説明

光学薄膜及び光学薄膜の成膜方法

【課題】透明導電性物質層をイオンビームアシスト真空蒸着法によって成膜する場合、厳密な成膜速度の制御が難しいため、安定して高い導電性を得ることが難しかった。
【解決手段】イオンビーム量を、透明導電性物質層が着色しない範囲で連続的に変化させることで屈折率傾斜膜として、一つの透明導電性物質層の中に、最適な成膜速度とイオンビーム量の関係で成膜された膜厚部分を作ることを特徴とする光学薄膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する薄膜を成膜させた光学薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な基板上に透明な多層膜を設けて、表面反射率制御する技術は、特許文献1及び2に示されるように、広く用いられている。特に、レンズやカバーガラス等、空気に面する界面に設けることで基板の屈折率に因らない光学特性が得られることが特徴である。しかし、一方で空気に接すると空気中を浮遊している埃が付着してしまうため、設計した光学特性から性能が低下してしまうことが問題であった。埃の付着が起こる原因の一つとして、多層膜が若干の静電気を帯びることが挙げられる。透明な多層膜は、誘電体を積層して構成されることが多いことから、摩擦などの刺激によって誘電分極が起こり、表面に静電気を帯びやすい。対策として、表面から静電気を逃がすことによって、埃の付着を減らすことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平5−343716号公報
【特許文献2】特開平9−80205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化インジウムに少量の酸化錫を混合させた物質(Indium Tin Oxide:ITO)に代表される透明導電性物質の薄膜を成膜する手法として、最も広く用いられているのはスパッタ法である。減圧条件で薄膜を成膜する手法として広く用いられている真空蒸着法は、透明導電性物質の成膜方法としてはあまり用いられていない。透明導電性物質を真空蒸着法で成膜する場合は、蒸着源を加熱して蒸発させるときに酸素の解離が起こってしまうため、基板に成膜するためには新たな酸化を補助しなければならない。基板上で何らかの反応を起こすために、同時にイオンビームを照射する手法として、イオンビームアシスト法が用いられる。酸化反応を起こす場合は、酸素イオンビームを照射することが多い。適度な酸化状態を作るためには、透明導電性物質の基板への成膜速度と、酸化反応を起こすための酸素イオンビーム量の関係が重要である。成膜速度が大きすぎて酸化が十分でないときは膜が着色し、成膜速度が小さくて酸化が十分になると、透明だが導電性の低い膜ができる。イオンビームアシスト法による真空蒸着法において、透明導電性物質の蒸着源の蒸発速度をコントロールするには蒸着源の加熱を、酸素イオンビーム量をコントロールするにはイオン源からの加速電流値をコントロールする。しかし、加熱量を制御しても細かい蒸発速度の制御までは難しいため、一定の成膜条件で高い導電性を有する透明導電性物質を安定に成膜することが難しくなっているのである。真空チャンバーにアルゴンや酸素を導入して、真空度を調節して改善を図ったが、成膜バッチによって導電性が変化することは抑えられず、安定して高い導電性を有する膜を成膜し続けることは、極めて困難であった。本発明では以上の課題を解決し、真空蒸着法での細かい条件変化にも対応できる透明導電性物質の成膜法を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
まず、埃の付着を減少させる効果を作ることができるような膜の導電性について調べたところ、ほぼ1×108Ω/□(オーム/スクエア)以下の抵抗値であることを見出した。次に、真空蒸着法で、透明導電性物質の単層で常に高い導電性を有することができるような蒸着法を鋭意検討した。酸素イオンビーム量を制御することは容易であるが、透明導電性物質の蒸発速度を細かく制御することは困難であり、電子ビーム加熱の場合では、電子ビーム条件を一定に保っても、真空度等の要因によって蒸発速度は若干ずれることが多かった。成膜の度に真空度等の条件を一定にするのは時間がかかるため、生産性を落とすことになる。
【0006】
本発明者は、一層の透明導電性物質層の中に、高い導電性を有する膜厚部分を作り出すことができれば、十分な導電性を持つ層を作ることができることを見出した。
【0007】
蒸発速度は同一加熱条件でも変化しやすいので、酸素イオンビーム量を大きく変化させることで、成膜状態に変化をつけたところ、透明で比較的高い導電性を有する透明導電性物質層を作ることができた。一様に最適条件で成膜することができた透明導電性物質層に比べると導電性は低くなるが、成膜回数を重ねても導電性のばらつきは少なくて、必要なレベルを得るには十分であることがわかった。前記目的を達成するために、以下に示す発明をした。
【0008】
第一に示す発明は、透明基板上に形成された、透明導電性物質の薄膜を含む透明な多層膜であって、前記透明導電性物質からなる薄膜の屈折率が、膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化した屈折率傾斜膜を少なくとも1層含み、且つ多層膜の表面抵抗値が、1×108Ω/□以下であることを特徴とする光学薄膜に関するものである。
【0009】
第二に示す発明は、前記透明導電性物質が、酸化錫または酸化錫と該酸化錫の重量比で0.5%から10%の酸化アンチモンを含ませた化合物からなり、且つ第一に示す発明の特徴を有する光学薄膜に関するものである。
【0010】
第三に示す発明は、前記透明導電性物質が、酸化亜鉛または酸化亜鉛と該酸化亜鉛の重量比で1%から45%の酸化錫を含ませた化合物からなり、且つ第一に示す発明の特徴を有する光学薄膜に関するものである。
【0011】
第四に示す発明は、前記透明導電性物質が、酸化インジウムと該酸化インジウムの重量比で2%から10%の酸化錫を含ませた化合物からなり、且つ第一に示す発明の特徴を有する光学薄膜。
【0012】
第一乃至第四の発明によれば、多層膜として表面への埃の付着を減らす効果的な導電性を実現して、且つ光学薄膜として必要な透明度を有する多層膜を作ることに効果がある。
【0013】
第五に示す発明は、透明基板上に、透明導電性物質の薄膜を含む透明な多層膜を成膜する方法であって、前記透明導電性物質を酸素イオンビームアシストしながら真空蒸着法によって成膜するとき、成膜速度を一定に保ちながら酸素イオンビームの量を成膜中に連続的に増大または減少させて、屈折率が膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化させた屈折率傾斜膜を少なくとも1層以上成膜して、前記多層膜の表面抵抗値が1×108Ω/□以下であることを特徴とする光学薄膜の成膜方法に関するものである。
【0014】
第六に示す発明は、前記屈折率傾斜膜を、酸素イオンビームアシストしながら真空蒸着法によって成膜するとき、酸素イオンビームの量を一定に保ちながら前記透明導電性物質の成膜速度を連続的に減少または増大させて成膜して、屈折率が膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化させた屈折率傾斜膜を少なくとも1層以上成膜して、前記多層膜の表面抵抗値が1×108Ω/□以下であることを特徴とする光学薄膜の成膜方法に関するものである。
【0015】
第五、第六の発明によれば、酸素イオンビームアシストしながら真空蒸着法によって、第一乃至第三に示した発明によって得られる多層膜を、満足する表面抵抗値と透明度を安定して成膜する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施例1]
図1−aに酸化錫(SnO2)層を含む多層膜を成膜したガラス基板のモデルを示す。図1−bにガラス基板に成膜された多層膜のモデルを示す。なお、便宜上図1−a、図1−bは誇張されて描かれている。屈折率1.53のガラス基板の上に5層からなるSnO2層を含む多層膜を成膜した。その設計主波長λ0は520nmである。
【0017】
第1層11に、0.09λ0の光学的膜厚を持つSiO2層(屈折率1.46)、
第2層12に、0.15λ0の光学的膜厚を持つZrO2層(屈折率2.02)
第3層13に、0.05λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
第4層14に、0.26λ0の光学的膜厚を持つ屈折率傾斜膜のSnO2層(屈折率は、第3層側から第5層側へ向けて1.98から2.06へと変化する)、
第5層15に、0.27λ0の光学的膜厚を持つSiO2
を順次積層してなる多層膜を成膜した。成膜した多層膜の膜厚は、230nmから240nm程度である。第1層から第5層まで、蒸着源の加熱は電子ビームを照射することによって行い、各層の成膜中の条件は一定にした。第4層のSnO2層成膜には酸素イオンビーム照射を同時に行い、成膜中に酸素イオンビーム量を連続的に増大させた。表1に第4層の成膜条件を示す。
【0018】
【表1】

加速電圧とは、酸素イオンを基板へ向けて引き出すときの電位差のことである。バイアス電流値とは、酸素イオンの持つ電荷を中和するための電荷移動量のことである。
【0019】
7バッチの多層膜サンプルを同一条件で作製して、それらの表面抵抗値を測定した結果、6.0×106Ω/□から5.6×107Ω/□の値を示した。また多層膜の着色は無くて、ガラス基板の外観は透明であった。
【0020】
[実施例2]
図2―aに、酸化亜鉛(ZnO)中に重量比で40%のSnO2を含む層を含む多層膜を成膜したプラスチック基板のモデルを示す。図2−bにプラスチック基板に成膜された多層膜のモデルを示す。なお、便宜上図2−a、図2−bは誇張されて描かれている。屈折率1.60のプラスチック基板の上に、主に金属酸化物微粒子と有機珪素化合物からなる、屈折率1.60のハードコート層20をディッピング方式によって成膜して、加熱することで硬化させた。ハードコート層の上に5層からなるZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層を含む多層膜を成膜した。その設計主波長λ0は515nmである。
【0021】
第1層21に、0.10λ0の光学的膜厚を持つSiO2層(屈折率1.46)、
第2層22に、0.16λ0の光学的膜厚を持つZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層(屈折率2.08)、
第3層23に、0.05λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
第4層24に、0.28λ0の光学的膜厚を持つ屈折率傾斜膜のZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層(屈折率は、第3層側から第5層側へ向けて1.99から2.08へと変化する)
第5層25に、0.28λ0の光学的膜厚を持つSiO2
を順次積層してなる多層膜を成膜した。成膜した多層膜の膜厚は、240nmから255nm程度である。第1層から第5層まで、蒸着源の加熱は電子ビームを照射することによって行い、各層の成膜中の条件は一定にした。第2層と第4層のZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層の成膜には酸素イオンビーム照射を同時に行った。第2層は屈折率傾斜膜とせずに、一定条件で酸素イオンビーム照射を行ったのに対し、第4層は酸素イオンビーム量を連続的に増大させた。表2に第2層と第4層の成膜条件を示す。
【0022】
【表2】

7バッチの多層膜サンプルを同一条件で作製して、それらの表面抵抗値を測定した結果、3.3×107Ω/□から8.8×107Ω/□の値を示した。また、多層膜の着色は無くて、プラスチック基板の外観は透明であった。
【0023】
[実施例3]
図3−aに、酸化インジウム(In23)に重量比で5%のSnO2を含む層を含む多層膜を成膜したプラスチック基板のモデルを示す。図3−bにプラスチック基板に成膜された多層膜のモデルを示す。なお、便宜上図3−a、図3−bは誇張されて描かれている。屈折率1.66のプラスチック基板上に、主に金属酸化物微粒子と有機珪素化合物からなる、屈折率1.67のハードコート層30をスピンコート方式によって成膜して、加熱することで硬化させた。ハードコート層の上に4層からなるIn23に重量比で5%のSnO2を含む層を含む多層膜を成膜した。その設計主波長λ0は510nmである。
【0024】
第1層31に、0.10λ0の光学的膜厚を持つTiO2層(屈折率2.41)、
第2層32に、0.04λ0の光学的膜厚を持つSiO2層(屈折率1.46)、
第3層33に、0.26λ0の光学的膜厚を持つIn23に重量比で5%のSnO2を含む層(屈折率は、第2層側から第4層側へ向けて2.02から2.12へと変化する)、
第4層34に、0.27λ0の光学的膜厚を持つSiO2
を順次積層してなる多層膜を成膜した。成膜した多層膜の膜厚は、200nmから210nm程度である。第1層から第4層まで、蒸着源の加熱は電子ビームを照射することによって行い、第3層を成膜するときのみ電子ビーム量を連続的に減少させて成膜した。第1層と第3層の成膜には、酸素イオンビーム照射を同時に行い、成膜中の条件は一定にした。表3に第2層と第4層の成膜条件を示す。
【0025】
【表3】

7バッチの多層膜サンプルを同一条件で作製して、それらの表面抵抗値を測定した結果、2.0×106Ω/□から3.6×107Ω/□の値を示した。また、多層膜の着色は無くて、ガラス基板の外観は透明であった。
【0026】
[比較例1]
図4−aにZnO層を含む多層膜を成膜したガラス基板のモデルを示す。図4−bにガラス基板に成膜された多層膜のモデルを示す。なお、便宜上図4−a、図4−bは誇張されて描かれている。屈折率1.53のガラス基板の上に5層からなるZnO層を含む多層膜を成膜した。その設計主波長は515nmである。
【0027】
第1層41に、0.08λ0の光学的膜厚を持つSiO2層(屈折率1.46)、
第2層42に、0.15λ0の光学的膜厚を持つIn23に重量比で5%のSnO2を含む層(屈折率2.10)、
第3層43に、0.05λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
第4層44に、0.26λ0の光学的膜厚を持つIn23に重量比で5%のSnO2を含む層、
第5層45に、0.27λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
を順次積層してなる多層膜を成膜した。成膜した多層膜の膜厚は、235nmから245nm程度である。第1層から第5層まで、蒸着源の加熱は電子ビームを照射することによって行った。第2層と第4層のIn23に重量比で5%のSnO2を含む層層成膜には酸素イオンビーム照射を同時に行った。表4に第2層と第4層の成膜条件を示す。
【0028】
【表4】

7バッチの多層膜サンプルを同一条件で作製して、それらの表面抵抗値を測定した結果、8.9×105Ω/□から7.5×1012Ω/□の値を示した。また、多層膜の着色は無くて、ガラス基板の外観は透明であった。
【0029】
[比較例2]
図5−aにSnO2に重量比で3%の酸化アンチモン(Sb23)を含む層を含む多層膜を成膜したガラス基板のモデルを示す。図5−bにガラス基板に成膜された多層膜のモデルを示す。なお、便宜上図5−a、図5−bは誇張されて描かれている。屈折率1.53のガラス基板の上に5層からなるSnO2層を含む多層膜を成膜した。その設計主波長は500nmである。
【0030】
第1層51に、0.08λ0の光学的膜厚を持つSiO2層(屈折率1.46)、
第2層52に、0.08λ0の光学的膜厚を持つSnO2に重量比で3%のSb23を含む層(屈折率1.95)、
第3層53に、0.05λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
第4層54に、0.47λ0の光学的膜厚を持つSnO2に重量比で3%のSb23を含む層、
第5層55に、0.25λ0の光学的膜厚を持つSiO2層、
を順次積層してなる多層膜を成膜した。成膜した多層膜の膜厚は、260nmから270nm程度である。第1層から第5層まで、蒸着源の加熱は電子ビームを照射することによって行った。第2層と第4層のSnO2に重量比で3%のSb23を含む層の成膜には酸素イオンビーム照射を同時に行った。表5に第2層と第4層の成膜条件を示す。
【0031】
【表5】

7バッチの多層膜サンプルを同一条件で作製して、それらの表面抵抗値を測定した結果、3.1×105Ω/□から8.3×107Ω/□の値を示した。ただし、多層膜の着色が起こったサンプルが有り、そのガラス基板の外観は少し茶色がかっていた。
【0032】
実施例と比較例を比較する。
【0033】
実施例1,2は、透明導電性物質層を成膜するときに、蒸着源加熱条件を一定にしながら酸素イオンビーム量を成膜開始から徐々に増やしていくことで屈折率傾斜膜としたのに対し、実施例3は、酸素イオンビーム量を一定にしながら蒸着源加熱条件を徐々に減らしていくことで屈折率傾斜膜とした。一方、比較例1,2は、透明導電性物質層を一定の酸素イオンビーム量と蒸着源加熱条件の下で成膜することで、屈折率が均一になるように成膜した。実施例1乃至3のように透明導電性物質層を屈折率傾斜膜とした場合、多層膜は透明で、且つ表面抵抗値は1桁のばらつきで収まっている。それに対して、比較例1のように、酸素イオンビーム量を多い条件で一定に保った場合は、多層膜は透明であるが、表面抵抗値のばらつきが大きくなってしまった。比較例2のように、酸素イオンビーム量を少ない条件で一定に保った場合は、表面抵抗値は小さくなるが、着色するサンプルが発生した。
【0034】
酸素イオンビーム量が多いと、透明導電性物質の酸化が過剰になりやすく、電荷の移動に必要な分子格子欠陥を消滅させてしまうため、透明ではあるが抵抗が大きい膜を作ってしまう場合がある。逆に、酸素イオンビーム量が少ないと、透明導電性物質の酸化が不足しがちで、金属状態に近くなるため抵抗は小さくなるが、膜が着色する場合がある。比較例1、2とも、実施例の表面抵抗値よりも小さい値を示して、且つ外観も良好であったサンプルがあるのは、真空度や基板の状態と絡んで、生じた最適な条件で成膜できたものである。しかし、制御しきれない要因が変わってしまうと、不良なサンプルも作ってしまうことが問題である。
【0035】
以上から、透明導電性物質層を成膜するときに、酸素イオンビーム量や成膜速度を連続的に変化させる手法は、効果的な導電性を安定して作ることのできる手法であることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に示した、ガラス基板表面に成膜された被膜のモデル。
【図2】実施例2に示した、プラスチック基板表面に成膜された被膜のモデル。
【図3】実施例3に示した、プラスチック基板表面に成膜された被膜のモデル。
【図4】比較例1に示した、ガラス基板表面に成膜された被膜のモデル。
【図5】比較例2に示した、ガラス基板表面に成膜された被膜のモデル。
【符号の説明】
【0037】
11,13,15…SiO2
12…ZrO2
14…屈折率傾斜膜のSnO2
20…ハードコート層
21,23,35…SiO2
22…ZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層
24…屈折率傾斜膜のZnO中に重量比で40%のSnO2を含む層
30…ハードコート層
32,34…SiO2
31…TiO2
33…屈折率傾斜膜のIn23に重量比で5%のSnO2を含む層
41,43,45…SiO2
42,44…In23に重量比で5%のSnO2を含む層
51,53,55…SiO2
52,54…SnO2に重量比で3%のSb23を含む層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された、透明導電性物質の薄膜を含む透明な多層膜であって、前記透明導電性物質からなる薄膜の屈折率が、膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化した屈折率傾斜膜を少なくとも1層含み、且つ多層膜の表面抵抗値が、1×108Ω/□(オーム/スクエア)以下であることを特徴とする光学薄膜。
【請求項2】
前記透明導電性物質が、酸化錫または酸化錫と該酸化錫の重量比で0.5%から10%の酸化アンチモンを含ませた化合物からなることを特徴とする、請求項1記載の光学薄膜。
【請求項3】
前記透明導電性物質が、酸化亜鉛または酸化亜鉛と該酸化亜鉛の重量比で1%から45%の酸化錫を含ませた化合物からなることを特徴とする、請求項1記載の光学薄膜。
【請求項4】
前記透明導電性物質が、酸化インジウムと該酸化インジウムの重量比で2%から10%の酸化錫を含ませた化合物からなることを特徴とする、請求項1記載の光学薄膜。
【請求項5】
透明基板上に、透明導電性物質の薄膜を含む透明な多層膜を成膜する方法であって、前記透明導電性物質を酸素イオンビームアシストしながら真空蒸着法によって成膜するとき、成膜速度を一定に保ちながら酸素イオンビームの量を成膜中に連続的に増大または減少させて前記透明導電性物質を成膜して、屈折率が膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化させた屈折率傾斜膜を少なくとも1層以上成膜して、前記多層膜の表面抵抗値が1×108Ω/□以下であることを特徴とする光学薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記屈折率傾斜膜を、酸素イオンビームアシストしながら真空蒸着法によって成膜するとき、酸素イオンビームの量を一定に保ちながら前記透明導電性物質の成膜速度を連続的に減少または増大させて成膜して、屈折率が膜厚方向に1.90から2.15の範囲内で連続的に変化させた屈折率傾斜膜を少なくとも1層以上成膜して、前記多層膜の表面抵抗値が1×108Ω/□以下であることを特徴とする光学薄膜の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−202626(P2006−202626A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13706(P2005−13706)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】