説明

光学素子封止用含フッ素樹脂組成物、及び、硬化物

【課題】耐光性及び耐熱性に優れる光学素子封止用含フッ素樹脂組成物の提供。
【解決手段】有機ケイ素化合物(A)、及び、下記式(L):


(式中、XおよびXは、H又はF;XはH、F、CH又はCF;XおよびXは、H、F又はCF;Rfは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基、又は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基である。)で示される含フッ素ポリマー(B)、からなる光学素子封止用含フッ素樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子封止用含フッ素樹脂組成物、及び、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含フッ素重合体を用いた光学素子封止用含フッ素樹脂組成物としては、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素重合体に関する組成物(特許文献1)が提案されている。また、エチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素重合体をヒドロシリル化反応により硬化させることが、特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/18457号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/153002号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載されている含フッ素重合体から得られる硬化物は、光透過性や屈折率などの光学的特性や、高温での耐熱性、耐光性、硬化収縮性などの点で、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は耐光性及び耐熱性に優れる硬化物を得ることができる光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが光学素子封止用含フッ素樹脂組成物について鋭意検討したところ、シラン変性した含フッ素アリルエーテル化合物と縮合したシロキサン化合物との組成物からなる光学素子封止用含フッ素樹脂組成物から得られる硬化物は、耐光性及び耐熱性に優れ、光学素子封止用含フッ素樹脂組成物として有用であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、
有機ケイ素化合物(A)、及び、下記式(L):
【0008】
【化1】

(式中、XおよびXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H、F又はCF;Rfは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基、又は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1である。)で示される構造単位を有する含フッ素ポリマー(B)、からなることを特徴とする光学素子封止用含フッ素樹脂組成物である。
【0009】
有機ケイ素化合物(A)は、下記式(1):
Si(R)(R)(R)(R) (1)
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基である。)で表される化合物(A1)、又は、
下記式(2−1)、(2−2)及び(2−3):
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基である。Rは、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン単結合である。)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種からなり、少なくとも2個のSiが、−R−を介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している化合物(A2)であることが好ましい。
【0010】
有機ケイ素化合物(A)は、前記化合物(A2)であって、Rが−O−であるポリシロキサンであり、R、R及びRの少なくとも1つは、架橋性のアリル基、グリシジル基、オキセタン基、アクリル基、又はメタクリル基であることが好ましい。
有機ケイ素化合物(A)は、シルセスキオキサンであることが好ましい。
【0011】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、有機ケイ素化合物(A)と含フッ素ポリマー(B)との合計質量に対して、有機ケイ素化合物(A)が50質量%以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、LEDの封止剤に用いるものであることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を硬化して得られる硬化物でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、上記構成を有することによって、得られる硬化物の耐光性及び耐熱性を優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、有機ケイ素化合物(A)からなる。有機ケイ素化合物(A)は、炭素とケイ素とを含む化合物である。上記有機ケイ素化合物(A)は、常温(例えば、25℃)で液体であることが好ましい。
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、有機ケイ素化合物(A)からなるため、得られる硬化物が耐光性及び耐熱性に優れる。また、上記有機ケイ素化合物(A)を有することで、硬化時の硬化収縮を抑制することもできる。
【0016】
上記有機ケイ素化合物(A)としては、Si−H結合を有するSi−H化合物;アミノシラン化合物;シラザン、シリルアセトアミド、シリルイミダゾール等のSi−N結合を有するSi−N化合物;モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、シロキサン、シリルエステル、シラノール等のSi−O結合を有するSi−O化合物;モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のSi−Cl結合を有するSi−Cl化合物等のハロゲノシラン;Si−(C)化合物;Si−Si結合を有するSi−Si化合物;ビニルシラン、アリルシラン、エチニルシラン等が挙げられる。すなわち、有機ケイ素化合物(A)は、Si−H化合物、Si−N化合物、ハロゲノシラン、Si−(C)化合物、Si−Si化合物、ビニルシラン、アリルシラン、及びエチニルシランからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。上記有機ケイ素化合物としては、Siに、水素、酸素及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の原子が結合した化合物がより好ましい。以下に、上記化合物の具体例を示す。
【0017】
〔Si−H化合物〕
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
〔Si−N化合物〕
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
〔Si−O化合物〕
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
【化14】

【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

【0034】
【化17】

【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

【0037】
【化20】

【0038】
【化21】

【0039】
〔ハロゲノシラン〕
Si−Cl化合物:
【0040】
【化22】

【0041】
【化23】

【0042】
【化24】

【0043】
【化25】

SiCl
【0044】
Si−Cl化合物以外のハロゲノシラン:
【0045】
【化26】

【0046】
〔Si−(C)化合物〕
【0047】
【化27】

【0048】
【化28】

【0049】
【化29】

【0050】
【化30】

【0051】
【化31】

【0052】
【化32】

【0053】
〔Si−Si化合物〕
【0054】
【化33】

【0055】
〔ビニルシラン、アリルシラン、及びエチニルシラン〕
【0056】
【化34】

【0057】
【化35】

【0058】
【化36】

【0059】
有機ケイ素化合物(A)は、下記式(1):
Si(R)(R)(R)(R) (1)
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基(CH=CHCOO−)、又はメタクリル基(CH=CCHCOO−)である。)で表される化合物(A1)、又は、下記式(2−1)、(2−2)及び(2−3):
【化37】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基である。Rは、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン単結合である。)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種からなり、少なくとも2個のSiが、−R−を介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している化合物(A2)であることが好ましい。なお、Rがシラン単結合である場合とは、実質的にはRを介さず、SiとSiが直接結合した場合をいう。
、R、R、R、R、R及びRは、Siに結合している1価の基である。Rは、2個のSiに結合している2価の基である。
【0060】
アルキル基、含フッ素アルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。オキセタン基の炭素数は3〜6であることが好ましい。アリール基の炭素数は、5〜8が好ましい。
なお、アミノ基は、−NH、−NHR、および、−NRR’(RおよびR’は、同じ又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基である)を包含する。
【0061】
、R、R、R、R、R及びRにおいて、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が好ましく、特に塩素が好ましい。
アルキル基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられるが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基であることが好ましい。より好ましくは、メチル基、又は、エチル基である。含フッ素アルキル基は、上記アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されているものである。
アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、又はブトキシ基が好ましく、より好ましくは、メトキシ基、又はエトキシ基である。
アリール基としては、例えば、ペンチル基、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、又はジメチルフェニル基が好ましい。アリル基は、CH=CH−CH−で表される基である。オキセタン基としては、例えば、下記式:
【0062】
【化38】

(Rは、水素原子の一部又は全部がハロゲンで置換されていてもよい、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜3のエーテル基である。)で表される基が挙げられる。エーテル基としては、例えば、CH−O−CH−、CH−CH−O−CH−、CH−O−CH−CH−、又は、これらの水素原子の一部若しくは全部がハロゲンで置換されたものが挙げられる。
【0063】
化合物(A1)は、下記式(1):
Si(R)(R)(R)(R) (1)
(R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表される化合物である。
上記化合物(A1)としては、有機ケイ素化合物(A)として上述した化合物の中から、Siを1個含む化合物等が挙げられる。
【0064】
上記式(1)で表される化合物(A1)としては、R、R、R及びRがアルコキシ基である、テトラアルコキシシランであることが好ましい。上記式(1)で表される化合物(A1)としては、テトラエトキシシランがより好ましい。
【0065】
化合物(A1)において、R、R、R及びRは、同一又は異なり、少なくとも1つは、架橋性の炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基であることも好ましい形態の一つである。特に、後述する含フッ素ポリマー(B)において、式(L)中のYが、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基である場合、上記架橋性の有機基を有することが好ましい。
【0066】
上記化合物(A2)は、下記式(2−1)、(2−2)及び(2−3):
【0067】
【化39】

(R、R、R及びRは、上記と同じ。)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種からなり、少なくとも2個のSiが、−R−を介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している化合物である。有機ケイ素化合物(A)が上記化合物(A2)であると、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物から得られる硬化物が、耐光性及び耐熱性により優れ、また、硬化時の硬化収縮をより抑制することができる。
【0068】
上記化合物(A2)としては、有機ケイ素化合物(A)として上述した化合物の中から、少なくとも2個のSiがRを介して結合している化合物や、後述するシルセスキオキサン等が挙げられる。化合物(A2)のケイ素原子数は、2〜20個であることが好ましい。より好ましくは、4〜12個である。
【0069】
上記化合物(A2)は、式(2−1)、式(2−2)及び式(2−3)で表される構造単位を構成するケイ素原子数が、化合物(A2)を構成する全ケイ素原子数に対して60%以上であることが好ましい。より好ましくは、80%以上である。
【0070】
上記化合物(A2)としては、上記式(2−2)又は式(2−3)で表される構造単位を有する化合物が好ましく、上記式(2−3)で表される構造単位を有する化合物がより好ましい。
【0071】
上記化合物(A2)としては、中でも、式(2−3)で表される構造単位を構成するケイ素原子数が、化合物(A2)を構成する全ケイ素原子数に対して60%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは100%である。
【0072】
は、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン単結合である。Rとしては、−O−、−NH−、又は、−C≡C−が好ましい。より好ましくは、−O−である。Rは、2個のSiに結合している2価の基である。Rによって、2以上のケイ素原子がRを介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合することができる。
【0073】
化合物(A2)は、R、R及びRの少なくとも1つが、架橋性のアリル基、グリシジル基、炭素数3〜10のオキセタン基、アクリル基、又はメタクリル基であることが好ましい。
【0074】
化合物(A2)としては、2以上のケイ素原子が−O−を介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合したポリシロキサンが好ましい。
【0075】
上記ポリシロキサンとしては、Rが−O−であり、R、R及びRの少なくとも1つは、架橋性のアリル基、グリシジル基、オキセタン基、アクリル基、又はメタクリル基である化合物(A2)がことが好ましい。特に、後述する含フッ素ポリマー(B)において、式(L)中のYが、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基である場合、上記架橋性の有機基を有することが好ましい。
【0076】
化合物(A2)としては、中でも、シルセスキオキサンが好ましい。有機ケイ素化合物(A)がシルセスキオキサンであると、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、耐光性及び耐熱性により優れ、また、硬化時の硬化収縮をより抑制することができる。シルセスキオキサンとしては、例えば、ランダム構造シルセスキオキサン(例えば、下記式(a)で表される構造を有するポリシロキサン)、梯子型構造シルセスキオキサン(例えば、下記式(b)で表される構造を有するポリシロキサン)、籠型構造シルセスキオキサン(例えば、下記式(c)、(d)又は(e)で表される構造を有するポリシロキサン)等が挙げられる。上記シルセスキオキサンとして好ましくは、梯子型構造シルセスキオキサン、及び、籠型構造シルセスキオキサンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、価格並びに含フッ素ポリマーとの相溶性の観点から、立方体籠型シルセスキオキサン(下記式(c)で表される構造を有するポリシロキサン)が好ましい。
【0077】
【化40】

【0078】
【化41】

【0079】
【化42】

【0080】
【化43】

【0081】
【化44】

【0082】
上記式(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)中、Rは、同一又は異なり、1価の有機基である。Rとしては、例えば、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基が好ましい。また、Rの少なくとも1つが、架橋性のアリル基、グリシジル基、オキセタン基、アクリル基、又はメタクリル基であることが好ましい。特に、後述する含フッ素ポリマー(B)において、式(L)中のYが、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基である場合、上記架橋性の有機基を有することが好ましい。
【0083】
上記有機ケイ素化合物(A)は、硬化収縮を抑制する観点から、数平均分子量が300以上であることが好ましい。より好ましくは、500以上である。数平均分子量の上限としては、例えば、2000である。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の方法で測定することができる。
【0084】
上記有機ケイ素化合物(A)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、シルセスキオキサン等の化合物(A2)と、炭素数3以上の置換基を有するシランカップリング剤とを併用することが、耐熱性の観点から好ましい。上記置換基の炭素数は、6以上であることがより好ましい。上記置換基の炭素数は、20以下であることが好ましい。上記置換基としては、アルキルメタクリレート基、アルキルグリシジルエーテル基、アルキルオキセタン基等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等が挙げられる。
特に、後述する含フッ素ポリマー(B)において、式(L)中のYが、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基である場合、上記架橋性の有機基を有することが好ましい。上記シランカップリング剤を化合物(A2)と上記シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0085】
含フッ素ポリマー(B)は、下記式(L):
【0086】
【化45】

(式中、XおよびXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H、F又はCF;Rfは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む有機基、又は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1である。)で示される構造単位(以下、「構造単位L」ともいう。)を有する。上記アミド結合としては、例えば、−CONH−で表される2価の基が挙げられる。上記ウレタン結合としては、例えば、−O−CONH−で表される2価の基が挙げられる。上記エーテル結合としては、−O−で表される2価の基が挙げられる。上記カーボネート結合としては、−O−COO−で表される2価の基が挙げられる。上記ウレア結合としては、−NH−CONH−で表される2価の基が挙げられる。
上記Yは、ケトン結合(−CO−)、エーテル結合又はエステル結合(−COO−)を有していてもよい。
【0087】
含フッ素ポリマー(B)は、上記構成を有することによって、化合物(A)から形成されるSiOと好適に架橋することができ、形成される封止材を可撓性に優れたものとすることができる。また、形成される封止材は、SiOからなるものであるため、耐熱性及び透明性に優れる。
【0088】
構造単位Lとしては、なかでも式(L1):
【0089】
【化46】

【0090】
(式中、X、X、X、X、X、Rf、aおよびcは前記と同じ)で示される構造単位L1が好ましい。
【0091】
この構造単位L1を含む含フッ素ポリマー(B)は、特に屈折率が低く、また、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の透明性を高くすることができ、更に、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で好ましい。また、熱、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性を高くすることができる点でも好ましい。
【0092】
さらに構造単位L1のより好ましい具体例の1つは式(L2):
【0093】
【化47】

【0094】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L2である。
【0095】
この構造単位L2は屈折率が低く、また、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の透明性を高くすることができ、種々の基材との密着性がよく耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0096】
上記構造単位L2において、Rfは、例えば、−(CF(CF)CF−O)−T(Tは、−CHO−(CO)−CF=CH、又は、−Ry−Si(OR20)(OR21)(OR22)、(Ryは、後述するものと同じである。R20、R21およびR22は同じか又は異なり、炭素数1〜5のアルキル基である。nは、0、1又は2である。)であることも好ましい形態の一つである。
【0097】
また、構造単位L1の別の好ましい具体例は式(L3):
【0098】
【化48】

【0099】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L3である。
【0100】
この構造単位L3は屈折率が低く、また、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点でも好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0101】
上記構造単位L、L1、L2およびL3に含まれるRfは、上記のとおり、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む有機基、又は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基である。
アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基において、その炭素数の上限は、好ましくは30、より好ましくは20、特に好ましくは10である。
なお、本明細書中で、「炭化水素基」は、炭素原子及び水素原子からなる有機基であり、「含フッ素炭化水素基」は、炭化水素基が有する一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されたものである。「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アリル基、不飽和アルキル基等が挙げられる。「含フッ素炭化水素基」としては、含フッ素アルキル基、含フッ素アルキル基、含フッ素不飽和アルキル基等が挙げられる。
【0102】
Rfは、Rf(アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む有機基である。)で置換されている有機基)であってもよいし、Rf(アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基)であってもよいし、Rf(アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜2個がYで置換されており、水素原子の1〜2個がYで置換されている有機基)であってもよい。製造の容易さからは、Rfは、Rf又はRfであることが好ましい。
【0103】
上記Rfは、Rfであることが好ましい形態の一つである。上記構造単位LのRfがRfである構造単位を、以下、構造単位Mという。また、構造単位L1、L2及びL3において、RfがRfである構造単位を、以下、それぞれ、構造単位M1、M2及びM3という。上記Rf中で、炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシドは加水分解・重縮合反応を起こす役割を果たし、これにより、化合物(A)から形成されるSiOxと架橋し、耐熱性、透明性、及び可撓性に優れる封止材を形成することができる。
【0104】
好ましいRfとしては、式(Rf):
−D−Ry (Rf
[式中、−D−は、式(D):
【0105】
【化49】

【0106】
(式中、nは0〜20の整数であり、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されている炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であり、nが2以上の場合は同じでも異なっていてもよい)で示されるフルオロエーテルの単位であり、Ryは、アミド結合もしくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合もしくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜99のエーテル結合を有する炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは前記と同じ)で置換されている有機基]があげられる。
上記Ryは、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合又はエーテル結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは前記と同じ)で置換されている有機基が好ましい。
【0107】
−R−は炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であって、少なくとも1個のフッ素原子を有するものであり、それによって、従来のフッ素を含まないアルコキシル基を有するものやアルキレンエーテル単位を有するものに比べて、化合物の粘性をさらに低粘性化できる他、耐熱性向上、屈折率の低下、汎用溶剤への溶解性向上などに寄与することができる。
【0108】
−D−中の−(O−R)−又は(R−O)−として、具体的には、−(OCFCFCF)−、−(CFCFCFO)−、−(OCFQCF)−、−(CFQCHO)−、−(CFQCFO)−、−(OCFCFQ)−、−(OCFQ)−、−(CFQO)−、−(OCHCFCF)−、(OCFCFCH)−、−(OCHCHCF)−、−(OCFCHCH)、−(CHCFCFO)−、−(OCFCFCFCF)−、−(CFCFCFCFO)−、−(OCFQCH)−、−(CHCFQO)−、−(OCH(CH)CFCF)−、−(OCFCFCH(CH))−、−(OCQ)−および−(CQO)−、(Q、Qは同じか又は異なり、H、F又はCF;QはCF)などがあげられ、−D−はこれらの1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。
【0109】
なかでも、−D−は−(OCFQCF)−、−(OCFCFCF)−、−(OCHCFCF)−、−(OCFQ)−、−(OCQ)−、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−、−(CHCFCFO)−、−(CFQO)−および−(CQO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましく、特には−(OCFQCF)−、−(OCFCFCF)−、−(OCHCFCF)−、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−および−(CHCFCFO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位、さらには−(OCFQCF)−、−(OCFCFCF)−、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−および−(CFCFCFO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。また、構造単位Lが上記構造単位L2である場合、−D−としては、Rが−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−および−(CHCFCFO)−からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−および−(CFCFCFO)−からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記式中、Qは、H、F又はCFである。Qとしては、CFが好ましい。
【0110】
ただし、上記の含フッ素エーテルの単位−D−中および前記Rf中において、−OO−(具体的には、−R−O−O−R−、−O−O−R−および−R−O−O−など)構造単位を含まないものとする。
【0111】
式(Rf)におけるRyとして、より具体的には、式(Ry):
−Ry (Ry)
[式中、Ryは式(Ry):
−(R11−(A)−R12−(Y1a (Ry
(式中、qは0又は1であり、pは0又は1であり、mは1〜3の整数であり、R11は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の2価の炭化水素基、Aは−O−、−CONH−、−O−COO−、−O−CONH−又は−NH−CONH−であり、R12は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜38の2〜4価の炭化水素基又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜98のエーテル結合を有する2〜4価の炭化水素基である。Y1aは式:
−[MO(R29(R30(R31(R32−M(R33(R34(R35(R36(R37(式中、MおよびMは同じか又は異なり、2〜6価の金属原子;a、b、cおよびdは0又は1であって、かつa+b+c+d+2が金属原子Mの価数に等しい;e、f、g、hおよびiは0又は1であって、e+f+g+h+i+1が金属原子Mの価数に等しい;R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36およびR37は同じか又は異なり、式OR38又はR38(式中、R38は水素原子、または水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基)で示される有機基であって、かつR29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36およびR37の少なくともひとつがOR38である;n=0〜11の整数)で示される官能基)で示される有機−無機複合基]で示される基であることが好ましい。構造単位Mが構造単位M2である場合、上記Ryは、−Ryであることが好ましい。
【0112】
式(Ry)における−R12−の具体例としては、例えばつぎのものがあげられる。
【0113】
【化50】

【0114】
−R12−としては、例えば、−(CH−、及び、−(CH−からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0115】
1a中の金属MおよびMとしては、IB族としてCu;IIA族としてCa、Sr、Ba;IIB族としてZn;IIIA族としてB、Al、Ga;IIIB族としてY;IVA族としてSi、Ge;IVB族としてPb;VA族としてP、Sb;VB族としてV、Ta;VIB族としてW;ランタニドとしてLa、Ndがあげられる。
【0116】
特にY1aとしては、IVA族、そのうちでもSiが好ましく、特に−Si(OCH、−Si(OC、−SiCH(OCなどが加水分解・重縮合後に、水酸基を有する基材との良好な密着性および密着耐久性の点で好ましく、また、−[SiO(OCH−Si(OCH、−[SiO(OC−Si(OC(nは1〜11の整数)などが加水分解・重縮合後に水酸基を有する基材との良好な密着性およびその耐久性の他、表面硬度の向上の点で好ましい。
【0117】
これらのなかでも、Y1aとしては、−Si(OCH、−Si(OC、及び−SiCH(OCからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0118】
IVA族以外の金属の具体例としては、例えばY1aとしては、
IIA族がCa:−Ca(OR39)、好適な具体例としては−Ca(OCH);
IIB族がZn:−Zn(OR39)、好適な具体例としては−Zn(OC);
IIIA族がB:−B(OR39、好適な具体例としては−B(OCH
IIIB族がY:−Y(OR39、好適な具体例としては−Y(OC
IVB族がPb:−Pb(OR39、好適な具体例としては−Pb(OC
VB族がTa:−Ta(OR39、好適な具体例としては−Ta(OC
VIB族がW:−W(OR39、好適な具体例としては−W(OC
ランタニドがLa:−La(OR39、好適な具体例としては−La(OC
(式中、R39は水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基)などが例示できる。
【0119】
これら各種金属は、同一のものに限らず、異種のものを組みあわせてもよい。
【0120】
構造単位Mとしては、構造単位M1が好ましく、構造単位M1としてはさらに構造単位M2又は構造単位M3が好ましい。そこで、−Rfを−D−Ryと表した場合、式(2−2):
【0121】
【化51】

【0122】
(式中、X、X、X、X、X、D、Ry、a、bおよびcは前記と同じ)で示される構造単位であることが、基材との密着耐久性、さらに低粘性化や耐熱性が優れる点で好ましい。
【0123】
具体的には、式(2−2)の構造単位M1は、
【0124】
【化52】

【0125】
などが好ましく挙げられ、なかでも式(2−2)の構造単位は、式(2−3):
【0126】
【化53】

【0127】
(式中、X、X、X、X、X、D、Ry、aおよびcは前記と同じ)で示される構造単位であることが、耐熱性および耐薬品性が優れる点で好ましい。
【0128】
式(2−3)の構造単位は、より具合的には
【0129】
【化54】

【0130】
などが好ましく挙げられ、なかでも特に、
【0131】
【化55】

【0132】
の構造単位が耐熱性および耐薬品性においてより好ましい。
【0133】
上記Rfは、Rfであることも好ましい形態の一つである。Y中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を与えることができるものである。詳しくは、例えばラジカルやカチオンの接触によって、含フッ素ポリマー分子間で、又は化合物(A)と必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を与えることができるものである。
【0134】
上記構造単位LのRfがRf(アミド結合又はウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜99のエーテル結合を有する炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基)である構造単位を以下、構造単位Nともいう。また、構造単位L1、L2、及びL3において、RfがRfである構造単位を、それぞれ、構造単位N1、N2、及びN3という。
【0135】
好ましいRfとしては、式(Rf):
−D−Ry (Rf
[式中、−D−は、前記と同じである。Ryは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜99のエーテル結合を有する炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは前記と同じ)で置換されている有機基]が好ましい。−D−Ryの好ましい形態としては、上記−D−Ryで例示された好ましい形態において、RyをRyに変更したものが挙げられる。
上記Ryは、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合又はエーテル結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは前記と同じ)で置換されている有機基が好ましい。
【0136】
好ましいYの第1としては、
【0137】
【化56】

【0138】
(式中、Y2aは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基又は含フッ素アルケニル基;dおよびeは同じか又は異なり、0又は1)である。
【0139】
好ましいY2aとしては、
−CX=CX
(式中、XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H又はF)であり、この基はラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く、好ましいものである。
【0140】
好ましいY2aの具体例としては、
【0141】
【化57】

【0142】
などがあげられる。
【0143】
またより好ましいYとしては、
−O(C=O)CX=CX
(式中、XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H又はF)があげられ、この基は特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0144】
上記のより好ましいYの具体例としては、
【0145】
【化58】

【0146】
などがあげられる。
【0147】
その他の好ましいYの具体例としては、
【0148】
【化59】

【0149】
などがあげられる。
【0150】
のなかでも、−O(C=O)CF=CHの構造を有するものが近赤外透明性を高くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0151】
なお、上述の側鎖中に炭素−炭素二重結合を有する有機基Yは、ポリマー主鎖末端に導入してもよい。
【0152】
本発明で用いる含フッ素ポリマーにおいて、構造単位N、N1、N2およびN3に含まれる−Rf2a−基(前記−RfからYを除いた基)は、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の2価の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基である。この−Rf2a−は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子又は塩素原子が結合した2価の含フッ素炭化水素基、エーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、より好ましくはパーフルオロアルキレン基又はエーテル結合を有する2価のパーフルオロ炭化水素基である。含フッ素ポリマー中のフッ素含有率は25質量%以上、好ましくは40質量%以上である。これらによって、含フッ素ポリマー(B)の近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできることが可能となり、特に封止材の耐熱性や弾性率を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても近赤外透明性を高く、若しくは低屈折率性を維持できるため好ましい。
【0153】
−Rf2a−基の炭素数は大きすぎると、上記炭素数1〜40の2価の含フッ素炭化水素基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあり、また炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。上記炭素数1〜40の2価の含フッ素炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
【0154】
−Rf2a−基の好ましい具体例としては、
【0155】
【化60】

【0156】
などがあげられる。
【0157】
本発明で用いる含フッ素ポリマーを構成する構造単位Nは構造単位N1が好ましく、構造単位N1としてはさらに構造単位N2又は構造単位N3が好ましい。そこで、つぎに構造単位N2および構造単位N3の具体例について述べる。
【0158】
構造単位N2を構成する単量体として好ましい具体例としては、
【0159】
【化61】

【0160】
(以上、nは1〜30の整数;Yは前記と同じ)があげられる。
【0161】
より詳しくは、
【0162】
【化62】

【0163】
(以上、Rf、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、nは0〜30の整数;XはH、CH、F又はCF
などがあげられる。
【0164】
構造単位N3を構成する単量体として好ましい具体例としては、
【0165】
【化63】

【0166】
(以上、Yは前記と同じ;nは1〜30の整数)などがあげられる。
【0167】
さらに詳しくは、
【0168】
【化64】

【0169】
(以上、Rf、Rf10は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;mは0〜30の整数;nは1〜3の整数;XはH、CH、F又はCF)などがあげられる。
【0170】
これらの構造単位N2およびN3以外に、含フッ素ポリマーの構造単位Nを構成する単量体の好ましい具体例としては、例えば、
【0171】
【化65】

【0172】
(以上、YおよびRfは上述の例と同じ)
などがあげられる。
【0173】
より具体的には、
【0174】
【化66】

【0175】
(以上、Yは前記と同じ)などがあげられる。
【0176】
含フッ素ポリマー(B)は、更に、構造単位Aからなるものであってもよい。構造単位Aは式(L)で示される構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位であればよい。構造単位Aは任意成分であり、構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする含フッ素ポリマーやその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
【0177】
構造単位Aとしては、例えばつぎの構造単位が例示できる。
【0178】
(A1)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位A1は、含フッ素ポリマーおよびその硬化物の基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほか架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。
【0179】
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位A1は、式(A1):
【0180】
【化67】

【0181】
(式中、X11、X12およびX13は同じか又は異なりH又はF;X14はH、F、CF;hは0〜2の整数;iは0又は1;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;Zは−OH、−CHOH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SOH、スルホン酸誘導体、エポキシ基およびシアノ基よりなる群から選ばれる官能基)で示される構造単位であり、なかでも、
CH=CFCFORf−Z
(式中、RfおよびZは前記と同じ)から誘導される式(A1−1):
【0182】
【化68】

【0183】
(式中、RfおよびZは式(A1)と同じ)で示される構造単位が好ましい。
【0184】
より具体的には、
【0185】
【化69】

【0186】
(以上、Zは前記と同じ)などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
【0187】
また、
CF=CFORf−Z
(式中、RfおよびZは前記と同じ)から誘導される式(A1−2):
【0188】
【化70】

【0189】
(式中、RfおよびZは式(A1)と同じ)で示される構造単位も好ましく例示できる。
【0190】
より具体的には、
【0191】
【化71】

【0192】
(以上、Zは前記と同じ)などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
【0193】
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF=CFCF−O−Rf−Z、CF=CF−Rf−Z
CH=CH−Rf−Z、CH=CHO−Rf−Z
(以上、−Rf−は前記の−Rf−と同じ;Zは前記と同じ)などがあげられ、より具体的には、
【0194】
【化72】

【0195】
(以上、Zは前記と同じ)などがあげられる。
【0196】
(A2)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位A2は含フッ素ポリマー又はその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、さらに低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移温度などを調整でき、特に構造単位Lと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
【0197】
この含フッ素エチレン性単量体の構造単位(A2)としては、式(A2):
【0198】
【化73】

【0199】
(式中、X15、X16およびX18は同じか又は異なりH又はF;X17はH、F又はCF;h1、i1およびjは同じか又は異なり0又は1;ZはH、F、Cl又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状パーフルオロアルキル基;Rfは炭素数1〜20の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜100のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
【0200】
具体例としては、
【0201】
【化74】

【0202】
などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
【0203】
特に、これらは硬化性含フッ素ポリマー又はその硬化物の屈折率を低く維持できる点から、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位であることが好ましい。
【0204】
(A3)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位
この構造単位A3を導入すると、透明性を高くでき、また、高ガラス転移温度の含フッ素ポリマーが得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
【0205】
含フッ素脂肪族環状の構造単位A3としては式(A3):
【0206】
【化75】

【0207】
(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じか又は異なりH又はF;X21およびX22は同じか又は異なりH、F、Cl又はCF;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じか又は異なり0又は1の整数)で示されるものが好ましい。
【0208】
例えば、
【0209】
【化76】

【0210】
(式中、Rf、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
【0211】
具体的には、
【0212】
【化77】

【0213】
(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などがあげられる。
【0214】
そのほかの含フッ素脂肪族環状構造単位としては、例えば、
【0215】
【化78】

【0216】
などがあげられる。
【0217】
(A4)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
構造単位A4を導入することによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、例えば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できる。
【0218】
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系又はビニルエステル系単量体:
CH=CHOR、CH=CHOCOR10(R10:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH=CHCHCl、CH=CHCHOH、CH=CHCHCOOH、CH=CHCHBrなど
アリルエーテル系単量体:
CH=CHCHOR10(R10:炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CHCHOCHCHCOOH、
【0219】
【化79】

【0220】
アクリル系又はメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類など
があげられる。
【0221】
これらの非フッ素系エチレン性単量体の水素原子を重水素原子に一部又は全部置換したものは透明性の点でより好ましい。
【0222】
(A5)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位M、Nの共重合成分として、より好ましくは構造単位M、Nと上述の含フッ素エチレン性単量体又は非フッ素エチレン性単量体(上述のA3、A4)の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位A5を導入してもよく、それによって高ガラス転移温度化や高硬度化が図られる。
【0223】
脂環式単量体A5の具体例としては、
【0224】
【化80】

【0225】
(mは0〜3の整数;A、B、CおよびDは同じか又は異なり、H、F、Cl、COOH、CHOH又は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基など)で示されるノルボルネン誘導体、
【0226】
【化81】

【0227】
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
【0228】
含フッ素ポリマー(B)は、構造単位Lのみからなる重合体であってもよいし、構造単位Lと構造単位Aとからなる共重合体であってもよい。また、構造単位Lとしては、構造単位Mのみであってよいし、構造単位Nのみであってもよいし、含フッ素ポリマー(B)は、構造単位Mと構造単位Nの両方が、含フッ素ポリマー(B)中に含まれていてもよい。また、構造単位M、構造単位N、及び構造単位Aからなる共重合体であってもよい。
【0229】
含フッ素ポリマーが構造単位Lのみからなる場合、基材との密着耐久性を付与する機能、さらには被膜の高硬度化を付与できるといった点で有利である。
【0230】
また含フッ素ポリマーが共重合体である場合、構造単位Lは、含フッ素ポリマー(B)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには、2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であることが好ましい。
【0231】
特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた封止材の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには30モル%以上、特には40モル%以上含有することが好ましい。また、構造単位Lは、含フッ素ポリマー(B)を構成する全構造単位に対し100モル%未満であることが好ましい。
【0232】
含フッ素ポリマー(B)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1,000,000の範囲から選択できるが、好ましくは1,000〜500,000、特に2,000〜200,000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0233】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に封止材が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素ポリマー(B)の貯蔵安定性も不安定になりやすい。最も好ましくは数平均分子量が5,000から100,000の範囲から選ばれるものである。
数平均分子量は、ポリスチレンに準拠してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0234】
含フッ素ポリマー(B)は、例えば、構造単位Lからなり、必要に応じて、更に構造単位Aからなり、含フッ素ポリマーを構成する全構造単位に対して、構造単位Lを0.1〜100モル%、および構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量が500〜1,000,000である含フッ素ポリマーであってもよい。この場合、構造単位Lは、構造単位Mが0.1〜100モル%であり、構造単位Nが0〜99.9モル%であってもよいし、構造単位Nが0.1〜100モル%であり、構造単位Mが0〜99.9モル%であってもよい。
【0235】
含フッ素ポリマー(B)としてはまた、構造単位Lからなり、必要に応じて、更に、構造単位A1及び構造単位A2からなり、含フッ素ポリマー(B)を構成する全構造単位に対して、構造単位Lが0.1〜90モル%、構造単位A1が0〜99.9モル%および構造単位A2が0〜99.9モル%であり、かつ構造単位A1と構造単位A2との合計が、10〜99.9モル%であり、数平均分子量が500〜1,000,000であることも好ましい形態の一つである。
【0236】
含フッ素ポリマー(B)における構造単位Lの含有量は、含フッ素ポリマーを構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた硬化被膜の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。上限は100モル%未満である。
【0237】
構造単位A1およびA2の含有量はいずれも99.9モル%以下である。また、A1+A2の合計モル%は10〜99.9モル%とする。10モル%未満の場合は屈折率が低く維持できず、さらに硬化後の被膜硬度が低くなる傾向となり好ましくない。より好ましいA1+A2の合計モル%は20モル%以上、さらには30モル%以上であり、60モル%以下、さらには50モル%以下である。また、90モル%以下であってもよいし、80モル%以下であってもよいし、50モル%以下であってもよい。
【0238】
含フッ素ポリマー(B)において、構造単位L〔構造単位M(M1、M2、及びM3)と構造単位N(N1、N2、及びN3)〕と、構造単位A(A1及びA2)との組合せや組成比率は、構造単位Mと構造単位Nと構造単位Aの組合せが、上記の例示から、目的とする用途、物性(特にガラス転移温度、硬度など)、機能(透明性)などによって種々選択すればよい。
【0239】
含フッ素ポリマー(B)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1,00
0,000の範囲から選択できるが、好ましくは1,000〜500,000、特に2,
000〜200,000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0240】
含フッ素ポリマー(B)は、低屈折率化の観点から、フッ素含有率が5.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10.0質量%以上である。フッ素含有率の上限は、例えば、70.0質量%である。
含フッ素ポリマー(B)のフッ素含有率は、酸素フラスコ燃焼法により求めることができる。より具体的には、試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製 901型)で測定することにより求めることができる。
【0241】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。最も好ましくは数平均分子量が5,000から100,000の範囲から選ばれるものである。
【0242】
上記含フッ素ポリマー(B)は、
(1)Rfを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法
(2)一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Rfを導入する方法
(3)(1)と(2)の両方の方法を用いて導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
これらの方法のうち、(3)の方法は含フッ素ポリマー側鎖末端の炭素―炭素二重結合を硬化反応させずに、本発明の加水分解性金属アルコキシド部位を有する硬化性フッ素ポリマーを得る点から(3)の方法が好ましい。
【0243】
上記含フッ素ポリマー(B)は、例えば、国際公開第02/18457号パンフレット、特開2006−027958号公報に記載の方法により製造することができる。
【0244】
重合方法としては、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが例示でき、加水分解性金属アルコキシド部位を有する重合体を得るために例示した単量体は組成や分子量などの品質のコントロールがしやすい点や工業化しやすい点からラジカル重合法が特に好ましい。
【0245】
構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体は、下記式:
【0246】
【化82】

【0247】
(式中、XおよびXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H、F又はCF;Rfは上記と同じである。;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1)で示される単量体である。上記の単量体において、X、X、X、X、X、a、b、c、及びRfにおける好ましい形態は上記したものと同じである。
【0248】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、化合物(A)と含フッ素ポリマー(B)との合計質量に対して、化合物(A)が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物(A)が60質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。化合物(A)が少なすぎると、耐熱性や透明性に劣るおそれがある。また、化合物(A)と含フッ素ポリマー(B)との合計質量に対して、含フッ素ポリマー(B)は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。含フッ素ポリマー(B)が少なすぎると、誘電率が高くなり可撓性に劣るおそれがある。
【0249】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(B)を溶解又は分散する有機溶剤を含んでいてもよいが、有機溶剤の除去が不充分な場合、有機溶剤が硬化物内に残存するといった問題が生じたり、残存する有機溶剤の影響として耐熱性、機械的強度の低下、白濁するといった問題が生じるおそれや、溶剤の揮発によってボイドが発生するおそれがあり、溶剤の除去をできるだけ完全に行うことが望まれる。
【0250】
従って、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、有機溶剤を含まないことが好ましい。有機溶剤を含まないものであれば、有機溶剤の除去に使用されるエネルギーの削減の観点や、環境面やコスト面から好ましい。
【0251】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物において、有機ケイ素化合物(A)は液体であることが好ましく、また、含フッ素ポリマー(B)は、有機ケイ素化合物(A)に可溶であることが好ましい。有機ケイ素化合物(A)が、含フッ素ポリマー(B)を溶解できるものである場合には、有機溶剤は不要となる。
【0252】
上記のとおり、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、有機溶剤を用いない、いわゆる無溶剤型の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物とすることができる。このように無溶剤型とすることにより、有機溶剤の除去が不要となり、成形工程などを簡略化でき、また、有機溶剤が硬化物内に残存するといった問題が生じない。残存する有機溶剤の影響として耐熱性、機械的強度の低下、白濁するといった問題がある。さらに成形加工条件の関係から揮発分が許されないケースに対しても無溶剤型の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は有用である。例えば、密閉容器内の充填、封止のような用途に特に有効である。
【0253】
有機溶剤としては、上記含フッ素ポリマー(B)を溶解可能なもの(有機ケイ素化合物(A)を除く)であればよい。例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
【0254】
有機溶剤としてはまた、フッ素系の溶剤も挙げられる。フッ素系の溶剤としては、例えばCHCClF(HCFC−141b)、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
【0255】
【化83】

【0256】
などのフッ素系アルコール類;
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCFCFClCFCFClなどがあげられる。
【0257】
これらフッ素系溶剤は単独で用いてもよいし、フッ素系溶剤同士や、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
【0258】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、更に、硬化開始剤を含むことが好ましい。特に、上記Yが、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基であるYである場合に、硬化開始剤を含むことが好ましい。
【0259】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物における硬化開始剤としては、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。例えば、活性エネルギー線硬化開始剤のほか、加熱硬化や常温2液硬化系の硬化剤が使用できる。比較的低温で硬化反応が可能である点からは、活性エネルギー線硬化開始剤が好ましい。上記Yの種類(ラジカル反応性か、カチオン(酸)反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択される。
【0260】
活性エネルギー線硬化開始剤は、例えば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外線、電子線、X線、γ線などの活性エネルギー線を照射することによって初めてラジカルやカチオン(酸)などを発生し、含フッ素ポリマー(B)の架橋基(例えば炭素−炭素二重結合)の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外線でラジカルやカチオン(酸)を発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
【0261】
上記Yが、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である場合、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、前記活性エネルギー線により容易に硬化反応を開始できるため好ましい。
【0262】
紫外線領域の活性エネルギー線を用いて硬化させる場合、硬化開始剤としては、例えばつぎのものが例示できる。
【0263】
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど
【0264】
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
【0265】
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトンなど
【0266】
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
【0267】
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
【0268】
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの光開始助剤を添加してもよい。
【0269】
また、カチオン(酸)反応性の開始剤(光酸発生剤)としては、つぎのものが例示できる。
【0270】
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
【0271】
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
【0272】
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
【0273】
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
【0274】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物において、硬化開始剤の添加量は、含フッ素ポリマー(B)中の架橋基の含有量、化合物(A)が架橋性基を有する場合には、その架橋性基の含有量、さらには用いる硬化開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、例えば、硬化開始剤は、化合物(A)及び含フッ素ポリマー(B)の合計100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量部であり、更に好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0275】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、硬化剤を含むことも好ましい。特に、上記Yが、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である場合に、硬化剤を含むことが好ましい。
【0276】
硬化剤としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカル又は酸で重合できるものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であっても炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能の単量体であってもよい。
【0277】
これらの炭素−炭素不飽和結合を有するいわゆる硬化剤は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤と光などの活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、本発明の組成物中の含フッ素ポリマー(B)の側鎖の炭素−炭素二重結合と共重合によって架橋することができるものである。
【0278】
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリル酸エステル類などが例示される。
なかでも硬化物の屈折率を低く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、例えば一般式:
【0279】
【化84】

(XはH、CH又はF、Rfは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基又は炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
【0280】
【化85】

などがあげられる。
多官能アクリル系単量体としては、ジオール、トリオール、テトラオールなどの多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた化合物が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物があげられる。
また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基又はエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
具体例としては、
【0281】
【化86】

などの一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基又はα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましくあげられる。
また、これら例示の単官能、多官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
【0282】
本発明の組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤の添加量は、含フッ素ポリマー(B)中の炭素−炭素二重結合の含有量、上記硬化剤の使用の有無や硬化剤の使用量によって、さらには用いる硬化開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、硬化剤を使用しない場合では、含フッ素ポリマー(B)100重量部に対して好ましくは0.01〜30重量部、さらには0.05〜20重量部、最も好ましくは、0.1〜10重量部である。
詳しくは、含フッ素ポリマー(B)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)に対し、好ましくは0.05〜50モル%、より好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
【0283】
硬化剤を使用する場合は、含フッ素ポリマー(B)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)と硬化剤の炭素−炭素不飽和結合のモル数の合計モル数に対して好ましくは0.05〜50モル%、より好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.5〜10モル%である。
【0284】
硬化剤を使用する場合、硬化剤の使用量は目的とする硬度や屈折率、硬化剤の種類、使用する硬化性含フッ素ポリマーの硬化性基の含有量などによって適宜選択され、望ましくは硬化性含フッ素ポリマーに対して、1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。硬化剤の添加量が多すぎると屈折率が高くなる傾向にあり、好ましくない。
【0285】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、上述したものの他に、必要に応じて種々の添加剤を含むものであってもよい。
【0286】
添加剤としては、例えばシランカップリング剤、可塑剤、変色防止剤、酸化防止剤、無機充填剤、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
【0287】
また、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、封止材の硬度を高め、また屈折率の制御を行う目的で無機化合物の微粒子又は超微粒子を含むものであってもよい。
【0288】
無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)などの微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には300nm以下、特に100nm以下が好ましい。
【0289】
無機化合物の微粒子又は超微粒子によって、空隙を形成することが可能である。すなわち、本発明の組成物に無機化合物の微粒子又は超微粒子を配合させた被膜は、この空隙を利用して被膜単体の屈折率よりもさらに低屈折率にすることが可能である。
【0290】
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤などを用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、例えば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン又はこれらの混合物などの金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物などがあげられる。
【0291】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、更に、中空微粒子を含んでもよい。本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物が屈折率の低い中空微粒子を含むことによって、屈折率を低下させることができる。
【0292】
上記中空微粒子は、屈折率を低下させるために配合される成分である。上記中空微粒子の屈折率の上限は、例えば、1.48である。中空微粒子は、屈折率が1.45以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましい。屈折率が高すぎると、CCDモジュールの封止剤等、用途によっては使用が困難となる場合がある。上記範囲であることにより、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物から得られる薄膜の屈折率を低くすることができる。屈折率の下限は、例えば、1.15である。中空微粒子の屈折率は、特許第3761189号や特許第4046921号記載の方法で測定することができる。
【0293】
中空微粒子は、気孔率が1〜60%であることが好ましく、2〜40%であることがより好ましい。中空微粒子の気孔率は、上記の方法で求めた屈折率を用いて、例えばシリカの中空微粒子の場合であれば、純粋なSiOの屈折率(1.45)との差から、空気に換算して含まれている空隙を算出して求めることができる。
【0294】
中空微粒子は、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物から得られる封止部材(保護層)や反射防止膜の光学特性が特に良好な点から、平均粒子径が、1〜150nm、さらには10〜80nmであることが好ましい。
【0295】
中空微粒子としては、中空シリカ微粒子であることが好ましい。中空シリカ微粒子は、特開2002−277604号公報、特開2002−265866号公報などで使用されている公知の材料である。
【0296】
具体的には、特開2004−203683号公報、特開2006−021938号公報などに記載されている中空シリカ微粒子が使用できる。好ましいものとして、日揮触媒化成工業(株)製のスルーリアが例示できる。
【0297】
中空シリカ微粒子は、含フッ素ポリマー(B)100質量部に対し、1〜1000質量部、さらには3〜250質量部であることが好ましく、特に5〜150質量部であることが好ましい。この範囲で配合するとき、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物から得られる薄膜の屈折率を低くすることができる。また、耐熱性および耐薬品性などの特性が特に優れたものになる。
【0298】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、キャスティング成形やポッティング成形に使用するために相応の粘度、例えば、室温で100〜10000mPa・sであることが好ましい。そのため、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物の全質量に対して、化合物(A)及び含フッ素ポリマー(B)の質量の合計が、10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜50質量%である。
【0299】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、例えば、液体の化合物(A)に、含フッ素ポリマー(B)、並びに、必要に応じて硬化開始剤、架橋剤、その他の添加剤を添加して、必要に応じて撹拌して混合することにより、製造することができる。
【0300】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、架橋、例えば熱架橋又は光架橋させることによって、封止材を形成することが可能である。封止材は、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥し、そののち、焼成することで架橋させてもよいし、紫外線、電子線又は放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させて形成してもよい。
【0301】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、架橋することで硬化させ、得られる硬化物を種々の形態で各種の用途に利用できる。本発明は、上記光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を硬化して得られる硬化物でもある。
【0302】
例えば硬化膜を形成して各種用途の封止部材として利用できる。膜を形成する方法としては用途に応じた適切な公知の方法を採用することができる。例えば膜厚をコントロールする必要がある場合は、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用できる。
【0303】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、硬化膜の形成に用いてもよいが、成形して硬化物としてもよい。成形方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、トランスファー成形、光造形、ナノインプリント、真空成形などが採用できる。
【0304】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物の用途としては、例えば、発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子などの発光素子やCCDやCMOS、PDのような受光素子などの光機能素子のパッケージ(封入)、実装などが例示できる。また、深紫外線顕微鏡のレンズなどの光学部材用の封止材、充填材又は接着剤などもあげられる。封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などの発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は特にフッ素を含有しているため、低屈折率の封止部材になる。
【0305】
また、本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物は、下記に挙げるような、光学ファイバー、反射防止コーテイング材、レンズ、光導波路、プリズム、光学窓、光記憶ディスク、非線形型光素子、ホログラム、フォトリソグラティブ、発光素子等に用いる封止材料、充填材、接着剤又は表面コーティング材としても使用可能である。また、下記に挙げるような、光デバイス用の封止材料としても使用できる。光デバイスとしては、光導波路、OADM、光スイッチ、光フィルター、光コネクター、合分波器などの機能素子および光配線などの光実装が知られており、これらのデバイスを封止するのに有用な材料である。モジュレータ、波長変換素子、光増幅器などの光デバイス用の封止材料、充填材、接着剤又は表面コーティング材としても適している。また、センサー用途では、光学センサーや圧力センサーなどの感度向上や撥水撥油特性によるセンサーの保護などの効果があり有用である。
【0306】
そのほか、電子半導体用の封止部材用材料、耐水耐湿性接着剤、光学部品や素子用の接着剤としても使用できる。上記に記載した充填材、接着剤又は表面コーティング材は、封止機能を有するものである。
【0307】
用途として前記のような例示ができるが、これらに限定されるものではない。
【0308】
本発明の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物のより好ましい構成としては、例えばつぎのものが例示できるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0309】
(例I)
有機ケイ素化合物(A):立方体籠型シルセスキオキサン(例えば、上記式(c)で表される構造を有するポリシロキサン、より具体的には、東亞合成(株)製のOX−SQ−H等が挙げられる)
含フッ素ポリマー(B):構造単位Lが、下記式:
【化87】

(D及びRyは、上記と同じ。)で表される重合体
重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)等の光ラジカル発生剤
シランカップリング剤:トリエトキシシリルプロピルメタクリレート
(例II)
有機ケイ素化合物(A):立方体籠型シルセスキオキサン(例えば、上記式(c)で表される構造を有するポリシロキサン、より具体的には、東亞合成(株)製のOX−SQ−H等が挙げられる)
含フッ素ポリマー(B):構造単位Lが、下記式:
【化88】

(D及びRyは、上記と同じ。)で表される重合体
【実施例】
【0310】
つぎに本発明を合成例、実施例などに基づいて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
【0311】
(1)NMR:BRUKER社製
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0312】
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製のFT−IR SPECTROMETER 1760X
【0313】
(3)重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による。昭和電工(株)製のShodex GPC−104を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−604を1本、GPC KF−603を1本、GPC KF−602を2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.5ml/分で流して測定したデータより算出する。
【0314】
(4)フッ素含有量(質量%)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製 901型)で測定することにより求める。
【0315】
(5)粘度(mPa・s)
東海八神(株)製のコーンプレート型粘度計CV−1Eを用いて25℃における粘度を、CP−100コーンを使用し、100rpmの条件で測定し、60秒間で安定した値を採用する。
【0316】
(6)屈折率(n
ナトリウムD線(589nm)を光源として25℃において(株)アタゴ光学機器製作所製のアッベ屈折率計を用いて測定する。
【0317】
(7)熱分解温度(℃)
熱重量計((株)島津製作所のTGA−50)を用い、窒素雰囲気の条件で昇温速度10℃/minの条件で測定し、1質量%減の温度で評価する。
【0318】
(8)光透過率(%)
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310(商品名))を用いて波長300〜800nmにおける約100μm厚のサンプル(硬化フィルム)の分光透過率曲線を測定した値を採用する。
【0319】
(9)耐溶剤性
10mm×10mm×0.1mmのサンプルを20mLの酢酸ブチルに浸漬して、室温8時間経過後の様子を目視で観察する。
【0320】
(10)耐熱性
温度180℃において各サンプルを1時間保持し、外観の変化を目視で観察する。
【0321】
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mLのガラス製四ツ口フラスコに、下記式:
【0322】
【化89】

で表されるパーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20g、下記式
[H−(CFCF−COO−]
で表される化合物の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、十分に窒素置換を行った後、窒素気流下20℃で24時間攪拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、重合体17.6gを得た。この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は9000、重量平均分子量は22000であった。
【0323】
合成例2(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200mLの四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン1.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、攪拌を行いながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド〔CH=CFCOF〕1.2gをジエチルエーテル20mLに溶解したものを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間攪拌を継続した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗を繰返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離した。このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、−OOCCF=CH基含有含フッ素アリルエーテル/OH基含有含フッ素アリルエーテル=50/50モル%の共重合体を含んでいた。また、NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に、C=O基の吸収が1770cm−1に観測された。得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を反応物をn−ヘキサン100ml中に投入し沈殿物を分取。室温減圧下で乾燥することで目的のポリマーを得た。
【0324】
合成例3(トリエトキシシラン基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた300mLの四ツ口フラスコに、MIBK150mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体20.0gと、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン17.4gを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、攪拌を行いながら、さらにラウリルジブチルスズ18mgを加えた後、室温まで温度を上げさらに4.0時間攪拌を継続した。NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、水酸基の吸収が消失し、反応が完了したことが確認できた。反応物をn−ヘキサン1L中に投入し沈殿物を分取。室温減圧下で乾燥することで目的のポリマーを得た。
【0325】
【化90】

【0326】
比較合成例
攪拌装置、温度計を備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)を80gとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20gとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1.5g、溶媒として酢酸ブチルを300gいれ、室温でよく攪拌し、窒素気流下で温度を70℃、16時間の条件で重合した。得られたポリマーをn−ヘキサン中に再沈させ、91gのポリマーを得た。その数平均分子量は33000であった。この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、MMAとHEMAの共重合体であることが確認された。その組成比はNMRより、MMA:HEMA=83:17(モル比)と求められた。
得られたポリマーを10g計量し、あらかじめモレキュラーシーブス4Aで脱水したメチルイソブチルケトン(MIBK)40gに溶解させ、攪拌装置、温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに仕込んだ。滴下ロートより、アリルイソシアネートを0.74g、室温で滴下し、十分に攪拌して均一化させた。その後、オイルバスにつけ、内温を80±5℃に保ち5時間攪拌した。反応溶液のIRを測定することで、原料のアリルイソシアネートが系内に無いことを確認した。その後、反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮後、キャスト法により溶媒を除去後、析出した固体を少量のアセトンに再度溶解させた。この溶液を十分に多量のn−ヘキサン中に再沈させることによりポリマーの精製を行った。この精製操作を合計3回繰り返し、得られたポリマーを19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、下記式:
【0327】
【化91】

(m:n:o=10:6:84)で表されるポリマーであった。
【0328】
実施例1(オキセタン変成シルセスキオキサン/合成例3ポリマー=9/1組成物)
合成例3のポリマー1.0gにOX−SQ−H(東亞合成(株)製)9.0g、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート0.2g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。
硬化前の組成物の25℃における液状組成物の外観を目視で評価した。結果を表1に示す。評価基準は以下のとおりである。
○:透明でかつ均一であり、550nmの光の透過率が80%以上である。
△:一部に白濁(ゲル状物)が認められる。
×:不透明、白濁。
また、硬化前の組成物の25℃における液状組成物の粘度、液状組成物の外観の評価結果を表1に示す。
【0329】
ついで、ガラス板上に離型用のフッ素樹脂フィルムであるダイキン工業(株)製NF−0100(厚さ100μm)を敷き、アプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、さらに、離型用のフッ素樹脂フィルムであるダイキン工業(株)製NF−0100(厚み100μm)を上部よりかぶせて、さらに厚さ1mmのスライドガラスをのせた後に、100℃で2時間、引き続いて150℃で1時間硬化させた。硬化後、離型用のフッ素樹脂フィルムを剥がして、硬化フィルムとした。
【0330】
サンプルフィルム(硬化後)のフッ素含有量、屈折率(n)、熱分解温度(Td)、光透過率可視(550nm)(T)を測定した。結果を表1に示す。
また、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:透明でかつ均一である。
△:一部に白濁(にごり)が認められる。
×:不透明、白濁。
また、耐溶剤性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:目視で膨潤が見られない。
△:目視で膨潤が見られる。
×:溶解する。
さらに、耐熱性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:目視で変化が見られない。
△:目視でわずかな変色、濁りがみられる。
×:目視で明らかな変色、白濁、変形が見られる。
【0331】
実施例2(オキセタン変成シルセスキオキサン/合成例3ポリマー=4/1組成物)
合成例3のポリマー2.0gにOX−SQ−H(東亞合成(株)製)8.0g、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート0.2g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。
実施例1と同様に硬化させ、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0332】
実施例3(オキセタン変成シルセスキオキサン/合成例2ポリマー=9/1組成物)
合成例2のポリマー1.0gにOX−SQ−H(東亞合成(株)製)9.0g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。実施例1と同様に硬化させ、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0333】
実施例4(オキセタン変成シルセスキオキサン/合成例2ポリマー=4/1組成物)
合成例2のポリマー2.0gにOX−SQ−H(東亞合成(株)製)8.0g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。実施例1と同様に硬化させ、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0334】
比較例(オキセタン変成シルセスキオキサン組成物)
比較合成例のポリマー1.0gとOX−SQ−H(東亞合成(株)製)9.0g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。実施例1と同様に硬化させ、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0335】
【表1】

【0336】
表1から、実施例1〜4で得られた硬化物は、比較例で得られた硬化物と比較して、熱分解温度から評価される耐熱性に優れていることがわかる。また、実施例1〜4で得られた硬化物は光透過率が高く、耐溶剤性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0337】
本発明の組成物は、光学素子封止用の封止部材を形成することができるものであり、種々の用途に適用することができる。特に、LED素子封止用の封止部材を形成する材料として特に好適に利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素化合物(A)、及び、
下記式(L):
【化1】

(式中、XおよびXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;XおよびXは同じか又は異なり、H、F又はCF;Rfは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端に炭素数1〜30の加水分解性金属アルコキシド部位を少なくとも1個含む1価の有機基、又は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1である。)で示される構造単位を有する含フッ素ポリマー(B)、からなることを特徴とする光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項2】
有機ケイ素化合物(A)は、下記式(1):
Si(R)(R)(R)(R) (1)
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基である。)で表される化合物(A1)、又は、
下記式(2−1)、(2−2)及び(2−3):
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数3〜10のオキセタン基、アリル基、グリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基である。Rは、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン単結合である。)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種からなり、少なくとも2個のSiが、−R−を介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している化合物(A2)である
請求項1記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項3】
有機ケイ素化合物(A)は、前記化合物(A2)であって、
が−O−であるポリシロキサンであり、
、R及びRの少なくとも1つは、架橋性のアリル基、グリシジル基、オキセタン基、アクリル基、又はメタクリル基である請求項2記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項4】
有機ケイ素化合物(A)は、シルセスキオキサンである
請求項1、2又は3記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項5】
有機ケイ素化合物(A)と含フッ素ポリマー(B)との合計質量に対して、有機ケイ素化合物(A)が50質量%以上である
請求項1、2、3又は4記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項6】
LEDの封止剤に用いる請求項1、2、3、4又は5記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学素子封止用含フッ素樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。

【公開番号】特開2012−214754(P2012−214754A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73523(P2012−73523)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】