説明

光学表示体又はタッチセンサー貼り合せ用光硬化型接着組成物及びこれを用いて貼り合わせた光学表示体又はタッチセンサー

【課題】低積算光量で強度発現でき、硬化収縮率や弾性率の上昇を抑えながら、変色、耐湿試験後の強度低下をなくした光硬化型樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせに使用され得る光硬化型接着組成物、及び、これを用いて貼り合わせた光学表示体又はタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等の光学表示パネルは、薄いガラス基板を使用しているために、ガラス基板の保護を目的として、保護パネルが設置される場合や、アプリケーションの拡大に伴い、表示パネルの前面には保護パネルだけではなく、タッチパネルが設置されることが多くなった。
【0003】
通常、保護パネルやタッチパネルは粘着テープを用いて光学表示パネルを固定している筐体の周辺部と枠状に固定されるが、このような方法で固定された構造体は、接着性が不十分であり、また、光学表示パネルと保護パネル、光学表示パネルとタッチパネルの間に空気層が出来るため、表面反射によって表示画面が見えにくくなり視認性が低下する。
【0004】
さらに、光学表示パネルの薄型化が進行するに従って、使用される基板ガラスが薄くなってきており、表示体が落下した際のガラスの割れが懸念されている。
【0005】
上記の表面反射による視認性低下の防止と光学表示体の補強を同時に満たす方法として、上記したような接着性や気泡の問題がある粘着テープを用いる技術に代わる方法として、液状樹脂を用いる技術に注目が集まっている。
【0006】
しかし、保護パネルあるいはタッチパネルとの貼り合わせに使用される光学表示パネルのガラスは、表示装置の薄型、軽量化のニーズから、薄くなってきており、液状樹脂を用いた技術では、液状樹脂が硬化する際の硬化収縮応力によって、ガラスが破損したり、変形したりする場合がある。光学表示パネルが液晶パネルの場合は、硬化収縮応力によって液晶のセルギャップが変動し、表示不良を引き起こすことから、硬化収縮率や弾性率を低下させた樹脂が使用されている(特許文献1)。
【0007】
また、保護パネルがアクリル板やポリカーボネート板等の光学機能材料の場合、ガラスとアクリル等の線膨張の違いや、アクリル板やポリカーボネートなどのプラスチック成型材の成型時の歪みにより、耐熱試験や耐湿試験において成形歪みの緩和や吸湿/乾燥がおこり、寸法変化や反りなどの面精度変化がおきる。寸法変化や面精度変化は、ガラスの破損、LCDの表示不良を引き起こしてしまうため、保護パネルの変形を緩和させるために、樹脂は柔軟かつ十分な伸び率を有している。
【0008】
上記のような問題に対応した従来の液状樹脂は、柔軟性を追い求めた結果、十分な接着強度を得るのに、高積算光量を必要とし、モジュール製造時のタクトが課題となっていた。
【0009】
タクトを上げる一般的な方法としては、(1)多官能のアクリレートモノマーを用いる方法や(2)ケトンと、ジメチルアミノ安息香酸のアルキルエステル、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどのアミン系硬化促進剤を併用する方法(非特許文献1)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2010/027041号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】光応用技術・材料辞典、第104頁、第5行、光応用技術・材料辞典委員会編集、2006年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、(1)多官能のアクリレートモノマーを用いる方法では、硬化物の弾性率、収縮率が高くなるため、硬化収縮応力が大きくなり、ガラスの破損や表示体の表示ムラの発生となりやすいといった問題があり、(2)ケトンとアミン系硬化促進剤を併用する方法では、耐熱試験後の着色、変色、耐湿試験後の強度低下といった問題があることを見出した。
【0013】
したがって、本発明の課題は、低積算光量で強度発現でき、硬化収縮率や弾性率の上昇を抑えながら、変色、耐湿試験後の強度低下をなくした光硬化型接着組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、特定の光硬化型接着組成物において、硬化剤としてヒンダードアミンを使用することにより、上記の課題が達成されることを見出して本発明を完成した。
【0015】
第1の本発明は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物である。
【0016】
第2の本発明は、上記の光硬化型接着組成物で貼り合わせた、光学表示体又はタッチセンサーである。
【0017】
第3の本発明は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の硬化性を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法である。
【0018】
第4の本発明は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の熱による着色を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0019】
第1及び第2の本発明によれば、低積算光量で強度発現でき、硬化収縮率や弾性率の上昇を抑えながら、熱による着色や変色、耐湿試験後の強度低下をなくした光硬化型樹脂組成物及びそれを用いて貼り合わせた光学表示体又はタッチセンサーが提供できる。
【0020】
第3及び第4の本発明によれば、(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の硬化性及び熱による着色が改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光硬化型接着組成物は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物である。
【0022】
本発明の光硬化型接着組成物は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリイソプレンとも呼ばれ、好ましくは1000〜100000、より好ましくは100000〜50000の分子量を有する。市販品として、例えば、クラレ社製の「UC−1」(分子量25000)がある。
【0023】
ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリブタジエンとも呼ばれ、好ましくは500〜100000、より好ましくは1000〜30000の分子量を有する。市販品として、例えば、日本石油社製の「TE2000」(分子量2000)がある。
【0024】
ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリウレタンとも呼ばれ、好ましくは1000〜100000、より好ましくは10000〜50000の分子量を有する。市販品として、例えば、ライトケミカル社製の「UA−1」がある。
【0025】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0026】
本発明の光硬化型接着組成物は、ヒンダードアミンを含有する。ヒンダードアミンとしては、従来公知のものであれば使用できる。
【0027】
ヒンダードアミンとして、例えば、下式の構造で示される化合物が好ましい。
【0028】
【化1】


(式中、R5は水素原子、炭素原子数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基を表し、R6はカーボネート基、又は、1〜4価の有機カルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除いた残基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
【0029】
ヒンダードアミンの市販品としては、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−52)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−57)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、及びトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−62)、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−68LD)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−77Y、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 123)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−82、日立化成社製、商品名FA-711MM)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−87、日立化成社製、商品名FA-712HM)、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名CHIMASSORB 119FL、CHIMASSORB 2020FDL、)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名CHIMASSORB 944FDL)、高分子立体障害型アミン誘導体(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 622LD)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN144)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 765)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 770)などが入手できる。
【0030】
本発明の光硬化型接着組成物は、ヒンダードアミンを、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、最も好ましくは0.1〜3質量部含む。
【0031】
本発明の光硬化型接着組成物は、さらに、(メタ)アクリレートモノマー及び可塑剤からなる群から選択された1以上の成分を含むことができる。本発明の光硬化型接着組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、硬化物に伸びを付与することができる本発明の光硬化型接着組成物は、可塑剤を含むことにより、弾性率を制御することができる。
【0032】
(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボネン(メタ)アクリレートを例示できる。これらの(メタ)アクリレートフェノキシエチル(メタ)アクリレート(PO)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(CH)、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートから選択される。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、1種類又は2種類以上を使用できる。
【0033】
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは150質量部以下、最も好ましくは120質量部以下含まれる。
【0034】
可塑剤として、(メタ)アクリレートオリゴマーと相溶するポリマー、オリゴマー、フタル酸エステル類、ヒマシ油類等が挙げられる。オリゴマー又はポリマーとして、ポリイソプレン系、ポリブタジエン系又はキシレン系のオリゴマー又はポリマーを例示できる。これらの柔軟化成分は、クラレからLIRシリーズ、デグッサ社からポリオイルシリーズとして市販されている。これらの柔軟化成分は1種類または2種類以上を使用できる。
【0035】
可塑剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量以下部含まれる。
【0036】
本発明の光硬化型接着組成物は、さらに、光開始剤を含み得る。光開始剤としては、一般的な開始剤が使用でき、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルホリノプロパンー1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4−ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2,2’ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2’−ビイミダゾール、2,2’ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、o−メチルベンゾイルベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などを例示できる。これらの光開始剤の1種類または2種類以上を使用できる。
【0037】
光開始剤の量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは1〜15質量部である。
【0038】
本発明において、好ましい光開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトンが挙げられ、それぞれを単独でも使用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0039】
本発明の光硬化型接着組成物は、さらに、接着付与剤を含有することができる。接着付与剤として、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル、メチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを例示できる。これらの接着付与剤の1種類または2種類以上を使用できる。接着付与剤の量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0040】
本発明の光硬化型接着組成物は、さらに、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、BHT、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4,−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジブチルヒドロキシトルエンを例示できる。これらの酸化防止剤は1種類または2種類以上で使用できる。酸化防止剤の量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0041】
本発明の光硬化型接着組成物は、接着すべき材料の構造によって接着面に塗布した接着組成物の一部に光が当たらない場合には、光が当たるところは光で硬化させ、光の当たらないところは有機過酸化物を添加して熱で硬化させるような、光硬化と熱硬化の併用タイプの接着組成物にできる。有機過酸化物の例としてケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、パーオキシジカーボネート系などが例示できる。これらの有機化酸化物は、1種類または2種類以上を使用できる。これらの有機化酸化物は1種類または2種類以上を使用でき、その量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。上記の有機過酸化物の硬化促進剤として、ナフテン酸金属錯体、ジメチルアニリン、4級アンモニウム塩、リン酸エステル類を使用できる。
【0042】
本発明の光硬化型接着組成物は、光学表示体又はタッチセンサーにおける接着剤として使用できる。たとえば、光学表示パネルとタッチパネルとの貼り合せ、光学表示パネルと保護パネルとの貼り合せ、タッチパネルと保護パネルとの貼り合せ、光学表示パネルと光学表示パネルとの貼り合せ、光学表示パネルと視差バリアとの貼り合せ用として用いることができる。貼り合わせは、通常の方法によって行うことができる。
【0043】
本発明は、前記の光硬化型接着組成物で貼り合わせた、光学表示体又はタッチセンサーにも関係する。これらの貼り合わせ体は、例えば、テレビ、デジカメ、携帯電話、パソコン、モニター、テレビなどの電子機器に組み込むことができる。
【0044】
本発明は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の硬化性を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法にも関係する。
【0045】
さらに、本発明は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の熱による着色を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法にも関係する。
【実施例】
【0046】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0047】
(実施例1〜7及び比較例1〜4)
表1に示した成分を表1に示した量(質量基準)で配合して実施例1〜7及び比較例1〜4の光硬化型接着組成物を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
UC−1:ポリイソプレンメタクリレートオリゴマー(分子量25000)
UT4462: ポリウレタンアクリレート(分子量2000)
UA−1:ポリウレタンメタクリレートオリゴマー(分子量2400)
TE−2000:ポリブタジエンメタクリレートオリゴマー(分子量2000)
QM657:ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
HOB:2−ヒドロキシブチルメタクリレート
HO:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BZ:ベンジルメタクリレート
IB:イソボルニルメタクリレート
RM1002:イソボルニルメタクリレート
LA:ラウリルアクリレート
ポリオイル110:液状ポリブタジエン
L−LIR:液状ポリイソプレン
BF−1000:エポキシ化ポリブタジエン
ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド
イルガキュア184:1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン
イルガキュア819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド
TZT:トリメチルベンゾフェノンとモノメチルベンゾフェノンの混合物
カレンズPE−01:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)
チヌビン123:セバシン酸ビス[1−(オクチルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]
【0050】
(試験例1)
(1.接着強度の測定)
接着強度測定用の試験片を以下のようにして作成した。試料を接着面積φ5mm、接着厚み0.3mmでガラス/ガラスを十文字に貼り合せし、UV硬化させた。
【0051】
接着強度は、以下のようにして測定した。十文字に貼り合せしたガラスの一方を固定して、もう一方のガラスを引張り試験速度5mm/minにて引張り、十文字に貼り合せしたガラスが剥がれたときの最大値を接着強度した。
【0052】
(2.硬化収縮率、弾性率及び伸び率の測定)
硬化収縮率は、JIS K6833比重カップ法にて測定した。
弾性率及び伸び率は、JIS Z1702 No.3ダンベル試験片(厚さ1mm)を島津製作所製オートグラフを用いて10m/minの速度により測定した。尚、ダンベル試験片は、コンベア付拡散メタルハライドランプを使用し硬化させた。光量は350nm(オーク社製照度計)の波長で測定した。
【0053】
(3.80℃、100時間後の外観の測定)
80℃、100時間後の外観の測定用の試験片を以下のようにして作成した。試料厚0.3mmtを設定し、ガラスとガラスに挟んでUV硬化させた。
【0054】
80℃、100時間後の外観の測定は、試験片を80℃、100時間放置後、外観を目視にて確認した。
【0055】
65℃・95%、100時間後(耐湿試験後)の接着強度の測定を以下の方法で行った。
【0056】
段落0050記載の方法にて作成した試験片を65℃・95%に100時間放置後、段落0051記載の測定方法にて測定を実施した。
【0057】
接着強度、硬化収縮率、弾性率及び伸び率並びに80℃、100時間後の外観の測定結果を表2に示す。表2から、実施例は対応する比較例に比べて、硬化収縮率や弾性率の上昇を抑えながら、より低い光量で同じ接着強度が得られ、耐湿試験後の強度低下が抑えられ、硬化性が改善されていることが分かる。
【0058】
【表2】

【0059】
(実施例8〜16及び比較例5)
表3に示した成分を表3に示した量(質量基準)で配合して実施例8〜16及び比較例5の光硬化型接着組成物を得た。
【0060】
【表3】

【0061】
チヌビン144:2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)
LA−62:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、及びトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
FA−711MM:ペンタメチルピペリジルメタクリレ−ト
FA−711H:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート
【0062】
接着強度、弾性率及び伸び率並びに80℃、100時間後の外観の測定結果を表4に示す。表4から、実施例は、比較例に比べて、熱による着色が極めて少ないことが分かる。
【0063】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、低積算光量で強度発現でき、硬化収縮率や弾性率の上昇を抑えながら、熱による変色、耐湿試験後の強度低下をなくすことができるので、光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上のオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物。
【請求項2】
さらに、(メタ)アクリレートモノマー及び可塑剤からなる群から選ばれた1以上の成分を含む請求項1記載の光硬化型接着組成物。
【請求項3】
光学表示パネルとタッチパネルとの貼り合せ用、光学表示パネルと保護パネルとの貼り合せ用、タッチパネルと保護パネルとの貼り合せ用、光学表示パネルと光学表示パネルとの貼り合せ用、又は光学表示パネルと視差バリアとの貼り合せ用である請求項1又は2記載の光硬化型接着組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光硬化型接着組成物で貼り合わせた、光学表示体又はタッチセンサー。
【請求項5】
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上のオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の硬化性を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法。
【請求項6】
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上のオリゴマーを含有する光硬化型接着組成物の着色を改善するための方法であって、前記光硬化型接着組成物にヒンダードアミンを添加することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−46658(P2012−46658A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190816(P2010−190816)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】