説明

光学素子の洗浄方法

【課題】 分光器に光学素子を配置したまま、光学素子の表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる光学素子の洗浄方法を提供する。
【解決手段】 外部と内部とを分離する器壁31を有し、器壁31に光導入口32が形成されている分光器30と、光導入口32に配置され、外部に設けられた光源部20からの紫外光を内部に導く光学素子33と、分光器30の内部に配置された光学素子34、36と、分光器30の外部に設けられ、分光器30の内部と連結される真空ポンプ35とを備える分光器30に配置された光学素子33、34、36の洗浄方法であって、光導入口32に配置された光学素子33の表面、及び/又は、分光器30の内部に配置された光学素子34、36の表面をオゾンで洗浄する洗浄工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光器に配置された光学素子の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分析装置では、誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチの内部にアルゴン等の不活性ガスと霧状の試料とを導入し、誘導コイルに高周波電流を流すことによってプラズマが発生する。このプラズマより発生するプラズマ光を分光器の内部に導いてスペクトルを分析することにより、試料の分析が行われる。
図6は、従来のICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
ICP発光分析装置401は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ10と、紫外光を出射するプラズマ光源(光源部)20と、分光器30と、ICP発光分析装置401全体を制御するコンピュータ50とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
分光器30は、外部と内部とを分離する器壁31と、外部に設けられた真空ポンプ35とを有する。
器壁31には、プラズマ光を内部に導く光導入口32が形成されている。光導入口32には、分光器30の内部の気密性を保持しつつ、プラズマ光の吸収や減衰が生じないようにするために、紫外光の透過性のよい石英ガラス等からなる隔壁窓(光学素子)33が配置されている。
そして、器壁31には、蓋部(図示せず)が設けられており、分析者が器壁31の蓋部を開くことにより、分光器30の内部を大気開放することができるようになっている。
【0004】
分光器30の内部には、プラズマ光を所定の方向に反射させるための複数(例えば、2個)のミラー(光学素子)34a、34bと、ホログラフィックグレーティング(光学素子)36と、入口スリット37と、出口スリット38とが、分光器30の内部に設置されたホルダ等を介して配置されるとともに、光検出器40が配置されている。
分光器30の外部には、真空ポンプ35が設けられている。真空ポンプ35は、分光器30の内部と連結されている。これにより、プラズマ光源20からの紫外光は酸素等によって吸収されやすいため、試料の分析を実行する際には、分光器30の内部を真空とすることができるようになっている。
【0005】
コンピュータ50においては、CPU(制御部)51を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52が連結されている。また、CPU51が処理する機能をブロック化して説明すると、光検出器40からの出力強度信号を取得する光検出器制御部51aと、プラズマ光源20を制御する光源部制御部51bと、真空ポンプ35を制御する真空ポンプ制御部51cとを有する。
【0006】
このようなICP発光分析装置401によれば、分析者が試料の分析を実行する際には、入力装置52を用いて真空ポンプ制御部51cを制御することにより、分光器30の内部を真空ポンプ35で真空とする。そして、CPU51は分光器30の内部を真空とした後、プラズマ光源20を点灯することで、光導入口32から内部に導かれたプラズマ光を、ミラー34a、34bやホログラフィックグレーティング36によって進行方向を変えつつ光検出器40に導入する。これにより、光検出器制御部51aは光検出器40からの出力強度信号を取得する。
【0007】
ところで、真空ポンプ35等から有機物(例えば、潤滑系オイル)等が分光器30の内部に流出して、有機物等が分析中にプラズマ光に照射されることによって、有機物等がミラー34a、34bの表面やホログラフィックグレーティング36の表面や隔壁窓33の表面に、有機高分子膜となって付着残留することがあった。その結果、ミラー34a、34bの表面やホログラフィックグレーティング36の表面や隔壁窓33の表面に付着残留している有機物等の汚れが、プラズマ光を吸収・散乱したり、ミラー34a、34bやホログラフィックグレーティング36の分光特性を変化させたりして、透過率等の光学特性を低下させていた。
【0008】
よって、表面に硬度を有する光学素子(例えば、隔壁窓33)については、布などで汚れを除去する作業が定期的(例えば、1ヶ月毎)に実行されているが、表面に硬度を有さない光学素子(例えば、ミラー34a、34bの表面やホログラフィックグレーティング36)については、汚れの除去が困難であり、新品の光学素子と交換している。この交換作業では、例えば、分析者が器壁31の蓋部を開いた後、分光器30の内部のホルダ等からミラー34a、34bを取り外し、分光器30の内部の元の位置に新品のミラー34a、34bを光軸を調整しながら設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−78460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、交換作業は、交換する光学素子そのもののコストに加え、分光器30の内部のホルダ等からミラー34a、34bを取り外し、分光器30の内部の元の位置に光軸を調整しながら戻すという、非常に手間がかかるものであり、数時間から数十時間を要すこともあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、分光器30の内部にミラー34a、34bを配置したまま、ミラー34a、34bの表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことが可能となる洗浄方法について検討を行った。紫外線光源として水銀ランプやエキシマランプ等のランプを用い、洗浄雰囲気に大気や酸素ガスを導入し、紫外光によって洗浄雰囲気内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって被洗浄物から有機物を分解、反応等により除去する洗浄方法がある。そこで、分光器30の内部にミラー34a、34bを配置したまま、オゾンによってミラー34a、34bの表面を洗浄することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の光学素子の洗浄方法は、外部と内部とを分離する器壁を有し、当該器壁に光導入口が形成されている分光器と、前記光導入口に配置され、外部に設けられた光源部からの紫外光を内部に導く光学素子と、前記分光器の内部に配置され、紫外光を反射又は透過する光学素子と、前記分光器の外部に設けられ、前記分光器の内部と連結される真空ポンプとを備える分光器に配置された光学素子の洗浄方法であって、前記光導入口に配置された光学素子の表面、及び/又は、前記分光器の内部に配置された光学素子の表面をオゾンで洗浄する洗浄工程を含むようにしている。
ここで、「前記光導入口に配置された光学素子の表面、及び/又は、前記分光器の内部に配置された光学素子の表面」とは、光導入口に配置された光学素子の表面と、分光器の内部に配置された光学素子の表面との少なくとも一方のことをいい、光導入口に配置された光学素子の表面と、分光器の内部に配置された光学素子の表面との両方や、光導入口に配置された光学素子の表面のみや、分光器の内部に配置された光学素子の表面のみ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の光学素子の洗浄方法によれば、分光器に光学素子を配置したまま、光学素子の表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる。
【0014】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記発明において、前記分光器は、内部を大気開放することが可能となっており、前記洗浄工程は、前記分光器の内部を大気開放する大気開放工程を含むようにしてもよい。
また、上記発明において、前記分光器は、器壁と、紫外光を出射するランプとを有する洗浄器具を備え、前記洗浄工程おいて、前記大気開放工程を実行した後、前記洗浄器具の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記光導入口に配置された光学素子の表面、又は、前記分光器の内部に配置された光学素子と、前記ランプとを内部空間に配置する洗浄器具配置工程と、前記ランプを点灯するランプ点灯工程とを実行するようにしてもよい。
本発明の光学素子の洗浄方法によれば、例えば、まず、分析者は器壁の蓋部等を開いて内部を大気開放する。次に、分析者は洗浄器具の器壁と、分光器の器壁の内壁とで形成した内部空間に、光学素子とランプとを配置する。このとき、内部空間は、酸素を含有する大気で満たされる。そして、分析者はランプを点灯する。これにより、ランプからの紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することができる。
【0015】
また、上記発明において、前記分光器は、内部を大気開放することが可能となるバルブを備え、前記洗浄工程は、前記バルブによって内部を大気開放する大気開放工程と、前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを含むようにしてもよい。
本発明の光学素子の洗浄方法によれば、例えば、まず、分析者はバルブを開いて内部を大気開放する。このとき、内部は、酸素を含有する大気で満たされる。そして、分析者は光源部を点灯する。これにより、光源部からの紫外光によって内部に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することができる。
【0016】
また、上記発明において、前記分光器は、内部に器壁を有する洗浄用部材を備え、前記洗浄用部材は、前記洗浄用部材の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記光導入口に配置された光学素子の表面を内部空間に配置し、移動可能となるように設けられるとともに、内部空間に大気を導入することが可能となっており、前記洗浄工程おいて、前記光導入口に配置された光学素子の表面を内部空間に配置する洗浄用部材配置工程と、内部空間に大気を導入する大気開放工程と、前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを実行するようにしてもよい。
本発明の光学素子の洗浄方法によれば、例えば、まず、分析者は洗浄用部材の器壁と、分光器の器壁の内壁とで形成した内部空間に、光学素子を配置する。次に、分析者は内部空間を大気開放する。このとき、内部空間は酸素を含有する大気で満たされる。そして、分析者は光源部を点灯する。これにより、光導入口から内部に導かれた紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することができる。
【0017】
そして、上記発明において、前記分光器は、紫外光を透過する材料で形成された器壁を有する洗浄用部材を備え、前記洗浄用部材は、前記洗浄用部材の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記分光器の内部に配置された光学素子を内部空間に配置し、移動可能となるように設けられるとともに、内部空間に大気を導入することが可能となっており、前記洗浄工程おいて、前記分光器の内部に配置された光学素子を内部空間に配置する洗浄用部材配置工程と、内部空間に大気を導入する大気開放工程と、前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを実行するようにしてもよい。
本発明の光学素子の洗浄方法によれば、例えば、まず、分析者は洗浄用部材の器壁と、分光器の器壁の内壁とで形成した内部空間に、光学素子を配置する。次に、分析者は内部空間を大気開放する。このとき、内部空間は酸素を含有する大気で満たされる。そして、分析者は光源部を点灯する。これにより、光導入口から内部に導かれた紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することができる。
【0018】
さらに、上記発明において、前記分光器は、内部又は外部にオゾン発生装置を備え、前記洗浄工程おいて、前記オゾン発生装置でオゾンを発生させるオゾン発生工程を実行するようにしてもよい。
本発明の光学素子の洗浄方法によれば、例えば、分析者は、分光器の内部に設けられたオゾン発生装置からオゾンを発生させる。これにより、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】洗浄器具の一例を示す斜視図である。
【図3a】実施形態2に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図3b】実施形態2に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】実施形態3に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】実施形態4に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】従来のICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。なお、ICP発光分析装置401と同様のものについては、同じ符号を付している。
ICP発光分析装置1は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ10と、紫外光を出射するプラズマ光源(光源部)20と、分光器30と、ICP発光分析装置1全体を制御するコンピュータ50と、洗浄器具60とを備える。
【0022】
図2(a)は、洗浄器具60の一例を示す斜視図である。また、図2(b)は、分光器30の内部に洗浄器具60を配置した図である。
洗浄器具60は、円形状(例えば、直径100mm)の上面(器壁)と、円筒形状(例えば、高さ150mm)の側壁(器壁)とを有する金属製の器壁62と、真空紫外領域の紫外光を発するランプ61とを備える。そして、ランプ61は、上面に取り付けられており、上面と側壁とで形成した内部空間に、発光領域が配置されている。
【0023】
ここで、洗浄器具60を用いた光学素子の洗浄方法について説明する。光学素子の洗浄方法は、分光器30の内部を大気開放する大気開放工程(A−1)と、洗浄器具60の器壁62と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に、光学素子とランプ61とを配置する洗浄器具配置工程(A−2)と、ランプ61を点灯するランプ点灯工程(A−3)と、洗浄器具60を取り除く洗浄器具除去工程(A−4)とを含む。
【0024】
(A−1)大気開放工程
分析者は、器壁31の蓋部を開くことにより、分光器30の内部を大気開放する。
(A−2)洗浄器具配置工程
分析者は、洗浄器具60の器壁62と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に、光学素子とランプ61とを配置する。
例えば、図2(b)に示すように、洗浄器具60をミラー34aにかぶせるようにして、内部空間にミラー34aを配置する。このとき、内部空間は酸素を含有する大気で満たされる。
【0025】
(A−3)ランプ点灯工程
分析者は、ランプ61を所定の時間、点灯する。このとき、ランプ61からの紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することになる。
(A−4)洗浄器具除去工程
分析者は、洗浄器具60を分光器30の内部から取り除く。なお、他の光学素子を洗浄する場合には、(A−2)洗浄器具配置工程と(A−3)ランプ点灯工程とを繰り返すことになる。
【0026】
次に、試料を分析する分析方法について説明する。分析方法は、分光器30の内部を真空にする真空工程(B−1)と、プラズマ光源20を点灯する光源部点灯工程(B−2)と、光検出器40からの出力強度信号を取得する分析工程(B−3)とを含む。
(B−1)真空工程
分析者は、入力装置52を用いて真空ポンプ制御部51cを制御することにより、分光器30の内部を真空ポンプ35で真空とする。
【0027】
(B−2)光源部点灯工程
分析者は、入力装置52を用いて光源部制御部51bを制御することにより、プラズマ光源20を点灯する。これにより、光導入口32から内部に導かれたプラズマ光が、ミラー34a、34bやホログラフィックグレーティング36によって進行方向を変えつつ光検出器40に導入される。
(B−3)分析工程
光検出器制御部51aは光検出器40からの出力強度信号を取得する。
【0028】
以上のように、実施形態1のICP発光分析装置1によれば、分光器30にミラー34aを配置したまま、ミラー34aの表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる。
【0029】
<実施形態2>
図3は、実施形態2に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。図3aは、試料を分析している状態のICP発光分析装置を示す概略構成図であり、図3bは、光学素子を洗浄している状態のICP発光分析装置を示す概略構成図である。なお、ICP発光分析装置401と同様のものについては、同じ符号を付している。
ICP発光分析装置101は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ10と、紫外光を出射するプラズマ光源(光源部)20と、分光器30と、ICP発光分析装置101全体を制御するコンピュータ150とを備える。
【0030】
分光器30の内部には、平板形状の器壁を有する洗浄用部材160aと、円形状(例えば、直径150mm)の上面(器壁)と円筒形状(例えば、高さ150mm)の側壁(器壁)とを有する洗浄用部材160b、160cと、円形状(例えば、直径150mm)の上面(器壁)と円筒形状(例えば、高さ150mm)の側壁(器壁)とを有する洗浄用部材160dとが配置されている。
洗浄用部材160aは、駆動機構(図示せず)によって水平方向に移動可能となるように設けられており、分析中には図3aに示すような位置に配置され、一方、洗浄中には図3bに示すような位置に配置されることにより、洗浄用部材160aの器壁と、分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に隔壁窓33の表面が配置されるようになっている。さらに、洗浄用部材160aの器壁と、分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に大気が導入されるように、分光器30の器壁31には、バルブ161aを有する配管162aが設けられている。これにより、分析者がバルブ161aを開くことにより、内部空間を大気開放することができるようになっている。
【0031】
洗浄用部材160bは、紫外光を透過する材料で形成されている。そして、洗浄用部材160bは、駆動機構(図示せず)によって上下方向に移動可能となるように設けられており、分析中には上方位置に配置され、一方、洗浄中には図3bに示すような位置に配置されることにより、洗浄用部材160bの器壁と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間にミラー34aが配置されるようになっている。さらに、洗浄用部材160bの器壁と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に大気が導入されるように、洗浄用部材160bの器壁と分光器30の器壁31とには、バルブ161bを有する配管162bが設けられている。これにより、分析者がバルブ161bを開くことにより、内部空間を大気開放することができるようになっている。
なお、洗浄用部材160cや洗浄用部材160dも、洗浄用部材160bと同様な構造となっている。また、洗浄用部材160b〜160dの器壁と分光器30の器壁31の内壁との接触部には、Oリング等が配置されてもよい。
【0032】
コンピュータ150においては、CPU(制御部)151を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52が連結されている。また、CPU151が処理する機能をブロック化して説明すると、光検出器40からの出力強度信号を取得する光検出器制御部151aと、プラズマ光源20を制御する光源部制御部151bと、真空ポンプ35を制御する真空ポンプ制御部151cと、洗浄用部材160a〜160dを制御する洗浄制御部151dとを有する。
【0033】
ここで、光学素子の洗浄方法について説明する。光学素子の洗浄方法は、洗浄用部材160a〜160dの器壁と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に、光学素子を配置する洗浄用部材配置工程(C−1)と、内部空間に大気を導入する大気導入工程(C−2)と、プラズマ光源20を点灯する光源部点灯工程(C−3)と、洗浄用部材160a〜160dを取り除く洗浄用部材除去工程(C−4)とを含む。
【0034】
(C−1)洗浄用部材配置工程
分析者は、入力装置52を用いて洗浄制御部151dを制御することにより、洗浄用部材160a〜160dの器壁と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に、光学素子を配置する。
例えば、図3bに示すように洗浄用部材160a〜160dを移動させることで、洗浄用部材160a〜160dの器壁と分光器30の器壁31の内壁とで形成した内部空間に、隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36を配置する。
(C−2)大気導入工程
分析者は、入力装置52を用いて洗浄制御部151dを制御することにより、内部空間に大気を導入する。このとき、内部空間は酸素を含有する大気で満たされる。
【0035】
(C−3)光源部点灯工程
分析者は、入力装置52を用いて光源部制御部151bを制御することにより、プラズマ光源20を所定の時間、点灯する。このとき、光導入口32から内部に導かれた紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することになる。
(C−4)洗浄用部材除去工程
分析者は、入力装置52を用いて洗浄制御部151dを制御することにより、図3aに示すように洗浄用部材160a〜160dを移動させる。
【0036】
以上のように、実施形態2のICP発光分析装置101によれば、分光器30に隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36を配置したまま、隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36の表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる。
【0037】
<実施形態3>
図4は、実施形態3に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。なお、ICP発光分析装置401と同様のものについては、同じ符号を付している。
ICP発光分析装置201は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ10と、紫外光を出射するプラズマ光源(光源部)20と、分光器30と、ICP発光分析装置201全体を制御するコンピュータ250とを備える。
【0038】
分光器30は、外部と内部とを分離する器壁31と、外部に設けられた真空ポンプ35とを有する。
分光器30の器壁31には、バルブ260を有する配管261が設けられている。配管261は、分光器30の内部と連結されている。これにより、分析者がバルブ260を開くことにより、分光器30の内部を大気開放することができるようになっている。
【0039】
コンピュータ250においては、CPU(制御部)251を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52が連結されている。また、CPU251が処理する機能をブロック化して説明すると、光検出器40からの出力強度信号を取得する光検出器制御部251aと、プラズマ光源20を制御する光源部制御部251bと、真空ポンプ35を制御する真空ポンプ制御部251cと、バルブ260を制御する洗浄制御部251dとを有する。
【0040】
ここで、光学素子の洗浄方法と分析方法とについて説明する。光学素子の洗浄方法と分析方法とは、プラズマ光源20を点灯する光源部点灯工程(D−1)と、分光器30の内部を大気開放する大気開放工程(D−2)と、分光器30の内部を真空にする真空工程(D−3)と、光検出器40からの出力強度信号を取得する分析工程(D−4)とを含む。
【0041】
(D−1)光源部点灯工程
分析者は、入力装置52を用いて光源部制御部251bを制御することにより、プラズマ光源20を点灯する。プラズマ光が安定するまで時間がかかるため、通常はプラズマ光が安定するまで待たなければならないので、この時間を洗浄時間として利用することになる。
(D−2)大気開放工程
分析者は、入力装置52を用いて洗浄制御部251dを制御することにより、バルブ260を開くことで、分光器30の内部を大気開放する。このとき、光導入口32から内部に導かれた紫外光によって内部空間内に存在する酸素からオゾンを生成させ、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することになる。
【0042】
(D−3)真空工程
分析者は、入力装置52を用いて真空ポンプ制御部251cを制御することにより、分光器30の内部を真空ポンプ35で真空とする。これにより、光導入口32から内部に導かれたプラズマ光が、ミラー34a、34bやホログラフィックグレーティング36によって進行方向を変えつつ光検出器40に導入される。
(D−4)分析工程
光検出器制御部251aは光検出器40からの出力強度信号を取得する。
【0043】
以上のように、実施形態3のICP発光分析装置201によれば、分光器30に隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36を配置したまま、隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36の表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる。
【0044】
<実施形態4>
図5は、実施形態4に係るICP発光分析装置の一例を示す概略構成図である。なお、ICP発光分析装置401と同様のものについては、同じ符号を付している。
ICP発光分析装置301は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ10と、紫外光を出射するプラズマ光源(光源部)20と、分光器30と、ICP発光分析装置301全体を制御するコンピュータ350とを備える。
【0045】
分光器30は、外部と内部とを分離する器壁31と、外部に設けられた真空ポンプ35と、外部に設けられたオゾン発生装置360とを有する。オゾン発生装置360は、分光器30の内部と連結されている。これにより、分光器30の内部をオゾンで満たすことができるようになっている。
【0046】
コンピュータ350においては、CPU(制御部)351を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52が連結されている。また、CPU351が処理する機能をブロック化して説明すると、光検出器40からの出力強度信号を取得する光検出器制御部351aと、プラズマ光源20を制御する光源部制御部351bと、真空ポンプ35を制御する真空ポンプ制御部351cと、オゾン発生装置360を制御する洗浄制御部351dとを有する。
【0047】
ここで、光学素子の洗浄方法と分析方法とについて説明する。光学素子の洗浄方法と分析方法とは、分光器30の内部を真空にする真空工程(E−1)と、分光器30の内部をオゾンで満たすオゾン導入工程(E−2)と、分光器30の内部を真空にする真空工程(E−3)と、プラズマ光源20を点灯する光源部点灯工程(E−4)と、光検出器40からの出力強度信号を取得する分析工程(E−5)とを含む。
【0048】
(E−1)真空工程
分析者は、入力装置52を用いて真空ポンプ制御部351cを制御することにより、分光器30の内部を真空ポンプ35で真空とする。
(E−2)オゾン導入工程
分析者は、入力装置52を用いて洗浄制御部351dを制御することにより、分光器30の内部をオゾンで満たす。このとき、このオゾンによって有機物を分解、反応等により除去することになる。
【0049】
(E−3)真空工程
分析者は、入力装置52を用いて真空ポンプ制御部351cを制御することにより、分光器30の内部を真空ポンプ35で真空とする。
(E−4)光源部点灯工程
分析者は、入力装置52を用いて光源部制御部351bを制御することにより、プラズマ光源20を点灯する。これにより、光導入口32から内部に導かれたプラズマ光が、ミラー34a、34bやホログラフィックグレーティング36によって進行方向を変えつつ光検出器40に導入される。
(E−5)分析工程
光検出器制御部351aは光検出器40からの出力強度信号を取得する。
【0050】
以上のように、実施形態4のICP発光分析装置301によれば、分光器30に隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36を配置したまま、隔壁窓33、ミラー34a、34b、ホログラフィックグレーティング36の表面に付着残留している有機物等の汚れを取り除くことができる。
【0051】
(他の実施形態)
上述したICP発光分析装置301では、オゾン発生装置360が分光器30の外部に設けられた構成を示したが、オゾン発生装置である無声放電装置が分光器の内部に設けられる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、分光器等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
20 プラズマ光源(光源部)
30 分光器
31 器壁
32 光導入口
33 隔壁窓(光学素子)
34 ミラー(光学素子)
35 真空ポンプ
36 ホログラフィックグレーティング(光学素子)
40 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と内部とを分離する器壁を有し、当該器壁に光導入口が形成されている分光器と、
前記光導入口に配置され、外部に設けられた光源部からの紫外光を内部に導く光学素子と、
前記分光器の内部に配置され、紫外光を反射又は透過する光学素子と、
前記分光器の外部に設けられ、前記分光器の内部と連結される真空ポンプとを備える分光器に配置された光学素子の洗浄方法であって、
前記光導入口に配置された光学素子の表面、及び/又は、前記分光器の内部に配置された光学素子の表面をオゾンで洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする光学素子の洗浄方法。
【請求項2】
前記分光器は、内部を大気開放することが可能となっており、
前記洗浄工程は、前記分光器の内部を大気開放する大気開放工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の洗浄方法。
【請求項3】
前記分光器は、器壁と、紫外光を出射するランプとを有する洗浄器具を備え、
前記洗浄工程おいて、前記大気開放工程を実行した後、前記洗浄器具の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記光導入口に配置された光学素子の表面、又は、前記分光器の内部に配置された光学素子と、前記ランプとを内部空間に配置する洗浄器具配置工程と、
前記ランプを点灯するランプ点灯工程とを実行することを特徴とする請求項2に記載の光学素子の洗浄方法。
【請求項4】
前記分光器は、内部を大気開放することが可能となるバルブを備え、
前記洗浄工程は、前記バルブによって内部を大気開放する大気開放工程と、
前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の光学素子の洗浄方法。
【請求項5】
前記分光器は、内部に器壁を有する洗浄用部材を備え、
前記洗浄用部材は、前記洗浄用部材の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記光導入口に配置された光学素子の表面を内部空間に配置し、移動可能となるように設けられるとともに、内部空間に大気を導入することが可能となっており、
前記洗浄工程おいて、前記光導入口に配置された光学素子の表面を内部空間に配置する洗浄用部材配置工程と、
内部空間に大気を導入する大気開放工程と、
前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを実行することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の洗浄方法。
【請求項6】
前記分光器は、紫外光を透過する材料で形成された器壁を有する洗浄用部材を備え、
前記洗浄用部材は、前記洗浄用部材の器壁と、前記分光器の器壁の内壁とで内部空間を形成し、前記分光器の内部に配置された光学素子を内部空間に配置し、移動可能となるように設けられるとともに、内部空間に大気を導入することが可能となっており、
前記洗浄工程おいて、前記分光器の内部に配置された光学素子を内部空間に配置する洗浄用部材配置工程と、
内部空間に大気を導入する大気開放工程と、
前記光源部からの紫外光を内部に導く光源部点灯工程とを実行することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の洗浄方法。
【請求項7】
前記分光器は、内部又は外部にオゾン発生装置を備え、
前記洗浄工程おいて、前記オゾン発生装置でオゾンを発生させるオゾン発生工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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