説明

光学装置及び光受信モジュール

【課題】受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる光受信モジュール用の光学装置及びこれを用いた光受信モジュールを提供することを目的としている。
【解決手段】光ファイバ70から出射される受信光を受信する受光素子40と、前記受信光を受光素子40に結合させる集光レンズ20と、を備えた光学装置において、集光レンズ20と受光素子40との間に配置された回折格子30を有し、回折格子30は受光素子40で反射した反射光の光路を集光レンズ20の外周方向に屈折させていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる光受信モジュール用の光学装置及びこれを用いた光受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において、伝送媒体である光ファイバと、光ファイバに光信号を伝送する光学装置が使用されている。たとえば、光信号を送信する発光素子と集光レンズが組み込まれた光送信モジュール用の光学装置や、光信号を受信する受光素子と集光レンズが組み込まれた光受信モジュール用の光学装置がある。それぞれの光学装置は、ハウジング等に組み込まれて、光ファイバと位置合わせされて、光送信モジュールや光受信モジュールとして使用される。
【0003】
特許文献1に開示されているように、光送信モジュールにおいては、半導体レーザ等の発光素子から出射された送信光がレンズに集光されてファイバ端面に光結合される。このとき、出射された送信光が半導体レーザに戻ってくる反射光を十分に抑制できなければ、反射光によって半導体レーザの動作が不安定になってしまうことが知られている。
【0004】
図6は特許文献1に開示された構造例であり、斜めカットファイバを用いた光送信モジュール101を示す模式断面図である。光ファイバ170として斜めカットファイバが使用されているので、発光素子160から出射された送信光は、光路上に封入された気体の屈折率と光ファイバ170の屈折率との差異によって、屈折して光ファイバ170に入射する。このとき、発光素子160及びレンズ120並びに光ファイバ170は、X1−X2方向にオフセット配置されている。
【0005】
図6に示す光送信モジュール101では、ファイバ端面170aでの反射光が発光素子160の方向に戻る現象を低減することを目的として、反射光の角度を送信光の入射方向から逸らすために斜めカットファイバが使用されている。斜めカットファイバとは、ファイバ端面を光ファイバの中心軸に対して斜めに切断したものであり、たとえば8度の切断角を有している。図7に示すように、レンズ120からファイバ端面170aに結合した送信光は屈折して光ファイバ170の中心軸方向に伝播する。一方、ファイバ端面170aでの反射光は端面への光の入射角度に依存した反射角度を有し、送信光の入射方向から逸らすことができる。
【0006】
同様に、光受信モジュールにおいても、光ファイバから出射された受信光が受光素子等で反射して光ファイバに再入射(再結合)する。この光受信モジュールから光ファイバへの戻り光は本来の信号光に重なって妨害を与え、受信誤りを生じさせる原因となる。したがって、光受信モジュールでは、この戻り光を低減することが必要である。
【0007】
ところが、図8に示すように、従来の光受信モジュールの場合は、斜めカットファイバを用いても、光ファイバ170から出射した受信光の光路と受光素子140からの反射光の光路とがほとんど一致していた。そのため、戻り光を低減する方法としては、レンズ120の本来の結像位置から受光素子140を光路方向(Z方向)にずらして配置することがおこなわれていた。これはデフォーカスと呼ばれる設計手法であり、デフォーカスによって反射光が相対的に拡がりをもって拡散するので、レンズ120を介して光ファイバ170に再結合する戻り光を低減できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10―96839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このデフォーカスによる戻り光対策は、本来の結像位置からずれた「ぼやけた位置」に受光素子を配置するので、受光素子の受光径が大きくなければ結合効率が低下してしまうという問題があった。一方、このデフォーカスをおこなわずに従来の光受信モジュールを製作すると、製作工程における製造ばらつきによって、戻り光の大きい不良品が混入してしまうことを防げない。したがって、製作された従来の光受信モジュール用の光学装置1台1台について、光ファイバを仮接続して受信光を導入し、そのときの戻り光を測定して、戻り光の大きい不良品を選別する検査が必要になる。
【0010】
近年、通信速度の高速化に伴って受光素子の受光径が小さくなり、戻り光対策として十分なデフォーカス量に設定することが困難になっている。そのため、デフォーカスによる従来の方法では、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができず、上述のように検査をおこなわなければならない。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、デフォーカスをしなくても、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる光受信モジュール用の光学装置及びこれを用いた光受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光ファイバから出射される受信光を受信する受光素子と、前記受信光を前記受光素子に結合させる集光レンズと、を備えた光学装置において、前記集光レンズと前記受光素子との間に配置された回折格子を有し、前記回折格子は前記受光素子で反射した反射光の光路を前記集光レンズの外周方向に屈折させる、ことを特徴とする。
【0013】
これにより、受光素子で反射した反射光は回折格子で集光レンズの外周方向に曲げられる。こうすれば、受光素子で反射した反射光のうち、集光レンズに集光されて光ファイバに結合する割合が低減される。光ファイバに結合する反射光を低減できるので、レンズの結像位置から受光素子を光路方向にずらして配置しておかなくてもよい。すなわち、デフォーカスをしなくてもよい。
【0014】
したがって、デフォーカスをしなくても、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる。
【0015】
さらに、前記受信光は前記集光レンズにより集光され、前記回折格子により屈折されて前記受光素子に結合するとともに、前記回折格子は前記受信光を前記集光レンズの光軸から離れる方向に屈折させることが好適である。すなわち、前記集光レンズの光軸方向をZ軸方向とすれば、前記光軸に直交するX方向に前記受信光を屈折させて、前記集光レンズの光軸から離れる方向に前記受信光を進行させる。これにより、回折格子によって、受光素子に結合する受信光は集光レンズの光軸から離れる方向に1回屈折して、さらに、受光素子で反射した反射光は集光レンズの光軸から離れる方向(集光レンズの外周方向)にもう1回屈折するので、反射光の光路はより大きく曲げられる。こうすれば、受信光の結合効率を低下させずに、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる。
【0016】
前記受光素子は前記集光レンズの光軸からオフセットされた位置に配置されていることが好ましい。すなわち、前記集光レンズの光軸方向をZ軸方向とすれば、前記光軸に直交するX方向に受光素子がオフセット配置されていることが好ましい。これにより、受光素子からの反射光は集光レンズの光軸から離れる方向に反射されるので、デフォーカスをしなくても、受信光の光ファイバへの再結合を低減できる。また、受光素子の受光径とオフセット位置とを最適にしておけば、結合効率を向上させることができる。
【0017】
前記集光レンズを固定する鏡筒を有し、前記回折格子が前記鏡筒の内壁面に固定されていることが実用的である。鏡筒に一体となるように集光レンズを成形してから、回折格子を内壁面に固定することは容易である。こうすれば、光学装置の組み立て精度が向上して、製造ばらつきが低減できるので、光受信モジュールの性能ばらつきが低減できる。
【0018】
前記受光素子が固定された基板と、前記鏡筒に形成された鍔部と、を有し、前記基板と前記鍔部とが溶接されていることが好ましい。これにより、受光素子が気密に封止された光学装置を容易に実現できる。こうすれば、酸化による劣化が抑制されるので、信頼性が向上する。
【0019】
前記受光素子は、前記集光レンズが焦点を結ぶ結像位置から前記受信光の光路方向にデフォーカスさせた位置に配置されていることが好適である。このとき、受光素子の受光径に合わせたデフォーカス量にすることが好ましい。こうすれば、受光径が小さく、デフォーカス量をそれほど大きく取れなくても、回折格子による反射光の屈折作用を組み合わせたことにより、受光素子で反射した反射光のうち、集光レンズに集光されて光ファイバに結合する割合を低減できる。
【0020】
本発明は、光ファイバを固定するハウジングを備え、前記ハウジングに上記いずれかに記載の光学装置が組み込まれた光受信モジュールであることが好ましい。これにより、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学装置及び光受信モジュールによれば、受光素子で反射した反射光は回折格子で集光レンズの外周方向に曲げられるので、集光レンズに集光されて光ファイバに結合する割合が低減される。したがって、デフォーカスをしなくても、受信光の光ファイバへの再結合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の光学装置を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態の光受信モジュールを示す模式断面図である。
【図3】受光素子で反射した戻り光の光路が回折格子によって変化する光学作用を示す説明図である。
【図4】ブレーズ型回折格子の適用事例を示す説明図である。
【図5】本実施形態の変形例における戻り光の光路を示す説明図である。
【図6】従来の光学装置であり、斜めカットファイバを用いた光送信モジュールを示す模式断面図である。
【図7】従来の光学装置における斜めカットファイバに結合した送信光とファイバ端面での反射光の光路を示す説明図である。
【図8】従来の光学装置における斜めカットファイバから出射した受信光と受光素子での反射光の光路を示す説明図である。
【図9】従来の光学装置においてオフセット配置した受光素子位置に対する受光径と戻り光強度とを示す事例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0024】
図1は本実施形態の光学装置1を示す模式断面図であり、図2は光受信モジュール2を示す模式断面図である。図3は、受光素子40で反射した戻り光の光路が回折格子30によって変化する光学作用を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の光学装置1は、光受信モジュール2に組み込まれて、光ファイバ70のファイバ端面70aから出射された光信号を集光レンズ20により集光して受光素子40に結合させる。図1では、集光レンズ20は鏡筒10に収納されて、鏡筒10の鍔部11が、受光素子40を搭載した基板50に溶接されている。図2に示すように、光学装置1を組み込んだハウジング90と、光ファイバ70の固定部80とが一体に固定されることによって、光ファイバ70がハウジング90に固定された光受信モジュール2が構成される。なお、光受信モジュール2は、光ファイバ70が着脱自在になっているレセプタクル型、または、光ファイバ70が固定されたピグテイル型、のいずれでも適用可能である。
【0026】
図1において、光ファイバ70のファイバ端面70aから出射された受信光は、ファイバ端面70aの斜めカット角度と光ファイバ70の屈折率とによって、Z2方向から所定の角度だけ傾いた光路を進行する。ここで、集光レンズ20は鏡筒10の内壁面に固定されて、集光レンズ20の光軸LはZ1−Z2方向に一致している。集光レンズ20の光軸Lに対して、光ファイバ70の中心軸FはX2方向にオフセットして配置され、集光レンズ20を受信光が通過するように位置合わせされている。集光レンズ20は非球面レンズであり、レンズ面の光学的な中心を集光レンズ20の中心Oと定義する。
【0027】
なお、鏡筒10と集光レンズ20とは光軸LがZ1−Z2方向に平行に製作され、基板10に固定された受光素子40はX1−X2方向に平行な表面で受信光を反射する。光路が傾いているので、受信光は集光レンズ20の外周方向に反射される。
【0028】
本実施形態の光学装置1では、鏡筒10の内壁面に回折格子30が接着材によって固定されている。この回折格子30は受光素子40で反射した反射光の光路を集光レンズ20の外周方向に屈折させている。図1においては、反射光は集光レンズ20の中心Oから離れる方向(X1方向)に曲げられるので、集光レンズ20によってファイバ端面70aに結合する割合が低減する。
【0029】
この効果について、従来例と比較して、詳細に説明する。
【0030】
図9を用いて、本実施形態の光学装置1における回折格子30を配置せずに、受信光の光路に受光素子40を配置した従来構造での課題を説明する。図9は、受光素子40を所定の位置から変化させたときの、受光径及び戻り光強度の変化を示すグラフである。この変化を評価するため、十分にデフォーカスさせた位置を原点として焦点の合う方向に受光素子40の位置をZ方向に変化させ、さらに結像位置を越えて再びデフォーカス量が大きくなった位置までの測定を実施した。前記原点から変化させた距離はわずか400μmであった。このとき、測定には斜めカットファイバからの出射光を用い、ファイバ端面70aからZ1−Z2方向に対して約4度傾いて受信光が出射されている。集光レンズ20を通過して受光素子40に受信光が上記の角度を保持して受光され、その一部が反射して戻り光となる。図9では、受光素子40が基板50に固定される際の製造ばらつきを考慮して、各位置での戻り光が最大になる取り付け角度に受光素子40を傾けて測定した。これは、受光素子40からの反射光が集光レンズ20からの受信光の光路方向に一致した状態(最悪ケース)に対応するものと推測される。
【0031】
図9のグラフから分かるように、十分にデフォーカスさせた位置(原点)では受光径が40μm以上の大きさであるが、戻り光は−25dBよりも十分に小さいので、光ファイバ70への戻り光の光量としては問題にならない。しかし、この位置からデフォーカス量が100μm以上ずれて、焦点の合う方向にばらつくと、戻り光は−25dBよりも大きくなって、仕様を満たさない不良品になってしまう。したがって、デフォーカス量を100μm以内のばらつきで製作できる組み立て精度が要求される。また、通信速度の高速化に伴って受光素子40の受光径が小さくなり、受光径を20μm以内にしなければならない場合、その受光径での戻り光は−23dB〜―26dBになるので、やはり仕様を満たすことができない。
【0032】
本実施形態の光学装置1では、回折格子30を配置することによって、上記問題を解決するものであり、組み立て精度が同じであっても、従来に比べ戻り光を小さくできる。
【0033】
図3は、受光素子40で反射した戻り光の光路が回折格子30によって変化する光学作用を示す説明図である。受信光は回折格子30を通過する際に、集光レンズ20の光軸Lに対して離れる方向に屈折してから、受光素子40に結合している。さらに、受光素子40で反射した反射光は回折格子30を通過する際に集光レンズ20の光軸Lから離れる方向にもう1回屈折するので、反射光の光路はより大きく曲げられる。なお、この受信光の光路に受光素子40の中心を合わせ、図3のように光軸Lからオフセット量OFだけオフセットして配置されている。
【0034】
このため、光ファイバ70から出射され、集光レンズ20を通過した受信光の光路が回折格子30で屈折して、より大きな角度で受光素子40に結合するので、受光素子40からの反射光も大きな角度で反射される。
【0035】
したがって、組み立て精度が同じであっても、受信光の光路方向に反射する最悪ケースの可能性は低くなる。
【0036】
さらに、回折格子30を通過する反射光は屈折作用を受けるので、さらに大きな角度で屈折して集光レンズ20の光軸Lから離れる方向に向かう。
【0037】
図9の測定に対して、本実施形態での適用事例は、回折格子30における0次光と1次光との角度差を2度にするように設計した。この結果、従来構造での事例と同じ条件で測定して、受光径が最小(約10μm)となる結像位置に受光素子40を配置した場合であっても、戻り光が−40dBになった。デフォーカスをしなくても、戻り光を十分に小さくできるので、仕様を満たさない不良品は製造されなくなった。
【0038】
このような作用を得る回折格子30として、図4にはブレーズ型回折格子の適用事例を示している。この場合、受信光の波長及び光路に合わせて、ブレーズ型回折格子における鋸歯状溝のブレーズ角度、ピッチ等の光学設計を最適化しておくことが好ましい。回折格子30は石英ガラスを加工して製作することができる。また、受信光の波長に対して透明な材料であればよいので、たとえば1.5μm帯ではシリコン等を使用することができる。このような回折格子30はプリズム等の光学部品に比べて製作しやすく、光学装置1の製造コストもほとんど増加しないで済む。
【0039】
上述したように、受信光の光路が回折格子30によって、集光レンズ20の光軸Lから離れる方向に屈折することが効果的である。なお、受信光の光路が回折格子30を通過する際にほぼ直進する場合であっても、反射光の光路は上述の方向に屈折する作用を受けるので、本発明の効果が得られる。受光素子40からの反射光は集光レンズ20の光軸Lから離れる方向であるので、デフォーカスをしなくても、受信光の光ファイバ70への再結合を低減できる。また、受光素子40の受光径とX1−X2方向におけるオフセット位置とを最適にしておけば、結合効率を向上させることができる。
【0040】
受光素子40は、集光レンズ20が焦点を結ぶ結像位置から受信光の光路方向(Z方向)にデフォーカスさせた位置に配置されていることが好適である。このとき、製造ばらつきを考慮しながら、受光素子40の受光径に合わせたデフォーカス量にすることが好ましい。こうすれば、受光素子40の受光径が小さく、デフォーカス量をそれほど大きく取れなくても、回折格子30による反射光の屈折作用を組み合わせることができる。このことにより、受光素子40で反射した反射光のうち、集光レンズ20に集光されて光ファイバ70に結合する割合を低減できる。
【0041】
図5は、本実施形態の変形例における戻り光の光路を示す説明図である。光ファイバ70が斜めカットファイバでなく、光ファイバ70の中心軸Fに垂直な断面にカットされていて、中心軸Fと集光レンズ20の光軸LがX1−X2方向で一致している場合、光ファイバ70から出射された受信光はZ1−Z2方向に平行に進行する。あるいは、受信光をZ1−Z2方向に平行に進行するように、斜めカットファイバが傾斜して固定されている光受信モジュールの場合である。これらの場合であっても、回折格子30を配置することによって、光軸Lから離れる方向に受信光及び反射光を屈折させるので、同様の効果を得ることができる。
【0042】
集光レンズ20は、球形のレンズでもよいが、図1に示すように、球面収差が補正された非球面レンズであることが好ましい。非球面レンズは球面収差を補正するので、高い結合効率を得ることができる。さらに、鏡筒10と一体になるようにプレス成形された非球面レンズであることが好ましい。こうすれば、鏡筒10と集光レンズ20との密着がよく、気密性を得ることが容易である。また、鏡筒10を有しているので、鏡筒10の内壁面に取り付け部を設けておけば回折格子30を固定しやすい。さらに、図2に示すように、鏡筒10を光受信モジュール2のハウジング90に固定できるので、各部品の位置合わせを容易にすることができる。
【0043】
光学装置1は、図1に示すCANパッケージと呼ばれる態様で、受光素子40が基板50に載置されて固定されており、基板50と鏡筒10の鍔部11とが溶接されて、受光素子40を気密に封止していることが好ましい。非酸化性の雰囲気ガスで封止することによって、長期間に亘って酸化による劣化が抑制されるので、信頼性が向上する。
【0044】
光学装置1は、受光素子40が固定された基板50と、鏡筒10に形成された鍔部11と、を有し、基板50と鍔部11とが溶接されていることが好ましい。これにより、受光素子40が気密に封止された光学装置1を容易に実現できる。こうすれば、酸化による劣化が抑制されるので、信頼性が向上する。光学装置1を気密に封止する場合であっても、回折格子30が気密空間の中に配置されていれば、回折格子30を気密封止用の固定方法で固定する必要はない。
【0045】
鏡筒10は円筒状に製作されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、鏡筒10が円筒状であっても、回折格子30は円板状や四角板状等の外形を有していてもよい。
【0046】
回折格子30は接着材による固定でなく、はんだ固定にしてもよい。回折格子30の外周に沿って部分メタライズをおこなっておけば、容易にはんだ固定が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 光学装置
2 光受信モジュール
10 鏡筒
11 鍔部
20 集光レンズ
30 回折格子
70 光ファイバ
70a ファイバ端面
40 受光素子
50 基板
80 固定部
90 ハウジング
101 光送信モジュール
120 レンズ
140 受光素子
160 発光素子
170 光ファイバ
170a ファイバ端面
F 光ファイバの中心軸
L 集光レンズの光軸
O 集光レンズの中心
OF オフセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバから出射される受信光を受信する受光素子と、
前記受信光を前記受光素子に結合させる集光レンズと、を備えた光学装置において、
前記集光レンズと前記受光素子との間に配置された回折格子を有し、
前記回折格子は前記受光素子で反射した反射光の光路を前記集光レンズの外周方向に屈折させることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記受信光は前記集光レンズにより集光され、前記回折格子により屈折されて前記受光素子に結合するとともに、前記回折格子は前記受信光を前記集光レンズの光軸から離れる方向に屈折させることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記受光素子は前記集光レンズの光軸からオフセットされた位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記集光レンズを固定する鏡筒を有し、前記回折格子が前記鏡筒の内壁面に固定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記受光素子が固定された基板と、前記鏡筒に形成された鍔部と、を有し、前記基板と前記鍔部とが溶接されていることを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記受光素子は、前記集光レンズが焦点を結ぶ結像位置から前記受信光の光路方向にデフォーカスさせた位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
光ファイバを固定するハウジングを備え、前記ハウジングには請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光学装置が組み込まれたことを特徴とする光受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101280(P2013−101280A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245939(P2011−245939)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】