説明

光学計測装置

【課題】本発明は、ヘッド部を大型化することなく、コントローラ部に対してヘッド部を交換することが可能なように互換性を持たせることができる光学計測装置を提供する。
【解決手段】本発明に従った光学計測装置では、計測対象物200に対して光を用いて計測を行ない、ヘッド部10と、コントローラ部20と、光ファイバ11と、記憶部40とを備えている。本発明に従った光学計測装置では、ヘッド部10とコントローラ部20とを光ファイバ11で接続する。記憶部40は、製造されるヘッド部10のそれぞれの個体に対して関係付けられ、コントローラ部20で行なう演算に必要な情報をヘッド部10の個体情報として記憶する。コントローラ部20は、コントローラ部20に対して物理的に独立して存在する記憶部40から個体情報を読出し、読出した個体情報を用いて演算を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物に対して光を用いて計測を行なう光学計測装置に関し、特に、ヘッド部に計測対象物からの光を受光する光学系を含む光学計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、計測対象物に対して光を用いて計測を行なう光学計測装置が開発されている。たとえば、非接触で計測対象物の変位を計測する光学計測装置として、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点計測装置が開発されている。共焦点計測装置は、具体的に特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている共焦点計測装置は、複数の波長の光を出射する光源(たとえば白色光源)から出射する光に、光軸に沿って色収差を生じさせる色収差レンズを備えている。特許文献1に開示されている共焦点計測装置は、計測対象物の変位に応じて、合焦する色収差レンズからの光の波長が異なることで、ピンホールを通過する光の波長が変化し、ピンホールを通過した光の波長を測定して計測対象物の変位を計測する。
【0003】
また、特許文献2に開示してある共焦点計測装置は、色収差レンズに代えて、回折レンズを用いて、光源から出射する光に、光軸に沿って色収差を生じさせている。なお、特許文献2に開示してある共焦点計測装置は、光源からコリメートレンズまでの光路、およびコリメートレンズから分光器までの光路に光ファイバを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4585349号明細書
【特許文献2】米国特許第5785651号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のようにコリメートレンズなどの光学系を含むヘッド部と、分光器などの光学ユニットを含むコントローラ部とを光ファイバで接続する光学計測装置では、ヘッド部の光学系の個体差が大きく、精度の高い計測を行なうためにはヘッド部とコントローラ部とを1対1対応で調整する必要があった。そのため、ヘッド部が破損したとき、特許文献2のような光学計測装置では、ヘッド部だけではなく、コントローラ部もあわせて製造メーカに返送し、修理したヘッド部とコントローラ部とを1対1対応で調整する必要があった。
【0006】
さらに、特許文献2のような光学計測装置では、ヘッド部とコントローラ部とが1対1対応で調整してあるので、複数の光学計測装置を有している場合でも、ヘッド部のみを交換して装置のレイアウトを変更することができず、ヘッド部とコントローラ部とを一体として移動する必要があった。そのため、特許文献2のような光学計測装置では、装置のレイアウトを変更するとき、ヘッド部のみを交換して装置のレイアウトを変更する場合に比べて手間がかかる問題があった。
【0007】
また、ヘッド部とコントローラ部とを調整した情報(たとえば補正係数など)をヘッド部に設けた記憶部に記憶しておき、ヘッド部とコントローラ部とを接続するときに、記憶部から情報を読出す光学計測装置が開発されている。この光学計測装置では、ヘッド部に調整した情報が記憶してあるので、ヘッド部とコントローラ部とを1対1対応させる必要がなく、ヘッド部が破損したときヘッド部のみ製造メーカに返送することができるとともに、ヘッド部のみを交換して装置のレイアウトを変更することが可能である。
【0008】
しかし、この光学計測装置では、ヘッド部に記憶部を含む回路部を設ける必要があるため、ヘッド部が大型化する。さらに、ヘッド部の記憶部に記憶した情報をコントローラ部から読出す必要があるため、ヘッド部とコントローラ部との間に光ファイバ以外に電気的な配線が必要となる。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド部を大型化させることなく、コントローラ部に対してヘッド部を交換することが可能なように互換性を持たせることができる光学計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従った光学計測装置は、ヘッド部と、コントローラ部と、光ファイバと、記憶部とを備えている。ヘッド部は、計測対象物からの光を受光する光学系を含む。コントローラ部は、ヘッド部で受光した光を電気信号に変換する光学ユニットを含み、光学ユニットで変換した電気信号に対して演算を行ない、計測結果を出力する。光ファイバは、ヘッド部とコントローラ部とを接続し、ヘッド部の光学系とコントローラ部の光学ユニットとを繋ぐ光路となる。記憶部は、製造されるヘッド部のそれぞれの個体に対して関係付けられ、コントローラ部で行なう演算に必要な情報をヘッド部の個体情報として記憶する。コントローラ部は、コントローラ部に対して物理的に独立して存在する記憶部から個体情報を読出し、読出した個体情報を用いて演算を行なう。
【0011】
また、好ましくは、記憶部が、個体情報を電気的に記憶する記憶媒体を有し、コントローラ部の入力端子と接続することで、記憶媒体から個体情報を読出すことが可能となる。
【0012】
また、好ましくは、記憶部が、個体情報を磁気的または光学的に記憶する記憶媒体を有し、コントローラ部に内蔵または接続した読取部を用いて、記憶媒体から個体情報を読出すことが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、記憶部が、ヘッド部またはヘッド部に接続した光ファイバに結び付けてある。
【0014】
また、好ましくは、記憶部が、コントローラ部に接続する光ファイバのコネクタ部に内蔵され、コネクタ部をコントローラ部に接続する操作により、コントローラ部の入力端子に接続することができる。
【0015】
また、好ましくは、コントローラ部が、記憶部から個体情報を読出すことができない場合に利用することができる演算に必要な情報を記憶してある。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、本発明に係る光学計測装置は、ヘッド部の個体情報を記憶した記憶部を、製造されるヘッド部のそれぞれの個体に対して関係付けて設けてあり、コントローラ部が記憶部からヘッド部の個体情報を読出し、当該個体情報を用いて演算を行なうので、ヘッド部を交換しても精度の高い計測を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置において採用されているヘッド部の共焦点光学系の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置において波長−距離補正係数を得るための調整を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置において、ヘッド部と記憶部とを関係付ける別の構成を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る光学計測装置の別の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。図1に示す光学計測装置は、共焦点光学系を利用して計測対象物200の変位(計測対象物200までの距離の変化)を計測する共焦点計測装置100である。共焦点計測装置100で計測する計測対象物200には、たとえば液晶表示パネルのセルギャップなどがある。
【0019】
共焦点計測装置100は、共焦点の光学系を有するヘッド部10、光ファイバ11を介して光学的に接続されたコントローラ部20、コントローラ部20から出力される信号を表示するモニタ部30、後述するヘッド部10の個体情報を記憶した記憶部40を備えている。
【0020】
ヘッド部10は、回折レンズ1、回折レンズ1より計測対象物200側に配置された対物レンズ2を備えている。回折レンズ1の焦点距離は、回折レンズから対物レンズまでの距離と、対物レンズの焦点距離との差より大きくしてある。
【0021】
ここで、回折レンズ1は、後述する複数の波長の光を出射する光源(たとえば、白色光源)から出射する光に、光軸方向に沿って色収差を生じさせる光学素子である。回折レンズ1は、レンズの表面に、たとえばキノフォーム形状あるいはバイナリ形状(ステップ形状、階段形状)などの微細な起伏形状を周期的に形成するか、光の透過率を周期的に変更する振幅型のゾーンプレートを形成してある。なお、回折レンズ1の構成は、上記の記載の構成に限定されるものではない。
【0022】
対物レンズ2は、回折レンズ1で色収差を生じさせた光を計測対象物200に集光する光学素子である。なお、共焦点計測装置100は、複数の波長の光を出射する光源に、白色光源を用いる場合について以下に説明する。
【0023】
白色光源から出射する光は、光ファイバ11を介してヘッド部10に導かれている。光ファイバ11から出射する光を、回折レンズ1で有効に利用するには、光ファイバ11の開口数(NA:numerical aperture)と回折レンズ1の開口数とを一致させる必要がある。そのため、光ファイバ11と回折レンズ1との間に集光レンズ3を設けて、光ファイバ11の開口数と回折レンズ1の開口数とが一致するように調整している。
【0024】
光ファイバ11は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路であるとともに、ピンホールとしても機能している。つまり、対物レンズ2で集光した光のうち、計測対象物200で合焦する光は、光ファイバ11の開口部で合焦することになる。そのため、光ファイバ11は、計測対象物200で合焦しない波長の光を遮光し、計測対象物200で合焦する光を通過させるピンホールとして機能することになる。ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いることで、ピンホールが不要となる。
【0025】
共焦点計測装置100は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いるので、ヘッド部10をコントローラ部20に対してフレキシブルに移動することが可能になる。
【0026】
コントローラ部20は、白色光源である白色LED(Light Emitting Diode)21、分岐光ファイバ22、分光器23、撮像素子24、制御回路部25を備えている。白色光源として白色LED21を用いているが、白色光を出射することができる光源であれば他の光源であってもよい。
【0027】
分岐光ファイバ22は、光ファイバ11と接続する側に一本の光ファイバ22a、反対側に二本の光ファイバ22b、22cを有している。なお、光ファイバ22bは白色LED21に、光ファイバ22cは分光器23にそれぞれ接続してある。そのため、分岐光ファイバ22は、白色LED21から出射する光を光ファイバ11に導くとともに、光ファイバ11を介してヘッド部10から戻る光を分光器23に導くことができる。
【0028】
分光器23は、ヘッド部10から戻る光を反射する凹面ミラー23a、凹面ミラー23aで反射した光が入射する回折格子23b、回折格子23bから出射する光を集光する集光レンズ23cを有している。分光器23は、ヘッド部10から戻る光を波長ごとに分けることができれば、ツェルニターナ型、リトロー型などのいずれの構成であってもよい。
【0029】
撮像素子24は、分光器23から出射する光の強度を測定するラインCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)である。ここで、共焦点計測装置100では、分光器23および撮像素子24で、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定する測定部を構成している。なお、測定部は、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定することができれば、CCDなどの撮像素子24の単体で構成してもよい。また、撮像素子24は、2次元のCMOSや2次元のCCDであってもよい。
【0030】
制御回路部25は、白色LED21や撮像素子24などの動作を制御する分光制御回路部25aと、撮像素子24から出力された信号を処理する信号処理回路部25bとを有している。さらに、制御回路部25は、白色LED21や撮像素子24などの動作を調整するための信号や、後述するヘッド部10の個体情報を入力するための入力インターフェース25cと、モニタ部30と電気的に接続し、撮像素子24の信号を処理した結果を出力するための出力インターフェース25dとを有している。
【0031】
なお、コントローラ部20は、分光器23、撮像素子24および制御回路部25の分光制御回路部25aで、ヘッド部10で受光した光を電気信号に変換する光学ユニットを構成している。制御回路部25の信号処理回路部25bは、光学ユニットで変換した電気信号に対して演算を行ない、計測結果を出力する。
【0032】
モニタ部30は、撮像素子24が出力した信号を表示する。モニタ部30は、ヘッド部10から戻る光のスペクトル波形を描画し、計測対象物200の距離が、たとえば123.45μmであることを表示する。
【0033】
記憶部40は、製造されるヘッド部10のそれぞれの個体に対して関係付けられ、コントローラ部20で行なう演算に必要なヘッド部10の情報を個体情報として記憶する。ここで、計測対象物200の変位を計測する共焦点計測装置100の場合、ヘッド部10の個体情報は、後述する波長−距離補正係数である。
【0034】
次に、ヘッド部10の個体情報である波長−距離補正係数について説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100において採用されているヘッド部10の共焦点光学系の構成を示す模式図である。図2に示す共焦点光学系の構成は、回折レンズ1より計測対象物200側に対物レンズ2を配置する構成である。つまり、共焦点計測装置100では、光ファイバ11の端部から出射する光を回折レンズ1で光軸方向に沿って色収差を生じさせ、色収差が生じた光を対物レンズ2で計測対象物200に集光する。
【0035】
まず、図2に示す共焦点計測装置100の光学系において、光ファイバ11の端部から回折レンズ1までの距離をa、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離をb、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離をc(λ)とする。さらに、回折レンズ1は、光の波長λ0 のときの焦点距離をfd0とし、有効径をφa とする。なお、距離aは、焦点距離fd0とは等しいものとする。対物レンズ2は、焦点距離をfo とし、有効径をφb (λ)とする。
【0036】
そして、図2に示す共焦点計測装置100の光学系において、一般的なレンズの公式を用いて、光ファイバ11の端部から回折レンズ1までの距離aと、回折レンズ1から回折レンズ1により光ファイバ11からの出射光が合焦する点まで距離ag (λ)(図示せず)と、回折レンズ1の焦点距離fd (λ)との関係、および回折レンズ1から対物レンズ2までの距離bと、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離c(λ)と、対物レンズ2の焦点距離fo との関係を(式1)のように表すことができる。なお、対物レンズ2の色収差は無視できるものとしている。
【0037】
【数1】

【0038】
さらに、対物レンズ2の有効径φb (λ)は、(式1)の関係を用いて、(式2)のように表すことができる。
【0039】
【数2】

【0040】
また、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離c(λ)は、(式1),(式2)の関係を用いて、(式3)のように表すことができる。
【0041】
【数3】

【0042】
理論的に、対物レンズ2から対物レンズ2により合焦する点までの距離c(λ)と波長との関係は(式3)のように表すことができるが、ヘッド部10の光学系の個体差が大きく、精度の高い計測を行なうためにはヘッド部10とコントローラ部20とを1対1対応させて調整する必要があった。この調整によって得られる波長−距離補正係数を、ヘッド部10の個体情報として記憶部40に記憶し、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に結び付けておくことで、共焦点計測装置100は、記憶部40を結び付けたヘッド部10を取替えても、ヘッド部10の個体情報を用いることで精度の高い計測を行なうことができる。
【0043】
ここで、波長−距離補正係数を得るための調整について図を用いて具体的に説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100において波長−距離補正係数を得るための調整を説明するための模式図である。
【0044】
まず、共焦点計測装置100は、図3(a)に示すように自動ステージ(図示せず)上に設置した計測対象物200を計測可能範囲内で移動させ、各距離に対する計測波形からピーク波長を読取る。計測波形から読取ったピーク波長に対する各距離の関係は、図3(b)のグラフのように表わすことができ、距離c(λ)と波長λとの関係式をc(λ)=αλ+βλn−1+・・・と算出することができる。ここで、αおよびβが波長−距離補正係数であり、当該波長−距離補正係数を記憶部40に記憶させる。
【0045】
記憶部40は、図示しないが、不揮発性メモリであるフラッシュメモリと、当該フラッシュメモリへの情報の記憶、読出しを行なう制御回路と、情報の入出力を行なうインターフェースとを有している。そして、記憶部40は、インターフェースをコントローラ部20の入力インターフェース25cに接続する(たとえばコネクタ同士を嵌合する)ことで、調整によって得られた波長−距離補正係数の情報をフラッシュメモリに電気的に記憶させることや、読出すことができる。
【0046】
共焦点計測装置100は、波長−距離補正係数の情報を記憶した記憶部40をヘッド部10に関係付けておくことで、ヘッド部10を取付けた際に、取付けたヘッド部10に関係付けた記憶部40から波長−距離補正係数をコントローラ部20で読出すことができる。共焦点計測装置100は、読出した波長−距離補正係数を利用して信号処理回路部25bで予め定められた演算を行なうことで、取付けたヘッド部10の光学系の個体差を考慮して、計測対象物200の変位の計測を高い精度で行なうことができる。
【0047】
なお、記憶部40は、電気的に波長−距離補正係数を記憶することができる構成であれば不揮発性メモリに限定されない。また、コントローラ部20は、コネクタを介して記憶部40と直接接続して波長−距離補正係数を読出す場合に限定されるものではなく、たとえば電波を介して記憶部40と非接触で接続して波長−距離補正係数を読出してもよい。
【0048】
さらに、図1に示す共焦点計測装置100では、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に記憶部40を紐で結び付けることで、ヘッド部10と記憶部40とを関係付けているが、本発明に係る共焦点計測装置100はこれに限定されない。たとえば、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に記憶部40を紐で結び付けるのではなく、ヘッド部10に記憶部40を紐で直接結び付けることで、ヘッド部10と記憶部40とを関係付けてもよい。
【0049】
また、図4は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100において、ヘッド部10と記憶部40とを関係付ける別の構成を説明するための模式図である。図4に示すように、ヘッド部10に接続した光ファイバ11は、コントローラ部20に接続するコネクタ部12に記憶部40を内蔵し、当該コネクタ部12に光ファイバ11の端子13と平行して記憶部40の端子40aを設けてある。コントローラ部20の入力インターフェース25cには、光ファイバ11の端子13と嵌合する入力端子25c1、および記憶部40の端子40aと嵌合する入力端子25c2が設けてある。そのため、光ファイバ11のコネクタ部12を、コントローラ部20の入力インターフェース25cに差込むことで、ヘッド部10をコントローラ部20に光学的に接続するとともに、記憶部40をコントローラ部20に電気的に接続することができる。よって、図4に示す共焦点計測装置100は、使用者が記憶部40に記憶した波長−距離補正係数をコントローラ部20に読出す操作を意識することなく、ヘッド部10の取付けを行なうことができる。
【0050】
さらに、ヘッド部10と記憶部40との関係付けは、必ずしも物理的にヘッド部10と記憶部40とが結び付いている必要はなく、ヘッド部10に貼り付けてあるシリアル番号と同じ番号が記憶部40に貼り付けてあってもよい。
【0051】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100は、波長−距離補正係数を記憶した記憶部40を、製造されるヘッド部10のそれぞれの個体に対して関係付けて設けてあり、コントローラ部20が記憶部40から波長−距離補正係数を読出し、当該波長−距離補正係数を用いて演算を行なうので、ヘッド部10を交換しても精度の高い計測を行なうことができる。また、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100は、コントローラ部20に対してヘッド部10を交換することが可能なように互換性を持たせることで、ヘッド部10が破損したときにヘッド部10だけ製造メーカに返送することができる。さらに、複数の共焦点計測装置100を有している場合、ヘッド部10のみを交換して装置のレイアウトを変更することができる。なお、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置100は、ヘッド部10に波長−距離補正係数を記憶する記憶部を設ける構成でないため、ヘッド部10を小型化することができる。
【0052】
ここで、記憶部40に記憶させるヘッド部10の個体情報は、波長−距離補正係数に限定されるものではなく、装置のシリアル番号、型式、機種などの装置関連情報、計測中心距離、計測可能範囲、ワーク別対応モードの有無、感度調整モードの有無、自動光量制御係数などの計測関連情報、バージョン情報などのソフトウェア関連情報などを含んでもよい。
【0053】
また、本発明の実施の形態1に係る光学計測装置では、共焦点光学系を利用して計測対象物200の変位を計測する共焦点計測装置100について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る光学計測装置は、ヘッド部の光学系とコントローラ部の光学ユニットとを光ファイバで繋ぐ構成であれば、計測対象物の膜厚を計測する膜厚計、計測対象物の色や波長を計測するカラーセンサ、計測対象物の光量を計測する光度計などであってもよい。
【0054】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る光学計測装置では、ヘッド部の個体情報を電気的ではなく、光学的または磁気的に記憶させた記憶部の構成について説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。図5に示す光学計測装置も共焦点計測装置110であり、ヘッド部10の個体情報を光学的に記憶させた記憶部41、および記憶部41の読取機(読取部)27の構成以外、図1に示した共焦点計測装置100の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0055】
記憶部41は、波長−距離補正係数などのヘッド部10の個体情報を記憶した二次元バーコードである。コントローラ部20に内蔵した読取機27は、記憶部41の二次元バーコードを読取るバーコードリーダまたはカメラである。図5に示すように、共焦点計測装置110は、記憶部41の二次元バーコードを記載したタグを、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に紐で結び付けてある。そのため、共焦点計測装置110は、ヘッド部10をコントローラ部20に取付けた際に、コントローラ部20でタグに記載された二次元バーコードを読取機27で読取ることにより、記憶部41に記憶した波長−距離補正係数を読出すことができる。
【0056】
なお、記憶部41は、二次元バーコードに限定されるものではなく、光学的に情報を読取る読取機27が読取ることができれば一次元バーコード、数字列などであってもよい。さらに、記憶部41は、光学的にヘッド部10の個体情報を記憶した光ディスク(CD−ROM、DVD−ROMなど)でもよい。なお、記憶部41が光ディスクの場合、読取機27は、光ディスクからヘッド部10の個体情報を読出すドライブ装置となる。
【0057】
また、ヘッド部10と記憶部40との関係付けは、記憶部41の二次元バーコードを記載したタグを、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に紐で結び付ける場合に限定されるものではなく、記憶部41の二次元バーコードを記載したシールをヘッド部10に貼り付けてもよい。
【0058】
さらに、記憶部41は、ヘッド部10の個体情報を磁気的に記憶させた磁気カード、磁気ディスクなどであってもよい。なお、記憶部41が磁気カードまたは磁気ディスクの場合、読取機27は、磁気カードまたは磁気ディスクからヘッド部10の個体情報を読出すリーダまたはドライブ装置となる。記憶部41は、ヘッド部10の個体情報を、電気的、光学的および磁気的な方式のうち少なくとも2つの方式を組合わせて記憶させた記憶媒体であってもよい。たとえば、記憶部41は、光学的な方式と磁気的な方式とを組合わせた光磁気ディスクや電気的な方式と磁気的な方式とを組合わせた磁気抵抗メモリなどであってもよい。
【0059】
図6は、本発明の実施の形態2に係る光学計測装置の別の構成を示す模式図である。図6に示す光学計測装置も共焦点計測装置120であり、記憶部41の読取機28の構成以外、図5に示した共焦点計測装置110の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0060】
読取機28は、コントローラ部20の外部に設けられ、電気的な配線を介して接続してある。具体的に、記憶部41が、波長−距離補正係数などのヘッド部10の個体情報を記憶した二次元バーコードである場合、読取機28は、コントローラ部20に配線で接続され、記憶部41の二次元バーコードを読取るバーコードリーダである。共焦点計測装置120は、ヘッド部10に接続した光ファイバ11に紐で結び付けてあるタグ(記憶部41)を、コントローラ部20に近づけることなく、読取機28でタグに記載された二次元バーコードを読取り、記憶部41に記憶した波長−距離補正係数を読出すことができる。
【0061】
また、共焦点計測装置120は、ヘッド部10に関係付けられた記憶部41が異なる方式で個体情報を記憶してあっても、方式にあった読取機28をコントローラ部20に接続することで、記憶部41に記憶した波長−距離補正係数を読出すことができる。
【0062】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置110,120では、ヘッド部10の個体情報を記憶部41に光学的または磁気的に記憶させ、対応する読取機27でヘッド部10の個体情報を読出すことで、ヘッド部10を交換しても精度の高い計測を行なうことができる。また、共焦点計測装置120は、コントローラ部20の外部に読取機28を設けることで、記憶部41の設ける位置や記憶させる方式の自由度を増すことができる。
【0063】
なお、共焦点計測装置120は、図1に示すようなヘッド部10の個体情報を電気的に記憶させた記憶部40に対しても、コントローラ部20の外部に設けられ読取機28で、記憶部40に記憶したヘッド部10の個体情報を読出すことができる。
【0064】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る光学計測装置では、物理的に独立した分光器部と信号処理部とで構成されるコントローラ部を備えている。図7は、本発明の実施の形態3に係る光学計測装置の構成を示す模式図である。図7に示す光学計測装置も共焦点計測装置130であり、物理的に独立した分光器部71と信号処理部72とで構成されるコントローラ部20を備えている以外、図1に示した共焦点計測装置100の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0065】
コントローラ部20は、分光器部71、信号処理部72、分光器部71と信号処理部72とを電気的に接続する配線73を備えている。分光器部71は、白色光源である白色LED21、分岐光ファイバ22、分光器23、撮像素子24、制御回路部25の分光制御回路部25aを備えている。信号処理部72は、制御回路部25の信号処理回路部25b、入力インターフェース25c、出力インターフェース25dを備えている。なお、図示していないが、共焦点計測装置130は、信号処理部72の出力インターフェース25dを介してモニタ部30に接続されている。
【0066】
配線73は、分光器部71の撮像素子24が出力した信号を信号処理部72に供給するとともに、信号処理部72から分光器部71へ必要な電力を供給するための電気的な経路である。
【0067】
共焦点計測装置130は、コントローラ部20を分光器部71、信号処理部72に分けることで、1つの信号処理部72に対して複数の分光器部71を接続すること構成が可能となり、装置全体を小型化することができる。
【0068】
また、共焦点計測装置130は、実施の形態1で説明したように、記憶部40に記憶した波長−距離補正係数をコントローラ部20の信号処理部72で読出し、読出した波長−距離補正係数を利用して信号処理回路部25bで予め定められた演算を行なうことで、取付けたヘッド部10の光学系の個体差を考慮して、計測対象物200の変位の計測を高い精度で行なうことができる。なお、共焦点計測装置130は、複数の分光器部71を接続する場合、接続する分光器部71に対応して信号処理回路部25bが設けられ、それぞれの信号処理回路部25bに記憶部40に記憶した波長−距離補正係数を読出す。もちろん、共焦点計測装置130は、記憶部40に記憶した波長−距離補正係数を読出す機能を、信号処理部72側でなく、分光器部71側に設けてもよい。
【0069】
さらに、共焦点計測装置130は、図7に示すように信号処理部72に代表値保持部75を設けてもよい。代表値保持部75は、記憶部40からヘッド部10の個体情報を読出すことができない場合に利用することができる演算に必要な情報(ヘッド部10の代表値(デフォルト値))を記憶してある。
【0070】
ここで、ヘッド部10の代表値は、ヘッド部10の光学系の個体差を平均化して得られた値であり、計測対象物200の変位の計測を高い精度で行なうことができないが、暫定的に計測を行なうためのヘッド部10の情報(たとえば、波長−距離補正係数)である。
【0071】
共焦点計測装置130は、代表値保持部75を設けておくことで、ヘッド部10に関係付けられた記憶部40を紛失した場合や、記憶部40から情報を読出す装置が壊れた場合など、記憶部40からヘッド部10の個体情報を読出すことができない場合であっても、高い精度ではないが簡易的に計測対象物200の変位を計測することができる。
【0072】
また、共焦点計測装置130は、代表値保持部75を設けておくことで、精度が不要で簡易的な確認を行う場合や、応急処置的な使用の場合に、記憶部40からヘッド部10の個体情報を読出す作業を省略することができる。具体的に、精度が不要で簡易的な確認を行う場合や、応急処置的な使用の場合には、販売促進活動や簡易のテスティング、導入、設置時の簡易動作確認、メンテナンス、ヘッド部10交換時の簡易動作確認などがある。
【0073】
なお、代表値保持部75は、図7に示す共焦点計測装置130に設ける場合に限定されるものではなく、図1に示す共焦点計測装置100、図5に示す共焦点計測装置110および図6に示す共焦点計測装置120に設けてもよい。
【0074】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る共焦点計測装置130は、コントローラ部20を分光器部71と、信号処理部72とに分けることで装置構成の自由度が増し、装置全体を小型化することができる。また、本発明の実施の形態3に係る共焦点計測装置130は、代表値保持部75を設けることで、記憶部40からヘッド部10の個体情報を読出すことができない場合でも、簡易的に計測対象物200の変位を計測することができる。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 回折レンズ、2 対物レンズ、3 集光レンズ、10 ヘッド部、11,22a,22b,22c 光ファイバ、12 コネクタ部、13,40a 端子、20 コントローラ部、22 分岐光ファイバ、23 分光器、23a 凹面ミラー、23b 回折格子、24 撮像素子、25 制御回路部、25a 分光制御回路部、25b 信号処理回路部、25c1,25c2 入力端子、25c 入力インターフェース、25d 出力インターフェース、27,28 読取機、30 モニタ部、40,41 記憶部、71 分光器部、72 信号処理部、73 配線、75 代表値保持部、100,110,120,130 共焦点計測装置、200 計測対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に対して光を用いて計測を行なう光学計測装置であって、
前記計測対象物からの光を受光する光学系を含むヘッド部と、
前記ヘッド部で受光した光を電気信号に変換する光学ユニットを含み、前記光学ユニットで変換した前記電気信号に対して演算を行ない、計測結果を出力するコントローラ部と、
前記ヘッド部と前記コントローラ部とを接続し、前記ヘッド部の前記光学系と前記コントローラ部の前記光学ユニットとを繋ぐ光路となる光ファイバと、
製造される前記ヘッド部のそれぞれの個体に対して関係付けられ、前記コントローラ部で行なう前記演算に必要な情報を前記ヘッド部の個体情報として記憶する記憶部と
を備え、前記コントローラ部は、前記コントローラ部に対して物理的に独立して存在する前記記憶部から前記個体情報を読出し、読出した前記個体情報を用いて前記演算を行なう、光学計測装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記個体情報を電気的に記憶する記憶媒体を有し、前記コントローラ部の入力端子と接続することで、前記記憶媒体から前記個体情報を読出すことが可能となる、請求項1に記載の光学計測装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記個体情報を磁気的または光学的に記憶する記憶媒体を有し、前記コントローラ部に内蔵または接続した読取部を用いて、前記記憶媒体から前記個体情報を読出すことが可能となる、請求項1に記載の光学計測装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記ヘッド部または前記ヘッド部に接続した前記光ファイバに結び付けてある、請求項2または請求項3に記載の光学計測装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記コントローラ部に接続する前記光ファイバのコネクタ部に内蔵され、前記コネクタ部を前記コントローラ部に接続する操作により、前記コントローラ部の前記入力端子に接続することができる、請求項2に記載の光学計測装置。
【請求項6】
前記コントローラ部は、前記記憶部から前記個体情報を読出すことができない場合に利用することができる前記演算に必要な情報を記憶してある、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光学計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68523(P2013−68523A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207412(P2011−207412)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】