説明

光学素子及びその製造方法

【課題】大形基板への対応が可能で、材料使用効率の高いインクジェット方式等を始めとする塗布方式において簡易で安価に製造が可能であり、機能層の膜厚ムラ、白抜け、及び混色等による表示不良の無い、高品質なカラーフィルタや有機EL等の光学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】機能層パターンを区分けする隔壁パターン20を形成し、隔壁パターン20の上表面に撥インク性層22を形成し、隔壁パターン20によって区分けされて成る開口領域内に柱形状のスペーサー40を形成し、開口領域に機能層形成インクを塗布することにより当該開口領域に機能層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁パターンにより仕切られた領域に機能層インクを塗布して、機能層パターンを形成した光学素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置や、有機EL(Electro Luminescence)表示装置は、近年、薄型テレビやパソコン、携帯電話等の情報端末、デジタルカメラやビデオカメラ等各種電気機器のカラー表示装置として、広く利用されている。有機EL表示装置や、カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタに、上記光学素子が用いられている。
【0003】
カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタは、カラー液晶表示装置等に不可欠な部材で、液晶表示装置の画質を向上させたり、各画素にそれぞれの原色の色彩を与えたりする役割を有している。このカラーフィルタの製造方法として、染色法や電着法、顔料分散法などが知られているが、信頼性の点で、耐候性の高い顔料分散法が広く利用されている。顔料分散法においては、顔料を分散させた感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布し、露光・現像処理して、塗布膜の不要部分を取り除いて画素パターンを形成するフォトリソグラフィー方式が一般的である。
【0004】
しかしこの方法では、塗布膜の多くが不要となるため材料の使用効率が低く、赤(R)緑(G)青(B)の少なくとも3工程を繰り返す必要があり、コスト面、環境負荷面での課題を有していた。最近では、R、G、Bの顔料を分散したインクを用いて、各色を同時に必要箇所にのみ印刷することができるインクジェット方式が注目されている。インクジェット方式を用いた顔料分散型のカラーフィルタの製造法では、隣接する色画素間でのインクの混合による不良(混色)を防止するため、吐出されたインクを所望領域内におさめる働きをする撥インク性の隔壁パターンの形成技術が重要となっている。
【0005】
一方で、有機EL表示装置は、カラー液晶表示装置に替わる、薄型、省エネルギーで表示性能が高い自発発光型ディスプレイとして、開発が加速している。有機EL表示装置は、回路素子と画素電極パターンを形成した透明基板上に、絶縁層となる隔壁パターンを形成し、正孔注入、輸送層、発光層を積層し、電極で挟持して、水分や酸素等の劣化物質を遮断するための封止を行い、製造される。
【0006】
上記の正孔注入、輸送層、発光層の成膜方法は、一般的に蒸着方式と塗布方式に大別される。蒸着方式は、真空下でメタルマスクを介して電極パターン上に低分子材料を蒸着して形成するもので、均一な成膜が可能で安定した品質の有機EL表示装置を製造できるため、従来から中小型表示装置向けで広く行われている方式ではあるが、真空設備とメタルマスクの精度がネックとなって、基板大型化への対応に難点があった。これに対して塗布方式は、正孔注入、輸送層、発光層材料を溶剤に溶解或いは分散したインクを用い、印刷方式によりパターニングするものであり、将来の有機ELテレビ等の大型基板への展開が可能な方式として期待されている。上記印刷方式としては、インクジェット方式、ノズルプリント方式、スプレーコート方式、スリットダイコート方式、レリーフ印刷方式等が提案されており、特に溶剤成分を多く含むインクを直接基板上に塗工する場合は、RGBインク間の混合(混色)や膜厚ムラ抑えるため、上記したインクジェット方式のカラーフィルタの製造と同様に、撥インク性の隔壁パターンの形成が必要となる。
【0007】
ここで撥インク性隔壁を得る方法としては、従来から様々な手法が提案されている。例えば、隔壁形成材料の少なくとも一部分に撥インク性成分を含有させて、隔壁パターンを形成する方法(例えば、特許文献1〜4)、また、隔壁パターンを形成後にプラズマ処理により隔壁表面を撥インク処理する方法(例えば、特許文献5,6)、さらには、隔壁パターン形成後に隔壁パターン上に撥液成分を転写して付与する方法(例えば、特許文献7,8)を挙げることができる。
【0008】
しかしながら、いずれの手法でも隔壁表面に撥インク性を付与することは可能であるが、被印刷面となる隔壁で囲まれた開口部分や隔壁側面にまで撥インク性が付与されてしまうと、塗工したインクが開口部分全体に均一に濡れ広がらず、隔壁周辺の機能層膜厚が薄くなったり、部分的に白抜けを発生したりして、表示ムラやコントラスト低下、電流リークによる非発光等の表示不良を引き起こす場合があった。上記の撥インク性付与手法の中で、隔壁形成材料に撥インク性成分を添加して隔壁パターン形成する方法は、開口部分にも撥インク性成分が残存したり、隔壁パターンの熱硬化工程において、撥インク性成分が隔壁側面や開口部にまで移行してしまったりする場合があり、それらを抑えるためには煩雑な工程を必要とした。また、隔壁パターン形成後にプラズマ処理にて撥インク性を付与する場合は、有機物からなる隔壁の全露出表面に撥インク性が付与されることから、隔壁側面や開口部上の有機物残渣も撥インク性となる点、および熱履歴により撥インク性が低下するため、有機ELのように複数層を積層する場合には混色不良が発生しやすかった。以上の点で、隔壁パターン形成後に簡易な手法で隔壁上表面にのみ撥インク性を付与できる転写方式は、最も好ましい方法と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-347637号公報
【特許文献2】特開平7-35915号公報
【特許文献3】特開平9-127327号公報
【特許文献4】特開2000-35511号公報
【特許文献5】特開平11-271753号公報
【特許文献6】特開2003-344640号公報
【特許文献7】特開2002-305070号公報
【特許文献8】特開2008-139378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した転写方式は、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料を、透明基板上の隔壁パターン上表面に接触させ、必要な熱圧をかけて、隔壁上表面に撥インク性成分を転写するものであるが、近年の表示装置の大画面化、高機能化に伴い、画素サイズの拡大、および複雑な回路パターンが形成されることによる機能層被印刷面の凹凸により、隔壁上表面だけではなく、開口部中央部分や、被印刷面内の凸部分に転写材料が触れて撥インク性成分が転写されてしまい、機能層を印刷した際に膜厚ムラや白抜けを引き起こして、表示不良となる課題を有していた。
【0011】
それ故に、本発明の目的は、上記課題を解決するものであり、大形基板への対応が可能で、材料使用効率の高いインクジェット方式等を始めとする塗布方式において簡易で安価に製造が可能であり、機能層の膜厚ムラ、白抜け、及び混色等による表示不良の無い、高品質なカラーフィルタや有機EL等の光学素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0013】
本発明は、光を透過する基板上に所望の機能層パターンが形成された光学素子であって、前記機能層パターンを区分けする隔壁パターンと、前記隔壁パターンの上表面に形成される撥インク性層と、前記隔壁パターンによって区分けされて成る開口領域内に形成される柱形状のスペーサーと、前記開口領域に機能層形成インクが塗布されることにより当該開口領域に形成される機能層とを備える。
【0014】
また、前記開口領域において前記機能層形成インクが塗布される部分のうち最も低い部分から前記隔壁パターンの最も高い部分までの高さを1とした場合、当該最も低い部分から前記スペーサーの最も高い部分までの高さは、0.3〜1.2の範囲であってもよい。
【0015】
また、前記開口領域において前記機能層形成インクが塗布される部分のうち最も低い部分から前記隔壁パターンの最も高い部分までの高さを1とした場合、当該最も低い部分から前記スペーサーの最も高い部分までの高さは、0.5〜1.0の範囲であってもよい。
【0016】
また、前記開口領域の総面積に占める、前記スペーサーの底面の総面積の割合は、0.0001〜0.01の範囲であってもよい。
【0017】
また、前記スペーサーは、前記機能層形成インクに対する接触角が30°以下の親和性のある材料で形成されてもよい。
【0018】
また、前記撥インク性層は、フッ素を含む化合物であってもよい。
【0019】
また、本発明は、光を透過する基板上に所望の機能層パターンが形成された光学素子の製造方法であって、前記機能層パターンを区分けする隔壁パターンを形成するステップと、前記隔壁パターンによって区分けされて成る開口領域内に柱形状のスペーサーを形成するステップと、前記隔壁パターンの上表面に撥インク性層を形成するステップと、前記開口領域に機能層形成インクを塗布することにより当該開口領域に機能層を形成するステップとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隔壁パターンに囲まれた開口部内に、少なくとも1つ以上の柱状のスペーサーを設けることで、画素サイズや開口部内の凹凸によらず、撥インク性成分の転写処理の際の、被印刷面への撥インク性成分の付着を抑えることができ、機能層の膜厚ムラや白抜けの無い、高品質な光学素子を簡易で安価に提供することができる。
【0021】
また、開口領域において機能層形成インクが塗布される部分のうち最も低い部分から隔壁パターンの最も高い部分までの高さを1とした場合、当該最も低い部分からスペーサーの最も高い部分までの高さを0.3〜1.2の範囲とすることで、画素サイズや開口部(開口領域)内の凹凸によらず、撥インク性成分(撥インク性層)の隔壁上表面への転写を妨げることなく、被印刷面への撥インク性成分の付着を抑えることができる。さらには、柱状のスペーサーの高さを0.5〜1.0とすることで、さらに、被印刷面への撥インク性成分の付着を抑制し、効果的に隔壁上表面に撥液性成分を転写できるため、機能層の膜厚ムラや白抜け、或いは混色による表示不良の無い、高品質な光学素子を簡易で安価に提供することができる。
【0022】
また、開口領域の総面積に占める、スペーサーの底面の総面積の割合を0.0001〜0.01の範囲とすることで、被印刷面への撥インク性成分の付着を抑えながら、表示装置本来の表示性能を発揮する、高品質な光学素子を簡易で安価に提供することができる。ここで、上記の開口領域の総面積とは、開口領域に凹凸がある場合、その表面積ではなく、隔壁パターンが形成された基板のZ軸方向(基板を見下ろす方向)から隔壁パターンを撮影した画像における、開口領域の総面積を表すものである。
【0023】
また、スペーサーが、機能層形成インクに対する接触角が30°以下の親和性のある材料で形成されていることで、さらに機能層の膜厚ムラや白抜けが発生し難くなり、高品質な光学素子を簡易で安価に提供することができる。
【0024】
また、撥インク性材料はフッ素を含む化合物であることで、より安定的に、機能層の膜厚ムラや白抜け或いは混色を抑え、高品質な光学素子を簡易で安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光学素子の第一実施形態であるインクジェット方式カラーフィルタを示す断面図
【図2】本発明の光学素子の第二実施形態である有機EL素子を示す断面図
【図3】本発明の光学素子の実施形態である柱状のスペーサーの一例を示す底面形状図
【図4】本発明の光学素子の第一実施形態であるカラーフィルタの隔壁パターン基板を示す模式図
【図5】本発明の光学素子の第一実施形態であるカラーフィルタの柱状スペーサー付き隔壁パターン基板を示す模式図
【図6】本発明の光学素子の第二実施形態である有機EL素子の柱状スペーサー付き隔壁パターン基板を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下、本発明の光学素子の第一実施形態であるインクジェット方式のカラーフィルタ1について、図1を参照して説明する。
【0027】
本発明の光学素子の第一実施形態としてのインクジェット方式カラーフィルタ1(以下、単に、カラーフィルタ1という場合がある)は、以下のようにして作製される。図1から分かるように、まず、透明基板10上に隔壁パターン20を形成し、さらに隔壁パターン20に囲まれた開口部30内に柱形状のスペーサー40を形成する。その後、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料(図示なし)を、隔壁パターン20の上表面21に、加熱ロール等を用いて押し付け、仮支持体を剥離することで撥インク性成分(撥インク性層)22を転写する。その後R、G、Bの着色インクをインクジェット塗布装置を用いて、隔壁パターン20に囲まれた開口部(開口領域)30に塗布し、乾燥、焼成する。以上の工程によって、カラーフィルタ1は得られる。
【0028】
透明基板10は、カラーフィルタとしての透明性や機械的強度の特性が満足されるものであれば、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフィン、及びポリアクリレート等のプラスチックシートおよびプラスチックフィルムなどであって良い。しかし、透明基板10としては、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れるガラス基板を用いることが、より好ましい。
【0029】
隔壁パターン20の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法、転写法、インクジェット法、エッチング法等、特に限定されず従来公知の手法を用いることができる。その中でも、精細なパターン形成が可能なフォトリソグラフィー法は、隔壁パターン20の形成方法として、特に好ましい。フォトリソグラフィー法で隔壁パターン20を形成する場合、感光性樹脂組成物を透明基板上に均一塗布して、所望パターンのフォトマスクを介して露光処理し、現像して不要部分を除去することで、隔壁パターン20は形成できる。
【0030】
また、カラーフィルタ1の隔壁としては、有色或いは遮光性材料を含有してブラックマトリクスとしての機能を有することで、製造工程を削減し、高性能なカラーフィルタが得られるものとすることが好ましい。本実施形態のカラーフィルタ1に用いられる隔壁パターン20の高さとしては、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは、1〜3μmである。ここで、隔壁パターン20の高さとは、透明基板10表面から隔壁パターン20の最も高い部分までの距離である(図1参照)。
【0031】
以下に黒色のネガ型感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法による隔壁パターン20の形成方法を具体的に説明する。まず黒色のネガ型感光性樹脂組成物を透明基板10上に、スリットダイコーター、スピンコーター等の公知の塗工装置を用いて均一に塗工する。その後、溶剤成分を除去するために、必要に応じて、減圧乾燥処理やプリベーク処理を施す。そして、パターン露光、現像を行って、所定のブラックマトリクスパターンを形成する。続いて、180〜250℃程度の加熱処理を施してネガ型感光性樹脂組成物を熱硬化させ、隔壁パターン20を得る。この加熱方法としては、熱風循環式のオーブン、ホットプレート、赤外線による加熱等が利用でき、特に限定されるものではない。
【0032】
上記のネガ型感光性樹脂組成物の主成分は、バインダー樹脂、ラジカル重合性を有する化合物、光重合開始剤、溶剤、および遮光性部材である。まず、上記のバインダー樹脂としては、アルカリ可溶性の熱硬化性樹脂が好ましく、具体的には、クレゾール−ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。また、これらの樹脂に加えて、メラミン誘導体と光酸発生剤を含有させることもできる。メラミン誘導体としては、メチロール基あるいはメトキシメチル基を有している化合物であればよいが、溶剤に対する溶解性が大きいものが特に好ましい。
【0033】
上記のラジカル重合性を有する化合物としては、例えば、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマー、オリゴマー、末端あるいは側鎖にビニル基あるいはアリル基を有するポリマーを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、N-ビニル複素環類、アリルエーテル類、アリルエステル類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0034】
好適な化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートなど、比較的低分子量の多官能アクリレート等を挙げることが出来るが、この限りではない。これらのラジカル重合性を有する化合物は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらのラジカル重合性を有する化合物の量は、バインダー樹脂100重量部に対して1〜200重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは、バインダー樹脂100重量部に対して50〜150重量部である。
【0035】
また上記の光重合開始剤は、露光によりラジカルを発生し、ラジカル重合性を有する化合物を通して、バインダー樹脂を架橋させるものである。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキシド等のアシルフォスフィン誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(4’−メチルフェニル)イミダゾリル二量体等のロフィン二量体、N−フェニルグリシン等のN−アリールグリシン類、4,4’−ジアジドカルコン等の有機アジド類、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボキシ)ベンゾフェノン、キノンジアジド基含有化合物等を挙げることが出来る。
【0036】
これらの光重合開始剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらの光重合開始剤の量は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは、バインダー樹脂100重量部に対して1〜20重量部である。
【0037】
また上記の溶剤の一例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エチルエトキシアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2’エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【0038】
これらの溶剤の使用量は、基板上に塗布した際に均質であり、ピンホール、塗りむらの無い塗布膜ができる塗布であることが望ましく、感光性樹脂組成物の全重量に対し、溶剤量が50〜97重量%になるよう調製することが好ましい。
【0039】
また、上記の遮光部材(黒色遮光部材)は、ブラックマトリクスに遮光性を付与し、カラーフィルタのコントラストを向上させるものである。黒色遮光部材の一例としては、黒色顔料、黒色染料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、鉄黒、酸化チタン、無機顔料、及び有機顔料を用いることができる。これらの黒色遮光部材は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0040】
この他、隔壁パターン形成に用いるネガ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて相溶性のある添加剤、例えば、レベリング剤、連鎖移動剤、安定剤、増感色素、界面活性剤、カップリング剤等を加えることができる。
【0041】
続いて、柱状スペーサー40の形成方法について説明する。柱状スペーサー40の形成方法としては、隔壁パターン20と同様に、フォトリソグラフィー法、印刷法、転写法、インクジェット法、エッチング法等の従来公知の手法を用いることができる。柱状スペーサー40は、隔壁パターン20で囲まれた開口部30内に1つ以上配置され、1つ配置される場合には、図1に示すように、前記隔壁パターン20で囲まれた開口部30の略中央に配置されることが好ましく、画素間でのバラツキがなく、ほぼ同じ形状、パターンで配置することが好ましい。また、液晶表示装置のコントラストを高める上で、柱状スペーサー40も、有色或いは遮光性材料を含有して、遮光性を有する方が好ましい。さらには、隔壁パターン20の形成時のフォトマスクに、柱状スペーサー20のパターンも描画して、隔壁パターン20と同時に形成しても構わない。このことによって、上記したネガ型感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法による隔壁パターン20形成と同様にして、柱状スペーサー40を形成することができる。ここで柱状スペーサー40は、後述する着色層形成インク(機能層形成インク)に対する接触角が30°以下の親和性のある材料で形成することが望ましく、撥インク性を示す成分は含まないことが好ましい。
【0042】
柱状スペーサー40の底面形状は、特に限定するものでは無く、本実施形態の目的を達成し得る範囲で、図3の(a)〜(f)に示すような、円形、楕円形、方形、多角形、十字形、またそれぞれを組合せた形状など、様々な形状にて形成することが可能である。また数種類の形状の柱状スペーサー40を複数配置しても構わない。本実施形態では、被印刷面となる全開口領域を1とした場合に、この全開口領域に占める全柱状スペーサー40の底面積の比率が、0.0001〜0.01の範囲であることが好ましい。この全開口領域に対する柱状スペーサー40の底面積の比率が0.0001より小さいと、撥インク性成分の転写処理時の、開口部30内への不良転写を防ぐスペーサーとしての機能を充分に発揮できず、RGB画素の膜厚ムラや白抜けを発生しやすく、逆に、この比率が0.01より大きいと開口率の低下に伴い、光の取出し効率が低下し、液晶表示装置の輝度低下や消費エネルギーの増大につながる。
【0043】
さらに、隔壁パターン20と柱状スペーサー40との間隔は、300μm以内が好ましく、より好ましくは200μm以内、更に好ましくは100μm以内にすることが望ましい。隔壁パターン20と柱状スペーサー40の間隔を上記範囲内とすることで、開口部30内への撥インク性成分の不良転写を防止する効果をさらに高めることができる(図1参照)。
【0044】
続いて、隔壁パターン20と柱状スペーサー40を形成した基板に、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料を、隔壁パターン20の上表面21と撥インク性成分層22が接する状態で圧着して、隔壁パターン20の上表面21に撥インク性成分22を転写した後に、この仮支持体を剥離して、隔壁パターン20の上表面21に撥インク性を付与する(図1参照)。
【0045】
ここで、圧着とは例えばラミネートのように圧力をかけて接触させることであり、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料を、加熱及び/又は加圧した、ローラー又は平板で、圧着又は加熱圧着することによって、隔壁パターン上表面に撥インク性成分を貼り付けることができる。圧着には、公知のラミネーター方法や、公知のラミネーターを使用することができる。また、圧着の条件としては、圧着時の圧力は0.1MPa〜2.0MPaが好ましく、0.5MPa〜1.5MPaがより好ましい。圧着時の温度は、40℃〜150℃が好ましく、60℃〜120℃がより好ましい。
【0046】
上記の転写材料に用いられる仮支持体としては、撥インク性成分を均一に担持することが可能であり、圧着時の熱圧に耐え、隔壁パターン20の上表面21に良好に密着させる観点から、適度な可撓性を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の材質のフィルムを適宜利用することができる。仮支持体の厚みとしては、10〜300μmが好ましく、10〜150μmがより好ましい。上記の中でも、材質がポリエチレンテレフタレートで、厚みが15μm〜50μmの仮支持体が特に好ましい。
【0047】
撥インク性成分22は、上記の仮支持体上に層状に形成されており、隔壁パターン20の上表面21に圧着され、その全部又は一部が隔壁パターン20の上表面21に転写されることで、隔壁パターン20の上表面21に撥インク性を付与する役割をもつ。撥インク性成分22は、撥インク性化合物のほか、他の樹脂(バインダーポリマー等)、他のモノマーであり、界面活性剤などを適宜添加することができる。仮支持体上に撥インク性成分層を形成する方法としては、特に限定はないが、例えば、撥インク性成分を含む組成液を調製し、スリットコート、マイクログラビアコート等の公知の塗布方法によって仮支持体上に塗布することにより形成できる。また、仮支持体と撥インク性成分層との間に別の層を設けることも、本実施形態による効果を妨げない範囲で可能である。また、撥インク性成分22の厚みとしては、1nm〜1000nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0048】
撥インク性成分22としては、隔壁パターン20の上表面21に存在させた場合に上表面21がインクをはじく性質をもつようになる化合物であれば特に制限はないが、フッ素を含む含フッ素化合物を用いると、特に高い撥インク性を付与できるため、より好ましい。含フッ素化合物としては、後述する含フッ素モノマー、或いはそれら含フッ素モノマーからなる含フッ素ポリマー(含フッ素樹脂)のいずれを用いてもよく、これらを併用してもよい。また含フッ素ポリマーとしては、後述する含フッ素モノマーの1種以上を含み、非フッ素モノマーとの共重合物であっても構わない。
【0049】
以下に含フッ素モノマーの具体例を挙げる。例えば、CF3(CF27CH2CH2OCOCH=CH2、CF3(CF27CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF25CH2CH2OCOCH=CH2、CF3(CF23CH2CH2OCOCH=CH2、CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、CF3(CF25CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、CF3(CF23CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、(CF32CF(CF26(CH22OCOCH=CH2、(CF32CF(CF24(CH22OCOCH=CH2、(CF32CF(CF22(CH22OCOCH=CH2、CF3CH2OCOCH=CH2、CF3(CF24CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C715CON(C25)CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27SO2N(CH3)CH2CH2OCOCH=CH2、CF3(CF27SO2N(C37)CH2CH2OCOCH=CH2、C25SO2N(C37)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、(CF32CF(CF26(CH2)3OCOCH=CH2、(CF32CF(CF210(CH23OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF24CH(CH3)OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF24OCH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C25CON(C25)CH2OCOCH=CH2、CF3(CF22CON(CH3)CH(CH3)CH2OCOCH=CH2、H(CF26CH(C25)OCOC(CH3)=CH2、H(CF28CH2OCOCH=CH2、H(CF24CH2OCOCH=CH2、H(CF2)CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27SO2N(CH3)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27SO2N(CH3)(CH210OCOCH=CH2、C25SO2N(C25)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27SO2N(CH3)(CH24OCOCH=CH2、C25SO2N(C25)C(C25)HCH2OCOCH=CH2等のパーフルオロアルキルアクリレート、C37CH=CH2、C49CH=CH2、C1021CH=CH2、C37OCF=CF2、C715OCF=CF2及びC817OCF=CF2等のフルオロアルキル化オレフィン、さらにはCH2=CHCOOCH2(CF23CH2OCOCH=CH2、CH2=CHCOOCH2CH(CH2817)OCOCH=CH2、CF3CH2OCH2CH2OCOCH=CH2、C25(CH2CH2O)2CH2OCOCH=CH2、(CF32CFO(CH25OCOCH=CH2等が挙げられる。
【0050】
上記の中で、特に好ましい含フッ素モノマーとしては、CF3(CF27CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF25CH2CH2OCOCH=CH2、CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、CF3(CF25CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、(CF32CF(CF26(CH22OCOCH=CH2、(CF32CF(CF24(CH22OCOCH=CH2、等を挙げることができる。
【0051】
続いて、撥インク性を付与した隔壁パターン20により囲まれた開口部30に、赤(R)、緑(G)、青(B)の着色インクをインクジェット装置にて吐出して所定量を充填する。この時、隔壁パターン20の上表面21は十分な撥インク性を有し、且つ被印刷面となる隔壁パターン20の側面23を含む開口部分30全体は、親インク性が保たれており、このことから、着色インクは被印刷面に均一に濡れ広がり、隔壁パターン20の上表面に乗り上げて隣接画素に溢れ出ることも無い。その後、着色インク中の溶剤成分を揮発、樹脂成分を硬化させて、RGBの着色層50を形成し、本実施形態のカラーフィルタ1が得られる(図1参照)。
【0052】
使用するインクジェット装置としては、インク吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱変換方式とがあり、特にピエゾ変換方式が好適である。インクの粒子化周波数は5〜100KHz程度、ノズル径としては5〜80μm程度、ヘッドを複数個配置し、1ヘッドにノズルを60〜500個組み込んだ装置が好適である。
【0053】
上記の着色インクとしては、着色剤、バインダー成分、溶媒等公知の材料を用いることができ、必要に応じて、分散剤、安定剤、レベリング剤等の添加剤を添加して調製することができる。着色剤としては、染料や顔料を用いることができるが、耐熱性や耐候性等の信頼性の点で顔料分散型が特に好ましい。また、溶媒としては、水系および有機溶剤系を利用することができるが、多材料の溶解性に優れる有機溶剤系が好ましい。さらに、溶媒は、経時安定性、乾燥性を考慮して適宜選択される。また、数種類の混合溶媒を用いても構わない。
【0054】
着色インキ材料の顔料としては、耐候性に優れるものを用いることが好ましい。具体的には、C.I.Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、208、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254、C.I.Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、C.I.Pigment Green7、36、58、C.I.Pigment Yellow20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185、C.I.Pigment Orange36、C.I.Pigment Violet23等を使用することができる。さらに所望の色相を得るために2種以上の材料を混合して用いることができる。
【0055】
バインダー成分としては、それ自体は重合反応性のない樹脂、及び、それ自体が重合反応性を有する樹脂のいずれを用いてもよく、また、2種以上のバインダーを組み合わせて用いても良い。そして、バインダー成分を主体とし、必要に応じて、多官能のモノマーやオリゴマー、単官能のモノマーやオリゴマー、電離放射線により活性化する光重合開始剤、及び、増感剤などを配合して、電離放射線硬化性バインダー系を構成しても良い。
【0056】
非重合性バインダーとしては、例えば、次のモノマーの2種以上からなる共重合体を用いることができる。アクリル酸、メタクリル酸、トリメリット酸、メチルアクリレート、カプロラクトン、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーである。
【0057】
より具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレートマクロモノマー/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレンマクロモノマー共重合体などを例示することができる。
【0058】
一方、熱重合性官能基を有する樹脂をバインダー成分として用いる場合、例えば、次に示すようなエチレン性不飽和結合とエポキシ基を含有するモノマーの1種または2種以上を重合させた単独重合体または共重合体を用いることができる。アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどの(メタ)アクリレート類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、及び、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類;またメチル化メラミン、ブチル化メラミン、混合エーテル化メラミン、メチル化ベンゾグアナミン、混合エーテル化ベンゾグアナミン等のメラミン類である。
【0059】
上記のラジカル重合性を有する化合物としては、例えば、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマー、オリゴマー、末端あるいは側鎖にビニル基あるいはアリル基を有するポリマーを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、N−ビニル複素環類、アリルエーテル類、アリルエステル類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。好適な化合物としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートなど比較的低分子量の多官能アクリレート等を挙げることが出来るがこの限りではない。これらのラジカル重合性を有する化合物は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらのラジカル重合性を有する化合物の量は、バインダー成分100重量部に対して1〜200重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは、バインダー成分100重量部に対して50〜150重量部である。
【0060】
また、上記の光重合開始剤は、露光によりラジカルを発生し、ラジカル重合性を有する化合物を通して、バインダー樹脂を架橋させるものである。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキシド等のアシルフォスフィン誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(4’−メチルフェニル)イミダゾリル二量体等のロフィン二量体、N−フェニルグリシン等のN−アリールグリシン類、4,4’−ジアジドカルコン等の有機アジド類、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボキシ)ベンゾフェノン、キノンジアジド基含有化合物等を挙げることが出来る。これらの光重合開始剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。光重合開始剤の量は、バインダー成分100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは、バインダー成分100重量部に対して1〜20重量部である。
【0061】
分散剤は、顔料を良好に分散させるためにインキ組成物中に必要に応じて配合される。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0062】
すなわち、高分子分散剤では、キシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
【0063】
上記着色インクに用いる溶剤は、特に限定されるものではなく、使用される顔料、バインダー、インクに要求される品質等に応じて選択することができる。使用する溶剤としては、例えば、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチル等が挙げられる。上記溶剤は、二種類以上を混合して用いることもできる。
【0064】
本実施形態の着色インクにおいて、着色剤として顔料を用いる場合は、あらかじめ顔料を全使用量の一部の溶剤中で分散剤と混合して分散性を付与し、得られた顔料分散体(すなわち高濃度の顔料分散液)を他の配合成分と共に残部の溶剤中に投入して混合し着色インクとすることが多い。顔料分散体を調製するためには、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような顔料を分散させやすい溶剤を用いることが好ましい。
【0065】
また、着色インクの粘度は、1〜20mPa・sの範囲に調整することで、インクジェット方式での吐出性を安定させ、効率よく品質良好なカラーフィルタを製造することが出来る。
【0066】
隔壁パターン20で囲まれた開口部30に、インクジェットにて着色インクを充填し、必要に応じて減圧乾燥や紫外線照射処理を行い、熱風循環式オーブン、IRオーブン、ホットプレート等の公知の加熱装置を用いて、200〜250℃の温度で3分〜60分間ポストベーク処理を行って着色層50を硬化させ、本実施形態のインクジェット方式カラーフィルタ1を得ることができる(図1参照)。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、隔壁パターン20に囲まれた開口部30内に、適切に柱状のスペーサー40を配することで、従来では被印刷面内の一部にも撥インク性成分が転写されてしまっていた条件においても、不必要な部分への撥インク性成分の転写を抑えて、隔壁パターン20の上表面21への効果的な撥インク性付与が可能である。
【0068】
本実施形態のインキジェット法カラーフィルタ1は、さらに必要に応じて保護層を形成しても構わない。さらに、必要に応じて透明導電層や液晶配向分割突起やフォトスペーサー、配向膜層を順次積層せしめ、例えば薄膜トランジスタのような電極を形成した対向基板と対置させ液晶層を介して、液晶表示装置を構成することができる。
【0069】
(第二実施形態)
以下に、本発明の光学素子の第二実施形態である、塗布方式の有機EL素子2について、図2を参照して説明する。
【0070】
本発明の光学素子の第二実施形態としての塗布方式有機EL素子2(以下、単に、有機EL素子2という場合がある)は、以下のようにして作製される。図2から分かるように、まず、透明基板100上に、公知の成膜技術を用いて回路素子層を形成する(図示なし)。続いて、回路素子層上に、例えばITO(インジウムスズ複合酸化物:Indium Tin Oxide)からなる陽極110を形成する。続いて、回路素子層及び陽極110上に、絶縁層(画素分離膜)120を形成する。続いて、絶縁層120上に隔壁パターン130を形成する。さらに、隔壁パターン130により囲まれた開口部(開口領域)140内に柱形状のスペーサー150を形成し、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料を、隔壁パターン130の上表面に、加熱ロール等を用いて押し付け、仮支持体を剥離することで撥インク性成分(撥インク性層)132を転写する。
【0071】
その後、正孔注入層の材料を含んだ機能液を公知の塗工手段(例えば、インクジェット装置やノズルプリント装置等)により、撥インク性が付与された隔壁パターン130により囲まれた開口部140に塗工し、加熱処理を行い、溶剤を揮発、乾燥、固化させ、正孔注入層160を形成する。さらに、正孔注入層160上に、発光層の材料を含んだ機能液を、上記と同様の塗工手段により塗工し、加熱処理を行い、溶剤を揮発、乾燥、固化させて、発光層170を得る。さらに、発光層170の形成された素子基板上の略全体に、例えば蒸着法によって陰極180を形成し、続けて、陰極180上に、例えば、接着剤及びガラス基板、金属板等のバリア性を有する基材を用いて封止層190を形成することにより有機EL素子2が完成する。
【0072】
透明基板100は、透明性や、耐熱性、寸法安定性、機械的強度の特性が満足されるものであれば、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフィン、及びポリアクリレート等のプラスチックシートおよびプラスチックフィルムなどであっても良い。しかし、透明基板100としては、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れるガラス基板を用いることが好ましい。
【0073】
上記の回路素子層としては、公知のTFT(Thin Film Transistor)駆動回路等を利用することが可能であり、回路素子層は、図示しない走査線、信号線、電源線、スイッチング用TFT、保持容量等の各種配線や電極、駆動用TFT等からなり、公知の製造手法により形成される。TFTは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0074】
陽極110の材料としては、ITOやインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものを使用することができる。特に、陽極110の材料としては、ITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。また、陽極110の材料としては、下方から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。陽極110のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。基板としてTFTを形成した物を用いる場合は、下層の画素に対応して導通を図ることができるように形成する。
【0075】
絶縁層120は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(SiN)を含んだ絶縁層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、回路素子層及び陽極上を覆うように形成し、フォトリソグラフィー方式及びエッチング方式を用いて、発光領域に対応する領域に開口部140を設けて形成される。
【0076】
隔壁パターン130の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法、転写法、インクジェット法、エッチング法等、特に限定されず公知の手法を用いることができる。その中でも、精細なパターン形成が可能なフォトリソグラフィー法が、特に好ましい。フォトリソグラフィー法で隔壁パターン130を形成する場合は、公知の手法により、感光性樹脂組成物を絶縁層120上及び陽極110上に塗布して、所望パターンのフォトマスクを介して露光処理し、現像して不要部分を除去することで、隔壁パターン130を形成できる。隔壁パターン130の高さとしては、1〜10μm、より好ましくは、2〜5μmである。ここで言う、隔壁パターンの高さとは、隔壁パターン130で囲まれた開口部分140の最も低い面、つまり陽極110の表面から隔壁パターン130の最も高い部分までの距離であり、絶縁層120等の厚み分も含むものである。
【0077】
上記の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体、アクリレート、メタクリレート、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等と感光剤、増感剤、添加剤、溶剤等から調製される。また、上記の感光性樹脂組成物は、耐熱性、耐溶剤性、絶縁性を有し、発光材料の発光特性に悪影響を与えない材料であれば、特に限定されず、ネガ型、ポジ型いずれであっても利用できる。
【0078】
続いて、柱状スペーサー150の形成方法としては、隔壁パターン130と同様にフォトリソグラフィー法、印刷法、転写法、インクジェット法、エッチング法等の従来公知の手法を用いることができる。柱状スペーサー150は、隔壁パターン130で囲まれた開口部140内に1つ以上配置され、1つ配置される場合は隔壁パターン130で囲まれた開口部140の略中央に配置されることが好ましく、画素間でのバラツキがなく、ほぼ同じ形状、パターンで配置することが好ましい(図2参照)。また、隔壁パターン130の形成時のフォトマスクに、柱状スペーサー150のパターンも描画して、柱状スペーサー150を隔壁パターン130と同時に形成しても構わない。柱状スペーサー150を形成する材料としては、隔壁パターン130を形成する材料と同様の材料を用いることができ、耐熱性、耐溶剤性、絶縁性を有し、発光材料の発光特性に悪影響を与えない材料が好ましく、さらには、後述する正孔注入層160および発光層170を形成するための塗工材料に対する接触角が30°以下の親和性のある材料で形成することが望ましい。
【0079】
柱状スペーサー150の底面形状としては、特に限定は無く、上記した本発明の第一実施形態で示した、図3のような様々な形状にて形成することが可能である。また、数種類の形状の柱状スペーサー150を複数配置しても構わない。
【0080】
本実施形態においては、隔壁パターン130によって囲まれた開口部140には、陽極110表面が露出した発光領域と、回路素子層上に絶縁層120が積層された非発光領域とが含まれるが、後述する撥インク性成分の転写処理において、隔壁パターン130の上表面以外の箇所に撥インク性成分が転写されることを防止する目的を達成し得る範囲において、上記いずれの領域に柱状スペーサー150を形成しても構わない。陽極110表面の発光領域に柱状スペーサー150を設ける場合には、隔壁パターン130の高さ(開口部140の最も低い面から隔壁パターン130の最も高い部分までの高さ)を1としたときに、柱状スペーサー150の高さ(開口部140の最も低い面から柱状スペーサー150の最も高い部分までの高さ)の比率を、0.3〜1.2とすることが好ましい。この比率が0.3より低いとスペーサーとしての機能が発揮されず、この比率が1.2より高いと、柱状スペーサー150近傍の隔壁パターン130への撥インク性成分の転写が阻害され、機能層インクが隔壁上部まで乗り上げたり、隣接画素まで溢れ出したりして、混色や発光ムラ等の不良を発生する。
【0081】
更に好ましくは、この比率を、0.5〜1.0とすることで、その効果を更に高められる。一方、絶縁層120表面の非発光領域に柱状スペーサー150を設ける場合も、上記と同様の理由により、柱状スペーサー150の高さは隔壁パターン130の高さ1に対して、0.3〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0であることが望ましい。なお、絶縁層120表面は、回路素子層(図示せず)と絶縁層120の厚み分、発光領域より高くなっているために撥インク性成分が転写されやすいため、絶縁層120表面には、柱状スペーサー150を設けることがより好ましい。
【0082】
本実施形態では、被印刷面となる開口領域140全ての面積に占める柱状スペーサー150全ての底面積の比率が、0.0001〜0.01の範囲であることが好ましい。開口領域140全ての面積に占める柱状スペーサー150全ての底面積の比率が0.0001より小さいと、撥インク性成分の転写処理時の、開口部140内への不良転写を防ぐスペーサーとしての機能を充分に発揮できず、RGB画素の膜厚ムラや白抜けを発生しやすく、逆に、この比率が0.01より大きいと発光面積の低下に繋がり、有機EL表示装置の輝度低下や、駆動電圧の上昇に伴う発光寿命の低下を引き起こす。
【0083】
さらに、隔壁パターン130と柱状スペーサー150との間隔は、300μm以内が好ましく、より好ましくは200μm以内であり、更に好ましくは100μm以内である。隔壁パターン130と柱状スペーサー150との間隔を上記範囲内とすることで、開口部140内への撥インク性成分の不良転写を防止する効果をさらに高めることができる。
【0084】
続いて、隔壁パターン130と柱状スペーサー150とを形成した基板100に、撥インク性成分を仮支持体上に担持させた転写材料を、隔壁パターン130の上表面と撥インク性成分層132が接する状態で圧着して、隔壁パターン130の上表面に撥インク性成分を転写した後に、仮支持体を剥離して、隔壁パターン130の上表面に撥インク性成分層132を形成する。ここで、本撥インク性成分の付与工程は、第一実施形態と同様に実施し、転写材料も同様のものを用いることができる。
【0085】
正孔注入層160の機能液としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)等を用いることができる。PEDOT−PSS分散液の一例としては、PEDOTとPSSとの重量比が1:10、かつ固形分濃度が0.5%であり、ジエチレングリコールを50%含み、残量が純水であるものを用いることができる。
【0086】
続いて、機能液を乾燥させて正孔注入層160を形成する。詳しくは、機能液を高温環境下で乾燥又は焼成して溶媒を蒸発させ、機能液に含まれるPEDOT−PSSを固形化させることにより、開口部140内に正孔注入層160を形成する。乾燥の条件としては、例えば200℃の環境下に10分間放置する。正孔注入層160の膜厚は、例えば、50nmである。
【0087】
発光層170の機能液としては、例えば、赤色蛍光材料、緑色蛍光材料、青色蛍光材料等を溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。発光材料は、低分子材料、高分子材料のいずれでも構わない。また、溶媒としては、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、4−メチルアニソール、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒が好ましく用いられる。固形分濃度は、溶解する範囲で、0.5%〜3%程度で調製できる。
【0088】
続いて、機能液を高温環境下で乾燥又は焼成して溶媒を蒸発させて、発光層170を形成する。乾燥させる条件としては、例えば120℃の環境下で1時間放置する。形成された発光層170の膜厚としては、材料毎に最も発光効率および発光寿命が高くなる膜厚に調整することが好ましく、例えば、50〜100nmである。
【0089】
陰極180としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム等のフッ化アルカリ金属と、アルミニウム等を、この順に、蒸着法やスパッタ法等の公知の手法で、積層させることにより形成される。アルカリ土類金属やフッ化アルカリ金属の膜厚としては、例えば、5nm、アルミニウムの膜厚は、例えば、300nmである。また、封止190としては、必要に応じて、シリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(SiN)等の保護層を形成し、接着剤及びガラス基板、金属板、或いは水蒸気バリア性、酸素バリア性を有する樹脂シート等により、前記陰極全体を覆う形で貼り合わせることで形成される。
【実施例】
【0090】
以下に本発明の具体的な実施例を示す。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0091】
<カラーフィルタの実施例>
透明ガラス基板(コーニング社製「1737」)上に、黒色のネガ型感光性樹脂組成物(新日鐵化学社製「V259−BK739P」)を塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プレベーク後、露光、現像、230℃の熱風式焼成炉内で30分間ポストベークして、図4に示す隔壁パターン基板を作製した。
【0092】
続いて、上記の黒色のネガ型感光性樹脂組成物を、上記の隔壁パターン基板に塗布して、同様のフォトリソグラフィー法にて、図5に示す柱状スペーサー付きの隔壁パターン基板を作製した。柱状スペーサーの高さと底面積の測定結果を表1に示す。
【0093】
さらに、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン社製「AT301」)の片面に、フッ素系のコーティング剤(住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」)を塗工して、膜厚80nmの撥インク性成分層を形成した転写フィルムを作製した。上記の柱状スペーサー付きの隔壁パターン基板に、撥インク性成分層と隔壁パターン上表面が接する形で、上記転写フィルムを重ね、熱ラミネーター(大成ラミネーター社製VA400−III)にて、ロール温度140℃、シリンダー圧力0.4MPa、線圧6kgf/cm、ラミネート速度2m/分の条件で隔壁パターン上表面に撥インク性成分を転写した。ここで、後述するRGBインクに対する隔壁パターン上の接触角は、転写処理前は5°であったものが、45°となった。
【0094】
続いて、RGBの着色インクとして、下記組成比で配合して、ビーズミル分散機で冷却しながら3時間分散して調製したインク組成物を用い、ピエゾ方式、ノズル解像度180dpiのヘッドを搭載したインキジェット記録装置を用いて、上記隔壁パターンに囲まれた開口部にRGB3色の着色インキを充填した。引続き100℃のホットプレート上で3分間加熱してプレベークし、高圧水銀ランプにより3000mJ/cm2の紫外線照射処理を行った後、熱風式焼成炉内で240℃30分のポストベーク処理を行い、表1の実施例1〜4、および比較例1〜5のカラーフィルタを得た。
【0095】
[赤色のインク組成物]
・赤色顔料C.I.Pigment Red254“イルガフォーレッドB−CF”(チバスペシャルティケミカル社製):20重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部
・アクリル樹脂(メタクリル酸20重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部の共重合体):23重量部
・メチル化メラミン樹脂“ニカラックMW−30”(三和ケミカル社製):5重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート“アロニクスM−450”(東亞合成社製):5重量部
・光重合開始剤“イルガキュア907”(チバスペシャリティケミカル社製):1重量部
【0096】
[緑色のインク組成物]
・緑色顔料C.I.Pigment Green36“リオノールグリーン6YK”(東洋インキ製造社製):20重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部
・アクリル樹脂(メタクリル酸20重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部の共重合体):23重量部
・メチル化メラミン樹脂“ニカラックMW−30”(三和ケミカル社製):5重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート“アロニクスM−450”(東亞合成社製):5重量部
・光重合開始剤“イルガキュア907”(チバスペシャリティケミカル社製):1重量部
【0097】
[青色のインク組成物]
・青色顔料C.I.Pigment Blue15:6“ヘリオゲンブルー”(BASF社製):20重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部
・アクリル樹脂(メタクリル酸20重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部の共重合体):23重量部
・メチル化メラミン樹脂“ニカラックMW−30”(三和ケミカル社製):5重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート“アロニクスM−450”(東亞合成社製):5重量部
・光重合開始剤“イルガキュア907”(チバスペシャリティケミカル社製):1重量部
【0098】
上記した表1の実施例1〜4および比較例1〜5のカラーフィルタを、欠陥検査機により、白抜けと混色の有無を確認したところ、比較例1〜5のカラーフィルタは、白抜け或いは混色の欠陥が検出されたのに対し、実施例のカラーフィルタはいずれも白抜け/混色の欠陥が検出されなかった。
【0099】
さらに、上記の実施例1〜4および比較例1〜5のカラーフィルタの表面に、スパッタリングによりITO(Indium Tin Oxide)の透明電極を形成し、ポリイミドよりなる配向膜を設け、液晶を滴下して、対向するTFT基板と貼り合せて液晶セルを形成した。得られた液晶セルの両面に偏光板を貼り付け、冷陰極管を用いたバックライトを設けて液晶表示装置とした。この液晶表示装置にて表示状態を評価したところ、実施例の液晶表示装置は、いずれも良好な表示状態であった。
【0100】
【表1】

【0101】
<有機EL素子の実施例>
透明ガラス基板上に、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタと、その上方に形成された画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板を用い、その上にシリコン窒化膜をCVD成膜してエッチング処理し、画素電極の端部を被覆する形で、格子状の絶縁層パターンを形成した。さらにポジ型感光性樹脂組成物(日本ゼオン社製「ZWD6216−6」)を用いて、フォトリソグラフィー法により、絶縁層パターン上に、図6に示すようなストライプ状の隔壁パターンを形成した。
【0102】
続いて、上記のポジ型感光性樹脂組成物を、上記隔壁パターン基板に塗布して、同様のフォトリソグラフィー法にて、図6に示す柱状スペーサーを形成した。柱状スペーサーの高さと底面積の測定結果を表2に示す。ここで隔壁高さおよび柱状スペーサー高さは、隔壁パターンに囲まれた開口部分の最も低い部分から、隔壁の最も高い部分、および柱状スペーサーの最も高い部分までの高さを測定したものである。
【0103】
さらに、前記カラーフィルタの実施例で用いた撥インク性転写フィルムを用い、同様の方法により、隔壁パターンの上表面に撥インク性成分層を転写処理した。転写条件は、熱ラミネーター(大成ラミネーター社製VA400−III)にて、ロール温度140℃、シリンダー圧力0.4MPa、線圧6kgf/cm、ラミネート速度2m/分の条件で行った。ここで、後述する正孔注入層インクに対する隔壁パターン上の接触角は、転写処理前は20°であったものが、80°となった。
【0104】
続いて、正孔注入層を形成するためのインクとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)を固形分濃度が0.5%となるように純水とジエチレングリコールの1:1溶液に分散させたものを用いて、インクジェット方式にて、前記隔壁パターンに囲まれた開口部に塗工し、200℃のホットプレート上で10分間加熱して、50nmの膜厚の正孔注入層を形成した。
【0105】
その後、インターレイヤー材料であるポリビニルカルバゾール誘導体を濃度0.5%になるようにテトラリンに溶解させたインクを用い、同様にインクジェット方式にて塗工し、窒素雰囲気下にて200℃のホットプレート上で15分間加熱して、10nmの膜厚のインターレイヤーを形成した。
【0106】
次に、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにテトラリンに溶解させたRGB3色の有機発光インクを用い、同様にインクジェット方式にて塗工、窒素雰囲気下で乾燥させて、各80nmの膜厚のRGB発光層を形成した。
【0107】
その後、電子注入層として真空蒸着法でカルシウムを厚み10nm成膜し、その後対向電極としてアルミニウム膜150nm成膜した。
【0108】
その後、封止材としてガラス板を発光領域全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして本実施例の有機EL素子を得た。
【0109】
こうして得られた表2の実施例5〜8および比較例6〜10の有機EL素子の電極間に電圧を印加して、発光状態を評価した。比較例6〜8の有機EL素子では、開口部内に撥インク性成分が転写された箇所が有り、正孔注入層インク、インターレイヤーインク、発光層インクがはじかれて、白抜け部が形成されたことにより、非発光画素が生じたり、画素内の発光状態に偏りが生じたりして、暗く、ムラの多い表示状態であった。比較例9,10の有機EL素子では、隔壁パターン上への撥インク性成分の転写状態にムラが生じ、隔壁パターンから正孔注入層インク、インターレイヤーインク、発光層インクが溢れ出た画素にて発光色が変化したり、発光ムラが生じたりして、表示状態の悪化が見られた。これに対し、実施例5〜8の有機EL素子は、いずれも均一な発光が得られ、良好な表示状態であった。
【0110】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によると、簡易な転写方式にて、均一な撥インク性隔壁パターンを形成できることから、材料使用効率の高く、大型基板への適応が容易なインクジェット方式等を始めとする塗布方式にて、表示不良の無い高品質なカラーフィルタや有機EL表示装置を、安価に製造することが可能である。このことから、大画面の液晶テレビや有機ELテレビ等の大型表示装置への利用が可能となる。
【符号の説明】
【0112】
1…カラーフィルタ
10…透明基板
20…隔壁パターン
21…隔壁パターン上表面
22…撥インク性成分層
23…隔壁パターン側面
30…隔壁パターンで囲まれた開口部
40…柱状スペーサー
50R…赤色着色層
50G…緑色着色層
50B…青色着色層
2…塗布方式有機EL
100…透明基板
110…陽極
120…絶縁層
130…隔壁パターン
132…撥インク性成分層
140…隔壁パターンにより囲まれた開口部
150…柱状スペーサー
160…正孔注入・輸送層
170…発光層
180…陰極
190…封止

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する基板上に所望の機能層パターンが形成された光学素子であって、
前記機能層パターンを区分けする隔壁パターンと、
前記隔壁パターンの上表面に形成される撥インク性層と、
前記隔壁パターンによって区分けされて成る開口領域内に形成される柱形状のスペーサーと、
前記開口領域に機能層形成インクが塗布されることにより当該開口領域に形成される機能層とを備える、光学素子。
【請求項2】
前記開口領域において前記機能層形成インクが塗布される部分のうち最も低い部分から前記隔壁パターンの最も高い部分までの高さを1とした場合、当該最も低い部分から前記スペーサーの最も高い部分までの高さは、0.3〜1.2の範囲である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記開口領域において前記機能層形成インクが塗布される部分のうち最も低い部分から前記隔壁パターンの最も高い部分までの高さを1とした場合、当該最も低い部分から前記スペーサーの最も高い部分までの高さは、0.5〜1.0の範囲である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記開口領域の総面積に占める、前記スペーサーの底面の総面積の割合は、0.0001〜0.01の範囲である、請求項1〜3の何れかに記載の光学素子。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記機能層形成インクに対する接触角が30°以下の親和性のある材料で形成されている、請求項1〜4の何れかに記載の光学素子。
【請求項6】
前記撥インク性層は、フッ素を含む化合物である、請求項1〜5の何れかに記載の光学素子。
【請求項7】
光を透過する基板上に所望の機能層パターンが形成された光学素子の製造方法であって、
前記機能層パターンを区分けする隔壁パターンを形成するステップと、
前記隔壁パターンによって区分けされて成る開口領域内に柱形状のスペーサーを形成するステップと、
前記隔壁パターンの上表面に撥インク性層を形成するステップと、
前記開口領域に機能層形成インクを塗布することにより当該開口領域に機能層を形成するステップとを備える、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203226(P2012−203226A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68087(P2011−68087)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】