説明

光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物及びその硬化物

【課題】本発明の目的は、光学表示装置の表示パネルと前面板の結合のための接着性能に優れたギャップを形成する硬化物を与え、且つ、300μm以上の厚みで硬化させることができ、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れる信頼性の高い樹脂組成物、及びその硬化物を提供しようとするものである。
【解決手段】分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有し、そのエポキシ当量が200eq/g以上のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示装置のギャップ形成に使用する接着性能に優れた樹脂組成物に関し、更には、耐ヒートサイクル性、耐湿性に優れている光学表示装置の表示パネルと前面板との間のギャップ形成に、特に有用な光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ゲーム機等の携帯端末に液晶ディスプレイ等の表示パネルを使用する場合、外力からの保護を目的として表示装置の上面に透明の前面板を設けている。従来、表示パネルと前面板の間には空気層が存在しているため、前面板と空気の屈折率差により、特に明るい太陽光の下等において視認性が悪くなるといった問題があった。近年、このような問題を解消すべく空気の層を無くするためのいろいろな試みがなされており、表示パネルに直接前面板を接着剤で貼り付ける方法も検討されている。一方、表示パネルと前面板の間にレンチキュラーレンズを挟み3D表示させる方法も検討されており、この際はパネル全周又は対する2辺に接着部を設ける。
【0003】
表示パネルと前面板とを結合させる場合、外的応力や使用環境下において剥離等の不具合が生じないような材料設計を行う必要がある。又、表示パネルの構成部材には耐熱温度があるため接着の際にかけられる温度には制約があり、加えて、加熱硬化時に接着剤の粘度が低下し貼り合わせの位置がずれてしまい易いといった難点もあるため、熱硬化性の接着剤は使用しにくいという問題がある。このような理由により、高温での加熱が必要ではなく、短時間で硬化する紫外線硬化型の接着剤が有用といえる。更に、多種多様な設計の機種がある中、接着部の上面の一部に遮光部が存在しているような場合もあり、硬化接着時に照射する紫外線が、表示パネルの偏光フィルムやカラーフィルターに悪影響を与えない程度の低エネルギー線であっても硬化接着できるような反応性の高い接着性能を有していなくてはならない。
【0004】
例えば、特許文献1には表示部の高輝度及び高コントラスト表示が可能な薄型の表示装置について記載されているが、ここでは接着部の膜厚は50〜200μmとしており、更に厚くしたい場合は別途スペーサーが必要となるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学表示装置の表示パネルと前面板の結合のための接着性能に優れたギャップを形成する硬化物を与え、且つ、300μm以上の厚みで硬化させることができ、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れる信頼性の高い樹脂組成物、及びその硬化物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、式(I)で表されるエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、他の(メタ)アクリレート、光重合開始剤と、シランカップリング剤、充填材等を含有させることにより、接着性、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れ過酷条件下でも信頼性の高い樹脂組成物を見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち本発明は、次の(1)〜(10)に関するものである。
本発明は、
(1)分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有し、そのエポキシ当量が200eq/g以上のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
(2)前記(1)に記載のエポキシ(メタ)アクリレート(A)がビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)及び/または式(I)
【化1】

(式中、nは1〜7の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)であることを特徴とする光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【0009】
(3)更に、シランカップリング剤(D)を含有する前記(1)又は(2)に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
(4)更に、無機充填剤(E)を含有する前記(1)及至(3)の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
(5)エポキシ(メタ)アクリレート(A)を樹脂組成物中に含まれる紫外線硬化樹脂全体に対して30〜90質量%含有する前記(1)及至(4)の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【0010】
(6)光学表示装置の表示パネルと前面板との間に使用する前記(1)及至(5)の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
(7)光学表示装置が液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ又は電子ペーパーである前記(1)及至(6)の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
(8)前記(1)及至(7)の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物の硬化物。
(9)硬化物の厚みが300〜1000μmである前記(8)に記載の硬化物。
(10)(8)又は(9)に記載の硬化物によって前面板が接着された光学表示装置
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、接着性、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れ、光学表示装置の表示パネルと前面板との結合に用いることができる接着性能に優れるギャップの形成に適している。特に300μm以上の厚みでの接着結合に使用することができ、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れており、過酷条件下での信頼性の高い表示パネルの提供を可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有し、そのエポキシ当量が200eq/g以上のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)を含有する。
分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有し、そのエポキシ当量が200eq/g以上のエポキシ樹脂としては、例えば式(I)で表されるエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレンオキサイド付加ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも本発明では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と式(I)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。式(I)で表されるエポキシ樹脂としては、好ましくはnが1〜3の化合物であり、文献記載の方法により製造することもでき、又、市場より容易に入手することもできる。該エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬(株)製、品名NC−3000−L等を挙げることができる。本発明で使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量が200eq/g未満であると密着性が低下したり、硬化物がもろくなったりするため好ましくない。なお、エポキシ当量はJIS K−7236に準じた方法で測定することができる。
【0013】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物に含有される(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)としては、モノマー、オリゴマーを任意に使用すれば良い。オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリレート(B)としてこれらは単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0014】
該モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0015】
又、該モノマーとしてリン酸(メタ)アクリレートを使用してもよく、該リン酸(メタ)アクリレートしてはリン酸エステル骨格を有する(メタ)アクリレートであれば、モノエステル、ジエステルあるいはトリエステル等特に限定されず、例えば、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、例えば、日本化薬(株)製PM−2(エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート)等として入手可能である。中でも、本発明の樹脂組成物には特にエチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレートが好ましく用いられる。これらリン酸(メタ)アクリレートから1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。リン酸(メタ)アクリレートを(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)として本発明の樹脂組成物中に含有させる場合、その含有量は好ましくは0.005〜5質量%程度、特に好ましくは0.05〜3質量%程度である。
【0016】
オリゴマー成分としての該エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレンオキサイド付加ビスフェノールS型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル又はヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステルと、(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。
【0017】
オリゴマー成分としての該ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオール(a)と有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)の反応物、又は、ポリオール(a)とイソシアネート基含有モノマー(d)の反応物が挙げられる。
【0018】
該ポリオール(a)としては、例えば、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリ(n≒2〜20)エトキシジオール、ビスフェノールAポリ(n≒2〜20)プロポキシジオール等のジオール化合物(a−1−1)、これらジオール化合物(a−1−1)と二塩基酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸等)あるいはその無水物との反応物であるポリエステルジオール(a−1−2)等を挙げることができる。好ましくは、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを挙げることができる。
【0019】
該有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジメリルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0020】
該水酸基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0021】
該イソシアネート基含有モノマー(d)としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を挙げることができる。
【0022】
オリゴマー成分としての該ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、前記のポリエステルジオール(a−1−2)と(メタ)アクリル酸の脱水縮合反応物等を挙げることができる。
【0023】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。又、下記式(II)で表される一分子中にラジカル重合反応性基とラジカル発生基を併せもっている光ラジカル重合開始剤を用いる事も可能である。なお、光重合開始剤(C)としてこれらの化合物から複数種を混合して用いるのが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物に含有される各成分の割合は、紫外線硬化樹脂全体((A)成分+(B)成分)を100重量部とした場合、(A)成分は30〜90質量部、好ましくは40〜80質量部であり、(B)成分は10〜70質量部、好ましくは20〜60質量部である。(C)成分は(A)成分+(B)成分の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜5質量部である。
【0026】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物には、その接着強度を向上させるためにシランカップリング剤(D)を含有してもよい。該シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお、該シランカップリング剤(D)としてこれらは単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0027】
本発明の樹脂組成物にシランカップリング剤(D)を含有する場合、その割合は(A)成分+(B)成分+(C)成分の総質量部に対して、0.01〜10質量部使用することが好ましく、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0028】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物には無機充填剤(E)を含有してもよい。該無機充填剤(E)としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、タルクである。シリカ、タルクは、シランカップリング剤による表面処理性に優れており、且つ、充填剤自身が液晶に対する汚染性が低い。なお、該無機充填剤(E)としてはこれらを単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0029】
本発明のギャップ形成用樹脂組成物に無機充填剤(E)を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物全体に対して通常0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%である。充填剤の含有量が0.1質量%より低い場合、基板に対する接着強度が低下し、耐湿信頼性も劣り、耐湿接着強度の低下が大きくなる。又、充填剤の含有量が50質量%より多い場合、後記する深部硬化性が悪化する。
【0030】
該無機充填剤(E)は、前記のようにシランカップリング剤により表面処理して使用しても良く、該シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。シランカップリング剤による表面処理すると接着強度が向上し、耐湿信頼性が優れた樹脂組成物が得られる。
【0031】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物には、更に必要に応じて、有機充填材、ポリマー、有機溶媒、顔料、レベリング剤、消泡剤等を添加し機能性を付与することも可能である。
【0032】
本発明のギャップ形成用樹脂組成物は、前記各成分を公知の混合装置、例えば、ロールミル、サンドミル、ボールミル等を用いて均一に混合することにより製造することができる。更に必要により、濾過、脱泡処理を施してもよい。本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物は無溶媒での使用が好ましい。
【0033】
本発明の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物を用いる光学表示装置には液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ又は電子ペーパー等が挙げられ、表示パネル上面に本発明の樹脂組成物をディスペンサー等により全面又は周囲に塗布し、必要に応じてレンチキュラーレンズ等を挟み、前面板を重ね合わせて300〜1000μm程度の所望のギャップ出しを行い、ギャップ形成後、前面板の上から紫外線照射機を用いて該樹脂組成物に紫外線を照射させて光硬化し結合・接着することにより得られる。この際の紫外線照射量は、好ましくは500mJ/cm2〜6000mJ/cm2程度、より好ましくは1000mJ/cm2〜4000mJ/cm2程度である。該紫外線照射機は、光源として、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、紫外線用蛍光ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ等を内蔵していれば、特に限定されない。このようにして得られた光学表示装置は耐ヒートサイクル性、耐湿信頼性に優れたものである。
【実施例】
【0034】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。粘度はR型粘度計(東機産業(株)社製 R115型粘度計)により測定した。
【0035】
合成例1
撹拌装置、冷却管、温度計のついた丸底フラスコに、式(I)で表されるエポキシ樹脂としてNC−3000−L(日本化薬(株)製、エポキシ当量271g/eq)55質量部、アクリル酸45質量部、トリフェニルホスフィン0.2質量部、メトキノン0.05質量部を仕込み、80℃溶解後、98℃で24時間反応させ、酸価1mgKOH/gのエポキシアクリレート樹脂を得た。
【0036】
合成例2
撹拌装置、冷却管、温度計のついた丸底フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるYD−011(東都化成(株)製、エポキシ当量470g/eq)61質量部、アクリル酸39質量部、トリフェニルホスフィン0.2質量部、メトキノン0.05質量部を仕込み、80℃溶解後、98℃で24時間反応させ、酸価1mgKOH/gのエポキシアクリレート樹脂を得た。
【0037】
合成例3
撹拌装置、冷却管、温度計のついた丸底フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるRE−310S(日本化薬(株)製、エポキシ当量182g/eq)43質量部、アクリル酸57質量部、トリフェニルホスフィン0.2質量部、メトキノン0.05質量部を仕込み、80℃溶解後、98℃で24時間反応させ、酸価1mgKOH/gのエポキシアクリレート樹脂を得た。
【0038】
実施例1
合成例1で得られたエポキシアクリレート60質量部、合成例2で得られたエポキシアクリレート5質量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート20質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカル社製、イルガキュア651)1質量部と2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製、ルシリンTPO)0.1質量部を90℃で加熱溶解させ、室温に冷却後、シランカップリング剤であるサイラエースS−510(チッソ(株)製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1質量部、リン酸アクリレートであるPM−2(日本化薬(株)製、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート)1質量部を混合して樹脂液を得た。続いて、シリカ(龍森(株)製、クリスタライト1FF、平均粒径1.0μm)5質量部、タルク(日本タルク株式会社製、ナノエースD−600、平均粒径600nm)6質量部、ヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジルR−812、平均粒径7nm)1質量部を添加し、3本ロールにて混練し、金属メッシュ(関西金網株式会社製 材質SVS316 綾織目開き400メッシュ)でろ過することにより、本発明の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は220Pa・sであった。
【0039】
実施例2
リン酸アクリレート(PM−2、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート)を使用しない以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は230Pa・sであった。
【0040】
実施例3
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF製、ルシリンTPO)0.1質量部の替わりにビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド0.1質量部を使用し、他は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は220Pa・sであった。
【0041】
実施例4
合成例2で得られたエポキシアクリレート55質量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート30質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカル社製、イルガキュア651)1質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、ルシリンTPO)0.1質量部を90℃で加熱溶解させ、室温冷却後は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は220Pa・sであった。
【0042】
実施例5
合成例1で得られたエポキシアクリレート65質量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート20質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカル社製、イルガキュア651)1質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、ルシリンTPO)0.1質量部を90℃で加熱溶解させ、室温冷却後は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は210Pa・sであった。
【0043】
比較例1
合成例3で得られたエポキシアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート10質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカル社製、イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール)1質量部を90℃で加熱溶解させた。室温冷却後は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は280Pa・sであった。
【0044】
比較例2
合成例3で得られたエポキシアクリレート60質量部、合成例2で得られたエポキシアクリレート5質量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート20質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカル社製、イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール)1質量部を90℃で加熱溶解させた。室温冷却後は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の粘度(25℃)は310Pa・sであった。
【0045】
評価試験は下記の方法で実施した。
【0046】
(接着強度)
得られた各樹脂組成物100gに5μmのグラスファイバー(日本電気硝子(株)社製 PF−50S)1gを添加して混合撹拌し、この樹脂組成物を50mm×50mmの無アルカリガラス基板上に塗布し、その上に1.5mm×1.5mmの無アルカリガラス片を貼り合わせUV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。そのガラス片のせん断接着強度を測定した。その結果を表1に記した。
【0047】
(深部硬化性)
幅50mm、長さ50mmの0.7mm厚の青板ガラス基板に樹脂組成物を塗布し、同じ基板を合わせた後、UV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。その際、硬化物が500μmの厚さになるようにスペーサーにて調整する。硬化物をガラス基板から剥離後、硬化物の深部の硬化度合いを調べた。深部にタックがないものを○、タックがあるものを×と判定し、その結果を表1に記した。
【0048】
(耐湿性)
幅50mm、長さ50mmの0.7mm厚の無アルカリガラス基板に樹脂組成物を塗布し、同サイズの青板ガラス基板で貼り合わせ後、青板ガラス基板側からUV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射して300μmのギャップで硬化させたサンプルを、60℃・90%RH(相対湿度)に500時間放置した後、2枚の基板の剥離の様子を観察した。剥離がないものを○、剥離しているものを×と判定し、その結果を表1に記した。
【0049】
(耐ヒートサイクル性)
幅50mm、長さ50mmの0.7mm厚の無アルカリガラス基板に樹脂組成物を塗布し、同サイズの青板ガラス基板で貼り合わせ後、青板ガラス基板側からUV照射機により3000mJ/cm2の紫外線を照射して300μmのギャップで硬化させたサンプルを、1サイクル(−35℃で30分、85℃で30分)で300サイクル行った後、2枚の基板の剥離の様子を観察した。剥離がないものを○、剥離しているものを×と判定し、その結果を表1に記した。
【0050】
表1
実施例 比較例
1 2 3 4 5 1 2
接着強度[MPa] 65 56 62 61 55 15 32
深部硬化性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
耐湿性 ○ ○ ○ ○ ○ × ×
耐ヒートサイクル性 ○ ○ ○ ○ ○ × ×
【0051】
表1から明らかなように、本発明のギャップ形成用樹脂組成物は接着性に優れ、500μm以上の厚みで硬化させることができ、耐ヒートサイクル性、耐湿性に優れていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有し、そのエポキシ当量が200eq/g以上のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)成分以外の(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ(メタ)アクリレート(A)がビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)及び/または式(I)
【化1】

(式中、nは1〜7の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート(A)であることを特徴とする光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項3】
更に、シランカップリング剤(D)を含有する請求項1又は2に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、無機充填剤(E)を含有する請求項1及至3の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ(メタ)アクリレート(A)を樹脂組成物中に含まれる紫外線硬化樹脂全体に対して30〜90質量%含有する請求項1及至4の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項6】
光学表示装置の表示パネルと前面板との間に使用する請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項7】
光学表示装置が液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ又は電子ペーパーである請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の光学表示装置のギャップ形成用樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
硬化物の厚みが300〜1000μmである請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の硬化物によって前面板が接着された光学表示装置

【公開番号】特開2011−38079(P2011−38079A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134785(P2010−134785)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】