説明

光学装置

【課題】 小さな駆動力で可動ミラーが大きく揺動する光学装置を提供する。
【解決手段】 支持部19,21,23,25は、可動ミラー36の裏面に当接し、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近する向きに揺動する際の支点18と、可動ミラーの第2端部40が基板14に接近する向きに揺動する際の支点24を提供する。アクチュエータ30,42は、可動ミラー36の第1端部32と第2端部40のうちの任意の一方を選択し、選択した側の可動ミラーの端部32,40を基板14に近づける。連結部52,54,56,58は、(1) 可動ミラー36が第1端部側支点18を中心にして第2端部側支点24から離反する向きに揺動し、(2) 可動ミラーが第2端部側支点24を中心にして第1端部側支点18から離反する向きに揺動する相対運動を許容する態様で可動ミラー36を基板14に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの反射方向を切換える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロメカニカル構造体(MEMS)を製造する方法が発達している。また、光ビームの反射方向を切換える光学装置が必要とされている。そこで、MEMSで光ビームの反射方向を切換える光学装置を実現する技術が開発されている。
光ビームの反射方向を切換える光学装置の場合、光ビームを反射するミラーを揺動させる必要があり、対向する部材間に吸引力を発生し、その吸引力によって対向する部材間の間隔を狭める方式のアクチュエータを利用する。このとき、アクチュエータに用意しておく間隔が狭いほど大きな吸引力が得られるのに対し、間隔を狭くすると、可動ミラーの揺動可能角度が狭くなるという問題に遭遇する。
【0003】
特許文献1の光学装置が提案されている。特許文献1の光学装置は、基板と可動梁と可動層と可動ミラーと支柱を備えている。可動層は、可動梁を介して基板に連なっており、基板から間隔を隔てた高さを伸びている。可動ミラーの端部は可動層の端部に連結されている。支柱は、基板の表面から可動層を貫通して可動ミラーの下面に向けて伸びている。
可動層と基板の間に静電引力が発生していない状態では、可動ミラーが可動層に重なっている。可動ミラーと可動層の両方が支柱で支えられ、可動ミラーは基板に平行となっている。可動層と基板の間に静電引力を発生させると、可動層が基板に近づく方向に平行移動する。この結果、可動層に固定されている側の可動ミラーの端部は基板に近づくが、支柱に当接する部分では可動ミラーがそれ以上には基板に接近できないことから、可動ミラーが傾斜する。可動ミラーを傾斜させることによって、光ビームの反射方向を切換えることができる。
特許文献1の技術では、支柱を支点とするてこの原理を利用するので、可動層の移動距離が小さくても、可動ミラーを大きく傾斜させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005-70091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、大きな吸引力を発生させることと可動ミラーを大きく揺動させることの双方に成功した優れた技術である。しかしながら、可動ミラーをさらに大きく揺動させたいとする要求がある。可動ミラーをさらに大きく揺動させるためには、可動ミラーを両方向に揺動させるのが有利である。しかしながら、特許文献1の技術では可動ミラーを一方方向にしか揺動させることができない。
【0006】
特許文献1の光学装置を平面視すると、可動ミラーは矩形である。可動層に連結されている側の可動ミラーの端縁を第1端部とし、それと反対側の端縁を第2端部とする。
特許文献1の技術では、通常時には可動ミラーと基板が平行である。アチュエータを作動させると、可動ミラーは、第1端部が基板に接近して第2端部が基板から離反する向きに揺動する。逆の方向、すなわち、第1端部が基板から離反して第2端部が基板に接近する向きには揺動することができない。
【0007】
本発明は、特許文献1の技術を改良し、可動ミラーが両方向に揺動する光学装置を提供することを目的とする。すなわち、可動ミラーの第1端部が基板に接近して第2端部が基板から離反する向きに揺動することもできれば、第1端部が基板から離反して第2端部が基板に接近する向きにも揺動することもできる光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示されている技術は、光ビームの反射方向を切換える光学装置に関する。この光学装置は、基板と可動ミラーと支持部とアクチュエータと連結部を備えている。
可動ミラーは、光学装置を平面視したときに、第1端部から第2端部まで伸びている。
支持部は、可動ミラーの基板側の面に当接し、可動ミラーの第1端部が基板に接近して第2端部が基板から離反する向きに揺動する際の支点を提供する第1端部側支点と、可動ミラーの第1端部が基板から離反して第2端部が基板に接近する向きに揺動する際の支点を提供する第2端部側支点を備えている。アクチュエータは、可動ミラーの第1端部と第2端部のうちの任意の一方を選択し、選択した側の可動ミラーの端部を基板側に近づける。前記連結部は、可動ミラーを基板に連結しているが、下記の相対運動:すなわち、
(1) 可動ミラーが第1端部側支点を中心にして第2端部側支点から離反する向きに揺動し
(2) 可動ミラーが第2端部側支点を中心にして第1端部側支点から離反する向きに揺動する相対運動を許容する。
【0009】
上記における支点は、点に限られず、直線に沿って伸びていてもよい。支持部は、第1端部側支点と第2端部側支点を提供するものであればよく、単一部材であってもよいし、複数の部材で構成されていてもよい。典型的なアクチュエータは、間隔を隔てて対向している電極対によって構成されるが、それには限られない。コイル等を利用して吸引力を発生させるのものであってもよい。
相対的運動を許容する態様で可動ミラーを基板に連結する機構は特に限定されない。しなやかに曲げられる梁やしなやかに捩れる梁等を利用して、相対的運動を許容する態様で可動ミラーを基板に連結することができる。
【0010】
可動ミラーを基板に連結する連結部が、相対運動を許容する可動梁を備えている場合、その可動梁が、基板と可動ミラーの間を伸びている形態を採用することもできる。
基板と可動ミラーの間に配置する可動ミラーは、基板に平行に伸びている可動梁であってもよいし、基板の直交方向に伸びている可動梁であってもよいし、両者を組合わせた梁であってもよい。
この場合、可動ミラーを平面視した状態において、可動ミラーの外側に連結部を配置する必要がなく、少なくとも可動梁の大部分を可動ミラーの裏面に収容することができる。可動ミラーの外側に連結部が存在しないので、可動ミラーと可動ミラーを隣接して配置することができ、可動ミラーと可動ミラー間の隙間を小さくすることができる。光学装置を高密度に集積ないし配置するのに有利である。
【0011】
可動梁が基板と可動ミラーの間を伸びている場合、可動梁と基板の間にアクチュエータを設けることができる。
吸引力を発生する間隔を狭めて大きな吸引力を得ることができる。
【0012】
可動ミラーの第1端部に連結されている可動梁は、第1端部側支点の側から第2端部側支点を越えて伸びた部分で基板に固定されていることが好ましい。同様に、可動ミラーの第2端部に連結されている可動梁は、第2端部側支点の側から第1端部側支点を越えて伸びた部分で基板に固定されていることが好ましい。
【0013】
可動ミラーの第1端部に連結されている可動梁は、可動ミラーの第1端部が変位するのについて変形する。特に、第2端部側支点を中心に揺動する際に、可動ミラーの第1端部が大きく変位し、第1端部に連結されている可動梁が大きく変形する。
この際、第1端部に連結されている可動梁が、第1端部側支点の側から第2端部側支点を越えて伸びた部分で基板に固定されていると、可動ミラーが第2端部側支点を中心に揺動する際に、第1端部に連結されている可動梁の両端間距離が減じる関係が得られる。それに対して、第2端部側支点よりも第1端部側支点側の位置で可動梁が基板に固定されていると、可動ミラーが第2端部側支点を中心に揺動する際に、第1端部に連結されている可動梁の両端間距離が増加する関係が得られる。一般的に、MEMSに用いられる材料は、引っ張り強度が高く、可動梁を引き伸ばす動きが必要とされると、それに要する力は大きい。それに対して、可動梁の両端間距離を減じる場合には、可動梁がたるめばよく、小さな力で足りる。可動ミラーの第1端部に連結されている可動梁が、第1端部側支点の側から第2端部側支点を越えて伸びた部分で基板に固定されていると、小さな力で可動ミラーを第2端部側支点のまわりに揺動させることができる。
同様に、可動ミラーの第2端部に連結されている可動梁が、第2端部側支点の側から第1端部側支点を越えて伸びた部分で基板に固定されていると、小さな力で可動ミラーを第1端部側支点のまわりに揺動させることができる。
【0014】
相対運動可能に可動ミラーを基板に連結している連結部は、曲げ梁、捩れ梁、あるいは曲げと捩れの複合梁のいずれか、またはこれらを組み合わせて形成されていることが好ましい。
可動梁を用いることで、必要な相対運動に対する抵抗力が小さく、しかもそれ以外の相対変位に対しては抵抗力が大きい連結構造を実現することができる。
【0015】
前記したように、可動梁と基板の間にアクチュエータを設けてもよいが、可動ミラーと基板の間にアクチュエータを設けてもよい。後者の構造によると、光学装置の構造が単純化される。
この場合は、可動梁と可動ミラーを同一平面に配置してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学装置によると可動ミラーが両方向に揺動するために大きな揺動角度を得ることができる。光ビームの反射方向を大きく変化させることができる。
また、可動ミラーの裏面を支点で支えておいて揺動させる方式であることから、すなわち、てこの原理を利用することから、アクチュエータでの変位量が小さくても可動ミラーの揺動角度を大きくすることができる。
両者をともに得られることから、非常に大きな可動ミラーの揺動可能角度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
MEMSの材料に、シリコン系材料を用いることが好ましい。半導体装置の製造のために開発された各種の微細加工技術を流用することができる。特に、不純物を含む多結晶シリコンを用いることが好ましい。低抵抗な多結晶シリコンで可動ミラーあるいは可動梁を形成すると、多結晶シリコンによって可動側の電極を提供することができる。可動ミラーや可動梁に、可動側の電極を形成する必要をなくすことができる。
可動ミラーの反射面の形成方法については特に限定されない。反射面は、例えばシリコン層の上面に金属膜を形成したものであってもよい。あるいは、シリコン製の可動ミラー自体の上面を反射面としてもよい。
【0018】
アクチュエータの構成については特に限定されない。例えば間隔を隔てて向かい合う電極対の間に電圧差を印加することによって、静電引力を作用させてもよい。また、コイルに電流を流すことによって生じるローレンツ力を利用するものであってもよい。
本明細書で提供する光学装置を1つの光学素子とし、複数の光学素子を1次元又は2次元に配列してもよい。
【0019】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理しておく。
(特徴1)基板と可動ミラーと支持部と連結部は、シリコン系材料で形成されている。
(特徴2)可動ミラーと連結部は、多結晶シリコンで形成されている。
(特徴3)支持部は、基板の表面から伸びている支持柱で構成されている。
(特徴4)連結部は、可動梁で形成されている。
(特徴5)連結部を構成する梁は、可動ミラーと基板の間に形成されている。
(特徴6)連結部を構成する梁は、可動ミラーと同一平面に形成されている。
(特徴7)連結部を構成する梁は、アクチュエータに駆動力を加えて可動ミラーを揺動させると、梁の両端間距離が減少し、梁がたるむ関係を満たしている。
【実施例】
【0020】
(第1実施例)
図1(a)は、第1実施例の光学装置10の平面図を示す。図1(b)は、図1(a)のb−b線概略縦断面図を示す。図1(c)も、図1(a)のb−b線概略縦断面図を示しており、第1アクチュエータ30に吸引力を発生させて可動ミラー36の第1端部32を基板14に近づけた状態を示している。基板14は広く広がっており、図1(a)では図示していない。
【0021】
図1(b)に示すように、基板14には、第1支持壁20と第2支持壁22が形成されている。支持壁20,22の各々は、D3−D4方向に伸びている。第1支持壁20は、第2支持壁22のD1側に配置されている。また、基板14には、第1連結基部12と第2連結基部28が形成されている。第1連結基部12は、第1支持壁20よりもD1側に配置されており、第2連結基部28は、第2支持壁22よりもD2側に配置されている。
可動ミラー36は、平面視すると矩形状であり、第1支持壁20と第2支持壁22の間に跨っており、第1支持壁20よりD1側にも伸び、第2支持壁22よりD2側にも伸びている。可動ミラー36のD1側の端部を第1端部32といい、可動ミラー36のD2側の端部を第2端部40という。可動ミラー36は、第1端部32から第2端部40まで伸びている。可動ミラー36を平面視したときの形状は、円形、六角形等の多角形であってもよく、矩形に限られない。
【0022】
可動ミラー36の第1端部32と第1連結基部12の間に、第1可動梁44が差し渡されている。可動ミラー36の第2端部40と第2連結基部28の間に、第2可動梁46が差し渡されている。可動梁44,46は、いずれも幅が狭く形成されており、屈曲可能な柔軟性を備えている。可動梁44,46は、引っ張りばねとして機能する。可動梁44,46がばねとして働く結果、後記するアクチュエータによって可動ミラー36に外力が加えられない限り、可動ミラー36は、基板14と平行に位置する。すなわち、一対の支持壁20,22の頂面によって可動ミラー36の裏面が支えられる姿勢で安定する。
【0023】
図1(b)に示すように、第1支持壁20よりもD1側であり、第1端部32よりもD2側である範囲の基板14の上面に、第1基板側電極16が形成されている。可動ミラー36自体は、不純物が添加されている多結晶シリコンで形成されており、低抵抗である。可動ミラー36の電位は、制御可能である。そのために、第1基板側電極16と可動ミラー36の間に電位差を加えることができる。第1基板側電極16と可動ミラー36の間に電位差を加えると、第1基板側電極16に向かいあう範囲の可動ミラー36を第1基板側電極16に向けてひきつけることができる。第1基板側電極16とそれに向かい合う範囲の可動ミラー36によって第1アクチュエータ30が形成されている。
図1(c)は、第1アクチュエータ30を作動させることによって、第1アクチュエータ30が形成されている位置における可動ミラー36と基板14間の間隙を狭めた様子を示している。第1アクチュエータ30は、第1支持壁20のD1側に位置している。第1アクチュエータ30を作動させると、可動ミラー36の第1端部32が基板14に向けて接近する。その際に、第1支持壁20の頂面によって支えられている部分の可動ミラー36はそれ以上には基板14にむけて接近できないことから、第1支持壁20を支点にして揺動する。正確には、第1支持壁20の頂面のD1側の縁18を支点として揺動する。この結果、可動ミラー36の第2端部40は、基板14から離反する。また、可動ミラー36は、第2支持壁22の頂面からも離反する。
【0024】
図1(b)に示すように、第2支持壁22よりもD2側であり、第2端部40よりもD1側である範囲の基板14の上面に、第2基板側電極26が形成されている。前記したように、可動ミラー36自体は不純物が添加されている多結晶シリコンで形成されており、低抵抗である。可動ミラー36の電位は、制御可能である。そのために、第2基板側電極26と可動ミラー36の間に電位差を加えることができる。第2基板側電極26と可動ミラー36の間に電位差を加えると、第2基板側電極26に向かいあう範囲の可動ミラー36を第2基板側電極26に向けてひきつけることができる。第2基板側電極26とそれに向かい合う範囲の可動ミラー36によって第2アクチュエータ42が形成されている。
第2アクチュエータ42は、第2支持壁22のD2側に位置している。第2アクチュエータ42を作動させると、可動ミラー36の第2端部40が基板14に向けて接近する。その際に、第2支持壁22の頂面によって支えられている部分の可動ミラー36はそれ以上には基板14にむけて接近できないことから、可動ミラー36は第2支持壁22を支点にして揺動する。正確には、第2支持壁22の頂面のD2側の縁24を支点として揺動する。この結果、可動ミラー36の第1端部32は、基板14から離反する。また、可動ミラー36は、第1支持壁20の頂面からも離反する。その様子は図1(c)の左右を反転させたものであり、図示を省略する。
【0025】
第1アクチュエータ30によって可動ミラー36を反時計方向に回転させると、可動梁44,46の双方が引き伸ばされる。本実施例の場合、可動梁44,46のばね係数が、第1アクチュエータ30によって可動ミラー36を揺動するのを妨げない範囲に調整されている。第1アクチュエータ30によって可動ミラー36を反時計方向に回転させていた状態で第1アクチュエータ30に電圧を加えるのを中止すると、引き伸ばされていた可動梁44,46が自然形状に復帰する。この結果、可動ミラー36は、図1(c)の姿勢から図1(b)の姿勢に復帰する。また、可動ミラー36に作用する重力も、可動ミラー36が図1(c)の姿勢から図1(b)の姿勢に復帰するのを助ける。
【0026】
第2アクチュエータ42によって可動ミラー36を時計方向に回転させると、可動梁44,46の双方が引き伸ばされる。本実施例の場合、可動梁44,46のばね係数が、第2アクチュエータ42によって可動ミラー36を揺動するのを妨げない範囲に調整されている。第2アクチュエータ42によって可動ミラー36を時計方向に回転させていた状態で第2アクチュエータ42に電圧を加えるのを中止すると、引き伸ばされていた可動梁44,46が自然形状に復帰する。この結果、可動ミラー36は、揺動していた姿勢から図1(b)の姿勢に復帰する。また、可動ミラー36に作用する重力も、可動ミラー36が図1(b)の姿勢に復帰するのを助ける。
第1実施例の光学装置10は、可動ミラー36が2×θだけ揺動する。光ビームの反射方向を大きく変化させることができる。
【0027】
(第2実施例)
図2を参照して第2実施例の光学装置50を説明する。第1実施例の光学装置10と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0028】
第1実施例では、第1支持壁20と第2支持壁22によって支持部を構成していたが、第2実施例では、4本の支持柱19,21,23,25によって支持部を構成する。支持柱19,21の頂面の左端縁によって第1端部32側の支点18が確保され、支持柱23,25の頂面の右端縁によって第2端部40側の支点24が確保される。
支持柱の本数は4本に限定されない。支持柱19,21の間に一本の支持柱のみを配置し、支持柱23,25の間に一本の支持柱のみを配置してもよい。
第2実施例の連結部は、可動ミラー36の第1端部32に連結されている可動梁58と、可動梁58の他端を基板14に固定する第1連結基部56と、可動ミラー36の第2端部40に連結されている可動梁54と、可動梁54の他端を基板14に固定する第2連結基部52で構成されている。
第1アクチュエータ30を作動させて可動ミラー36の第1端部32を基板14に接近させると、可動ミラー36は第1端部32側の支点18のまわりに揺動し、第2端部40が基板14から大きく離反する。この結果、第2端部40に連結されている可動梁54が大きく変形する。
【0029】
図17は、可動ミラー36が支点18を中心に基板14に対して揺動する際の、可動梁54の動きを模式的に示している。添え字aは、可動ミラー36が基板14に平行な状態を示している。添え字bは、可動ミラー36が反時計方向にθだけ回転した状態を示している。支点18から可動ミラー36の第2端部40までの距離がrであり、支点18から可動梁54の連結基部52までの距離をxとしている。距離xは、連結基部52が支点18よりもD1側にあるときに正とする。すなわち、可動梁54が、第2端部40側から第1端部32側の支点18を越えて伸びた部分で、連結基部52を介して基板14に固定されている場合に、距離xが正であるとする。P52は可動梁54と連結基部52の連結点の位置を示す。P40は可動梁54と可動ミラー36の第2端部40との連結点の位置を示す。P40aは、揺動前の位置を示し、P40bは、可動ミラー36が支点18の周りに反時計方向にθだけ回転した後の位置を示す。
【0030】
P52からP40aまでの距離の自乗と、P52からP40bまでの距離の自乗の差をとると、式(1)に示す値となる。距離xが正である場合、右辺の値は正となる。可動梁54が、第2端部40側から第1端部32側の支点18を越えて伸びた部分で連結基部52を介して基板14に固定されている場合、可動ミラー36が支点18の周りに回転することによって可動梁54の両端間距離は短くなる。距離xがゼロであれば、可動ミラー36が支点18の周りに回転しても可動梁54の両端間距離は変わらない。距離xが負であれば、可動ミラー36が支点18の周りに回転することによって可動梁54の両端間距離は長くなる。
【0031】
第2実施例の場合、図2に示すように、可動梁54の連結基部52は、第1端部32側の支点18よりも第1端部32よりに位置している。すなわち、可動ミラー36の第2端部40に連結されている可動梁54は、第2端部40側の支点24の側から第1端部32側の支点18を越えて伸びた部分で、基板14に固定されている。
この関係にあると、可動ミラー36が基板14に平行であるときの連結基部52と第2端部40の間の距離と、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心にして反時計方向に回転したときの連結基部52と第2端部40の間の距離を比較すると、式(1)に示したように、前者よりも後者は短くなる。すなわち、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心にして反時計方向に回転するときに、可動梁54が引き伸ばされることが無く、逆にたるむことになる。
【0032】
可動梁54を引き伸ばすのに要する力は比較的に大きいのに対し、可動梁54をたるませるのには力が要らない。第2実施例の場合、可動梁54を引き伸ばしながら可動ミラー36を揺動させるのではく、可動梁54をたるませながら可動ミラー36を揺動させるので、可動ミラー36を揺動させるのに要する第1アクチュエータ30に要求される力は小さくてよい。
仮に連結基部52が第1端部32側の支点18よりも第2端部40側にあると、可動ミラー36が基板14に平行であるときの連結基部52と第2端部40の間の距離と、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心にして反時計方向に回転したときの連結基部52と第2端部40の間の距離を比較すると、前者よりも後者が長くなる。すなわち、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心にして反時計方向に回転するときに、可動梁54が引き伸ばされることなる。この場合は、可動梁54を引き伸ばしながら可動ミラー36を揺動させる必要があるので、可動ミラー36を揺動させるのに要する第1アクチュエータ30に要求される力が大きくなってしまう。
【0033】
図17に示した距離xがゼロの場合、すなわち、連結基部52と可動梁54の連結点P52が、第1端部32側の支点18を通過してD3−D4方向に伸びる直線上にあると、可動ミラー36が支点18の周りに回転するときに、可動梁54の長さが変化しないはずである。しかしながら、可動梁54は、連結基部52に対して揺動自在でなく、また可動ミラー36の第2端部40に対しても揺動自在でない。可動ミラー36が第1端部32側の支点18の周りに回転するときに、可動梁54は、図2(c)の断面内で波打つように撓む。可動梁54が波打つように撓めば、可動梁の両端を結ぶ直線距離が短くなろうとする。連結基部52と可動梁54の連結点P52が、支点18を通過してD3−D4方向に伸びる直線上にあると、可動梁54の両端を結ぶ直線距離は減少しようとする。しかしながら、可動梁54の両端は、基板等によって拘束されており、短くなることができない。このことは、実質的には可動梁54を引き伸ばしながら可動ミラー36が揺動することになる。第2実施例の場合、距離xが正に設定されており、可動梁54が波打つように撓むことによって両端間距離が短くなろうとすることを加味しても、可動ミラー36が揺動することによって可動梁54がたるむ関係を実現している。
【0034】
図17の(2)式は、可動梁54に生じる歪率を示し、(3)式は距離xで微分した式を示している。(3)式から明らかに、r=xのときに、歪率は極大値を示す。距離xは、距離r以下の正の値に設定することが好ましい。
【0035】
図2に示すように、可動ミラー36の第1端部32に連結されている可動梁58の連結基部56は、第2端部40側の支点24よりも第2端部40よりに位置している。すなわち、可動ミラー36の第1端部32に連結されている可動梁58は、第1端部32側の支点18の側から第2端部40側の支点24を越えて伸びた部分で、基板14に固定されている。
この関係にあると、可動ミラー36が基板14に平行であるときの連結基部56と第1端部32の間の距離と、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心にして時計方向に回転したときの連結基部52と第1端部32の間の距離を比較すると、前者よりも後者は短くなる。すなわち、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心にして時計方向に回転するときに、可動梁58が引き伸ばされることが無く、逆にたるませることになる。
【0036】
第2実施例の場合、可動梁58を引き伸ばしながら可動ミラー36を揺動させるのではなく、可動梁58をたるませながら可動ミラー36を揺動させるので、可動ミラー36を揺動させるのに要する第2アクチュエータ42に要求される力は小さくてよい。
【0037】
(第3実施例)
図3を参照して第3実施例の光学装置60を説明する。第2実施例の光学装置50と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第2実施例との相違点を中心に説明する。
【0038】
第3実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32に連結されている可動梁68が、第1端部32よりもD1側にはみ出ていない。このために、図3(c)に示すように、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近する側に揺動するときに、第1端部32よりも可動梁68の方が先に基板14に当接してそれが揺動限界角を決めることが無い。第1端部32が基板14に当接するまで揺動させることができる。
同様に、可動ミラー36の第2端部40に連結されている可動梁64が、第2端部40よりもD2側にはみ出ていない。このために、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近する側に揺動するときに、第2端部40よりも可動梁64の方が先に基板14に当接してそれが揺動限界角を決めることが無い。第2端部40が基板14に当接するまで揺動させることができる。
【0039】
第3実施例の場合、第1端部32に連結されている可動梁68が第1端部32よりも第2端部40側に留まっており、第2端部40に連結されている可動梁64が第2端部40よりも第1端部32側に留まっているために、可動梁が揺動限界角を制限することがなく、大きな揺動可能角を確保することができる。
また、第3実施例の場合、1個の支持台17によって支持部が形成されている。支持部が複数個に分割されていなくても、第1端部32側の支点18と、第2端部40側の支点24を提供することができる。
【0040】
(第4実施例)
図4を参照して第4実施例の光学装置70を説明する。第2実施例の光学装置50と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第2実施例との相違点を中心に説明する。
【0041】
第4実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32に2本の可動梁82,86が連結されている。可動梁82は、第1端部32のD3側の端部近傍に連結され、可動梁86は、第1端部32のD4側の端部近傍に連結されている。可動梁82,86の連結基部80,84は、第2端部40側の支点24よりも第2端部40側にある。可動梁82,84は、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心として揺動する際にたるむ関係にある。2本の可動梁82,86を第1端部32に連結しておいても、可動梁82,86が第1端部32の変位を妨げることが無い。
【0042】
同様に、可動ミラー36の第2端部40に2本の可動梁74,78が連結されている。可動梁78は、第2端部40のD3側の端部近傍に連結され、可動梁78は、第2端部40のD4側の端部近傍に連結されている。可動梁74,78の連結基部72,76は、第1端部32側の支点18よりも第1端部32側にある。可動梁74,78は、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心として揺動する際にたるむ関係にある。2本の可動梁74,78を第2端部40に連結しておいても、可動梁74,78が第2端部40の変位を妨げることが無い。
【0043】
第4実施例の光学装置70では、4本の可動梁74,78,82,86によって可動ミラー36を基板14に連結しているために、平面視したときに可動ミラー36と基板14の位置関係が安定する。振動等に対して耐性が高い光学装置を実現することができる。
【0044】
(第5実施例)
図5を参照して第5実施例の光学装置90を説明する。第4実施例の光学装置70と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第4実施例との相違点を中心に説明する。
【0045】
第5実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32に連結されている可動梁102,106が、第1端部32よりもD1側にはみ出ていない。このために、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近する側に揺動するときに、第1端部32よりも可動梁102,106の方が先に基板14に当接してそれが揺動限界角を決めることが無い。第1端部32が基板14に当接するまで揺動させることができる。
同様に、可動ミラー36の第2端部40に連結されている可動梁94,98が、第2端部40よりもD2側にはみ出ていない。このために、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近する側に揺動するときに、第2端部40よりも可動梁94,98の方が先に基板14に当接してそれが揺動限界角を決めることが無い。第2端部40が基板14に当接するまで揺動させることができる。
【0046】
第5実施例の場合、4本の可動梁94,98,102,106によって可動ミラー36を基板14に連結しているために、平面視したときに可動ミラー36と基板14の位置関係が安定する。振動等に対して耐性が高い光学装置を実現することができる。また、可動ミラー36より先に、可動梁94,98,102,106の方が先に基板14に当接してそれが揺動限界角を決めることが無い。可動ミラー36が基板14に当接するまで大きく揺動させることができる。
【0047】
(第6実施例)
図6を参照して第6実施例の光学装置110を説明する。第4実施例の光学装置70と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第4実施例との相違点を中心に説明する。
【0048】
第6実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32に2本の可動梁118,120が連結されている。可動梁118は、第1端部32のD4側の端部近傍に連結され、可動梁120は、第1端部32のD3側の端部近傍に連結されている。可動梁118,122の連結基部122は、第2端部40側の支点24よりも第2端部40側にある。可動梁118,120は、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心として揺動する際にたるむ関係にある。2本の可動梁118,120を第1端部32に連結しておいても、可動梁118,120が第1端部32の変位を妨げることが無い。
【0049】
同様に、可動ミラー36の第2端部40に2本の可動梁112,114が連結されている。可動梁112は、第2端部40のD4側の端部近傍に連結され、可動梁114は、第2端部40のD3側の端部近傍に連結されている。可動梁112,114の連結基部116は、第1端部32側の支点18よりも第1端部32側にある。可動梁112,114は、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心として揺動する際にたるむ関係にある。2本の可動梁112,114を第2端部40に連結しておいても、可動梁112,114が第2端部40の変位を妨げることが無い。
【0050】
第6実施例の光学装置110では、4本の可動梁112,114,118,120によって可動ミラー36を基板14に連結しているために、平面視したときに可動ミラー36と基板14の位置関係が安定する。振動等に対して耐性が高い光学装置を実現することができる。
【0051】
(第7実施例)
図7を参照して第7実施例の光学装置130を説明する。第2実施例の光学装置50と同じ部材には、同じ参照番号を付し、重複説明を省略する。以下では第2実施例との相違点を中心に説明する。
【0052】
第7実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32には可動梁が連結されていない。それに対して、第2端部40には可動梁54が連結されている。
一本の可動梁54しか用いなくても、その可動梁54によって、可動ミラー36と基板14の平面視したときの位置関係を一定に維持し、第1アクチュエータ30あるいは第2アクチュエータ42に電圧を印加するのを中止すると、可動梁54が第2端部40を揺動前の高さに戻す力を発揮し、可動ミラー36の裏面が支持壁20と支持壁22の双方に当接する姿勢に復帰させる。一本の可動梁54によって可動ミラー36を基板14に連結することによって初期の作用を得ることができる。
【0053】
第7実施例の光学装置130の場合、第2端部40側の支点24を中心して第1端部32を基板14から離反させる向きに揺動させる場合、可動梁が可動ミラーの揺動を妨げることが無い。
【0054】
(第8実施例)
図8を参照して第8実施例の光学装置140を説明する。第7実施例の光学装置130との相違点を中心に説明する。
第8実施例の場合、可動ミラー36の第1端部32には可動梁が連結されていない。それに対して、第2端部40には可動梁144,148が連結されている。
第8実施例の光学装置140の場合、第2端部40側の支点24を中心して第1端部32を基板14から離反させる向きに揺動させる場合、可動梁が可動ミラーの揺動を妨げることが無い。
また2本の可動梁144,148を用いるために、可動ミラー36と基板14を平面視したときの位置関係をより一定に維持できる。
【0055】
(第9実施例)
図9を参照して第9実施例の光学装置150を説明する。第1実施例から第8実施例では、可動ミラー36と基板14の間にアクチュエータ30,42が設けられている。これに対して、以下に説明する実施例では、可動梁と基板の間にアクチュエータが設けられている。また、以下の実施例では、基板14に対して可動ミラー36を所定の相対運動を許容するように連結する可動梁が、基板と可動ミラーの間を伸びている。
【0056】
第9実施例の光学装置150は、基板14の層と、可動梁が伸びている中間層と、可動ミラー36の層を備えている。図9(a)は可動ミラー36の層を平面視した図を示し、図9(b)は中間層を平面視した図を示している。図9(c)は図9(a)または(b)のc−c線断面図を示している。
【0057】
図9(c)等に示されているように、基板14の表面から、4本の支持柱19,21,23,25が伸びている。支持柱19,21,23,25は中間層を貫通して、可動ミラー36の裏面にまで伸びている。支持柱19,21のD1側には第1基板側電極16が固定されており、支持柱23,25のD2側には第2基板側電極26が固定されている。
支持柱19の中間高さから可動梁151,152,154が伸びている。可動梁151はD4方向に伸び、可動梁152はD2方向に伸び、可動梁154はD3方向に伸びている。可動梁154は、可動ミラー36の第2端部40のD2側を第2端部40と平行に伸びている。可動梁154のD3側の端部から基部156が立ち上がっており、可動梁154のD4側の端部から基部158が立ち上がっている。支持柱19と、可動梁151,152,154は導電性の多結晶シリコンで形成されており、可動梁154の電位を制御することができる。
【0058】
支持柱25の中間高さから可動梁159,160,162が伸びている。可動梁159はD3方向に伸び、可動梁160はD1方向に伸び、可動梁162はD4方向に伸びている。可動梁162は、可動ミラー36の第1端部32のD1側を第1端部32と平行に伸びている。可動梁162のD3側の端部から基部166が立ち上がっており、可動梁162のD4側の端部から基部164が立ち上がっている。支持柱25と、可動梁159,160,162は導電性の多結晶シリコンで形成されており、可動梁162の電位を制御することができる。
図9(a)に示すように、一対の基部156,158の間を可動梁168が伸びている。可動梁168の中間点からD1方向に可動梁170が伸びている。可動梁170の先端は、可動ミラー36の第2端部40の中間点に連結されている。一対の基部164,166の間を可動梁172が伸びている。可動梁172の中間点からD2方向に可動梁174が伸びている。可動梁174の先端は、可動ミラー36の第1端部32の中間点に連結されている。
【0059】
可動梁162の下面に向かうあう範囲に、第1基板側電極16が形成されている。第1基板側電極16と可動梁162によって第1アクチュエータ30が形成されている。可動梁154の下面に向かうあう範囲に、第2基板側電極26が形成されている。第2基板側電極26と可動梁154によって第2アクチュエータ42が形成されている。第1アクチュエータ30にも第2アクチュエータ42にも駆動電圧を印加しない状態では、可動ミラー36の裏面が4本の支持柱19,21,23,25の上面に当接して支持されている。
【0060】
第1アチュエータ30は、支持柱19,21よりも第1端部32側に位置しており、第1アクチュエータ30に吸引力を発揮させると、可動ミラー36のうち、支持柱19,21よりも第1端部32側の部分が基板14に向けて接近する。可動ミラー36は、支持柱19,21の頂面の第1端部32側の縁18を支点にして揺動する。支持柱19,21の頂面の第1端部32側の縁18が、第1端部32側の支点18を提供する。
【0061】
第2アチュエータ42は、支持柱23,25よりも第2端部40側に位置しており、第2アクチュエータ42に吸引力を発揮させると、可動ミラー36のうち、支持柱23,25よりも第2端部40側の部分が基板14に向けて接近する。可動ミラー36は、支持柱23,25の頂面の第2端部40側の縁24を支点にして揺動する。支持柱23,25の頂面の第2端部40側の縁24が、第2端部40側の支点24を提供する。
【0062】
一連の可動梁159,160,162,172,174は、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動を許容しつつ、可動ミラー36の第1端部32が基板14に平行な面内で移動することを禁止する。一連の可動梁159,160,162,172,174は、捩れと曲げを複合した動き方をすることによって、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動を許容する。一連の可動梁159,160,162,172,174は、可動ミラー36の第1端部32が基板14に平行な面内で移動することに対しては強い抵抗力を与え、第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動にはほとんど抵抗力を与えない。
【0063】
一連の可動梁151,152,154,168,170は、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動を許容しつつ、可動ミラー36の第2端部40が基板14に平行な面内で移動することを禁止する。一連の可動梁151,152,154,168,170は、捩れと曲げを複合した動き方をすることによって、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動を許容する。一連の可動梁151,152,154,168,170は、可動ミラー36の第2端部40が基板14に平行な面内で移動することに対しては強い抵抗力を与え、第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動にはほとんど抵抗力を与えない。
【0064】
光学装置150では、可動ミラー36の裏面に可動ミラー36を基板14に連結しておく可動梁が隠れており、可動ミラー36同士を近接して配置することができる。限られた面積のなかに効率よく可動ミラー36群を配置することができる。
光学装置150では、支持柱19,25が、連結基部を兼用しており、構造がシンプルである。
【0065】
(第10実施例)
図10を参照して第10実施例の光学装置180を説明する。以下では、第9実施例との相違点のみを説明する。
【0066】
光学装置180では、支持柱23と可動梁162の間に、可動梁182,184が付設されている。可動梁162に対して可動梁159,160と、可動梁182,184が連結されているために、平面視したときの可動梁162の位置が安定する。
同様に、光学装置180では、支持柱21と可動梁154の間に、可動梁186,188が付設されている。可動梁154に対して可動梁151,152と、可動梁186,188が連結されているために、平面視したときの可動梁154の位置が安定する
光学装置180では、平面視したときの可動梁162,154の位置が安定し、平面視したときの可動ミラー36の位置が安定する。光学装置180に振動が加えられても可動ミラー36の位置がずれることがない。
【0067】
(第11実施例)
図11を参照して第11実施例の光学装置190を説明する。以下では、第9実施例との相違点のみを説明する。
光学装置190では、可動梁162を可動梁196,194で支持している。可動梁194のD2側の端部は、連結基部192で基板14に固定されている。可動ミラー36の第1端部32を支持している可動梁194は、第1端部32側から第2端部40側の支点24を越えてD2側に伸びており、第2端部40側の支点24よりもD2側で基板14に連結されている。
【0068】
第1端部32を支える可動梁194が第2端部40側の支点24よりもD2側で基板14に連結されていると、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心に揺動すると、可動梁194がたるむ関係が得られる。可動梁194が、可動ミラー36の第1端部32が揺動することを妨げない。
【0069】
光学装置190では、可動梁154を可動梁200,202で支持している。可動梁200のD1側の端部は、連結基部198で基板14に固定されている。可動ミラー36の第2端部40を支持している可動梁200は、第2端部40側から第1端部32側の支点18を越えてD1側に伸びており、第1端部32側の支点18よりもD1側で基板14に連結されている。
【0070】
第2端部40を支える可動梁200が第1端部32側の支点18よりもD1側で基板14に連結されていると、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心に揺動すると、可動梁200がたるむ関係が得られる。可動梁200が、可動ミラー36の第2端部40が揺動することを妨げない。
【0071】
(第12実施例)
図12を参照して第12実施例の光学装置210を説明する。以下では、第9実施例との相違点のみを説明する。
光学装置210では、可動梁162を可動梁218,216,214で支持している。可動梁214のD2側の端部は、連結基部212で基板14に固定されている。可動ミラー36の第1端部32を支持している可動梁214は、第1端部32側から第2端部40側の支点24を越えてD2側に伸びており、第2端部40側の支点24よりもD2側で基板14に連結されている。
【0072】
第1端部32を支える可動梁214が第2端部40側の支点24よりもD2側で基板14に連結されていると、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心に揺動すると、可動梁218,216,214がたるむ関係が得られる。可動梁218,216,214が、可動ミラー36の第1端部32が揺動することを妨げない。
また、可動梁216はD3−D4方向に長く伸びており、可動ミラー36が第2端部40側の支点24を中心に揺動するときに、しなやかに曲がり、しなやかに捩れる。可動梁218,216,214がしなやかに曲がって捩れるために、第2アクチュエータ40の吸引力が小さくても可動ミラー36が大きく揺動する。
【0073】
光学装置190では、可動梁154を可動梁226,224,222で支持している。可動梁222のD1側の端部は、連結基部220で基板14に固定されている。可動ミラー36の第2端部40を支持している可動梁222は、第2端部40側から第1端部32側の支点18を越えてD1側に伸びており、第1端部32側の支点18よりもD1側で基板14に連結されている。
【0074】
第2端部40を支える可動梁222が第1端部32側の支点18よりもD1側で基板14に連結されていると、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心に揺動すると、可動梁222,224,226がたるむ関係が得られる。可動梁222,224,226が、可動ミラー36の第2端部40が揺動することを妨げない。
【0075】
また、可動梁224はD3−D4方向に長く伸びており、可動ミラー36が第1端部32側の支点18を中心に揺動するときに、しなやかに曲がり、しなやかに捩れる。可動梁222,224,226がしなやかに曲がって捩れるために、第1アクチュエータ30の吸引力が小さくても可動ミラー36が大きく揺動する。
【0076】
(第13実施例)
図13を参照して第13実施例の光学装置230を説明する。以下では、第9実施例との相違点のみを説明する。
連結基部244から可動梁246,248,250,252が伸びている。可動梁246はD4方向に伸び、可動梁248は45度方向に伸び、可動梁250はD2方向に伸び、可動梁252はD3方向に伸びている。可動梁252は、可動ミラー36の第2端部40のD2側を第2端部40と平行に伸びている。可動梁252のD3側の端部から基部232が立ち上がっており、可動梁252のD4側の端部から基部236が立ち上がっている。
【0077】
連結基部254から可動梁256,258,260,262が伸びている。可動梁250はD3方向に伸び、可動梁258は45度方向に伸び、可動梁260はD1方向に伸び、可動梁262はD4方向に伸びている。可動梁262は、可動ミラー36の第1端部32のD1側を第1端部32と平行に伸びている。可動梁262のD3側の端部から基部238が立ち上がっており、可動梁262のD4側の端部から基部242が立ち上がっている。
【0078】
第1アチュエータ30は、支持柱19,21よりも第1端部32側に位置しており、第1アクチュエータ30に吸引力を発揮させると、可動ミラー36のうち、支持柱19,21よりも第1端部32側の部分が基板14に向けて接近する。可動ミラー36は、支持柱19,21の頂面の第1端部32側の縁18を支点にして揺動する。支持柱19,21の頂面の第1端部32側の縁18が、第1端部32側の支点18を提供する。
【0079】
第2アチュエータ42は、支持柱23,25よりも第2端部40側に位置しており、第2アクチュエータ42に吸引力を発揮させると、可動ミラー36のうち、支持柱23,25よりも第2端部40側の部分が基板14に向けて接近する。可動ミラー36は、支持柱23,25の頂面の第2端部40側の縁24を支点にして揺動する。支持柱23,25の頂面の第2端部40側の縁24が、第2端部40側の支点24を提供する。
【0080】
一連の可動梁256,258,260,262,240,241は、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動を許容しつつ、可動ミラー36の第1端部32が基板14に平行な面内で移動することを禁止する。一連の可動梁256,258,260,262,240,241は、捩れと曲げを複合した動き方をすることによって、可動ミラー36の第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動を許容する。一連の可動梁256,258,260,262,240,241は、可動ミラー36の第1端部32が基板14に平行な面内で移動することに対しては強い抵抗力を与え、第1端部32が基板14に接近または離反する相対運動にはほとんど抵抗力を与えない。
【0081】
図14の(a)は、第2アクチュエータ42に吸引力を加えて可動ミラー36の第1端部32を基板14から離反させたときの可動梁256,260の姿勢を示している。可動梁256が捩じられながら上方に持ち上げられる。可動梁256がしなやかに変形するので、可動ミラー36は大きく揺動することができる。
【0082】
一連の可動梁、246,248,250,252,234,235は、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動を許容しつつ、可動ミラー36の第2端部40が基板14に平行な面内で移動することを禁止する。一連の可動梁246,248,250,252,234,235は、捩れと曲げを複合した動き方をすることによって、可動ミラー36の第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動を許容する。一連の可動梁246,248,250,252,234,235は、可動ミラー36の第2端部40が基板14に平行な面内で移動することに対しては強い抵抗力を与え、第2端部40が基板14に接近または離反する相対運動にはほとんど抵抗力を与えない。
【0083】
図14の(b)は、第1アクチュエータ30に吸引力を加えて可動ミラー36の第2端部40を基板14から離反させたときの可動梁246,250の姿勢を示している。可動梁246が捩じられながら上方に持ち上げられる。可動梁246がしなやかに変形するので、可動ミラー36は大きく揺動することができる。
図15に示すように、支持柱21,23は省略することができる。2本の支持柱19,25で、可動ミラー36の支持部を構成してもよい。
【0084】
(第14実施例)
図16を参照して第14実施例の光学装置270を説明する。以下では、第9実施例と第13実施例との相違点のみを説明する。
光学装置270では、可動梁276が第13実施例の可動梁246よりもD3−D4方向に長く伸び、可動梁154が第13実施例の可動梁252よりもD3−D4方向に長く伸びている。同様に、可動梁286が第13実施例の可動梁256よりもD3−D4方向に長く伸び、可動梁162が第13実施例の可動梁262よりもD3−D4方向に長く伸びている。可動梁154,162よりも上部の構造は、第9実施例と同様であり、重複説明を省略する。
【0085】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)は、第1実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、(a)のb−b線縦断面図を示す。(c)は、第1アクチュエータが吸引力を発生したときの縦断面図を示す。
【図2】(a)は、第2実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、(a)のb−b線縦断面図を示す。(c)は、第1アクチュエータが吸引力を発生したときの縦断面図を示す。
【図3】(a)は、第3実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、(a)のb−b線縦断面図を示す。(c)は、第1アクチュエータが吸引力を発生したときの縦断面図を示す。
【図4】第4実施例の光学装置の平面図を示す。
【図5】第5実施例の光学装置の平面図を示す。
【図6】第6実施例の光学装置の平面図を示す。
【図7】第7実施例の光学装置の平面図を示す。
【図8】第8実施例の光学装置の平面図を示す。
【図9】(a)は、第9実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図10】(a)は、第10実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図11】(a)は、第11実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図12】(a)は、第12実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図13】(a)は、第13実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図14】(a)(b)は、第13実施例の光学装置の動作を示す。
【図15】第13実施例の変形例の平面図を示す。
【図16】(a)は、第14実施例の光学装置の平面図を示す。(b)は、可動梁層の平面図を示す。(c)は、(a)(b)のc-c線縦断面図を示す。
【図17】可動ミラーの揺動時に生じる可動梁の長さの変化を示す。
【符号の説明】
【0087】
10:光学装置
12;連結基部
14:基板
16:第1基板側電極
18:第1端部側の支点
20:支持壁
22:支持壁
24:第2端部側の支点
26:第2基板側電極
28:連結基部
30:第1アクチュエータ
32:第1端部
36:可動ミラー
40:第2端部
42:第2アクチュエータ
44:第1可動梁
46:第2可動梁
θ:揺動角度
17:支持台
19,21,23,25:支持柱
52,56,62,66,72,76、80,84,92,96,100,104,116,122,142,146:連結基部
54,58,64,68,74,78,82,86,112,114,118,120,144,148:可動梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの反射方向を切換える光学装置であり、
基板と可動ミラーと支持部とアクチュエータと連結部を備えており、
前記可動ミラーは、前記光学装置を平面視したときに、第1端部から第2端部にまで伸びており、
前記支持部は、前記可動ミラーの前記基板側の面に当接し、前記可動ミラーの第1端部が基板に接近して第2端部が基板から離反する向きに揺動する際の支点を提供する第1端部側支点と、前記可動ミラーの第1端部が基板から離反して第2端部が基板に接近する向きに揺動する際の支点を提供する第2端部側支点を備えており、
前記アクチュエータは、前記可動ミラーの前記第1端部と前記第2端部のうちの任意の一方を選択し、選択した側の前記可動ミラーの端部を基板側に近づけ、
前記連結部は、下記の相対運動:すなわち
(1) 可動ミラーが第1端部側支点を中心にして第2端部側支点から離反する向きに揺動し
(2) 可動ミラーが第2端部側支点を中心にして第1端部側支点から離反する向きに揺動する相対運動を許容する態様で前記可動ミラーを前記基板に連結していることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記相対運動を許容する可動梁を備えていることを特徴とする請求項1の光学装置。
【請求項3】
前記可動梁が、前記基板と前記可動ミラーの間を伸びていることを特徴とする請求項2の光学装置。
【請求項4】
前記アクチュエータが、前記可動梁と前記基板の間に設けられていることを特徴とする請求項3の光学装置。
【請求項5】
前記可動ミラーの第1端部に連結されている可動梁は、前記第1端部側支点の側から前記第2端部側支点を越えて伸びた部分で前記基板に固定されており、
前記可動ミラーの第2端部に連結されている可動梁は、前記第2端部側支点の側から前記第1端部側支点を越えて伸びた部分で前記基板に固定されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかの1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記可動梁が、曲げ梁、捩れ梁、曲げと捩れの複合梁のいずれかであることを特徴とする請求項2から5のいずれかの1項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記アクチュエータが、前記可動ミラーと前記基板の間に設けられていることを特徴とする請求項1または2の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−49191(P2010−49191A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215642(P2008−215642)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】