説明

光学系システム、ヘッドマウントディスプレイ、制御方法及びプログラム

【課題】光源からの光を検出する2つの検出手段を用いて適切に異常判定を行い、それに応じた制御を行う。
【解決手段】ヘッドマウントディスプレイは、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、光をユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系とを有する。また、ヘッドマウントディスプレイは、光源から発せられる光を、光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、光源から発せられる光を、光学系を介して検出する第2検出手段と、第1検出手段と第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段と、異常判定手段の判定結果に基づいて、光源からの光の照射を制御する制御手段と、を有する。これにより、第1検出手段及び第2検出手段の両方の検出結果に基づいて、異常判定を適切に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて画像を表示する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いて画像を表示する画像表示装置が知られている。例えば特許文献1には、第1のフロントモニタ用光検出器から出力される第1モニタ出力に応じてAPC回路によりレーザ光源からのレーザ光を一定光量に制御すると共に、第2のフロントモニタ用光検出器から出力される第2モニタ出力に応じてレーザ光源を駆動するレーザ駆動回路の電源遮断を制御する技術が提案されている。この技術では、APC回路が正常に動作しないことによりレーザ光源からのレーザ光の光量が増大された場合に、レーザ駆動回路の電源を遮断してレーザ光源がレーザ光を発光するのを停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−247861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術では、第1のフロントモニタ用光検出器はAPC(Auto Power Control)に用途を限定すると共に、第2のフロントモニタ用光検出器はAPC回路などの異常検出に用途を限定していた。そのため、第1のフロントモニタ用光検出器及び第2のフロントモニタ用光検出器の一方又は両方に異常が発生したような場合に、適切に対処することが困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、光源からの光を検出する2つの検出手段を用いて適切に異常判定を行い、それに応じた制御を行うことが可能な光学系システム、ヘッドマウントディスプレイ、制御方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有する光学系システムは、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定手段と、を有する。
【0007】
請求項に記載の発明では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有する光学系システムにおいて行われる制御方法は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定工程を有する。
【0008】
請求項に記載の発明では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有すると共に、コンピュータを有する光学系システムにおいて行われるプログラムは、前記コンピュータを、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定手段として機能させる。
【0009】
請求項に記載の発明では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有するヘッドマウントディスプレイは、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段と、前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御手段と、を有し、前記異常判定手段は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果に基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例に係るヘッドマウントディスプレイの構成を示す。
【図2】本実施例に係る異常判定方法を具体的に説明するための図を示す。
【図3】変形例に係るヘッドマウントディスプレイの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの観点では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有するヘッドマウントディスプレイは、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段と、前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御手段と、を有する。
【0012】
上記のヘッドマウントディスプレイは、光源からの光を光学系を介してユーザの眼に導くことで、画像を表示する。第1検出手段は、光源から発せられる光を、光学系を介さずに直接検出し、第2検出手段は、光源から発せられる光を、光学系を介して検出する。異常判定手段は、第1検出手段と第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、ヘッドマウントディスプレイ内の構成要素に対する異常判定を行う。そして、制御手段は、異常判定手段の判定結果に基づいて、光源からの光の照射を制御する。例えば、制御手段は、異常判定手段が異常と判定した場合に、光源からの光の照射を停止させる制御を行う。上記のヘッドマウントディスプレイによれば、第1検出手段及び第2検出手段の両方の検出結果に基づいて、異常判定を適切に行うことができる。
【0013】
上記のヘッドマウントディスプレイの他の一態様では、前記ヘッドマウントディスプレイの電源投入後から前記画像を描画するまでの間に、前記ヘッドマウントディスプレイによる前記画像の描画領域外の所定領域に、前記光源からの光を照射させる試験動作を行う照射制御手段を更に備え、前記異常判定手段は、前記照射制御手段が前記試験動作を行っている際の前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果に基づいて、前記異常判定を行う。これにより、電源投入時において異常がある場合に、ユーザの眼に光が照射されてしまうことを適切に抑制することができる。
【0014】
上記のヘッドマウントディスプレイの他の一態様では、前記光源は、波長が異なる2以上の光を照射する2以上の光源を有しており、前記異常判定手段は、前記2以上の光源のそれぞれに対して異常判定を行い、前記制御手段は、前記2以上の光源の中で前記異常判定手段が異常と判定した光源からの光の照射を停止させると共に、前記2以上の光源の中で前記異常判定手段が異常でないと判定した光源から光を照射させることで、異常状態を表示させる。これにより、異常がある光源からの光がユーザの眼に照射されてしまうことを抑制しつつ、異常状態をユーザに適切に伝達することができる。
【0015】
上記のヘッドマウントディスプレイにおいて好適には、前記制御手段は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記異常状態の内容を表示させることができる。
【0016】
上記のヘッドマウントディスプレイにおいて好適には、前記所定領域は、前記光を前記ユーザの眼へ導くことができる領域外にある。
【0017】
上記のヘッドマウントディスプレイの他の一態様では、前記第2検出手段は、前記2以上の光源のそれぞれから発せられる前記2以上の光を、前記光学系を介して検出する。この態様では、1つの第2検出手段を用いて、2以上の光源から照射された2以上の光を検出することができる。
【0018】
上記のヘッドマウントディスプレイの他の一態様では、前記第2検出手段は、前記2以上の光源を制御するための制御信号に同期して、前記2以上の光源において発光する光源数に応じて検知レベルを変化させる。これにより、複数の光源からの光を、1つの第2検出手段で適切に検出することができる。
【0019】
上記のヘッドマウントディスプレイにおいて好適には、前記第1検出手段が検出した光量に基づいて、前記光源から照射される光の光量を調整する調整手段を更に備える。この場合、調整手段は、第1検出手段が検出した光量に基づいて、所謂APC(Auto Power Control)を行う。
【0020】
また好適には、前記異常判定手段は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果に基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う。つまり、異常判定手段は、第1検出手段の検出結果と第2検出手段の検出結果との組み合わせに応じて、光源と、光学系と、第1検出手段と、第2検出手段とに対する異常判定を行うことができる。
【0021】
また好適には、前記異常判定手段は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果に基づいて、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行うことができる。
【0022】
また好適には、前記第1検出手段として、前記光源に設けられたバックモニタを用いることができる。
【0023】
本発明の他の観点では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有するヘッドマウントディスプレイにおいて行われる制御方法は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定工程と、前記異常判定工程での判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御工程と、を有する。
【0024】
本発明の更に他の観点では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有すると共に、コンピュータを有するヘッドマウントディスプレイにおいて行われるプログラムは、前記コンピュータを、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段、前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御手段、として機能させる。
【0025】
上記の制御方法及びプログラムによっても、第1検出手段及び第2検出手段の両方の検出結果に基づいて、異常判定を適切に行うことができる。
【0026】
本発明の更に他の観点では、ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有するヘッドマウントディスプレイは、前記光源から発せられる光量を、前記光学系を介して検出する第1検出手段及び第2検出手段と、前記第1検出手段が検出した光量に基づいて、前記光源から照射される光の光量を調整する調整手段と、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段と、前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御手段と、を有する。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0028】
[装置構成]
図1は、本実施例に係るヘッドマウントディスプレイ1の構成を示す。図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ(以下、適宜「HMD」と表記する。)1は、主に、画像信号入力部2と、ビデオASIC3と、フレームメモリ4と、ROM5と、RAM6と、レーザドライバASIC7と、MEMS制御部8と、レーザ光源ユニット9と、異常検出回路60と、を備える。HMD1は、例えばユーザの頭部に装着可能に構成されており、レーザ光を走査することでユーザの網膜上に画像を描画する。
【0029】
画像信号入力部2は、外部から入力される画像信号を受信してビデオASIC3に出力する。ビデオASIC3は、画像信号入力部2から入力される画像信号及びMEMSミラー10から入力される走査位置情報に基づいてレーザドライバASIC7やMEMS制御部8を制御するブロックであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されている。ビデオASIC3は、同期/画像分離部31と、ビットデータ変換部32と、発光パターン変換部33と、タイミングコントローラ34と、を備える。
【0030】
同期/画像分離部31は、画像信号入力部2から入力された画像信号から、画像表示部に表示される画像データと同期信号とを分離し、画像データをフレームメモリ4へ書き込む。ビットデータ変換部32は、フレームメモリ4に書き込まれた画像データを読み出してビットデータに変換する。発光パターン変換部33は、ビットデータ変換部32で変換されたビットデータを、各レーザの発光パターンを表す信号に変換する。タイミングコントローラ34は、同期/画像分離部31、ビットデータ変換部32の動作タイミングを制御する。また、タイミングコントローラ34は、後述するMEMS制御部8の動作タイミングも制御する。
【0031】
フレームメモリ4には、同期/画像分離部31により分離された画像データが書き込まれる。ROM5は、ビデオASIC3が動作するための制御プログラムやデータなどを記憶している。RAM6には、ビデオASIC3が動作する際のワークメモリとして、各種データが逐次読み書きされる。
【0032】
レーザドライバASIC7は、後述するレーザ光源ユニット9に設けられるレーザダイオード(LD)を駆動する信号を生成するブロックであり、ASICとして構成されている。レーザドライバASIC7は、赤色レーザ駆動回路71と、青色レーザ駆動回路72と、緑色レーザ駆動回路73と、を備える。赤色レーザ駆動回路71は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、赤色レーザLD1を駆動する。青色レーザ駆動回路72は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、青色レーザLD2を駆動する。緑色レーザ駆動回路73は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、緑色レーザLD3を駆動する。
【0033】
MEMS制御部8は、タイミングコントローラ34が出力する信号に基づきMEMSミラー10を制御する。MEMS制御部8は、サーボ回路81と、ドライバ回路82と、を備える。なお、MEMS制御部8及びレーザドライバASIC7は、「照射制御手段」として機能する。サーボ回路81は、タイミングコントローラからの信号に基づき、MEMSミラー10の動作を制御する。ドライバ回路82は、サーボ回路81が出力するMEMSミラー10の制御信号を所定レベルに増幅して出力する。
【0034】
レーザ光源ユニット9は、主に、レーザドライバASIC7から出力される駆動信号に基づいて、レーザ光を出射するように機能する。具体的には、レーザ光源ユニット9は、赤色レーザLD1と、青色レーザLD2と、緑色レーザLD3と、コリメータレンズ91a〜91cと、反射ミラー92a〜92cと、MEMSミラー10と、フロントモニタ50と、を備える。
【0035】
赤色レーザLD1は赤色レーザ光を出射し、青色レーザLD2は青色レーザ光を出射し、緑色レーザLD3は緑色レーザ光を出射する。コリメータレンズ91a〜91cは、それぞれ、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光を平行光にして、反射ミラー92a〜92cに出射する。反射ミラー92bは、青色レーザ光を反射させ、反射ミラー92cは、青色レーザ光を透過させ、緑色レーザ光を反射させる。そして、反射ミラー92aは、赤色レーザ光の一部を透過させると共に青色レーザ光及び緑色レーザ光の一部を反射させることで、これらの光をMEMSミラー10に入射させる。また、反射ミラー92aは、赤色レーザ光の一部を反射させると共に青色レーザ光及び緑色レーザ光の一部を透過させることで、これらの光をフロントモニタ50に入射させる。なお、以下では、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3を区別しないで用いる場合には、単に「レーザLD」と表記し、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光を区別しないで用いる場合には、単に「レーザ光」と表記する。
【0036】
MEMSミラー10は、反射ミラー92aから入射されたレーザ光をスクリーン11に向けて反射する。また、MEMSミラー10は、基本的には、画像信号入力部2に入力された画像を表示するためにMEMS制御部8の制御により、スクリーン11上を走査するように移動し、その際の走査位置情報(例えばミラーの角度などの情報)をビデオASIC3へ出力する。
【0037】
フロントモニタ50には、反射ミラー92a〜92cなど(図1で図示していないミラーやレンズなどの種々の光学系も含まれるものとする)を介して、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光が入射される。具体的には、フロントモニタ50には、反射ミラー92aで反射された赤色レーザ光と、反射ミラー92aを透過した青色レーザ光及び緑色レーザ光とが入射される。フロントモニタ50は、入射したレーザ光の光量に応じた電気信号である検出信号S50を異常検出回路60へ供給する。例えば、フロントモニタ50は、フォトディテクタなどの光電変換素子で構成される。また、フロントモニタ50は、このようにレーザ光の光量を検出する際に、レーザドライバASIC7から供給される制御信号S7aに応じて検知レベルを変化させる。具体的には、フロントモニタ50は、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のそれぞれを発光させるタイミング(つまりレーザLDにおける発光のオン/オフ)を制御するための制御信号S7aを、レーザドライバASIC7から取得する。そして、フロントモニタ50は、そのような制御信号S7aが示す発光タイミングに同期して、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3の中で発光しているレーザLDの数に応じて検知レベルを変化させる。より詳しくは、フロントモニタ50は、発光しているレーザLDの数やそのレーザLDの色に応じた波長を適切に検知できるように、検知レベルを変化させる。こうすることで、フロントモニタ50は、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の各々の光量を適切に検出することができる。つまり、複数のレーザLDからのレーザ光を、1つのフロントモニタ50で適切に検出することができる。
【0038】
赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のそれぞれの内部には、バックモニタ51a、51b、51cが設けられている。バックモニタ51a、51b、51cは、それぞれ、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光が直接入射され(具体的にはレーザダイオードの後ろ側に出射された光が入射される)、入射したレーザ光の光量に応じた電気信号である検出信号S51a、S51b、S51cを、レーザドライバASIC7及び異常検出回路60へ供給する。例えば、バックモニタ51a、51b、51cは、フォトディテクタなどの光電変換素子で構成される。レーザドライバASIC7は、このようなバックモニタ51a、51b、51cから供給された検出信号S51a、S51b、S51cに応じて、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のそれぞれのパワー調整(APC:Auto Power Control)を行う。具体的には、レーザドライバASIC7内の赤色レーザ駆動回路71、青色レーザ駆動回路72及び緑色レーザ駆動回路73が、それぞれ、検出信号S51a、S51b、S51cに応じて、赤色レーザ光、青色レーザ光、及び緑色レーザ光の光量が一定値となるように調整を行う。なお、以下では、バックモニタ51a、51b、51cを区別しないで用いる場合には、単に「バックモニタ51」と表記し、検出信号S51a、S51b、S51cを区別しないで用いる場合には、単に「検出信号S51」と表記する。
【0039】
異常検出回路60は、フロントモニタ50及びバックモニタ51から供給された検出信号S50及びS51に基づいて、異常判定を行う。具体的には、異常検出回路60は、検出信号S50及びS51に基づいて、レーザLDの異常判定と、レーザ光をユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系(例えばコリメータレンズ91a〜91cや反射ミラー92a〜92cなど)の異常判定と、フロントモニタ50の異常判定と、バックモニタ51の異常判定とを行う(異常判定の詳細については後述する)。そして、異常検出回路60は、異常が検出された場合に、レーザ光の照射を停止させる制御を行う。具体的には、異常検出回路60は、レーザドライバASIC7に制御信号S7bを供給することでレーザLDの発光を停止させると共に、MEMS制御部8に制御信号S8を供給することでMEMSミラー10の動作を停止させる。
【0040】
なお、フロントモニタ50は、本発明における「第2検出手段」の一例に相当し、バックモニタ51は、本発明における「第1検出手段」の一例に相当する。また、異常検出回路60は、本発明における「異常判定手段」及び「制御手段」の一例に相当する。加えて、レーザドライバASIC7は、本発明における「調整手段」の一例に相当する。
【0041】
[異常判定方法]
次に、本実施例に係る異常判定方法について具体的に説明する。上記したように、本実施例では、異常検出回路60は、フロントモニタ50及びバックモニタ51から供給される検出信号S50及びS51に基づいて、レーザLDの異常判定と、レーザ光をユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系の異常判定と、フロントモニタ50の異常判定と、バックモニタ51の異常判定とを行う。つまり、異常検出回路60は、異常を判定するために用いるフロントモニタ50自体及びバックモニタ51自体の異常判定を行う(即ち、フロントモニタ50及びバックモニタ51のセルフチェックを行う)。
【0042】
異常検出回路60は、HMD1の電源投入時に、このようなフロントモニタ50及びバックモニタ51の異常判定を行う。具体的には、HMD1の電源投入後からユーザの目にレーザ光を照射し始めるまでの間に、レーザドライバASIC7が、HMD1による画像の描画領域外の所定領域に(「描画領域」は、ユーザに提示するための画像を表示する領域に相当する)、レーザLDからレーザ光を照射させる試験動作を行い、異常検出回路60は、そのような試験動作が行われている際にフロントモニタ50及びバックモニタ51から供給された検出信号S50及びS51に基づいて、フロントモニタ50及びバックモニタ51の異常判定を行う。例えば、上記した「所定領域」としては、レーザ光を照射してもユーザの目に光が到達しない場所であって、レーザ光源ユニット9から光が出射する直前の部分などが挙げられる。こうすることで、電源投入時において異常がある場合に、ユーザの眼にレーザ光が照射されてしまうことを適切に抑制することができる。また、HMD1の電源投入後においても、異常検出回路60は、レーザ発光時に常に、フロントモニタ50及びバックモニタ51から供給される検出信号S50及びS51に基づいて異常判定を行う。
【0043】
そして、異常検出回路60は、検出信号S50及びS51より異常が検出された場合、例えば検出信号S50及び/又は検出信号S51に対応するレーザ光の光量が所定範囲内にない場合に、レーザ光の照射を停止させる制御を行う。この場合において、異常検出回路60は、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3の中で異常なものと正常なものとが検出された場合、1つの例では、異常なレーザLDの発光を停止させると共に、正常なレーザLDを用いて異常状態の内容を表示させる。この例では、異常検出回路60は、レーザLDが異常であることや、光学系が異常であることや、フロントモニタ50が異常であることや、バックモニタ51が異常であることを表示させる。但し、フロントモニタ50やバックモニタ51が異常である場合には、APCが正常に行われない可能性があるため、このような表示を行わなくても良い。他の例では、異常検出回路60は、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3の中で異常なものと正常なものとが検出された場合、正常なレーザLDも含めて全てのレーザLDの発光を停止させ、HMD1に別途設けられた表示装置(図1では図示せず)を用いて異常状態の内容を表示させる。
【0044】
ここで、図2を参照して、本実施例に係る異常判定方法をより具体的に説明する。図2は、HMD1の構成要素の中で異常判定に関わる構成要素のみを概略的に示したブロック図である。
【0045】
フロントモニタ50は、光学系を介してレーザ光が入射され、入射したレーザ光の光量に応じた検出電流(検出信号S50に相当する)を、異常検出回路60内の変換部60aに供給する。この場合、フロントモニタ50は、上記したようにレーザドライバASIC7から供給される制御信号S7aに応じて検知レベルを変化させて、レーザ光の光量を検出する。バックモニタ51は、レーザ光が直接入射され、入射したレーザ光の光量に応じた検出電流(検出信号S51に相当する)を、異常検出回路60内の変換部60c及びレーザドライバASIC7内の変換部7cに供給する。
【0046】
異常検出回路60内の変換部60a、60cは、それぞれ、フロントモニタ50及びバックモニタ51から供給された検出電流を電圧(検出電圧)に変換し、変換後の検出電圧を異常判定部60bに供給する。異常判定部60bは、変換部60a、60cから供給された検出電圧に基づいて、レーザLD、光学系、フロントモニタ50及びバックモニタ51に対する異常判定を行う。そして、異常判定部60bは、異常が検出された場合に、レーザ光の照射を停止させるための指示信号(停止指示信号)を、レーザドライバASIC7内のアンプ7aに供給する。
【0047】
例えば、異常判定部60bは、一部のレーザLDに対応する、変換部60a及び変換部60cの両方の検出電圧が所定範囲内にない場合には、そのレーザLDが異常であると判定する。また、例えば、異常判定部60bは、全てのレーザLDに対応する、変換部60cの検出電圧が所定範囲内にあるにも関わらず、一部のレーザLDに対応する、変換部60aの検出電圧が所定範囲内にない場合には、当該一部のレーザLDに用いられる光学系が異常であると判定する。また、例えば、異常判定部60bは、全てのレーザLDに対応する、変換部60cの検出電圧が所定範囲内にあるにも関わらず、全てのレーザLDに対応する、変換部60aの検出電圧が所定範囲内にない場合には、フロントモニタ50が異常であると判定する。また、例えば、異常判定部60bは、全てのレーザLDに対応する、変換部60aの検出電圧が所定範囲内にあるにも関わらず、変換部60cの検出電圧が所定範囲内にない場合には、その検出電圧に対応するバックモニタ51が異常であると判定する。
【0048】
なお、以上のような異常判定は、全てのレーザLD(LD1〜LD3)や全てのバックモニタ51(51a〜51c)が同時に異常となる可能性はかなり低いといった前提に基づいてなされている。また、異常判定に用いる「所定範囲」は、正常なAPCによる制御後のレーザ光の光量に基づいて定められる。
【0049】
レーザドライバASIC7内のアンプ7a(具体的には赤色レーザ駆動回路71、青色レーザ駆動回路72及び緑色レーザ駆動回路73に相当する)は、異常判定部60bから停止指示信号が供給された場合には、レーザ光の照射を停止させるようにレーザLDを制御する。一方、アンプ7aは、異常判定部60bから停止指示信号が供給されなかった場合には、レーザLDを駆動するための制御電流を出力する。この場合、アンプ7aは、変換部7cがバックモニタ51からの検出電流を変換した電圧(検出電圧)と、ビデオASIC3から供給された基準電圧との差分(差分電圧)を求めて、レーザLDからのレーザ光の光量が一定値となるように、当該差分電圧に応じた制御電流をレーザLDに供給する。
【0050】
以上説明した本実施例によれば、フロントモニタ50及びバックモニタ51から供給される検出信号S50及びS51に基づいて、異常判定を適切に行うことができる。具体的には、フロントモニタ50自体及びバックモニタ51自体の異常判定を適切に行うことができる。よって、フロントモニタ50及び/又はバックモニタ51が異常である場合に、レーザ光の照射を速やかに停止させることができる。
【0051】
[変形例]
上記した実施例では、フロントモニタ50及びバックモニタ51を用いて異常判定を行う例を示したが、この代わりに、フロントモニタを2つ用いて異常判定を行っても良い。
【0052】
図3は、フロントモニタを2つ用いて異常判定を行う、変形例に係るHMD1aの構成を示す。なお、図1に示したHMD1と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
変形例に係るHMD1aは、レーザLD内にバックモニタ51が設けられておらずに、反射ミラー200を有すると共にフロントモニタ50の他にフロントモニタ52を有する点で、上記した実施例に係るHMD1と構成が異なる。
【0054】
反射ミラー200には、反射ミラー92aで反射された赤色レーザ光と、反射ミラー92aを透過した青色レーザ光及び緑色レーザ光とが入射される。そして、反射ミラー200は、これらの入射されたレーザ光の一部を透過させると共に残りの一部を反射させることで、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザをフロントモニタ50及びフロントモニタ52に入射させる。
【0055】
フロントモニタ52には、反射ミラー200で反射された赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光が入射される。フロントモニタ52は、入射したレーザ光の光量に応じた電気信号である検出信号S52を、レーザドライバASIC7及び異常検出回路60へ供給する。例えば、フロントモニタ52は、フォトディテクタなどの光電変換素子で構成される。フロントモニタ52は、このようにレーザ光の光量を検出する際に、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のそれぞれを発光させるタイミングを制御するための制御信号S7cをレーザドライバASIC7から取得し、そのような制御信号S7cが示す発光タイミングに同期して、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3の中で発光しているレーザLDの数に応じて検知レベルを変化させる。
【0056】
レーザドライバASIC7は、上記のようなフロントモニタ52から供給された検出信号S52に応じて、赤色レーザ光、青色レーザ光、及び緑色レーザ光の光量が一定値となるように、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のそれぞれのパワー調整(APC)を行う。また、異常検出回路60は、フロントモニタ50及びフロントモニタ52から供給された検出信号S50及び検出信号S52に基づいて、上記した実施例と同様の異常判定を行う。
【0057】
以上説明した変形例によっても、フロントモニタ50、52から供給された検出信号S50、S52に基づいて、異常判定を適切に行うことができる。また、変形例では、フロントモニタ50及び3つのバックモニタ51a、51b、51cを用いる代わりに、フロントモニタ50、52を用いるため、上記した実施例と比較して、使用するモニタの数を少なくすることができる。
【0058】
なお、フロントモニタ50、52を設置する位置は、上記した実施例及び変形例で示した位置に限定はされない。光学系を介してレーザ光が入射されるような位置であれば、種々の位置にフロントモニタを設置することができる。好ましくは、ユーザの眼に近い光学系を介した位置に、フロントモニタを設置することができる。例えば、MEMSミラー10で反射された後のレーザ光が入射するような位置に、フロントモニタを設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
3 ビデオASIC
7 レーザドライバASIC
8 MEMS制御部
9 レーザ光源ユニット
10 MEMSミラー
50、52 フロントモニタ
51a、51b、51c バックモニタ
60 異常検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有する光学系システムにおいて、
前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、
前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定手段と、を有することを特徴とする光学系システム
【請求項2】
請求項1に記載の光学系システムを有するヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記光源は、波長が異なる2以上の光を照射する2以上の光源を有しており、
前記第2検出手段は、前記2以上の光源のそれぞれから発せられる前記2以上の光を、前記光学系を介して検出し、前記2以上の光源を制御するための制御信号に同期して、前記2以上の光源において発光する光源数に応じて検知レベルを変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学系システム。
【請求項4】
前記光源は、波長が異なる2以上の光を照射する2以上の光源を有しており、
前記異常判定手段は、前記2以上の光源のそれぞれに対して異常判定を行い、
前記2以上の光源の中で前記異常判定手段が異常と判定した光源からの光の照射を停止させると共に、前記2以上の光源の中で前記異常判定手段が異常でないと判定した光源から光を照射させることで、異常状態を表示させる手段を更に有することを特徴とする請求項1又は3に記載の光学系システム。
【請求項5】
前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する手段を更に有することを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の光学系システム。
【請求項6】
ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有する光学系システムにおいて行われる制御方法であって、
前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定工程を有することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、を有すると共に、コンピュータを有する光学系システムにおいて行われるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行う異常判定手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
ユーザに認識させる画像を描画するための光を照射する光源と、前記光を前記ユーザの眼へ導くための光学素子からなる光学系と、を有するヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記光源から発せられる光を、前記光学系を介さずに直接検出する第1検出手段と、
前記光源から発せられる光を、前記光学系を介して検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果の組み合わせに基づいて、異常判定を行う異常判定手段と、
前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記光源からの前記光の照射を制御する制御手段と、を有し、
前記異常判定手段は、前記第1検出手段と前記第2検出手段との検出結果に基づいて、前記光源、前記光学系、前記第1検出手段及び前記第2検出手段に対する異常判定を行うことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11852(P2013−11852A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41215(P2012−41215)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【分割の表示】特願2012−510060(P2012−510060)の分割
【原出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】