説明

光学膜の形成方法及び形成装置並びにその光学膜を有する光学物品

【課題】傾斜角が大きい光学部材に対して、均一な光学膜を再現性良く形成する方法及び装置並びにその光学膜を有する光学物品を提供する。
【解決手段】基板1を回転自在な治具20に取り付け、基板1を回転させながら、基板1に光学膜成分を含有する塗布液をノズル40から滴下し、得られた塗膜を乾燥させることにより、基板1上に光学膜を形成する方法であって、基板1を8,000 rpm以上のほぼ一定の速度で回転させながら、基板1に塗布液を滴下した後、治具20の軸ぶれを50μm以下に保持しながら、基板1を上記ほぼ一定の速度で回転させて塗膜を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップレンズ等の傾斜角が大きい光学部材に対して、均一な厚さの光学膜を再現性良く形成する方法及び装置並びにその光学膜を有する光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射防止膜等の光学膜の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理成膜法が使用されてきた。しかし物理成膜法には真空機器を必要とするためコストが高いという欠点がある。そのためゾル−ゲル反応を利用したディッピング法、スピンコート法、スプレーコーティング法等のウェットコーティング法が、レンズやフラットパネルディスプレー等に用いられている。しかしディッピング法を用いると、一般的に膜厚ムラが生じ易く、1μm以下の厚さを有する薄膜を形成するのも困難である。比較的均一な厚さを有する光学膜を形成するには、スピンコート法又はスプレーコーティング法が有利である。
【0003】
例えば特許第2794636号(特許文献1)は、光導波路等の光学素子に有用な高分子超薄膜(膜厚:10〜1,000Å)を製造する方法として、0.1〜20 mg/mLのクロトン酸エステル重合体を含む溶液をガラス基板等に滴下し、1,000〜15,000の回転数でスピンコート法により薄膜化する方法を記載している。
【0004】
特開平6-246220号(特許文献2)は、レンズ表面でのハードコート液の飛散及び泡立ち、レンズ固定部材、ノズル吐出口等へのハードコート液付着等に起因する外観不良が無く、かつ連続加工による装置の汚染が少ないレンズ表面処理方法として、レンズを鉛直方向に対して傾いた軸(例えば鉛直方向に対して90度以上傾斜した軸)を中心に回転させながらハードコート液を塗布する方法を記載している。
【0005】
実用新案登録第3052152号(特許文献3)は、自動車サイドマーカーランプ用の椀状カバーガラスの内面に、着色剤を含有した有機系樹脂液を均一にスプレーコートする装置として、カバーガラスを回転させる受皿と、受皿の下方に配置されたスプレーガンと、スプレーガンの取付け位置及び仰角を調整するための手段と、スプレー噴霧圧力を調整する液圧力タンクと、噴霧時間を制御する手段と、コーティング液の温度を調整する恒温水槽とを具備し、下方に開口するように受皿に載置した椀状カバーガラスを回転させながら、上記有機系樹脂液を、スプレーガンにより下方から椀状カバーガラスの内面に向けて吹き付けるスプレーコーティング装置を記載している。
【0006】
特開2000-140745号(特許文献4)は、下地(例えばプラスチック成形物等の基材)の表面に塗布液(例えばハードコート液)を噴霧し、付着させた後、下地を回転させて(回転速度:500〜3,000回転/分)、塗膜を形成する方法を記載している。
【0007】
しかし特許文献1〜4に記載のウェットコーティング法は物理成膜法に比べて膜厚制御性が劣るので、光情報記録/再生装置用ピックアップレンズのような高い開口数(NA:Numerical Aperture)を有し、傾斜角の大きい基板に光学膜を再現性良く均一に成膜するのが困難である。
【0008】
そこで特開2000-33301号(特許文献5)は、回転する基材(例えばレンズ)の表面に均一な厚さの光学膜を形成する方法として、少なくとも一個の基材サンプルにスプレーコーティングし、得られたコートサンプルの膜厚分布を測定し、得られた膜厚分布が、次式:厚さ∝(cosLQ×cosMR/DkN)(ただしQはノズルから噴射されたコーティング溶液のスプレー角度であり、Rはスプレーのサンプル表面に対する入射角度であり、Dkはノズルからサンプル表面上のK点までの距離である。)と最もフィットするように、上記式中の各パラメータL、M及びNを決定し、次いで(a) スプレーノズルの数、(b) ノズル前面から基板表面までの距離D0、(c) ノズルの基軸と基板面中心軸との角度P、(d) 各ノズルから噴射されるコーティング溶液の噴射角度、及び(e) 各ノズルのコーティング時間からなる群から選ばれた少なくとも一種のパラメータを調節する方法を開示している。
【0009】
しかし光情報記録/再生装置用ピックアップレンズは、直径が通常5mm程度と非常に小さいので、回転するピックアップレンズにスプレーコーティングする際の、ノズルから噴射されたコーティング溶液のスプレー角度や、スプレーのサンプル表面に対する入射角度や、ノズルからサンプルまでの距離等の影響が小さい。それにも関わらず、スプレーコーティングにより、ピックアップレンズに均一な厚さの膜を再現性良く形成するのは困難である。
【0010】
【特許文献1】特許第2794636号公報
【特許文献2】特開平6-246220号公報
【特許文献3】実用新案登録第3052152号公報
【特許文献4】特開2000-140745号公報
【特許文献5】特開2000-33301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、傾斜角が大きい光学部材に対して、均一な厚さの光学膜を再現性良く形成する方法及び装置並びにその光学膜を有する光学物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、回転自在な治具に基板を取り付け、光学膜成分を含有する塗布液を回転する基板に滴下した後、治具の軸ぶれを50μm以下に保持しながら、基板を8,000 rpm以上のほぼ一定の速度で回転させると、均一な厚さの光学膜を再現性良く形成することができることを見出し、本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明の光学膜の形成方法は、基板を回転自在な治具に取り付け、前記基板を回転させながら、前記基板に光学膜成分を含有する塗布液をノズルから滴下し、得られた塗膜を乾燥させることにより、前記基板上に光学膜を形成するものであって、前記基板を8,000 rpm以上のほぼ一定の速度で回転させながら、前記基板に前記塗布液を滴下した後、前記治具の軸ぶれを50μm以下に保持しながら、前記基板を前記ほぼ一定の速度で回転させて前記塗膜を形成することを特徴とする。
【0014】
かかる方法において、一層均一な厚さの光学膜を形成するために、前記塗布液を滴下した基板を1〜300秒間回転させるのが好ましい。前記基板に前記塗布液を滴下した後、前記治具の回転速度精度を±0.05%以下に保持しながら、前記基板を前記ほぼ一定の速度で回転させて前記塗膜を形成するのが好ましい。
【0015】
前記治具の回転軸をほぼ鉛直とするのが好ましい。ノズル吐出角が前記基板に対してほぼ垂直となり、かつ前記塗布液が前記基板の中心部に対してほぼ垂直に滴下されるように、前記ノズルを前記基板の上方に配置するのが好ましい。
【0016】
前記塗布液の粘度を20 cP以下とするのが好ましい。前記塗布液中の光学膜成分の割合を固形分基準で20質量%以下とするのが好ましい。
【0017】
前記基板への前記塗布液の滴下、及び前記塗布液を滴下した基板を回転させることによる前記塗膜の形成を複数回繰り返すのが好ましい。
【0018】
本発明の光学物品は上記方法により形成された光学膜を有する。
【0019】
本発明の光学膜用の形成装置は、基板を保持する回転治具と、前記治具を回転駆動させるモータと、光学膜成分を含有する塗布液を前記基板に滴下するノズルとを少なくとも有し、前記モータがディスクの駆動用又は検査用のスピンドルモータであり、前記治具を8,000 rpm以上で回転させた時に、前記治具の軸ぶれが50μm以下であることを特徴とする。
【0020】
かかる装置の好ましい例では、前記基板は、曲面を有する光学有効部と、その外周に設けられたつば部とを有する光情報記録/再生装置のピックアップ用対物レンズであり、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、前記レンズを支持する円柱状の台座と、これに装着して前記レンズを把持する円筒状のカバーとからなり、前記円筒状カバーが筒部と、その上端部から内側に向かって突出した複数の板状のタブ状押圧部とを有し、前記タブ状押圧部により前記レンズのつば部を把持することにより、前記レンズを前記円柱状台座に取り付けることができ、露出した前記レンズの中心部に前記塗布液を滴下する。
【0021】
前記円筒状カバーのタブ状押圧部が内側下方に傾斜していてもよい。前記円筒状カバーのタブ状押圧部の内縁部下部に爪が突設されていてもよい。前記円筒状カバーのタブ状押圧部の先端が、前記レンズのつば部内に入り込んだ位置は、前記つば部外周から前記つば部の幅の20〜80%の範囲内であるのが好ましい。前記治具は、前記円柱状台座と、前記円筒状カバーと、これらの間に設けられた平板状の環とからなってもよく、これにより、前記タブ状押圧部により前記平板状環を介して前記レンズのつば部を全周に亘って面状に押圧することができる。
【0022】
上記装置の別の好ましい例では、前記基板は前記ピックアップ用対物レンズであり、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、周端部に上方に突出するフランジ部が設けられ、前記フランジ部を貫通する複数のねじ式締付具を有する円柱状の台座からなる。この治具では、その底部に前記レンズを載置し、前記レンズのつば部の側面を、前記ねじ式締付具により押圧することにより、前記レンズを取り付けることができる。
【0023】
上記装置のさらに別の好ましい例では、前記基板は前記ピックアップ用対物レンズであり、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、周端部に上方に突出するフランジ部が設けられ、前記フランジ部の内側面にねじ部を有する円柱状の台座からなる。この治具では、前記つば部の側面にねじ部を設けたレンズを螺入して、前記レンズを取り付けることができる。
【0024】
上記装置のさらに別の好ましい例では、前記治具が同じ面上に複数設けられており、それらは、前記モータにより、歯車伝動機構又はベルトを介して駆動される。
【0025】
上記光学膜の形成方法及び装置は、光情報記録/再生装置のピックアップ用対物レンズに対して、均一な厚さの光学膜を再現性良く形成するのに好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ピックアップ用対物レンズ等の傾斜角が大きい光学部材に対して、均一な厚さの光学膜を再現性良く、低廉に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[1] 基板
光学膜を形成する基板は特に制限されない。例えば曲面を有するレンズ等が挙げられる。本発明の光学膜の形成方法及び形成装置は、特に傾斜角が大きく、比較的小さいサイズのレンズに均一な厚さの光学膜を形成するのに好適である。そのようなレンズとして、例えば光情報記録/再生装置のピックアップ用対物レンズが挙げられる。図1はピックアップ用対物レンズの一例を示す。ここで「傾斜角」とは、図1に示すように、レンズ中心の接線に対する基板表面の傾斜角度を表し、レンズ中心において0°となり、中心から離れるにつれて大きくなる。
【0028】
ピックアップ用対物レンズ1の素材としては、ガラス又はプラスチックが好ましい。ガラスの具体例としては、BK7,F2,SF1等が挙げられる。プラスチックの具体例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0029】
[2] 光学膜の形成装置
以下基板1がピックアップ用対物レンズ(以下特段の断りがない限り、単に「レンズ」とよぶ)である場合を例にとり、本発明の光学膜形成装置について詳細に説明する。図2は、本発明の光学膜形成装置の一例を示す。この装置は、(a) レンズ1を保持する回転治具20を有し、モータ21を内蔵するケース22を有する回転治具ユニット2と、(b) 回転治具ユニット2を支持する昇降装置3と、(c) レンズ1の上方に配置されたノズル40、塗布液タンク41、及びノズル40に塗布液を送給するポンプ42を有する塗布装置4と、(d) ノズル40を二次元移動させる位置制御装置5と、(e) 回転治具ユニット2、昇降装置3、ノズル40及び位置制御装置5を収容する筐体6とを具備する。
【0030】
(1) 回転治具ユニット
図3(a)及び(b)に示すように、回転治具ユニット2は、モータ21を内蔵し、モータ21の支軸210の先端部に歯車23が設けられており、歯車23に係合する歯車24が、回転治具20の支軸25の下端部に設けられている。回転治具20の支軸25は、ケース22の軸受け部220により回転自在に軸支されている。軸受け部220としてはベアリングが好ましい。歯車23及び24からなる伝動機構を介して、治具20はモータ21により回転駆動される。ただしモータ21の回転を治具20に伝動する機構は、歯車を介した伝動機構に限定されず、ベルトを介した伝動機構であってもよい。図示の例では、モータ21により4個の治具20を回転させるようになっているが、モータ21により回転させる治具20の数は必要に応じて適宜設定できる。
【0031】
本発明の装置は、モータ21により回転治具20を8,000 rpm以上で回転させた時に、回転治具20の軸ぶれが50μm以下である必要がある。この軸ぶれが50μm超であると、得られる光学膜の厚さが不均一である。この軸ぶれは40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。ここで回転治具20の「軸ぶれ」は、図4に示すように、レンズ1を保持した治具20を回転させ、定常状態で回転する治具20の側面に非接触式レーザー変位測定器7を配置し、変位測定を3回行い、得られた測定値のうちの最大値として求めた(以下同じ)。
【0032】
本発明の装置は、モータ21により回転治具20を8,000 rpm以上で回転させた時に、回転治具20の回転速度精度が±0.05%以下が好ましい。この回転速度精度を±0.05%超とすると、得られる光学膜の厚さが不均一となる恐れがある。この回転速度精度は±0.02%以下がより好ましい。ここで回転治具20の回転速度精度は、モータ21に直結したエンコーダの出力信号をモニタリングすることにより求めた(以下同じ)。
【0033】
回転治具ユニット2を構成する部品[回転治具(円柱状台座200及び円筒状カバー201)20、歯車23及び24、支軸25、ケース22の軸受け部(例えばベアリング)220]の形状精度、及び回転治具ユニット2の組み立て精度は、モータ21により回転治具20を8,000 rpm以上で回転させた時に、回転治具20の軸ぶれが50μm以下となり、回転速度精度が±0.05%以下となるようにする。
【0034】
モータ21は、回転治具20を8,000 rpm以上で回転させた時に、回転治具20の軸ぶれを50μm以下に保持でき、かつ回転治具20の回転速度精度を±0.05%以下に保持できるものでなければならない。モータ21の具体例として、ディスク(例えばハードディスク、CD、DVD等)の駆動用又は検査用のスピンドルモータが挙げられる。回転治具20を回転させる手段として従来のスピンコータを用いると、回転治具20を8,000 rpm以上で回転させた時に、回転治具20の軸ぶれを50μm以下に保持できず、回転治具20の回転速度精度も±0.05%以下に保持できない。
【0035】
均一な厚さの光学膜を形成するために、回転治具20は、回転軸がほぼ鉛直となるようにケース22の軸受け部220により軸支されているのが好ましい。「ほぼ鉛直」とは、完全に鉛直である場合に限らず、本発明の効果を損なわない範囲で鉛直から僅かにずれている場合も含むことを意味する。具体的には、図5に示すように、回転治具20の回転軸は、鉛直方向Vに対する角度θが3度以内の角度範囲内で軸支されているのが好ましい。
【0036】
回転治具20は、8,000 rpm以上の高速回転中にレンズ1がぶれないように、レンズ1を堅固に保持できなければならない。図6(a)〜(c)に示すように、回転治具20は、円柱状の台座200と、これに装着してレンズ1を把持する円筒状のカバー201とからなる。円柱状台座200は、レンズ1の底部を支持する円状の凹部200aを上面に有し、側面にねじ部200bを有する。凹部200aは、これにレンズ1を収容した時に、治具の中心点Oとレンズの中心点が一致するように設けられている。台座200は支軸25と一体成形されていてもよいし、支軸25に対して着脱可能であってもよい。円筒状カバー201は、筒部201aと、筒部201aの上端部から内側に向かって突出した3個の板状のタブ状押圧部(図6(a)参照)201bと、レンズ挿入孔201cと、タブ状押圧部201bの各間に形成された逃孔201dとを有し、台座200のねじ部200bに螺着可能なねじ部201eを筒部201aの内側面に有する。
【0037】
通常ピックアップ用対物レンズ1は光学有効部の外周につば部10を有する。タブ状押圧部201bがレンズ1のつば部10の上面にほぼ平行であるので、タブ状押圧部201bによりレンズ1のつば部10上面を面状に押圧することができる。タブ状押圧部201bの数は少なくとも3個が好ましいが、必要に応じて2個であってもよいし、4個以上であってもよい。円筒状カバー201が逃孔201dを有するので、8,000 rpm以上の高速回転時に遠心力でレンズ1のつば部10上面近傍に偏在する塗布液13を飛散させることができる。そのため均一な厚さの光学膜を形成することができる。
【0038】
円筒状カバー201のタブ状押圧部201bの先端が、レンズ1のつば部10内に入り込んだ位置は、つば部10外周からつば部10の幅D1の20〜80%の範囲内が好ましく、30〜60%の範囲内がより好ましい(以下同じ)。この位置をつば部10外周からつば部10の幅D1の20%未満とすると、レンズ1を堅固に把持できなくなる。一方80%以上とすると、つば部10上面近傍において光学膜を均一に形成するのが困難となる。つば部10の幅D1は通常0.3〜0.8 mmであるので、図6(c)に示す円筒状カバー201のタブ状押圧部201bの各々の縁部を結んで形成される仮想円の直径D4の寸法公差は±10μm〜±50μmの範囲内とする(以下同じ)。円筒状カバー201の外径D3は特に制限されないが、レンズ1の外径D2の1.5〜4倍が好ましい(以下同じ)。タブ状押圧部201bの厚さt1は、レンズ1の高さhを100%として5〜30%が好ましい(以下同じ)。
【0039】
円柱状台座200及び円筒状カバー201の材質としては、例えば各種金属(鋼鉄、鋳鉄、アルミニウム等)、各種プラスチック、ゴム等が挙げられる。
【0040】
図7(a)及び(b)は回転治具の別の例を示す。この例では、円柱状台座200と円筒状カバー201の間に、平板状の環202を有する以外図6に示す回転治具と同じである。この回転治具20は、タブ状押圧部201bにより平板状の環202を介してレンズ1のつば部10を把持することにより、レンズ1のつば部10を全周に亘って面状に押圧することができる。平板状の環202の内径D5は、タブ状押圧部201bの各々の縁部を結んで形成される仮想円の直径D4とほぼ同じであるのが好ましい。平板状の環202の外径D6は、レンズ1の外径D2より大きいのが好ましい。平板状の環202の厚さt2は、レンズ1の高さhを100%として5〜30%が好ましい。この厚さt2が30%超であると、高速回転時に遠心力でレンズ1のつば部10上面近傍に偏在する塗布液13を飛散させることができない。
【0041】
図8は回転治具のさらに別の例を示す。この例では、円筒状カバー201のタブ状押圧部201bが筒部201aの上端部から内側下方に傾斜している以外図6に示す回転治具と同じである。この回転治具20は、タブ状押圧部201bの内縁部の角部により、レンズ1のつば部10上面を線状に押圧することができる。
【0042】
図9は回転治具のさらに別の例を示す。この例では、円筒状カバー201のタブ状押圧部201bの先端近傍部のみが下方に傾斜している以外図6に示す回転治具と同じである。この回転治具20でもタブ状押圧部201bの内縁部の角部により、レンズ1のつば部10上面を線状に押圧することができる。図9に示すように、レンズ1のつば部10上面を、外周から内側下方に傾斜した面としてもよい。つば部10上面の傾斜角を適宜選択すると、タブ状押圧部201bの内縁部の角部により、レンズ1のつば部10を線状に押圧したり、面状に押圧したりできる。
【0043】
図10(a)〜(c)は回転治具のさらに別の例を示す。この例では、円筒状カバー201のタブ状押圧部201bの内縁部下部に、爪201b'が突設されている以外図6に示す回転治具と同じである。この回転治具20は、タブ状押圧部201bの爪201b'により、レンズ1のつば部10上面を線状に押圧することができる。必要に応じて、図11に示すように、レンズ1のつば部10上面に、爪201b'と係合する凹部11を設けてもよい。
【0044】
図12(a)及び(b)は回転治具のさらに別の例を示す。この例では、円筒状カバー201のタブ状押圧部201bの内縁部下部に、先端に鋭い角部を有する爪201b''が突設されている以外図6に示す回転治具と同じである。この回転治具20は、タブ状押圧部201bの爪201b''により、レンズ1のつば部10を点状に押圧することができる。必要に応じて、レンズ1のつば部10上面に、爪201b''と係合する凹部を設けてもよい。この凹部は爪201b''の形状にフィットする形状を有するのが好ましい。
【0045】
図13(a)及び(b)は回転治具のさらに別の例を示す。この回転治具20'は、周端部に上方に突出するフランジ部200cを有し、フランジ部200cを貫通するねじ式締付具200dを有する台座からなる。この回転治具20'は、ねじ式締付具200dにより、レンズ1のつば部10の側面を押圧することができる。限定的ではないが、図13(b)に示すように、ねじ式締付具200dの先端に爪200d'を突設するとともに、レンズ1のつば部10側面に、爪200d'と係合する凹部11'を設けるのが好ましい。ねじ式締付具200dは少なくとも3個設けるのが好ましい。
【0046】
図14は回転治具のさらに別の例を示す。この回転治具20''は、周端部に上方に突出するフランジ部200c'を有し、フランジ部200c'の内側面にねじ部200eを有する台座からなる。この回転治具20''に対しては、つば部10側面にねじ部12を設けたレンズ1を螺入して、レンズ1を固定する。
【0047】
(2) 塗布装置
図15は塗布装置4を示す。塗布装置4は、ノズル40、塗布液タンク41、及びノズル40に塗布液13を送給するポンプ42を有する。ポンプ42で塗布液13に圧力を加えることにより、ノズル40よりレンズ1上に所定量の塗布液13を滴下できる。ノズル40から吐出させる液滴の量及び流速は、予め記憶させたプログラムに従って信号処理を行うコントローラ43でポンプ42を制御することにより調節する。ポンプ42としては、例えばプランジャーポンプが挙げられる。必要に応じて、塗布液タンク41に正圧供給手段を接続し、正圧ガス(例えば空気又は不活性ガス)により加圧してもよい。
【0048】
ノズル40の先端への塗布液13の付着を防止し、安定した滴下量を得るために、塗布装置4として、ノズル40の先端部が、塗布液13吐出用の内管と圧縮気体吹出用の外管とからなる二重管構造をなしており、内管から塗布液13を吐出した際に、外管から圧縮気体を吹出可能である装置を用いてもよい。その装置は、具体的には、特開2005-292478号に記載されている。
【0049】
(3) 位置制御装置
位置制御装置5(図2参照)により、ノズル40をレンズ1に対して一定の距離を保ちつつ水平方向に二次元的に走査させることができる。位置制御装置5はノズル40を2次元走査できるものであれば特に制限されない。位置制御装置5の直動機構としては、例えば直動アクチュエーターやリニアモータ等を用いた機構、ラックと歯車からなる機構等が挙げられる。位置制御装置5は、例えば予め記憶させたプログラムに従って信号処理を行う電子制御装置により制御する。昇降装置3を省略して、ノズル40を三次元移動させることが可能な位置制御装置(例えばXYZステージ)やロボットアーム等を用いてもよい。
【0050】
(4) 筐体
筐体6の上面には給気口60が設けられており、背面には排気管61が設けられているので、滴下した塗布液13が高速回転中のレンズ1に当たった時に液滴の一部が弾かれてできるミスト等が、レンズ1以外の部分に付着するのを抑制することができる。
【0051】
[3] 光学膜形成方法
以下上記装置を用いて、ピックアップ用対物レンズに光学膜を形成する方法を詳細に説明する。
【0052】
(1) 塗布液の調製
光学膜成分及び溶媒を混合し、塗布液13を調製する。光学膜成分は、金属アルコキシド、紫外線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂、及び無機微粒子−バインダ複合物のいずれかが好ましい。バインダとしては、紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましい。
【0053】
溶媒としては光学膜成分が可溶な揮発性溶媒が好ましく、具体的には、アルコール、グリコール、ケトン、エステル、フッ素系溶媒(例えばパーフルオロエーテル)等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて用いることができる。光学膜成分が金属アルコキシドの場合、塗布液に触媒を添加する。
【0054】
塗布液13の粘度は20 cP以下が好ましい。塗布液13の粘度が20 cPを越えると、得られる光学膜が不均一となるだけでなく、レンズ1から剥離しやすくなる。この粘度は5cP以下がより好ましい。光学膜成分の配合量は、塗布液全体を100質量%として、20質量%以下が好ましい。この配合量が20質量%超であると、塗布液13の粘度が高過ぎる。
【0055】
(2) 塗布液の滴下
光学膜を均一な厚さに形成するために、レンズ1の回転速度を8,000 rpm以上で定常状態にした後、塗布液13をレンズ1に滴下する。限定的ではないが、塗布液13は適量を一滴で滴下するのが好ましい。塗布液13の吐出量(一滴の量)は、レンズ1の大きさによるが、通常0.01〜1.0 mLである。塗布液13の吐出量がこの範囲内にあると、均一な光学膜を効率良く形成することができる。
【0056】
図16に示すように、塗布液13がレンズ1の中心部に対して垂直に滴下されるように、ノズル40を配置するのが好ましい。これによりレンズ1に一層均一な膜を形成することができる。限定的ではないが、ノズル40とレンズ1の間の距離(D7)とレンズ1の高さ(h)との関係が0.5h<D7<20hとなるように、ノズル40を配置するのが好ましい。距離D7が20h超であると、塗布液13の多くがレンズ1で弾かれるため、塗布効率が低い。距離D7が0.5h未満であると、塗布液13の付着が不均一である。ピックアップレンズの場合、ノズル40とレンズ1の上面との距離D7は3〜100 mmが好ましい。
【0057】
(3) 走査
塗布液13がレンズ1の中心部に対して垂直に滴下されるように、ノズル40は滴下する時に定位置(レンズ1の中心部上方)で停止させるのが好ましい。回転治具ユニット2上の全てのレンズ1に対して塗布液13を滴下するために、各レンズ1に滴下する毎に、ノズル40を回転治具ユニット2に対して二次元的に移動させ、回転治具ユニット2上に載置した複数のレンズ1上に塗布液13を滴下する。ノズル40の走査領域は、レンズ1の載置領域の全域をカバーして、レンズ1の載置領域より広いのが好ましい。回転治具ユニット2上のレンズ1の載置領域内で、塗布液13を滴下する毎に、ノズル40を回転治具ユニット2に対し一定の距離を保ちつつ水平方向に相対的に二次元移動させると、効率的に光学膜を形成できる。ノズル40の走査速度は100〜1,000 mm/秒が好ましい。
【0058】
図17はノズル40の走査方法の一例を概略的に示す。ノズル40は、走査線400に示すように、ステージ1上のレンズ1の載置領域を走査し、正方形状に一周するのが好ましい。ノズル40の走査線400は各レンズ1の中心を通るのが好ましい。
【0059】
回転治具ユニット2上のレンズ1の載置領域を走査し、正方形状に一周する工程を1セットとすると、一層を形成するのに1〜3セット走査するのが好ましい。セット数は所望の光学膜の厚さに応じて適宜設定する。
【0060】
(4) レンズの回転速度及び回転保持時間
レンズ1に塗布液13を一層分滴下した後、回転速度を8,000 rpm以上の定常状態に保持したまま所定時間回転させる。上記のように本発明の装置は、レンズ1を取り付けた治具20(20',20'')の回転速度を8,000 rpm以上にしても、治具20(20',20'')の軸ぶれが50μm以下に保持されるので、得られる光学膜の厚さが均一となる。この回転速度を8,000 rpm未満とすると、得られる光学膜の厚さが不均一となる。この回転速度は9,000 rpm以上にするのが好ましく、9,500 rpm以上にするのがより好ましい。この回転速度の上限値は技術的に可能な限り特に制限されないが、15,000 rpmとするのが好ましい。
【0061】
軸ぶれを50μm以下に保持しながら、レンズ1を保持した治具20(20',20'')の回転速度を8,000 rpm以上にすると、膜厚が均一になる理由は定かではないが、治具20(20',20'')の回転速度を8,000 rpm未満とするか、軸ぶれを50μm超とすると、図18(a)及び(b)に示すように、レンズ1のつば部10上面近傍に塗布液13が偏在し、塗布液13に周方向のバラツキが生じるが、回転速度を8,000 rpm以上にしてレンズ1の外周に大きな遠心加速度を与えると、図18(c)に示すように、レンズ1のつば部10上面近傍に偏在する塗布液13を飛散させることができ、8,000 rpm以上の回転速度で軸ぶれを50μm以下に保持することにより、図18(d)に示すように、塗布液13の周方向のバラツキが抑制されるといったことが推測される。
【0062】
レンズ1に塗布液13を一層分滴下した後、回転速度を8,000 rpm以上の定常状態に保持したまま1〜300秒間回転させるのが好ましい。この回転保持時間が1秒未満だと、得られる光学膜の厚さが不均一である。一方300秒超としても膜厚均一化の効果が飽和する。この回転保持時間は1〜100秒とするのがより好ましい。
【0063】
(5) 乾燥及び硬化処理
回転処理により膜厚を均一化した塗膜を乾燥させる。塗布液13中の溶媒は揮発性であるので、自然乾燥することができるが、加熱することにより乾燥を促進しても良い。加熱温度はレンズ1のガラス転移温度以下の範囲とする。塗布液が樹脂を含む場合、乾燥した膜を硬化処理する。硬化処理方法は、樹脂成分に応じて適宜選択する。例えば樹脂成分が紫外線硬化性の場合、UV照射装置を用いてUV照射する。樹脂成分が熱硬化性の場合、加熱処理する。加熱温度はレンズのガラス転移温度以下の範囲とする。乾燥及び硬化処理を連続的に行っても良い。
【0064】
(6) 多層膜の形成
上記工程(1)〜(5)を繰り返すことにより、レンズ1の表面に多層の光学膜を形成することができる。この場合、各層ごとに光学膜成分を変えても良い。
【0065】
[4] 光学物品
以上の形成方法により、ピックアップ用対物レンズ1に、厚さ1μm以下の光学膜を均一な厚さで形成することができる。例えば100 nm以下の光学膜をピックアップレンズに形成した場合、傾斜角度が0〜65度の部分における厚さの最小値と最大値の差は20 nm以内である。
【0066】
基板上に単層又は多層の光学膜を形成した光学物品は、基板及び光学膜の種類によって様々な特性を有する。光学膜の典型的な例としては反射防止膜が挙げられる。反射防止膜は、その性質上基板に均一な厚さで形成されている必要があるので、本発明の方法及び装置は反射防止膜の形成に非常に好適である。本発明の方法を、曲面を有するレンズ、特にピックアップレンズに使用すると、優れた均一性を有する光学膜を有する光学物品が得られる。
【0067】
以上の通り図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず、本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0068】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
(1) 有機修飾シリカ含有ゾルの調製
テトラメトキシシラン三量体3.54 g、メタノール30.33 g、及び0.05規定のアンモニア1.92 gを混合し、室温で72時間攪拌して、湿潤状態のシリカゲルを生成した。デカンテーションによりメタノールを除去し、湿潤状態のシリカゲルにエタノールを加えて振とうし、分散媒をエタノールに置換し、デカンテーションによりエタノールを除去した。次いでメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて振とうし、分散媒をMIBKに置換し、デカンテーションによりMIBKを除去した。
【0070】
ゲル状のシリカにトリエチルクロロシランのMIBK溶液(濃度5体積%)を加え、30時間攪拌して、酸化ケイ素末端を有機修飾した。得られた有機修飾シリカゲルをMIBKにより洗浄した後、MIBKを加えて1質量%にし、超音波処理(20 kHz、500 W、120分間)することにより、粘度が0.65 cPの有機修飾シリカ含有ゾルを得た。
【0071】
(2) コート
上記(1)で得られた有機修飾シリカ含有ゾルを、ピックアップレンズ(最大入射角65°、直径D24mm、有効径(EW)3mm、高さh3mm)上に、図2及び3に示す装置[モータ:株式会社千葉精密製ディスク検査用スピンドルモータ(回転数精度±0.005%以下)、治具:図6に示すタイプ]を用いて表1に示す条件でコートした。回転速度が10,200 rpmで定常状態になった時点で、各レンズにノズルから塗布液を0.02 mL滴下し、その後30秒間回転を維持した。ノズルは滴下する時に定位置(各レンズの中心部上方)で停止させ、滴下する毎に、図17に示す正方形状の走査線を辿るようにノズルを走査した。同回転速度での軸ぶれを、非接触式レーザー変位測定器(株式会社キーエンス製、測定部LC-2430、コントローラLC-2400)により求めたところ18μmであった。同回転速度での速度精度を、モータに直結したエンコーダの出力信号をモニタリングすることにより求めたところ±0.01%以下であった。この一連の操作(滴下及び回転処理)を3回繰り返し、室温で乾燥し、有機修飾シリカエアロゲルからなる光学膜を形成した。
【0072】
【表1】

【0073】
得られた10個の光学膜付きレンズについて、表面の0〜65度の範囲の傾斜角α(図19参照)における光学膜の厚さ(物理膜厚)を測定し(光学式膜厚計使用、0度〜60度の範囲では10度刻みで測定)、各傾斜角αにおいて平均値を求めた。平均膜厚及び標準偏差を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2から、傾斜角αが0〜65度の部分における平均膜厚の最小値と最大値の差は9μmであり、厚さが非常に均一であった。
【0076】
比較例1
軸ぶれが大きいモータを具備し、10,200 rpmの回転速度での軸ぶれが120μmの装置を用いた以外実施例1と同様にして、光学膜付きレンズを作製した。得られた10個の光学膜付きレンズについて、上記と同様にして0〜65度の範囲の各傾斜角αにおける平均膜厚を求めた。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3から、傾斜角αが0〜65度の部分における平均膜厚の最小値と最大値の差は84μmであり、実施例1に比べて膜厚が不均一であった。
【0079】
比較例2
回転速度を2,000 rpmとした以外実施例1と同様にして、光学膜付きレンズを作製した。得られた10個の光学膜付きレンズについて、上記と同様にして0〜65度の範囲の各傾斜角αにおける平均膜厚を求めた。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
表4から、傾斜角αが0〜65度の部分における平均膜厚の最小値と最大値の差は242μmであり、実施例1に比べて膜厚が不均一であった。平均膜厚は傾斜角αが50°の部分が最大であり、傾斜角αが50°の部分における平均膜厚は、傾斜角αが0°の部分における平均膜厚の4.3倍であった。また傾斜角αが50°の部分から65°の部分にかけて平均膜厚が急激に減少しており、明らかに実施例1に比べて膜厚が不均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の光学膜形成方法に用いるレンズの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の光学膜形成装置の一例を示す一部切欠斜視図である。
【図3(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具ユニットを示す縦断面図である。
【図3(b)】図2の光学膜形成装置の回転治具ユニットを示す横断面図である。
【図4】軸ぶれの測定方法を示す断面図である。
【図5】治具の回転軸の鉛直方向に対する角度を示す断面図である。
【図6(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具を示す平面図である。
【図6(b)】図6(a)の回転治具のA-A断面図である。
【図6(c)】図6(a)の回転治具の円筒状カバーを示す平面図である。
【図7(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具の別の例を示す平面図である。
【図7(b)】図7(a)の回転治具のB-B断面図である。
【図8】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す断面図である。
【図9】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す断面図である。
【図10(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す断面図である。
【図10(b)】図10(a)の回転治具の円筒状カバーを示す底面図である。
【図10(c)】図10(b)の円筒状カバーの部分斜視図である。
【図11】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す断面図である。
【図12(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具の円筒状カバーのさらに別の例を示す底面図である。
【図12(b)】図12(a)の円筒状カバーの部分斜視図である。
【図13(a)】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す平面図である。
【図13(b)】図13(a)の回転治具の断面図である。
【図14】図2の光学膜形成装置の回転治具のさらに別の例を示す断面図である。
【図15】図2の光学膜形成装置の塗布装置を示す概略図である。
【図16】図15の部分拡大図である。
【図17】ノズルの走査方法の一例を示す概略図である。
【図18】(a)は塗布液を滴下したレンズの回転中の状態(回転速度8,000 rpm未満又は軸ぶれ50μm超)を示す縦断面図であり、(b)は(a)のD-D断面図であり、(c)は塗布液を滴下したレンズの回転中の状態(回転速度8,000 rpm及び軸ぶれ50μm以下)を示す縦断面図であり、(d)は(c)のE-E断面図である。
【図19】実施例1に用いたピックアップレンズを示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・基板(ピックアップ用対物レンズ)
10・・・つば部
11,11'・・・凹部
12・・・ねじ部
2・・・回転治具ユニット
20,20',20''・・・回転治具
200・・・円柱状台座
200a・・・凹部
200b,200e・・・ねじ部
200c,200c'・・・フランジ部
200d・・・ねじ式締付具
200d'・・・爪
201・・・円筒状カバー
201a・・・筒部
201b・・・タブ状押圧部
201b',201b''・・・爪
201c・・・レンズ挿入孔
201d・・・逃孔
201e・・・ねじ部
202・・・平板状環
21・・・モータ
210・・・支軸
22・・・ケース
220・・・軸受け部
23,24・・・歯車
25・・・支軸
3・・・昇降装置
4・・・塗布装置
40・・・ノズル
400・・・走査線
41・・・タンク
42・・・ポンプ
43・・・コントローラ
5・・・位置制御装置
6・・・筐体
60・・・給気口
61・・・排気管
7・・・非接触式レーザー変位測定器
13・・・塗布液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転自在な治具に取り付け、前記基板を回転させながら、前記基板に光学膜成分を含有する塗布液をノズルから滴下し、得られた塗膜を乾燥させることにより、前記基板上に光学膜を形成する方法であって、前記基板を8,000 rpm以上のほぼ一定の速度で回転させながら、前記基板に前記塗布液を滴下した後、前記治具の軸ぶれを50μm以下に保持しながら、前記基板を前記ほぼ一定の速度で回転させて前記塗膜を形成することを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学膜の形成方法において、前記塗布液を滴下した基板を1〜300秒間回転させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学膜の形成方法において、前記基板に前記塗布液を滴下した後、前記治具の回転速度精度を±0.05%以下に保持しながら、前記基板を前記ほぼ一定の速度で回転させて前記塗膜を形成することを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学膜の形成方法において、前記治具の回転軸をほぼ鉛直とし、ノズル吐出角が前記基板に対してほぼ垂直となり、かつ前記塗布液が前記基板の中心部に対してほぼ垂直に滴下されるように、前記ノズルを前記基板の上方に配置することを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学膜の形成方法において、前記塗布液中の光学膜成分の割合を固形分基準で20質量%以下とし、かつ前記塗布液の粘度を20 cP以下とすることを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学膜の形成方法において、前記基板への前記塗布液の滴下、及び前記塗布液を滴下した基板を回転させることによる前記塗膜の形成を複数回繰り返すことを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学膜の形成方法において、前記基板として、光情報記録/再生装置のピックアップ用対物レンズを用いることを特徴とする光学膜の形成方法。
【請求項8】
基板を保持する回転治具と、前記治具を回転駆動させるモータと、光学膜成分を含有する塗布液を前記基板に滴下するノズルとを少なくとも有する光学膜用の形成装置であって、前記モータはディスクの駆動用又は検査用のスピンドルモータであり、前記治具を8,000 rpm以上で回転させた時に、前記治具の軸ぶれが50μm以下であることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光学膜用形成装置において、前記治具を8,000 rpm以上で回転させた時に、前記治具の回転速度精度が±0.05%以下であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光学膜用形成装置において、前記基板は、曲面を有する光学有効部と、その外周に設けられたつば部とを有する光情報記録/再生装置のピックアップ用対物レンズであることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光学膜用形成装置において、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、前記レンズを支持する円柱状の台座と、これに装着して前記レンズを把持する円筒状のカバーとからなり、前記円筒状カバーが筒部と、その上端部から内側に向かって突出した複数の板状のタブ状押圧部とを有し、前記タブ状押圧部により前記レンズのつば部を把持することにより、前記レンズを前記円柱状台座に取り付けることができ、露出した前記レンズの中心部に前記塗布液を滴下することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光学膜用形成装置において、前記治具は、前記円柱状台座と、前記円筒状カバーと、これらの間に設けられた平板状の環とからなり、前記タブ状押圧部により前記平板状環を介して前記レンズのつば部を把持することにより、前記レンズのつば部を全周に亘って面状に押圧することができることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光学膜用形成装置において、前記円筒状カバーのタブ状押圧部が内側下方に傾斜していることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の光学膜用形成装置において、前記円筒状カバーのタブ状押圧部の内縁部下部に爪が突設されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の光学膜用形成装置において、前記円筒状カバーのタブ状押圧部の先端が、前記レンズのつば部内に入り込んだ位置は、前記つば部外周から前記つば部の幅の20〜80%の範囲内であることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項10に記載の光学膜用形成装置において、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、周端部に上方に突出するフランジ部が設けられ、前記フランジ部を貫通する複数のねじ式締付具を有する円柱状の台座からなり、前記治具の底部に前記レンズを載置し、前記レンズのつば部の側面を、前記ねじ式締付具により押圧することにより、前記レンズを取り付けることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項10に記載の光学膜用形成装置において、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、前記治具は、周端部に上方に突出するフランジ部が設けられ、前記フランジ部の内側面にねじ部を有する円柱状の台座からなり、前記つば部の側面にねじ部を設けたレンズを螺入して、前記レンズを取り付けることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項8〜17のいずれかに記載の光学膜用形成装置において、前記治具の回転軸はほぼ鉛直であり、ノズル吐出角が前記基板に対してほぼ垂直となり、かつ前記塗布液が前記基板の中心部に対してほぼ垂直に滴下されるように、前記ノズルが前記基板の上方に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項8〜18に記載の光学膜用形成装置において、前記治具が複数設けられており、それらは、前記モータにより、歯車伝動機構又はベルトを介して駆動されることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法で形成された光学膜を有する光学物品。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−86923(P2008−86923A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271064(P2006−271064)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】