説明

光学素子、光学系、撮像装置、光学機器、および原盤

【課題】線状の輝線ノイズの発生を抑制できる光学系を提供する。
【解決手段】光学系は、複数のサブ波長構造体が形成された表面を有する光学素子と、光学素子を介して光を受光する撮像領域を有する撮像素子とを備える。光学素子の表面は、入射光を散乱し、散乱光を発生させる1または2以上の区画を有し、散乱光のうち撮像領域に到達する成分の総和が、撮像領域外に到達する成分の総和より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光学素子、光学系、撮像装置、光学機器、および原盤に関する。詳しくは、サブ波長構造体が表面に設けられた光学素子を備える光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学素子の技術分野においては、光の表面反射を抑えるための技術が種々用いられている。それらの技術の1つとして、光学素子表面にサブ波長構造体を形成するものがある(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
一般に、光学素子表面に周期的な凹凸形状を設けた場合、ここを光が透過するときには回折が発生し、透過光の直進成分が大幅に減少する。しかし、凹凸形状のピッチが透過する光の波長よりも短い場合には回折は発生せず、有効な反射防止効果を得ることができる。
【0004】
上述の反射防止技術は、優れた反射防止特性を有するために様々な光学素子表面に適用することが検討されている。例えば、レンズ表面にサブ波長構造体を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−002853号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「光技術コンタクト」 Vol.43, No.11 (2005), 630-637参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、サブ波長構造体が表面に形成されたレンズなどの光学素子を撮像装置の光学系に用いた場合、この撮像装置を用いて輝点などを撮影すると、撮影した画像に線状の輝線ノイズが発生することがある。
【0008】
したがって、本技術の目的は、輝点などを撮影した場合にも、線状の輝線ノイズの発生を抑制できる光学素子、光学系、撮像装置、光学機器、および原盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
複数のサブ波長構造体が形成された表面を有する光学素子と、
光学素子を介して光を受光する撮像領域を有する撮像素子と
を備え、
光学素子の表面は、入射光を散乱し、散乱光を発生させる1または2以上の区画を有し、
散乱光のうち撮像領域に到達する成分の総和が、撮像領域外に到達する成分の総和より小さい光学系である。
【0010】
第1の技術では、散乱光のうち撮像領域に到達する成分の総和を、撮像領域外に到達する成分の総和より小さくしているので、撮像素子に入射する散乱光を低減することができる。したがって、散乱光に起因する線状の輝線ノイズの発生を抑制することができる。
【0011】
第1の技術において、散乱光の強度分布が、異方性を有していることが好ましい。この場合、散乱光の強度分布が、開口数NAによって異なることが好ましくい。具体的には、散乱光の強度分布の単位立体角当たりの強度が、開口数NA>0.8の範囲よりも開口数NA≦0.8の範囲にて小さいことが好ましい。
【0012】
第1の技術において、撮像領域における散乱光の強度分布の最大値が、撮像領域の外側の領域における散乱光の強度分布の最大値より小さいことが好ましい。
【0013】
第1の技術において、複数のサブ波長構造体が、光学素子の表面において複数の列をなすように配列され、上述の区画では、列のピッチPが基準ピッチPと比して変化していることが好ましい。列の形状としては、直線状または円弧状であることが好ましい。このような列の形状を採用する場合、複数のサブ波長構造体が、格子パターンを形成していることが好ましい。その格子パターンとしては、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0014】
第1の技術において、撮像領域が、対向する2組の辺を有する矩形状を有し、列の方向と、2組の辺のうちの一方の組の辺の延在方向とが平行であることが好ましい。この場合、2組の辺が、対向する1組の短辺と、対向する1組の長辺とからなり、列の方向と、長辺の延在方向とが平行であることが好ましい。そして、サブ波長構造体が、長軸と短軸とを持つ楕円形状の底面を有する錐体であり、底面の長軸の方向が、列の方向と一致することがより好ましい。
【0015】
第2の技術は、複数のサブ波長構造体が形成された表面を備え、
サブ波長構造体が格子パターンを形成し、
サブ波長構造体が表面において複数列のトラックをなすように配置され、
表面は、入射光の一部を散乱し、
散乱した光の強度の合計が、入射光の強度の合計に対して1/500未満である光学素子である。
【0016】
第2の技術では、散乱した光の強度を、入射光の強度に対して1/500未満としているので、散乱光の発生を抑制することができる。したがって、散乱光に起因する輝線ノイズの発生を抑制することができる。
【0017】
第2の技術において、トラックのピッチTpが、トラック間で変動していることが好ましい。
【0018】
第2の技術において、格子パターンが、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
本技術では、光学素子は、被写体からの光が入射する入射面と、この入射面から入射した光を出射する出射面とを有し、サブ波長構造体は、入射面および出射面の少なくとも一方に形成されることが好ましい。
【0020】
本技術は、サブ波長構造体が表面に形成された光学素子、その光学素子を備える光学系、およびその光学素子または光学系を備える撮像装置や光学機器などに適用して好適なものである。光学素子としては、例えば、レンズ、フィルタ、半透過型ミラー、調光素子、プリズム、偏光素子などが挙げられるが、これに限定されるものではない。撮像装置としては、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。光学機器としては、例えば、望遠鏡、顕微鏡、露光装置、測定装置、検査装置、分析機器などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、輝点などの光源を撮影した場合にも、線状の輝線ノイズの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1A、図1Bは、輝線ノイズの発生の原因について説明する概略図である。
【図2】図2は、本技術の第1の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概略図である。
【図3】図3Aは、本技術の第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図3Bは、図3Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図5Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。
【図4】図4A〜図4Dは、反射防止機能付光学素子の構造体の形状例を示す斜視図である。
【図5】図5Aは、図2に示した撮像光学系の一部を拡大して示す略線図である。図5Bは、図5Aに示した撮像光学系の開口数NAの定義を説明するための略線図である。
【図6】図6Aは、図5Aに示した撮像光学系を光線L0が入射する側から見た略線図である。図6Bは、図6Aに示した撮像光学系が有する反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す拡大図である。
【図7】図7Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図7Bは、図7Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図7Cは、図7BのトラックTにおける断面図である。
【図8】図8は、ロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】図9A〜図9Dは、本技術の第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本技術の第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図11】図11Aは、本技術の第2の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図11Bは、図11Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図11Cは、図11BのトラックTにおける断面図である。
【図12】図12Aは、本技術の第3の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図12Bは、図11Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図12Cは、図12BのトラックTにおける断面図である。
【図13】図13Aは、本技術の第4の実施形態に係る反射防止機能付光学素子表面の一部を拡大して表す平面図である。図13Bは、仮想トラックTiの定義を説明するための概略図である。
【図14】図14Aは、構造体の中心位置の変動幅を説明するための概略図である。図14Bは、構造体の変動割合を説明するための概略図である。
【図15】図15Aおよび図15Bは、構造体の配置形態の第1の例を示す模式図である。図15Cは、構造体の配置形態の第2の例を示す模式図である。
【図16】図16Aは、本技術の第5の実施形態に係る反射防止機能付光学素子表面の一部を拡大して表す平面図である。図16Bは、構造体の配置ピッチの変動幅を説明するための概略図である。
【図17】図17は、本技術の第6の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概略図である。
【図18】図18Aは、試験例1−1のシミュレーション結果を示す図である。図18Bは、試験例1−2のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図19Aは、試験例2−1のシミュレーション結果を示す図である。図19Bは、試験例2−1のシミュレーション結果である強度分布を示すグラフである。
【図20】図20Aは、試験例2−2のシミュレーション結果を示す図である。図20Bは、試験例2−2のシミュレーション結果である強度分布を示すグラフである。
【図21】図21Aは、試験例2−3のシミュレーション結果を示す図である。図21Bは、試験例2−3のシミュレーション結果である強度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本技術の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施形態(撮像領域に到達する散乱光を低減させた光学系およびそれを備える撮像装置の例)
2.第2の実施形態(構造体を四方格子状または準四方格子状に配列した例)
3.第3の実施形態(構造体を凹状とした例)
4.第4の実施形態(構造体を列間方向に変動させた例)
5.第5の実施形態(構造体を列方向に変動させた例)
6.第6の実施形態(構造体をデジタルビデオカメラの光学系に適用した例)
【0024】
<1.第1の実施形態>
(第1の実施形態の概要)
第1の実施形態は、以下の検討の結果により案出されたものである。
本技術者らは、図1Aに示すように、サブ波長構造体が入射面に形成された半透過型ミラー(光学素子)301と、撮像素子302とを備える撮像光学系について、線状の輝線ノイズの発生を抑制すべく鋭意検討を行った。その結果、輝点などの光源からの光Lが半透過型ミラー301の入射面に入射すると、散乱光Lsが発生し、発生した散乱光Lsが撮像素子302の撮像領域(受光領域)に到達すると、撮像素子302により撮影した画像には白色的な散乱光Lsが輝線ノイズとして現れることを見出すに行った。
【0025】
そこで、本技術者らは、半透過型ミラー301による散乱光Lsの発生の原因について鋭意検討を行った。その結果、サブ波長構造体の配置ピッチTpの変動が散乱光Lsの発生の原因であることを見出すに至った。すなわち、フォトリソグラフィ技術を用いて原盤を作製した場合には、露光時の送りピッチの精度上の問題により、図1Bに示すように、サブ波長構造体303の配置ピッチTpが変動してしまう。このように配置ピッチTpが変動すると、配置ピッチTpが理想とする配置ピッチTpに比較して大きくなる区画が発生する。このような配置ピッチTpが大きくなった区画に、輝点などの光源からの光Lが照射されると、散乱光Lsが発生する。
【0026】
そこで、本技術者らは、上述した輝線ノイズ発生の原因を考慮して、輝線ノイズの発生を抑制すべく鋭意検討を行った。その結果、サブ波長構造体303の形状などを調整して、撮像領域に到達する散乱光Lsの成分を、撮像領域外に到達する散乱光Lsの成分より小さくすることにより、輝線ノイズの発生を抑制できることを見出すに至った。
【0027】
(撮像装置の構成)
図2は、本技術の第1の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概略図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る撮像装置100は、いわゆるデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)であって、筐体101と、筐体101内に設けられた撮像光学系102とを備える。撮像光学系102は、レンズ111と、反射防止機能付光学素子1と、撮像素子112と、オートフォーカスセンサ113とを備える。
【0028】
レンズ111は、被写体からの光Lを撮像素子112に向けて集光する。反射防止機能付光学素子1は、レンズ111により集光された光Lの一部をオートフォーカスセンサ113に向けて反射するのに対して、光Lの残りを撮像素子112に向けて透過する。撮像素子112は、反射防止機能付光学素子1を透過した光を受光する矩形状の撮像領域A1を有し、この撮像領域A1にて受光した光を電気信号に変換し、信号処理回路に出力する。オートフォーカスセンサ113は、反射防止機能付光学素子1により反射された光を受光し、受光した光を電気信号に変換し、制御回路に出力する。
【0029】
(反射防止機能付光学素子)
以下、第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子1の構成について具体的に説明する。
図3Aは、本技術の第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図3Bは、図3Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。
【0030】
反射防止機能付光学素子1は、入射面および出射面を有する半透過型ミラー2と、この半透過型ミラー2の入射面に形成された複数の構造体3とを備える。構造体3と半透過型ミラー2とは、別成形または一体成形されている。構造体3と半透過型ミラー2とが別成形されている場合には、必要に応じて構造体3と半透過型ミラー2との間に基底層4をさらに備えるようにしてもよい。基底層4は、構造体3の底面側に構造体3と一体成形される層であり、構造体3と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化してなる。
以下、反射防止機能付光学素子1に備えられる半透過型ミラー2、および構造体3について順次説明する。
【0031】
(半透過型ミラー)
半透過型ミラー2は、入射する光の一部を透過し、残りを反射するミラーである。半透過型ミラー2の形状としては、例えば、シート状、プレート状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、シートにはフィルムが含まれるものと定義する。
【0032】
(構造体)
構造体3は、いわゆるサブ波長構造体であり、例えば、半透過型ミラー2の入射面に対して凸状を有し、半透過型ミラー2の入射面に対して2次元配列されている。構造体3は、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下の短い配置ピッチで周期的に2次元配列されていることが好ましい。
【0033】
複数の構造体3は、半透過型ミラー2の表面において複数列のトラックTをなすような配置形態を有する。原盤作成工程における露光時の問題から、トラックTのトラックピッチTpが、図3Bに示すように、トラック間で変動している。本技術において、トラックとは、構造体3が列をなして連なった部分のことをいう。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックTをウォブル(蛇行)させるようにしてもよい。このようにトラックTをウォブルさせることで、外観上のムラの発生を抑制できる。
【0034】
トラックTをウォブルさせる場合には、半透過型ミラー2上における各トラックTのウォブルは、同期していることが好ましい。すなわち、ウォブルは、シンクロナイズドウォブルであることが好ましい。このようにウォブルを同期させることで、六方格子または準六方格子の単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルしたトラックTの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができる。ウォブルしたトラックTの波形は、周期的な波形に限定されるものではなく、非周期的な波形としてもよい。ウォブルしたトラックTのウォブル振幅は、例えば±10μm程度に選択される。
【0035】
半透過型ミラー2の表面は、輝点などの光源からの入射光を散乱し、散乱光を発生させる1または2以上の区画を有している。この区画では、例えばトラックピッチTpが基準となるトラックピッチTpに対して変化し、大きくなっている。このような区画は、原盤作成工程における露光時の問題により発生するものであり、この区画の発生を輝線ノイズの発生が無くなる程度、または気にならない程度に抑えることは困難である。
【0036】
構造体3は、例えば、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体3の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体3が配置されている。その結果、図3Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている。以下では、構造体の列が延在される方向(トラックの延在方向)をトラック方向(列方向)a、半透過型ミラー2の面内においてトラック方向aと垂直な方向をトラック間方向(列間方向)bという。
【0037】
ここで、六方格子とは、正六角形状の格子のことをいう。準六方格子とは、正六角形状の格子とは異なり、歪んだ正六角形状の格子のことをいう。例えば、構造体3が直線状に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた六方格子のことをいう。構造体3が蛇行して配列されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を構造体3の蛇行配列により歪ませた六方格子、または正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体3の蛇行配列により歪ませた六方格子のことをいう。
【0038】
構造体3が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図3Bに示すように、同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1(例えばa1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体3を配置することで、構造体3の充填密度の更なる向上を図れるようになる。
【0039】
構造体3の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球体状、半楕円体状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。頂部に凸状の曲面を有する錐体形状としては、放物面状などの2次曲面状などが挙げられる。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図8参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体3の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックTの延在方向と一致させることが好ましい。
【0040】
反射特性の向上の観点からすると、図4Aに示すように、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状が好ましい。また、反射特性および透過特性の向上の観点からすると、図4Bに示すように、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状、または、図4Cに示すように、頂部が平坦な錐体形状であることが好ましい。構造体3が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。
【0041】
構造体3は、図4Aおよび図4Cに示すように、その底部の周縁部に、頂部から下部の方向に向かってなだらかに高さが低下する曲面部3aを有することが好ましい。反射防止機能付光学素子1の製造工程において反射防止機能付光学素子1を原盤などから容易に剥離することが可能になるからである。なお、曲面部3aは、構造体3の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体3の周縁部の全部に設けることが好ましい。
【0042】
構造体3の周囲の一部または全部に突出部5を設けることが好ましい。このようにすると、構造体3の充填率が低い場合でも、反射率を低く抑えることができるからである。突出部5は、成形の容易さの観点からすると、図4A〜図4Cに示すように、隣り合う構造体3の間に設けることが好ましい。また、図4Dに示すように、細長い突出部5が、構造体3の周囲の全体またはその一部に設けるようにしてもよい。この細長い突出部5は、例えば、構造体3の頂部から下部の方向に向かって延びるものとすることができるが、特にこれに限られるものではない。突出部5の形状としては、断面三角形状および断面四角形状などを挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、成形の容易さなどを考慮して選択することができる。また、構造体3の周囲の一部または全部の表面を荒らし、微細の凹凸を形成するようにしてもよい。具体的には例えば、隣り合う構造体3の間の表面を荒らし、微細な凹凸を形成するようにしてもよい。また、構造体3の表面、例えば頂部に微小な穴を形成するようにしてもよい。
【0043】
なお、図3A〜図4Dでは、各構造体3がそれぞれ同一の大きさ、形状および高さを有しているが、構造体3の形状はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の大きさ、形状および高さを有する構造体3が形成されていてもよい。
【0044】
構造体3は、例えば、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下の短い配置ピッチで規則的(周期的)に2次元配置されている。このように複数の構造体3を2次元配列することで、2次元的な波面を半透過型ミラー2の表面に形成するようにしてもよい。ここで、配置ピッチとは、配置ピッチP1および配置ピッチP2を意味する。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜360nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。具体的には、配置ピッチは、175nm以上350nm以下であることが好ましい。配置ピッチが175nm未満であると、構造体3の作製が困難となる傾向がある。一方、配置ピッチが350nmを超えると、可視光の回折が生じる傾向がある。
【0045】
トラックの延在方向における構造体3の高さH1は、列方向における構造体3の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体3を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体3の充填率が低下するためである。このように充填率が低下すると、反射特性の低下を招くことになる。
【0046】
構造体3の高さは特に限定されず、透過させる光の波長領域に応じて適宜設定され、例えば236nm以上450nm以下、好ましくは415nm以上421nm以下の範囲内に設定される。
【0047】
構造体3のアスペクト比(高さ/配置ピッチ)は、0.81以上1.46以下の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.94以上1.28以下の範囲である。0.81未満であると反射特性および透過特性が低下する傾向にあり、1.46を超えると構造体3の形成時において剥離特性が低下し、レプリカの複製が綺麗に取れなくなる傾向があるからである。また、構造体3のアスペクト比は、反射特性をより向上させる観点からすると、0.94以上1.46以下の範囲に設定することが好ましい。また、構造体3のアスペクト比は、透過特性をより向上させる観点からすると、0.81以上1.28以下の範囲に設定することが好ましい。
【0048】
ここで、高さ分布とは、2種以上の高さを有する構造体3が半透過型ミラー2の表面に設けられていることを意味する。例えば、基準となる高さを有する構造体3と、この構造体3とは異なる高さを有する構造体3とが半透過型ミラー2の表面に設けるようにしてもよい。この場合、基準とは異なる高さを有する構造体3は、例えば半透過型ミラー2の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられる。その周期性の方向としては、例えばトラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
【0049】
なお、本技術においてアスペクト比は、以下の式(1)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(1)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(2)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(2)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=60°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0050】
また、構造体3の高さHは、構造体3の列方向の高さとする。構造体3のトラック延在方向(X方向)の高さは、列方向(Y方向)の高さよりも小さく、また、構造体3のトラック延在方向以外の部分における高さは列方向の高さとほぼ同一であるため、サブ波長構造体の高さを列方向の高さで代表する。但し、構造体3が凹部である場合、上記式(1)における構造体の高さHは、構造体の深さHとする。
【0051】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0052】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、反射防止特性を向上することができる。充填率を向上させるためには、隣接する構造体3の下部同士を接合もしくは重ね合わせる、または構造体底面の楕円率を調整などして構造体3に歪みを付与することが好ましい。
【0053】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、反射防止機能付光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図3B参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体3の底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(3)より充填率を求める。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(hex.)=2S
【0054】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0055】
構造体3が重なっているときや、構造体3の間に突出部4などの副構造体があるときの充填率は、構造体3の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法で充填率を求めることができる。
【0056】
構造体3が、その下部同士を重ね合うようにして繋がっていることが好ましい。具体的には、隣接関係にある構造体3の一部または全部の下部同士が重なり合っていることが好ましく、トラック方向、θ方向、またはそれら両方向において重なり合っていることが好ましい。このように構造体3の下部同士を重なり合わせることで、構造体3の充填率を向上することができる。構造体同士は、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で重なり合っていることが好ましい。これにより、優れた反射防止特性を得ることができるからである。
【0057】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、反射防止特性を向上できるからである。比率((2r/P1)×100)が大きくなり、構造体3の重なりが大きくなりすぎると反射防止特性が低減する傾向にある。したがって、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で構造体同士が接合されるように、比率((2r/P1)×100)の上限値を設定することが好ましい。ここで、配置ピッチP1は、図3Bに示すように、構造体3のトラック方向の配置ピッチであり、径2rは、図3Bに示すように、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0058】
(撮像光学系)
図5Aは、図2に示した撮像光学系の一部を拡大して示す略線図である。図6Aは、図5Aに示した撮像光学系を光線L0が入射する側から見た略線図である。図6Bは、図6Aに示した撮像光学系が有する反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す拡大図である。図5A中、光線L0は被写体からの主光線を表し、光線Lminは反射防止機能付光学素子1に対する入射角が最も小さい光線を表し、光線Lmaxは、反射防止機能付光学素子1に対する入射角が最も大きい光線を表している。また、矩形状の撮像領域A1の長辺に平行な方向をX軸方向、短辺に平行な方向をY軸方向と定義する。また、撮像素子112の撮像面に垂直な方向にZ軸方向と定義する。
【0059】
反射防止機能付光学素子1の入射面は、入射光を散乱し、散乱光Lsを発生させる1または2以上の区画を有する。散乱光Lsのうち撮像領域A1に到達する成分の総和が、撮像領域の外側の領域A2に到達する成分の総和より小さいことが好ましい。これにより、撮像画像に対する輝線ノイズの発生を抑制することができる。
【0060】
輝線ノイズの発生を抑制する観点からすると、撮像領域A1における散乱光Lsの強度分布の最大値が、撮像領域A1の外側の領域A2における散乱光Lsの強度分布の最大値より小さいことが好ましい。
【0061】
散乱光Lsは、図5Aに示すように、X軸方向にはほとんど広がらず、撮像素子112の撮像面を含む平面に到達する。したがって、散乱光Lsの強度分布は、主としてY軸方向にのみ変化する。すなわち、散乱光Lsの強度分布は、X軸方向とY軸方向で異なり、異方性を有している。本明細書において、強度分布とは、Y軸方向の強度分布を意味するものとする。
【0062】
反射防止機能付光学素子1の表面に入射する入射光の強度の合計Iaに対する、反射防止機能付光学素子1の表面により散乱される散乱光Lsの強度Ibの合計の割合(Ib/Ia)が、好ましくは1/500未満、より好ましくは1/5000以下、さらに好ましくは1/105以下の範囲内である。割合(Ib/Ia)を1/500未満とすることで、線状の輝線ノイズの発生を抑制することができる。
【0063】
図5Bは、図5Aに示した撮像光学系の開口数NAの定義を説明するための略線図である。ここでは、図5Bに示すように、反射防止機能付光学素子1および撮像素子112の光軸を光軸l、反射防止機能付光学素子1の入射面にて散乱した散乱光Lsの方向を散乱方向s、光軸lの方向と散乱光Lsの方向とがなす角を角度δ、開口数NAをnsinδ(n:反射防止機能付光学素子1と撮像素子112との間の媒質(例えば空気)の屈折率)と定義する。
【0064】
異方性を有する散乱光Lsの強度分布は、開口数NAによって異なっている。この場合、散乱光の強度分布の単位立体角当たりの強度が、開口数NA>0.8の範囲よりも開口数NA≦0.8の範囲にて小さいことが好ましい。撮像素子112の撮像領域A1に到達する散乱光Lsの光量を低減することができるからである。
【0065】
図6Aに示すように、撮像領域A1が、例えば、対向する二組の辺、すなわち一組の短辺と一組の長辺とを有する矩形状を有している。この場合、構造体3のトラック方向aと、2組の辺のうちの一方の組の辺である長辺の延在方向(X軸方向)とが平行であることが好ましい。これにより、撮像領域A1の幅の狭い短辺の延在方向(Y軸方向)に向かって、光軸lから遠ざかるように散乱光Lsを散乱することができるので、撮像素子112の撮像領域A1に到達する散乱光Lsの光量を低減することができる。
【0066】
上述したように、構造体3のトラック方向aと、撮像領域A1の長辺の延在方向(X軸方向)とが平行の関係を有する場合、図6Bに示すように、(a)構造体3を長軸と短軸とを持つ楕円形状の底面を有する錐体とし、(b)その底面の長軸の方向をトラック方向aと一致させることが好ましい。(a)構造体3を長軸と短軸とを持つ楕円形状の底面を有する錐体とすることで、構造体3の底面を円形状などの底面とした場合に比して、トラックピッチTpを狭くすることができる。これにより、構造体3の底面を円形状などの底面とした場合に比して、輝点などの光源からの光線L0を光軸lから、より遠ざかるように散乱させることができる。(b)構造体3の底面の長軸の方向をトラック方向aと一致させることで、輝点などの光源からの光線L0を撮像領域A1の幅の狭い短辺の延在方向(Y軸方向)に向かって散乱させることができる。したがって、上述の構成(a)と構成(b)との組合せにより、輝点などの光源からの光線L0を、光軸lからY軸方向に向かって、構造体3の底面を円形状などの底面とした場合に比して遠ざかるように散乱させることができる。したがって、撮像素子112の撮像領域A1に到達する散乱光Lsの光量をさらに低減することができる。
【0067】
[ロールマスタの構成]
図7Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図7Bは、図7Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図7Cは、図4BのトラックTにおける断面図である。ロール原盤11は、上述した基体表面に複数の構造体3を成形するための原盤である。ロール原盤11は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面が基体表面に複数の構造体3を成形するための成形面とされる。この成形面には複数の構造体12が2次元配列されている。構造体12は、例えば、成形面に対して凹状を有している。ロール原盤11の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0068】
ロール原盤11の成形面に配置された複数の構造体12と、上述の半透過型ミラー2の表面に配置された複数の構造体3とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤11の構造体12の形状、配列、配置ピッチなどは、半透過型ミラー2の構造体3と同様である。
【0069】
[露光装置の構成]
図8は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
【0070】
レーザー光源21は、記録媒体としてのロール原盤11の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光14を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光14は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光14は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0071】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光14の位相変調を行う。
【0072】
変調光学系25において、レーザー光14は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光14は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光14は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0073】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、ロール原盤11上のレジスト層へ照射される。ロール原盤11は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、ロール原盤11を回転させるとともに、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光14を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0074】
露光装置は、図5Bに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0075】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と回転コントロラーを同期させて信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。
【0076】
[反射防止機能付光学素子の製造方法]
次に、図9A〜図10Cを参照しながら、本技術の第1の実施形態に係る反射防止機能付光学素子1の製造方法について説明する。
【0077】
(レジスト成膜工程)
まず、図9Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤11を準備する。このロール原盤11は、例えばガラス原盤である。次に、図9Bに示すように、ロール原盤11の表面にレジスト層13を形成する。レジスト層13の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0078】
(露光工程)
次に、図9Cに示すように、ロール原盤11の表面に形成されたレジスト層13に、レーザー光(露光ビーム)14を照射する。具体的には、図8に示したロール原盤露光装置のターンテーブル36上に載置し、ロール原盤11を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)14をレジスト層13に照射する。このとき、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向a(円柱状または円筒状のロール原盤11の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光14を間欠的に照射することで、レジスト層13を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光14の軌跡に応じた潜像15が、例えば可視光波長と同程度のピッチでレジスト層13の全面にわたって形成される。この露光工程において、レーザー光14の照射上の問題により、トラックピッチTpに変動が生じる。この変動を輝線ノイズの発生が無くなる程度、または気にならない程度に低減することは困難である。
【0079】
潜像15は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像15は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0080】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤11を回転させながら、レジスト層13上に現像液を滴下して、レジスト層13を現像処理する。これにより、図9Dに示すように、レジスト層13に複数の開口部が形成される。レジスト層13をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光14で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図9Dに示すように、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層13に形成される。開口部のパターンは、例えば六方格子パターンまたは準六方格子パターンなどの所定の格子パターンである。
【0081】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤11の上に形成されたレジスト層13のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤11の表面をエッチング処理する。これにより、図10Aに示すように、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状の凹部、すなわち構造体12を得ることができる。エッチングとしては、例えばドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体12のパターンを形成することができる。
以上により、目的とするロール原盤11が得られる。
【0082】
(転写工程)
次に、図10Bに示すように、ロール原盤11と、半透過型ミラー2上に塗布された転写材料16とを密着させた後、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源17から転写材料16に照射して転写材料16を硬化させた後、硬化した転写材料16と一体となった半透過型ミラー2を剥離する。これにより、図10Cに示すように、複数の構造体3を基体表面に有する反射防止機能付光学素子1が作製される。次に、反射防止機能付光学素子1を所望とする大きさに切り出すようにしてもよい。
【0083】
エネルギー線源17としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
【0084】
転写材料16としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいてもよい。
【0085】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えばアクリレートおよび開始剤を含んでいる。紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどを含み、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
【0086】
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0087】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0088】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0089】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0090】
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0091】
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。半透過型ミラー2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0092】
半透過型ミラー2の成形方法は特に限定されず、射出成形体でも押し出し成形体でも、キャスト成形体でもよい。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
以上により、目的とする反射防止機能付光学素子1が得られる。
【0093】
<2.第2の実施形態>
[反射防止機能付光学素子の構成]
図11Aは、本技術の第2の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図11Bは、図11Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図11Cは、図11BのトラックTにおける断面図である。
【0094】
第2の実施形態に係る反射防止機能付光学素子1は、複数の構造体3が、隣接する3列のトラックT間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0095】
ここで、四方格子とは、正四角形状の格子のことをいう。準四方格子とは、正四角形状の格子とは異なり、歪んだ正四角形状の格子のことをいう。例えば、構造体3が直線上に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた四方格子のことをいう。構造体3が蛇行して配列されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を構造体3の蛇行配列により歪ませた四方格子をいう。または、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体3の蛇行配列により歪ませた四方格子のことをいう。
【0096】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。また、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体3の高さまたは深さは、トラックの延在方向における構造体3の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。
【0097】
トラックの延在方向に対して斜となる構造体3の配列方向(θ方向)の高さH2は、トラックの延在方向における構造体3の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。
【0098】
構造体3が四方格子または準四方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、140%≦e≦180%であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた反射防止特性を得ることができるからである。
【0099】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、反射防止特性を向上することができる。
【0100】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、反射防止機能付光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図8B参照)。また、その単位格子Ucに含まれる4つの構造体3のいずれかの底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(4)より充填率を求める。
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100 ・・・(4)
単位格子面積:S(unit)=2×((P1×Tp)×(1/2))=P1×Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(tetra)=S
【0101】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0102】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、64%以上、好ましくは69%以上、より好ましくは73%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、反射防止特性を向上できるからである。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
この第2の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0103】
<3.第3の実施形態>
図12Aは、本技術の第3の実施形態に係る反射防止機能付光学素子の構成の一例を示す平面図である。図12Bは、図12Aに示した反射防止機能付光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図12Cは、図12BのトラックTにおける断面図である。
【0104】
第3の実施形態に係る反射防止機能付光学素子1は、凹部である構造体3が基体表面に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。この構造体3の形状は、第1の実施形態における構造体3の凸形状を反転して凹状としたものである。なお、上述のように構造体3を凹状とした場合、凹状である構造体3の開口部(凹部の入り口部分)を下部、半透過型ミラー2の深さ方向の最下部(凹部の最も深い部分)を頂部と定義する。すなわち、非実体的な空間である構造体3により頂部、および下部を定義する。また、第4の実施形態では、構造体3が凹状であるため、式(1)などにおける構造体3の高さHは、構造体3の深さHとなる。
この第3の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0105】
<4.第4の実施形態>
(第4の実施形態の概要)
第4の実施形態は、以下の検討の結果により案出されたものである。
第1の実施形態において説明したように、本技術者らは、鋭意検討の結果、撮像画像に対する輝線ノイズの発生は、サブ波長構造体の配置ピッチTpの変動に起因するものであることを見出すに至った。そこで、本技術者らは、上述の第1の実施形態とは異なる技術により、線状の輝線ノイズの発生を抑制することを検討した。その結果、サブ波長構造体の列に対して垂直な方向に、サブ波長構造体の配置位置を変動させて、輝点などの光源からの光を2次元的に広げて拡散することにより、輝線ノイズの発生を抑制できることを見出すに至った。
【0106】
(撮像装置の構成)
本技術の第4の実施形態に係る撮像装置は、反射防止機能付光学素子表面に形成された構造体3の配置形態以外の点では第1の実施形態と同様である。したがって、以下では、構造体3の配置形態について説明する。
【0107】
(構造体の配置形態)
図13Aは、本技術の第4の実施形態に係る反射防止機能付光学素子表面の一部を拡大して表す平面図である。図13Aに示すように、複数の構造体3の中心位置αは、仮想トラックTiを基準としてトラック間方向(列間方向)bに向けて変動している。このように構造体3の中心位置αを変動させることで、輝点などの光源からの光を2次元的に広げて拡散することができる。したがって、撮像画に対する輝線ノイズの発生を抑制することができる。構造体3の中心位置αの変動は、例えば、規則的または不規則的であり、撮像画に対する輝線ノイズの発生を低減する観点からすると、不規則的であることが好ましい。また、構造体3の充填率を向上させる観点からすると、図13Aに示した区画Dのように、各仮想トラックTi間において変動の方向を同期させることが好ましい。
【0108】
(仮想トラック)
図13Bは、仮想トラックTiの定義を説明するための概略図である。仮想トラックTiは、構造体3の中心位置αの平均位置から求められる仮想的なトラックであり、具体的には以下のようにして求めることができる。
まず、反射防止機能付光学素子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から、仮想トラックTiを求める構造体3の列を1つ選び出す。次に、選び出した列から10個の構造体3を無作為に選び出す。次に、構造体3の変動方向bに対して垂直な直線Lを設定し、この直線Lを基準として、選び出した各構造体3の中心位置(C1、C2、・・・、C10)を求める。次に、求めた10個の構造体3の中心位置を単純に平均(算術平均)して、構造体3の平均中心位置Cm(=(C1+C2+・・・・+C10)/10)を求める。次に、求めた平均中心位置Cmを通り、かつ、直線Lと平行な直線を求め、この直線を仮想トラックTiとする。なお、原盤作成工程における露光時の問題から、仮想トラックTiのトラックピッチTpは、図13Aに示すように、トラック間で変動している。
【0109】
(変動幅)
図14Aは、構造体の中心位置の変動幅を説明するための概略図である。トラックピッチTpの変動幅ΔTpの最大値をΔTpmaxとした場合、構造体3の中心位置αの変動幅ΔAは、ΔTpmaxよりも大きいことが好ましい。これにより、線状の輝線ノイズの発生を低減することができる。ここで、構造体3の中心位置αの変動幅ΔAは、仮想トラックTiを基準とした変動幅である。
【0110】
(トラックピッチTpの最大変動幅ΔTpmax
トラックピッチTpの最大変動幅ΔTpmaxは、以下のようにして求めることができる。
まず、反射防止機能付光学素子の表面をSEMを用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から隣接する構造体3の列を1組選び出す。次に、選び出した一組の構造体3の列それぞれについて仮想トラックTiを求める。次に、求めた仮想トラックTi間のトラックピッチTpを求める。上述したトラックピッチTpを求める処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所で行う。そして、10箇所で求めたトラックピッチTpを単純に平均(算術平均)して平均トラックピッチTpmを求める。
【0111】
次に、上述のようにして求めた平均トラックピッチTpmと、トラックピッチTpとの差の絶対値(|Tp−Tpm|)を求め、トラックピッチTpの変動幅ΔTpとする。上述のようにした多数のトラックピッチTpの変動幅ΔTpを求め、そのうちから最大値を選び出し、最大変動幅ΔTpmaxとする。
【0112】
(変動割合)
図14Bは、構造体の変動割合を説明するための概略図である。トラック方向aにおける構造体3の配置ピッチを配置ピッチPとした場合、構造体3の中心位置αは、線状の輝線ノイズの発生を抑制できるような頻度でトラック間方向bに変動していることが好ましい。具体的には、構造体3の中心位置αは、トラック方向aに対して所定距離(所定周期)nP(n:自然数、例えばn=5)以下の距離でトラック間方向bに変動していることが好ましい。より具体的には、構造体3の中心位置αは、トラック方向aに対して所定個数n個(n:自然数、例えばn=5)に1個以上の割合でトラック間方向bに変動していることが好ましい。
【0113】
(構造体の配置形態の例)
図15Aは、構造体の配置形態の第1の例を示す模式図である。図15Aに示すように、第1の例では、構造体3の中心位置αを蛇行するように変動させている。具体的には、構造体3の中心位置αを、ウォブル(蛇行)したトラック(以下ウォブルトラックという。)Tw上に配置している。
【0114】
各ウォブルトラックTwは同期していることが好ましい。このようにウォブルトラックTwを同期させることで、(準)四方格子形状または(準)六方格子形状などの単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルトラックTwの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0115】
ウォブルトラックTwの周期Tおよび振幅Aは、規則的または不規則的とすることができ、線状の輝線ノイズの発生の低減の観点からすると、図15Bに示すように、周期Tおよび振幅Aの少なくとも一方を不規則とすることが好ましく、両者を不規則とすることがより好ましい。なお、ウォブルトラックTwの振幅Aの変動は周期単位に限定されるものではなく、一周期内で振幅Aが変動するようにしてもよい。
【0116】
図15Cは、構造体の配置形態の第2の例を示す模式図である。図15Cの区画S1に示すように、第2の例では、個々の構造体3の中心位置αを独立に、仮想トラックTiを基準としてトラック間方向bに向けて変動させている。また、図15Cの区画S2に示すように、トラック方向aに隣接する所定個数の構造体3によりブロック(構造体群)Bを構成し、このブロックBを1つの変動単位として構造体3の中心位置αを変動させるようにしてもよい。ここで、構造体3の中心位置αの変動は、規則的または不規則的とすることができ、線状の輝線ノイズ発生の低減の観点からすると、不規則的とすることが好ましい。なお、図15Cでは、1つの列内に区画S1および区画S2で示す2つの配置形態が混在するする例を示しているが、これらの配置形態は必ずしも混在して使用する必要はなく、いずれか一方の配置形態を用いて反射防止機能付光学素子表面を形成するようにしてもよい。
【0117】
(入射光の強度Iaに対する散乱光の強度Ibの割合)
反射防止機能付光学素子の表面に入射する入射光の強度Iaの合計に対する、反射防止機能付光学素子の表面により散乱される散乱光Lsの強度Ibの合計の割合(Ib/Ia)が、好ましくは1/500未満、より好ましくは1/5000以下、さらに好ましくは1/105以下の範囲内である。割合(Ib/Ia)を1/500未満とすることで、線状の輝線ノイズの発生を抑制することができる。
【0118】
<5.第5の実施形態>
(構造体の配置形態)
図16Aは、本技術の第5の実施形態に係る反射防止機能付光学素子表面の一部を拡大して表す平面図である。図16Aに示すように、第5の実施形態は、同一トラック内における構造体3の配置ピッチPが、平均配置ピッチPmに対して変動している点において、第4の実施形態とは異なっている。
【0119】
(変動幅)
図16Bは、構造体の配置ピッチPの変動幅を説明するための概略図である。トラックピッチTpの変動幅ΔTpの最大値をΔTpmaxとした場合、配置ピッチPの変動幅ΔPは、ΔTpmaxよりも大きいことが好ましい。これにより、線状の輝線ノイズの発生を低減することができる。ここで、配置ピッチPの変動幅ΔPは、平均配置ピッチPmを基準とした変動幅である。
【0120】
(平均配置ピッチPm)
平均配置ピッチPmは、以下のようにして求めることができる。
まず、反射防止機能付光学素子の表面をSEMを用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真からトラックTを無作為に1つ選び出す。次に、選び出したトラックT上に配置された複数の構造体3から隣接する2つの構造体3を無作為に1組選び出し、トラック方向aの配置ピッチPを求める。上述した配置ピッチPを求める処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所で行う。そして、10箇所で求めた配置ピッチPを単純に平均(算術平均)して平均トラックピッチPmを求める。
【0121】
<6.第6の実施形態>
上述の第1の実施形態では、撮像装置としてデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)に本技術を適用する場合を例として説明したが、本技術の適用例はこれに限定されるものではない。本技術の第6の実施形態では、デジタルビデオカメラに本技術を適用した例について説明する。
【0122】
図17は、本技術の第6の実施形態に係る撮像装置の構成の一例を示す概略図である。図17に示すように、第6の実施形態に係る撮像装置201は、いわゆるデジタルビデオカメラであって、レンズ第1群L1、レンズ第2群L2、レンズ第3群L3、レンズ第4群L4、固体撮像素子202、ローパスフィルタ203、フィルタ204、モータ205、アイリス羽根206および電気調光素子207を備える。この撮像装置201では、レンズ第1群L1、レンズ第2群L2、レンズ第3群L3、レンズ第4群L4、固体撮像素子202、ローパスフィルタ203、フィルタ204、アイリス羽根206および電気調光素子207により撮像光学系が構成される。
【0123】
レンズ第1群L1およびレンズ第3群L3は、固定レンズである。レンズ第2群L2は、ズーム用レンズである。レンズ第4群は、フォーカス用レンズである。
【0124】
固体撮像素子202は、入射された光を電気信号に変換し、図示を省略した信号処理部に供給する。この固体撮像素子202は、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)などである。
【0125】
ローパスフィルタ203は、例えば、固体撮像素子202の前面に設けられる。ローパスフィルタ203は、画素ピッチに近い縞模様の像などを撮影した場合に生じる偽信号(モワレ)を抑制するためのものであり、例えば、人工水晶から構成される。
【0126】
フィルタ204は、例えば、固体撮像素子202に入射する光の赤外域をカットするとともに、近赤外域(630nm〜700nm)の分光の浮きを抑え、可視域帯(400nm〜700nm)の光強度を一様にするためのものである。このフィルタ204は、例えば、赤外光カットフィルタ(以下、IRカットフィルタ)4aと、このIRカットフィルタ204a上にIRカットコートを積層させて形成されたIRカットコート層204bとから構成される。ここで、IRカットコート層204bは、例えば、IRカットフィルタ204aの被写体側の面およびIRカットフィルタ204aの固体撮像素子202側の面の少なくとも一方に形成される。図17では、IRカットフィルタ204aの被写体側の面にIRカットコート層204bが形成される例が示されている。
【0127】
モータ205は、図示を省略した制御部から供給された制御信号に基づき、レンズ第4群L4を移動する。アイリス羽根206は、固体撮像素子202に入射する光量を調整するためのものであり、図示を省略したモータにより駆動される。
【0128】
電気調光素子207は、固体撮像素子202に入射する光量を調整するためのものである。この電気調光素子207は、少なくとも染料系色素を含んだ液晶からなる電気調光素子であり、例えば、2色性GH液晶からなる電気調光素子である。
【0129】
撮像光学系を構成するレンズ第1群L1、レンズ第2群L2、レンズ第3群L3、レンズ第4群L4、ローパスフィルタ203、フィルタ204、および電気調光素子207のうちの少なくとも1つの光学素子または光学素子群(以下光学部という。)の表面には、複数の構造体が形成されている。それらの構造体の構成、形状および配置形態などは、例えば、上述の第1〜第5のいずれかのものと同様とすることができる。
【0130】
具体的には、撮像光学系を構成する光学部のうち、固体撮像素子202の手前側(被写体側)に離間して設けられたフィルタ204またはレンズ第3群L3の表面に複数の構造体を形成する場合には、それらの構造体の構成、形状および配置形態などは、上述の第1〜第5のいずれかのものと同様とすることが好ましい。固体撮像素子202の手前に離間して設けられたフィルタ204およびレンズ第3群L3以外の光学部の表面に複数の構造体を形成する場合には、それらの構造体の構成、形状および配置形態などは、上述の第4または第5のものと同様とすることが好ましい。特に固体撮像素子202の手前に隣接して設けられたローパスフィルタ203の表面に複数の構造体を形成する場合には、それらの構造体の構成、形状および配置形態などは、上述の第4または第5のものと同様とすることが好ましい。
【0131】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)表面を有する基体と、
前記基体の表面に形成された複数のサブ波長構造体と
を備え、
前記複数のサブ波長構造体は、前記表面において複数の例を形成し、
前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けて変動している光学素子。
ここで、光学素子は、反射防止機能を有する光学素子である。基体は、サブ波長構造体により反射防止機能を付与する光学素子本体である。光学素子本体としては、例えば、レンズ、フィルタ、半透過型ミラー、調光素子、プリズム、偏光素子などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
(2)前記変動が不規則的な変動である前記(1)記載の光学素子。
(3)列間ピッチの変動幅ΔTpの最大値をΔTpmaxとした場合、前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けてΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(1)または(2)に記載の光学素子。
(4)前記列が蛇行している前記(1)または(2)に記載の光学素子。
(5)前記列の蛇行の周期および振幅の少なくとも一方が、不規則である前記(4)に記載の光学素子。
(6)前記サブ波長構造体の個々の中心位置が独立に、列間方向に向けて変動している前記(1)または(2)に記載の光学素子。
(7)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の中心位置が列間方向に向けて変動している前記(1)または(2)に記載の光学素子。
【0132】
(8)表面を有する基体と、
前記基体の表面に形成された複数のサブ波長構造体と
を備え、
前記複数のサブ波長構造体は、前記表面において複数の例を形成し、
同一列内における前記サブ波長構造体の配置ピッチPが、平均配置ピッチPmに対して変動している光学素子。
(9)前記変動が、不規則的な変動である前記(8)記載の光学素子。
(10)前記列間ピッチの変動幅の最大値をΔTpmaxとした場合、前記平均配置ピッチPmに対する前記配置ピッチPの変動幅ΔPが、ΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(8)または(9)に記載の光学素子。
(11)前記サブ波長構造体の個々の配置ピッチPが独立に、列方向に向けて変動している前記(8)または(9)に記載の光学素子。
(12)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の配置ピッチPが列方向に向けて変動している前記(8)または(9)に記載の光学素子。
【0133】
(13)複数のサブ波長構造体が形成された表面を有する1または2以上の光学素子を備え、
前記光学素子は、
表面を有する基体と、
前記基体の表面に形成された複数のサブ波長構造体と
を備え、
前記複数のサブ波長構造体は、前記表面において複数の例を形成し、
前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けて変動している光学系。
(14)前記変動が不規則的な変動である(13)記載の光学系。
(15)前記列間ピッチの変動幅ΔTpの最大値をΔTpmaxとした場合、前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けてΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(13)または(14)に記載の光学系。
(16)前記列が蛇行している前記(13)または(14)に記載の光学系。
(17)前記列の蛇行の周期および振幅の少なくとも一方が、不規則である前記(16)に記載の光学系。
(18)前記サブ波長構造体の個々の中心位置が独立に、列間方向に向けて変動している前記(13)または(14)に記載の光学系。
(19)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の中心位置が列間方向に向けて変動している前記(13)または(14)に記載の光学系。
(20)前記光学素子を介して光を受光する撮像素子をさらに備える前記(13)〜(19)のいずれか1項に記載の光学系。
【0134】
(21)複数のサブ波長構造体が形成された表面を有する1または2以上の光学素子を備え、
前記光学素子は、
表面を有する基体と、
前記基体の表面に形成された複数のサブ波長構造体と
を備え、
同一列内における前記サブ波長構造体の配置ピッチPが、平均配置ピッチPmに対して変動している光学系。
(22)前記変動が、不規則的な変動である前記(21)記載の光学系。
(23)前記列間ピッチの変動幅の最大値をΔTpmaxとした場合、前記平均配置ピッチPmに対する前記配置ピッチPの変動幅ΔPが、ΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(21)または(22)に記載の光学系。
(24)前記サブ波長構造体の個々の配置ピッチPが独立に、列方向に向けて変動している前記(21)または(22)に記載の光学系。
(25)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の配置ピッチPが列方向に向けて変動している前記(21)または(22)に記載の光学系。
(26)前記光学素子を介して光を受光する撮像素子をさらに備える前記(21)〜(25)のいずれか1項に記載の光学系。
【0135】
(27)前記(13)〜(26)のいずれか1項に記載された光学系を備える撮像装置。
(28)前記(13)〜(26)のいずれか1項に記載された光学系を備える光学機器。
【0136】
(29)複数のサブ波長構造体が形成された表面を有し、
前記複数のサブ波長構造体は、前記表面において複数の例を形成し、
前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けて変動している原盤。
(30)前記変動が不規則的な変動である(29)記載の原盤。
(31)前記列間ピッチの変動幅ΔTpの最大値をΔTpmaxとした場合、前記サブ波長構造体の中心位置が、列間方向に向けてΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(29)または(30)に記載の原盤。
(32)前記列が蛇行している前記(29)または(30)に記載の原盤。
(33)前記列の蛇行の周期および振幅の少なくとも一方が、不規則である前記(32)に記載の原盤。
(34)前記サブ波長構造体の個々の中心位置が独立に、列間方向に向けて変動している前記(29)または(30)に記載の原盤。
(35)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の中心位置が列間方向に向けて変動している前記(29)または(30)に記載の原盤。
【0137】
(36)複数のサブ波長構造体が形成された表面を有し、
前記複数のサブ波長構造体は、前記表面において複数の例を形成し、
同一列内における前記サブ波長構造体の配置ピッチPが、平均配置ピッチPmに対して変動している原盤。
(37)前記変動が、不規則的な変動である前記(36)記載の原盤。
(38)前記列間ピッチの変動幅の最大値をΔTpmaxとした場合、前記平均配置ピッチPmに対する前記配置ピッチPの変動幅ΔPが、ΔTpmaxよりも大きな大きさで変動している前記(36)または(37)に記載の原盤。
(39)前記サブ波長構造体の個々の配置ピッチPが独立に、列方向に向けて変動している前記(36)または(37)に記載の原盤。
(40)前記列方向に隣接する前記サブ波長構造体がブロックを形成し、該ブロックを単位として前記サブ波長構造体の配置ピッチPが列方向に向けて変動している前記(36)または(37)に記載の原盤。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0139】
[トラックピッチと散乱光との関係]
RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)シミュレーションにより、トラックピッチと散乱光との関係について検討を行った。
【0140】
(試験例1−1)
表面に複数のサブ波長構造体が形成された光学素子を想定し、この光学素子に対して点光源からの光が照射された場合における散乱光の強度分布をシミュレーションにより求めた。
以下に、シミュレーションの条件を示す。
サブ波長構造体の配列:四方格子
トラック方向の配置ピッチP1:250nm
トラックピッチTp:200nm
サブ波長構造体の底面形状:楕円形状
サブ波長構造体の高さ:200nm
構造体形状:放物面形状(釣鐘型)
偏光:無偏光
屈折率:1.5
【0141】
(試験例1−2)
トラックピッチTpを250nmとしたこと以外は、試験例1−1の場合と同様にして、散乱光の強度分布をシミュレーションにより求めた。
【0142】
図18Aは、試験例1−1のシミュレーション結果を示す図である。図18Bは、試験例1−2のシミュレーション結果を示す図である。図18Aおよび図18Bでは、縦横軸(XY軸):NA=±1.5の範囲内における散乱光の強度分布を示しており、強度が大きい位置ほど明るく(白く)表示されている。なお、図18および図18の中心(光軸部分)にそれぞれ現れている散乱光の強度が高い部分は、入射光(0次光)の強度を示している。
【0143】
上述のシミュレーションの結果から以下のことがわかった。
試験例1−1では、散乱光が光軸から遠ざかっており、試験例1−1で想定した光学素子では、試験例1−2で想定した光学素子と比較して、NA<0.8の範囲内において散乱光の強度が小さくなる傾向がある。したがって、試験例1−1の光学素子では、撮像画に画像ノイズ(輝線ノイズ)を低減することができる。
【0144】
試験例1−2では、散乱光が光軸近傍に存在しており、NA<0.8の範囲において散乱光の強度が大きくなる傾向がある。したがって、試験例1−2の光学素子では、撮像画に画像ノイズ(輝線ノイズ)が発生する。
【0145】
以上により、画像ノイズの発生を低減する観点からすると、トラックピッチ(トラック間方向の配置ピッチ)Tpを狭くすることが好ましい。
【0146】
[トラックピッチの変動量と散乱光との関係]
RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)シミュレーションにより、トラックピッチの変動量およびサブ波長構造体の配列形態と散乱光との関係について検討を行った。
【0147】
(試験例2−1)
表面に複数のサブ波長構造体が形成された光学素子を想定し、この光学素子に対して点光源からの光が照射された場合における散乱光の強度分布をシミュレーションにより求めた。
以下に、シミュレーションの条件を示す。
サブ波長構造体の配列:四方格子
トラック方向の配置ピッチP1:250nm
トラックピッチTpの中心値:250nm
トラックピッチTpの変動量の最大値:32nm
サブ波長構造体の底面形状:楕円形状
サブ波長構造体の高さ:200nm
構造体形状:放物面形状(釣鐘型)
偏光:無偏光
屈折率:1.5
【0148】
(試験例2−2)
トラックピッチTpの変動量の最大値を△Tp=8nmとしたこと以外は、試験例2−1の場合と同様にして、散乱光の強度分布をシミュレーションにより求めた。
【0149】
(試験例2−3)
トラックピッチTpの変動量の最大値を△Tp=8nmとするとともに、トラックをウォブルさせたこと以外は、試験例2−1の場合と同様にして、散乱光の強度分布をシミュレーションにより求めた。
【0150】
図19Aおよび図19Bは、試験例2−1のシミュレーション結果を示す図である。図20Aおよび図20Bは、試験例2−2のシミュレーション結果を示す図である。図21Aおよび図21Bは、試験例2−3のシミュレーション結果を示す図である。図19A、図20Aおよび図21Aでは、縦横軸(XY軸):NA=±1.5の範囲内における散乱光の強度分布を示している。なお、図19A、図20Aおよび図21Aの中心(光軸部分)にそれぞれ現れている散乱光の強度が高い部分は、入射光(0次光)の強度を示している。なお、試験例2−1のヘイズ値は、実測により得られるヘイズ値(モスアイ分のヘイズ値)に近いため、試験例2−1〜試験例2−3のシミュレーションで想定したモデルは、妥当なものであると判断できる。
【0151】
試験例2−1〜2−3について、入射光の光量の合計ILaに対する帯状散乱光の光量の合計ILbの比率((ILb/ILa)×100[%])を以下に示す。
試験例2−1:0.2%(入射光の強度の合計Iaに対する散乱光の強度の合計Ibの割合(Ib/Ia):1/500)
試験例2−2:0.02%(入射光の強度の合計Iaに対する散乱光の強度の合計Ibの割合(Ib/Ia):1/5000)
試験例2−3:0.001%(入射光の強度の合計Iaに対する散乱光の強度の合計Ibの割合(Ib/Ia):1/105
【0152】
上述のシミュレーションの結果から以下のことがわかった。
試験例2−1のシミュレーション結果から、トラックピッチTpの変動量ΔTpの最大値が大きいと、輝線ノイズが発生することがわかった。
【0153】
試験例2−2のシミュレーション結果から、トラックピッチTpの変動量ΔTpの最大値を小さくすることにより、輝線ノイズの発生を抑制することができ、トラックピッチの変動量を高精度化することによって、輝線ノイズの発生を抑制する効果があることがわかった。
【0154】
試験例2−3のシミュレーション結果から、トラックピッチTpの変動量ΔTpの最大値を小さくするとともに、トラックを非周期的周波数でウォブルさせて変動させることで、輝線ノイズの発生をさらに抑制できることがわかった。
【0155】
以上により、輝線ノイズの発生を抑制する観点からすると、入射光の強度に対する散乱光の強度の割合は、好ましくは1/500未満、より好ましくは1/5000以下、さらに好ましくは1/105以下の範囲内である。
【0156】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0157】
例えば、本技術の実施形態に係る光学素子は、撮像装置だけではなく、顕微鏡や露光装置などにも適用が可能である。
【0158】
また、例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0159】
また、上述の各実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0160】
また、上述の実施形態では、撮像装置に本技術を適用する例について説明したが、本技術はこの例に限定されるものではなく、複数のサブ波長構造体が表面(入射面および出射面の少なくとも一方)に形成された光学素子を有する光学系またはそれを備えた光学装置に対して本技術は適用可能である。例えば、本技術は顕微鏡や露光装置などにも適用が可能である。
【0161】
また、上述の実施形態では、デジタル式の撮像装置に本技術を適用する場合を例として説明したが、アナログ式の撮像装置に対しても本技術は適用可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 反射防止機能付光学素子
2 半透過型ミラー
3、12 構造体
4 基底層
11 ロール原盤
13 レジスト層
14 レーザー光
潜像 16
100 撮像装置
101 筐体
102 撮像光学系
111 レンズ
112 撮像素子
1 撮像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブ波長構造体が形成された表面を有する光学素子と、
上記光学素子を介して光を受光する撮像領域を有する撮像素子と
を備え、
上記光学素子の表面は、入射光を散乱し、散乱光を発生させる1または2以上の区画を有し、
上記散乱光のうち上記撮像領域に到達する成分の総和が、上記撮像領域外に到達する成分の総和より小さい光学系。
【請求項2】
上記散乱光の強度分布が、異方性を有する請求項1記載の光学系。
【請求項3】
上記散乱光の強度分布が、開口数NAによって異なる請求項2記載の光学系。
【請求項4】
上記散乱光の強度分布の単位立体角当たりの強度が、開口数NA>0.8の範囲よりも開口数NA≦0.8の範囲にて小さい請求項3記載の光学系。
【請求項5】
上記撮像領域における上記散乱光の強度分布の最大値が、上記撮像領域の外側の領域における上記散乱光の強度分布の最大値より小さい請求項1記載の光学系。
【請求項6】
上記複数のサブ波長構造体が、上記光学素子の表面において複数の列をなすように配列され、
上記区画では、上記列のピッチPが基準ピッチPと比して変化している請求項1記載の光学系。
【請求項7】
上記列の形状が、直線状または円弧状である請求項6記載の光学系。
【請求項8】
上記複数のサブ波長構造体が、格子パターンを形成し、
上記格子パターンが、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種である請求項7記載の光学系。
【請求項9】
上記撮像領域が、対向する2組の辺を有する矩形状を有し、
上記列の方向と、上記2組の辺のうちの一方の組の辺の延在方向とが平行である請求項6記載の光学系。
【請求項10】
上記2組の辺が、対向する1組の短辺と、対向する1組の長辺とからなり、
上記列の方向と、上記長辺の延在方向とが平行である請求項9記載の光学系。
【請求項11】
上記サブ波長構造体が、長軸と短軸とを持つ楕円形状の底面を有する錐体であり、
上記底面の長軸の方向が、上記列の方向と一致する請求項10記載の光学系。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載された光学系を備える撮像装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載された光学系を備える光学機器。
【請求項14】
複数のサブ波長構造体が形成された表面を備え、
上記サブ波長構造体が格子パターンを形成し、
上記サブ波長構造体が上記表面において複数列のトラックをなすように配置され、
上記表面は、入射光の一部を散乱し、
上記散乱した光の強度の合計が、上記入射光の強度の合計に対して1/500未満である光学素子。
【請求項15】
上記トラックのピッチTpが、上記トラック間で変動している請求項14記載の光学素子。
【請求項16】
上記格子パターンが、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種である請求項14記載の光学素子。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載された光学素子を作製するための原盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−203018(P2012−203018A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64500(P2011−64500)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】