示すように、視野外に光源12があったとしても、光学面6に形成した微細な凹凸周期構造によって入射光が大きく回折し、その後の光学系によって撮像素子11に結像される場合がある。
【0031】
特許文献1の実施例では微細凹凸周期構造がレンズの界面で、2次元的で正方配列となっている。そのため、回折光も格子方向に集中する傾向がある。
【0032】
特許文献2の反射防止素子は、特許文献1と同じように、規則的な周期ピッチにより回折光が発生する。回折光の2次元的な広がりは、正方配列とは違い、斜め方向、あるいは60度ごとの6方向となるが、分離する数は変わらない。このため、光線のエネルギーを分散させる効果はあがらない。したがって、この場合も特定の方向に強く回折して、ゴーストが発生する場合がある。
【0033】
樹脂より成る光学素子全体に照射される紫外光の光量自体が少なくても、紫外光が集光すると部分的に光学素子を劣化させる。
【0034】
本発明は、光路中に樹脂より成る光学素子を用いたとき、この光学素子に紫外光が集光するのを軽減し、樹脂より成る光学素子の光学特性の劣化を防止し、良好なる光学性能が得られる光学系及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の光学系は、樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光路中に樹脂よりなる光学素子を用いたとき、この光学素子に紫外光が集光するのを軽減し、樹脂よりなる光学素子の光学特性の劣化を防止し、良好なる光学性能が得られる光学系及びそれを有する撮像装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の光学系の要部構成図
【図2】本発明の実施例1の光学系の他の実施状態の要部構成図
【図3】本発明の実施例2の光学系の要部構成図
【図4】本発明の実施例2の光学系の他の実施状態の要部構成図
【図5】本発明の実施例3の光学系の要部構成図
【図6】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向の屈折率を表す模式図
【図7】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図8】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図9】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図10】波長以下の微細な凹凸構造の界面からのSEM写真
【図11】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向からのSEM写真
【図12】波長以下の微細構造凹凸部の界面からのSEM写真
【図13】誘電体多層膜による反射膜での分光反射率特性を示すグラフ
【図14】波長以下の微細な凹凸構造の分光反射率特性を示すグラフ
【図15】波長以下の微細な凹凸構造の分光散乱率特性を示すグラフ
【図16】波長以下の微細な凹凸構造の分光反射率特性を示すグラフ
【図17】波長以下の微細な凹凸構造の分光散乱率特性を示すグラフ
【図18】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向の屈折率を表す模式図
【図19】条件式(4)を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の光学系は、光路中に樹脂より成る光学素子を少なくとも1つ含んでいる。樹脂は、炭素原子と硫黄原子の間にC−Sの結合を持つ材料である。樹脂より成る光学素子は、例えばプラスティックモールドレンズ、接合レンズの接着剤、カラーフィルター、偏光板のうちの少なくとも1つである。
【0039】
光路中における樹脂より成る光学素子よりも光線の入射側(物体側)の光学面のうち少なくとも1つに、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部(凹凸構造)が繰り返し構造を持たないで形成されているか、またはランダムな配列間隔を持って形成されている。
【0040】
ここで凹凸部は紫外光を散乱するとともに、可視光の反射防止作用を有する。
【0041】
具体的には凹凸部の作用は次のとおりである。
Saを波長λa=360nmに対する散乱率とする。
Sbを波長λb=550nmに対する散乱率とする。
Rbを波長λb=550nmに対する反射率とする。
【0042】
このとき
Sa > 1% ・・・(1)
Sb < 1% ・・・(2)
Rb < 5% ・・・(3)
なる条件式を満たしている。
【0043】
ここで散乱率Sとは、入射光束が凹凸部に照射されたとき、入射光束の強度に対する入射方向以外に拡がる全ての光束の強度の比をいう。
【0044】
反射率Rとは凹凸部に入射した入射光束に対する反射光束の強度の比である。
【0045】
条件式(1)は紫外光の散乱程度の下限を示すものである。波長360nmの光における散乱率Saが条件式(1)より小さいと、紫外光に基づくゴーストを効果的に防止するのが難しくなる。
【0046】
条件式(2)、(3)は波長550nmの可視光に対する透過性能を示すものである。条件式(2)の上限を超えて、散乱率Sbが高くなると、可視光の散乱が画像に及ぼす影響が増大してくるので良くない。
【0047】
条件式(3)の上限を超えて反射率Rbが高くなると、即ち凹凸部での反射率が高くなると、可視光に対してゴーストを効果的に減少させるのが難しくなる。
【0048】
本実施例の光学面に形成した凹凸部は可視光に関しては高い透過率を確保しながらも、紫外光の面反射によるゴーストの発生を少なくしている。
【0049】
特に、太陽光線などの強い点光源からの光に対して、光線の入射角度や、光学部材のズーミングやフォーカスの状態によらず、面反射によるゴーストの発生を少なくし、光線の集光を防止する事ができる。この結果、光学系内の樹脂より成る光学素子の劣化を最小限に抑える事ができる。
【0050】
以下、図面を用いて本発明の各実施例を説明する。
【0051】
[実施例1]
図1は本発明の光学系の実施例1の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0052】
図2は図1の実施例1の一部分の変形例である。図2は図1の光学系1において、一部の光学部材(レンズ)をフォーカスやズーミングのために光軸方向に移動させた場合に相当している。
【0053】
図中、1は光学系であり、交換レンズ(撮影系)より成っている。2は一眼レフレックスカメラ(カメラ本体)であり、光学系1を着脱可能に装着している。
【0054】
iは物体側(光入射側)から数えたレンズの番号を示し、Giは光学系1を構成する第iレンズである。
【0055】
図1の実施例では光学系1を第1レンズG1〜第4レンズG4の4つのレンズより成る場合を示しているが、光学系1のレンズの数は4つに限らず、いくつあっても良い。
【0056】
3、4は第1レンズG1の物体側と像側の光学面である。5、6は第2レンズG2の物体側と像側の光学面である。7、8は第3レンズG3の物体側と像側の光学面である。
【0057】
第4レンズG4は複合非球面レンズより成り、物体側の光学面9にはプラスティック樹脂(樹脂)のモールド形成により成る非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0058】
光学素子9aの物体側の面が非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された像を受光する撮像素子である。12は光源である。13はファインダーである。
【0059】
実施例1においては、光学系1を構成する2つの光学面6と光学面8には可視光(波長400nm〜700nm)の波長以下の微細構造の凹凸部が形成されている。
【0060】
本実施例において、凹凸部が形成されている光学面は、光線の入射側から数えて第2番目の光学面より像側に位置している。そして、第1番目の光学面には薄膜による反射防止膜が形成されている。
【0061】
図1において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過屈折し、光学面6に到達する。光学面6には凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0062】
図11は、微細な凹凸構造の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図12は微細な凹凸構造を面の上方から観察したSEM写真である。この微細構造の凹凸部は花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。
【0063】
この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。図6は図11の断面の有効屈折率を模式化した説明図である。
【0064】
図6において横軸は有効屈折率Nsである。縦軸は光学面からの距離Dである。光学面6との界面付近Daは媒質が密となっているために、有効屈折率Nsも高くなっている。
【0065】
一方、界面から離れるに従って有効屈折率Nsも低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率1になっている。そのため可視光(波長400nm〜700nm)に関しては、図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0066】
一方、紫外光(波長〜400nm)に関しては、図15に示す分光散乱率のグラフのように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0067】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5を透過した後、光学面6で散乱し、四方(立体角4π内、全空間内)に拡散する。拡散光の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0068】
一部の光線は光学面6より像側の光学面7を透過し、光学面8に到達する。この光学面8にも図11、図12で示す微細構造より成る凹凸部が形成されているため、ここでも散乱が起こる。
【0069】
そのため、図1の光学系においては、光学面9に配置された樹脂より成る非球面層9aには紫外光の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光の光線が集光することがない。
【0070】
同様に、図2の光学系においても、撮像素子11に紫外光の光線の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光が撮像素子11面上に集光することはない。
【0071】
実施例1において、光学面6,8に配置された微細構造の凹凸部による散乱光Sa、Sbと反射率Rbは図14、図15のグラフに示すとおりである。
【0072】
即ち、
Sa = 1.5%
Sb = 0.1%
Rb = 0.4%
である。これは前述した条件式(1)、(2)、(3)を満たしている。
【0073】
本実施例において、凹凸部は、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側(光入射側、物体側)の光学面のうち少なくとも2つの光学面6、8に形成されている。
【0074】
本実施例において、A2を2つの光学面のうち、樹脂より成る光学素子9aに近い方の光学面(光学面8)の有効径とする。
【0075】
D12を2つの光学面6、8の光軸方向の間隔とする。
このとき、
0 < A2/D12 < 2.0 ・・・(4)
なる条件式を満たしている。
【0076】
図19は条件式(4)の技術的内容を説明するための概略図である。
【0077】
この条件式(4)は、紫外光を散乱させる2つの光学面に関してその間隔と、2つの光学面のうち像側の光学面の有効径の比を規定するものである。特に、第1の散乱面となる光学面6で散乱した紫外光のうち、第2の散乱面となる光学面8に到達する光線の割合を制限するものである。
【0078】
光軸に平行に入射した光線に関して、第1の光学面6で完全に散乱すると仮定すると、第1の光学面6を中心とした半球の方向に均質に散乱すると考えられる。第2の光学面8に到達する光線の割合は第1の光学面6から見た第2の光学面8の立体角の半球に対する割合で示される。
【0079】
図1の実施例1において、条件式(4)の値は、A2/D12=約1/1.5となり、条件式(4)を満たしている。図2でもA2/D12=約1となり条件式(4)を満たしている。
【0080】
[実施例2]
図3は本発明の実施例2の光学系の実施例2の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0081】
図4は図3の実施例2の一部分の変形例である。図3、図4において図1と同じ部材には同じ番号を付している。
【0082】
実施例2では凹凸部が、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側の光学面のうち少なくとも3つの光学面に形成されている。
【0083】
図3では図1と同様に、1は交換レンズである。2は一眼レフレックスカメラを示す。交換レンズ1において、入射側より順に3、4は第1レンズG1の光学面である。
【0084】
同様に5、6は、第2レンズG2の光学面である。7、8は第3レンズG3の光学面である。第4レンズG4は複合非球面レンズである。第4レンズG4の入射側にプラスティック樹脂のモールド形成による非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0085】
光学素子9aの物体側の面は非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。
【0086】
実施例2では、光学面6と光学面7と光学面8に可視光の波長以下の微細の凹凸部が形成されている。
【0087】
図3において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過屈折し、光学面6に到達する。光学面6には実施例1と同様、図11、図12で示す凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0088】
この微細構造の凹凸部は実施例1と同様に花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。断面の有効屈折率は、図6と同様である。
【0089】
光学面との界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率も高くなっている。一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、実施例1と同様に図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0090】
一方、紫外光に関しても、実施例1と同様に図15に示す分光散乱率のように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部の配列間隔が不規則であるため、特定の方向に集中することが無い。
【0091】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5を透過した後、光学面6で散乱し、四方に拡散する。拡散した光線の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0092】
一部の光線は光学面7に到達する。この光学面7にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されているため、光学面7でも同様の散乱が起こる。光学面7で散乱した光線の一部は、光学面8に到達する。この光学面8にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されているため、光学面8でも同様の散乱が起こる。
【0093】
そのため、図3の実施例2においては、光学面9に配置された非球面層9aに紫外光の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光が集光することがない。
【0094】
同様に、図4の光学系においても、撮像素子11に紫外光の散乱光が入射するだけであり、紫外光が集光することはない。
【0095】
これによって実施例2は実施例1と同様の効果を得ている。
【0096】
[実施例3]
図5は本発明の実施例3の光学系の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0097】
実施例3では凹凸部が、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側の少なくとも3つの光学面に形成されている。
【0098】
図5において図1と同じ部材には同じ番号を付している。
【0099】
図5では図1と同様に、1は交換レンズである。2は一眼レフレックスカメラを示す。交換レンズ1において、入射側より順に3、4は第1レンズG1の光学面である。
【0100】
同様に5、6は、第2レンズG2の光学面である。7、8は第3レンズG3の光学面である。第4レンズG4は複合非球面レンズである。第4レンズG4の入射側にプラスティック樹脂のモールド形成による非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0101】
光学素子9aの物体側の面は非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。
【0102】
実施例3では、光学面6と光学面8と光学素子9aの光入射側の光学面9cに可視光の波長以下の微細の凹凸部が形成されている。
【0103】
図5において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過し、光学面6に到達する。光学面6には実施例1と同様、図11、図12で示す凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0104】
この微細構造の凹凸部は実施例1と同様に花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。断面の有効屈折率は、図6と同様である。
【0105】
光学面との界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率も高くなっている。一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、実施例1と同様に図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0106】
一方、紫外光に関しても、実施例1と同様に図15に示す分光散乱率のように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0107】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5と透過した後、光学面6で散乱し、四方に拡散する。拡散した光線の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0108】
一部の光線は光学面7に到達する。この光学面7を透過した光線は、光学面6と同様の光学面8に到達する。光学面8にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されている。このため、ここのでも同様の散乱が起こる。光学面8で散乱した光線の一部は、光学面9cに到達する。この光学面9cには図10で示す微細構造の凹凸部が形成されている。
このため、光学面9cでも散乱が起こる。
【0109】
図10は光学面9cの凹凸部の構造を面の上方から観察したSEM写真である。この微細構造の凹凸部は凹または、凸の形状がランダムに並んだものである。基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。
【0110】
図18は図10に示す構造の断面の有効屈折率を図6と同様に模式化した説明図である。光学面9cとの界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率Nsも高くなっている。
【0111】
一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では最小の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、図16に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0112】
一方、紫外光に関しては、図17に示す分光散乱率のグラフのように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0113】
そのため、図5においては、撮像素子11に紫外光の散乱光が入射するだけであり、紫外光が集光することはない。
【0114】
これによって実施例3は実施例1と同様の効果を得ている。
【0115】
尚、各実施例において、樹脂より成る光学素子はマイクロレンズやピント板等であっても良い。又、ファインダーを構成するレンズであっても良い。
【0116】
各実施例によれば、光学系の一部にプラスティックモールドレンズや、接合面における接着材、DOE素子、ピント板、画像センサー用のマイクロレンズ、カラーフィルター等の樹脂を用いた光学素子に対して、紫外光の影響を緩和することができる。
【0117】
この結果、光学素子の劣化による光学特性の変化が少なく、良好なる光学特性が得られる光学系及びそれを有する撮像装置が得られる。
【符号の説明】
【0118】
1:交換レンズ
2:一眼レフレックスカメラ
3:第1レンズG1の第1光学面
4:第1レンズG1の第2光学面
5:第2レンズG2の第1光学面
6:第2レンズG2の第2光学面
7:第3レンズG3の第1光学面
8:第3レンズG3の第2光学面
9:第4レンズG4の第1光学面
10:第4レンズG4の第2光学面
11:撮像素子
12:光源(太陽)
13:ファインダー
14:球の斜線部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系及びそれを有する撮像装置に関し、例えば銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
最近のデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に用いられる光学系にはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂より成るレンズやフィルター等の光学素子が多く用いられている。
【0003】
樹脂より成る光学素子は、成型により容易に製造できることや、形状の自由度が高い等の特長がある。又、熱可塑性、紫外線硬化などの特性を用いれば、接着が容易となる。又、微細構造の転写などが容易である等の特長がある。そのため樹脂より成る光学素子は光学系中においてプラスティックモールドレンズ、接合光学面における接着剤、回折光学素子、ピント板、画像センサー用のマイクロレンズ、カラーフィルターとして使われている。
【0004】
一方、光学系を構成する光学素子の光学面には、多くの場合、反射防止のための反射防止構造が施されている。
【0005】
樹脂より成る光学素子の光学面に、誘電体より成る反射防止膜を蒸着することは技術的に難しい。このため、近年、樹脂より成る光学素子の光学面に、誘電体の反射防止多層膜の代わりに、可視光波長よりも短い微細な凹凸周期構造(凹凸部)を設けて反射防止効果を得ることが行われている(特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1では光学面に微細な周期構造の凹凸部を複数形成し、反射防止を図った光学素子を開示している。
【0007】
一方、特許文献2では微細な凸部または凹部を複数、千鳥状に配列、または、開口部の平面視形状が6角形に配列させ反射防止を行った反射防止素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−157119号公報
【特許文献2】特開2006−10831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、樹脂は炭素原子の共有結合による高分子からなるため、紫外光が多く入射すると、物理的及び化学的に変化してくる。これは、照射された紫外光のエネルギーにより高分子内の結合が切断されるためである。又、樹脂は結合ごとに結合エネルギーが決まっており、その結合エネルギーに相当する紫外光の波長が決まってくる。
【0010】
例えば、C−C結合の結合エネルギーは346kJ/molであり、これに相当する紫外光の波長はλ=347.2nmとなる。
【0011】
同様に、C=C結合の結合エネルギーは340kJ/molで波長はλ=353.3nmである。C−O結合の結合エネルギーは386kJ/molで波長はλ=311.2nmである。C=O結合の結合エネルギーが374kJ/molで波長はλ=321.2nmである。
【0012】
これより短い波長の光が樹脂に照射されると各結合が切断される可能性がある。この波長300nm〜400nmの紫外光によりこれらの結合が影響を受ける事が樹脂より成る光学素子を用いたときの光学性能の劣化の原因である。
【0013】
樹脂の屈折率を高めるためにS(硫黄)元素が用いられている。このC−S結合の結合エネルギーは269kJ/molと低い結合エネルギーである。そのため容易にC−S結合が破壊され、S元素の影響で樹脂が黄色化する事もある。
【0014】
一般にレンズに用いられる硝材は、紫外光の吸収率が高い。また、一般的な可視光に対する増透多層膜は紫外光の透過率が低い。そのため、一般のレンズ系(光学系)では紫外光の透過率が低い。
【0015】
このため、レンズ系の像側に配置された樹脂より成る光学部材への紫外光の照射光量は比較的低くなる。このため、樹脂より成る光学素子に入射することによる紫外光による影響はほとんどない。
【0016】
しかしながら紫外光が集中して樹脂より成る光学素子に入射すると紫外光の影響が無視できなくなってくる。
【0017】
一方、レンズ系に用いられている反射防止多層膜は可視光に関しては高い反射防止特性を持っている。しかしながら、紫外光に対しては増反射膜として作用する。
【0018】
図13は、一般的な反射防止膜の分光特性の説明図である。図13に示すように、一般的な反射防止膜は、可視光全域で反射率を抑える様に最適化設計すると、紫外光と赤外光の波長領域で反射率が増加する。反射防止多層膜では屈折率の低い誘電体のL層と屈折率の高い誘電体のH層を光路長が約1/4波長になるような膜厚で積層し、干渉させることにより反射を打ち消しあうように構成されている。
【0019】
しかしながら、紫外光や、赤外光では逆に干渉により反射を強め合う事になる。
【0020】
図7、図8は、後述する本発明の撮像装置の参考例としての撮像装置と、それに用いられる一般的な光学系を模式的に表したときの要部断面図である。
【0021】
1は光学系であり、交換レンズ(撮影系)より成っている。2は一眼レフレックスカメラであり、光学系1が着脱可能に装着されている。iは物体側(光入射側)から数えたレンズの番号を示し、Giは光学系1を構成する第iレンズである。
【0022】
3、4は第1レンズG1の物体側と像側の光学面である。
【0023】
5、6は第2レンズG2の物体側と像側の光学面である。
【0024】
7、8は第3レンズG3の物体側と像側の光学面である。
【0025】
第4レンズG4は複合非球面レンズより成り、物体側の光学面9にはプラスティック樹脂(樹脂)のモールド形成により成る非球面層(光学素子)9aが形成されている。光学面9、10より成るレンズ素子9bの材料は通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面である。
【0026】
11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。12は光源である。13はファインダーである。
【0027】
図7では、太陽などの強い点光源12からの紫外光が第1レンズG1の光学面3、4を透過し、第2レンズG2の光学面5、6を通過する。そして第3レンズG3の光学面7、および第2レンズG2の光学面6の反射防止多層膜で反射して、この結果、面反射ゴーストとなって樹脂より成る光学素子9aに結像する事がある。
【0028】
また、図8に示すように、光学系1の一部分のレンズ素子がズーミングや、フォーカシングにより移動して特定の位置にあるとき、視野外の光源12からの紫外光がゴーストとなって撮像素子11に結像する場合もある。
【0029】
特許文献1では、微細な凹凸部が規則的な周期ピッチで繰り返し配置された構造を用いている。このため、可視光に関して反射光が十分微小であっても、紫外光に関しては、多くの回折光を発生させてしまう。
【0030】
例えば、図9に示すように、視野外に光源12があったとしても、光学面6に形成した微細な凹凸周期構造によって入射光が大きく回折し、その後の光学系によって撮像素子11に結像される場合がある。
【0031】
特許文献1の実施例では微細凹凸周期構造がレンズの界面で、2次元的で正方配列となっている。そのため、回折光も格子方向に集中する傾向がある。
【0032】
特許文献2の反射防止素子は、特許文献1と同じように、規則的な周期ピッチにより回折光が発生する。回折光の2次元的な広がりは、正方配列とは違い、斜め方向、あるいは60度ごとの6方向となるが、分離する数は変わらない。このため、光線のエネルギーを分散させる効果はあがらない。したがって、この場合も特定の方向に強く回折して、ゴーストが発生する場合がある。
【0033】
樹脂より成る光学素子全体に照射される紫外光の光量自体が少なくても、紫外光が集光すると部分的に光学素子を劣化させる。
【0034】
本発明は、光路中に樹脂より成る光学素子を用いたとき、この光学素子に紫外光が集光するのを軽減し、樹脂より成る光学素子の光学特性の劣化を防止し、良好なる光学性能が得られる光学系及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の光学系は、樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光路中に樹脂よりなる光学素子を用いたとき、この光学素子に紫外光が集光するのを軽減し、樹脂よりなる光学素子の光学特性の劣化を防止し、良好なる光学性能が得られる光学系及びそれを有する撮像装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の光学系の要部構成図
【図2】本発明の実施例1の光学系の他の実施状態の要部構成図
【図3】本発明の実施例2の光学系の要部構成図
【図4】本発明の実施例2の光学系の他の実施状態の要部構成図
【図5】本発明の実施例3の光学系の要部構成図
【図6】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向の屈折率を表す模式図
【図7】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図8】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図9】従来例の光学系におけるゴーストを表す模式図
【図10】波長以下の微細な凹凸構造の界面からのSEM写真
【図11】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向からのSEM写真
【図12】波長以下の微細構造凹凸部の界面からのSEM写真
【図13】誘電体多層膜による反射膜での分光反射率特性を示すグラフ
【図14】波長以下の微細な凹凸構造の分光反射率特性を示すグラフ
【図15】波長以下の微細な凹凸構造の分光散乱率特性を示すグラフ
【図16】波長以下の微細な凹凸構造の分光反射率特性を示すグラフ
【図17】波長以下の微細な凹凸構造の分光散乱率特性を示すグラフ
【図18】波長以下の微細な凹凸構造の断面方向の屈折率を表す模式図
【図19】条件式(4)を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の光学系は、光路中に樹脂より成る光学素子を少なくとも1つ含んでいる。樹脂は、炭素原子と硫黄原子の間にC−Sの結合を持つ材料である。樹脂より成る光学素子は、例えばプラスティックモールドレンズ、接合レンズの接着剤、カラーフィルター、偏光板のうちの少なくとも1つである。
【0039】
光路中における樹脂より成る光学素子よりも光線の入射側(物体側)の光学面のうち少なくとも1つに、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部(凹凸構造)が繰り返し構造を持たないで形成されているか、またはランダムな配列間隔を持って形成されている。
【0040】
ここで凹凸部は紫外光を散乱するとともに、可視光の反射防止作用を有する。
【0041】
具体的には凹凸部の作用は次のとおりである。
Saを波長λa=360nmに対する散乱率とする。
Sbを波長λb=550nmに対する散乱率とする。
Rbを波長λb=550nmに対する反射率とする。
【0042】
このとき
Sa > 1% ・・・(1)
Sb < 1% ・・・(2)
Rb < 5% ・・・(3)
なる条件式を満たしている。
【0043】
ここで散乱率Sとは、入射光束が凹凸部に照射されたとき、入射光束の強度に対する入射方向以外に拡がる全ての光束の強度の比をいう。
【0044】
反射率Rとは凹凸部に入射した入射光束に対する反射光束の強度の比である。
【0045】
条件式(1)は紫外光の散乱程度の下限を示すものである。波長360nmの光における散乱率Saが条件式(1)より小さいと、紫外光に基づくゴーストを効果的に防止するのが難しくなる。
【0046】
条件式(2)、(3)は波長550nmの可視光に対する透過性能を示すものである。条件式(2)の上限を超えて、散乱率Sbが高くなると、可視光の散乱が画像に及ぼす影響が増大してくるので良くない。
【0047】
条件式(3)の上限を超えて反射率Rbが高くなると、即ち凹凸部での反射率が高くなると、可視光に対してゴーストを効果的に減少させるのが難しくなる。
【0048】
本実施例の光学面に形成した凹凸部は可視光に関しては高い透過率を確保しながらも、紫外光の面反射によるゴーストの発生を少なくしている。
【0049】
特に、太陽光線などの強い点光源からの光に対して、光線の入射角度や、光学部材のズーミングやフォーカスの状態によらず、面反射によるゴーストの発生を少なくし、光線の集光を防止する事ができる。この結果、光学系内の樹脂より成る光学素子の劣化を最小限に抑える事ができる。
【0050】
以下、図面を用いて本発明の各実施例を説明する。
【0051】
[実施例1]
図1は本発明の光学系の実施例1の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0052】
図2は図1の実施例1の一部分の変形例である。図2は図1の光学系1において、一部の光学部材(レンズ)をフォーカスやズーミングのために光軸方向に移動させた場合に相当している。
【0053】
図中、1は光学系であり、交換レンズ(撮影系)より成っている。2は一眼レフレックスカメラ(カメラ本体)であり、光学系1を着脱可能に装着している。
【0054】
iは物体側(光入射側)から数えたレンズの番号を示し、Giは光学系1を構成する第iレンズである。
【0055】
図1の実施例では光学系1を第1レンズG1〜第4レンズG4の4つのレンズより成る場合を示しているが、光学系1のレンズの数は4つに限らず、いくつあっても良い。
【0056】
3、4は第1レンズG1の物体側と像側の光学面である。5、6は第2レンズG2の物体側と像側の光学面である。7、8は第3レンズG3の物体側と像側の光学面である。
【0057】
第4レンズG4は複合非球面レンズより成り、物体側の光学面9にはプラスティック樹脂(樹脂)のモールド形成により成る非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0058】
光学素子9aの物体側の面が非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された像を受光する撮像素子である。12は光源である。13はファインダーである。
【0059】
実施例1においては、光学系1を構成する2つの光学面6と光学面8には可視光(波長400nm〜700nm)の波長以下の微細構造の凹凸部が形成されている。
【0060】
本実施例において、凹凸部が形成されている光学面は、光線の入射側から数えて第2番目の光学面より像側に位置している。そして、第1番目の光学面には薄膜による反射防止膜が形成されている。
【0061】
図1において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過屈折し、光学面6に到達する。光学面6には凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0062】
図11は、微細な凹凸構造の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図12は微細な凹凸構造を面の上方から観察したSEM写真である。この微細構造の凹凸部は花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。
【0063】
この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。図6は図11の断面の有効屈折率を模式化した説明図である。
【0064】
図6において横軸は有効屈折率Nsである。縦軸は光学面からの距離Dである。光学面6との界面付近Daは媒質が密となっているために、有効屈折率Nsも高くなっている。
【0065】
一方、界面から離れるに従って有効屈折率Nsも低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率1になっている。そのため可視光(波長400nm〜700nm)に関しては、図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0066】
一方、紫外光(波長〜400nm)に関しては、図15に示す分光散乱率のグラフのように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0067】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5を透過した後、光学面6で散乱し、四方(立体角4π内、全空間内)に拡散する。拡散光の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0068】
一部の光線は光学面6より像側の光学面7を透過し、光学面8に到達する。この光学面8にも図11、図12で示す微細構造より成る凹凸部が形成されているため、ここでも散乱が起こる。
【0069】
そのため、図1の光学系においては、光学面9に配置された樹脂より成る非球面層9aには紫外光の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光の光線が集光することがない。
【0070】
同様に、図2の光学系においても、撮像素子11に紫外光の光線の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光が撮像素子11面上に集光することはない。
【0071】
実施例1において、光学面6,8に配置された微細構造の凹凸部による散乱光Sa、Sbと反射率Rbは図14、図15のグラフに示すとおりである。
【0072】
即ち、
Sa = 1.5%
Sb = 0.1%
Rb = 0.4%
である。これは前述した条件式(1)、(2)、(3)を満たしている。
【0073】
本実施例において、凹凸部は、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側(光入射側、物体側)の光学面のうち少なくとも2つの光学面6、8に形成されている。
【0074】
本実施例において、A2を2つの光学面のうち、樹脂より成る光学素子9aに近い方の光学面(光学面8)の有効径とする。
【0075】
D12を2つの光学面6、8の光軸方向の間隔とする。
このとき、
0 < A2/D12 < 2.0 ・・・(4)
なる条件式を満たしている。
【0076】
図19は条件式(4)の技術的内容を説明するための概略図である。
【0077】
この条件式(4)は、紫外光を散乱させる2つの光学面に関してその間隔と、2つの光学面のうち像側の光学面の有効径の比を規定するものである。特に、第1の散乱面となる光学面6で散乱した紫外光のうち、第2の散乱面となる光学面8に到達する光線の割合を制限するものである。
【0078】
光軸に平行に入射した光線に関して、第1の光学面6で完全に散乱すると仮定すると、第1の光学面6を中心とした半球の方向に均質に散乱すると考えられる。第2の光学面8に到達する光線の割合は第1の光学面6から見た第2の光学面8の立体角の半球に対する割合で示される。
【0079】
図1の実施例1において、条件式(4)の値は、A2/D12=約1/1.5となり、条件式(4)を満たしている。図2でもA2/D12=約1となり条件式(4)を満たしている。
【0080】
[実施例2]
図3は本発明の実施例2の光学系の実施例2の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0081】
図4は図3の実施例2の一部分の変形例である。図3、図4において図1と同じ部材には同じ番号を付している。
【0082】
実施例2では凹凸部が、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側の光学面のうち少なくとも3つの光学面に形成されている。
【0083】
図3では図1と同様に、1は交換レンズである。2は一眼レフレックスカメラを示す。交換レンズ1において、入射側より順に3、4は第1レンズG1の光学面である。
【0084】
同様に5、6は、第2レンズG2の光学面である。7、8は第3レンズG3の光学面である。第4レンズG4は複合非球面レンズである。第4レンズG4の入射側にプラスティック樹脂のモールド形成による非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0085】
光学素子9aの物体側の面は非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。
【0086】
実施例2では、光学面6と光学面7と光学面8に可視光の波長以下の微細の凹凸部が形成されている。
【0087】
図3において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過屈折し、光学面6に到達する。光学面6には実施例1と同様、図11、図12で示す凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0088】
この微細構造の凹凸部は実施例1と同様に花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。断面の有効屈折率は、図6と同様である。
【0089】
光学面との界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率も高くなっている。一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、実施例1と同様に図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0090】
一方、紫外光に関しても、実施例1と同様に図15に示す分光散乱率のように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部の配列間隔が不規則であるため、特定の方向に集中することが無い。
【0091】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5を透過した後、光学面6で散乱し、四方に拡散する。拡散した光線の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0092】
一部の光線は光学面7に到達する。この光学面7にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されているため、光学面7でも同様の散乱が起こる。光学面7で散乱した光線の一部は、光学面8に到達する。この光学面8にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されているため、光学面8でも同様の散乱が起こる。
【0093】
そのため、図3の実施例2においては、光学面9に配置された非球面層9aに紫外光の散乱光が僅かに入射するだけであり、紫外光が集光することがない。
【0094】
同様に、図4の光学系においても、撮像素子11に紫外光の散乱光が入射するだけであり、紫外光が集光することはない。
【0095】
これによって実施例2は実施例1と同様の効果を得ている。
【0096】
[実施例3]
図5は本発明の実施例3の光学系の構成を模式的に示す要部概略図である。
【0097】
実施例3では凹凸部が、樹脂より成る光学素子9aより光線の入射側の少なくとも3つの光学面に形成されている。
【0098】
図5において図1と同じ部材には同じ番号を付している。
【0099】
図5では図1と同様に、1は交換レンズである。2は一眼レフレックスカメラを示す。交換レンズ1において、入射側より順に3、4は第1レンズG1の光学面である。
【0100】
同様に5、6は、第2レンズG2の光学面である。7、8は第3レンズG3の光学面である。第4レンズG4は複合非球面レンズである。第4レンズG4の入射側にプラスティック樹脂のモールド形成による非球面層(光学素子)9aが形成されている。
【0101】
光学素子9aの物体側の面は非球面形状である。光学面9、10より成るレンズ素子9bは通常のガラス硝材より成っている。光学面9、10は球面形状である。11は一眼レフレックスカメラ2において、光学系1の光軸上に配置された撮像素子である。
【0102】
実施例3では、光学面6と光学面8と光学素子9aの光入射側の光学面9cに可視光の波長以下の微細の凹凸部が形成されている。
【0103】
図5において、光源12からの光線は光学面3,4,5を透過し、光学面6に到達する。光学面6には実施例1と同様、図11、図12で示す凹凸部(微細な凹凸構造)が形成されている。
【0104】
この微細構造の凹凸部は実施例1と同様に花弁状に結晶が析出したもので、基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造の凹凸部は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。断面の有効屈折率は、図6と同様である。
【0105】
光学面との界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率も高くなっている。一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では空気とほぼ同等の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、実施例1と同様に図14に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0106】
一方、紫外光に関しても、実施例1と同様に図15に示す分光散乱率のように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0107】
そのため、光源12からの紫外光は光学面3,4,5と透過した後、光学面6で散乱し、四方に拡散する。拡散した光線の多くはレンズ鏡筒内の壁に吸収される。
【0108】
一部の光線は光学面7に到達する。この光学面7を透過した光線は、光学面6と同様の光学面8に到達する。光学面8にも光学面6と同様の微細構造の凹凸部が形成されている。このため、ここのでも同様の散乱が起こる。光学面8で散乱した光線の一部は、光学面9cに到達する。この光学面9cには図10で示す微細構造の凹凸部が形成されている。
このため、光学面9cでも散乱が起こる。
【0109】
図10は光学面9cの凹凸部の構造を面の上方から観察したSEM写真である。この微細構造の凹凸部は凹または、凸の形状がランダムに並んだものである。基板界面付近がもっとも密で、界面から離れるに従って疎になっている。この微細構造は可視光に対して十分に微小なために、等価な屈折率(有効屈折率)の薄膜として考えられる。
【0110】
図18は図10に示す構造の断面の有効屈折率を図6と同様に模式化した説明図である。光学面9cとの界面付近は媒質が密となっているために、有効屈折率Nsも高くなっている。
【0111】
一方、界面から離れるに従って有効屈折率も低くなり、構造の上端では最小の有効屈折率になっている。そのため可視光に関しては、図16に示す分光反射率のグラフのように良好な反射防止構造となっている。
【0112】
一方、紫外光に関しては、図17に示す分光散乱率のグラフのように散乱率が増している。また、この際の散乱光の方向は、凹凸部のピッチが不規則なため、特定の方向に集中することが無い。
【0113】
そのため、図5においては、撮像素子11に紫外光の散乱光が入射するだけであり、紫外光が集光することはない。
【0114】
これによって実施例3は実施例1と同様の効果を得ている。
【0115】
尚、各実施例において、樹脂より成る光学素子はマイクロレンズやピント板等であっても良い。又、ファインダーを構成するレンズであっても良い。
【0116】
各実施例によれば、光学系の一部にプラスティックモールドレンズや、接合面における接着材、DOE素子、ピント板、画像センサー用のマイクロレンズ、カラーフィルター等の樹脂を用いた光学素子に対して、紫外光の影響を緩和することができる。
【0117】
この結果、光学素子の劣化による光学特性の変化が少なく、良好なる光学特性が得られる光学系及びそれを有する撮像装置が得られる。
【符号の説明】
【0118】
1:交換レンズ
2:一眼レフレックスカメラ
3:第1レンズG1の第1光学面
4:第1レンズG1の第2光学面
5:第2レンズG2の第1光学面
6:第2レンズG2の第2光学面
7:第3レンズG3の第1光学面
8:第3レンズG3の第2光学面
9:第4レンズG4の第1光学面
10:第4レンズG4の第2光学面
11:撮像素子
12:光源(太陽)
13:ファインダー
14:球の斜線部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記樹脂より成る光学素子より光線の入射側の光学面のうち少なくとも3つの光学面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記樹脂より成る光学素子はプラスティックモールドレンズ、接合レンズの接着剤、カラーフィルター、偏光板のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記樹脂は、炭素原子と硫黄原子の間にC−Sの結合を持つ材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記凹凸部が形成されている光学面は、光線の入射側から数えて第2番目の光学面より像側に位置する光学面であり、第1番目の光学面には薄膜による反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項の光学系と、該光学系によって形成された像を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
カメラ本体に対して着脱可能であり、樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系を有する交換レンズにおいて、
前記樹脂よりなる光学素子よりも物体側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴とする交換レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の交換レンズと、該交換レンズによって形成された像を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系において、前記樹脂よりなる光学素子よりも光線の入射側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記樹脂より成る光学素子より光線の入射側の光学面のうち少なくとも3つの光学面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記樹脂より成る光学素子はプラスティックモールドレンズ、接合レンズの接着剤、カラーフィルター、偏光板のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記樹脂は、炭素原子と硫黄原子の間にC−Sの結合を持つ材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記凹凸部が形成されている光学面は、光線の入射側から数えて第2番目の光学面より像側に位置する光学面であり、第1番目の光学面には薄膜による反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項の光学系と、該光学系によって形成された像を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
カメラ本体に対して着脱可能であり、樹脂よりなる光学素子を光路中に含む光学系を有する交換レンズにおいて、
前記樹脂よりなる光学素子よりも物体側の光学面のうち少なくとも2つの光学面に、可視光の波長以下の大きさの複数の凹凸部が繰り返し構造を持たないで形成されており、またはランダムな配列間隔を持って形成されており、
前記凹凸部は
Saを波長360nmに対する散乱率、
Sbを波長550nmに対する散乱率、
Rbを波長550nmに対する反射率、
とするとき
Sa > 1%
Sb < 1%
Rb < 5%
なる条件式を満たし、
A2を前記2つの光学面のうち、前記樹脂より成る光学素子に近い方の光学面の有効径、D12を前記2つの光学面の間隔とするとき、
0 < A2/D12 < 2.0
なる条件式を満たすことを特徴とする交換レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の交換レンズと、該交換レンズによって形成された像を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−190049(P2012−190049A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131784(P2012−131784)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2007−236408(P2007−236408)の分割
【原出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2007−236408(P2007−236408)の分割
【原出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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