説明

光学素子

【課題】成膜時のクラック等の発生を抑制しながら、反射防止性能を向上させた光学素子を得る。
【解決手段】表層反射防止膜43は、基板41側においてSiO2膜43aを主とする領域C、最表層側においてMgF2膜43bを主とする領域Dが形成されている。領域C、D間にはSiO2とMgF2との混合領域である領域Eが形成されている。領域CはSiO2を主とする領域からMgF2を主とする領域にかけて徐々にSiO2の成分濃度比率が小さく、同時にMgF2の成分濃度比率が大きくなり、領域Dでは領域Cと逆の関係となり、これらの領域C〜D間には明確な界面は存在しない。このような構成とすることにより、屈折率にも同様の傾向が現れ、屈折率が領域Cから領域Dにかけて連続的に変化し、その接合部に界面が存在しないため、屈折率の異なる界面で発生する光の反射が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラやビデオカメラ等の撮影装置や光学機器等に使用される光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器において、被写体が高輝度の場合の撮影時に、絞りが小絞りになり回折で画像が劣化することがある。これを防止するために、従来から撮影光学系上にND(Neutral Density)フィルタ等の光を減衰させる光学素子を挿入することが行われている。
【0003】
近年では、デジタルカメラやビデオカメラの高画質化に伴い、より適切な調整ができるように、1枚のNDフィルタに異なる濃度の濃度領域を複数設けた多濃度NDフィルタや連続的な濃度勾配を設けたグラデーションNDフィルタが使用されている。
【0004】
また、開口内でNDフィルタの有無による画質の差が生ずることを避けるために、NDフィルタの一部に透明領域を形成し、NDフィルタによる減光を行わない場合においても、透明領域を開口内に挿入するNDフィルタも使用されている。
【0005】
例えば特許文献1においては、透明樹脂フィルム上に真空蒸着法によりTiO膜、Al23膜、SiO2膜を成膜した透明領域付きグラデーションNDフィルタが開示されている。また、特許文献2においてはグラデーションNDフィルタの作製方法が開示されている。
【0006】
NDフィルタの基本構成は、透明基板の片面に金属膜、金属酸化膜、誘電体膜等の積層膜から成るND膜を形成したものであるが、透明基板の片面にND膜を形成し、裏面には多層反射防止膜を形成したり、或いは透明基板の両面にND膜を形成してもよい。
【0007】
図13はNDフィルタ1の膜構成図を示している。樹脂製の透明基板2の上に反射率を低下させるための反射防止層であるAl23膜3aと、透過率を低下させるための光吸収層としてTiOx膜3bを交互に成膜することにより、8層から成るND膜3が形成されている。NDフィルタ1の透過率は光吸収層である第2、4、6、8層のTiOx膜3bの総膜厚によって変化し、総膜厚が厚くなるほど透過率は低下する。
【0008】
反射率は蒸着時にモニタリングすることにより、反射防止層であるAl23膜3aの膜厚を制御することにより、反射率を小さくすることが可能である。更に、最上層の第8層のTiOx膜3b上には、低屈折材料としてMgF2膜4を光学膜厚n×d(n:屈折率、d:物理膜厚)でλ/4(λ;設計波長)蒸着した表層反射防止膜を形成することにより、反射防止効果を高めている。また、MgF2膜4の代りに、SiO2膜を用いることもできる。
【0009】
そして、透明基板2上にND膜3及びMgF2膜4を成膜した後に、所定の形状にプレス加工等により切断することにより、NDフィルタ1を得ることができる。
【0010】
CCD等の撮像素子は構造上、その表面において光を反射し易いため、CCD表面で反射した光がNDフィルタ1の表面で再度反射し、CCDの別の画素に入射してしまい、ゴースト等の原因となることがある。従って、NDフィルタ1の表面反射を抑制することは、良好な画質の写真や画像を撮影するために極めて重要である。
【0011】
図14は従来の透明領域付きのグラデーションNDフィルタ11の断面模式図を示しており、透明基板2上のND領域Aに濃度勾配を有するND膜12を形成し、ND領域A及び透明領域Bに単層の表層反射防止膜13を一様に成膜している。単層の表層反射防止膜13の場合には、その屈折率が小さく空気の屈折率(n=1)に近い方が反射防止効果が高いため、通常ではSiO2膜(n=1.46)やMgF2膜(n=1.36)が使用される。
【0012】
また、図15に示すグラデーションNDフィルタ21においては、ND領域AのND膜12上には単層の表層反射防止膜13を成膜し、特に反射率の高い透明領域Bにおいては、多層の表層反射防止膜22が成膜されている。
【0013】
このように、透明基板2上に表層反射防止膜13、22を物理蒸着膜として成膜する場合には、透明基板2との密着性を向上させるために透明基板2を加熱して蒸着する。しかし、透明基板2が樹脂製の場合には耐熱性の問題があり、基板温度の上限は100〜150°C程度である。
【0014】
固体撮像素子の高感度化や高解像度化に対応し、NDフィルタの更なる低反射率化の要求に対応するためには、表層反射防止膜の反射率をできる限り小さくする必要がある。しかし、樹脂製の基板に表層反射防止膜を成膜する場合には、その成膜温度の低さにより膜の材料によっては蒸着膜の強度が弱く、光学素子として加工する際に、クラックが発生し易いという問題がある。例えば、表層反射防止膜として単層のMgF2膜を成膜した場合には上述の問題が発生する。
【0015】
一方、従来から表層反射防止膜として使用されてきたSiO2膜は、上述の基板温度で成膜してもクラックの発生は生ずることはないが、SiO2膜はMgF2膜と比較すると、屈折率が大きいため反射率が高くなってしまう。
【0016】
また、上述の成膜時のクラックの発生と膜表面における反射率の低減の課題を解消する方法として、本出願人はSiO2膜上にMgF2膜を積層する方法を提案している。この方法は、基板上にSiO2膜が形成されるためクラックの発生を抑制でき、最表層にMgF2膜が形成されているため、NDフィルタ表面での反射をMgF2膜により抑制することができる。
【0017】
【特許文献1】特開2004−205951号公報
【特許文献2】特許3701931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述のように表層反射防止膜としてSiO2膜上にMgF2膜を成膜する方法は、比較的容易にクラックの発生と表面反射を抑制することができるが、SiO2膜とMgF2膜の界面において反射が生ずるため、単層のMgF2膜よりは反射率は高くなる。
【0019】
また、図15に示すように、特に反射率の高い透明領域Bのみを多層の表層反射防止膜22を成膜すると、この部分のみ別途の成膜工程が必要となる。従って、製造コストが上昇すると共に、多層の表層反射防止膜22の膜厚が通常300〜400nm程度と厚くなり過ぎてクラックが発生し易くなる。
【0020】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、樹脂基板への成膜時のクラック等の発生を抑制しながら、複数の反射防止層の最表面及び膜間の界面での反射防止性能を向上させた光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る光学素子は、樹脂基板の上に形成された誘電体層から成る表層反射防止膜を有し、前記誘電体層は複数の誘電体材料の成分濃度比率が連続的に変化する領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光学素子によれば、樹脂基板上に複数の反射防止層を成膜する際に、反射防止層のクラックの発生を抑制すると共に、表面の反射率を低減させるだけでなく、複数の反射防止層間の界面での反射率を低減させることができる。
【0023】
また、このような光学素子を光量絞り装置に使用すると、ゴースト等の少ない良好な画像の撮影が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を図1〜図12に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は撮影光学系の構成図を示し、レンズ31、光量調節部材32、レンズ33〜35、ローパスフィルタ36、CCD等から成る固体撮像素子37が順次に配列されている。光量調節部材32においては、絞り羽根支持板38に一対の絞り羽根39a、39bが可動に取り付けられている。絞り羽根39aには、絞り羽根39a、39bの駆動量に応じて略菱形形状が変化する開口部を通過する光束の透過量を減光するためのNDフィルタ40が接着されている。なお、このNDフィルタ40は絞り羽根39aに取り付けずに、独立して駆動するようにしてもよい。
【0026】
図2は本実施例において製造したNDフィルタ40の断面模式図であり、図3は図2のND領域Aにおける膜構成図を示している。
【0027】
NDフィルタ40に用いられる樹脂基板41としては、透明性及び機械的強度を有するものが好ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、アクリル系樹脂等のフィルム状の基板を使用することが可能である。
【0028】
また、基板41の板厚としては、NDフィルタ40としての剛性を保持しながら、可能な限り薄くすることが好ましい。具体的には、その厚さとして300μm以下が好ましく、より好ましくは50〜100μmである。なお、本実施例の樹脂基板41としては、耐熱性、強度、透明性に優れた厚さ100μmのPETを用いている。
【0029】
図3に示すように、ND領域Aにおいては基板41上に反射防止層であるAl23膜42aと、光吸収層であるTiOx膜42bとによる8層の交互層から成る光減衰膜であるND膜42が形成されている。
【0030】
また、ND膜42の反射防止層としては、光吸収の少ない誘電体層であればよく、Al23膜42aの他に、SiO2、SiO、MgF2、ZrO2、TiO2等の膜が使用できる。TiOx膜42bのxの値を制御することにより、分光透過率の平坦性を調整できるが、多層膜の総数や使用材料によっても特性は変化する。また、ND膜42の光吸収層としては、可視領域の光を吸収する特性を有する材料であればよく、TiOx膜42bの他に、Ti、Ni、Cr、NiCr、NiFe、Nb等の金属、合金、酸化物の膜を使用することができる。
【0031】
そして、第8層のTiOx膜42bの上層には、後述するように誘電体材料のSiO2膜43aとMgF2膜43bとの成分濃度比率が、この順に連続的に変化するように積層した表層反射防止膜43が形成されている。
【0032】
図4は透明領域Bにおける表層反射防止膜43の濃度分布の説明図を示し、基板41側においてSiO2膜43aを主とする領域C、最表層側においてMgF2膜43bを主とする領域Dが形成されている。
【0033】
領域C、D間にはSiO2とMgF2との混合領域である領域Eが形成されている。領域CはSiO2を主とする領域からMgF2を主とする領域にかけて、徐々にSiO2の成分濃度比率が小さく、同時にMgF2の成分濃度比率が大きくなり、領域Dでは領域Cの逆の関係となる。即ち、これらの領域C〜D間には明確な界面は存在しない。
【0034】
表層反射防止膜43をこのような構成とすることにより、屈折率にも同様の傾向が現れる。つまり、屈折率が領域Cから領域Dにかけて連続的に変化し、その接合部に界面が存在しないため、屈折率の異なる界面で発生する光の反射が生じない。
【0035】
領域C、Dはそれぞれ基板41側及び最表層側においては、SiO2及びMgF2膜のみから成る均一の成分濃度分布を有するが、均一の成分濃度分布を設けずに、基板41側から最表層側へ連続的に成分濃度分布を有するようにしてもよい。
【0036】
なお、この表層反射防止膜43はND領域Aから透明領域Bまで同一工程で略同一膜厚に成膜されている。
【0037】
また、誘電体層を形成する誘電体材料は、表層反射率等の特性に悪影響を及ぼさなければSiO2、MgF2の2種類の他に、他の材料を含んでいてもよい。
【0038】
図5はNDフィルタ40のND膜42を成膜するための真空蒸着機のチャンバの構成図を示している。チャンバ51内には、蒸着源52と、この蒸着源52を加熱する蒸着材料加熱装置が設けられている。この蒸着源52の上方には、駆動手段により回転可能な蒸着傘53が設けられ、この蒸着傘53には図6に示すような基板治具54が設けられている。またチャンバ51の上部には、反射防止層であるAl23膜42の膜厚を測定するための光学モニタ55が配置されている。
【0039】
図6は基板治具54の拡大断面図を示し、基板治具54には図示しない基準ピンが設けられ、基板41は基板41に穿けられた基準孔を介して固定され、基板41の下方には間隔を隔てて蒸着パターン形成用マスク61が取り付けられている。
【0040】
そして、チャンバ51内を図示しない真空ポンプを介して真空引きした後に、蒸着傘53を駆動手段により回転させながら蒸着源52から必要な蒸着材料を蒸発させる。なお、本実施例においては、蒸着材料はAl23とTiOxであり、これらを順次に切換えることにより、図3に示すようなAl23膜42aとTiOx膜42bを交互に積層した8層のND膜42を形成する。
【0041】
蒸着源52は回転式のハースに複数の材料がセットできるもので、成膜する膜毎に必要に応じて真空状態のままで材料を交換することができる。また、このときND膜42に必要な透過率はTiOx膜42bの総膜厚により調整する。
【0042】
基板41と所定の間隔を隔てて蒸着パターン形成用マスク61を設けることにより、マスク61の開口部61aに対向する位置の基板41上に形成されるND膜42は、最も膜厚が厚く高濃度になる。また、マスク61が遮蔽する部分は膜厚が徐々に薄く低濃度になるため、図2に示すような濃度勾配を得ることができる。
【0043】
続いて、図7に示すように基板治具54から蒸着パターン形成用マスク61を取り外し、図8に示すような真空蒸着機のチャンバ71を用いて、基板41の全面に連続的に図4に示すような表層反射防止膜43を成膜する。
【0044】
チャンバ71内には、2組の蒸着源72、73と、これらの蒸着源72、73を加熱する2組の蒸着材料加熱装置が設けられている。この蒸着源72、73の上方には開閉可能なシャッタ74、75が配置され、駆動手段により回転可能な蒸着傘76が設けられ、この蒸着傘76には図7に示すような濃度勾配を有するND膜42が成膜された基板41を有する基板治具54が取り付けられている。
【0045】
またチャンバ71内には、蒸着源72、73による蒸着レートを検知するための膜厚センサ77、78が設けられている。チャンバ71の上部には表層反射防止膜43の膜厚を測定するための光学モニタ79が設けられている。なお本実施例においては、蒸着源72にSiO2、蒸着源73にMgF2を用いている。
【0046】
このような真空蒸着装置を用い、チャンバ71内を真空ポンプにより真空引きをし、所定の真空度に達するとシャッタ74、75を閉じたまま、蒸着源72、73をそれぞれの蒸着材料加熱装置を用いて加熱する。本実施例においては、蒸着材料加熱装置として真空蒸着に一般的に用いられている電子ビームを用いている。
【0047】
それぞれの材料が所定の蒸着レートで安定すると、先ずシャッタ74を開けて、蒸着源72からSiO2を飛翔させる。このとき蒸着源73のMgF2の蒸着レートは非常に小さく抑えられており、また、シャッタ75は閉じているので、MgF2は基板41に到達することはない。
【0048】
SiO2膜43aが所定の膜厚に成膜されると、シャッタ75を開け蒸着源73からMgF2を飛翔させる。このとき、蒸着源72からはSiO2が飛翔しているため、基板41上にはSiO2とMgF2の領域Eが成膜される。
【0049】
また、最初にMgF2の蒸着レートは非常に小さく抑えられているため、SiO2の濃度の高い混合領域から基板41上に成膜されていく。そして、膜厚センサ77、78でそれぞれの蒸着レートをモニタしながらMgF2の蒸着レートを徐々に大きく、SiO2の蒸着レートを徐々に小さくしてゆく。それぞれの蒸着レートの変化量は領域Eが所定の膜厚になるときに、SiO2の蒸着レートが0になるように予め算出しておく。領域Eが所定の膜厚に達すると、更に所定の厚さのMgF2膜43bを成膜する。
【0050】
なお本実施例においては、表層反射防止膜43の総膜厚は光学モニタ79を用いて測定し、λ/4(設計波長550nm)になるように成膜した。ND膜42の形成は単一材料を積層するため、1つの蒸着源52から所定の材料を蒸発させて成膜したが、SiO2とMgF2の成分比率が徐々に変化する表層反射防止膜43の成膜には、蒸着源72、73から同時にSiO2、MgF2を蒸発させる必要がある。
【0051】
また、領域Eの混合比率は上述した蒸着レートの比率により制御し、両材料の間で片方の蒸着レートを相対的に高くすると、その材料の混合比率は高くなる。
【0052】
本実施例においては、このような構成のND膜42及び表層反射防止膜43を真空蒸着法により成膜したが、スパッタ法、イオンプレーティング法等の成膜法により形成してもよい。
【0053】
本実施例におけるND膜42は、図5に示すチャンバ51を用いて成膜したが、図8に示すチャンバ71を用いて成膜することも可能である。なお、この際に蒸着源72にAl23、蒸着源73にTiOxを用いることもできる。
【0054】
このような手段により、表層反射防止膜43を形成し、基板41をチャンバ71から取り出した後に、最終工程で図9に示すように、複数のNDフィルタパターンを個々のNDフィルタ形状に切断する。この際に、透明領域まで含んで切断することにより、透明領域付きグラデーションNDフィルタ40が得られる。なお本実施例において、成膜した表層反射防止膜43を触針式膜厚測定器により膜厚を測定したところ96nmであった。
【0055】
図10は本実施例による表層反射防止膜43と従来の単層反射防止層の反射率を比較したグラフ図である。上述したように、膜強度の強いSiO2単層膜の反射率は比較的高く、膜強度の弱いMgF2単層膜は極めて低い反射率を示している。MgF2膜上にSiO2膜を成膜したものは、それぞれの膜厚により反射率は変化するが、おおよそSiO2単層膜とMgF2単層膜の反射率の間に入る。
【0056】
これらに対して、本実施例による表層反射防止膜43は、MgF2単層膜とほぼ同等の反射率に抑えられており、極めて良好な反射率特性を有している。
【0057】
また本実施例においては、光学フィルタ領域をグラデーションNDフィルタとしたが、図11に示すように基板41上に単一の透過率領域から成る単濃度のND膜81を成膜した後に、表層反射防止膜43を成膜した単濃度NDフィルタ82にすることもできる。更に、図12に示すような複数の透過率領域から成る多濃度のND膜83を有する多濃度NDフィルタ84についても適用可能である。
【0058】
このようにして製作されたNDフィルタ40を、図1に示す光量調節部材32に使用した場合に、ゴースト等による画像劣化の少ない良好な光量絞り装置を実現することができる。
【0059】
なお本実施例では、2枚の絞り羽根39a、39bを使用して、一方の絞り羽根39aにNDフィルタ40を固定したものを示したが、絞り羽根39の枚数は特に制限はない。また、NDフィルタ40は絞り羽根39とは別個に駆動されて撮影光学系に挿入されるようにしてもよい。
【0060】
更に、このようなNDフィルタ40を利用する光量絞り装置は、ビデオカメラ等に使用される所謂アイリスユニットや、デジタルカメラ等に使用されるシャッタユニット等として利用される。
【0061】
なお、材質や層構成、層数、成膜方法等は本実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】撮影光学系の概略図である。
【図2】NDフィルタの断面図である。
【図3】NDフィルタの膜構成図である。
【図4】NDフィルタの表層反射防止膜の濃度分布の説明図である。
【図5】ND膜を成膜する蒸着装置の概略図である。
【図6】基板治具の拡大断面図である。
【図7】表層反射防止膜を成膜するための説明図である。
【図8】表層反射防止膜を成膜する蒸着装置の概略図である。
【図9】基板からNDフィルタを切断する説明図である。
【図10】NDフィルタの反射率のグラフである。
【図11】単濃度NDフィルタの断面図である。
【図12】多濃度NDフィルタの断面図である。
【図13】従来のNDフィルタの膜構成図である。
【図14】従来のNDフィルタの断面図である。
【図15】従来のNDフィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
40 NDフィルタ
41 樹脂基板
42 ND膜
42a Al23
42b TiOx膜
43 表層反射防止膜
43a SiO2
43b MgF2
51、71 チャンバ
52、72、73 蒸着源
53、76 蒸着傘
54 基板治具
55、79 光学モニタ
61 蒸着パターン形成用マスク
74、75 シャッタ
77、78 膜厚センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の上に形成された誘電体層から成る表層反射防止膜を有し、前記誘電体層は複数の誘電体材料の成分濃度比率が連続的に変化する領域を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記表層反射防止膜は少なくともSiO2とMgF2の2種類の誘電体材料から成り、前記樹脂基板の側において前記SiO2の成分濃度比率が最も大きく、前記表層反射防止膜の側にかけて連続的に小さくなる領域を有し、前記表層反射防止膜の最表層側において前記MgF2の成分濃度比率が最も大きく、前記樹脂基板側にかけて連続的に小さくなる領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記樹脂基板の上の少なくとも一部に光減衰膜を有する光学フィルタ領域を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記樹脂基板の上に、前記光減衰膜を有する光学フィルタ領域と、前記光減衰膜を有しない領域とを有し、前記光減衰膜を有する光学フィルタ領域及び前記光減衰膜を有しない領域の表層に前記表層反射防止膜を連続的に形成したことを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光学フィルタ領域はNDフィルタであることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記光学フィルタ領域は単一の透過率領域から成る単濃度NDフィルタ、複数の透過率領域から成る多濃度NDフィルタ又は透過率が連続的に変化するグラデーションNDフィルタの何れかであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1つの請求項に記載の光学素子。
【請求項7】
撮影光学系の開口を調節する光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、前記光量調節部材の駆動量に応じて前記開口を透過する光量を調節する請求項5又は6に記載のNDフィルタを有することを特徴とする光量絞り装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−162852(P2009−162852A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339814(P2007−339814)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】