説明

光学装置

【課題】エレクトロウェッティング効果を利用した光学装置においてメモリー性を実現する。
【解決手段】光学装置は、対向配置された第1基板11及び第2基板12と、第1基板と第2基板の間に設けられた隔壁18と、第1基板の一面側に設けられており、少なくとも一部が平面視において隔壁に囲まれた領域と重なる第1電極13と、第2基板の一面側に設けられており、各々が隔壁に囲まれた領域を挟んで第1電極と対向配置された第2電極14及び第3電極15と、第2基板の一面側に設けられており、第2電極及び第3電極を覆う平滑層16と、隔壁に囲まれた領域に配置されており、相溶しない第1流体19及び第2流体20を備える。第1流体は極性又は導電性を有する液状体からなり、第2流体は液晶性材料20aを含んだ液状体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の位置変化を利用して光を制御する光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2007−531917号公報(特許文献1)には、エレクトロウェッティング効果に基づくディスプレイデバイスが開示されている。このディスプレイデバイスは、それぞれが電極を有する2つの基板間に、互いに混ざり合わない2つの流体を配置した構造を備えており、一方の流体として導電性または極性を有するものが用いられる。このディスプレイデバイスでは、各基板の電極間に電圧を印加することにより、導電性または極性を有する流体の濡れ性を電気的に制御することができる。したがって、例えば2つの流体の一方を着色して他方を透明としておけば、各流体の移動後の状態に応じて各流体を透過する光の強度または各流体により反射される光の強度を制御することができる。2つの流体としては、一方の流体として染料を含んだオイル、他方の流体として水などが例示されている。このようなエレクトロウェッティング効果に基づくディスプレイデバイスは、反射型表示と透過型表示のいずれにも対応でき、反射型表示に用いた場合には紙媒体と同程度の反射率(50%程度)とコントラスト比を実現可能であり、かつスイッチング速度が比較的速い(例えば10ミリ秒以下)という長所をもっている。
【0003】
ところで、上述した先行例においては、流体の位置を電気的に制御した後、その状態を保持するためには常に駆動電流を与えておく必要があった。すなわち、流体の移動後の状態に関してメモリー性がなかった。このため、例えばいわゆる電子ペーパー等の超低消費電力を求められるような用途には使いにくいという不都合を生じる。また、メモリー性がないことから、先行例の技術をドットマトリクス型の表示デバイスに適用する場合には各画素に薄膜トランジスタなどのスイッチング素子を設ける必要があり、構造の簡素化が難しいという不都合も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−531917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、エレクトロウェッティング効果を利用した光学装置においてメモリー性を実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の光学装置は、(a)対向配置された第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた隔壁と、(c)前記第1基板の一面側に設けられており、少なくとも一部が平面視において前記隔壁に囲まれた領域と重なる第1電極と、(d)前記第2基板の一面側に設けられており、各々が前記隔壁に囲まれた領域を挟んで前記第1電極と対向配置された第2電極及び第3電極と、(e)前記第2基板の一面側に設けられており、前記第2電極及び前記第3電極を覆う平滑層と、(f)前記隔壁に囲まれた領域に配置されており、相溶しない第1流体及び第2流体を備え、(g)前記第1流体は極性又は導電性を有する液状体からなり、前記第2流体は液晶性材料を含んだ液状体からなる、光学装置である。
【0007】
上記の構成によれば、第1電極と第2電極の間、または第1電極と第3電極の間に電圧を印加することにより第1流体と第2流体をそれぞれ移動させた後に、その状態を維持することが可能となる。すなわち、エレクトロウェッティング効果を利用した光学装置においてメモリー性を実現することが可能となる。その理由は、液晶性材料の有する比較的高い粘性によるものと考えられる。また別の理由として、液晶分子は細長い分子形状をしており分子同士が揃って並ぼうとする性質(分子配向性)を有しており、流れが止まった状態ではその位置から動きにくくなるという性質を有している。これらの性質によりメモリー性を実現したと考えられる。
【0008】
上記の光学装置においては、第2流体が色素(例えば二色性色素)を含有することも好ましい。またこの場合に、第2流体がカイラル材を含有することが更に好ましい。二色性色素は液晶分子同様に長細い形状をしており、周囲の液晶分子の配向状態に応じ同様に配向する。液晶分子がねじられていない配向状態(カイラル材を添加していない状態)では二色性色素が並んでいる方向の偏光は効率よく着色できるが、それからずれた偏光は着色しにくい。カイラル材を添加することによって液晶分子とともに二色性色素もねじられた配向状態を与えることにより、広い範囲の偏光角度の偏光を効率よく着色できるようになる。全ての角度の偏光に着色を行う場合、原理上180°のねじれが必要となる。この場合、カイラル材添加量の指標となるd/p値は0.5である。ねじれ角度を大きく設定しすぎた場合は液晶分子がフォーカルコニック配向を生じる。フォーカルコニック配向が生じると偏光の着色に関し効率が低下するため好ましくない。使用材料などにより一意には決まらないが、概ねd/p値で2.0を超えないことが好ましい。
【0009】
それにより、第1流体と第2流体の透過率、反射率、色彩あるいは輝度の差を容易に加減することが可能となる。
【0010】
上記の光学装置においては、第1流体が水であることも好ましい。
【0011】
それにより、低コストで安定性に優れた第1流体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の光学装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】光学装置の一部の構成要素について模式的に示した平面図である。
【図3】光学装置の動作状態を説明するための模式的な断面図である。
【図4】実施例1の光学装置の観察像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態の光学装置の構造を模式的に示す断面図である。また、図2は、光学装置の一部の構成要素について模式的に示した平面図である。各図に示す光学装置は、第1基板(上側基板)11、第2基板(下側基板)12、第1電極13、第2電極14、第3電極15、平滑層16、遮光層(光吸収層)17、隔壁18、第1流体19、第2流体20を含んで構成されている。
【0015】
第1基板11と第2基板12は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、上側基板11と下側基板12は、第2電極14と第3電極15のそれぞれが第1電極13と対向するようにして、所定の間隙(例えば6μm程度)を設けて貼り合わされている。第1基板11と第2基板12の間隙は両基板間に設けられた隔壁18によって保持される。
【0016】
第1電極13は、第1基板11の一面側に設けられている。また、第2電極14と第3電極15は、第2基板12の一面側に設けられている。これらの第1電極13、第2電極14並びに第3電極15は、例えばインジウム錫酸化物膜(ITO膜)などの透明導電膜を所定形状にパターニングすることによって形成されている。図2に示すように、第2電極14と第3電極15は、例えばストライプ状に形成されており、それぞれ、少なくとも一部が第1電極13と対向するように配置されている。
【0017】
平滑層16は、第2電極14および第3電極15を覆うようにして第2基板12の一面側に設けられている。この平滑層16は、少なくとも表面側に撥水性(疎水性)を有しており、さらに好ましくは絶縁性を有する。具体的には、平滑層16は、例えば絶縁膜とこれに積層された撥水膜を有する。絶縁膜としては、例えばポリイミド系樹脂からなる膜が好適であり、撥水膜としては、例えばポリテトラフルオロエチレン系材料からなる膜が好適である。
【0018】
遮光層17は、第1基板11の一面側、詳細には第1電極13の上側に設けられている。この遮光層17は、少なくとも、平面視において隔壁18に囲まれた領域内(図2参照)において第1電極13と第3電極15が重なる領域に配置されており、当該領域を遮光する。遮光層17としては、例えば、ブラックカラーフィルタ、アルミニウム膜あるいはモリブデン膜などが好適に用いられる。
【0019】
隔壁18は、第1流体19および第2流体20を保持するための空間を画定するものであり、例えば図2に示すように1つの区画が平面視において略矩形状となるようにして第1基板11と第2基板12の間に設けられている。この隔壁18は、例えば光硬化性樹脂を用いて形成されている。隔壁18によって画定された1つの領域(区画)には、図2に示すように第2電極14、第3電極15のそれぞれの少なくとも一部が配置され、かつ第1電極13の少なくとも一部が配置される。別言すれば、第1電極13と第2電極14並びに第3電極15は、隔壁18によって画定される1つの領域を挟んで対向配置されている。
【0020】
第1流体19は、極性または導電性を有し、かつ透光性を有する液状体であり、第1基板11と第2基板12の間の隔壁18によって画定された領域に配置されている。この第1流体19としては、例えば水(純水)が好適に用いられる。図1に示す例では、第1流体19は第2流体20よりも上側(第1基板11側)に配置されているが、これら相互の配置状態は第1電極13、第2電極14および第3電極15の相互間における電圧印加状態に応じて変化する(詳細は後述する)。
【0021】
第2流体20は、上記した第1流体19とは相溶せず、かつ着色された非極性の液状の流体であり、第1基板11と第2基板12の間の隔壁18によって画定された空間内に配置されている。この第2流体20として、本実施形態では色素20bが添加された液晶性材料20aが用いられている。色素20bとしては、例えば偏光方向に応じて光の吸収量が異なるもの(二色性色素)が好適に用いられる。液晶性材料20aとしては、例えば誘電率異方性が正(Δε>0)のネマティック液晶材料が好適に用いられる。ネマティック液晶材料には液晶分子の配向にねじれを誘起するカイラル材が添加されていることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態の光学装置は上記のような構成を備えており、次にその動作について詳細に説明する。
【0023】
図3は、光学装置の動作状態を説明するための模式的な断面図である。なお、第1電極13と第2電極14の間、または第1電極13と第3電極15の間に印加する電圧の条件は電極間距離など諸条件により一概にはいえないが、例えば50V程度の直流電圧である。
【0024】
図3(A)は、第1電極13と第3電極15の間に電圧を印加した際の光学装置の動作状態を示す。この場合には、純水等からなる第1流体19は第1電極13と第3電極15に挟まれた領域へ移動し、それに伴い第2流体20は第1電極13と第2電極14に挟まれた領域へ移動する。これを第1基板11側から見ると、透光性の第1流体19は遮光膜17に隠れ、着色された第2流体20は遮光膜17には遮蔽されない状態となり、結果として観測者には黒(暗状態)として視認される。このような第1流体19と第2流体20の配置状態は電圧を遮断した後にも持続する。すなわち、配置状態にはメモリー性がある。このメモリー性の発現は、第2流体20として用いた液晶性材料の粘性が比較的に高いことに起因すると推測される。
【0025】
図3(B)は、第1電極13と第2電極14の間に電圧を印加した際の光学装置の動作状態を示す。この場合には、純水等からなる第1流体19は第1電極13と第2電極14に挟まれた領域へ移動し、それに伴い第2流体20は第1電極13と第3電極15に挟まれた領域へ移動する。これを第1基板11側から見ると、透光性の第1流体19は遮光膜17に遮蔽されない状態となり、着色された第2流体20は遮光膜17には遮蔽された状態となり、結果として観測者には白(明状態)として視認される。上記と同様にこの配置状態にはメモリー性がある。
【0026】
また、第1電極13と第2電極14の間、または第1電極13と第3電極15の間に電圧を印加した際に、その印加時間を制御することにより第1流体19が移動しきらない途中で電圧を遮断すると、図3(C)に示すように、第1流体19の一部が第1電極13と第2電極14の間に位置し、その他の部分は第1電極13と第3電極15の間に位置するような配置状態を実現できる。このとき、第2流体20は、第1流体19の配置状態を補完するようにして、例えば図示のように第2電極14と第3電極15の双方にまたがった配置状態となる。これを第1基板11側から見ると、透光性の第1流体19はその一部が遮光膜17に遮蔽され、他の一部は遮蔽されない状態となり、着色された第2流体20も部分的に遮光膜17に遮蔽された状態となり、結果として観測者にはグレー(中間状態)として視認される。上記と同様にこの配置状態にはメモリー性がある。
【0027】
以上のように本実施形態の光学装置は、電圧の印加状態および印加時間を適切に制御することにより明暗の2状態とその中間的な状態を実現することができる。例えば、表示用途に応用した場合であれば階調表示が可能となる。
【0028】
本実施形態の光学装置を反射型表示装置として用いる場合であれば、着色状態と透明状態(光吸収状態)を切り替えることにより、視角依存性がなく、どこから見ても明るく自然な表示状態を実現することができる。さらに、比較的高いコントラストを実現できるので、画像の視認性に優れた表示状態を得ることができる。また、メモリー性を活かすことにより、基本的には画像書き換え時以外に電力を消費しないため、極めて消費電力の低い表示装置を実現することができる。また、液晶性材料に添加する色素の色調を適宜に選択することにより、カラー表示を実現することも可能である。
【0029】
また、本実施形態の光学装置は、例えば隔壁18によって囲まれる領域をマトリクス状に多数配置することによりドットマトリクス型の表示装置を構成することができる。この表示装置は、上記のメモリー性を利用することにより、薄膜トランジスタ等のスイッチング素子を各画素に設けることなく、1ラインずつ表示を切り替える線順次走査によって駆動することが可能である。
【0030】
本実施形態の光学装置を適用した表示装置は、例えば、省電力かつ頻繁な画像書き換えを必要としない情報機器(パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、携帯電話等)の表示部、磁気ないし電気記録されたカードの情報表示面、児童用玩具、紙や印刷物(雑誌、新聞、ポスター等)などの代替品全般、車載用機器や航空機用機器の表示部、時計の表示部、デジタルスチルカメラの表示部としての用途や、ストロボ灯具、車両用灯具、車内照明などの光学系における光制御素子としての用途、さらには一般照明器具(屋内照明、街路灯、懐中電灯等)における配光制御素子としての用途など、種々の分野における用途が考えられる。
【0031】
次に、いくつかの実施例を説明する。
【0032】
(実施例1)
ITO膜付きのガラス基板を一対用意し、それぞれフォトリソグラフィ技術によってITO膜をパターン形成することにより第1電極、第2電極および第3電極を形成した。以降では便宜上、第1電極が形成されたガラス基板を「上基板」、第2電極および第3電極が形成されたガラス基板を「下基板」と呼ぶ。
【0033】
次に、上基板の所定位置に遮光膜としてのブラックカラーフィルタをパターン形成した。ITO膜の膜厚は80nm、ブラックカラーフィルタの膜厚は800nm、ガラス基板の板厚は0.7mmである。また、下基板には平滑層を形成した。詳細には、ポリイミド系樹脂材料をスピンコート法によって塗布した後に焼成することで絶縁膜を形成した。スピンコート条件は2000rpmで5秒間、その後4000rpmで10秒間とし、焼成条件は220℃で60分間とした。次いで、ポリテトラフルオロエチレン材料をスピンコート法によって塗布した後に焼成することで絶縁膜上に撥水膜を形成した。スピンコート条件は1500rpmで15秒間とし、焼成条件は150℃で30分間とした。
【0034】
次に、上基板の一面上に隔壁を形成した。ここでは、光硬化性樹脂材料を適宜の条件によってガラス基板上へ塗布して仮焼成し、その後、所定の遮光パターンを有するマスクを用いて露光し、さらに現像処理を行うことにより、樹脂材からなる隔壁が形成された。隔壁の1区画のサイズは200μm×200μmとし、隔壁の高さは6μm程度とした。
【0035】
次に、第1流体としての純水と第2流体としての液晶性材料を下基板の一面側に配置し、その下基板に対して上基板(隔壁付き)を重ね合わせ、各基板の周囲をエンドシール材にて封止した。各流体を配置する方法としてはインクジェット装置、ディスペンサ、マイクロピペットなどによる滴下、スピンコート法、スリットコート法、バーコート法、スリットスピンコート法、スプレーコート法など各種コーティング法を適用可能であり、また液晶表示装置の製造工程にて使用されるODF(one drop fill)法も適用可能である。ここでは下基板の一面上にマイクロピペットによって液晶性材料を微少量滴下し、その上からスプレーコート法によって純水を散布した。スプレーコート法による純水の散布についてはその散布条件により一概にはいえないが、5秒間〜11秒間の散布条件としたときに良好な状態に散布できた。このときの純水の散布量は概ね1mmあたり20〜50plである。第2流体としての液晶性材料には複数種類の二色性色素をそれぞれ1重量%程度ずつ混入することで黒色に着色した。液晶性材料としては、誘電率異方性Δεが正、屈折率異方性Δnが0.08程度、ネマティック−アイソトロピック転移温度が111℃のネマティック液晶材料に対してカイラルピッチが6μmのカイラル材をd/p=1となる量で添加したものを用いた。
【0036】
図4は、実施例1の光学装置の観察像を示す図であり、いずれも上基板側から光学素子を観察した様子を示している。なお、各流体の挙動を観察するための便宜上、遮光層を省略して光学装置を作製した。図4(A)は初期状態の観察像であり、いくつかの相対的に明るい白色系の液滴部分が純水(第1流体)、それ以外に相対的に暗い部分が液晶性材料(第2流体)である。また、図中に点線で示す電極aが第2電極、電極bが第3電極の配置領域を示している。なお、これらの電極配置は図4(B)〜図4(E)においても同様であるが、観察像の視認性を向上するために図4(A)以外では電極の配置領域の図示を省略している。図4(B)は第1電極と第2電極(電極a)の間に電圧を印加した状態の観察像であり、純水の液滴部分は第1電極と第2電極の間の領域へ移動していることが分かる。この後に電圧を遮断した後の状態の観察像が図4(C)であり、電圧遮断後も純水と液晶性材料の配置が維持されていることが分かる。図4(D)は第1電極と第3電極(電極b)の間に電圧を印加した状態の観察像であり、純水の液滴部分はいくつかが第1電極と第3電極の間の領域へ移動していることが分かる。この後に電圧を遮断した後の状態の観察像が図4(E)であり、電圧遮断後も純水と液晶性材料の配置が維持されていることが分かる。なお、図示を省略するが、第1電極と第2電極の間に液晶性材料が配置された状態で第2電極並びに第3電極のそれぞれと第1電極の間に電圧を印加した場合には、液晶性材料中の液晶分子がその長軸を電界方向に揃えて再配向し、これに伴って色素も再配向するので全体的に透明(明状態)になることが確認された。
【0037】
(実施例2)
液晶性材料として屈折率異方性Δnとネマティック−アイソトロピック転移温度が異なるネマティック液晶材料を用いた以外は上記した実施例1と同様の条件により実施例2の光学装置を作製した。具体的には、実施例2の光学装置の液晶性材料は、屈折率異方性Δnが0.298程度、ネマティック−アイソトロピック転移温度が130℃である。その結果、実施例1の光学装置と同様な動作を確認できた。
【0038】
(実施例3)
液晶性材料として屈折率異方性Δnとネマティック−アイソトロピック転移温度が異なるネマティック液晶材料を用いた以外は上記した実施例1と同様の条件により実施例3の光学装置を作製した。具体的には、実施例2の光学装置の液晶性材料は、屈折率異方性Δnが0.065程度、ネマティック−アイソトロピック転移温度が86℃である。その結果、実施例1の光学装置と同様な動作を確認できた。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態並びに各実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【0040】
例えば、上記した説明では第1流体が透光性を有し、第2流体が着色されている旨の説明を行っていたが各流体の色彩はこれに限定されない。原理的には、第1流体と第2流体は両者間に透過率、反射率、色彩あるいは輝度の差が生じる組み合わせであればよいため、例えば、双方の流体がともに着色されていてもよい。また、第2流体として液晶性材料を用いる場合に、カイラル材は省略されてもよい。
【0041】
また、上記した実施形態等では遮光層を設けていたが、光学装置の用途によってはこれを省略してもよい。例えば、必要に応じて光の強度を減衰し、あるいは遮光するような光学スイッチとして本発明にかかる光学装置を用いるような場合であれば、遮光層は不要である。
【0042】
また、上記した実施形態等では主に反射光を利用する場合を想定していたが、透過光を利用するように構成することも可能である。その場合には、第2基板の裏側に光源(バックライト)を配置し、この光源から出力される光の透過度を各流体の位置によって制御することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
11:第1基板(上側基板)
12:第2基板(下側基板)
13:第1電極
14:第2電極
15:第3電極
16:平滑層
17:遮光層(光吸収層)
18:隔壁
19:第1流体
20:第2流体
20a:液晶性材料
20b:色素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた隔壁と、
前記第1基板の一面側に設けられており、少なくとも一部が平面視において前記隔壁に囲まれた領域と重なる第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられており、各々が前記隔壁に囲まれた領域を挟んで前記第1電極と対向配置された第2電極及び第3電極と、
前記第2基板の一面側に設けられており、前記第2電極及び前記第3電極を覆う平滑層と、
前記隔壁に囲まれた領域に配置されており、相溶しない第1流体及び第2流体、
を備え、
前記第1流体は極性又は導電性を有する液状体からなり、前記第2流体は液晶性材料を含んだ液状体からなる、
光学装置。
【請求項2】
前記第2流体が色素を含有する、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第2流体がカイラル材を含有する、請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1流体が水である、請求項1〜3の何れか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の光学装置を用いて構成された表示装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37193(P2013−37193A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173266(P2011−173266)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】