説明

光学系及びそれを備える表面プラズモン測定装置、表面プラズモン測定方法

【課題】 回転機構等を備えずに、表面プラズモン共鳴角を測定することが可能な光学系、および、それを備える表面プラズモン測定装置、ならびに表面プラズモン測定方法を提供する。
【解決手段】 平行光を照射する照明ユニットと、光学素子5と、を備え、光学素子5が、放物面5aまたは放物柱面5a’を有し、照明ユニットは、放物面5aまたは放物柱面5a’の焦点Jの側から放物面5aまたは放物柱面5a’に向けて平行光を照射し、平行光の光軸Lが、光学素子5の放物面5aまたは放物柱面5a’の頂点Kを含む接面に垂直であり、放物面5aまたは放物柱面5a’が、金属膜または金属微粒子により蒸着された反射面5a1を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系及びそれを備える表面プラズモン測定装置、表面プラズモン測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属中においては、自由電子が集団的に波のように振動して、プラズマ波と呼ばれる疎密波が生じる。金属表面に生じるこの電子の集団的振動は、表面プラズモンと呼ばれる。
【0003】
この表面プラズモンを利用して、試料中の物質の定量分析を行う手法や、生化学的反応の進行に伴う物質の物理化学的な変化を検出する手法が提案されている。例えば、クレッチマン(Kretschmann)配置された光学系を用いて、試料中の物質の定量分析を行う表面プラズモンセンサーが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−180353号公報
【特許文献2】特開2002−148180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装置は、光源と、検出器と、試料に接触するプリズムとを備える。そして、特許文献1には、光源からの光が、試料に様々な角度で入射するように、光源および検出器を連続的に揺動させることが開示されている。
【0005】
また、上記特許文献2に記載された装置は、光源と、光検出部と、被検査物を保持する被検査物保持部とを備える。そして、特許文献2には、光学系を回転させず、被検査物保持部を回動させることが開示されている。
【0006】
このように、特許文献1又は2に記載された装置を用いて表面プラズモン共鳴角を検出するには、必ず回転機構が必要となるという問題がある。
【0007】
本発明は従来技術のこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転機構等を備えずに、表面プラズモン共鳴角を測定することが可能な光学系及びそれを備える表面プラズモン測定装置、表面プラズモン測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の光学系は、平行光を照射する照明ユニットと、光学素子と、を備え、前記光学素子が、放物面または放物柱面を有し、前記照明ユニットは、前記放物面または前記放物柱面の焦点の側から前記放物面または前記放物柱面に向けて平行光を照射し、前記平行光の光軸が、前記光学素子の前記放物面または前記放物柱面の頂点を含む接面に垂直であり、前記放物面または前記放物柱面が、金属膜または金属微粒子により蒸着された反射面を有することを特徴とする。
【0009】
上記発明においては、前記照明ユニットと、前記光学素子と、の間に遮光板を備えることが好ましい。
【0010】
上記発明においては、前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
F≧16c2/E ・・・(1)
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Eは、前記光学素子の外径、
Fは、前記遮光板の直径、
である。
【0011】
上記発明においては、前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
H<4c ・・・(2)
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Hは、前記平行光の光束直径、
である。
【0012】
上記発明においては、前記照明ユニットは、光源と、コリメートレンズを備えることが好ましい。
【0013】
上記発明においては、前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、前記光学素子は、該光学素子の光軸に対して、一方の側のみに参照面を有することが好ましい。
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
である。
【0014】
さらに、上記目的を達成する本発明の表面プラズモン測定装置は、前記光学系と、前記光学系からの光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記発明においては、前記照明ユニットから照射された平行光は、前記光学素子の反射面で反射後、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光し、前記焦点で集光した光は、前記反射面に配置された試料に向けて照射され、前記光検出器が、該反射面からの反射光を検出することが好ましい。
【0016】
さらに、上記目的を達成する本発明の表面プラズモン測定方法は、試料が、反射面に接触して配置される工程と、照明ユニットから照射された平行光が、光学素子の反射面で反射する工程と、前記光学素子の反射面で反射した光が、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光する工程と、前記集光した光が、前記反射面に向けて照射される工程と、該反射面からの反射光を検出する工程と、検出した反射光から表面プラズモン共鳴角を検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
さらに、上記目的を達成する本発明の他の表面プラズモン測定方法は、試料が、反射面に試料を接触して配置される工程と、照明ユニットから照射された平行光が、光学素子の反射面で反射する工程と、前記光学素子の反射面で反射した光が、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光する工程と、前記集光した光が、前記反射面および参照面に向けて照射される工程と、前記反射面および前記参照面からの反射光を検出する工程と、前記参照面からの反射光の光量に基づいて、該反射面からの反射光の光量を補正する工程と、補正された反射光の光量から表面プラズモン共鳴角を検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の本発明によると、回転機構等を備えずに、表面プラズモン共鳴角を測定することが可能な光学系、および、それを備える表面プラズモン測定装置、ならびに表面プラズモン測定方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態の表面プラズモン測定装置について、以下説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係る光学系を備える表面プラズモン測定装置の第1実施形態を示す図である。
【0021】
図中、1は表面プラズモン測定装置、2は光学系、3は光源、4はコリメートレンズ、5は光学素子、5aは放物面、5a1は反射面、5bは平面、51は試料、6は光検出器、7は遮光板、Jは焦点、Kは頂点、Lは光軸である。
【0022】
また、Mは、遮光板7の外縁の近傍を通る光が、反射面5a1で反射後、焦点Jを通過し、再度放物面5aに入射する位置である。
【0023】
表面プラズモン測定装置1は、光学系2と光検出器6とを備える。光学系2は、照明ユニットと光学素子5を備える。照明ユニットは、光源3とコリメートレンズ4を備える。
【0024】
光源3は、半導体レーザーやLD、LED等を使用してもよい。コリメートレンズ4は、光源3から照射された光を平行光にする。光源3と、コリメートレンズ4は、光学素子5の光軸L上に配置されている。より具体的には、光源3と、コリメートレンズ4と、光学素子5の、それぞれの光軸は一致している。
【0025】
光学素子5は、ガラスあるいはプラスチックを材料とし、少なくとも一方の断面が放物形状を備える素子である。光学素子5は、放物面5aと、平面5bを備える。
【0026】
放物面5aは、回転放物面形状である。放物面5aは、頂点Kを有するとともに、光学素子5内に焦点Jを有する。平面5bは、放物面5aに対向する面であって、放物面5aの焦点Jと頂点Kを結ぶ直線(光軸L)に垂直な面である。
【0027】
放物面5aは、金属膜又は金属微粒子により蒸着された反射面5a1を有する。表面プラズモン共鳴現象は、反射面5a1として、金属膜が蒸着されている場合は、膜厚が300nm以下のときに最も効率よく起こる。また、反射面5a1として、金属粒子が蒸着されている場合は、粒子直径が300nm以下のときに最も効率よく起こる。例えば、金属膜厚または金属粒子の粒子直径が、30〜80nmの金や銀において、最も効率よく起こる。なお、金属膜又は金属微粒子と、光学素子5と、の間には、クロムを蒸着することで密着性を高めることができる。
【0028】
光検出器6は、光学素子5の平面5b側に配置されている。光検出器6は、光検出器6の面が、光軸Lに垂直に配置されている。光検出器6としては、CCDカメラやラインセンサ等を使用してもよい。
【0029】
なお、遮光板7は、必ずしも必要ではない。
【0030】
図1(a)に示すように、光源3から出射された光は、コリメートレンズ4で平行光となって、放物面5aをもつ光学素子5に入射し、反射面5a1で反射された後、光学素子
5の焦点Jで集光する。焦点Jに集光後に発散した光は、再び反射面5a1で反射する。この光は、放物面5aの焦点Jから出射されるため、平行光となって光学素子5から出射する。光学素子5から出射した光は、光検出器6に入射し、光検出器6のビット毎に光電変換される。そして、光検出器6は、入射光量と相関する電気信号を出力する。
【0031】
ここで、焦点Jに集光後に反射面5a1に入射する光のうち、表面プラズモン共鳴角θpで入射する光線は、入射光のエネルギーが表面プラズモンに移行する。表面プラズモン共鳴角θpとは、反射面5a1に接している試料51中に発生するエバネッセント場の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくなる角度をいう。従って、このような角度で光が入射した場合、試料51と反射面5a1との界面で反射する光の強度は鋭く低下する。
【0032】
光学素子5から出射された光は、反射面5a1の異なる位置に入射した光であるため、光検出器6における異なる位置に入射する。従って、図1(b)に示すように、光検出器6の検出位置に応じた、反射光の検出光強度(各ビットの光量)が得られる。なお、光検出器6の中央部では、コリメートレンズ4の影になっているため、光量は0になっている。また、コリメートレンズ4の大きさによって、光が、光検出器6に届く位置が制限されている。
【0033】
光検出器6の検出位置は、光検出器6に入射した光の、反射面5a1での入射角度・反射角度に依存している。すなわち、反射位置が光軸Lから遠いほど放物面5aに入射する光線の入射角が大きくなる。ここで、反射光の検出光強度が極小値である位置に対応した特定の入射角度が、表面プラズモン共鳴角(θp)である。
【0034】
従って、光検出器6による検出結果に基づいて、反射光の検出光強度が極小値である位置の情報を、その位置に対応する反射面5a1での入射角度に変換することにより、表面プラズモン共鳴角(θp)を求めることができる。
【0035】
図2は、光源3から光検出器6までの光の進行順路を示すフローチャートである。まず、工程1で、照明ユニット(光源3、コリメートレンズ4)から平行光を照射する(ST1)。続いて、工程2で、平行光が、光学素子5の反射面5a1で反射する(ST2)。次に、工程3で、光学素子5の反射面5a1で反射された光が、光学素子5の放物面5aまたは放物柱面5a’の焦点Jで集光する(ST3)。続いて、工程4で、集光した光が、反射面5a1に向けて照射される(ST4)。次に、工程5で、反射面5a1からの反射光が、検出される(ST5)。
【0036】
ここで、表面プラズモン測定装置を用いた測定例について説明する。反射面5a1の上には、たとえば抗体を固定化する。そして、この抗体が特異的に認識する抗原を含む試料51を注入する。試料51を注入した直後から、抗原・抗体反応が始まる。この抗原・抗体反応が始まると、反射面5a1の表面では、屈折率が変化する。屈折率が変化すると、表面プラズモン共鳴角は、図3(a)に示したように、θp1からθp2へ変化する。
【0037】
図3(b)は、この表面プラズモン共鳴角の経時変化をグラフとして表示したものである。表面プラズモン共鳴角の変化は、抗原・抗体反応の進行度合いに影響されるため、表面プラズモン共鳴角の変化を観察することで、反射面5a1での分子(抗原・抗体)の相互作用の時間変化をリアルタイムに観察することができる。
【0038】
また、本実施形態は、放物面5aの焦点Jに点光源を投影しているため、光源3からの光は、自動的に色々な角度で試料51に入射する。従って、本実施形態によれば、スキャニング機構などの回転機構がなくても表面プラズモン共鳴角の計測が可能である。
【0039】
次に、図4に示すように第1実施形態における表面プラズモン測定装置1について詳しく説明する。
【0040】
本実施形態においては、コリメートレンズ4と光学素子5との間に遮光板7を配置することが好ましい。
【0041】
光源3から出射された光は、コリメートレンズ4を通り、放物面5aの反射面5a1で反射し、焦点Jを通り発散光になる。
【0042】
ここで、コリメートレンズ4を透過した平行光のうち、光軸Lに近い位置から反射面5a1に向かった光は、反射面5a1で反射され、焦点Jを通過した後、反射面5a1に到達せず、直接に平面5bから出射する。このような光は、迷光となり、測定に寄与しないノイズ光になる。
【0043】
従って、遮光板7を、コリメートレンズ4と光学素子5との間の、特に光軸Lに近い位置に配置することによって、測定に寄与しないノイズ光を制限することができる。このため、表面プラズモン共鳴角を高精度に測定することができる。
【0044】
また、放物面5aの断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、
以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
F≧16c2/E ・・・(1)
ただし、光学素子5の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Eは、光学素子5の外径、
Fは、遮光板7の直径
である。
【0045】
条件式(1)を満足する時、焦点Jを通過した発散光はすべて反射面5a1に到達する。そのため、測定に寄与しないノイズ光を制限することができる。
【0046】
以下にその理由を示す。
【0047】
放物面5aの断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物面となるX−Z断面に関し、コリメートレンズ4から出射された平行光が放物面5aに入射する座標をA(a,a2/4c)、焦点Jの座標をJ(0,c)とする。また、光がAで反射した後に、焦点Jを通り、放物面5aに入射する位置をB(b,b2/4c)とする。
【0048】
線分AJはZ=[(a2/4c-c)/a]X+c、であるため、線分AJと放物面5aが交わる点は、(x-a)(x+4c2/a)=0からX=a,-4c2/aとなる。従って、bは、aを用いて、b=-4c2/a と表わされる。
【0049】
a=F/2の光(遮光板7の外縁の近傍を通る光)が、放物面5aに2度目に入射する位置Bにおいて、b>-E/2を満たせば、焦点Jを通過した発散光は全て光学素子5の反射面5a1に到達する。したがって、a=F/2、b>-E/2を、b=-4c2/aに代入すると、条件式(1)が得られる。
【0050】
また、コリメートレンズ4の光線有効径をD、遮光板7の直径をFとすると、F<Dを満たすことが必要である。これにより、遮光板7で光すべてを遮光することがない。
【0051】
また、放物面5aの断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、
以下の条件式(2’)を満足することが好ましい。
D<4c ・・・(2’)
ただし、光学素子5の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Dは、コリメートレンズ4の有効径、
である。
【0052】
D<4cの時、コリメートレンズ4を通過し、光学素子5内で2回反射した光は、コリメートレンズ4に戻らずに、光検出器6に入射する。
【0053】
以下にその理由を示す。
【0054】
放物面5aの断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、コリメートレンズ4から出射された平行光が放物面5aに入射する座標をA(a,a2/4c)、焦点Jの座標をJ(0,c)とする。そうすると、上述した通り、光がAで反射した後に、焦点Jを通り、放物面5aに入射する位置BのX座標bは、b=-4c2/a となる。
【0055】
光学素子5で2回反射した光が、コリメートレンズ4に戻らないためには、|b|>aが必要である。つまり、a<2cである。よって、コリメートレンズ4の有効径をDとすると、D<4cが必要条件となる。なお、本実施形態では、コリメートレンズ4の有効径D=平行光の光束直径Hである。
【0056】
図5は、光軸Lを含む断面(X−Z面)と、Z軸方向から光学素子5を見た場合の反射面5a1の被覆の様子を示したものである。この場合、反射面5a1のX−Y面への射影が円となるように、被覆されている。
【0057】
図5に示すように、光検出器6の中心は、光軸Lからずれていることが好ましい。このような構成により、小型の光学系を構成することが可能となる。
【0058】
図6に記載された表面プラズモン測定装置1は、光検出器6を光軸Lに対して片側に配置すると共に、遮光板7を光源3と光学素子5の間に配置する。そして、光源3から照射された光のうち、遮光板7に遮光されない光が光検出器6で検出される。これにより、光検出器6を必要以上に大きくする必要がなくなるため、表面プラズモン測定装置1を小型に構成することができる。
【0059】
図7に記載された表面プラズモン測定装置1は、光検出器6を光軸Lに対して交差するように配置し、光源3からの光の一部を光検出器6によって遮光する。そして、光源3から照射された光のうち、遮光板7に遮光されない光が光検出器6で検出される。これにより、光検出器6によって、測定に不要な光を遮光することができるため、遮光板7が不要となる。従って、表面プラズモン測定装置1を小型に構成することができる。
【0060】
図8に記載された表面プラズモン測定装置1は、光源3を光軸Lに対して片側に配置し、光源3からの光が光検出器6で検出される。より具体的に説明するために、コリメートレンズ4の光学素子5側の面における有効面の外縁のうち、最も光軸Lに近い位置をPとする。この場合、条件式(1)の導出と同様の理由により、Pから光軸Lまでの距離は、8c2/Eよりも大きいことが好ましい。ただし、放物面5aの断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、光学素子5の光軸がZ軸であり、cは、c>
0を満たす任意の定数であり、Eは、光学素子5の外径である。これにより、光源3を遮光する必要がないため、光量のロスを防止することができる。
【0061】
なお、反射面5a1の被覆の仕方は、図5に記載の被覆の仕方に限定されない。ここで、上述した通り、Mは、a=F/2の光(遮光板7の外縁の近傍を通る光)が、反射面5a1で反射後、焦点Jを通過し、再度放物面5aに入射する位置である。この場合、Mと光軸Lとの距離よりも、光軸Lからの距離が小さい位置に反射面5a1が被覆されていればよい。従って、図9に示すように、反射面5a1のX−Y面への射影の円の半径は、Mと光軸Lとの距離よりも大きければ、適宜変更が可能である。
【0062】
また、反射面5a1のX−Y面への射影において、コリメートレンズ4の光線有効半径D/2よりも、光軸Lからの距離が小さい位置は、通常のミラー面としてもよい。すなわち、照明ユニットからの照射光が、1回目に反射される位置においては、反射する機能を奏すればよいため、必ずしも金属膜又は金属微粒子により蒸着されていなくてもよい。
【0063】
このように、放物面5aの中央部のみ通常のミラー面とし、輪帯状に金属膜又は金属微粒子を蒸着して反射面を形成してもよい。
【0064】
また、反射面5a1のX−Y面への射影において、図5及び図9では、反射面5a1は円形で形成されているが、必ずしもZ軸(光軸)に回転対称な反射面5a1を形成する必要はない。
【0065】
図10は、表面プラズモン測定装置1の第2実施形態を示す図である。光検出器6を光軸Lに対して一方の側に配置すると共に、放物面5aの当該一方の側に金属膜又は金属微粒子を蒸着する。
【0066】
光軸Lに対して他方側には、光が入射する部分のみを反射面5a1とする。より具体的には、反射面5a1のX−Y面への射影において、コリメートレンズ4の光線有効半径D/2よりも、光軸Lからの距離が小さい位置に反射面5a1を形成する。
【0067】
そして、遮光板7は、光源3と光学素子5の間に配置され、遮光板7に遮光されない光が光検出器6で検出される。このように、反射面5a1を形成することで、反射面5a1を小さくすることができる。
【0068】
さらに、光検出器6に入射する光束は、2回反射すればよいので、図11から図13に示すように反射面5a1を形成しても構わない。図11は、反射面5a1を上方から見て、扇形に形成したものである。また、図12は、反射面を上方から見て、長方形に形成したものである。また、図13は、半径5r1’の第1反射面5a1’と、半径5r1’より大きい半径5r1’’の第2反射面5a1’’とを、それぞれ半円で形成したものである。
【0069】
次に第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図14に示すように、光軸Lに対して、光学素子5の一方の側に反射面5a1を形成する。また、光軸Lに対して、光学素子5の他方の側に反射面5a1と参照面5a2を形成する。より具体的には、図13に示すように、反射面5a1を形成し、参照面5a2には、反射面を形成しない。
【0070】
この場合、半径5r1’は、コリメートレンズ4の光線有効半径D/2に相当する。
【0071】
ここで、半導体レーザーやLD、LED等の光源3でコリメートされた光の強度は、光軸Lで最も大きく、光軸Lから離れるほど小さくなるガウス分布をなす。この強度分布は
、光検出器6の計測に影響を与え、表面プラズモン共鳴角の測定において、検出される表面プラズモン共鳴角の精度が低下する。
【0072】
本実施形態によれば、参照面においては、金属膜又は金属微粒子を蒸着していないため、表面プラズモンは発生しない。このため、表面プラズモン共鳴角に対応する位置での、光量の検出値は、低下しない。
【0073】
ただし、参照面5a2に入射する光のうち、光学素子5と試料51の界面で全反射条件を満たさない光は、光学素子5の参照面5a2を透過する。従って、光検出器6における臨界角(全反射が起きる時の、最小入射角)に対応する位置よりも光軸L側では、検出光強度はゼロに近づく。なお、図14における測定データの各ビットの光量の近傍に記載された点線は、参照データの光量を光軸Lに対して反転させたものである。
【0074】
ここで、参照データについて、光検出器6の中心からの距離lでの参照面からの反射光の検出強度をIr(l)とする。また、測定データについて、光検出器6の中心からの距離lでの反射面5a1からの反射光の検出強度をIm(l)とする。そうすると、測定データI(l)は、Im(l)/Ir(l)によって求めることができる。
【0075】
このように、光源3の強度分布である参照データを、試料で反射された測定データにフィードバックすることで、光源3からの光強度分布を仮想的に均一化することができる。
【0076】
本実施形態によれば、このような補正により、高精度に表面プラズモン共鳴角を測定することができる。
【0077】
なお、参照面5a2は、通常のミラー面とすることで、表面プラズモンが発生することを防止してもよい。これにより、参照面5a2に入射する光のうち、全反射条件を満たさない光が、参照面5a2を透過することがない。
【0078】
次に、表面プラズモン測定方法について説明する。図15は表面プラズモン測定方法のフローチャートを示す図である。
【0079】
本実施形態に係る表面プラズモン測定装置の測定方法は、まず、工程11で、試料51を反射面5a1に接触するように配置する(ST11)。
【0080】
次に、工程12で、反射面5a1の検出位置における反射光の光量を検出する(ST12)。
【0081】
次に、工程13で、光量と検出位置との関係から、表面プラズモン共鳴角に対応する検出位置を求める(ST13)。
【0082】
次に、工程14で、検出した反射光の光量から表面プラズモン共鳴角を求める(ST14)。
【0083】
次に、工程15で、表面プラズモン共鳴角に基づいて試料51の定量分析を行う(ST15)。
【0084】
なお、他の実施方法としては、図16に示される表面プラズモン測定方法を採用してもよい。まず、工程21で、放物面5aに参照面5a2を設ける表面プラズモン測定装置1および試料51を配置する(ST21)。工程22で、照明ユニットから平行光が照射される(ST22)。工程23で、平行光が、光学素子5の反射面5a1で反射する(ST
23)。工程24で、反射面で反射した光が、放物面5aの焦点で集光する(ST24)。工程25で、集光した光が、反射面5a1および参照面5a2に向けて照射される(ST25)。工程26で、反射面5a1および参照面5a2からの反射光が検出される(ST26)。工程27で、参照面5a2からの反射光の光量に基づいて、反射面5a1からの反射光の光量を補正する(ST27)。工程28で、補正された反射光の光量と検出位置との関係から表面プラズモン共鳴角を求める検出位置を求める(ST28)。工程29で、表面プラズモン共鳴角に対応する検出位置から表面プラズモン共鳴角を求める(ST29)。工程30で、求められた表面プラズモン共鳴角に基づいて、試料51の定量分析を行う(ST30)。
【0085】
また、図17に示すように、本実施形態における光学素子5の放物面5aは、放物柱面5a’でもよい。放物柱面5a’は、光源3から出射された光の光軸Lに対して垂直な方向X,Yのうち、X方向から見た場合に平面で、Y方向からみた場合に放物面である。また、コリメートレンズ4はシリンドリカルレンズでも構わない。
【0086】
ここで、放物柱面5a’とは、図17に記載された放物柱を構成する面について、平面5bを除いた面をいう。別の言い方をすれば、放物柱面5a’とは、断面が放物線であって、当該放物線を含む面に垂直な方向に奥行きのある面をいう。
【0087】
なお、放物柱とは、平面上で、放物線と、放物線の軸に垂直な線と、で囲まれる形状を、当該平面に垂直な方向に奥行きのある柱体をいう。
【0088】
なお、本実施形態では、照明ユニットは、光源3とコリメートレンズ4を用いて平行光を照射しているが、平行光が照射できるのであれば、他の態様であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る光学系を備える表面プラズモン測定装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】光源から光検出器までの光の進行順路を示すフローチャートである。
【図3】表面プラズモン共鳴角の移動を示すグラフである。
【図4】表面プラズモン測定装置の第1実施形態を示す図である。
【図5】光軸を含む断面(X−Z面)と、Z軸方向から光学素子を見た光学素子の反射面の被覆の様子を示す図である。
【図6】光検出器の中心が光軸からずれている実施例を示す図である。
【図7】光検出器の中心が光軸からずれている実施例を示す図である。
【図8】光検出器の中心が光軸からずれている実施例を示す図である。
【図9】Z軸方向から光学素子を見た光学素子の反射面の被覆の様子を示したものである。
【図10】表面プラズモン測定装置の第2実施形態を示す図である。
【図11】Z軸方向から光学素子を見た光学素子の反射面の被覆の様子を示したものである。
【図12】Z軸方向から光学素子を見た光学素子の反射面の被覆の様子を示したものである。
【図13】Z軸方向から光学素子を見た光学素子の反射面の被覆の様子を示したものである。
【図14】表面プラズモン測定装置の第3実施形態を示す図である。
【図15】表面プラズモン測定方法のフローチャートを示す図である。
【図16】表面プラズモン測定方法のフローチャートを示す図である。
【図17】表面プラズモン測定装置の放物柱面を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1…表面プラズモン測定装置
2…光学系
3…光源(照明ユニット)
4…コリメートレンズ(照明ユニット)
5…光学素子
5a…放物面
5a’…放物柱面
5a1…反射面
5a2…参照面
5b…平面
6…光検出器
7…遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を照射する照明ユニットと、光学素子と、を備え、
前記光学素子が、放物面または放物柱面を有し、
前記照明ユニットは、前記放物面または前記放物柱面の焦点の側から前記放物面または前記放物柱面に向けて平行光を照射し、
前記平行光の光軸が、前記光学素子の前記放物面または前記放物柱面の頂点を含む接面に垂直であり、
前記放物面または前記放物柱面が、金属膜または金属微粒子により蒸着された反射面を有することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記照明ユニットと、前記光学素子と、の間に遮光板を備える請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、
以下の条件式(1)を満足する請求項2に記載の光学系。
F≧16c2/E ・・・(1)
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Eは、前記光学素子の外径、
Fは、前記遮光板の直径
である。
【請求項4】
前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、
以下の条件式(2)を満足する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の光学系。
H<4c ・・・(2)
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
Hは、前記平行光の光束直径、
である。
【請求項5】
前記照明ユニットは、光源と、コリメートレンズを備える請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項6】
前記放物面または前記放物柱面の断面がZ=(1/4c)X2を満たした放物線となるX−Z断面に関し、
前記光学素子は、該光学素子の光軸に対して、一方の側のみに参照面を有する請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の光学系。
ただし、前記光学素子の光軸がZ軸であり、
cは、c>0を満たす任意の定数、
である。
【請求項7】
前記光学系と、
前記光学系からの光を検出する光検出器と、
を備える請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の光学系を備える表面プラズモン測定装置。
【請求項8】
前記照明ユニットから照射された平行光は、
前記光学素子の反射面で反射後、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光し、
前記焦点で集光した光は、
前記反射面に配置された試料に向けて照射され、
前記光検出器が、該反射面からの反射光を検出する請求項7に記載の表面プラズモン測定装置。
【請求項9】
試料が、反射面に接触して配置される工程と、
照明ユニットから照射された平行光が、光学素子の反射面で反射する工程と、
前記光学素子の反射面で反射した光が、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光する工程と、
前記集光した光が、前記反射面に向けて照射される工程と、
該反射面からの反射光を検出する工程と、
検出した反射光から表面プラズモン共鳴角を検出する工程と、
を備えることを特徴とする表面プラズモン測定方法。
【請求項10】
試料が、反射面に接触して配置される工程と、
照明ユニットから照射された平行光が、光学素子の反射面で反射する工程と、
前記光学素子の反射面で反射した光が、前記光学素子の放物面または放物柱面の焦点で集光する工程と、
前記集光した光が、前記反射面および参照面に向けて照射される工程と、
該反射面および前記参照面からの反射光を検出する工程と、
前記参照面からの反射光の光量に基づいて、該反射面からの反射光の光量を補正する工程と、
補正された反射光の光量から表面プラズモン共鳴角を検出する工程と、
を備えることを特徴とする表面プラズモン測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−2200(P2010−2200A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158978(P2008−158978)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】