説明

光学素子及びそれを用いた撮像装置及びレンズ交換式カメラ

【課題】防塵性及び機械的強度に優れた防塵構造を有する光学素子及びそれを用いた撮像装置及びレンズ交換式カメラを提供する。
【解決手段】基材10と、基材10の表面に形成された防塵層20とを有する光学素子1であって、防塵層20は、細孔構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを転写型としてなり、細孔構造の逆パターンを有する複数の微細凸部21aからなる防塵構造21を有することを特徴とする光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防塵性に優れた光学素子及びそれを用いた撮像装置及びレンズ交換式カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学像を電気信号に変換するデジタルカメラや画像入力装置(例えばファクシミリ、スキャナ等)等の電子撮像装置が広く普及しているが、これら電子撮像装置では、光電変換素子(CCD)等の撮像素子の受光面に至る光路上(特に受光面近傍)に塵埃等の異物が存在すると、画像に写り込みを生じてしまう。
【0003】
特にデジタル一眼レフカメラでは、交換レンズを外したときにカバーガラス、赤外カットガラス、ローパスフィルタ等の撮像素子直前の光学素子に塵埃等の異物が付着し易い。またデジタルカメラに用いる空間周波数特性の制御用の光学ローパスフィルタは、一般的に複屈折特性を有する水晶板やニオブ酸リチウム板からなるため、振動等により帯電し易く、塵埃等が付着し易い。ファクシミリやスキャナ等の画像入力装置では、原稿が送られる際や原稿読取ユニットが移動する際に塵埃等を生じ、これがCCDの受光面近傍や原稿載置用のプラテンガラス等に付着することがある。
【0004】
特開2001-298640号(特許文献1)は、デジタルスチルカメラ内にワイパを設け、CCDの受光面、CCDの受光面側に配設されたローパスフィルタの表面又はCCDの受光面に至る光路を密閉した防塵構造ユニットの最外側の光学部材の表面をワイパで拭く方法を提案している。しかし、複雑な機構が必要であることや、消費電力が大きいという問題がある。
【0005】
また塵埃等の異物の付着の要因となる力として(1) 分子間力、(2) クーロン力、及び(3) 液架橋力の3つが知られている。これらを効果的に低減する機構を素子表面に設けることにより、塵埃等の付着を低減する方法が提案されている。
【0006】
例えば、特開2007-183366号(特許文献2)は、アルミナを含むゲル膜の表層部分を熱水処理するか、亜鉛化合物を含むゲル膜の表層部分を20℃以上の温度の含水液で処理することにより得られ、多数の微細な不規則な形状の凸部と、凸部の間に介在する溝状の凹部とが集合した微細な凹凸を表面に有する防塵膜が受光面に設けられた撮像素子を開示している。しかし、この方法では微細な凹凸構造の制御が困難であり、液相成膜や100〜400℃程度の焼成のプロセスを含むため基板選択の自由度が低く、製造工程が多いため製造時間・コストがかかる上に、得られる微細な凹凸は先鋭形状を有しているため、機械的強度が小さい。
【0007】
防塵機能を付与するのみでは完全に塵埃等の付着を防止できない場合もあり、塵埃等が付着してしまった場合には人為的に塵埃等を除去する必要がある。特に、前述したレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラにおいては、交換レンズを外し撮像素子部を露出させることにより、人間が容易に触れることができるようになるため、一般的には、ブロアーで送風したり、紙や布で拭き取る等して、撮像素子部に付着した塵埃等を除去することが考えられる。そのため、防塵構造を実用化するためには、防塵構造が塵埃等の除去作業に十分耐えうるだけの機械的強度を有することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-298640号公報
【特許文献2】特開2007-183366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、防塵性及び機械的強度に優れた防塵構造を有する光学素子及びそれを用いた撮像装置及びレンズ交換式カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、細孔構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを転写型としてなり、前記細孔構造の逆パターンを有する複数の微細凸部からなる防塵構造を有する防塵層を光学素子表面に形成することにより、防塵性及び機械的強度に優れた防塵構造を有する光学素子が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0011】
即ち、本発明の光学素子及びその製造方法は以下の特徴を有している。
(1) 基材と、前記基材の表面に形成された防塵層とを有する光学素子であって、前記防塵層は、細孔構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを転写型としてなり、前記細孔構造の逆パターンを有する複数の微細凸部からなる防塵構造を有することを特徴とする光学素子。
(2) 上記(1) に記載の光学素子において、前記微細凸部はほぼ円柱状であり、使用する光の最短波長以下の二次元周期で設けられており、もって前記防塵構造は反射防止機能を有することを特徴とする光学素子。
(3) 上記(1) 又は(2) に記載の光学素子において、前記防塵層は前記光学素子の受光面側に設けられていることを特徴とする光学素子。
(4) 上記(1)〜(3) のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵構造の平均表面粗さは1〜100 nmであることを特徴とする光学素子。
(5) 上記(2)〜(4) のいずれかに記載の光学素子において、前記微細凸部の平均周期は50〜500 nmであることを特徴とする光学素子。
(6) 上記(1)〜(5) のいずれかに記載の光学素子において、前記微細凸部の平均高さは10〜300 nmであることを特徴とする光学素子。
(7) 上記(1)〜(6) のいずれかに記載の光学素子において、HAZEが0.5以下であることを特徴とする光学素子。
(8) 上記(1)〜(7) のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層は樹脂からなることを特徴とする光学素子。
(9) 上記(8) に記載の光学素子において、前記防塵層は光硬化性樹脂からなることを特徴とする光学素子。
(10) 上記(8) に記載の光学素子において、前記防塵層は熱硬化性樹脂からなることを特徴とする光学素子。
(11) 上記(1)〜(10) のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層は導電性フィラーを有することを特徴とする光学素子。
(12) 上記(1)〜(11) のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層の下地層として帯電防止層を有することを特徴とする光学素子。
(13) 上記(1)〜(12) のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層の上に撥水性又は撥水撥油性の膜を有することを特徴とする光学素子。
(14) 上記(1)〜(13) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材はガラス基板であることを特徴とする光学素子。
(15) 上記(1)〜(14) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は水晶又はニオブ酸リチウムであることを特徴とする光学素子。
(16) 上記(1)〜(14) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は撮像素子のカバーガラスであることを特徴とする光学素子。
(17) 上記(1)〜(14) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は赤外カットガラスであることを特徴とする光学素子。
(18) 上記(1)〜(14) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は光学ローパスフィルタであることを特徴とする光学素子。
(19) 上記(1)〜(18) のいずれかに記載の光学素子において、前記基材はカバーガラス、赤外カットガラス又は光学ローパスフィルタと貼り合わされていることを特徴とする光学素子。
(20) 上記(1)〜(19) のいずれかに記載の光学素子を有する撮像装置。
(21) 上記(1)〜(19) のいずれかに記載の光学素子を有するレンズ交換式カメラ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学素子は、細孔構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを転写型としてなり、前記細孔構造の逆パターンを有する複数の微細凸部からなる防塵構造を有する防塵層が光学素子表面に形成されているので、防塵性及び機械的強度に優れている。
また本発明によれば、上記光学素子を有する撮像装置及びレンズ交換式カメラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例による光学素子を示す断面図である。
【図2】ポーラスアルミナ転写型の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による光学素子の製造方法を示す図である。
【図4】ポーラスアルミナを示すSEM写真である。
【図5】二次元周期構造体を示すSEM写真である。
【図6】光学素子の反射率の分光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1] 光学素子
本発明の光学素子1は、図1に示すように、基材10と、基材10の表面に形成された防塵層20とを有し、防塵層20には複数の微細凸部21aが二次元周期で配置された防塵構造21が設けられている。微細凸部21aは高さ方向に径がほぼ均一な円柱構造を有する。防塵層20は基材10の両面に設けても良いが、光学素子1の受光面側に設けられているのが好ましい。なお説明のため、防塵層20は実際より厚く図示されている。
【0015】
(1) 基材
基材10は光透過性を有するのが好ましく、一般的なガラス基板や光学ローパスフィルタ、撮像素子のカバーガラス、赤外カットガラス等が挙げられる。また基材10をカバーガラス、赤外カットガラス又は光学ローパスフィルタと貼り合わしても良い。
【0016】
基材10の材料は、光学素子の用途に応じて適宜選択すればよく、無機物、無機化合物でも有機ポリマーでもよい。例えば基材10が撮像素子用の光学ローパスフィルタである場合、材料として複屈折性を有する水晶、ニオブ酸リチウム等が挙げられる。基材10が一般的なガラス基板や撮像素子のカバーガラスである場合、材料として各種無機ガラス(例えばシリカ、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス等)を用いることができる。また、透明ポリマー[例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂等のポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂等]等を用いても良い。基材10の形状及び厚さは用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0017】
(2) 防塵層
防塵層20の防塵構造21において、微細凸部21aの面密度の指標である三次元平均表面粗さ(SRa)が大きいほど、防塵層20に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力を低減する効果が高い。分子間力Fとは、分子と分子が非常に接近した際に発生する引力のことであり、下記一般式(1):

[AはHamaker定数(van der Waals 相互作用の大きさを表す量)であり、Dは塵埃粒子径であり、Zは塵埃粒子と防塵層20の表面との間の距離であり、kは防塵層20の弾性係数であり、bは防塵層20の三次元平均表面粗さSRaである。]により表すことができる。分子間力Fに影響を与えるパラメータの中で、特にSRaが支配的である。防塵層20の表面の三次元平均表面粗さSRaを大きくすることにより、分子間力Fが低減し、塵埃粒子の付着力も低減させることができる。
【0018】
また均一に帯電した塵埃粒子と防塵層20との間の接触帯電付着力F1は、下記一般式(2):

[ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、Vcは塵埃粒子と防塵層20との接触電位差であり、AはHamaker定数(van der Waals 相互作用の大きさを表す量)であり、kは下記式:k=k1 + k2(ただしk1及びk2は各々k1=(1−ν12)/E1及びk2=(1−ν22)/E2であり、ν1及びν2は防塵層20及び塵埃粒子のPoisson比であり、E1及びE2はそれぞれ防塵層20及び塵埃粒子のYoung率である。)により表される係数であり、Dは塵埃粒子径であり、Z0は防塵層20と塵埃粒子との間の距離であり、bは防塵層20のSRaである。]により表され、化学的なポテンシャルの差により発生する。式(2) から明らかなように、b(防塵層20のSRa)を大きくすることにより、接触帯電付着力F1も小さくできる。
【0019】
三次元平均表面粗さSRaは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてJIS B0601により求められる中心線平均粗さ(Ra:算術平均粗さ)を三次元に拡張したものであって、下記式(3):

(ただしXL〜XRは測定面のX座標の範囲であり、YB〜YTは測定面のY座標の範囲であり、S0は測定面がフラットであるとした場合の面積|XR−XL|×|YT−YB|であり、XはX座標であり、YはY座標であり、F(X,Y)は測定点(X,Y)における高さであり、Z0は測定面内の平均高さである。)により表される。
【0020】
三次元平均表面粗さSRaは1〜100 nmであるのが好ましく、5〜50 nmであるのが特に好ましい。防塵層20のSRaが1nm以上であると、防塵層20に付着した塵埃粒子の分子間力F及び接触帯電付着力F1が十分に小さく、SRaが100 nmを超えると光の散乱が発生し、光学機器には不適になる。Sraは、微細凸部21aの周期、高さ及び太さを制御することにより、適宜調節することができる。
【0021】
式(1) 及び(2) 中のHamaker定数Aは屈折率の関数で近似され、屈折率が小さいほど小さくなる。具体的には、防塵層20は、最表層である場合、又は後述する撥水膜又は撥水撥油性膜を表面に有する場合のいずれの場合でも、その屈折率が1.50以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。
【0022】
微細凸部21aの平均高さは、限定的ではないが、10〜300 nmであるのが好ましく、50〜200 nmであるのがより好ましい。微細凸部21aの平均高さは10〜300 nmであると、優れた防塵効果が得られる。また反射防止性にも優れ、高い透過率が得られる。微細凸部21aの平均高さはAFM測定やSEMによる形状観察により推定した。
【0023】
防塵層20の比表面積(SR)は、限定的ではないが、1.05以上であるのが好ましく、1.15以上であるのがより好ましい。SRは、下記式(4):
SR=S/S0 ・・・(4)
(ただしS0は測定面がフラットであるとした場合の面積であり、Sは防塵層20の表面積値である。)により求めれる。SRは、光の散乱が発生しない程度の大きさであるのが好ましい。
【0024】
防塵層20の微細凸部21aは高さ方向に径がほぼ均一な円柱構造を有しているので、錐状の凸部と比べて機械的強度に優れている。そのため、紙や布による拭き取り等の塵埃の除去作業に対しても、防塵構造21は十分に耐えることができる。
【0025】
防塵層20の表面の透明度(HAZE)は0.5以下であるのが好ましく、
0.3以下であるのがより好ましい。HAZEは、JIS K7136に準拠して求める。HAZEが0.5以下であるば、光透過系の光学素子に対しても用いることができる。
【0026】
防塵層20の材料は、光学系に使用可能なものであれば特に限定されないが、樹脂であるのが好ましい。防塵構造21を樹脂で形成することにより、適度な硬さと弾力性を有することができる。具体的には、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。特に流動性及び形成性に優れた光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂であるのが好ましく、中でも、紫外線硬化性樹脂が特に好ましい。
【0027】
防塵層20には導電性フィラーが含有されているのが好ましい。導電性フィラーが含有されることにより、防塵層20に導電性を付与して帯電を防止し、塵埃粒子の光学素子1の表面への帯電付着力を低減することができる。導電性フィラーは吸収や散乱等、光の透過を妨げるような現象を生じなければ特に物質や形状は制限されず、公知のものが使用できるが、導電性無機材料からなる微粒子であるのが好ましい。導電性無機材料としては、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)、及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)が挙げられる
【0028】
(3) 帯電防止層
防塵層20と基材10との間に防塵層20の下地層として帯電防止層を設けても良い。帯電防止層を設けることにより塵埃付着の原因の一つであるクーロン力を低減でき、耐塵埃付着性が一層向上する。均一に帯電した塵埃粒子と防塵層20との間の静電付着力F2は下記一般式(5):

(ただしq1及びq2はそれぞれ防塵層20及び塵埃粒子の電荷(C)であり、rは粒子半径であり、ε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)である。)により表される。式(5)から明らかなように、防塵層20又は塵埃粒子の帯電量を低減することにより静電付着力F2を低減できるため、帯電防止層により除電するのは効果的である。また均一に帯電した塵埃粒子と防塵層20との間の電気映像力F3は下記一般式(6):

(ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、εは防塵層20の誘電率であり、qは塵埃粒子の電荷であり、rは粒子半径である。)により表され、帯電していない防塵層20に電荷を有する塵埃粒子が近づくと異符号等価の電荷が誘起されることにより発生する力である。電気映像力F3はほぼ塵埃粒子の帯電率に依存するため、付着した塵埃粒子を帯電防止層により除電することにより小さくすることができる。帯電防止層による除電効果に比べて電気映像力F3を低減する効果は低いが、防塵層20を誘電率の小さいものとしてもよい。
【0029】
帯電防止層の表面抵抗は、1×1014Ω/□以下であるのが好ましく、1×1012Ω/□以下であるのがより好ましい。帯電防止層の屈折率は特に制限されないが、基板10もしくは防塵層20と同じにするか、基板10と防塵層20の屈折率の中間程度とするのが好ましい。帯電防止層の厚さは特に制限されないが、0.01〜3μmであるのが好ましい。
【0030】
帯電防止層の材質は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、公知のものが使用できる。帯電防止層として、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる群から選ばれた少なくとも一種の導電性無機材料を含む膜が挙げられる。帯電防止層は、上記導電性無機材料からなる微粒子(導電性無機微粒子)とバインダとからなる複合膜であってもよいし、上記導電性無機材料からなる緻密膜(例えば蒸着膜等)であってもよい。バインダ成分として金属アルコキシド又はそのオリゴマーや、紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物(例えばアクリル酸エステル等)が挙げられる。ここで「バインダ成分」とは、重合によりバインダとなるモノマー又はオリゴマーを言う。
【0031】
(4) 撥水性又は撥水撥油性の膜
防塵層20の表面に撥水性又は撥水撥油性の膜(以下特段の断りがない限り、「撥水/撥油性膜」と表記する。)を設けても良い。撥水/撥油性膜は通常最表面に形成する。球形の塵埃粒子と防塵層20との間の液架橋力F4は、
下記一般式(7):
F4=−2πγD ・・・(7)
(ただしγは液の表面張力であり、Dは塵埃粒子の粒径である。)により表され、防塵層20と塵埃粒子の接触部に液体が凝集することによりできる液架橋により生じる力である。よって防塵層20上に撥水/撥油性膜を形成し、水や油の付着を低減すると、液架橋力F4による塵埃粒子の付着を低減できる。
【0032】
また一般的に凹凸面での水の接触角と、平滑面での水の接触角には下記式(8):
cosθγ=γcosθ ・・・(8)
(ただしθγは凹凸面での接触角であり、γは表面積倍増因子であり、θは平滑面での接触角である。)により近似される関係が有る。通常γ>1であるので、θγは、θ<90°である時にはθより小さく、θ>90°である時にはθより大きい。よって一般的に親水性表面の面積を凹凸化により大きくすると親水性が一層強まり、撥水性表面の面積を凹凸化により大きくすると撥水性が一層強くなる。そのため微細な凹凸を有する防塵層20上に、凹凸を保持するように撥水膜を形成すると、高い撥水効果が得られる。最表面に撥水/撥油性膜を形成した場合も、防塵層20の三次元平均表面粗さ(SRa)、比表面積(SR)及び微細凸部21aの平均高さはそれぞれ上記の範囲内であるのが好ましい。
【0033】
撥水/撥油性膜の材質は特に制限されないが、無色で透明性が高いものであるのが好ましい。撥水/撥油性膜の材質として、例えばフッ素を含有する無機又は有機の化合物、フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマー、フッ化ピッチ[例えばCFn(n:1.1〜1.6)]、フッ化グラファイト等が挙げられる。
【0034】
フッ素含有無機化合物として、例えばLiF、MgF2、CaF2、AlF3、BaF2、YF3、LaF3及びCaF3からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。これらのフッ素含有無機化合物は、例えばキャノンオプトロン株式会社から入手できる。
【0035】
フッ素含有有機化合物として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、フッ素含有オレフィン系化合物の重合体、並びにフッ素含有オレフィン系化合物及びこれと共重合可能な単量体からなる共重合体が挙げられる。そのような(共)重合体として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PFEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体(PFA)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PECTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PEPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。フッ素樹脂として市販のフッ素含有組成物を重合させたものを使用してもよい。市販のフッ素含有組成物として例えばオプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーとして、フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーが挙げられる。フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーとして、フルオロカーボン基を有するフッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。フッ素含有シラン化合物としては下記式(9):
CF3(CF2)a(CH2)2SiRbXc・・・(9)
(ただしRはアルキル基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、aは0〜7の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつb + c = 3である。)により表される化合物が挙げられる。式(9)により表される化合物の具体例として、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3Cl2等が挙げられる。有機珪素ポリマーとして市販品を用いてもよく、例えばノベックEGC-1720(住友スリーエム株式会社製)やXC98-B2472(GE東芝シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
撥水/撥油性膜の厚さは0.4〜100 nmであるのが好ましく、10〜80 nmであるのがより好ましい。撥水/撥油性膜の厚さを0.4〜100 nmとすると、防塵層20のSRa、SR及び微細凸部21aの平均高さを上記範囲に保持できる。よって0.4〜100 nmの厚さの撥水/撥油性膜を最表面に形成すると、防塵層20の微細な凹凸による分子間力F及び接触帯電付着力F1に対する低減効果と、撥水/撥油性膜による静電付着力F2及び電気映像力F3に対する低減効果との両者により耐塵埃付着性が一層向上する。撥水/撥油性膜の厚さが0.4 nm未満であると、撥水/撥油性が不十分であると共に、例えばフッ素樹脂を使用した場合に期待できる電気映像力F3の低減効果が期待できない。一方100 nm超とすると、防塵層20の微細な凹凸が吸収されてしまい、耐塵埃付着性が低下する。撥水/撥油性膜の屈折率も1.5以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。
【0038】
(5) 反射防止機能
防塵構造21の微細凸部21aは、高さ方向に径がほぼ均一な円柱構造を有し、使用する光の波長以下の周期で二次元配置されているのが好ましい。微細凸部21aを使用する光の波長以下の周期で二次元配置すると、防塵構造21は、入射媒質の屈折率と防塵層20の屈折率との中間的な屈折率を有する反射防止膜としても機能する。この屈折率を防塵構造21の実効屈折率と呼ぶ。防塵構造21の実効屈折率は、防塵構造21における媒質と微細凸部21aとの体積比(微細凸部21aの体積占有率f)に相関する。微細凸部21aが完全に均一な二次元周期性を持たず多少のランダム性を持っていたとしても、構造体の周期や径の分布が小さければ、二次元的に等しい体積占有率を有しているとみなすことができ、その実効屈折率も二次元的に均一であるとみなせる。このときの体積占有率は、構造体が理想的な二次元配置である六方細密に配置していること想定し、その周期は構造の平均的な周期を用いて推定すればよく、また微細凸部21aは円柱状であり構造の高さ方向の体積変化は無いことから、体積占有率は結果的に二次元上に六方細密で配置した円柱構造の断面積の比率に相関することになる。よって、微細凸部21aの体積占有率fは、微細凸部21aの平均太さをD(nm)とし、微細凸部21aの平均周期をp(nm)としたとき、下記式(10):
f=πD2/(2×√3×p2) ・・・(10)
から求められる。微細凸部21aの平均太さDと平均周期pとの比は
0.1〜1.0であるのが好ましい。
【0039】
防塵構造21の実効屈折率nは、防塵層20の屈折率をnmとし、入射媒質の屈折率をn0としたとき、下記式(11):
n=fnm+(1―f)n0 ・・・(11)
から求めることができる。また二乗平均をとって、下記式(12):
n=(fnm2+(1―f)n021/2 ・・・(12)
から求めてもよい。
【0040】
防塵構造21の実効屈折率nは、下記式(13):
n=(n0nm)1/2 ・・・(13)
を満たすのが好ましい。防塵構造21の実効屈折率nが式(13) を満たすとき、防塵構造21と入射媒質との界面における反射光と防塵構造21と基材部30との界面における反射光との干渉により、防塵層20の表面における入射光の反射を最小にできる。材料や製造上の制約によりこの条件が満たせない場合は、必ずしも条件を満たす必要は無いが、式(13)の条件に近いほうが反射防止効果は高く、式(13)の条件に近づけることが望ましい。
【0041】
防塵層20を構成する材料の屈折率は基材10の屈折率とほぼ同じであるのが好ましい。それにより、防塵層20と基材10との界面での不要な干渉を抑えることができる。また基材10の屈折率、防塵層20の屈折率及び防塵構造21の実効屈折率との組み合わせて反射防止機能を持たせても良い。
【0042】
微細凸部21aの平均周期pは、使用する光の波長に応じて適宜設定可能であるが、50〜500 nmであるのが好ましく、100〜300 nmであるのがより好ましい。これにより、優れた防塵効果と反射防止効果が得られる。また微細凸部21aの平均周期pと使用する光の波長との比は
0.1〜1.0であるのが好ましい。
【0043】
微細凸部21aの平均高さh(nm)は、実質的に光学素子1の基材部30の表面に形成された反射防止膜の厚さとみなすことができ、使用する光の波長をλ(nm)とすると、下記式(14):
h=λ/4n ・・・(14)
を満たすのが好ましい。また使用する光の波長がλ1(nm)からλ2(nm)の範囲内であるとき、下記式(15):
λ1/4≦nh≦λ2/4 ・・・(15)
を満たすのが好ましい。
例えば、使用する光が可視光(波長はおよそ400〜700nm)である場合、100nm≦nh≦175nmを満たすのが好ましい。
【0044】
光学素子1の分光反射率の極小値(ピーク反射率)を示す波長の少なくとも一つを使用する光の波長と一致させるのが好ましい。また、使用する光の波長がλ1(nm)からλ2(nm)の範囲内であるとき、光学素子1の分光反射率の極小値(ピーク反射率)を示す波長の少なくとも一つをλ1からλ2範囲に入るよう調整するのが好ましい。特に使用する波長が可視光領域である場合、ピーク反射率を示す波長を450〜550nmの範囲に入るよう調整するのが好ましい。ピーク反射率を示す波長をこの範囲に入るよう調整することにより可視光領域全域で良好な反射防止効果を得ることができる。
【0045】
微細凸部21aの周期、高さ及び太さを制御することにより、その構造体の実効屈折率及び光学厚さを制御することができるため、従来の反射防止膜と比べて自由度があり、入射媒質及び基材の種類にかかわらず良好な反射防止特性が得られる。従来の錐状微細構造と異なり、構造体の屈折率境界における光波の反射及びそれらの干渉現象を積極的に利用することにより、簡単な構造で光学素子1の反射率を抑えることができる。
【0046】
光学素子1は本発明に用いることができるものであればこれらに限定されず、一般的なガラス基板や光学レンズ、光学ローパスフィルタ、撮像素子のカバーガラス、赤外カットガラス等の種々のものを用いることができる。光学素子1の材料は用途に応じて適宜選択すればよく、無機化合物でも有機ポリマーでもよい。例えば光学素子1が撮像素子用の光学フィルタ(光学ローパスフィルタ)である場合、材料として複屈折性を有する水晶、ニオブ酸リチウム等が挙げられる。光学素子1が一般的なガラス基板や撮像素子のカバーガラスである場合、材料として各種無機ガラス(例えばシリカ、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス等)を用いることができる。透明ポリマー[例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂等のポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂等]等を用いても良い。光学素子1の形状及び厚さは用途に応じて適宜選択すれば良い。基材10の表面には反射防止コートや赤外カットコートのようなコーティングが形成されていても良い。また、コーティングに導電性を付与することにより帯電防止層として用いても良い。
【0047】
[2] 光学素子の製造方法
(a) 陽極酸化ポーラスアルミナの製造
図2(a) に示すように、高純度のアルミ基板、ガラス基板等の表面に真空蒸着法、スパッタリング法等により高純度のアルミ膜42を形成し、処理基板41を作製する。アルミ膜42の材料は、陽極酸化処理が可能なものであれば特に限定されないが、不純物を含むと陽極酸化処理時にポーラス構造に大きな欠陥が生じることから、できるだけ純度の高いアルミニウムを用いるのが好ましい。具体的には、純度99%以上のものを用いるのが好ましい。
【0048】
処理基板41に陽極酸化処理を施すことにより、図2(b) に示すように、処理基板41のアルミ膜42を酸化させ、二次元周期の細孔構造を有するポーラスアルミナ43を形成する。陽極酸化に用いる電解質としてはシュウ酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。得られたポーラスアルミナ43が形成された処理基板41をポーラスアルミナ転写型40とする。
【0049】
ポーラスアルミナ43の細孔の深さ及び周期は陽極酸化処理時の印加電圧、電流、処理時間、酸性電解液の酸の種類、濃度、温度、処理するアルミの表面積等といった製造条件に相関する。そのため、これらの製造条件を調整することにより、ポーラスアルミナ43の細孔の深さ及び周期を制御することができる。例えば、陽極酸化時に印加する電圧を高くすると周期が大きくなり、陽極酸化の処理時間を長くすると細孔の深さが大きくなる。
【0050】
陽極酸化処理後のポーラスアルミナ層の細孔径は小さいため、所望の細孔径となるようにポーラスアルミナ43の細孔径を調節する処理を行っても良い。例えば、リン酸等の酸に浸漬することにより細孔径を大きくすることができる。このようにポーラスアルミナ43の細孔の深さ、径及び周期を制御することにより、所望の実効屈折率及び高さを有する防塵構造21が得られる。
【0051】
陽極酸化処理によりポーラスアルミナを一旦形成し、クロム酸及びリン酸の混酸等の剥離液に浸漬してポーラスアルミナを剥離した後、再び陽極酸化処理を行ってポーラスアルミナ43を形成しても良い。このような前処理を行うことにより、ポーラスアルミナ43の表面状態及び細孔の周期性を整えることができる。
【0052】
(b) 防塵層の形成
基材10の表面に形成された防塵構造21を有する防塵層20を設ける方法としては、例えば図3(a)〜(d) に示すように、ポーラスアルミナ転写型40と基材10に熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の防塵層20の材料を塗布し、その上にポーラスアルミナ転写型40を押圧した状態で、加熱、光照射等を行って樹脂を硬化させたりすることにより、基材10の表面に防塵層20を設けるとともに、防塵層20の表面に防塵構造21を転写する方法が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
鏡面研磨した石英基板41上に真空蒸着法により純度99.99%のアルミ膜42を約1μm成膜した。石英基板41を17℃の0.3 Mシュウ酸電解質に浸漬し、陽極に電圧40Vを印加して、石英基板41の表面にポーラスアルミナを形成した。この石英基板41をクロム酸及びリン酸の混酸の剥離液に浸漬し、作製したポーラスアルミナを剥離した後、再び同じ条件で30秒間陽極酸化処理を行い、石英基板41の表面にポーラスアルミナ43を形成した。その後、30℃の5wt%リン酸に30分間浸漬して孔径拡大処理を行った。ポーラスアルミナ43が形成された石英基板41を純水により洗浄した後、乾燥させ、ポーラスアルミナ転写型40が得られた。図4(a) 及び(b) に示すように、ポーラスアルミナ43の表面には約100 nmの二次元周期で細孔が形成されていた。ポーラスアルミナ転写型40を離型剤(オプツールHD/ダイキン化成品販売株式会社)に浸漬し、一定速度で引き上げた後、乾燥させることにより、ポーラスアルミナ43の細孔に離型膜を形成した。
【0055】
基板10として、屈折率(1.52)を有するガラス基板(BK7)を使用した。基板10の受光面に紫外線硬化樹脂(PAK‐01/東洋合成工業株式会社)を塗布した。紫外線硬化樹脂(PAK‐01)はガラス基板(BK7)とほぼ同じ屈折率(1.52)を有する。ポーラスアルミナ転写型40を紫外線硬化樹脂に押圧し、密着させた状態で紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させ、樹脂層20を形成した。
【0056】
ポーラスアルミナ転写型40から離型させると、図5(a) 及び(b) に示す防塵構造21を有する光学素子1が得られた。防塵構造21の微細凸部21aは、直径が約70 nmであり、高さが約100 nmであり、約100 nmの二次元周期で形成されていた。
【0057】
光学素子1の分光反射率特性を測定したところ、図6に示すように、400〜700 nmの可視光領域で反射率が1%以下であった。従って、可視域で良好な反射防止特性が得られていると言える。また光の散乱の度合いを判断するためにHAZE測定を実施したところ、樹脂層20を形成する前の基板10のHAZEが0%であったのに対し、樹脂層20を形成した光学素子1のHAZEは0.2%であった。このことから防塵構造21を有する樹脂層20の形成により、若干の光の散乱が発生していると考えられるが、HAZEが0.2%であれば透過光学系で十分使用可能であると考えられる。
【0058】
光学素子1の樹脂層20が形成された面に疑似ゴミとして粒子分布5〜75μmのけい砂を振りかけ、ブロアーで送風したところ、樹脂層20の表面のけい砂の大部分が除去されていた。防塵構造21の表面状態は送風前後で変化が確認されなかった。ブロアーでの送風の代わりに市販の防塵スプレーでも送風テストを行ったが、やはり表面状態の変化は確認されなかった。
【0059】
樹脂層20の防塵構造21に付着したゴミを紙で拭き取るテストを行った。紙には、一般的にレンズ拭き取りに用いられる専用紙を使用した。光学素子1の樹脂層20が形成された面に上記のけい砂を振りかけ、一定の負荷を掛けて、けい砂が除去されるまで拭き取りを行った。拭き取りテスト後、樹脂層20の表面を確認したところ、表面状態の変化は確認されなかった。
【0060】
上記のレンズ拭き取り専用紙にメタノールを含ませて、拭き取りテストを行った。拭き取りテスト後、樹脂層20の表面を確認したところ、表面状態の変化は確認されなかった。
【0061】
送風テスト及び拭き取りテスト後に分光反射率及びHAZEを測定したが、変化は見られなかった。
【0062】
比較例1
基板10として実施例1と同じものを使用し、樹脂層20を形成しなかった。実施例1と同様に送風テストを行ったところ、基板10の表面にけい砂の多くが残留しているの確認した。また分光反射率特性を測定したところ、400〜700 nmの可視光領域で反射率が約4%であった。
【0063】
以上の結果から、防塵構造21を有する樹脂層20は、優れた防塵性及び反射防止特性を有し、十分な耐久性及び機械的強度を有することが分かった。
【符号の説明】
【0064】
1・・・光学素子
10・・・基材
20・・・樹脂層
21・・・防塵構造
21a・・・微細凸部
40・・・ポーラスアルミナ転写型
41・・・処理基板
42・・・アルミ膜
43・・・ポーラスアルミナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に形成された防塵層とを有する光学素子であって、前記防塵層は、細孔構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを転写型としてなり、前記細孔構造の逆パターンを有する複数の微細凸部からなる防塵構造を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、前記微細凸部はほぼ円柱状であり、使用する光の最短波長以下の二次元周期で設けられており、もって前記防塵構造は反射防止機能を有することを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学素子において、前記防塵層は前記光学素子の受光面側に設けられていることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵構造の平均表面粗さは1〜100 nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の光学素子において、前記微細凸部の平均周期は50〜500 nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子において、前記微細凸部の平均高さは10〜300 nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学素子において、HAZEが0.5以下であることを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層は樹脂からなることを特徴とする光学素子。
【請求項9】
請求項8に記載の光学素子において、前記防塵層は光硬化性樹脂からなることを特徴とする光学素子。
【請求項10】
請求項8に記載の光学素子において、前記防塵層は熱硬化性樹脂からなることを特徴とする光学素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層は導電性フィラーを有することを特徴とする光学素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層の下地層として帯電防止層を有することを特徴とする光学素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の光学素子において、前記防塵層の上に撥水性又は撥水撥油性の膜を有することを特徴とする光学素子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の光学素子において、ガラス基板であることを特徴とする光学素子。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は水晶又はニオブ酸リチウムであることを特徴とする光学素子。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は撮像素子のカバーガラスであることを特徴とする光学素子。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は赤外カットガラスであることを特徴とする光学素子。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は光学ローパスフィルタであることを特徴とする光学素子。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の光学素子において、前記基材はカバーガラス、赤外カットガラス又は光学ローパスフィルタと貼り合わされていることを特徴とする光学素子。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の光学素子を有する撮像装置。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載の光学素子を有するレンズ交換式カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−14083(P2012−14083A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152443(P2010−152443)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】