説明

光学製品の防汚処理方法及び装置

【課題】含フッ素シラン化合物系の膜の光学製品に対する形成にあって、ムラ発生が低減され、総じて美観に優れた光学製品とすることが可能となる防汚処理方法ないし装置を提供する。
【解決手段】光学製品の防汚処理方法において、光学製品の基材を、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液に浸漬する防汚加工工程と、当該防汚加工工程を経た前記基材を、防汚膜と親和性の高い溶剤に浸漬する溶剤浸漬工程と、当該溶剤浸漬工程を経た前記基材上の前記防汚加工液を、室温より高温度で周辺湿度より高湿度である湿熱環境で硬化させ、前記防汚膜を形成する湿熱処理工程と、を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ等の光学製品に対し防汚性を付与するために処理する方法、ないしその方法を実行可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学製品の一例である眼鏡プラスチックレンズに防汚性を付与する防汚性処理方法として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この方法は、当該レンズの蒸着膜上に、ポリフルオロアルキルシラン硬化物の薄膜を形成するもので、次の各工程を有する。即ち、当該蒸着膜上に、ポリフルオロアルキルシラン加水分解物を有機溶剤で希釈し、界面活性剤を添加した防汚性処理液を使用してディッピングする塗布工程と、常温ないし65℃で30秒間ないし5分間風乾する工程と、水中で浸漬洗浄する前洗浄工程と、水系洗浄剤、純水あるいは超純水で順次洗浄する後洗浄工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−175089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、ポリフルオロアルキルシラン硬化物より撥水性能に優れ、更には撥油性能にも優れるパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(以下「含フッ素シラン化合物」という)の薄膜を、防汚膜として採用することが行われている。含フッ素シラン化合物の場合、当該化合物入りの溶液に浸漬する防汚膜加工工程を行うことでレンズ表面に当該化合物を薄くコートした後、恒温恒湿条件下で所定時間据え置く湿熱硬化処理をすることで、当該化合物の薄膜を安定した状態で形成させる。
【0005】
このような含フッ素シラン化合物系膜の形成の場合、上述したポリフルオロアルキルシラン硬化物と同様に水洗浄工程を採用すると、洗浄により当該防汚膜が少なくとも部分的に除去されてしまい、処理後の膜の性能が低下することから、湿熱硬化処理前に水洗浄工程を実施することは望ましくないことと一般に考えられている。
【0006】
しかし、含フッ素シラン化合物の粘性や洗浄処理の不実施等を原因として、僅かではあるが湿熱硬化処理後のレンズにムラ(スポット状のものやキズ状のもの、あるいはダレ状のものを含む)が生じることがあり、美観や性能を若干損ねるため、ムラ発生の低減が望まれている。
【0007】
そこで、請求項1,4に記載の発明は、含フッ素シラン化合物系の膜の光学製品に対する形成にあって、ムラ発生が低減され、総じて美観に優れた光学製品とすることが可能となる防汚処理方法ないし装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光学製品の防汚処理方法にあって、光学製品の基材を、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液に浸漬する防汚加工工程と、当該防汚加工工程を経た前記基材を、防汚膜と親和性の高い溶剤に浸漬する溶剤浸漬工程と、当該溶剤浸漬工程を経た前記基材上の前記防汚加工液を、室温より高温度で周辺湿度より高湿度である湿熱環境で硬化させ、前記防汚膜を形成する湿熱処理工程と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2,3に記載の発明は、上記目的に加えて、更にムラの良好な消失を図り、美感を更に向上する目的を達成するため、上記発明にあって、更に、前記防汚加工工程の後であって前記溶剤浸漬工程の前において、室温より高温度である高温環境で予備加熱させる加熱処理工程を有するようにしたり、前記防汚膜と親和性の高い溶剤を、フッ素系溶剤としたりすることを特徴とするものである。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、光学製品の防汚処理装置にあって、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液を入れた、光学製品の基材を受け入れることで当該基材を当該防汚加工液に浸漬させる防汚加工槽と、防汚膜と親和性の高い溶剤を入れた、前記防汚加工液の浸漬後の前記基材を受け入れることで当該基材を当該溶剤に浸漬させる溶剤槽と、室温より高温度で周辺湿度より高湿度の湿熱環境を提供するものであり、前記溶剤の浸漬後の前記基材を受け入れることで、当該基材上の前記防汚加工液を当該湿熱環境で硬化させ、前記防汚膜を形成する湿熱処理槽と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5,6に記載の発明は、上記目的に加えて、更にムラの良好な消失を図り、美感を更に向上する目的を達成するため、上記発明にあって、更に、室温より高温度である高温環境を提供するものであり、前記防汚加工液の浸漬後の前記基材を受け入れることで当該高温環境で予備加熱させる加熱処理槽を備えたり、前記防汚膜と親和性の高い溶剤を、フッ素系溶剤としたりすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学製品の基材を、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液に浸漬する防汚加工と、当該防汚加工を施した前記基材を、防汚膜と親和性の高い溶剤に浸漬する溶剤浸漬と、当該溶剤浸漬を施した前記基材上の防汚加工液を、室温より高温度で周辺湿度より高湿度である湿熱環境で硬化させる湿熱処理とを行う。従って、防汚性能等を維持しながら、ムラを手間なく消失させることができ、性能ないし外観の極めて良好な防汚性光学製品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態につき説明する。なお、本発明の形態は、以下のものに限定されない。
【0014】
本発明の防汚処理方法においては、光学製品の基材に対し、順に、防汚加工工程、溶剤浸漬工程、湿熱処理工程を施すことで、基材の表面に防汚性の薄膜を形成し、防汚処理された光学製品が提供される。又、好適には、防汚加工工程後、溶剤浸漬工程前において、更に加熱処理工程を施す。基材の具体例として、眼鏡用プラスチックレンズ、カメラ用プラスチックレンズ、リモートコントローラの赤外線放射部用カバー、窓貼付用フィルム等を挙げることができる。なお、これら等にあっては、反射防止膜やハードコート等の表面処理が施されていても良いし、防汚処理後に更に別の表面処理を施しても良い。
【0015】
防汚加工工程では、防汚加工液を所定温度範囲内(例えば室温)に調整された状態で入れた防汚加工槽に、基材を所定時間浸漬することで、基材に防汚加工液を展開させる。全処理後に防汚膜となる防汚加工液には、防汚膜の主成分となる含フッ素シラン化合物が含まれる。含フッ素シラン化合物は、直鎖状又は分岐状のパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物であり、具体例として、特開2004−61866号公報に記載された一般式で表されるものを挙げることができる。又、防汚加工液は、好適には、当該化合物が0.1〜0.3重量%であるように調整され、その溶媒として、例えばフッ素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、あるいはこれらを組み合わせた混合系を挙げることができる。
【0016】
更に、所定温度範囲の具体例として、室温を含む数℃の範囲を挙げることができ、範囲ではなくその範囲内における任意の所定温度を維持するようにすることができる。又、浸漬に係る所定時間の具体例として、10〜60秒間の何れかを挙げることができる。なお、防汚加工槽(や後述する各槽)に(複数の)基材を投入するアーム等の投入手段や、防汚加工槽を含む各槽の間において(複数の)基材を移送するコンベア等の移送手段が配備されており、投入手段と移送手段を同一のアームとする等、これらを共通のものとしたり、適宜省略ないし変更したりすることができる。
【0017】
防汚加工工程後に好適に実施される加熱処理工程は、防汚加工液をまとった基材を、所定温度範囲の熱(室温より高温度である高温環境)に所定時間晒すことで、防汚加工液を予備的に若干硬化させるもので、内部のエアを昇温可能な加熱処理槽に基材を投入することで行われる。所定温度範囲の具体例として、50〜100℃あるいはこの範囲内に収まる任意の範囲を挙げることができ、範囲ではなくその範囲内における任意の所定温度を維持するようにすることができる。又、加熱に係る所定時間の具体例として、1〜30分間の何れかを挙げることができる。なお、予備的な加熱は、基材の熱変形を発生させず、又溶剤が蒸発する程度になされることが好ましい。
【0018】
防汚加工工程あるいは加熱処理工程の後で実施される溶剤浸漬工程では、溶剤を所定温度範囲内に調整された状態で入れた溶剤槽に、基材を所定時間浸漬することで、基材にコートされた防汚加工液由来の薄膜を弱く洗浄する。含フッ素シラン化合物製の硬化前の薄膜を洗浄することは、防汚性等の性能の低下を招くことを理由に、避けることが常識となっていたが、この常識に逆らい、従来のポリフルオロアルキルシラン硬化物における洗浄よりは弱い洗浄を施すことにより、全処理後の防汚性能等を維持しながら、ムラの発生防止(消失)を図れるメリットを得られることが分かった。なお、弱い洗浄は、時間を短くしたり、溶剤の濃度を薄くしたり、溶剤の種類を所定の(後述の)種類に限定したりすること等により行える。
【0019】
溶剤としては、防汚膜と親和性の高い各種のケトン類(アセトン等)、フッ素系化合物等を採用することができるが、好適にはフッ素系化合物(フッ素系溶剤)を用いることができる。防汚膜と親和性の高い溶剤は、防汚膜に対する相溶性のある溶剤あるいはぬれ性のある溶剤とも言い得る。防汚膜と親和性の高い溶剤を用いると、親和性のない溶剤を用いる場合に比べ、防汚性のある含フッ素シラン化合物により弾かれて液滴になる可能性が少なくなり、含フッ素シラン化合物系膜全体に対してより薄く均一に作用することが可能となる。
【0020】
又、溶剤の所定温度範囲の具体例として、室温を含む数℃の範囲あるいはこの範囲内に収まる任意の範囲を挙げることができ、範囲ではなくその範囲内における任意の所定温度を維持するようにすることができる。又、溶剤浸漬(洗浄)に係る所定時間の具体例として、5〜60秒間の何れかを挙げることができる。
【0021】
溶剤浸漬工程の後で実施される湿熱処理工程では、内部のエアを昇温・加湿可能な湿熱処理槽に、弱洗浄された防汚加工液付き基材を投入することで、基材を安定的に硬化させ付着させる。湿熱処理槽の内部の温度は、例えば45〜80℃あるいはこの範囲内に収まる任意の範囲に調整されるが、範囲ではなくその範囲内における任意の所定温度を維持するものとすることができる。又、湿熱処理槽の内部の湿度は、例えば(環境湿度より高い)相対湿度30〜95%あるいはこの範囲内に収まる任意の範囲に調整されるが、範囲ではなくその範囲内における任意の湿度を維持するものとすることができる。更に、湿熱環境に晒す(硬化に係る)時間、即ち湿熱処理槽に対する基材の投入時間は、好適には1〜24時間の何れかとされる。
【実施例】
【0022】
≪実施例1≫
本発明における光学製品の基材の一例としての眼鏡用プラスチックレンズ基材に対し、実施例1として、順に、防汚加工工程、溶剤浸漬工程、湿熱処理工程を施した。
【0023】
レンズ基材は、何れもフラットレンズの表面にコーティングを施した直径75mm(ミリメートル)のものであり、基材の屈折率は1.6である。なお、このレンズ基材には、基材柄から順に、ハードコート、高屈折率層と低屈折率層から成る5層の反射防止膜が形成されている。
【0024】
又、防汚加工工程は、次の要領で行った。即ち、含フッ素シラン化合物を0.2重量%だけ含み、フッ素系溶剤で希釈された室温の防汚加工液に、レンズ基材を30秒間浸漬し、取り出した。含フッ素シラン化合物は、信越化学工業株式会社製KY−130を用いた。
【0025】
更に、溶剤浸漬工程は、次の要領で行った。即ち、防汚加工工程後すぐにレンズ基材を溶剤浸漬槽に投入し、次に示す[表1]の「時間」の欄に記載された時間だけ溶剤に浸漬して取り出した。溶剤は、「溶剤」の欄で示されるものを常温にて用いた。即ち、「HFE7200」は住友スリーエム株式会社製のフッ素系溶剤であり、「ソルブ55」は花王株式会社製のフッ素系溶剤であって、何れも防汚加工液あるいはこれが硬化して形成される防汚膜との親和性が高い。なお、各「時間」ないし「溶剤」の組み合わせ毎に、複数(3〜5枚程度)の同じレンズ基材を用いて同条件で光学製品である眼鏡プラスチックレンズを作成し、それらの性能等をみている。
【0026】
【表1】

【0027】
更に、湿熱処理工程は、次の要領で行った。即ち、溶剤浸漬工程後すぐに60℃・80%の湿熱処理槽にレンズ基材を投入し、60分間だけ維持することで防汚膜を硬化させて取り出した。
【0028】
このようにして防汚膜を付した各光学製品の性能等を[表1]の右側に示す。即ち、「接触角」は、防汚膜上における純水の接触角であり、撥水性能に関係する。又、「ハジキ」は、油性塗料(油性ペン)を防汚膜上に塗布した場合の塗料の弾き度合いをみるもので、撥油性ないし外観の良さに関係する。ハジキが認められれば、撥油性があり外観が良好であるといえる。「触感」は触った際の滑らかさで、滑り性に関係する。「外観異常」は、ムラの有無に関係し、少なくとも微視的には途中でムラが観察されるものの、溶剤浸漬工程における洗浄によりそのムラが消失してムラが認められない場合に「消失」と記載し、洗浄後もムラが薄く認められる場合に「消失せず」と記載する。
【0029】
[表1]によれば、溶剤として、フッ素系のHFE7200を用いた場合でも、又ソルブ55を用いた場合でも、防汚膜硬化後の接触角は洗浄をしないものと変わらず(HFE7200で最大−0.4°、ソルブ55で−0.7°)、膜硬化前において溶剤に浸漬して洗浄を行っても、防汚性は洗浄をしないものと同様、十分なものとなっている(変化なし)。又、ハジキに関しても、洗浄をしないものと同様、十分なものとなっているし(変化なし)、触感も、洗浄をしないものと同様、十分滑らかなものとなっている(変化なし)。
【0030】
そして、膜硬化前に洗浄すると、磨きや拭き取りを行わなくとも、ムラの発生即ち外観異常を消失させることができる。
【0031】
≪実施例2≫
実施例1と同様であるが、防汚加工工程後、溶剤浸漬工程前に、加熱処理工程を施す防汚処理を、実施例2として行った。
【0032】
加熱処理工程は、次の要領で行った。即ち、60℃の加熱処理槽に、防汚加工液付きのレンズ基材を15分間投入した。
【0033】
又、実施例2の溶剤浸漬工程においては、溶剤としてHFE7200を用い、30秒間又は10秒間浸漬した。
【0034】
実施例2の結果等を、次の[表2]に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
[表2]によれば、実施例2のものの防汚性・ハジキ・触感は、洗浄なしのものと同等でありながら(接触角は実施例1と同様に変化なし・他も変化なし)、実施例2において外観異常を消失させることができる。
【0037】
≪比較例1≫
実施例1と同様であるが、湿熱処理工程による防汚膜の硬化後に、溶剤浸漬工程を施す防汚処理を、本発明に属さない比較例1として行った。比較例の溶剤浸漬工程においては、溶剤としてHFE7200を用い、2分間又は5分間浸漬した。比較例の結果等を、次の[表3]に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
[表3]によれば、比較例1のものの防汚性・ハジキ・触感は、洗浄なしのものと同等であるが、比較例において、外観異常につき僅かに薄くすることはできるものの、消失させることはできない。
【0040】
≪実施例3,比較例2〜5≫
実施例2と同様であるが、溶剤浸漬工程における溶剤をフッ素系でない各種のものに代えた防汚処理を、本発明に属する実施例3、あるいは本発明に属さない比較例2〜5として行った。
【0041】
即ち、溶剤として、実施例3においては防汚膜と親和性の高いものを用い、比較例2〜5においては防汚膜と親和性の高くないものを用いた。具体的には、実施例3においてはアセトンを用い、比較例2においてはIPA(イソプロピルアルコール)を用い、比較例3においてはDAA(ジアセトンアルコール)を用い、比較例4においてはメタノールを用い、比較例5においてはPGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を用いた。これらの結果等を、次の[表4]に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
[表4]によれば、溶剤としてIPAを用いると(比較例2)、外観異常は消失するものの、防汚膜の各種の性能が何れも低下してしまう。又、DAA,メタノール,PGMを用いると(比較例3〜5)、防汚膜の性能を保持することができるものの、ムラを消去することができない。これに対し、溶剤としてアセトンを用いると(実施例3)、接触角が実施例1,2程ではないものの用途等により十分に許容範囲内である変化量(−2.2°及び−3.6°)となり防汚性を十分なものとし、又ハジキ・触感を洗浄なしのものと同等としながら(変化なし)、外観異常を消失させることができる。なお、アセトン以外のケトン類においても、アセトンと同様、防汚膜の性能を維持しながら外観異常を消失させることができた。
【0044】
≪小括≫
比較例1,3〜5では、防汚性・ハジキ・触感の何れも極めて良好な性能となるものの、ムラを消失させることができず、別途拭き取り工程や微細な研磨工程を要して手間やコストがかかる。又、比較例2では、ムラは消失するものの、防汚性・ハジキ・触感の何れも性能が低下してしまう。
【0045】
これに対し、各実施例では、各種性能の良好な比較例と変わらない性能を呈し、性能を維持することができながら、ムラを消失させることができ、含フッ素シラン化合物において、硬化前の溶剤浸漬は、当該化合物を流失させるために行わないことが望ましいとする技術常識にあえて反し、防汚膜と親和性の高い溶剤の浸漬により洗浄することで、性能ないし外観の極めて良好な防汚性光学製品を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学製品の基材を、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液に浸漬する防汚加工工程と、
当該防汚加工工程を経た前記基材を、防汚膜と親和性の高い溶剤に浸漬する溶剤浸漬工程と、
当該溶剤浸漬工程を経た前記基材上の前記防汚加工液を、室温より高温度で周辺湿度より高湿度である湿熱環境で硬化させ、前記防汚膜を形成する湿熱処理工程と、
を有することを特徴とする光学製品の防汚処理方法。
【請求項2】
更に、前記防汚加工工程の後であって前記溶剤浸漬工程の前において、室温より高温度である高温環境で予備加熱させる加熱処理工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学製品の防汚処理方法。
【請求項3】
前記防汚膜と親和性の高い溶剤は、フッ素系溶剤である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学製品の防汚処理方法。
【請求項4】
パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物が含まれる防汚加工液を入れた、光学製品の基材を受け入れることで当該基材を当該防汚加工液に浸漬させる防汚加工槽と、
防汚膜と親和性の高い溶剤を入れた、前記防汚加工液の浸漬後の前記基材を受け入れることで当該基材を当該溶剤に浸漬させる溶剤槽と、
室温より高温度で周辺湿度より高湿度の湿熱環境を提供するものであり、前記溶剤の浸漬後の前記基材を受け入れることで、当該基材上の前記防汚加工液を当該湿熱環境で硬化させ、前記防汚膜を形成する湿熱処理槽と、
を有することを特徴とする光学製品の防汚処理装置。
【請求項5】
更に、室温より高温度である高温環境を提供するものであり、前記防汚加工液の浸漬後の前記基材を受け入れることで当該高温環境で予備加熱させる加熱処理槽を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の光学製品の防汚処理装置。
【請求項6】
前記防汚膜と親和性の高い溶剤は、フッ素系溶剤である
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光学製品の防汚処理装置。

【公開番号】特開2013−3213(P2013−3213A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131489(P2011−131489)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】