説明

光学素子基板の製造方法及び光学素子基板

【課題】歩留まりの低下を防ぐことが可能な光学素子基板の製造方法及び光学素子基板を提供すること。
【解決手段】スイッチング素子基板と対向基板とで電気光学材料を挟持する電気光学装置のうち前記対向基板の一部として用いられる光学素子基板の製造方法であって、光を透過可能な基板の表面に無機材料を用いて薄膜を形成する光屈折層形成工程と、前記基板の表面に形成された前記薄膜をパターニングして前記基板の表面に複数の光学素子アレイを形成する光屈折層形成工程と、前記光屈折層形成工程に先立ち、前記基板の表面のうち複数の前記光学素子アレイが形成される領域から外れた領域に溝部を形成する溝部形成工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子基板の製造方法及び光学素子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子基板と対向基板との間に電気光学物質(例えば液晶など)を挟んで構成された電気光学装置が知られている。このような電気光学装置として、例えばプロジェクターのライトバルブとして用いられる液晶装置などを挙げることができる。このような液晶装置においては、高い光利用効率を実現することが求められている。
【0003】
これに対して、例えば液晶装置の対向基板の一部に光学素子基板を用いることにより、液晶パネルに入射した光を収束し、液晶パネルの実質的な開口率の向上を図る構成が知られている。このような対向基板を製造する場合、例えば特許文献1に示すように、石英などからなる基板の表面に無機材料からなる薄膜を形成し、当該薄膜をパターニングすることでマイクロレンズを形成する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−197523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法においては、基板と薄膜との間の線膨張係数の違いにより、薄膜形成時に基板と薄膜との間にクラックが発生する場合がある。クラックがマイクロレンズを形成する領域にまで及んだ場合、当該光学素子基板を破棄せざるを得ないため、歩留まりが低下してしまう。マイクロレンズに限られず、プリズムなどの他の光学素子においても、同様の問題が生じうる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、歩留まりの低下を防ぐことが可能な光学素子基板の製造方法及び光学素子基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学素子基板の製造方法は、複数の光学素子を有する光学素子基板の製造方法であって、光透過性を有する基板の第1面に、前記複数の光学素子の形状に対応した複数の凹部を形成する凹部工程と、前記第1面の前記複数の凹部の形成領域外に溝部を形成する溝部形成工程と、前記凹部の内部、前記溝部の内部を埋め込むように、前記第1面に、前記基板と異なる屈折率を有する無機層を形成して前記複数の光学素子を形成する光学素子形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、光透過性を有する基板の第1面に、複数の光学素子の形状に対応した複数の凹部を形成する凹部工程と、第1面の複数の凹部の形成領域外に溝部を形成する溝部形成工程と、凹部の内部、溝部の内部を埋め込むように、第1面に、基板と異なる屈折率を有する無機層を形成して複数の光学素子を形成する光学素子形成工程と、を含むこととしたので、光屈折層を形成する時に生じるクラックを溝部に沿って誘導することができる。これにより、光屈折層のうち光学素子アレイが形成される部分にはクラックを生じにくくすることができるので、歩留まりの低下を防ぐことができる。なお、光学素子としては、例えばマイクロレンズやプリズムなど、基板を透過した光を屈折させることができる素子が挙げられる。
【0009】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記溝部形成工程では、平面視で前記複数の光学素子と前記基板の外縁との間に前記溝部を形成することが好ましい。
本発明によれば、溝部形成工程において、平面視で複数の光学素子と基板の外縁との間に溝部を形成することとしたので、光屈折層において基板の外縁から複数の光学素子へ向けた方向に生じるクラックを基板の外縁に沿った方向に誘導させることができる。これにより、クラックが光屈折層の中央部に及ぶのを防ぐことができる。
【0010】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記溝部形成工程では、前記溝部を環状に形成することが好ましい。
本発明によれば、溝部形成工程において、溝部を環状に形成することとしたので、当該溝部に囲まれた領域にクラックが到達するのを防ぐことができる。
【0011】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記複数の光学素子は、複数の光学素子アレイを含み、前記溝部形成工程では、少なくとも1つの前記光学素子アレイを囲うように前記溝部を形成することが好ましい。
本発明によれば、複数の光学素子が複数の光学素子アレイを含む場合、溝部形成工程において、少なくとも1つの光学素子アレイを囲うように溝部を形成することとしたので、光学素子アレイが形成される領域の内部にクラックが到達するのを防ぐことができる。
【0012】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記複数の光学素子は、複数の光学素子アレイを含み、前記光屈折層形成工程では、複数の前記光学素子アレイ同士が間隔を空けてマトリクス状に配置されるように前記光屈折層を形成し、前記溝部形成工程では、複数の前記光学素子アレイ同士の間に配置されるように格子状に前記溝部を形成することが好ましい。
本発明によれば、複数の光学素子が複数の光学素子アレイを含む場合、光屈折層形成工程において、複数の光学素子アレイ同士が間隔を空けてマトリクス状に配置されるように光屈折層を形成し、溝部形成工程において、複数の光学素子アレイ同士の間に配置されるように格子状に溝部を形成することとしたので、複数の光学素子アレイの周囲を囲うように溝部を効率的に配置させることができる。
【0013】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記溝部形成工程では、断面視において底部へ向けて先細りとなるように前記溝部を形成することが好ましい。
本発明によれば、溝部形成工程において、断面視において底部へ向けて先細りとなるように溝部を形成することとしたので、既存の手法を用いて容易に溝部を形成することができる。
【0014】
上記の光学素子基板の製造方法において、前記溝部形成工程は、前記凹部形成工程と同一工程で行うことが好ましい。
本発明によれば、溝部形成工程を当該凹部形成工程と同一工程で行うこととしたので、基板の表面に凹部と溝部とを同一工程で効率的に形成することができる。
【0015】
本発明に係る光学素子基板は、スイッチング素子基板と対向基板とで電気光学材料を挟持する電気光学装置のうち前記対向基板の一部として用いられる光学素子基板であって、光を透過可能な基板と、前記基板の表面に無機材料を用いて形成された光学素子アレイと、前記基板の表面のうち複数の前記光学素子アレイを囲うように形成された溝部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、基板の表面のうち複数の光学素子アレイを囲うように形成された溝部を備えることとしたので、光学素子アレイの内部にクラックが生じにくい構成となる。これにより、光の利用効率に優れた光学素子基板を得ることができる。
【0017】
本発明に係る電気光学装置は、上記の光学素子基板を備える。
本発明によれば、光の利用効率に優れた光学素子基板を備えるので、品質の高い電気光学装置を得ることができる。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上記の電気光学装置を備える。
本発明によれば、発光特性の高い電気光学装置を備えるので、所期の表示品質を備えた安価な電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図。
【図2】本実施形態に係る液晶装置の断面構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の電気的構成を示す配線図。
【図4】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図5】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図6】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図7】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図8】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図9】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図10】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図11】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図12】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図13】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図14】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図15】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図16】本発明の第二実施形態に係る液晶装置の断面構成を示す図。
【図17】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図18】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図19】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図20】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図21】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図22】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図23】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図24】本実施形態に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図25】本発明の第六実施形態に係るプロジェクターの構成を示す平面図。
【図26】本発明の変形例に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図27】本発明の変形例に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図28】本発明の変形例に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図29】本発明の変形例に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【図30】本発明の変形例に係るマイクロレンズ基板の製造過程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る液晶装置120の構成を示す平面図である。図2は、液晶装置120のA−A断面に沿った構成を示す図である。
【0021】
図1に示すように、液晶装置120は、TFTアレイ基板220と対向基板210とを重ね合わせるとともに、両者の間に設けられたシール材52により貼り合わせた構成を有する。シール材52によって区画された領域内には液晶層250が封入されている。シール材52の形成領域の内側には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。
【0022】
シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路41および外部回路実装端子42がTFTアレイ基板220の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路54が形成されている。TFTアレイ基板220の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路54の間を接続するための複数の配線55が設けられている。また、対向基板210の角部においては、TFTアレイ基板220と対向基板210との間で電気的導通をとるための基板間導通材56が配設されている。
【0023】
なお、データ線駆動回路41および走査線駆動回路54をTFTアレイ基板220の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板220の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的および機械的に接続するようにしてもよい。
【0024】
図2に示すように、対向基板210は、基材200、光屈折層201、遮光部203、保護層204、共通電極205及び配向膜206を有している。
基材200は、例えばガラスや石英など、光透過性を有する材料を用いて構成されている。基材200は、液晶層250側の第一面200aに形成された複数の凹部200bを有している。複数の凹部200bは、平面視で複数の画素の各々と重なり合うように配置されている。本実施形態では、複数の凹部200bは、マトリクス状に配列された構成を有している。複数の凹部200bの底部は、それぞれ曲面状に形成されている。
【0025】
また、基材200の第一面200aには、溝部200cが形成されている。溝部200cは、平面視で基材200の外周に沿うように、例えば環状に形成されている。したがって、複数の凹部200bは、環状に形成された溝部200cの内側の領域に形成されている。
【0026】
光屈折層201は、複数の凹部200bの内部及び溝部200cの内部を含む基材200の第一面200aの略全面に積層されている。光屈折層201は、基材200よりも光屈折率の高い無機材料を用いて形成されている。このような無機材料としては、例えばSiON、AlOなどが挙げられる。
【0027】
本実施形態では、凹部200bの底部が曲面状に形成されているため、基材200に入射して凹部200bに到達した光は、基材200と光屈折層201との間の光屈折率の差により、平面視で凹部200bの中央部側へ屈折する。このように、光屈折層201のうち、複数の複数の凹部200bの内部に設けられる部分には、マイクロレンズ(光学素子)が形成されることになる。また、凹部200bは、断面視において底部へ向けて短手方向の寸法が小さくなるように形成されている、すなわち、先細りとなるように形成されている。
【0028】
本実施形態では、このようなマイクロレンズMLが複数設けられており、マイクロレンズアレイ(光学素子アレイ)MLAを構成している。各々のマイクロレンズMLは、平面視で複数の画素の各々と重なり合うように配置される。本実施形態では、基材200及び光屈折層201により、光学素子基板202が構成されている。
【0029】
遮光部203は、光屈折層201の第二面201aのうちマイクロレンズML同士の境界に平面視で重なる領域に形成されている。保護層204は、光屈折層201の第二面201a及び遮光部203を覆うように形成されている。保護層204は、当該第二面201aのほぼ全面に亘って形成されている。共通電極205は、保護層204のほぼ全面に亘って形成されている。配向膜206は、共通電極205を覆うように形成されている。
【0030】
TFTアレイ基板220は、基材221、遮光部222、絶縁層223、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)224、絶縁層225、遮光部226、絶縁層227、画素電極228及び配向膜229を有している。
【0031】
基材221は、基材200と同様、例えばガラスや石英など、光透過性を有する材料を用いて形成されている。遮光部222は、基材221の液晶層250側の第一面221aに設けられている。絶縁層223は、遮光部222を含む基材221の第一面221aを覆うように形成されている。
【0032】
TFT224は、画素電極228を駆動するスイッチング素子である。当該TFT224は、不図示の半導体層及びゲート電極を有して構成されている。半導体層には、ソース領域、チャネル領域及びドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、又は、チャネル領域とドレイン領域との界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
【0033】
ゲート電極は、TFTアレイ基板220上において平面視で半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層225の一部(ゲート絶縁膜)を介して形成されている。図示を省略しているが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線242(図3参照)にコンタクトホールを介して電気的に接続されており、走査信号が印加されることによってTFT224をオン/オフ制御している。
【0034】
遮光部222及び遮光部226は、上記対向基板210の遮光部203に平面視で重なるように格子状に形成されている。遮光部222及び遮光部226は、TFTアレイ基板220の厚さ方向において、TFT224を挟むように配置されている。遮光部222及び遮光部226が設けられていることにより、TFT224への光の入射が抑制されている。遮光部222に囲まれている矩形状の領域(開口部222a)、及び、遮光部226に囲まれている矩形状の領域(開口部226a)は、光が透過する領域となる。
【0035】
画素電極228は、開口部222a及び開口部226aに平面視で重なる領域に設けられている。TFT224や当該TFT224に電気信号を供給する不図示の電極や配線等は、遮光部222及び遮光部226に平面視で重なる領域に設けられている。なお、これらの電極や配線等が遮光部222及び遮光部226を兼ねた構成であっても構わない。また、配向膜229は、画素電極228を覆うように形成されている。
【0036】
液晶層250は、対向基板210側の配向膜206と、TFTアレイ基板220側の配向膜229との間に封入されている。
【0037】
図3は、液晶装置120の電気的な構成を示す回路図である。
図3に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極228、及びTFT224が形成されている。TFT224は、画素電極228に電気的に接続されており、液晶装置120の動作時において、画素電極228に対する画像信号の供給及び非供給を相互に切り替えるように、画素電極228をスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線241は、TFT224のソース領域に電気的に接続されている。
【0038】
TFT224のゲートには走査線242が電気的に接続されている。液晶装置120は、所定のタイミングで、走査線242にパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極228は、TFT224のドレインに電気的に接続されている。画素電極228には、スイッチング素子であるTFT224を一定期間だけ閉じることにより、データ線241から供給される画像信号S1、S2、…、Snが、各画素の液晶に所定のタイミングで書き込まれる。
【0039】
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極228と対向基板210に形成された共通電極205との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号がリークするのを防止するため、画素電極228と容量線243との間に蓄積容量270が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
【0040】
液晶層250を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
【0041】
図2に示すように、上記のように構成された液晶装置120において、例えば対向基板210の基材200に入射した光L1(平行光)は、平面視でマイクロレンズMLの周縁部によって開口部203bの中央部側へ屈折される。その後、液晶層250を通過した光L1は、遮光部226の開口部226a及び遮光部222の開口部222aを通過して、TFTアレイ基板220の−Z側の面から射出される。
【0042】
このように、対向基板210側のマイクロレンズMLにより、対向基板210からTFTアレイ基板220へと液晶装置120を透過する光が開口部203b、開口部222a及び開口部226aの中央部側へ向けて進行することになる。この結果、TFTアレイ基板220側から射出される光の量が多くなるため、光の利用効率が高められることになる。
【0043】
次に、上記のように構成された光学素子基板202の製造方法を説明する。
図4は、マザー基板Sの構成を示す図である。
光学素子基板202は、図4に示すように、ガラスや石英などからなる円形のマザー基板Sを用いて形成される。
【0044】
マザー基板Sは、平面視で円形に形成されており、一部に切り欠き部(オリフラ)Sbが設けられている。マザー基板Sには、複数の基板形成領域Scが設けられている。基板形成領域Scは、個々の光学素子基板が形成される領域である。基板形成領域Scは、マザー基板Sの表面Saにマトリクス状に配列されている。また、マザー基板Sの表面Saには、溝部形成領域Sdが設けられている。溝部形成領域Sdは、マザー基板Sの外周に沿って設定された環状の領域である。
【0045】
図5は、1つの基板形成領域Scを拡大して示す図である。
図5に示すように、基板形成領域Scには、図中破線で示すように、複数のマイクロレンズMLを含むマイクロレンズアレイMLAと、溝部200cとが形成されるようになっている。
【0046】
このようなマザー基板Sを用いて光学素子基板202を製造する際には、まず、図6に示すように、マザー基板Sの表面Saの略全面に高温ポリシリコン膜10を形成する。なお、図6〜図13は、図4におけるB−B断面に沿った構成を示している。次に、図7に示すように、高温ポリシリコン膜10上にレジスト層11を塗布する。
【0047】
レジスト層11を塗布した後、図8に示すように、当該レジスト層11をパターニングし、開口部11a、開口部11b及び開口部11cを形成する。開口部11aは、溝部形成領域Sdに対応する箇所に形成する。開口部11bは、溝部200cに対応する領域に形成する。開口部11cは、凹部200bに対応する領域に形成する。
【0048】
次に、図9に示すように、レジスト層11が形成された状態でマザー基板Sの全体をドライエッチングし、高温ポリシリコン膜10に開口部10a、開口部10b及び開口部10cを形成する。開口部10a、開口部10b及び開口部10cは、平面視でそれぞれレジスト層11の開口部11a、開口部11b及び開口部11cと同一の形状に形成される。その後、図10に示すように、レジスト層11を剥離する。
【0049】
次に、図11に示すように、高温ポリシリコン膜10上からマザー基板Sに対して、エッチング液を用いてウエットエッチング処理を行う。この工程では、マザー基板Sの表面Saのうち開口部10a、開口部10b及び開口部10cを中心として断面視でほぼ半球状の領域が除去される。開口部10aを中心として除去された領域には、溝部200dが形成される。開口部10bを中心として除去された領域には、溝部200cが形成される。開口部10cを中心として除去された領域には、凹部200bが形成される(溝部形成工程、凹部形成工程)。このように、溝部200d及び溝部200cと、凹部200bとを同一工程で形成するため、マザー基板Sの表面Saに溝部200d及び溝部200cを形成するための別工程が必要無い。このため、凹部200b、溝部200d及び溝部200cを効率的に形成することができる。
【0050】
開口部10a、開口部10b及び開口部10cのそれぞれについて、エッチング条件を異なるようにすることで、1回のエッチング処理において、溝部200d、溝部200c及び凹部200bの寸法(マザー基板Sのうち除去される領域の大きさ)を調整することができる。ウエットエッチング処理の後、図12に示すように、高温ポリシリコン膜10を除去する。
【0051】
なお、部分的にエッチング条件を変える場合の他、例えばハードマスク10のうち凹部200bに対応する開口部10cよりも、溝部200d、溝部200cに対応する部分の開口部10a及び10bを小さく形成することで、同一工程で凹部200bよりも幅や深さが小さい溝部200d及び溝部200cを形成するようにしてもよい。
【0052】
高温ポリシリコン膜10を除去した後、図13に示すように、溝部200d、溝部200c及び凹部200bを含むマザー基板Sの表面Saに対して、無機材料を用いて光屈折層201を形成する。この工程により、凹部200bの内部に光屈折層201が配置され、複数のマイクロレンズMLを含むマイクロレンズアレイMLAが形成される(光屈折層形成工程)。
【0053】
図14は、マザー基板SにマイクロレンズアレイMLAを形成した状態を示す図である。
図14に示すように、溝部200dは、マザー基板Sの外周に沿って環状に形成されている。溝部200dとマザー基板Sの外周との距離は、例えば1mm程度に形成される。ここで、マザー基板Sの材質と光屈折層201の材質との間で線膨張係数が異なると、例えば光屈折層201を高温下で形成した後、常温に晒したときに、光屈折層201にクラックCKが形成される場合がある。
【0054】
クラックCKは、図14に示すように、例えばマザー基板Sの外周から中央部へ向けて形成される。本実施形態では、マザー基板Sの外周に沿って溝部200dが形成されているため、当該マザー基板Sの外周で発生したクラックCKは、マザー基板Sの溝部200dに案内されてマザー基板Sの外周に沿った方向に伸びていく。このため、クラックCKは、マイクロレンズアレイMLAが形成されるマザー基板Sの中央部には到達しにくくなる。また、溝部200dを越えたクラックについても、マイクロレンズアレイMLAを囲むように形成された溝部200cによって誘導させることができる。このように、クラックを二重に防ぐことができる。
【0055】
その後、基板形成領域Scごとにマザー基板Sを切断し、図15に示すように、個々の光学素子基板202を形成する。この場合、マイクロレンズアレイMLAが溝部200cによって囲まれているため、光屈折層201の外周側からクラックが発生しても、当該クラックは溝部200cに沿って光学素子基板202の外周に沿って伸びていくことになる。このため、クラックがマイクロレンズアレイMLAに到達しにくくなる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、光を透過可能なマザー基板Sの表面SaのうちマイクロレンズアレイMLAが形成される所定領域から外れた部分に溝部200c及び溝部200dを形成する溝部形成工程と、溝部200c及び溝部200dが形成されたマザー基板Sの表面Saの上記所定領域に、無機材料を用いて、複数のマイクロレンズアレイMLAを有する光屈折層201を形成する光屈折層形成工程とを含むこととしたので、光屈折層201を形成する時に生じるクラックを溝部200dに沿って誘導することができる。これにより、光屈折層201のうちマイクロレンズアレイMLAが形成される部分にはクラックを生じにくくすることができるので、歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0057】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
本実施形態では、第一実施形態とは光学素子基板の構成及び製造工程の一部が異なるため、当該相違点を中心に説明する。
【0058】
図16は、本実施形態に係る光学素子基板302の構成を示す断面図である。なお、光学素子基板302以外の構成については、第一実施形態と同様であるため、第一実施形態と同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0059】
図16に示すように、光学素子基板302は、基材300及び光屈折層301を有している。基材300の第一面300aには、複数の凹部300bが形成されている。複数の凹部300bは、遮光部203に平面視で重なる位置に設けられている。凹部300bは、断面視で三角形に形成されている。したがって、凹部300bの底部は先細りになるように形成されている。
【0060】
また、基材300の第一面300aには、溝部300cが形成されている。溝部300cは、平面視で基材300の外周に沿うように、例えば環状に形成されている。このため、複数の凹部300bは、環状に形成された溝部300cの内側の領域に形成されている。また、溝部300cは、断面視で三角形に形成されている。したがって、溝部300cの底部は先細りになるように形成されている。
【0061】
光屈折層301は、複数の凹部300bの内部及び溝部300cの内部を含む基材300の第一面300aの略全面に積層されている。光屈折層301は、基材300よりも光屈折率の高い無機材料を用いて形成されている。このような無機材料としては、例えば第一実施形態と同様、SiON、AlOなどが挙げられる。
【0062】
本実施形態では、上記のように遮光部203に平面視で重なる位置に配置された凹部300bの底部が断面視で三角形に形成されているため、基材300に入射して凹部300bに到達した光Lは、基材300と光屈折層301との間の光屈折率の差により、凹部300bにおいて反射される。このように、光屈折層301のうち、複数の複数の凹部300bの内部に設けられる部分には、光を反射するプリズム(光学素子)PMが形成されることになる。
【0063】
本実施形態では、このようなプリズムPMが複数設けられており、プリズムアレイ(光学素子アレイ)PMAを構成している。各々のプリズムPMは、平面視で複数の遮光部203の各々と重なり合うように配置される。
【0064】
次に、本実施形態に係る光学素子基板302の製造方法を説明する。本実施形態においても、第一実施形態と同様に、ガラスや石英などからなる円形のマザー基板Sを用いて光学素子基板302を形成する。
【0065】
まず、図17に示すように、マザー基板Sの表面Saの略全面にハードマスク20を形成する。ハードマスク20の材料としては、例えばアルミニウムなどが用いられる。次に、図18に示すように、ハードマスク20上にレジスト層21を塗布する。
【0066】
レジスト層21を塗布した後、図19に示すように、当該レジスト層21をパターニングし、開口部21a、開口部21b及び開口部21cを形成する。開口部21aは、マザー基板Sの外周に沿って形成される溝部に対応する箇所に形成する。開口部21bは、溝部300cに対応する領域に形成する。開口部21cは、凹部300bに対応する領域に形成する。
【0067】
次に、図20に示すように、レジスト層21が形成された状態でマザー基板Sの全体をドライエッチングし、ハードマスク20に開口部20a、開口部20b及び開口部20cを形成する。開口部20a、開口部20b及び開口部20cは、平面視でそれぞれレジスト層21の開口部21a、開口部21b及び開口部21cと同一の形状に形成される。その後、図21に示すように、レジスト層21を剥離する。
【0068】
次に、図22に示すように、ハードマスク20上からマザー基板Sに対して、エッチングガスを用いてドライエッチング処理を行う。この工程では、マザー基板Sの表面Saのうち開口部20a、開口部20b及び開口部20cを中心として断面視でほぼ三角形の領域が除去される。開口部20aを中心として除去された領域には、マザー基板Sの外周に沿った溝部300dが形成される。開口部20bを中心として除去された領域には、溝部300cが形成される。開口部20cを中心として除去された領域には、凹部300bが形成される(溝部形成工程)。
【0069】
開口部20a、開口部20b及び開口部20cのそれぞれについて、エッチング条件を異なるようにすることで、1回のエッチング処理において、溝部300d、溝部300c及び凹部300bの寸法(マザー基板Sのうち除去される領域の大きさ)を調整することができる。ドライエッチング処理の後、図23に示すように、ハードマスク20を除去する。
【0070】
なお、部分的にエッチング条件を変える場合の他、例えばハードマスク20のうち凹部300bに対応する開口部20cよりも、溝部300d、溝部300cに対応する部分の開口部20a及び20bを小さく形成することで、同一工程で凹部300bよりも幅や深さが小さい溝部300d及び溝部300cを形成するようにしてもよい。
【0071】
ハードマスク20を除去した後、図24に示すように、溝部300d、溝部300c及び凹部300bを含むマザー基板Sの表面Saに対して、無機材料を用いて光屈折層301を形成する。この工程により、凹部300bの内部に光屈折層301が配置され、複数のプリズムPMを含むプリズムアレイPMAが形成される(光屈折層形成工程)。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、光を透過可能なマザー基板Sの表面SaのうちプリズムアレイPMAが形成される所定領域から外れた部分に溝部300c及び溝部300dを形成する溝部形成工程と、溝部300c及び溝部300dが形成されたマザー基板Sの表面Saの上記所定領域に、無機材料を用いて、複数のプリズムアレイPMAを有する光屈折層301を形成する光屈折層形成工程とを含むこととしたので、光屈折層301を形成する時に生じるクラックを溝部300dに沿って誘導することができる。これにより、光屈折層301のうちプリズムアレイPMAが形成される部分にはクラックを生じにくくすることができるので、歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0073】
また、溝部300dを越えたクラックについても、プリズムアレイPMAを囲むように形成された溝部300cによって誘導させることができる。このように、クラックを二重に防ぐことができる。
【0074】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図25は、本実施形態に係るプロジェクター100の光学系を示す模式図である。
図25に示すように、プロジェクター100は、光源装置101と、インテグレーター104と、偏光変換素子105と、色分離導光光学系102と、光変調装置としての液晶光変調装置110R,液晶光変調装置110G, 液晶光変調装置110Bと、クロスダイクロイックプリズム112及び投写光学系114と、を具備して構成されている。液晶光変調装置110R、110G及び110Bには、後述するように、液晶装置120R、120G及び120Bが設けられている。この液晶装置120R、120G及び120Bとして、例えば上記各実施形態において説明した液晶装置120を用いることができる。
【0075】
光源装置101は、第1色光である赤色光(以下、「R光」という。)、第2色光である緑色光(以下、「G光」という。)、及び第3色光である青色光(以下、「B光」という。)を含む光を供給する。光源装置101としては、例えば超高圧水銀ランプを用いることができる。
【0076】
インテグレーター104は、光源装置101からの光の照度分布を均一化する。照度分布を均一化された光は、偏光変換素子105にて特定の振動方向を有する偏光光、例えば色分離導光光学系102の反射面に対してs偏光したs偏光光に変換される。s偏光光に変換された光は、色分離導光光学系102を構成するR光透過ダイクロイックミラー106Rに入射する。
【0077】
色分離導光光学系102は、R光透過ダイクロイックミラー106Rと、B光透過ダイクロイックミラー106Gと、3枚の反射ミラー107と、2枚のリレーレンズ108と、を具備して構成されている。
【0078】
R光透過ダイクロイックミラー106Rは、R光を透過し、G光、B光を反射する。R光透過ダイクロイックミラー106Rを透過したR光は、反射ミラー107に入射する。
【0079】
反射ミラー107は、R光の光路を90度折り曲げる。光路を折り曲げられたR光は、R光用液晶光変調装置110Rに入射する。R光用液晶光変調装置110Rは、R光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。
【0080】
R光用液晶光変調装置110Rは、λ/2位相差板123R、ガラス板124R、第1偏光板121R、液晶装置120R、及び第2偏光板122Rを有する。λ/2位相差板123R及び第1偏光板121Rは、偏光方向を変換させない透光性のガラス板124Rに接する状態で配置される。なお、図1において、第2偏光板122Rは独立して設けられているが、液晶装置120Rの射出面や、クロスダイクロイックプリズム112の入射面に接する状態で配置しても良い。
【0081】
R光透過ダイクロイックミラー106Rで反射された、G光とB光とは光路を90度折り曲げられる。光路を折り曲げられたG光とB光とは、B光透過ダイクロイックミラー106Gに入射する。B光透過ダイクロイックミラー106Gは、G光を反射し、B光を透過する。B光透過ダイクロイックミラー106Gで反射されたG光は、G光用液晶光変調装置110Gに入射する。G光用液晶光変調装置110GはG光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。G光用液晶光変調装置110Gは、液晶装置120G、第1偏光板121G及び第2偏光板122Gを有する。
【0082】
G光用液晶光変調装置110Gに入射するG光は、s偏光光に変換されている。G光用液晶光変調装置110Gに入射したs偏光光は、第1偏光板121Gをそのまま透過し、液晶装置120Gに入射する。液晶装置120Gに入射したs偏光光は、画像信号に応じた変調により、G光がp偏光光に変換される。液晶装置120Gの変調により、p偏光光に変換されたG光が、第2偏光板122Gから射出される。このようにして、G光用液晶光変調装置110Gで変調されたG光は、クロスダイクロイックプリズム112に入射する。
【0083】
B光透過ダイクロイックミラー106Gを透過したB光は、2枚のリレーレンズ108と、2枚の反射ミラー107とを経由して、B光用液晶光変調装置110Bに入射する。
【0084】
B光用液晶光変調装置110Bは、B光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。B光用液晶光変調装置110Bは、λ/2位相差板123B、ガラス板124B、第1偏光板121B、液晶装置120B、及び第2偏光板122Bを有する。
【0085】
B光用液晶光変調装置110Bに入射するB光は、s偏光光に変換されている。B光用液晶光変調装置110Bに入射したs偏光光は、λ/2位相差板123Bによりp偏光光に変換される。p偏光光に変換されたB光は、ガラス板124B及び第1偏光板121Bをそのまま透過し、液晶装置120Bに入射する。液晶装置120Bに入射したp偏光光は、画像信号に応じた変調により、B光がs偏光光に変換される。液晶装置120Bの変調により、s偏光光に変換されたB光が、第2偏光板122Bから射出される。B光用液晶光変調装置110Bで変調されたB光は、クロスダイクロイックプリズム112に入射する。
【0086】
このように、色分離導光光学系102を構成するR光透過ダイクロイックミラー106RとB光透過ダイクロイックミラー106Gとは、光源装置101から供給される光を、第1色光であるR光と、第2色光であるG光と、第3色光であるB光とに分離する。
【0087】
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム112は、2つのダイクロイック膜112a、112bをX字型に直交して配置して構成されている。ダイクロイック膜112aは、B光を反射し、G光を透過する。ダイクロイック膜112bは、R光を反射し、G光を透過する。このように、クロスダイクロイックプリズム112は、R光用液晶光変調装置110R、G光用液晶光変調装置110G、及びB光用液晶光変調装置110Bでそれぞれ変調されたR光、G光及びB光を合成する。
【0088】
投写光学系114は、クロスダイクロイックプリズム112で合成された光をスクリーン116に投射する。これにより、スクリーン116上でフルカラー画像を得ることができる。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、光の利用効率に優れた液晶装置120R、120G及び120B(液晶装置120)を備えるので、表示品質の高いプロジェクター100を得ることができる。
【0090】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、光学素子を構成する部分が断面視で曲面状又は三角形に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、他の形状であっても構わない。例えば、複数の形状が組み合わされた形状であっても構わない。この場合、マザー基板に形成される溝部の形状は、光学素子の形状に対応した形状となる。例えば、光学素子を構成する部分が断面視で階段状に形成された部分を含む場合について説明する。
【0091】
まず、図26に示すように、マザー基板Sの表面Saの略全面にレジスト層30を形成する。レジスト層30を塗布した後、図27に示すように、当該レジスト層30の表層側をパターニングし、凹部30aを形成する。凹部30aは、マザー基板Sの外周に沿って形成される溝部に対応する箇所に形成する。次に、図28に示すように、レジスト層30のうち凹部30aの底部の一部をパターニングし、開口部30bを形成する。
【0092】
次に、凹部30a及び開口部30bを有するレジスト層30が形成された状態でマザー基板Sの全体をドライエッチングする。本実施形態では、レジスト層30の材料としてエッチングガスに溶解する材料を用い、ドライエッチングによってレジスト層30の形状をマザー基板Sに転写する手法を行う。
【0093】
この結果、まず図29に示すように、マザー基板Sに凹部400bが形成される。その後、ドライエッチングを継続し、レジスト層30を全て除去することにより、図30に示すように、凹部400a及び凹部400bを有する溝部400cが形成される。溝部400cは、凹部400aの底部に凹部400bが形成された構成となる。このため、溝部400cの底部へ向けて先細りの形状となる。
【0094】
その後、凹部400a及び凹部400bを含むマザー基板Sの表面Saに対して、無機材料を用いて光屈折層を形成する。この工程により、マザー基板Sの外周からクラックが生じた場合であっても、溝部400cに沿ってクラックを誘導させることができる。このため、クラックが光学素子アレイに到達するのを防ぐことができる。
【0095】
また、上記実施形態においては、光学素子アレイを囲うように形成された溝部が光学素子基板内に配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、マザー基板Sのうち基板形成領域Sc同士の切断部分に溝部を形成し、光学素子基板を切り取る際に溝部を切断するようにしても構わない。
【0096】
例えば、上記実施形態においては、電気光学装置として液晶装置120を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、電気泳動素子をTFTアレイ基板(素子基板)と対向基板とで挟持した電気泳動表示装置や、TFTアレイ基板(素子基板)に有機EL層が形成された有機EL装置など、他の電気光学装置に対しても、本発明の適用は可能である。
【0097】
また、本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも、適用することができる。
【0098】
また、電子機器としては、上記プロジェクター100以外にも、マルチメディア対応のパーソナルコンピューター(PC)、およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、あるいは携帯電話、ワープロ、テレビ、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどを挙げることができる。
【符号の説明】
【0099】
ML…マイクロレンズ PM…プリズム PMA…プリズムアレイ MLA…マイクロレンズアレイ S…マザー基板 Sa…表面 Sb…切り欠き部 Sc…基板形成領域 Sd…溝部形成領域 CK…クラック 100…プロジェクター 120…液晶装置 200…基材 200a…第一面 200b…凹部 200c…溝部 200d…溝部 201…光屈折層 202…光学素子基板 250…液晶層 300…基材 300a…第一面 300b…凹部 300c…溝部 300d…溝部 301…光屈折層 302…光学素子基板 400a…凹部 400b…凹部 400c…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子を有する光学素子基板の製造方法であって、
光透過性を有する基板の第1面に、前記複数の光学素子の形状に対応した複数の凹部を形成する凹部工程と、
前記第1面の前記複数の凹部の形成領域外に溝部を形成する溝部形成工程と、
前記凹部の内部、前記溝部の内部を埋め込むように、前記第1面に、前記基板と異なる屈折率を有する無機層を形成して前記複数の光学素子を形成する光学素子形成工程と、
を含む光学素子基板の製造方法。
【請求項2】
前記溝部形成工程では、平面視で前記複数の光学素子と前記基板の外縁との間に前記溝部を形成する
請求項1に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項3】
前記溝部形成工程では、前記溝部を環状に形成する
請求項1又は請求項2に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項4】
前記複数の光学素子は、複数の光学素子アレイを含み、
前記溝部形成工程では、少なくとも1つの前記光学素子アレイを囲うように前記溝部を形成する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項5】
前記光屈折層形成工程では、複数の前記光学素子アレイ同士が間隔を空けてマトリクス状に配置されるように前記光屈折層を形成し、
前記溝部形成工程では、複数の前記光学素子アレイ同士の間に配置されるように格子状に前記溝部を形成する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項6】
前記溝部形成工程では、断面視において底部へ向けて先細りとなるように前記溝部を形成する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項7】
前記光屈折層形成工程に先立ち、前記光学素子アレイに対応する形状を有する凹部を前記基板の表面に形成する凹部形成工程
を更に含み、
前記溝部形成工程は、前記凹部形成工程と同一工程で行う
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の光学素子基板の製造方法。
【請求項8】
スイッチング素子基板と対向基板とで電気光学材料を挟持する電気光学装置のうち前記対向基板の一部として用いられる光学素子基板であって、
光を透過可能な基板と、
前記基板の表面に無機材料を用いて形成された光学素子アレイと、
前記基板の表面のうち複数の前記光学素子アレイを囲うように形成された溝部と
を備える光学素子基板。
【請求項9】
請求項8に記載の光学素子基板を備える
電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を備える
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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