説明

光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】消光度が小さく、コントラストの改善に寄与する光学補償フィルム及び偏光板、ならびにコントラストが改善された液晶表示装置の提供。
【解決手段】透明支持体上に液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、該透明支持体がラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムからなることを特徴とする光学補償フィルム;及び偏光子と、前記光学補償フィルムとを少なくとも有する偏光板である。また、前記偏光板を有する液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償フィルム、ならびにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の光学補償フィルムとして、ポリマーフィルムからなる透明支持体上に、液晶組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムが種々提案されている(例えば、特許文献1)。光学補償フィルムを利用して液晶表示装置を光学補償し、コントラストを改善するためには、光学補償フィルムの消光度を低下させることが重要である。
一方、光学フィルムの作製に有用なポリマー材料が種々提案され、例えば、ラクトン環含有重合体を利用した光学フィルムが提案されている(特許文献2及び3)。
【特許文献1】特許第2587398号公報
【特許文献2】特開2006−171464号公報
【特許文献3】WO2006/025445A1号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、消光度が小さく、コントラストの改善に寄与する光学補償フィルム、及びそれを有する偏光板を提供することを課題とする。
また、本発明は、正面及び斜め方向のコントラストが改善された液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 透明支持体上に液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、該透明支持体がラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムからなることを特徴とする光学補償フィルム。
[2] 前記ラクトン環単位を有する重合体が、下記一般式(1)で表される単位を有する重合体であることを特徴とする[1]の光学補償フィルム。
【化1】

(式中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
【0005】
[3] 前記グルタル酸無水物単位を有する重合体が、下記一般式(3)で表される単位を有する重合体であることを特徴とする[1]の光学補償フィルム。
【化2】

(式中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
【0006】
[4] 前記透明支持体が、更にシアン化ビニル系単量体から誘導される単位と芳香族ビニル系単量体から誘導される単位とを有する共重合体を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの光学補償フィルム。
[5] 前記透明支持体が、1分子中に2個以上の芳香族環を有するレターデーション上昇剤を更に含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学補償フィルム。
[6] 前記透明支持体と前記光学異方性層との間に、配向膜を有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの光学補償フィルム。
[7] 偏光子と、[1]〜[6]のいずれかの光学補償フィルムとを少なくとも有する偏光板。
[8] [7]の偏光板を少なくとも一枚有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液晶表示装置の光学補償に寄与するとともに、消光度が小さい光学補償フィルム、及びそれを有する偏光板を提供することができる。
また、本発明によれば、正面及び斜め方向のコントラストが改善された液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[光学補償フィルム]
本発明は、透明支持体上に液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、該透明支持体がラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムからなることを特徴とする光学補償フィルムに関する。本発明では、透明支持体として、ラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムを用いることで、光学補償フィルムとしての消光度を低下させている。本発明の光学補償フィルムは、消光度0.0015以下を達成可能である。この消光度は、小さければ小さいほどよいが、許容できる上限の値は、消光度と共に連動して変化する他のパラメータの値(例えばヘイズ値など)を考慮して決定される。なお、消光度は、クロスニコルに配置した2枚の偏光板間に、透過率が最小になるように位相差膜を配置した時に測定される透過光量を、偏光板をパラニコルにして光学補償フィルムを置かない時の透過光量で割った値として測定することができる。
【0009】
(支持体)
本発明では、前記透明支持体として、ラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムを用いる。
・ ラクトン環単位を有する重合体(以下、「ラクトン環含有重合体」という)
本発明に使用可能なラクトン環含有重合体は、重合体中にラクトン環構造を有するものであり、好ましくは下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有するものである。
【0010】
【化3】

【0011】
式中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、ここでいう有機残基は、酸素原子を含んでいてもよい。有機残基の炭素原子数は1〜15が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜5がさらにより好ましい。有機残基として、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアルコシ基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基などを挙げることができる。R11、R12、R13として、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、さらにより好ましくは水素原子、メチル基である。
【0012】
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5質量%以上であれば、十分な耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が得られやすい傾向がある。また、ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90質量%以下であれば、より高い成形加工性が得られやすい傾向がある。
【0013】
ラクトン環含有重合体は、一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、特に限定されないが、ラクトン環含有重合体の製造方法として、後に説明するような(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、及び下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R24は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アセテート基、シアノ基、−CO−R25基、又はCO−O−R26基を表し、R25及びR26は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。炭素数1〜20の有機残基については、上記一般式(1)における有機残基の説明を参照することができる。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%であり、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。一般式(2a)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0016】
ラクトン環含有重合体の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得た後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行う方法である。
【0017】
重合工程においては、例えば下記一般式(1a)で表される単量体を含む単量体組成物を用いて重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得ることができる。
【0018】
【化5】

【0019】
式中、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。炭素数1〜20の有機残基については、上記一般式(1)における有機残基の説明を参照することができる。
一般式(1a)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸tert−ブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(1a)で表される単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合が5質量%以上であれば、十分な耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が得られやすい傾向がある。重合工程に供する単量体組成物中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合が90質量%以下であれば、ラクトン環化時にゲル化が起きるのを十分に防ぐことができ、より高い成形加工性を有する重合体が得られやすい傾向がある。
【0021】
重合工程に供する単量体組成物中には、一般式(1a)で表される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、又は上記一般式(2a)で表される単量体が好ましく挙げられる。一般式(1a)で表される単量体以外の単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0023】
一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
【0024】
水酸基含有単量体としては、一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0026】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0027】
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0028】
一般式(2a)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0029】
一般式(2a)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体組成物中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0030】
重合温度、重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
【0031】
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃のものが好ましい。
【0032】
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0033】
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基とエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0035】
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれているが、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
【0036】
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
【0037】
重合体(a)中にラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在してしまったりするので好ましくない。
【0038】
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、上記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
【0039】
重合体(a)を加熱処理する方法については特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
【0040】
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
【0041】
環化縮合反応を行う際には、特開2001−151814号公報に示されているように有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
【0042】
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体(a)に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。触媒の使用量が0.001質量%以上であれば、環化縮合反応の反応率の向上を十分に図りやすくなる傾向があり、一方、5質量%以下であれば、着色や架橋を防いで良好な溶融賦形性が得られやすくなる傾向がある。
【0043】
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
【0044】
環化縮合反応は溶剤の存在下で行い、且つ環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、及び、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
【0045】
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題等が生じる。
【0046】
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置又はベント付き押出機を用いることがより好ましい。
【0047】
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。反応処理温度が150℃以上であれば、環化縮合反応が十分に進行して残存揮発分量を抑えやすくなる傾向があり、350℃以下であれば、着色や分解を防ぎやすくなる傾向がある。
【0048】
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分の残存を十分に防ぎやすくなる傾向があり、1.33hPa以下であれば、工業的な実施がより容易になる傾向がある。
【0049】
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
【0050】
前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。上記温度が150℃以上であれば、環化縮合反応が十分に進行して残存揮発分量を抑えやすくなる傾向があり、350℃以下であれば、着色や分解を防ぎやすくなる傾向がある。
【0051】
前記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分の残存を十分に防ぎやすくなる傾向があり、1.33hPa以下であれば、工業的な実施がより容易になる傾向がある。
【0052】
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
【0053】
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
【0054】
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
【0055】
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体(a)を、2軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が悪くなるおそれがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基をあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
【0056】
上述のように、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での質量減少率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
【0057】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
【0058】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、及び、前記(i)又は(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
【0059】
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
【0060】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどでもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
【0061】
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体(a)の質量に対し、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間は特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
【0062】
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
【0063】
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。
【0064】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
【0065】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。質量減少率が2%以下であれば、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行ったときに、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がり、得られるラクトン環含有重合体の物性が向上すやすい傾向がある。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
【0066】
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
【0067】
脱揮工程は環化縮合反応と同時に終了することには限らず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
【0068】
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。
【0069】
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
【0070】
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
【0071】
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6以下であれば、着色を防いでより高い透明性が得られやすい傾向がある。
【0072】
ラクトン環含有重合体は、熱質量分析(TG)における5%質量減少温度が、280℃以上であることが好ましく、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。熱質量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標である。これが280℃以上であれば、十分な熱安定性を発揮しやすい。
【0073】
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
【0074】
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。残存揮発分の総量が5000ppm以下であれば、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークしたりするなどの成形不良をより効果的に防ぎやすくなる傾向がある。
【0075】
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安である。
【0076】
・グルタル酸無水物単位を有する重合体(以下、「グルタル酸無水物単位含有重合体」という)
本発明に使用可能なグルタル酸無水物単位含有重合体は、下記一般式(3)で表される単位を有する重合体であることが好ましい。
【0077】
【化6】

【0078】
一般式(3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。R31及びR32は、特に好ましくは、同一又は相異なる、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0079】
本発明に用いるグルタル酸無水物単位含有重合体は、グルタル酸無水物単位以外の単位を含んでいてもよい。例えば、アクリル系の単位(不飽和カルボン酸アルキルエステル又は不飽和カルボン酸から誘導される単位)を含有するアクリル系共重合体であることが好ましい。アクリル系共重合体中のグルタル酸無水物単位の含有量としては、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜45質量%である。5質量%以上、より好ましくは10質量%以上とすることにより、耐熱性向上の効果を得ることができ、さらには耐候性向上の効果を得ることもできる。前記グルタル酸無水物単位含有重合体は、耐熱性の点から120℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
【0080】
例えば、前記グルタル酸無水物単位含有重合体は、不飽和カルボン酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位を含むことが好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位として、例えば、下記一般式(4)で表されるものが好ましい。
一般式(4):―[CH2―C(R41)(COOR42)]―
一般式(4)中、R41は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R42は炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、又は1個以上炭素数以下の数の水酸基もしくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基を表す。
【0081】
一般式(4)で表される繰り返し単位に対応する単量体は、下記一般式(5)で表される。
一般式(5):CH2=C(R41)(COOR42
このような単量体の好ましい具体例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが含まれ、中でもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記グルタル酸無水物単位含有重合体中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の含有量は、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは55〜90質量%である。グルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位とを有するアクリル系熱可塑性共重合体は、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位と不飽和カルボン酸単位とを有する共重合体を重合環化させることにより得ることができる。
【0083】
また、前記グルタル酸無水物単位含有重合体は、前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位とともに、又はそれに代えて、不飽和カルボン酸単位を含んでいてもよい。
不飽和カルボン酸単位としては、例えば、下記一般式(6)で表されるものが好ましい。
一般式(6):―[CH2―C(R51)(COOH)]―
ここでR51は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0084】
前記不飽和カルボン酸単位を誘導する単量体の好ましい具体例としては、一般式(6)で表される繰り返し単位に対応する単量体である下記一般式(7)で表される化合物、ならびにマレイン酸、及び更には無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。
一般式(7):CH2=C(R51)(COOH)
【0085】
これらはその1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。上記のように、グルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位とを有するアクリル系熱可塑性共重合体は、例えば不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位と不飽和カルボン酸単位とを有する共重合体を重合環化させることにより得ることができるものであるから、その構成単位中に不飽和カルボン酸単位を残して有していてもよい。
【0086】
前記グルタル酸無水物単位含有重合体中の不飽和カルボン酸単位の含有量としては、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。10質量%以下とすることで、無色透明性、滞留安定性の低下を防ぐことができる。
【0087】
また、前記前記グルタル酸無水物単位含有重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香環を含まないその他のビニル系単量体単位を有していてもよい。芳香環を含まないその他のビニル系重合性モノマー由来の単位を含有していてもよい。他のビニル系重合性モノマーの具体例には、対応する単量体でいうと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;アリルグリシジルエーテル;無水マレイン酸、無水イタコン酸;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル;N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン;2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンなど;が含まれる。これらはその1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記グルタル酸無水物単位含有重合体中において、その他のビニル系重合性モノマー(ただし、芳香環を含まない)由来の単位の含有量は、35質量%以下が好ましい。
【0089】
前記グルタル酸無水物単位含有重合体は、芳香環を含むビニル系重合性モノマー、例えば、N−フェニルマレイミド、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−グリシジルスチレン、p−アミノスチレン、2−スチリル−オキサゾリンなど、由来の単位を含んでいてもよいが、耐擦傷性、耐候性を低下させる傾向にあるため、含む場合も、含有量としては1質量%以下にとどめるのが好ましい。
【0090】
本発明において、前記透明支持体として用いられるフィルムは、前記ラクトン環単位含有重合体又はグルタル酸無水物単位含有重合体を主成分として含む他、所望により、他の材料を含んでいてもよい。
・ 他の熱可塑性樹脂
本発明に支持体として用いられるフィルムは、前記ラクトン環単位含有重合体又はグルタル酸無水物単位含有重合体以外の熱可塑性樹脂を1種以上含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが含まれる。ゴム質重合体は、表面に、前記ラクトン環単位含有重合体等と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
ラクトン環単位含有重合体と熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂としては、シアン化ビニル系単量体から誘導される単位と芳香族ビニル系単量体から誘導される単位とを含む共重合体、具体的にはアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50質量%以上含有する重合体を用いるとよい。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いるとガラス転移温度が120℃以上、Reが20nm以下で、全光線透過率が85%以上である光学フィルムが容易に得られる。なお、ラクトン環単位含有重合体等と、その他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点が、ラクトン環単位含有重合体等とその他の熱可塑性樹脂との混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
その他の熱可塑性樹脂としてアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いる場合、その製造方法は、乳化重合法や懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法等を用いることが可能であるが、得られるフィルムの透明性や光学性能の観点から溶液重合法かバルク重合法で得られたものであることが好ましい。
【0092】
他の熱可塑性樹脂を添加する場合、前記ラクトン環単位含有重合体等(成分(A)と他の熱可塑性樹脂(成分(B)との割合は、[(A)/{(A)+(B)}]の質量割合で、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜97質量%、さらに好ましくは80〜95質量%である。支持体中の成分(A)の含有割合が60質量%よりも少ないと、消光度を十分に低下できない場合がある。(B)成分を併用することで位相差を調整することができる。
【0093】
・ レターデーション上昇剤
本発明において透明支持体として用いるフィルムは、前記ラクトン環単位含有重合体等とともに、レターデーション上昇剤を含有していてもよい。「レターデーション上昇剤」とは、添加されることによって、少なくとも無添加のものと比較して、面内レターデーション(Re)及び厚み方向のレターデーション(Rth)の少なくとも一方の絶対値を増加させる性質を有する剤をいう。レターデーション上昇剤は、1分子中に2個以上の芳香族環を有する化合物から選択されるのが好ましい。1分子中に2個以上の芳香族環を有する化合物の分子では、通常、2つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければ、2つの芳香族環は、同一平面を形成する。本発明者の研究によれば、ラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムのレターデーションを上昇させるためには、複数の芳香族環により同一平面を形成することが重要である。かかるレターデーション上昇剤の例には、特開2002−363343号公報の段落番号[0011]〜[0031]に記載された化合物と実質的に同一の、直線的な分子構造を有する棒状化合物;特開2000−111914号公報の段落番号[0011]〜[0085]に記載された化合物と、実質的に同一の、立体障害しない立体配座となっている2つの芳香族環を含有する化合物;少なくとも1つの芳香族環を置換基として有する1,3,5−トリアジン化合物;及び、特開2001−166144号公報に記載された、ポルフィリン骨格を有する化合物;が含まれる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい。この場合、該トリアジン環がもう一つの芳香環となる。
具体的には、特開2001−166144号公報の段落番号[0016]に記載の一般式(I)で表される1,3,5−トリアジン化合物がレターデーション上昇剤として好ましい。
【0094】
前記レターデーション上昇剤用化合物の種類及び使用量を選択することで、所望のレターデーションのフィルムを作製することができる。フィルム中のレターデーション上昇剤の添加量は、0〜20質量%(対綿)であるのが好ましく、0〜10質量%(対綿)であるのがより好ましい。
【0095】
・ その他の添加剤
本発明において支持体として用いられるポリマーフィルムは、種々の添加剤から選らばれる1種以上を含んでいてもよい。
添加剤の例には、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;サリチル酸フェニル、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;リン酸トリス(ジブロモプロピル)、リン酸トリアリル、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;及び難燃剤;などが含まれる。
【0096】
前記その他の添加剤の前記ポリマーフィルム中の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%である。
【0097】
・ポリマーフィルムの製造方法
本発明において、支持体として用いるポリマーフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前記ラクトン環単位含有重合体等と、必要に応じて、レターデーション上昇剤、及び他の熱可塑性樹脂などを、公知の混合方法で混合して得られたポリマー組成物を、フィルム状に成形することにより得られる。さらに、フィルム状に成形後、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。
【0098】
フィルム成形の方法としては、種々のフィルム成形方法を利用することができ、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好ましい。
【0099】
溶液キャスト法(溶液流延法)に使用される溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0100】
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
【0101】
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
【0102】
延伸を行う方法としては、従来の種々の延伸方法が利用でき、例えば、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などを用いることができる。延伸は、好ましくは、フィルム原料の重合体のガラス転移温度付近で行われる。具体的な延伸温度としては、好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)、より好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)である。延伸温度を(ガラス転移温度−30℃)以上とすることにより、充分な延伸倍率が得られやすい傾向にあり、延伸温度を(ガラス転移温度+100℃)以下とすることにより、樹脂が流動して安定な延伸を行いやすい傾向にある。面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍、より好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率を1.1倍以下とすることにより、延伸による靭性の向上が得られ易い傾向にある。逆に、延伸倍率を25倍以上とすることにより、延伸倍率を上げるだけの効果がより認められやすい傾向にある。
【0103】
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20,000%/分、より好ましくは100〜10,000%/分である。延伸速度を10%/分以上とすることにより、充分な延伸倍率を得る時間を短縮できる傾向にあり、製造コストを抑えることが可能になる。逆に、延伸速度を20,000%/分以上とすることにより、延伸フィルムの破断などが起こり難くなる。フィルムの光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
【0104】
本発明において支持体として用いるポリマーフィルムの膜厚は、10μm〜500μmが好ましく、より好ましくは20μm〜300μmである。10μm未満では、均一に作製するのが困難であり、また500μmを超えるとディスプレイの表面フィルムが厚くなりすぎ薄層化・軽量化の流れに逆行する。
【0105】
前記ポリマーフィルムの光学特性については特に制限はない。本発明の光学補償フィルムが用いられる液晶表示装置のモードなどに応じて、組み合わせられる光学異方性層の光学特性との関係で、面内レターデーションRe又は厚み方向のレターデーションRthの好ましい範囲を決定し、必要であれば、上記レターデーション上昇剤や、他の熱可塑性樹脂を添加して、所望の範囲となるように調整することができる。
例えば、上記1,3,5−トリアジン環系の化合物をレターデーション上昇剤として前記ラクトン環単位含有重合体に混合することで、Reが0〜200nm程度、及びRthが0〜500nm程度のポリマーフィルムを製造することができる。
【0106】
前記ポリマーフィルムには、隣接して形成される層(例えば、光学異方性層、又はその形成に利用される配向膜等)との接着性を改善するために、表面処理を施すのが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理又は大気圧プラズマ処理が好ましい。コロナ放電処理も大別すると大気圧プラズマ処理に含まれるが、ここでは直接コロナ放電によるプラズマ領域に直接被処理体を曝すものをコロナ放電処理と呼称し、プラズマ領域と被処理体表面が離れているものを大気圧プラズマ処理と呼称する。コロナ処理は工業的な実用例が豊富で低コストである反面、処理体表面の物理的ダメージが大きいというデメリットがある。一方、大気圧プラズマ処理の実用例は比較的少なく、コストもコロナ処理よりは高い反面、処理体表面のダメージが小さく、比較的処理強度が高く設定可能というメリットがある。従って、使用するポリマーフィルムのダメージと処理後の接着性の改善レベルとの関係によって、両者の内で好ましい方の処理法を選択すればよい。
【0107】
これらの処理を施されたポリマーフィルムの処理面は、親水化する。親水化の目安として、処理面における水の接触角を利用してもよい。具体的には、処理面の水の接触角は55°以下であるのが好ましく、50°以下であるのがより好ましい。処理面の水の接触角が前記範囲であると、配向膜との接着性が改善され、剥離等の不良が生じ難くなる。下限値については特に制限はないが、ポリマーフィルムを破損することがないように設定することが好ましい。なお、接触角の測定は、JIS R 3257(1999)に従って行なうことができる。コロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理は、それぞれ、接触角が前記範囲となる様に、処理条件が決定される。変動させる処理条件としては、何れの処理法においても、印加電圧、周波数、雰囲気ガス種、処理時間等がある。
これらの処理の詳細については、高分子表面改質(近代編集社)P.88〜、高分子表面の基礎と応用(下)(化学同人)P.31〜、大気圧プラズマの原理・特徴と高分子フィルム・ガラス基板の表面改質技術(技術情報協会)等にそれぞれ記載があり、その内容を参照することができる。
【0108】
前記ポリマーフィルムのコロナ放電処理又は大気圧プラズマ処理を施された表面(以下、「処理面」という場合がある)を除塵した後に、配向膜を形成するのが好ましい。除塵方法については特に制限されない。超音波を利用する超音波除塵が好ましい。超音波除塵については、特開平7−333613号公報等に詳細な記載があり、参照することができる。
【0109】
前記ポリマーフィルム上に隣接して形成される層の塗布組成物中の塗布溶剤が、前記ポリマーフィルムをある程度膨潤させることで、両層の間の接着性を改善することも可能である。具体的には、前記ポリマーフィルムを膨潤可能な溶剤と、膨潤させない溶剤を所定の比率で混合した溶媒にすることで塗布層の白化を起こさずに接着性を好ましく改良することができる。
【0110】
(光学異方性層)
本発明の光学補償フィルムは、液晶組成物からなる光学異方性層を有する。前記液晶組成物は、硬化性であるのが好ましい。前記液晶組成物は、少なくとも一種の液晶化合物を含有する。該液晶化合物としては、棒状液晶化合物又はディスコティック液晶化合物が好ましい。
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これらの棒状液晶化合物の固定は、棒状液晶化合物の末端構造に重合性基を導入(後述の円盤状液晶と同様)し、この重合・硬化反応を利用して行われている。具体例としては、重合性ネマチック棒状液晶化合物を紫外線硬化した例が特開2006−209073号公報に記載されている。また、上述の低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。高分子液晶化合物は、以上のような低分子液晶化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶化合物を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報等に記載がある。
【0111】
ディスコティック液晶化合物については、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記式(A)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0112】
(A) D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Pは重合性基であり;そして、nは3〜12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(又はPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0113】
【化7】

【0114】
【化8】

【0115】
【化9】

【0116】
【化10】

【0117】
【化11】

【0118】
【化12】

【0119】
【化13】

【0120】
【化14】

【0121】
【化15】

【0122】
また、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、及び特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載の化合物のような、3置換ベンゼン骨格を含む化合物は、その複屈折波長分散が、液晶セル中の液晶化合物の複屈折の波長分散により近いので、好ましく用いることができる。特に好ましい骨格を以下に示す。
【0123】
【化16】

【0124】
式(A)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−及びS−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及びO−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
【0125】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0126】
式(A)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0127】
【化17】

【0128】
【化18】

【0129】
【化19】

【0130】
【化20】

【0131】
【化21】

【0132】
【化22】

【0133】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)又はエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。
式(A)において、nは3〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0134】
前記液晶組成物中、液晶化合物は組成物の全量(溶媒を含む場合は固形分)に対し、50質量%〜99.9質量%であるのが好ましく、70質量%〜99.9質量%がより好ましく、80質量%〜99.5質量%がよりさらに好ましい。
【0135】
上記の液晶化合物と共に、液晶性組成物中には、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に0.1〜50質量%の範囲にあり、0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0136】
液晶化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましい。
【0137】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。特に好ましい例として、特開2005−292351号公報明細書中の段落番号[0054]から[0109]に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーが挙げられる。
【0138】
光学異方性層は、上記成分を含む液晶性組成物を、配向膜の表面(好ましくは、ラビング処理面)上に塗布し、液晶相−固相転移温度以下で配向させ、その後、UV照射によって、重合反応を進行させて、液晶化合物をその配向状態に固定することにより形成することができる。液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、バーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。液晶相−固相転移温度としては70℃〜300℃が好ましく、特に70℃〜170℃が好ましい。液晶化合物の重合反応としては、光重合反応が行われる。液晶化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましく、照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよく、加熱条件に特に制限はないが、液晶化合物の配向度を低下させないために、120℃程度以下であることがより好ましい。
【0139】
前記光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることが更に好ましい。
【0140】
[光学補償フィルムの特性評価]
(Re(λ)及びRth(λ))
本明細書では、Re(λ)は波長λにおける面内レターデーション(nm)を意味し、及びRth(λ)は波長λにおける厚み方向レターデーション(nm)を意味する。
測定対象のフィルムのRe(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において各波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法により、厚み方向レターデーションRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(10)及び式(11)よりRthを算出することもできる。
【0141】
【数1】

式中、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0142】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
また、本明細書において、測定波長を特に付記しない場合は、波長550nmにおけるRe及びRthであるとする。
【0143】
(ヘイズ値)
本明細書において、支持体用フィルム及び光学補償フィルムのヘイズ値は、JIS K−7136に準じて測定した値である。
本発明の光学補償フィルムは、透明支持体そのもののヘイズが小さいのみならず、該透明支持体上に光学異方性層を形成しても、そのことによるヘイズの上昇が小さく、光学補償フィルムとしても、ヘイズが小さいという特徴がある。本発明に用いる透明支持体のヘイズは、0〜0.2%程度であり、当該支持体上に光学異方性層を形成した本発明の光学補償フィルムでも、ヘイズ0.3%以下を達成可能である。光学異方性層を形成することによるヘイズの上昇は0.08%以下であるのが好ましい。
【0144】
[偏光板]
本発明は、偏光膜と、本発明の光学補償フィルムとを少なくとも有する偏光板にも関する。本発明の偏光板の一例は、偏光膜の一方の表面の保護フィルムとして、本発明の光学補償フィルムを有する偏光板である。保護フィルムとして用いる場合は、支持体であるラクトン環単位含有共重合体等を含有するポリマーフィルムの裏面(配向膜が形成されていない側の面)を、所望により表面処理して親水化してから、偏光膜の表面に貼り付けるのが好ましい。
偏光膜には、例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素にて染色し、延伸を行うことによって得られる偏光膜などが用いられる。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルムや環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等が用いられる。
【0145】
[液晶表示装置]
本発明の光学補償フィルム及び偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。
【0146】
液晶表示装置は長時間の使用により、バックライトの熱によって内部の温度が上昇することがしばしばある。また、ノートブック型パーソナルコンピューターや携帯電話用の液晶表示装置は、屋内のみならず、屋外において使用されるものである。従って、これらの液晶表示装置には、環境湿度や温度の変化による表示特性の変動が小さいことが求められる。本発明の光学補償フィルムを有する液晶表示装置、特に、本発明の光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして利用している液晶表示装置は、温湿度の変化による表示特性の変動が小さいという特徴があり、種々の用途の液晶表示装置として有用である。特に、本発明の液晶表示装置は、温湿度変化に依存する輝度の変動が小さいことが一つの特徴である。黒表示時の輝度が1cd/cm2以上変動する(輝度が増加する)と、視認性が大きく悪化するのに対し、本発明によれば、黒輝度の変化を0.5cd/cm2以下に抑えることができ、種々の環境下でも良好な表示性能を維持する液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0148】
(環含有重合体の製造)
合成例1:ラクトン環含有重合体ペレット(P−1)の作製
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)8000g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2000g、4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)10000g、n−ドデシルメルカプタン5gを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤としてt−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート{化薬アクゾ(株)製、「カヤカルボン Bic−75」(商品名)}5.0gを添加すると同時に、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート10.0gとMIBK230gからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0149】
得られた重合体溶液に、リン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物{堺化学工業(株)製、“Phoslex A−18”(商品名)}30gを加え、還流下(約90〜120℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、この環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレット(P−1)を得た。
【0150】
得られたペレット(P−1)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。この質量減少から算出される脱アルコール反応率は96.6%であった。また、ペレットの質量平均分子量は133,000であり、メルトフローレートは6.5g/10分、ガラス転移温度は131℃であった。
【0151】
合成例2:グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系熱可塑性共重合体ペレット(P−2)の作製
メタクリル酸メチル20質量部、アクリルアミド80質量部、過硫酸カリウム0.3質量部、イオン交換水1500質量部を反応器中に仕込み、単量体が完全に重合体に転化するまで、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保ち、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤水溶液を調製した。
【0152】
得られたメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤水溶液0.05部を、更にイオン交換水165部に溶解させた溶液にして、ステンレス製のオートクレーブに供給し、撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記の単量体混合物を、反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。
メタクリル酸(MAA) 30質量部
メタクリル酸メチル(MMA) 70質量部
t−ドデシルメルカプタン 0.6質量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4質量部
【0153】
内温が70℃に達した時点を重合開始時として、180分間保った後、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体Dを製造した。この共重合体D製造時の重合率は98%であった。
【0154】
このビーズ状の共重合体D及びナトリウムメトキシドを、共重合体D100質量部、ナトリウムメトキシド0.5質量部の割合で、ベント付き同方向回転2軸押出機に、そのホッパー口より供給して、樹脂温度250℃で溶融押出し、ペレット状の、グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系熱可塑性共重合体(P−2)を製造した。得られたアクリル系熱可塑性共重合体を、赤外分光光度計を用いて分析した結果、1800cm-1及び1760cm-1に吸収ピークが確認され、グルタル酸無水物単位が形成されていることを確認した。また、このアクリル系熱可塑性共重合体を重ジメチルスルホキシドに溶解させ、室温(23℃)にて1H−NMRを測定し、共重合体組成を決定したところ、メタクリル酸メチル単位70質量%、グルタル酸無水物単位30質量%、メタクリル酸単位0質量%であった。また、そのガラス転移温度は145℃であった。
【0155】
(透明支持体の作製)
製造例1:支持体(SP−1)の作製
上記ペレット(P−1)とアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{東洋スチレン(株)製、「トーヨーAS AS20」(商品名)}をP−1/AS樹脂=90/10の質量比で単軸押出し機(φ=30mm)を用いて混錬することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。このペレットをメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルム(SP−1)を作製した。
得られたフィルムについてKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=−2.0nm、JIS K−7136に準じて測定したヘイズ値は0.15%であった。
【0156】
製造例2:支持体(SP−2)の作製
製造例1で得られた支持体(SP−1)のフィルムを、100℃で0.1m/分の速度で1.5倍に単軸延伸することで50μmの延伸フィルム(SP−2)を得た。
【0157】
製造例3:支持体(SP−3)の作製
合成例2で得られたペレット(P−2)をMEKに溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルム(SP−3)を作製した。
【0158】
製造例4:支持体(SP−4)の作製
上記ペレット(P−1)とアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{東洋スチレン(株)製、「トーヨーAS AS20」(商品名)}をP−1/AS樹脂=90/10の質量比で単軸押出し機(φ=30mm)を用いて混錬することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。このペレット及び、下記構造のレターデーション上昇剤1をペレット/レターデーション上昇剤=100/3の質量比でメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−4)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。
【0159】
【化23】

【0160】
製造例5:支持体(SP−5)の作製
上記ペレット(P−1)とアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{東洋スチレン(株)製、「トーヨーAS AS20」(商品名)}をP−1/AS樹脂=90/10の質量比で単軸押出し機(φ=30mm)を用いて混錬することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。このペレット及び、下記構造のレターデーション上昇剤2をペレット/レターデーション上昇剤=100/5の質量比でメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、溶液キャスト法で85μmのフィルムを得た。さらに100℃で0.1m/分の速度で幅方向に1.25倍にテンター延伸することで80μmの延伸フィルム(SP−5)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したところ、面内レターデーションRe=38nm(遅相軸:幅方向)、厚み方向レターデーションRth=180nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0161】
【化24】

【0162】
製造例6:支持体(SP−6)の作製
レターデーション上昇剤2を下記構造のレターデーション上昇剤3に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−6)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0163】
【化25】

【0164】
製造例7:支持体(SP−7)の作製
レターデーション上昇剤2を下記構造のレターデーション上昇剤4に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−7)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0165】
【化26】

【0166】
製造例8:支持体(SP−8)の作製
レターデーション上昇剤2を下記構造のレターデーション上昇剤5に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−8)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0167】
【化27】

【0168】
製造例9:支持体(SP−9)の作製
レターデーション上昇剤2を下記構造のレターデーション上昇剤6に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−9)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0169】
【化28】

【0170】
製造例10:支持体(SP−10)の作製
レターデーション上昇剤2を下記構造のレターデーション上昇剤7に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−10)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであり、ヘイズ値は0.15%であった。
【0171】
【化29】

【0172】
[実施例1]
(配向膜の形成)
製造例4で作製した支持体(SP−4)の片面に大気圧プラズマ処理(電極:積水化学工業(株)製、条件:雰囲気酸素濃度:3体積%(97%窒素)、周波数:30Hz、フィルム搬送速度:1m/分)して、片面を親水化処理した。親水化処理により、水の接触角は90°から28°に低減し、充分に親水化されていた。
この処理面に、下記の組成の配向膜形成用硬化性組成物を#14のワイヤーバーで24mL/m2のウエット塗布量で塗布して、100℃で2分間乾燥した。配向膜1の厚さは、1.0μmであった。
【0173】
配向膜形成用硬化性組成物:
下記式の変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド 2質量部
クエン酸 0.08質量部
クエン酸モノエチルエステル 0.29質量部
クエン酸ジエチルエステル 0.27質量部
クエン酸トリエチルエステル 0.05質量部
【0174】
【化30】

【0175】
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物1の塗布液を調製した。
光学異方性層形成用液晶組成物1:
メチルエチルケトン 102.00質量部
下記構造式に示す円盤状液晶化合物1 41.01質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート(V360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)
0.11質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)
0.34質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.35質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.45質量部
下記構造式に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.03質量部
下記構造式に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.23質量部
【0176】
【化31】

【0177】
【化32】

【0178】
【化33】

【0179】
(光学異方性層1の形成)
配向膜を塗工したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物1の塗布液を#3のワイヤーバーで5.2ml/m2のウエット塗布量で塗布して、120℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量500mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層1を形成し、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取った。光学異方性層1の厚さは、1.4μmであった。得られたフィルムの光学異方性層のみをガラス板に転写してKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定した結果、Re=50nm、Rth=86nmであった。フィルムのヘイズは0.20%、消光度は0.0010であった。表1に光学補償フィルムの構成を、表2に評価結果を示す。
以上の様にして、光学補償フィルム1を作製した。
【0180】
(偏光板1の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
その後、作製した光学補償フィルム1の光学異方性層1を形成した面の反対側の面を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の一方の面に貼り付け、前記偏光膜の他方の面には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理を行った市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を貼り付けた。このようにして、偏光板1を作製した。
【0181】
(TNモード液晶表示装置1の作製)
TN型液晶セルを使用した22インチの液晶表示装置(ACER製 AL2216W)に設けられている一対の偏光板(上側偏光板、及び下側偏光板)を剥がし、代わりに作製した偏光板1を、光学異方性層が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けて、偏光板1を2枚有するTNモード液晶表示装置1を作製した。このとき、観察者側の偏光板(上側偏光板)の透過軸と、バックライト側の偏光板(下側偏光板)の透過軸とが直交するように各偏光板を配置した。
【0182】
(表示性能評価)
常温常湿(25℃60%RH)の部屋で1週間放置した前記液晶表示装置を測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル正面方向におけるコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)、及び、左右/上下のコントラスト視野角(コントラスト10以上を維持する視野角)を評価した。評価結果を表2に示す。
【0183】
[比較例1]
製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに、以下に示す製造法にて作製した支持体(SP−11)を用い、表面親水化処理を大気圧プラズマ処理から以下に示す鹸化処理に変更した以外は実施例1と同様にして配向膜形成、光学異方性層を形成することによって、光学補償フィルム2を作製した。実施例1と同様にして光学補償フィルム2を片面に有する偏光板2を作製し、実施例1と同様にしてTNモード液晶表示装置2を作製し、同様の評価を行った。表1に光学補償フィルムの構成を、表2に評価結果を示す。
【0184】
支持体(SP−11)の作製:
下記表に示す組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。セルロースアシレートは、全アシル置換度が2.83のものを用いた。
【0185】
内層用ドープ組成物:
アセチル置換度2.83のセルロースアシレート 100質量部
トリフェニルフォスフェート 8質量部
ビフェニルフォスフェート 4質量部
メチレンクロライド 293質量部
メタノール 71質量部
1−ブタノール 2質量部
【0186】
外層用ドープ組成物:
アセチル置換度2.83のセルロースアシレート 100質量部
トリフェニルフォスフェート 8質量部
ビフェニルフォスフェート 4質量部
メチレンクロライド 314質量部
メタノール 76質量部
1−ブタノール 2質量部
シリカ微粒子(AEROSIL972、日本アエロジル(株)製)
0.8質量部
【0187】
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を115%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、155℃の温度で20分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を製造した。このように支持体(SP−11)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.3nm、厚み方向レターデーションRth=35nmであった。また、ヘイズ値は0.20%であった。
得られた透明支持体の片面に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10mL/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除し、その後、100℃で15秒間乾燥して、片面を鹸化処理した。
【0188】
[実施例2]
製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例5で作製した支持体(SP−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、鹸化処理、配向膜形成を行った。
【0189】
(光学異方性層2の形成)
以下の組成の光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液を調製した。
光学異方性層形成用液晶組成物2:
メチルエチルケトン 147.78質量部
上記円盤状液晶化合物1 41.01質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート(V360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)
0.23質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.35質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.45質量部
フルオロ脂肪族基含有ポリマー
(メガファックF780、(大日本インキ化学工業(株)製) 0.45質量部
【0190】
ロール状態のフィルムをラビング装置によって搬送方向に対して45°方向に逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物2を#3のワイヤーバーで5.2mL/m2のウエット塗布量で塗布して、120℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量500mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層2を形成し、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取った。光学異方性層2の厚さは、1.3μmであった。得られたフィルムの光学異方性層のみをガラス板に転写してKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定した結果、Re=30nm、Rth=90nmであった。フィルムのヘイズは0.20%、消光度は0.0010であった。以上の結果を表1に示す。
以上のようにして、光学補償フィルム3を作製した。
【0191】
(偏光板3の作製)
光学補償フィルム1の代わりに光学補償フィルム3を用いた以外は実施例1と同様にして、偏光板3を作製した。
【0192】
(OCBモード液晶表示装置1の作製)
(OCBモード液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、液晶セルの厚さを7.2μmに設定した。液晶セルの間隙にΔnが0.1396の液晶化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向したOCBモード液晶セルを作製した。
【0193】
(液晶表示装置の作製)
上記ベンド配向液晶セルと、上記一対の偏光板3とを組み合わせて液晶表示装置を作製した。
なお、ベンド配向液晶セルと、一対の偏光板との配置は、偏光板が第1の光学異方性層、及びベンド配向液晶セルの基板が対面し、ベンド配向液晶セルのラビング方向とそれに対向する第1の光学異方性層のラビング方向とが反平行になるようにした。
作製したベンド配向液晶セルを挟むように、それぞれ別の透明基板に、視認側、及びバックライト側に偏光板をそれぞれ貼り付けた。
偏光板の第1の光学異方性層が前記透明基板に対向し、ベンド配向液晶セルのラビング方向とそれに対向する第1の光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置し、ベンド配向液晶セルの大きさが20インチである液晶表示装置を作製した。
(表示性能評価)
実施例1と同様にして、パネル正面方向におけるコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)を評価した。結果を表1に示す。
【0194】
[比較例2]
製造例5で作製した支持体(SP−5)の代わりに特開2007−147966公報中に記載の比較例3で用いられているセルロースアシレートフィルム(CA−2)と同様にして膜厚88μmのフィルムSP−12を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したところ、面内レターデーションRe=36nm(遅相軸:幅方向)、厚み方向レターデーションRth=175nmであった。
【0195】
[実施例3〜8]
製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例1で作製した支持体(SP−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム5、偏光板5、TNモード液晶表示装置3を作製した(実施例3)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例6で作製した支持体(SP−6)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム6、偏光板6、TNモード液晶表示装置4を作製した(実施例4)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例7で作製した支持体(SP−7)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム7、偏光板7、TNモード液晶表示装置5を作製した(実施例5)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例8で作製した支持体(SP−8)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム8、偏光板8、TNモード液晶表示装置6を作製した(実施例6)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例9で作製した支持体(SP−9)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム9、偏光板9、TNモード液晶表示装置7を作製した(実施例7)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例10で作製した支持体(SP−10)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム10、偏光板10、TNモード液晶表示装置8を作製した(実施例8)。
【0196】
【表1】

【0197】
【表2】

【0198】
上記表に示す結果から、実施例1〜8では、透明支持体として、ラクトン環単位含有共重合体を含むフィルムを用いているので、他のポリマーフィルムを透明支持体として用いた場合と比較して、消光度がより小さくなり、TNモード、IPSモード等の液晶表示装置に組み込んだ際のコントラストが向上したことが理解できる。
【0199】
製造例13:支持体(SP−13)の作製
レターデーション上昇剤1をレターデーション上昇剤3に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−13)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。また、ヘイズ値は0.15%であった。
【0200】
製造例14:支持体(SP−14)の作製
レターデーション上昇剤1をレターデーション上昇剤4に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−14)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。また、ヘイズ値は0.15%であった。
【0201】
製造例15:支持体(SP−15)の作製
レターデーション上昇剤1をレターデーション上昇剤5に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−15)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。また、ヘイズ値は0.15%であった。
【0202】
製造例16:支持体(SP−16)の作製
レターデーション上昇剤1をレターデーション上昇剤6に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−16)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。また、ヘイズ値は0.15%であった。
【0203】
製造例17:支持体(SP−17)の作製
レターデーション上昇剤1をレターデーション上昇剤7に置き換えた以外は製造例4と同様にして、溶液キャスト法で80μmのフィルム(SP−17)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、面内レターデーションRe=0.5nm、厚み方向レターデーションRth=92nmであった。また、ヘイズ値は0.15%であった。
【0204】
製造例18:支持体(SP−18)の作製
合成例2で得られたペレット(P−2)、及びレターデーション上昇剤1をペレット/レターデーション上昇剤=100/6の質量比でメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルム(SP−18)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したしたところ、Re=2nm、及びRth=93nmであった。また、ヘイズ値は0.16%であった。
【0205】
製造例19:支持体(SP−19)の作製
合成例2で得られたペレット(P−2)、及びレターデーション上昇剤1をペレット/レターデーション上昇剤=100/3の質量比でメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、溶液キャスト法で60μmのフィルムを作製した。さらに100℃で0.1m/分の速度で幅方向に1.17倍にテンター延伸することで53μmの延伸フィルム(SP−19)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したところ、面内レターデーションRe=75nm(遅相軸:幅方向)、厚み方向レターデーションRth=62nmであった。また、ヘイズ値は0.17%であった。
【0206】
製造例20:支持体(SP−20)の作製
製造例18で得られたSP−18を100℃で0.1m/分の速度で幅方向に1.25倍にテンター延伸することで50μmの延伸フィルム(SP−20)を作製した。得られたフィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定したところ、面内レターデーションRe=40nm(遅相軸:幅方向)、厚み方向レターデーションRth=182nmであった。また、ヘイズ値は0.17%であった。
【0207】
(実施例9〜14)
製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例13で作製した支持体(SP−13)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム11、偏光板11、TNモード液晶表示装置9を作製した(実施例9)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例14で作製した支持体(SP−14)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム12、偏光板12、TNモード液晶表示装置10を作製した(実施例10)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例15で作製した支持体(SP−15)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム13、偏光板13、TNモード液晶表示装置11を作製した(実施例11)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例16で作製した支持体(SP−16)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム14、偏光板14、TNモード液晶表示装置12を作製した(実施例12)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例17で作製した支持体(SP−17)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム15、偏光板15、TNモード液晶表示装置13を作製した(実施例13)。
同様に、製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例2で作製した支持体(SP−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、光学補償フィルム16、偏光板16、TNモード液晶表示装置14を作製した(実施例14)。
【0208】
(実施例15)
製造例4で作製した支持体(SP−4)の片面に実施例1と同様に大気圧プラズマ処理を行い、該処理面に配向膜を形成した。
【0209】
(光学異方性層形成用液晶組成物3の調製)
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 270.0質量部
円盤状液晶化合物1 10.0質量部
下記の円盤状液晶化合物2 90.0質量部
下記の空気界面配向制御剤1 1.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0210】
【化34】

【0211】
【化35】

【0212】
配向膜を塗工したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を#1.6のワイヤーバーで2.8ml/m2のウエット塗布量で塗布して、115℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層3を形成し、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取った。光学異方性層3の厚さは、0.9μmであった。得られたフィルムの光学異方性層のみをガラス板に転写してKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定した結果、Re=46nm、Rth=80nmであった。フィルムのヘイズ値は0.18%、消光度は0.0008であった。以上の様にして、光学補償フィルム17を作製した。
【0213】
この光学補償フィルム17を用い、実施例1と同様に偏光板17、TNモード液晶表示装置15を作製し、表示性能評価を行った。
【0214】
(実施例16)
製造例4で作製した支持体(SP−4)の代わりに製造例5で作製した支持体(SP−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、支持体SP−5の表面に対して大気圧プラズマ処理を行い、該処理面に配向膜を形成した。
実施例2と同様にして、光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液を調製し、前記配向膜の表面に塗布し、光学補償フィルム18を作製した。
この光学補償フィルム18を用い、実施例2と同様に偏光板18、OCBモード液晶表示装置3を作製し、表示性能評価を行った。
【0215】
(実施例17)
製造例3で作製した支持体(SP−3)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−3の表面を大気圧プラズマ処理、該処理面に配向膜を形成した。
実施例15と同様にして、光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を調製し、前記配向膜の表面に塗布し、光学補償フィルム19を作製し、これを有する偏光板19を作製した。
【0216】
(TNモード液晶表示装置の作製)
26インチのTN型液晶セルを使用した液晶表示装置(LC−26HU25、Xoceco社製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した偏光板19を、光学補償フィルム19が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。このとき、観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。このようにして、TNモード液晶表示装置16を作製した。
【0217】
(表示性能評価)
実施例1と同様にして、正面コントラスト及び視野角を評価した。
(温湿度変化による輝度変化の評価)
さらに作製した液晶表示装置16について、電源OFF状態で2時間以上放置した状態から電源ONにして5分以内に上下左右の辺の中央で、端部から1cm中心寄りの点での輝度を輝度計(TOPCON製BM−5)で測定し、その平均を求めたところ、0.3cd/cm2であった。さらに点灯後1時間経過した時点で同様の測定を行ったところ、0.5cd/cm2であった。即ち、液晶表示装置16の温度変化による輝度変化は、0.2cd/cm2であった。
また、作製した液晶表示装置16を、電源OFF状態で25℃・10%RH下に24時間放置し、点灯後すぐに同様の測定を行ったところ、0.5cd/cm2であった。即ち、液晶表示装置16の湿度変化による輝度変化は、0.2cd/cm2であった。
【0218】
(実施例18)
製造例18で作製した支持体(SP−18)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−18の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
実施例15と同様に、光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を調製し、前記配向膜の表面に塗布し、光学補償フィルム20を作製し、これを有する偏光板20を作製した。
偏光板20を用い、実施例17と同様にしてTNモード液晶表示装置17を作製し、表示性能評価を行った。
【0219】
(実施例19)
製造例18で作製した支持体(SP−18)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−18の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
【0220】
(光学異方性層形成用液晶組成物4の調製)
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物4の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 270.0質量部
上記円盤状液晶化合物2 100.0質量部
空気界面配向制御剤1 1.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0221】
光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を、光学異方性層形成用液晶組成物4の塗布液に代えた以外は実施例15と同様に光学異方性層4を形成し、光学補償フィルム21を作製し、さらにこれを有する偏光板21を作製した。
偏光板21を用い、実施例17と同様にしてTNモード液晶表示装置18を作製し、表示性能評価を行った。
【0222】
(実施例20)
製造例19で作製した支持体(SP−19)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−19の表面を大気圧プラズマ処理を行い、該処理面に配向膜を形成した。
次に、配向膜を有するロール状態に巻き取られた長尺のフィルムを送り出し、搬送方向の下流に配置されたラビング装置によって、搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて、配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液を#2のワイヤーバーで3.5mL/m2のウエット塗布量で塗布して、120℃で1.5分間乾燥して、液晶を配向させた。その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量500mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層5を形成し、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取った。光学異方性層5の厚さは、1.4μmであった。得られたフィルムの光学異方性層5のみをガラス板に転写してKOBRA 21ADHにて測定波長550nmでの光学特性を測定した結果、Re=32nm、Rth=90nmであった。フィルムのヘイズ値は0.21%、消光度は0.0011であった。以上の様にして、光学補償フィルム22を作製した。
【0223】
この光学補償フィルム22を用い、実施例17と同様に偏光板22、及びTNモード液晶表示装置19を作製し、表示性能評価を行った。
【0224】
(実施例21)
製造例19で作製した支持体(SP−19)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−19の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
【0225】
(光学異方性層形成用液晶組成物5の調製)
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 270.0質量部
上記円盤状液晶化合物1 10.0質量部
上記円盤状液晶化合物2 90.0質量部
空気界面配向制御剤1 2.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0226】
光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液の代わりに、光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を用いた以外は、実施例15と同様にして、光学補償フィルム23を作製した。
この光学補償フィルム23を用い、実施例17と同様にして、偏光板23、及びTNモード液晶表示装置20を作製し、表示性能評価を行った。
【0227】
(実施例22)
製造例18で作製した支持体(SP−18)を用いたこと以外は実施例1と同様に、支持体SP−18の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
【0228】
(光学異方性層形成用液晶組成物6の調製)
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物6の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 300.0質量部
下記に示す棒状液晶化合物1 87.0質量部
下記に示す棒状液晶化合物2 13.0質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.4質量部
フルオロ脂肪族基含有ポリマー
(メガファックF780、(大日本インキ化学工業(株)製) 0.6質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0229】
【化36】

【0230】
【化37】

【0231】
光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液の代わりに、光学異方性層形成用液晶組成物6の塗布液を用いた以外は、実施例15と同様にして光学補償フィルム24を作製した。
この光学補償フィルム24を用い、実施例17と同様にして、偏光板24、及びTNモード液晶表示装置21を作製し、表示性能評価を行った。
【0232】
(実施例23)
製造例20で作製した支持体(SP−20)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、支持体SP−20の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液の代わりに、光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を用いた以外は実施例2と同様にして、光学補償フィルム25を作製した。
この光学補償フィルム25を用い、実施例2と同様にして、偏光板25、及びOCBモード液晶表示装置4を作製し、表示性能評価を行った。
また、実施例17と同様にして、OCBモード液晶表示装置4の温湿度変化による輝度の変化を評価した。
【0233】
(実施例24)
製造例20で作製した支持体(SP−20)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、支持体SP−20の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。
【0234】
(光学異方性層形成用液晶組成物7の調製)
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物7の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 270.0質量部
上記円盤状液晶化合物2 100.0質量部
空気界面配向制御剤1 2.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0235】
光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液の代わりに、光学異方性層形成用液晶組成物7の塗布液を用いた以外は実施例2と同様にして、光学補償フィルム26を作製した。
この光学補償フィルム26を用い、実施例2と同様にして、偏光板26、及びOCBモード液晶表示装置5を作製し、表示性能評価を行った。
また、実施例17と同様にして、OCBモード液晶表示装置5の温湿度変化による輝度の変化を評価した。
【0236】
(実施例25)
(開環重合環状ポリオレフィンドープの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液A
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アートンG(JSR株式会社製) 150質量部
メチレンクロライド 550質量部
エタノール 50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0237】
次に上記方法で調製した開環重合環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド 75質量部
エタノール 5質量部
環状ポリオレフィン溶液A 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、及びマット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
【0238】
(環状ポリオレフィンフィルムの作製)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約22質量%でバンドから剥離した。その後テンタークリップで保持し、搬送ゾーンにて延伸を行った後に、130℃で乾燥し巻き取った。できた環状ポリオレフィンフィルムの厚さは30μmであった。このフィルムを真鍮製の上下電極間(アルゴンガス雰囲気)で、グロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)して開環重合環状ポリオレフィンフィルムを作製した。
【0239】
製造例18で作製した支持体(SP−18)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、支持体SP−18の表面を大気圧プラズマ処理し、該処理面に配向膜を形成した。さらに配向膜を形成していない面と、環状ポリオレフィンフィルムとを、粘着剤SK−1478(綜研化学社製)を介して積層した。
【0240】
得られた積層フィルムの光学特性をKOBRA 21ADHにて、測定波長550nmでの光学特性を測定したところ、面内レターデーションRe=47nm(遅相軸:幅方向)、厚み方向レターデーションRth=300nmであった。また、ヘイズ値は0.18%であった。
【0241】
光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液に代えて、光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を用いた以外は、実施例2と同様にして、光学補償フィルム27を作製し、これを用いて、偏光板27、及びOCBモード液晶表示装置6を作製して、さらに表示性能評価を行った。
また、実施例17と同様にして、OCBモード液晶表示装置6の温湿度変化による輝度の変化を評価した。
【0242】
比較例1及び2の液晶表示装置についても、実施例17と同様にして、温湿度変化による輝度の変化を評価した。
【0243】
【表3】

【0244】
【表4】

【0245】
【表5】

【0246】
【表6】

【0247】
(実施例26〜31)
実施例21と同様に、SP−19の支持体に大気圧プラズマ処理し、配向膜を形成した。
【0248】
(光学異方性層形成用液晶組成物の調製)
下記の組成の塗布液を調製した。
メチルエチルケトン 270.0質量部
下表に示す円盤状液晶化合物(A) 90.0質量部
下表に示す円盤状液晶化合物(B) 10.0質量部
(化35)に示す空気界面配向制御剤1 2.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
【0249】
【表7】

【0250】
上記組成の塗布液を用いること以外は、実施例21と同様にして、実施例26〜31の光学補償フィルムをそれぞれ作製した。
作製した各光学補償フィルムを用い、実施例21と同様にして、偏光板、及びTNモード液晶表示装置を作製し、同様に表示性能評価を行った。
【0251】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、該透明支持体がラクトン環単位又はグルタル酸無水物単位を有する重合体を含有するフィルムからなることを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項2】
前記ラクトン環単位を有する重合体が、下記一般式(1)で表される単位を有する重合体であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
【化1】

(式中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
【請求項3】
前記グルタル酸無水物単位を有する重合体が、下記一般式(3)で表される単位を有する重合体であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
【化2】

(式中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
【請求項4】
前記透明支持体が、更にシアン化ビニル系単量体から誘導される単位と芳香族ビニル系単量体から誘導される単位とを有する共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【請求項5】
前記透明支持体が、1分子中に2個以上の芳香族環を有するレターデーション上昇剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【請求項6】
前記透明支持体と前記光学異方性層との間に、配向膜を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【請求項7】
偏光子と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学補償フィルムとを少なくとも有する偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板を少なくとも一枚有する液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−265597(P2009−265597A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237418(P2008−237418)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】