説明

光学素子およびその形成方法、光学素子アレイ、表示装置、電子機器

【課題】十分な絶縁性を確保しつつ、低電圧で正確な駆動を実現することができる光学素子を提供する。
【解決手段】対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板における第2の基板と対向する内面に、第1の方向において隣り合うように立設すると共に第1の方向と直交する第2の方向へ延在する一対の壁部と、その一対の壁部の壁面に、互いに対向し、かつ第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、第2の基板の、第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、第1の基板と第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロウェッティング現象を利用した光学素子および光学素子アレイ、それらを備えた表示装置および電子機器、ならびにそのような光学素子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロウェッティング現象(電気毛管現象)により光学作用を発揮する液体光学素子が開発されている。エレクトロウェッティング現象とは、電極と導電性を有する液体(極性液体)との間に電圧を印加した場合に、その電極の表面と液体との界面エネルギーが変化し、液体の表面形状が変化する現象をいう。
【0003】
本出願人は、このエレクトロウェッティング現象を利用した複数の液体光学素子をレンチキュラーレンズとして備えた立体画像表示装置を、既に提案している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、液体光学素子では、エレクトロウェッティング現象を利用するため、電極の表面が撥水性の絶縁膜で覆われている。この絶縁膜には、所望の絶縁性を確保できること(リーク電流を十分に抑制すること)と、極性液体における所望の接触角が得られることとが要求される。
【0006】
また、最近では、このような液体光学素子に対し、より低い印加電圧での駆動が求められている。そのためには、絶縁膜についてその誘電率を上げること、およびその厚さを低減すること、の2点が考えられる。しかしながら、液体光学素子の小型化により、電極を覆う絶縁膜を薄くかつ均一に形成することが困難となりつつある。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、十分な絶縁性を確保しつつ、正確に動作可能な光学素子および光学素子アレイ、ならびにそれらを備えた表示装置および電子機器を提供することにある。また、本開示の第2の目的は、そのような光学素子の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の光学素子は、対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板における第2の基板と対向する内面に、第1の方向において隣り合うように立設すると共に第1の方向と異なる第2の方向へ延在する一対の壁部と、一対の壁部の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、第2の基板の、第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、第1の基板と第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備えるものである。
【0009】
本開示の光学素子アレイは、対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板の、第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を第1の方向に並ぶ複数の光学素子ごとに区切るように第1の方向と異なる第2の方向へ延在する隔壁と、隔壁の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、記第2の基板の、第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、第1の基板と第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体とを備えるものである。
【0010】
本開示の表示装置は、表示手段と、上記した本開示の光学素子アレイとを備える。本開示の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。表示手段は、例えば、複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するディスプレイである。
【0011】
本開示の光学素子の形成方法は、第1の基板の表面に、第1の方向において隣り合うように立設すると共に第1の方向と異なる第2の方向へ延在する一対の壁部を形成する工程と、壁部の壁面と第1の基板の表面とを連続的に覆うようにレジスト層を形成する工程と、壁部の壁面を覆うレジスト層のうち第1の基板の表面から離間した領域を覆う部分を選択的に除去する工程と、壁部の壁面におけるレジスト層が除去された領域を覆うように互いに対向する第1および第2の電極を形成したのち、残存するレジスト層の他の部分を除去する工程と、第1および第2の電極をそれぞれ覆うように絶縁膜を形成する工程と、一方の面に第3の電極が設けられた第2の基板を、第3の電極が第1の基板と対向するように配置する工程と、第1の基板と第2の基板との間に、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体を封入する工程とを含むものである。
【0012】
本開示の光学素子、光学素子アレイ、表示装置、電子機器および光学素子の形成方法では、隔壁(壁部)の壁面に、複数の素子領域の底面となる第1の基板の表面から離間するように第1および第2の電極を設けるようにした。これにより、第1の基板の表面と接するように第1および第2の電極を形成した場合と比較し、第1および第2の電極を覆う絶縁膜の厚さのばらつきが、より低減される。第1の基板の表面と接するように第1および第2の電極を形成した場合には、隔壁(壁部)と第1の基板の表面とが交わる隅部分において、絶縁膜を構成する材料が第1および第2の電極に付着しにくいからである。
【発明の効果】
【0013】
本開示の光学素子および光学素子アレイでは、第1および第2の電極を覆う絶縁膜の厚さのばらつきが低減されているので、厚さが薄くとも十分な絶縁性を確保しつつ、低電圧で正確な駆動を実現することができる。このため、この光学素子アレイを備えた本開示の表示装置および電子機器によれば、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。また、本開示の光学素子の形成方法では、マスクを使用しないのでアライメント誤差に起因する製造誤差を回避することができる。よって、例えば第1の基板や壁部を温度変化などによる寸法変化の大きな樹脂によって形成した場合であっても、上記の光学素子を高い寸法精度で形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の一実施の形態に係る立体表示装置の構成を表す概略図である。
【図2】図1に示した波面変換偏向部の要部構成を表す斜視図である。
【図3】図1に示した波面変換偏向部の要部構成を表す平面図である。
【図4】図3に示した波面変換偏向部のIV- IV線に沿った断面図である。
【図5】図3に示した波面変換偏向部のV-V線に沿った断面図である。
【図6】図3に示した液体光学素子の動作を説明するための概念図である。
【図7】図3に示した液体光学素子の動作を説明するための他の概念図である。
【図8】図1に示した波面変換部の製造方法における一工程を説明するための斜視図である。
【図9】図8に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図10】図9に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図11】図10に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図12】図11に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図13】図12に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図14】図13に続く一工程を説明するための断面模式図である。
【図15】表示装置を用いた電子機器としてのテレビジョン装置の構成を表す斜視図である。
【図16】図1に示した波面変換偏向部の他の使用例を説明するための断面図である。
【図17】変形例としての波面変換部の斜視構成を表す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(図1〜図14):立体表示装置
2.適用例(図15):表示装置の適用例(電子機器)
【0016】
<立体表示装置の構成>
まず、図1を参照して、本開示における一実施の形態としての液体光学素子アレイを用いた立体表示装置について説明する。図1は、本実施の形態の立体表示装置の、水平面内における一構成例を表す概略図である。
【0017】
図1に示したように、この立体表示装置は、光源(図示せず)の側から、画素11を複数有する表示部1と、液体光学素子アレイとしての波面変換偏向部2とを順に備えている。ここでは、光源からの光の進行方向をZ軸方向とし、水平方向をX軸方向とし、鉛直方向をY軸方向としている。
【0018】
表示部1は、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するものであり、例えばバックライトBLが照射されることにより表示画像光を射出するカラー液晶ディスプレイである。表示部1は、光源の側からガラス基板11と、それぞれ画素電極および液晶層を含む複数の画素12(12L,12R)と、ガラス基板13とが順に積層された構造を有している。ガラス基板11およびガラス基板13は透明であり、いずれか一方には例えば赤(R),緑(G),青(B)の着色層を有するカラーフィルタが設けられている。このため、画素12は、赤色を表示する画素R−12と緑色を表示する画素G−12と青色を表示する画素B−12とに分類される。この表示部1では、X軸方向においては画素R−12と、画素G−12と、画素B−12とが順に繰り返し配置される一方、Y軸方向においては同色の画素12が揃うように配置されている。さらに、画素12は、左眼用の画像を形成する表示画像光を射出するものと、右眼用の画像を形成する表示画像光を射出するものとに分類され、それらはX軸方向において交互に配置されている。図1では、左眼用の表示画像光を射出する画素12を画素12Lと表し、右眼用の表示画像光を射出する画素12を画素12Rと表す。
【0019】
波面変換偏向部2は、例えばX軸方向に隣り合う1組の画素12L,12Rに対応して設けられた1つの液体光学素子20が、X軸方向に複数配列されたアレイ状をなすものである。波面変換偏向部2は、表示部1から射出された表示画像光に対し、波面変換処理および偏向処理を行う。具体的には、波面変換偏向部2では、各画素12に対応する各液体光学素子21がシリンドリカルレンズとして機能する。すなわち、波面変換偏向部2は、全体としてレンチキュラーレンズとして機能する。これによって各画素12L,12Rからの表示画像光の波面が、鉛直方向(Y軸方向)に並ぶ一群の画素12を一単位として所定の曲率を有する波面に一括して変換される。波面変換偏向部2では、併せて、必要に応じてそれらの表示画像光を水平面内(XZ平面内)において一括して偏向することも可能となっている。
【0020】
図2〜図4を参照して、波面変換偏向部2の具体的な構成について説明する。
【0021】
図2は、波面変換偏向部2の要部を表す斜視図である。また、図3は、表示画像光の進行方向から眺めた波面変換偏光部2のXY平面における平面図である。また、図4は、図3に示したIV−IV線に沿った矢視方向の断面図である。さらに、図5は、図3に示したV−V線に沿った矢視方向の断面図である。
【0022】
図2〜図5に示したように、波面変換偏向部2は、対向配置された一対の平面基板21,22と、平面基板21における平面基板22と対向する内面21Sに立設し、接着層31を介して平面基板22を支持する側壁23および隔壁24とを備えている。波面変換偏向部2では、Y軸方向へ延在する複数の隔壁24によって区画された複数の液体光学素子20がX軸方向へ並び、全体として液体光学素子アレイを構成している。液体光学素子20は、屈折率の異なる2種の液体(極性液体29Pおよび無極性液体29N)を含み、入射光線に対して偏向や屈折などの光学的作用(すなわち、波面変換作用および偏向作用)を及ぼすものである。なお、図2および図3では、接着層31、側壁23、平面基板22、極性液体29Pおよび無極性液体29Nのほか、絶縁膜28(後出)および第3の電極27(後出)の図示を省略している。
【0023】
平面基板21,22は、例えばガラスや透明なプラスチックなど、可視光を透過する透明な絶縁材料によって構成される。平面基板21の内面21Sには、この平面基板21上の空間領域を、複数の液体光学素子20ごとに仕切る複数の隔壁24が立設している。すなわち液体光学素子20は、隣り合う隔壁24同士に挟まれた空間である素子領域20Rごとに設けられている。複数の隔壁24は各々Y軸方向へ延在していることから、液体光学素子20(素子領域20R)は、Y軸方向に並ぶ一群の表示画素12に対応して矩形状の平面形状を有している。各素子領域20Rには、それぞれ無極性液体29Nが保持されている。すなわち、無極性液体29Nは、隔壁24の存在により、隣り合う他の素子領域20Rへ移動(流出)しないようになっている。隔壁24は、極性液体29Pおよび無極性液体29Nに溶解等しない材料、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などによって構成されることが望ましい。なお、平面基板21と隔壁24とが同種の透明なプラスチック材料からなり、一体成型されたものであってもよい。また、隔壁24は、保護層35(図4参照)によって覆われていることが望ましい。後述する第1および第2の電極25,26を形成する際に受けるダメージを緩和すると共に、第1および第2の電極25,26との密着性を高めるためである。図4では、隔壁24の壁面24Sおよび上面24T、ならびに平面基板21の内面21Sの全てを覆うように保護層35が設けられているが、保護層35は、少なくとも壁面24Sと第1および第2の電極25,26との間に設けられていればよい。なお、図1〜図3、図5および後述の図6、図7では、保護層35の図示を省略している。保護層35としては、例えば、反応性イオンエッチングに耐性を示し、有機溶剤に溶解せず、かつ、第1および第2の電極25,26との密着性に優れるものであることが望ましい。そのような構成材料としては、例えば酸化ケイ素(SiOx),窒化ケイ素(SiOxNy),酸化アルミニウム(Al2 3 )および酸化タンタル(Ta2 5 )のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0024】
各隔壁24の壁面24Sには、互いに対向するように配置された第1および第2の電極25,26が保護層35を介して設けられている。第1および第2の電極25,26の構成材料としては、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電性材料のほか、銅(Cu)などの金属材料、あるいは炭素(C)もしくは導電性高分子などの他の導電性材料が適用可能である。第1および第2の電極25,26は、いずれも帯状をなしており、Y軸方向において隔壁24の一端から他端に至るまで分離部32,33を除いて途切れることなく連続している。すなわち、第1の電極25は、分離部32において2つの部分25Aと部分25Bとに分離されている。第2の電極26は、分離部33において2つの部分26Aと部分26Bとに分離されている。なお、以下では、部分25A,25Bについては第1の電極25A,25Bと記載し、部分26A,26Bについては第2の電極26A,26Bと記載する。分離部32,33は、いずれも、例えばレーザビームを照射することによって形成され、隔壁24および平面基板21の表面の一部をも除去された凹部である。分離部32は、Y軸方向における隔壁24の一方の端部近傍に設けられており、分離部33は、Y軸方向における隔壁24の他方の端部近傍に設けられている。素子領域20Rのうち、これら分離部32と分離部33との間の領域、すなわち第1の電極25Aと第2の電極26Bとが重なり合う領域(対向する領域)が有効領域20Zとなっている。有効領域20Zとは、表示部1から射出された表示画像光に対し、波面変換処理および偏向処理を行うことのできる領域である。
【0025】
第1および第2の電極25,26は、隔壁24の壁面の全てを覆っているわけではなく、壁面の下方部分、すなわち平面基板21の近傍には設けられていない。このため、第1および第2の電極25,26は、平面基板21と接することなく、離間して設けられている。但し、各素子領域20RのY軸方向における両端部分には、接続部34(34A,34B)が、平面基板21の表面と、隔壁24の壁面の下方部分とを覆うように設けられている。接続部34A,34Bには、例えばスクリーン印刷法により形成された銀ペースト34Hがそれぞれ設けられており、外部電源からの導線と接続され、電圧供給が可能となっている。よって、接続部33Aならびに、これと接する第1の電極25Aおよび第2の電極26Aは、相互に導通した状態となっている。同様に、接続部33Bならびに、これと接する第1の電極25Bおよび第2の電極26Bは、相互に導通した状態となっている。第1および第2の電極25,26は、例えば平面基板21の裏面に設けられた制御部(図示せず)によってそれぞれ所定の大きさの電位に設定できるようになっている。
【0026】
第1および第2の電極25,26は、絶縁膜28によって密に覆われている。絶縁膜28は、第1および第2の電極25,26だけでなく、隔壁24および平面基板21を全面的に覆うように形成されていてもよい。この絶縁膜28は、極性液体29Pに対して疎水性(撥水性)を示す(より厳密には無電界下において無極性液体29Nに親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料からなるものである。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、あるいはシリコーンなどが挙げられる。但し、第1の電極25と第2の電極26との電気的絶縁性をより高めることを目的として、第1および第2の電極25,26と絶縁膜28との間に例えばスピン・オン・グラス(SOG)などからなる他の絶縁膜を設けるようにしてもよい。なお、隔壁24の上端もしくはそれを覆う絶縁膜28は、平面基板22および第3の電極27と離間していることが望ましい。
【0027】
平面基板22の、平面基板21と対向する内面22Sには、第3の電極27が設けられている。第3の電極27は、例えばITOやZnO、AZO,GZO,TZOなどの透明な導電材料によって構成されており、接地電極として機能する。
【0028】
一対の平面基板21,22および隔壁24などによって完全に密閉された空間領域には、無極性液体29Nおよび極性液体29Pが密封されている。無極性液体29Nおよび極性液体29Pは、その閉空間において互いに溶解せずに分離して存在し、界面IFを形成している。無極性液体29Nおよび極性液体29Pは透明であることから、界面IFを透過する光は、その入射角と、無極性液体29Nおよび極性液体29Pの屈折率とに応じて屈折する。
【0029】
無極性液体29Nは、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。無極性液体29Nは、第1の電極25Aと第2の電極26Bとの間に電圧を印加しない場合において、平面基板21(もしくはそれを覆う絶縁膜28)の表面を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0030】
一方、極性液体29Pは極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。極性液体29Pに電圧を印加すると、素子領域20Rにおいて対向する内表面28A,28Bに対する濡れ性(極性液体29Pと内表面28A,28Bとの接触角)が無極性液体29Nと比べて大きく変化する。極性液体29Pは、接地電極としての第3の電極27と接している。
【0031】
ここで、X軸方向に並ぶ隔壁24の間隔(より厳密には、X軸方向において隣り合う隔壁24を覆う絶縁膜28同士の間隔W1(図3および図4参照))は、以下の式(1)で表される毛管長K-1以下の長さであるとよい。そうすることで、無極性液体29Nおよび極性液体29Pが、安定して初期位置(図4に示した位置)に保持される。これは、無極性液体29Nおよび極性液体29Pが隔壁24を覆う絶縁膜28と接することにより、その接触界面における界面張力が無極性液体29Nおよび極性液体29Pに対し作用するからである。ここでいう毛管長K-1とは、無極性液体29Nと極性液体29Pとの界面に生じる界面張力に対して重力の影響を全く無視できる最大の長さをいう。
【0032】
Κ-1 ={Δγ/(Δρ×g)}0.5 ……(1)
但し、
Κ-1 :毛管長(mm)
Δγ:極性液体と無極性液体との界面張力(mN/m)
Δρ:極性液体と無極性液体との密度差(g/cm3
g:重力加速度(m/s2
【0033】
各液体光学素子20では、第1および第2の電極25,26の間に電圧が印加されていない状態(第1および第2の電極25,26の電位がいずれも零である状態)では、図4に示したように、界面IFは、極性液体29Pの側から無極性液体29Nへ向けて凸の曲面をなしている。このときの界面IFの曲率はY軸方向において一定であり、各液体光学素子20は1つのシリンドリカルレンズとして機能する。また、界面IFの曲率はこの状態(第1および第2の電極25,26の間に電圧を印加しない状態)が最大となる。内表面28Aに対する無極性液体29Nの接触角θ1、および内表面28Bに対する無極性液体29Nの接触角θ2は、例えば絶縁膜28の材料種を選択することによって調整することができる。ここで、無極性液体29Nが極性液体29Pよりも大きな屈折率を有していれば、液体光学素子20は負の屈折力を発揮する。これに対し、無極性液体29Nが極性液体29Pよりも小さな屈折率を有していれば、液体光学素子20は正の屈折力を発揮する。例えば、無極性液体29Nが炭化水素系材料またはシリコンオイルであり、極性液体29Pが水または電解質水溶液であれば、液体光学素子20が負の屈折力を発揮することとなる。
【0034】
第1および第2の電極25A,26Bの間に電圧が印加されると界面IFの曲率が小さくなり、ある一定以上の電圧を印加すると例えば図6(A)〜6(C)に表したように平面となる。なお、図6(A)は、第1の電極25Aの電位(V1とする)と第2の電極26Bの電位(V2とする)とが互いに等しい(V1=V2)場合を示している。この場合、例えば接触角θ1,θ2がいずれも直角(90°)となる。このとき、液体光学素子20へ入射して界面IFを通過した入射光は、界面IFにおいて収束、発散もしくは偏向などの光学作用を受けることなく、そのまま液体光学素子20から射出する。
【0035】
電位V1と電位V2とが異なる場合(V1≠V2)には、例えば図6(B),6(C)に表したように、X軸およびZ軸に対して傾斜した平面(Y軸に対しては平行な面)となる(θ1≠θ2)。具体的には、電位V1が電位V2よりも大きい場合(V1>V2)、図6(B)に示したように接触角θ1が接触角θ2よりも大きくなる(θ1>θ2)。反対に、電位V1よりも電位V2が大きいと(V1<V2)、図6(C)に示したように、接触角θ1よりも接触角θ2が大きくなる(θ1<θ2)。これらの場合(V1≠V2)、例えば第1の電極25A,26Bと平行に進行して液体光学素子20へ入射した入射光は、界面IFにおいてXZ平面内で屈折し、偏向される。したがって、電位V1および電位V2の大きさを調整することで、入射光をXZ平面内の所定の向きへ偏向可能となる。
【0036】
なお、上記の現象(電圧の印加による接触角θ1,θ2の変化)は以下のように生じるものと推察される。すなわち、電圧印加により、内表面28A,28Bに電荷が蓄積され、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体29Pが絶縁膜28へ引き寄せられる。すると、極性液体29Pが内表面28A,28Bと接触する面積を拡大する一方、無極性液体29Nが内表面28A,28Bと接触する部分から極性液体29Pによって排除されるように移動(変形)し、結果として界面IFが平面に近づくこととなる。
【0037】
また、電位V1および電位V2の大きさの調整により界面IFの曲率が変わるようになっている。例えば、電位V1,V2(V1=V2とする)を、界面IFが水平面となる場合の電位Vmaxよりも低い値とすれば、例えば図7(A)に表したように、電位V1,V2が零の場合の界面IF0(破線で表示)よりも曲率の小さな界面IF1(実線で表示)が得られる。このため、界面IFを透過する光に対して発揮する屈折力は、電位V1および電位V2の大きさを変えることで調整可能である。すなわち、液体光学素子20は、可変焦点レンズとして機能する。さらに、その状態で電位V1と電位V2とが互いに異なる大きさ(V1≠V2)となれば、界面IFは適度な曲率を有しつつ、傾斜した状態となる。例えば電位V1のほうが大きい(V1>V2)場合には、図7(B)において実線で表した界面IFaが形成される。一方、電位V2のほうが大きい(V1<V2)場合には、図7(B)において破線で表した界面IFbが形成される。したがって、電位V1および電位V2の大きさを調整することで、液体光学素子20は、入射光に対して適度な屈折力を発揮しつつ、その入射光を所定の向きへ偏向することが可能である。なお、図7(A),7(B)では、無極性液体29Nが極性液体29Pよりも大きな屈折率を有しており、液体光学素子20が負の屈折力を発揮する場合に、界面IF1,IFaを形成したときの入射光の変化を表している。
【0038】
次に、波面変換偏向部2の製造方法について、図8に示した斜視図および図9〜図14に表した断面模式図を参照して説明する。なお、図9〜図14は、XZ平面における断面図である。
【0039】
まず、平面基板21を用意したのち、図8に示したように、その一方の面(表面21S)の上の所定位置に隔壁24を複数形成する。これにより、隔壁24によって仕切られた複数の素子領域20Rが形成される。具体的には、例えばスピンコーティング法により所定の樹脂を内面21Sの上にできるだけ均一な厚みとなるように塗布したのち、フォトリソグラフィ法を利用して選択的な露光を行うことにより、パターニングを行う。あるいは、所定形状の金型を使用した一括成型により、同種の材料からなる一体化した平面基板21および隔壁24を形成するようにしてもよい。さらには、射出成型、熱プレス成型、フィルム材を用いた転写成型または2P(Photoreplication Process)法などによりそれらを形成することも可能である。
【0040】
次に、図9に示したように、隔壁24を形成した平面基板21の全体を覆うように、例えばスパッタリング法により所定材料からなる絶縁層35を形成する。そののち、絶縁層35によって覆われた隔壁24の壁面24Sと、平面基板21の表面21Sとを連続的に覆うようにレジスト層Rを形成する。具体的には、例えば所定の有機溶剤に溶解する紫外線硬化樹脂をディスペンサにより素子領域20Rに所定量を滴下し、スピンコート法により全体に広げるように塗布したのち、紫外線を照射してレジストを硬化させるようにする。なお、レジスト層Rの構成材料としては、例えばケミシールU−451M(ケミテック株式会社製)などが好適である。
【0041】
レジスト層Rを形成したのち、図10に示したように、エッチング処理(RIEなど)によりレジスト層Rを除去し、壁面24Sの上部を露出させる。そののち、図11に示したように、全体を覆うように金属膜MLを形成する。ここでは、例えば直流スパッタリング法によりITOからなる金属膜MLを形成した。
【0042】
続いて、レジスト層Rを溶解可能な有機溶剤(アセトンや酢酸エチルなど)に浸漬し、必要に応じて超音波の振動を加えることにより、残存していたレジスト層Rを溶解除去する。その際、図12に示したように、レジスト層Rを覆っていた一部の金属膜MLをも除去される。ここで、残存していたレジスト層Rは、金属膜MLを形成した際のイオンの衝突によるダメージなどによって表面が粗面化しているため、有機溶剤の浸透がし易い状態となっている。さらに、メタルマスクなどを用いて選択的に金属膜を形成することで接続部34A,34B(図2,図3を参照)を形成したのち、化学機械研磨(CMP)法などにより、絶縁層35を介して隔壁24の上部を覆っていた金属膜MLを除去する。これにより、図13に示したように、隔壁24の壁面24Sの下部以外の部分を覆い、かつ互いに絶縁された第1および第2の電極25,26が形成される。なお、CMP法に限らず、単なる機械研磨によって金属膜MLの選択的な除去を行うようにしてもよい。そののち、例えば第1および第2の電極25,26の表面の一部にレーザビームを照射することにより分離部32,33を形成する(図2)。ここでは、短パルス幅(例えば10psec程度)のレーザビームを用いるとよい。そのようなレーザビームであれば、熱拡散が小さく、隔壁24などに与える熱エネルギーを抑えることができるからである。その際、レーザビーム照射によってIn(インジウム)やSn(すず)などの導電性物質が飛散すると短絡が生ずる可能性がある。そのため、レーザビーム照射を行う場合には、大気圧未満の真空状態下で行うこと、排気を行うこと、ガスを吹き付けることなどによって分離部32,33およびその近傍に、除去したダストが再付着しないように留意すべきである。分離部32,33の形成により、第1の電極25が部分25Aと部分25Bとに分離され、第2の電極26が部分26Aと部分26Bとに分離される。そののち、例えばスクリーン印刷法により、銀ペースト34Hを形成する。
【0043】
次に、接続部34A,34Bを除く領域を覆うように、例えば真空蒸着法により絶縁膜28を形成する(図14)。ここで、第1および第2の電極25,26は、隔壁24の壁面24Sの下部には形成されておらず、平面基板21の表面から離間するように形成されている。このため、絶縁膜28のうち、第1および第2の電極25,26を覆う部分はほぼ一定の厚さをなる。
【0044】
続いて、無極性液体29Nを、隔壁24で仕切られた空間に注入もしくは滴下する。そののち、平面基板22に第3の電極27を設けたものを用意し、平面基板21と平面基板22とが一定の間隔となるように対向配置する。その際、平面基板21と平面基板22とが重なり合う領域の外縁に沿って接着層31を設け、その接着層31を介して平面基板22と側壁23および隔壁24とを固定するようにする。なお、接着層31の一部には注入口を形成しておく。最後に、その注入口から、平面基板21、側壁23、隔壁24、および平面基板22によって囲まれた空間に極性液体29Pを充填したのち、注入口を封止する。以上の手順により、応答性に優れた液体光学素子20を複数備えた波面変換偏向部2を簡便に製造することができる。
【0045】
<立体表示装置の動作>
この立体表示装置では、図1に示したように、表示部1に映像信号が入力されると、表示画素12Lから左眼用の表示画像光I−Lが射出されると共に表示画素12Rから右眼用の表示画像光I−Rが射出される。表示画像光I−L,I−Rは、いずれも液体光学素子20に入射する。液体光学素子20では、その焦点距離が、例えば表示画素12L,12Rと界面IFとの間の屈折率を空気換算した距離となるように、適切な値の電圧を第1および第2の電極25,26に印加する。なお、観察者の位置に応じて、液体光学素子20の焦点距離を前後させるようにしてもよい。液体光学素子20における無極性液体29Nと極性液体29Pとの界面IFが形成するシリンドリカルレンズの作用により、表示部1の各表示画素12L,12Rから射出された表示画像光I−L,I−Rの射出角度が選択される。そのため、図1に示したように、表示画像光I−Lは観察者の左眼10Lに入射し、表示画像光I−Rは観察者の右眼10Rに入射する。これにより、観察者は立体映像を観察することができる。
【0046】
また、液体光学素子20において界面IFを平坦面(図6(A)参照)とし、表示画像光I−L,I−Rに対する波面変換を行わないことにより、高解像度な二次元画像の表示も可能となる。
【0047】
<立体表示装置の効果>
このように、本実施の形態の波面変換偏向部2では、第1および第2の電極25,26を、平面基板21の表面21Sから離間するように形成することで、隔壁24の壁面24Sの下部には形成しないようにした。そのため、平面基板21の表面21Sと接するように第1および第2の電極25,26を形成した場合と比較し、第1および第2の電極25,26を覆う部分の絶縁膜28の厚さのばらつきが、より低減される。表面21Sと接するように第1および第2の電極25,26を形成すると、以下のような弊害があるからである。例えばスパッタリング法により絶縁膜28を形成する場合、表面21Sと第1および第2の電極25,26とが交わる隅の部分において、絶縁膜28を構成する材料が第1および第2の電極25,26に付着しにくい。このため、結果として隅部分の第1および第2の電極25,26を覆う絶縁膜28が、他の部分と比べて薄くなってしまう。そこで、本実施の形態では、上述したように第1および第2の電極25,26を、壁面24Sと表面21Sとが交差する隅部分およびその近傍には形成せず、表面21Sから離間した位置に形成するようにした。そのため、第1および第2の電極25,26の表面に付着する絶縁膜28の厚さの均一化を図ることができる。これにより、各液体光学素子20では、十分な絶縁性を確保しつつ絶縁膜28の薄型化により駆動電圧を低減し、かつ界面形状の安定した変化を正確に再現することができる。したがって、液体光学素子20を備えた立体表示装置によれば、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。また、本実施の形態では、そのような波面変換偏向部2における第1および第2の電極25,26を、マスクを使用したフォトリソグラフィを用いることなく形成するようにした。このため、マスクと隔壁24とのアライメントが不要となり、アライメントに起因する配置位置や寸法の製造誤差を回避することができる。よって、例えば平面基板21や隔壁24を、温度変化などによる寸法変化の大きな樹脂によって形成した場合であっても、液体光学素子20を高い寸法精度で形成することができる。
【0048】
また、本実施の形態の波面変換偏向部2では、接続部34A,34Bを、各素子領域20Rの底面となる平面基板21の表面21Sを覆うように形成した。これにより、外部電源等との導通を得るための導線などとの接続が容易に行うことができる。ここで、分離部32,33によって第1および第2の電極25,26をそれぞれ2つの部分に確実に分離するようにしたので、有効領域20Zにおいて対向する2つの電極(第1および第2の電極25A,26B)の電気的絶縁が確実に行われる。すなわち、第1および第2の電極25A,26Bの各電位を独立して制御することができる。
【0049】
<表示装置の適用例(電子機器)>
次に、上記した表示装置の適用例について説明する。
【0050】
本技術の表示装置は、各種用途の電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されない。この表示装置は、例えば、以下の電子機器に搭載可能である。ただし、以下で説明する電子機器の構成はあくまで一例であるため、その構成は適宜変更可能である。
【0051】
図15は、テレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、例えば、表示装置としての映像表示画面部200を備えている。映像表示画面部200は、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含むものである。
【0052】
本技術の表示装置は、図15に示したテレビジョン装置のほか、例えばタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)、ノート型PC、モバイルフォン、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラあるいはカーナビゲーションシステムにおける映像表示部分として用いることができる。
【0053】
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、波面変換偏向部2における液体光学素子20により、集光もしくは発散作用と、偏向作用との双方を発揮させるようにした。しかしながら、波面変換部と偏向部とを個別に設け、集光もしくは発散作用と、偏向作用とを別々のデバイスによって表示画像光に付与するようにしてもよい。
【0054】
また、図16に示したように、1組の表示画素12L,12Rについて複数の液体光学素子20を対応させ、それら複数の液体光学素子20を組み合わせて1つのシリンドリカルレンズ(フレネルレンチキュラーレンズ)として機能させるようにしてもよい。なお、図16では、液体光学素子20A,20B,20Cにより、1つのシリンドリカルレンズを構成する例を示している。
【0055】
また、上記実施の形態では、隔壁24の壁面24Sが平面基板21の表面21Sに対して垂直な場合について例示したが、本技術では、例えば図17に示した変形例のように、壁面24Sは表面21Sに対して傾斜した斜面であってもよい。図17は、図4の一部に対応する斜視構成を表す電子顕微鏡写真である。この変形例のように、壁面24Sが傾斜し、隔壁24の幅がその上面に近づくほど次第に狭くなることで、隔壁24を成型により作製する際、金型との分離が円滑に行われ、製造容易性が向上する。壁面24Sの傾斜角は、平面基板21の表面21Sと垂直な方向から例えば5°程度である。なお、図17は、金属膜MLを形成したのち、壁面24Sの下部および平面基板21の表面21Sを覆うレジスト層Rを選択的に除去した製造途中の段階の構造を表している。このため、壁面24Sの上部を覆う第1および第2の電極25,26となる部分と、隔壁24の上面を覆う部分とを含む金属膜MLが形成された状態となっている。図17に示された構造は、酸素ガスのみを50sccmで導入し、20Paの圧力で15分に亘ってRIEを行うことでレジスト層Rを選択的に除去したのち、DCスパッタリング法によりITOからなる金属膜MLを約300nmの厚さで形成したものである。なお、スパッタリングは、SnO2 を5重量%含むITOのターゲットを使用し、電力を300W、アルゴンガス流量を19.6sccm、酸素ガス流量を0.4sccm、混合ガスの圧力を0.3Paとして実施した。
【0056】
また、上記実施の形態では、2次元画像生成手段(表示部)としてバックライトを使用するカラー液晶ディスプレイを例示したが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば有機EL素子を用いたディスプレイやプラズマディスプレイであってもよい。
【0057】
また、本技術の液体光学素子は、立体表示装置に限定して適用されるものではなく、光学的作用を必要とする種種のデバイスへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…表示部、11,13…ガラス基板、12(12L,12R)…画素、2…波面変換偏向部、20…液体光学素子、20A…素子領域、20Z…有効領域、21,22…平面基板、23…側壁、24…隔壁、25(25A,25B)…第1の電極、26(26A,26B)…第2の電極、27…第3の電極、28…絶縁膜、29P…極性液体、29N…無極性液体、31…接着層、32,33…分離部、34(34A,34B)…接続部、35…保護層、IF…界面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における前記第2の基板と対向する内面に、第1の方向において隣り合うように立設すると共に前記第1の方向と異なる第2の方向へ延在する一対の壁部と、
前記一対の壁部の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に前記第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備えた光学素子。
【請求項2】
前記第1の電極を2つに分離する第1の分離部と、
前記第2の電極を2つに分離する第2の分離部と
をさらに備えた
請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1の分離部は、前記第2の方向における前記隔壁の一方の端部に設けられ、
前記第2の分離部は、前記第2の方向における前記隔壁の他方の端部に設けられている
請求項2記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1および第2の分離部は、レーザビームの照射により形成された凹部である
請求項2記載の光学素子。
【請求項5】
前記凹部は、前記隔壁から前記第1の基板に至るまで連続したものである
請求項4記載の光学素子。
【請求項6】
前記壁部の壁面と前記第1および第2の電極との間に保護層を有する
請求項1記載の光学素子。
【請求項7】
前記保護層は、酸化ケイ素(SiOx),窒化ケイ素(SiOxNy),酸化アルミニウム(Al2 3 )および酸化タンタル(Ta2 5 )のうちの少なくとも1種を含んでなる
請求項6記載の光学素子。
【請求項8】
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を第1の方向に並ぶ複数の光学素子ごとに区切るように前記第1の方向と異なる第2の方向へ延在する隔壁と、
前記隔壁の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に前記第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を備えた光学素子アレイ。
【請求項9】
表示手段と、光学素子アレイとを備えた表示装置であって、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を第1の方向に並ぶ複数の光学素子ごとに区切るように前記第1の方向と異なる第2の方向へ延在する隔壁と、
前記隔壁の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に前記第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を含む
表示装置。
【請求項10】
表示手段と光学素子アレイとを有する表示装置を備えた電子機器であって、
前記光学素子アレイは、
対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板と対向する内面に立設し、この第1の基板上の領域を第1の方向に並ぶ複数の光学素子ごとに区切るように前記第1の方向と異なる第2の方向へ延在する隔壁と、
前記隔壁の壁面に、互いに絶縁されて対向配置されると共に前記第1の基板から離間して設けられた第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う絶縁膜と、
前記第2の基板の、前記第1の基板と対向する内面に設けられた第3の電極と、
前記第1の基板と前記第3の電極との間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体と
を含む
電子機器。
【請求項11】
第1の基板の表面に、第1の方向において隣り合うように立設すると共に前記第1の方向と異なる第2の方向へ延在する一対の壁部を形成する工程と、
前記壁部の壁面と、前記第1の基板の表面とを連続的に覆うようにレジスト層を形成する工程と、
前記壁部の壁面を覆う前記レジスト層のうち、前記第1の基板の表面から離間した領域を覆う部分を選択的に除去する工程と、
前記壁部の壁面における前記レジスト層が除去された領域を覆うように互いに対向する第1および第2の電極を形成したのち、残存する前記レジスト層の他の部分を除去する工程と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆うように絶縁膜を形成する工程と、
一方の面に第3の電極が設けられた第2の基板を、前記第3の電極が前記第1の基板と対向するように配置する工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に、互いに異なる屈折率を有する極性液体および無極性液体を封入する工程と
を含む光学素子の形成方法。
【請求項12】
前記壁部を形成したのち前記レジスト層を形成する前に、前記壁部の壁面を覆うように保護層を形成する工程を含む
請求項11記載の光学素子の形成方法。
【請求項13】
前記保護層を、酸化ケイ素(SiOx),窒化ケイ素(SiOxNy),酸化アルミニウム(Al2 3 )および酸化タンタル(Ta2 5 )のうちの少なくとも1種により形成する
請求項12記載の光学素子の形成方法。
【請求項14】
前記第1の基板と前記壁部とを、樹脂を用いて一体的に形成する
請求項11記載の光学素子の形成方法。
【請求項15】
前記レジスト層を、前記壁部の壁面と前記第1の基板の表面とを連続的に覆うように紫外線硬化型レジストを塗布したのち紫外線照射および加熱処理により硬化させて形成し、
前記電極をスパッタリング法により形成する
請求項11記載の光学素子の形成方法。
【請求項16】
前記レジスト層の他の部分を、有機溶剤により溶解除去する
請求項15記載の光学素子の形成方法。
【請求項17】
前記レジスト層のうちの前記第1の基板の表面から離間した領域を覆う部分を、反応性イオンエッチング(RIE)法により選択的に除去する
請求項11記載の光学素子の形成方法。
【請求項18】
前記第1および第2の電極の表面の一部にレーザビームを照射することにより、前記第1および第2の電極をそれぞれ分割する凹部を形成する
請求項11記載の光学素子の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−54248(P2013−54248A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193268(P2011−193268)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】