説明

光学遅延装置及び光学遅延方法

【課題】測定時間の短縮化及び測定精度の向上を図ると共に装置の小型化が可能な光学遅延装置を提供する。
【解決手段】回転型の光学遅延装置10は、入射された光を反射して出射する反射体110〜140と、反射体から出射された光を反射して、この反射体とは異なる他の反射体に入射させるミラー群210〜230と、を備える。反射体110〜140に入射される入力光の光路長を、反射体110〜140の回転によって変動させることにより、入力光に対して遅延された遅延光を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ時間領域分光法、光干渉計、光コヒーレントトモグラフィ、超短パルス光測定等に係る光学遅延装置及び光学遅延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ時間領域分光法等では、ポンプ−プローブ法による時間分解測定法が用いられている。ポンプ−プローブ法では、レーザパルス光を2つの光路に分岐して、分岐された一方の光(プローブ光)の光路長を伸長(若しくは縮小、以下「変動」という)させて時間遅延を与え、測定物から透過又は反射された他方の光(ポンプ光)と合波させて光強度や位相を時間分解測定する方法である。
【0003】
よって、この方法では、上記光路長差を、正確かつ迅速にそして安定的に発生させることが、測定精度の向上及び測定時間の短縮化を図るうえで重要な問題となっている。従来、上記光路長差は、反射ミラーが搭載された直動ステージ等の光学遅延装置によって発生させていた。しかしながら、従来の光学遅延装置では、直動ステージの移動量や移動速度の限界から、測定時間の短縮化という点で改善の余地があった。
【0004】
このような問題に対処するため、測定時間の短縮化を図った回転型の光学遅延装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、回転ミラーによる高速光遅延発生装置として、高速回転する正方形断面を持つ角柱状ブロック21の回転ラジアル方向の4面に、板状ミラー23−1〜23−4を設置した直角全反射ミラー20と、この直角全反射ミラー20からの反射光を受けて、同一光路を反射回帰するための固定反射ミラー25とを具備する旨が開示されている。そして、特許文献1には、角柱状ブロック21、板状ミラー23−1〜23−4、及び固定反射ミラー25の替わりに、回転円板31、コーナーキューブプリズム33、及び固定反射ミラー34を設けてもよい旨が開示されている。
【0005】
特許文献1では、ハーフミラー2からの参照光は、板状ミラー23−1〜23−4又はコーナーキューブプリズム33のうちの一つ(以下、「反射体」という)に入射され、該反射体で反射して反射体外へ出射された後、固定反射ミラー25、34を介して、再び同じ反射体へ入射されてハーフミラー2へ出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−310895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、入射されたプローブ光(文献1では参照光)に与えられる光路長差は、一つの反射体の回転によって発生する光路長差に限定されるため、必要な遅延量を確保するには、反射体自体や反射体の回転半径を大型化しなければならず、光学遅延装置(文献1では高速光遅延発生装置)の大型化や高コスト化を招いてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献1では、反射体毎の寸法や配置及び反射率に個体差があると、入射されたプローブ光に与えられる光軸角度や出力光強度が、反射体毎の個体差の影響から出力毎にバラついてしまい、高い測定精度を安定して得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされものであって、上述のような問題点を解消することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決可能な光学遅延装置を提供することを目的とする。すなわち、測定時間の短縮化及び測定精度の向上を図ると共に装置の小型化が可能な、光学遅延装置及び光学遅延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、入射された光を反射して出射する複数の反射体と、前記反射体から出射された光を反射して該反射体とは異なる他の反射体に入射させるミラーと、を備え、前記反射体に入射される入力光の光路長を前記反射体の回転によって変動させることにより、前記入力光に対して遅延された遅延光を出力する回転型の光学遅延装置であって、前記ミラーは、前記入力光が入射された前記反射体から出射された光を、全ての前記他の反射体に入射させることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、入射された光を反射して出射する複数の反射体と、前記反射体から出射された光を反射するミラーと、を備え、前記反射体に入射される入力光の光路長を前記反射体の回転によって変動させることにより、前記入力光に対して遅延された遅延光を出力する光学遅延方法であって、前記入力光を、回転する前記反射体に入射する第1工程と、前記第1工程によって入射された前記入力光を反射して、前記回転する反射体から出射する第2工程と、前記第2工程によって出射された前記入力光を反射して、前記第1工程によって前記入力光が入射された前記反射体とは異なる他の回転する反射体へ入射する第3工程と、前記第3工程によって入射された前記入力光を反射して、前記他の回転する反射体から出射する第4工程と、前記第2工程乃至前記第4工程と同様の工程を繰り返して、前記複数の反射体の全てで反射された前記入力光を前記遅延光として出力する第5工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学遅延装置を模式的に示す図である。
【図2】回転型光学遅延装置の光路長差を発生させる原理を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1実施例の光学遅延装置を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光学遅延装置が稼働した際の入力光の光路と反射体の角度走査範囲を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る第1実施例の光学遅延装置で出力された遅延光の光強度と光路長差との関係を模式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る第2実施例の光学遅延装置を模式的に示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る第3実施例の光学遅延装置を模式的に示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る第3実施例の光学遅延装置において位置ズレが生じた入力光の入射位置と反射体での反射の関係を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る第4実施例の光学遅延装置を模式的に示す図である。
【図10】本発明の一実施形態である光学遅延装置を搭載したテラヘルツ時間領域分光分析装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る光学遅延装置10の構成及び光路長差の発生原理について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学遅延装置10を模式的に示す図である。図2は、回転型光学遅延装置の光路長差を発生させる原理について説明するための図である。
【0014】
光学遅延装置10は、プローブ光など光学遅延装置10へ入力された光(以下、「入力光」という)の光路長を変動させることによって入力光に対して時間遅延を与えて、この時間遅延が与えられた光(以下、「遅延光」という)を出力する装置である。光学遅延装置10は、いわゆる回転型の光学遅延装置であって、入力光が入射される反射体100を回転させ、回転に伴う反射体100の角度変位により光路長の変動を発生させるものである。
【0015】
光学遅延装置10は、図1に示すように、回転台20と、回転台20上に設けられた反射体100と、回転台20の外部に設けられたミラー群200と、を少なくとも備えている。回転台20は、反射体100を回転させる役割を担っている。反射体100は、入射された光を反射して出射する役割を担っている。ミラー群200は、反射体100から出射された光を反射して他の反射体100に入射させる役割を担っている。
【0016】
回転台20は、単一平面、単一回転軸で回転平面を形成し、当該回転平面上に反射体100が設けられている。具体的には、反射体100は、回転台20の回転軸Zと同一回転軸とし、当該回転軸Zから所定距離R離れた位置に固定されている。すなわち、本実施形態では、反射体100は、回転台20の回転運動に対して何ら相対運動をせず、回転台20の回転によって、回転軸Zを中心とする半径Rの円Cの軌跡に沿って回転運動をする。なお、回転台20の形状は、図1では円形形状であるが、矩形状その他の形状であってもよく、特に限定されない。また、本実施形態では、回転台20は、所定の駆動パルス電圧によって回転し、反射体100を一定速度で回転させるものとする。
【0017】
反射体100は、複数の反射体100から構成されており、各反射体100が、それぞれ円C上に等間隔に設けられている。反射体100の数Nは、特に限定されないが、本実施形態では、N=4、すなわち、反射体100は、4つの反射体100から構成されているものとする。そして、反射体100を担う4つの反射体100を次のように定義する。すなわち、入力光が入射される反射体100を第1反射体110とし、第1反射体110から回転方向(図1では時計回り)に沿って順に、第2反射体120、第3反射体130、第4反射体140とする。
【0018】
第1反射体110〜第4反射体140の各反射体100は、それぞれが再帰性を有する反射体であって、各反射体100に入射された光を、当該入射された光の光路と略平行な光路に反射し、各反射体100外へ出射する。本実施形態では、第1反射体110〜第4反射体140の各反射体100は、それぞれが少なくとも2つの反射部から形成されており、2つの反射部は、各反射体100に入射された光の入射方向に垂直な半径R上に沿って配設されている。
【0019】
具体的には、第1反射体110であれば、第1反射体110に入射される入力光の入射方向(図1ではX方向)に垂直な円Cの半径方向(図1ではY方向)に沿って、径方向内側に配設された内側反射部111と、径方向外側に配設された外側反射部112とから少なくとも形成されている。内側反射部111と外側反射部112とは、入射された光をそれぞれ正反射する機能を有し、かつ好適には、全反射する機能を有していれば特に限定されず、公知の光学部材から構成することができる。
【0020】
例えば、内側反射部111と外側反射部112とを、それぞれ直角プリズムで構成する。そして、図1に示すように、内側反射部111を、当該内側反射部111の反射面が入力光に対して45°の入射角を形成して円Cの径方向外側へ反射するように配設する。そして、外側反射部112を、当該外側反射部112の反射面が、内側反射部111の反射面と90°の角度を形成するように配設する。このとき、内側反射部111と外側反射部112とは、上記のように、それぞれ半径R上に沿って配設される。
【0021】
上記のように配設された内側反射部111と外側反射部112とから少なくとも形成される第1反射体110は、再帰性を有することができる。具体的には、入力光が、図1の一点鎖線で示すように、内側反射部111に入射されるとすると、内側反射部111は、入力光を正反射して45°の反射角で外側反射部112へ出射する。外側反射部112は、内側反射部111から45°の入射角で入射された入力光を正反射して45°の反射角で、第1反射体110外へ出射する。
【0022】
結果として、第1反射体110へ入射された入力光は、内側反射部111によって、その進行方向を径方向外側へ90°向きを変えて外側反射部112へ入射され、外側反射部112によって、その進行方向を更に径方向外側へ90°向きを変えて第1反射体110外へ出射される。すなわち、第1反射体110へ入射された入力光は、当該入力光の光路と略平行な光路を通って、第1反射体110外へ出射されることとなる。なお、内側反射部111と外側反射部112とは、直角プリズム以外にも、コーナーキューブプリズムやリトロリフレクタ等から構成することができる。
【0023】
第2反射体120〜第4反射体140も、第1反射体110と同様の内側反射部と外側反射部とから形成されている。すなわち、第2反射体120は内側反射部121と外側反射部122、第3反射体130は内側反射部131と外側反射部132、第4反射体140は内側反射部141と外側反射部142、とからそれぞれ形成されている。そして、第2反射体120〜第4反射体140も、第1反射体110と同様に、再帰性を有する反射体となっている。
【0024】
一方、ミラー群200は、複数のミラー群200から構成されており、各ミラー群200は、反射体100の回転運動とは同期して運動しないように設けられている。本実施形態では、各ミラー群200は、それぞれ回転台20の外部に固定されている。ミラー群200は、反射体100から出射された光を反射して他の反射体100に入射させる役割を担っている。このため、ミラー群200の数は、反射体100の数Nと相関があり、少なくともN−1個のミラー群を要する。
【0025】
本実施形態では、反射体100は、4つの反射体100から構成されているため、ミラー群200は、3つのミラー群200から構成されている。そして、ミラー群200を担う3つのミラー群200を次のように定義する。すなわち、第1反射体110から出射された光を反射して、第2反射体120へ入射させるミラー群200を、第1ミラー群210とする。同様に、第2反射体120から出射された光を反射して、第3反射体130へ入射させるミラー群200を、第2ミラー群220とする。第3射体130から出射された光を反射して、第4反射体140へ入射させるミラー群200を、第3ミラー群230とする。
【0026】
第1ミラー群210〜第3ミラー群230の各ミラー群200は、各反射体100から出射された光を、各ミラー群200内で正反射を繰り返して当該光の進行方向を変える。そして、各ミラー群200は、各反射体100から出射された光を、当該光を出射した反射体100に回転方向で隣接する他の反射体100へ入射させる。
【0027】
本実施形態では、各ミラー群200は、各反射体100から出射された光の進行方向を変えるものの、隣接する他の反射体100へ入射させるときには、入射角がそれぞれの反射体100毎で等しくなるように配置されている。
【0028】
本実施形態は、第1ミラー群210〜第3ミラー群230の各ミラー群200は、それぞれ3つのミラー部から形成されている。具体的には、第1ミラー群210であれば、第1ミラー部211と、第2ミラー部212と、第3ミラー部213とから形成されている。第1ミラー群210の第1ミラー部211〜第3ミラー部213は、入射された光をそれぞれ正反射する機能有し、かつ好適には、全反射する機能有していれば、公知の光学部材から構成することができる。
【0029】
例えば、第1ミラー部211〜第3ミラー部213を、入射角45°用誘電体多層膜の平面ミラーで構成する。そして、図1に示すように、第1ミラー部211を、当該第1ミラー部211の反射面が第1反射体110の外側反射部112から出射された光に対して45°の入射角を形成して径方向外側へ反射するように配設する。そして、第2ミラー部212を、当該第2ミラー部212の反射面が、第1ミラー部211の反射面と90°の角度を形成するように配設する。そして、第3ミラー部213を、当該第3ミラー部213の反射面が、第2ミラー部212の反射面と90°の角度を形成するように配設する。このとき、第3ミラー部213から出射される光が、第2反射体120の内側反射部121へ入射される際の入射角(図1では45°)が、第1反射体110の内側反射部111へ入射される光の入射角(図1では45°)と等しくなるように、第1ミラー群210の第1ミラー部211〜第3ミラー部213の配置が調整されている。
【0030】
上記のように配設された第1ミラー群210では、図1の一点鎖線で示すように、第1反射体110の外側反射部112から出射された入力光が、第1ミラー部211へ入射されると、第1ミラー部211は、入力光を正反射して45°の反射角で第2ミラー部212へ出射する。第2ミラー部212は、第1ミラー部211から45°の入射角で入射された入力光を正反射して45°の反射角で第3ミラー部213へ出射する。第3ミラー部213は、第2ミラー部212から45°の入射角で入射された入力光を正反射して45°の反射角で第2反射体120の内側反射部121へ入射させる。
【0031】
結果として、第1反射体110から出射された入力光は、第1ミラー部211によって、その進行方向を径方向外側へ90°向きを変えて第2ミラー部212へ入射され、第2ミラー部212によって、その進行方向を更に反射体の回転ベクトルの正方向へ90°向きを変えて第3ミラー部213へ入射され、第3ミラー部213によって、その進行方向を更に径方向内側へ90°向きを変えて第2反射体120の内側反射部121へ入射されることとなる。すなわち、入射角45°で第1反射体110へ入射され出射された入力光は、第1反射体110の回転方向にて隣接する第2反射体120へ、第1反射体110への入射角と同じ入射角45°で入射されることとなる。
【0032】
第2ミラー群220、第3ミラー群230も、第1ミラー群210と同様の第1ミラー部〜第3ミラー部から形成されている。すなわち、第2ミラー群220は第1ミラー部221〜第3ミラー部223、第3ミラー群230は第1ミラー部231〜第3ミラー部233からそれぞれ形成されている。そして、第2ミラー群220、第3ミラー群230も、第1ミラー群210と同様に、入射角がそれぞれの反射体100同士の間で異なることが無いように配置されている。
【0033】
上記反射体100に対してミラー群200を上記構成とすることにより、反射体100にて発生可能な光路長差が略一定となり、得られる遅延量も略一定となる。
【0034】
また、各ミラー群200をこのように配置すると、入力光を一つの反射体100ではなく複数の反射体100に反射された遅延光として出射させることができる。このため、一つの入力光に対して発生する遅延量は、複数の反射体の回転によって発生する光路長差が累積されることで比較的大きくなる。これにより、光学遅延装置10は、所望の遅延量を得るために要する測定時間の短縮化を図り、所望の遅延量を得ることが可能な程度に装置の小型化を図ることができる。
【0035】
また、各ミラー群200をこのように配置すると、入力光を一つの反射体100ではなく全ての反射体100に反射された遅延光として出射させることができる。このため、反射体100毎の寸法や配置に固体差があっても、反射体100毎の個体差を吸収することができる。そのため、遅延光の出力毎で光路長差や光軸角度にバラツキを生じさせることがなく、安定した測定精度を得ることができる。
【0036】
続いて、回転型光学遅延装置が回転によって光路長差を発生させる原理について説明する。図2では、説明の簡略化のため、一つの反射体と一つのミラーのみを記載している。また、図2では、回転台20による反射体の回転角が、0°〜+θ°の範囲の場合を示している。
【0037】
図2に示すように、入力光の入射方向に垂直な半径R上に沿って位置する反射体を、反射体Aとし、反射体Aに対して角度θ°だけ回転したとき(すなわち回転角がθ°のとき)の反射体を、反射体Bとする。また、ミラーは、回転台の外部に固定された固定ミラーとし、反射体A又は反射体Bから出射された光を、再び反射体A又は反射体Bへ再帰させる。そして、反射体Aへ入射される入力光の光路を光路a、反射体Bへ入射される入力光の光路を光路bとする。なお、回転角θは、例えば、−45°〜45°の範囲に設定することができる。
【0038】
入力光が反射体A及び反射体Bへそれぞれ入射され、反射体A及び反射体Bの各内側反射部及び各外側反射部でそれぞれ正反射されて固定ミラーへ出射されたとき、光路aと光路bとの光路長に差が生じる。このときの光路aと光路bの光路長差は、2Rsinθとなる。また、このとき、光路bに係る光の光軸は、光路aに係る光の光軸に対して径方向内側へ移動する(以下、「位置ズレ」という)。
【0039】
その後、反射体A及び反射体Bから出射された光が、固定ミラーによって再び反射体A又は反射体Bへ再帰されたとき、上記と同様に光路aと光路bとの光路長に差が生じる。このときの光路aと光路bの光路長差は、2Rsinθとなる。
【0040】
また、このとき、入力光は、回転により位置ズレした光路bで反射体Bから固定ミラーへ出射された後、固定ミラーでの再帰反射では位置ズレを維持し、その後、位置ズレした光路bのままで固定ミラーから当該反射体Bへ再び入射されている。そのため、位置ズレした光路bを通って固定ミラーから反射体Bへ入射された入力光は、外側反射部及び内側反射部での正反射によって、位置ズレが解消されることとなる。
【0041】
このとき、入力光は、回転角θ°で回転された反射体の内側反射部に入射角(90°−θ°)で入射され、正反射されて外側反射部へ出射される。そして、外側反射部にて正反射されて固定ミラーに反射角θ°で出射される。その後、光路長差及び位置ズレを維持したまま、再び同じ回転角θ°で回転された反射体の外側反射部に、当該反射角と同じ角度の入射角θ°で入射され、正反射されて内側反射部へ出射される。そして、内側反射部にて正反射されて入力光の入射位置に反射角(90°−θ°)で出射される。反射体へ入射された入力光の入射角と、戻ってきた入力光の反射角とが、両者とも(90°−θ°)で等しいため、位置ズレが解消されることとなる。
【0042】
すなわち、内側反射部及び外側反射部はそれぞれ正反射し、互いに90°の角度をなすように形成されている。このため、内側反射部へ入射される光の入射角(90°−θ°)及び外側反射部から出射される光の反射角θ°の合計と、外側反射部へ入射される光の入射角θ°及び内側反射部から出射される光の反射角(90°−θ°)の合計とが、両者とも90°であり等しくなるようにすれば、位置ズレの解消が可能となる。よって、上記のような構成の反射体を2の整数倍設け、各反射体を1度ずつ通過させたときには、回転による光軸の位置ズレが解消される。
【0043】
また、上記の場合には、反射体を2度通過することによって、2Rsinθ×2個=4Rsinθの光路長差を発生させることができる。数値例を挙げると、R=30mmの位置に反射体を配置し、θ=15°回転させた場合には、光路長差を31mm与えることができる。これは、空気中を進行する光に対して104ピコ秒(1ps=10−12s)の遅延を与えることに相当する。
【0044】
[第1実施例]
次に、本発明の一実施形態に係る第1実施例の光学遅延装置11について、図3乃至図5を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る第1実施例の光学遅延装置11を模式的に示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係る光学遅延装置が稼働した際の入力光の光路と反射体の角度走査範囲を説明するための図である。図5は、本発明の一実施形態に係る第1実施例の光学遅延装置11から出力された遅延光の光強度と光路長差との関係を模式的に示す図である。
【0045】
なお、図3では、説明の簡略化のため、回転台20による反射体100の回転角が、0°〜+θ°の範囲の場合を示している。また、図3の一点鎖線は、回転角が0°のときの入力光の光路を示し、図3の二点鎖線は、回転角がθ°のときの入力光の光路を示している。
【0046】
第1実施例では、図1で示した光学遅延装置10を、光ファイバ結合部材400に結合した例を示す。光学遅延装置10の光ファイバへの結合は、光ファイバを介して光学遅延装置10と接続される他の計側装置との取り回しの自由度が向上するといった利点がある。その他の構成は、図1で示した回転台20、反射体100、ミラー群200を含め、光学遅延装置10の構成と同様である。
【0047】
光ファイバ結合部材400は、図3に示すように、入力光を光学遅延装置11に入射する入力ファイバ411と、光学遅延装置11から出射された遅延光を取り込む出力ファイバ412と、から構成されている。また、光ファイバ結合部材400には、入力ファイバ411から光学遅延装置11へ入射される入力光を平行化するためのコリメータである入力コリメータ421と、光学遅延装置11から出力ファイバ412へ出射される遅延光を集光化するための出力コリメータ422とが含まれている。
【0048】
なお、遅延光を出力ファイバ412へ結合させるとき、遅延光の光軸が、光ファイバのコア部で全反射できない程にずれてしまうと、得られる遅延光の光強度が低下してしまう。このため、遅延光の光軸を一定に保って出力ファイバ412へ結合させることが重要となる。
【0049】
入力ファイバ411から出射された入力光は、図3に示すように、入力コリメータ421を介して、光学遅延装置11の第1反射体110へ入射される。第1反射体110へ入射された入力光は、具体的には、図1での説明と同様に、第1反射体110の内側反射部111へ入射される。ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合、入力光は、内側反射部111によって、径方向外側へ正反射して、外側反射部112へ入射され、外側反射部112によって、更に径方向外側へ正反射して、第1ミラー群210へ出射される。
【0050】
この間、第1反射体110から第1ミラー群210へ出射された入力光の光路長は、図2での説明と同様に、2Rsinθだけ増加する。また、この間、第1反射体110から第1ミラー群210へ出射された入力光の光軸は、径方向内側へ位置ズレする。
【0051】
そして、第1ミラー群210へ入射された入力光は、具体的には、図1での説明と同様に、第1ミラー群210の第1ミラー部211へ入射される。ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合でも、ミラー群200は、回転台20の外部に固定されている。このため、第1ミラー群210内では、入力光の光路長差及び光軸の位置ズレは維持されたまま、第2反射体120へ出射される。
【0052】
すなわち、第1ミラー群210へ入射された入力光は、第1ミラー部211によって、径方向外側へ90°向きを変えて第2ミラー部212へ入射され、第2ミラー部212によって、更に反射体の回転ベクトルの正方向へ90°向きを変えて第3ミラー部213へ入射され、第3ミラー部213によって、更に径方向内側へ90°向きを変えて第2反射体120へ出射される。
【0053】
そして、第1ミラー群210から第2反射体120へ入射された入力光は、第2反射体120の内側反射部121へ入射される。ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合、入力光は、内側反射部121によって、径方向外側へ正反射して、外側反射部122へ入射され、外側反射部122によって、更に径方向外側へ正反射して、第2ミラー群220へ出射される。
【0054】
この間、第2反射体120から第2ミラー群220へ出射された入力光の光路長は、第1反射体110の場合と同様に、2Rsinθだけ増加する。また、この間、第2反射体120から第2ミラー群220へ出射された入力光の光軸は、位置ズレを解消する。この位置ズレの解消は、図2で説明した原理と同様である。
【0055】
すなわち、回転角θ°だけ回転した第1反射体110において、内側反射部111への入射角(90°−θ°)及び外側反射部112での反射角θ°となって出射された入力光が、第1ミラー群210では光路長差及び位置ズレを維持されたまま、第1反射体110と同一回転角θ°だけ回転した第2反射体120の内側反射部121へ、入射角(90°−θ°)で入射したときは、第2反射体の内側反射部121及び外側反射部122の正反射によって、外側反射部122から反射角θ°で出射されるため、位置ズレを解消することができる。
【0056】
そして、第2ミラー群220へ入射された入力光は、第1ミラー群210での場合と同様に、第2ミラー群220内では、入力光の光路長差は維持され、光軸の位置ズレは解消されたまま、第3射体130へ出射される。
【0057】
すなわち、第2ミラー群220へ入射された入力光は、第1ミラー部221によって、径方向外側へ90°向きを変えて第2ミラー部222へ入射され、第2ミラー部222によって、更に反射体の回転ベクトルの正方向へ90°向きを変えて第3ミラー部223へ入射され、第3ミラー部223によって、更に径方向内側へ90°向きを変えて第3反射体130へ出射される。
【0058】
そして、第2ミラー群220から第3反射体130へ入射された入力光は、第3反射体130の内側反射部131へ入射される。ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合、入力光は、内側反射部131によって、径方向外側へ正反射して、外側反射部132へ入射され、外側反射部132によって、更に径方向外側へ正反射して、第3ミラー群230へ出射される。
【0059】
この間、第3反射体130から第3ミラー群230へ出射された入力光の光路長は、第1反射体110での場合と同様に、2Rsinθだけ増加する。また、この間、第3反射体130から第3ミラー群230へ出射された入力光の光軸は、第1反射体110での場合と同様に、径方向内側へ位置ズレする。
【0060】
そして、第3ミラー群230へ入射された入力光は、第1ミラー群210での場合と同様に、第3ミラー群230内では、入力光の光路長差及び光軸の位置ズレは維持されたまま、第4射体140へ出射される。
【0061】
すなわち、第3ミラー群230へ入射された入力光は、第1ミラー部231によって、径方向外側へ90°向きを変えて第2ミラー部232へ入射され、第2ミラー部232によって、更に反射体の回転ベクトルの正方向へ90°向きを変えて第3ミラー部233へ入射され、第3ミラー部233によって、更に径方向内側へ90°向きを変えて第4反射体140へ出射される。
【0062】
そして、第3ミラー群230から第4反射体140へ入射された入力光は、第4反射体140の内側反射部141へ入射される。ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合、入力光は、内側反射部141によって、径方向外側へ正反射して、外側反射部142へ入射され、外側反射部142によって、更に径方向外側へ正反射して、遅延光として光学遅延装置11外の出力コリメータ422を介して、出力ファイバ412へ出射される。
【0063】
この間、第4反射体140から出力ファイバ412へ出射された入力光の光路長は、第1反射体110での場合と同様に、2Rsinθだけ増加する。また、この間、第4反射体140から出力ファイバ412へ出射された入力光の光軸は、位置ズレを解消する。この位置ズレの解消は、第2反射体120での場合と同様である。
【0064】
上記のように、第1反射体110〜第4反射体140の各反射体100では、回転角θ°だけ各反射体100を回転させたことによって、各反射体100にて光路長を2Rsinθずつ増加させることができる。そして、第1反射体110〜第4反射体140の全ての反射体100を通過させたときは、反射体100の数がN=4であるため、光路長の増加分は、2Rsinθ×4個=8Rsinθとなる。また、回転よる光軸の位置ズレは、上記のように、反射体の数NがN=4が2の整数倍であることで解消される。回転による光軸の位置ズレが解消されたことで、回転させた場合とそうでない場合での遅延光の光軸は同軸となる。
【0065】
ここで、図3では、説明の簡略化のため、回転角が0°〜+θ°だけ回転した場合を示した。実際に光学遅延装置11が稼働中の場合は、図4に示すように、反射体100は、回転角が−θ°〜+θ°の範囲で入力光を有効にミラー群200へ反射することができ、入力光に対して光路長差を発生させることができる。なお、本実施形態では、この回転角−θ°〜+θ°の範囲を「角度走査範囲」という。
【0066】
反射体100の回転角が0°〜+θ°の場合、発生する光路長差は、上記のように2Rsinθ×4個=8Rsinθであった。このため、反射体100の回転角が−θ°〜+θ°の場合、発生する光路長差は、4Rsinθ×4個=16Rsinθとなる。すなわち、回転角が−θ°〜+θ°の場合、反射体の数がNであれば、4NRsinθとなる。
【0067】
第1実施例に係る光学遅延装置11へ入力された入力光は、上記構成により、図5に示すような遅延光となって出力される。図5(a)は、回転パルスと回転角θの関係を示す図である。図5(b)は、遅延光と回転角θの関係を示す図である。図5(c)は、光路長差と回転角θの関係を示す図である。
【0068】
本実施形態では、図5(a)に示すように、1つの回転パルスによって回転台20が1回転するものとする。反射体100は、図4で説明したように、回転角が−θ°〜+θ°の範囲で有効に作動し、入力光は、図3で説明したように、第1反射体110→第2反射体120→第3反射体130→第4反射体140の順に通過していった後、遅延光として出力ファイバ412へ出力される。
【0069】
このとき、光路長差は、図4で説明したように、通過した反射体100の数が増える毎に、それぞれの反射体100で4Rsinθずつ増加し、4個の反射体100を通過した後は、4Rsinθ×4個=16Rsinθとなる。
【0070】
また、遅延光の光軸は、図3で説明したように、回転による位置ズレが解消されて出力ファイバ412へ出力される。すなわち、遅延光の光軸は、回転角θの増加に伴う位置ズレの影響を受けることなく、遅延光は一定の光軸で出力ファイバ412へ出力されることとなる。よって、遅延光の光強度は、反射体100及びミラー群200で全反射が可能であれば、入力光の光強度とほぼ同等の光強度として出力することができる。
【0071】
更に回転が進むと、入力光は、第4反射体140→第1反射体110→第2反射体120→第3反射体130の順に通過していった後、遅延光として出力ファイバ412へ出力される。このときも、前回(第1反射体110→第2反射体120→第3反射体130→第4反射体140の順に入力光が通過した場合)と同様に、光路長差は16Rsinθとなる。また、遅延光の光軸も、前回と同様に、回転による位置ズレが解消されて出力ファイバ412へ出力される。遅延光の光強度も、反射体100及びミラー群200で全反射が可能であれば、入力光の光強度とほぼ同等の光強度として出力することができる。
【0072】
以後、同様にして、回転台20が1回転する間に、入力光は、第3反射体130→第4反射体140→第1反射体110→第2反射体120の順に通過して遅延光が出力され、第2反射体120→第3反射体130→第4反射体140→第1反射体110の順に通過して遅延光が出力される。
【0073】
本実施形態では、入力光を、反射体100を担う第1反射体110〜第4反射体140
の全てで反射させて出力ファイバ412へ出力している。このため、反射体100が回転しても、入力光の光路中に配置された複数の反射体100の組合せ(すなわち、第1反射体110〜第4反射体140))を常に同じにすることができる。よって、複数の反射体100毎で反射角や反射率の性能にバラツキがあっても、遅延光の光強度に影響を及ぼすことがない。これにより、遅延光の光強度に対し出力毎でバラツキを生じさせず、安定した測定精度を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、反射体の数Nを、N=4と2の整数倍としているため、回転による光軸の位置ズレが解消された状態で遅延光が出力される。このため、遅延光の光軸が反射体の回転角に影響されることなく、遅延光を一定の光軸で出力ファイバ412へ出力させることができる。よって、遅延光の光軸を一定に保って光ファイバ結合を行うことができるため、安定した遅延光の光強度を得ることができる。これにより、遅延光の光強度に対し、回転角の増減や角度走査範囲の変更でバラツキを生じさせず、安定した測定精度を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、入力光は、1つの反射体100ではなく複数の反射体100で反射させて出力ファイバ412へ出力している。このため、遅延光の光路長差は、それぞれの反射体100毎で発生する光路長差が反射体100の数だけ累積されることで大きくなる。これにより、光学遅延装置11では、所望の遅延量を得ることが可能な程度に、反射体100の回転半径Rや反射体100自体の大きさを小さくしたり、角度走査範囲(−θ°〜+θ°)を小さくしたりして、装置を小型化することができる。そして、反射体100の回転半径Rを小さくできれば、回転台20の回転動力が同じときは、加減速時間を短くすることができ、測定時間を短縮することができる。
【0076】
なお、第1実施例に係る光学遅延装置11は、上述した構成以外は、光学遅延装置10と同様の構成であり、光学遅延装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
[第2実施例]
次に、本発明の一実施形態に係る第2実施例の光学遅延装置12について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る第2実施例の光学遅延装置12を模式的に示す図である。
【0078】
第2実施例では、図3で示した第1実施例の光学遅延装置11に対し、再帰反射器510を設ける点と、入力光と遅延光を一つの光ファイバ410で入出力させる点が異なっている。その他の構成は、図1及び図3で示した構成と同様であるため、説明を省略する。また、図6では、図3と同様に、回転角が0°〜+θ°の範囲の場合を示し、回転角が0°のときの入力光の光路を一点鎖線で示し、回転角がθ°のときの入力光の光路を二点鎖線で示している。
【0079】
再帰反射器510は、再帰性を有する反射器である。具体的には、再帰反射器510は、再帰反射器510に入射された光を、当該入射された光の光路と同じ光路に正反射する機能を有し、かつ好適には、全反射する機能を有していれば特に限定されない。本実施形態では、再帰反射器510は、第4反射体140から出射される光の光路に垂直な反射面を形成して回転台20の外部に固定されている。
【0080】
光ファイバ410から出射された入力光は、図6に示すように、第1実施例と同様、第1反射体110〜第4反射体140で反射されて、第4反射体140から入力光が出射される。第4反射体140から出射された入力光は、再帰反射器510にて正反射されて、再び入力光と同じ光路を通って第4反射体140へ入射される。
【0081】
ここで、回転台20によって回転角θ°だけ反射体100が回転している場合でも、図3で説明したように、第4反射体140から出射された入力光は、回転による光軸の位置ズレが解消されたまま、再帰反射器510へ出射される。そして、再帰反射器510では入射された入力光を、当該入力光の光路と同じ光路に正反射して、再び第4反射体140へ入射させる。このため、再び第4反射体140へ入射された入力光は、光ファイバ410から出射されて第1反射体110〜第4反射体140で反射された入力光の光路と同じ光路を通って、遅延光として光ファイバ410へ取り込まれることとなる。
【0082】
よって、第2実施例に係る光学遅延装置12では、第1実施例に係る光学遅延装置11の光路長差の2倍の光路長差を得ることができる。すなわち、回転角が−θ°〜+θ°の場合、16Rsinθ×2=32Rsinθとなる。反射体の数がNであれば4NRsinθ×2=8NRsinθとなる。このため、光学遅延装置12では、第1実施例に係る光学遅延装置11よりも、更に装置を小型化することができる。
【0083】
なお、第2実施例に係る光学遅延装置12は、上述した構成以外は、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の構成であり、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の作用効果を得ることができる。
【0084】
[第3実施例]
次に、本発明の一実施形態に係る第3実施例の光学遅延装置13について、図7及び図8を用いて説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る第3実施例の光学遅延装置13を模式的に示す図である。図8は、本発明の一実施形態に係る第3実施例の光学遅延装置13において位置ズレが生じた入力光の入射位置と反射体での反射の関係を説明するための図である。
【0085】
第3実施例では、図3で示した第1実施例の光学遅延装置11に対し、ミラー群200の配置が異なっている。その他の構成は、図1及び図3で示した構成と同様であるため、説明を省略する。また、図7では、図3と同様に、回転角が0°〜+θ°の範囲の場合を示し、回転角が0°のときの入力光の光路を一点鎖線で示し、回転角がθ°のときの入力光の光路を二点鎖線で示している。
【0086】
これまでの説明で示したミラー群200は、反射体100の回転角がθ°の場合、例えば、第1反射体110の外側反射部112から反射角θ°で出射された入力光を、第1ミラー群210内で正反射した後、第2反射体120の内側反射部121へ入射角(90°−θ°)で入射していた。すなわち、これまでの説明で示したミラー群200は、反射体100の回転角がθ°の場合、それぞれの反射体100を形成する各内側反射部に対し、入射角(90°−θ°)で入射させていた。
【0087】
これに対し、第3実施例のミラー群200は、反射体100の回転角がθ°の場合、例えば、第1反射体110の外側反射部112から反射角θ°で出射された入力光を、第1ミラー群210内で正反射した後、第2反射体120の外側反射部122へ入射角θ°で入射させる。このとき、第1ミラー群210は、第1反射体110で発生した光路長差及び位置ズレを維持したまま、第2反射体120へ入力光を入射させる。
【0088】
そして、第3実施例のミラー群200は、第2反射体120の内側反射部121から反射角(90°−θ°)で出射された入力光を、第2ミラー群220内で正反射した後、第3反射体130の内側反射部131へ入射角(90°−θ°)で入射させる。このとき、第2ミラー群220は、第2反射体120で発生した光路長差を維持し、位置ズレが解消されたまま、第3反射体130へ入力光を入射させる。
【0089】
そして、第3実施例のミラー群200は、第3反射体130の外側反射部132から反射角θ°で出射された入力光を、第3ミラー群230内で正反射した後、第4反射体140の外側反射部142へ入射角θ°で入射させる。このとき、第3ミラー群230は、第3反射体130で発生した光路長差及び位置ズレを維持したまま、第4反射体140へ入力光を入射させる。
【0090】
すなわち、第3実施例のミラー群200は、反射体100の回転により位置ズレが発生した入力光が、反射体100が備える外側反射部から所定反射角で出射された場合には、当該入力光を、回転方向にて隣接する他の反射体100が備える外側反射部へ当該所定反射角で入射させる。また、第3実施例のミラー群200は、反射体100の回転により位置ズレが発生していない入力光が、反射体100が備える内側反射部及から所定反射角で出射された場合には、当該入力光を、回転方向にて隣接する他の反射体100が備える内側反射部へ当該所定反射角で入射させる。
【0091】
このとき、光学遅延装置13は、位置ズレが生じた入力光の入射位置と外側反射部及び内側反射部での反射の関係により、第1実施例に係る光学遅延装置11よりも、更に装置を小型化することができる。その理由について図8を用いて説明する。
【0092】
図8では、一つ前の反射体100によって位置ズレが生じた入力光が、ミラー群200を介して出射され、図8に示された反射体100に入射された場合を示している。図8(a)は、位置ズレが生じた入力光を、この反射体100の内側反射部へ入射させた場合を示し、図8(b)は、位置ズレが生じた入力光を、この反射体100の外側反射部へ入射させた場合を示している。
【0093】
光路aは、位置ズレが生じていない入力光の光路を示し、光路bは、光路aに対して径方向内側に位置ズレが生じた入力光の光路を示している。また、D1は、光路aと光路bとの距離、すなわち、入力光の位置ズレ量を示し、D2は、入射光と出射光の最小光軸間隔を示している。最小光軸間隔は、入射された光と出射された光とが干渉なくに適切に分別できる間隔の最小値であり、光ファイバその他の測定装置の性能等から制約される設計値である。よって、D1及びD2の大きさは、図8(a)及び(b)で同じ大きさである。
【0094】
図8(a)のように、径方向内側へD1だけ位置ズレした入力光を、D2を確保しながら反射体100の内側反射部へ入射させた場合、回転角θ°や反射体100の大きさによっては、位置ズレした入力光が、反射体100の内側反射部に到達せず、有効に反射することができない場合がある。一方、図8(b)のように、径方向内側へD1だけ位置ズレした入力光を、D2を確保しながら反射体100の外側反射部へ入射させた場合、D1及びD2の大きさが図8(a)の場合と同様であっても、反射体100の外側反射部に到達して、有効に反射することができる場合がある。
【0095】
これは、入力光が回転によって位置ズレした方向が径方向内側であるため、回転によって当該位置ズレした方向と逆方向に移動する内側反射部よりも、回転によって当該位置ズレした方向と同じ方向に移動する外側反射部へ入射させた方が、入射された反射体100が有効に反射可能な角度走査範囲が大きいためである。なお、図8(a)の場合に、位置ズレした入力光の反射体100への入射位置を径方向外側へ移動させようとしても、最小光軸間隔D2が減少する方向となってしまい、反射体100から出射される光との干渉が生じてしまい、適切な遅延光を得ることが困難となる。
【0096】
よって、図8(a)の場合と、図8(b)の場合とで同じ角度走査範囲であれば、図8(b)の場合の方が反射体100の大きさを小さくしても、径方向内側へ位置ズレした入力光を有効に反射することができる。このため、第3実施例に係る光学遅延装置13では、第1実施例に係る光学遅延装置11よりも、反射体100自体の大きさを小さくしたり、回転半径Rを小さくしたりすることができ、更に装置を小型化することができる。
【0097】
なお、第3実施例に係る光学遅延装置13は、上述した構成以外は、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の構成であり、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の作用効果を得ることができる。
【0098】
[第4実施例]
次に、本発明の一実施形態に係る第4実施例の光学遅延装置14について、図9を用いて説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る第4実施例の光学遅延装置14を模式的に示す図である。
【0099】
第4実施例では、図3で示した第1実施例の光学遅延装置11に対し、光路長可変ミラー520を設ける点が異なっている。その他の構成は、図1及び図3で示した構成と同様であるため、説明を省略する。また、図9では、回転角0°の場合のみを示し、入力光の光路を一点鎖線で示している。
【0100】
光路長可変ミラー520は、ミラー群200を担う第1ミラー群210〜第3ミラー群230のうちの特定のミラー群200(図9では第2ミラー群220)に、反射体100の回転とは独立して光路長差を発生させる手段を加えることによって構成される。
【0101】
例えば、光路長可変ミラー520を、第2ミラー群220の第1ミラー部221及び第2ミラー部222を用いて構成する場合には、第1ミラー部221へ入射される光の入射角及び第2ミラー部222から出射される光の反射角、並びに、第1ミラー部221へ入射される光の光軸及び第2ミラー部222から出射される光の光軸を、それぞれ維持する。その上で、第1ミラー部221及び第2ミラー部222に対し、反射体100の回転とは独立して光路長差を発生させる手段を加えればよい。
【0102】
独立して光路長差を発生させる手段は、特に限定されない。例えば、第1ミラー部221へ入射される光の進行方向及び第2ミラー部222から出射される光の進行方向に沿って移動可能な直動ステージを用意する。そして、第1ミラー部221及び第2ミラー部222を当該直動ステージ上に搭載して移動させて、光の経路自体を変動させればよい。また、独立して光路長差を発生させる手段としては、上記のように光の経路自体を変動させずに光路長を変動させる静的な手段を用いることもできる。例えば、第1ミラー部221や第2ミラー部222の反射面前に空気の屈折率とは異なる屈折率を有するフィルタを設け、第1ミラー部221への入射や第2ミラー部222からの出射を、当該フィルタを介して行わせるようにすればよい。
【0103】
よって、第4実施例に係る光学遅延装置14では、反射体100の回転により発生した光路長差に、光路長可変ミラー520により発生した光路長差を独自に加えることができる。このため、光学遅延装置14では、光学遅延装置14を稼働中に光路長差を微調整したい場合でも、光路長可変ミラー520により、反射体100の回転とは独立して光路長差を調整することができる。
【0104】
例えば、測定中に、測定物の屈折率が一様でないことで光路長が変動する場合に、プローブ光の焦点が光学遅延装置の走査範囲から外れることがある。これは、測定点の深さをd、測定物の屈折率をnとすると、空気中に比べて光路長はd(n−1))だけ増加するからである。このような場合に、光学遅延装置14では、例えば、図9では、第2ミラー群220の第1ミラー部221及び第2ミラー部222を、距離d(n−1)/2だけ移動させることにより、プローブ光の焦点を走査範囲内に調整することができる。このため、光学遅延装置14では、更に測定精度を向上させることができる。
【0105】
なお、第4実施例に係る光学遅延装置14は、上述した構成以外は、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の構成であり、光学遅延装置10及び光学遅延装置11と同様の作用効果を得ることができる。また、上記の説明では、光路長可変ミラー520は、ミラー群200のうちの第2ミラー群220を用いて構成した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第2ミラー群220とは別のミラー群200であってもよいし、全てのミラー群200であってもよいし、また、ミラー群200とは別個のミラーであってもよい。
【0106】
次に、上記各実施例に代表される本実施形態の光学遅延装置10の分析・測定装置への適用例を示す。ここでは、本実施形態の光学遅延装置10を、テラヘルツ時間領域分光法(Terahertz Time-Domain Spectoroscopy、以下、「THz−TDS」という)を用いた分析装置(以下、「THz−TDS装置」という)に適用した例について、図10を用いて説明する。
図10は、本発明の一実施形態である光学遅延装置10を搭載したテラヘルツ時間領域分光分析装置600を模式的に示す図である。
【0107】
THz−TDSは、テラヘルツ波を測定物に入射させ、測定物から透過又は反射されたテラヘルツ波の波形を時間分解して時間波形を得る。そして、取得した時間波形をフーリエ変換することにより周波数毎の振幅や位相を得る分光法である。
【0108】
テラヘルツ波は、周波数が1テラヘルツ(1THz=1012Hz)前後の領域(テラヘルツ領域)に存在する電磁波である。テラヘルツ領域では、光の直進性と電磁波の透過性を兼ね備えた周波数領域であり、様々な物資が固有の吸収スペクトルを示すことが知られている。近年、この特性を利用した分析・測定技術について、様々な技術分野で実用化が期待されている。
【0109】
ところが、テラヘルツ波の周期は、サブピコ秒(1ps=10−12s)のオーダーと非常に短く、テラヘルツ波の時間波形を直接検出することは困難である。そこで、現在は、時間遅延走査によるポンプ・プローブ法に基づいて、間接的にテラヘルツ波の時間波形を得ている。具体的には、光学遅延装置によってポンプ光とプローブ光との間に光路長差を発生させて、テラヘルツ波検出素子へのプローブ光の到達時間に時間遅延を与えることで時間遅延走査を行い、テラヘルツ波の時間波形を得ている。
【0110】
よって、光学遅延装置において、一定の遅延量を得るために必要な光路長差を、正確かつ迅速にそして安定的に発生させることは、THz−TDS装置の測定精度の向上及び測定時間の短縮にとって重要な課題となっている。
【0111】
THz−TDS装置600は、図10に示すように、超短パルスレーザ源610と、分岐部620と、発信部630と、受信部640と、ロックイン検出部650と、バイアス電圧制御部660と、制御・演算処理部670と、を備えている。
【0112】
なお、図10に示すように、超短パルスレーザ源610と分岐部620の間、分岐部620と光学遅延装置10との間、分岐部620と発信部630との間、及び受信部640と光学遅延装置10との間は、それぞれ光ファイバ結合部材400で接続されている。
【0113】
超短パルスレーザ源610は、レーザパルス光のパルス幅がフェムト秒(1fs=10−15s)のオーダーで発振可能なフェトム秒レーザ光源等から構成されており、フェトム秒レーザパルス光を分岐部620へ出力する。
【0114】
分岐部620は、フェトム秒レーザパルス光の光路を2つの光路に分岐するビームスプリッタ等から構成されている。そして、分岐部620は、超短パルスレーザ源610から出力されたレーザパルス光の光路を、ポンプ光とプローブ光に分岐する。ポンプ光は、発信部630へ出力され、プローブ光は光学遅延装置10へ出力される。
【0115】
光学遅延装置10は、分岐部620から出力されたプローブ光を入力光として入力し、上記各実施例にて説明したような構成によってプローブ光の光路長を変動させ、時間遅延を与えたプローブ光を遅延光として受信部640へ出力する。プローブ光は、光学遅延装置10にて時間遅延を与えられたことで、受信部640の後述するテラヘルツ波検出素子641へ到達するタイミングが遅延される。
【0116】
よって、ポンプ光が後述するテラヘルツ波発生素子631へ到達するタイミングに対し、プローブ光がテラヘルツ波検出素子641へ到達するタイミングが遅延されることで、THz−TDS装置600の時間遅延走査が可能となる。なお、光学遅延装置10は、制御・演算処理部670から出力された制御信号に基づいて駆動制御されている。
【0117】
発信部630は、テラヘルツ波を発生させるためのテラヘルツ波発生素子631を有する。発信部630では、分岐部620から出力されたポンプ光をテラヘルツ波発生素子631へ集光し、テラヘルツ波発生素子631にてテラヘルツ波を発生させる。
【0118】
テラヘルツ波発生素子631は、半絶縁性GaAs(Gallium Arsenide)等で形成された半導体基板(図示せず)上にダイポールアンテナ等を有する光伝導アンテナ(図示せず)を備えている。そして、アンテナ中央部に配設されたギャップ部(図示せず)には、バイアス電圧制御部660から出力された変調された参照信号により電圧が印可されている。テラヘルツ波発生素子631では、当該ギャップ部にポンプ光が照射されると、半導体基板中の電子が光励起され、印可電圧によって加速されて光電流が流れ、光電流の時間変化によってテラヘルツ波が発生する。発信部630から発生されたテラヘルツ波は、測定物Sへ照射される。
【0119】
受信部640は、テラヘルツ波を検出するためのテラヘルツ波検出素子641を有する。受信部640は、分岐部620から出力され、光学遅延装置10にて遅延されたプローブ光をテラヘルツ波検出素子641へ集光し、測定物Sから透過又は反射されたテラヘルツ波を検出する。
【0120】
テラヘルツ波検出素子641は、テラヘルツ波発生素子631と同様の光伝導アンテナを備え、同様の原理でテラヘルツ波を検出する。すなわち、テラヘルツ波検出素子641では、測定物Sからのテラヘルツ波が照射された光伝導アンテナにプローブ光が照射されることで微弱な光電流が流れる。受信部640は、この光電流をI−V変換部642にて計側し増幅及び信号処理を行って、測定物Sから透過又は反射されたテラヘルツ波の検出信号を得る。そして、受信部640は、検出信号をロックイン検出部650へ出力する。
【0121】
ロックイン検出部650では、受信部640から出力された検出信号と、バイアス電圧制御部660から出力された参照信号とをロックインアンプ(図示せず)へ入力し、参照信号を用いて検出信号を同期検波する。そして、ロックイン検出部650は、検出信号中の参照信号とは位相の異なるノイズ成分を除去して、検出信号からテラヘルツ波信号の時間波形を得て、制御・演算処理部670へ出力する。
【0122】
制御・演算処理部670では、ロックイン検出部650から出力されたテラヘルツ波信号の時間波形を、フーリエ変換して周波数毎の振幅や位相を得る。このようにして、THz−TDS装置600は、測定物Sから反射又は透過されたテラヘルツ波の固有スペクトルを求めることができる。
【0123】
なお、本実施形態では、光学遅延装置10をTHz−TDS装置へ適用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、光干渉計、光コヒーレントトモグラフィ、超短パルス光測定等の光学遅延装置を有する他の装置へ適用することが可能である。また、本発明は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、各種の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 光学遅延装置
20 回転台
100 反射体
110 第1反射体
111 第1反射体の内側反射部
112 第1反射体の外側反射部
120 第2反射体
121 第2反射体の内側反射部
122 第2反射体の外側反射部
130 第3反射体
131 第3反射体の内側反射部
132 第3反射体の外側反射部
140 第4反射体
141 第4反射体の内側反射部
142 第4反射体の外側反射部
200 ミラー群
210 第1ミラー群
211 第1ミラー群の第1ミラー部
212 第1ミラー群の第2ミラー部
213 第1ミラー群の第3ミラー部
220 第2ミラー群
221 第2ミラー群の第1ミラー部
222 第2ミラー群の第2ミラー部
223 第2ミラー群の第3ミラー部
230 第3ミラー群
231 第3ミラー群の第1ミラー部
232 第3ミラー群の第2ミラー部
233 第3ミラー群の第3ミラー部
400 光ファイバ結合部材
410 光ファイバ
411 入力ファイバ
412 出力ファイバ
420 コリメータ
421 入力コリメータ
422 出力コリメータ
510 再帰反射器
520 光路長可変ミラー
600 テラヘルツ時間領域分光分析装置
610 超短パルスレーザ源
620 分岐部
630 発信部
631 テラヘルツ波発生素子
640 受信部
641 テラヘルツ波検出素子
642 I−V変換手段
650 ロックイン検出部
660 バイアス電圧制御部
670 制御・演算処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光を反射して出射する複数の反射体と、前記反射体から出射された光を反射して該反射体とは異なる他の反射体に入射させるミラーと、を備え、前記反射体に入射される入力光の光路長を前記反射体の回転によって変動させることにより、前記入力光に対して遅延された遅延光を出力する回転型の光学遅延装置であって、
前記ミラーは、前記入力光が入射された前記反射体から出射された光を、全ての前記他の反射体に入射させることを特徴とする光学遅延装置。
【請求項2】
前記反射体は、回転台上に設けられており、前記反射体の回転は、該回転台の回転によって作動され、
前記ミラーは、前記回転台の外部に設けられており、前記反射体から出射された光を、前記反射体の回転方向にて隣接する前記他の反射体へ入射させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光学遅延装置。
【請求項3】
前記反射体の個数は、2の整数倍であることを特徴とする請求項2に記載の光学遅延装置。
【請求項4】
前記反射体は、前記回転台の回転軸を中心とする所定半径の円の軌跡に沿って互いに等間隔に配置されていると共に、入射された光の入射方向に垂直な前記半径方向に沿って配設された複数の反射部をそれぞれ有し、
前記複数の反射部は、前記半径方向内側の反射部である第1反射部と前記半径方向外側の反射部である第2反射部とを少なくとも含み、
前記反射体が、所定入射角で入射された光を、前記第1反射部から前記第2反射部に対して正反射した後、前記第2反射部から前記ミラーに対して前記入射された光の光路と略平行な光路に正反射して出射した場合に、
前記ミラーは、該ミラーに対して出射された光を、前記隣接する他の反射体の第1反射部へ該所定入射角で入射させる
ことを特徴とする請求項3に記載の光学遅延装置。
【請求項5】
前記反射体は、前記回転台の回転軸を中心とする所定半径の円の軌跡に沿って互いに等間隔に配置されていると共に、入射された光の入射方向に垂直な前記半径方向に沿って配設された複数の反射部をそれぞれ有し、
前記複数の反射部は、前記半径方向内側の反射部である第1反射部と前記半径方向外側の反射部である第2反射部とを少なくとも含み、
前記反射体が、入射された光を、前記第1反射部から前記第2反射部に対して正反射した後、前記第2反射部から前記ミラーに対して前記入射された光の光路と略平行な光路に正反射して所定反射角で出射した場合に、
前記ミラーは、
該ミラーに対して出射された光の光路が、前記入射された光の光路に対して前記半径方向内側に移動する位置ズレが発生したときは、該ミラーに対して出射された光を、前記隣接する他の反射体の第2反射部へ該所定反射角で入射させ、
前記位置ズレが発生しないときは、該ミラーに対して出射された光を、前記隣接する他の反射体の第1反射部へ該所定反射角で入射させる
ことを特徴とする請求項3に記載の光学遅延装置。
【請求項6】
前記反射体から出射された遅延光を正反射し、該遅延光の光路を通って該反射体へ再帰させる再帰反射器を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光学遅延装置。
【請求項7】
前記ミラーは、前記反射体の回転により生じる前記入力光の光路長の変動とは独立して、前記入力光の光路長を変動可能な光路長可変ミラーを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光学遅延装置。
【請求項8】
入射された光を反射して出射する複数の反射体と、前記反射体から出射された光を反射するミラーと、を備え、前記反射体に入射される入力光の光路長を前記反射体の回転によって変動させることにより、前記入力光に対して遅延された遅延光を出力する光学遅延方法であって、
前記入力光を、回転する前記反射体に入射する第1工程と、
前記第1工程によって入射された前記入力光を反射して、前記回転する反射体から出射する第2工程と、
前記第2工程によって出射された前記入力光を反射して、前記第1工程によって前記入力光が入射された前記反射体とは異なる他の回転する反射体へ入射する第3工程と、
前記第3工程によって入射された前記入力光を反射して、前記他の回転する反射体から出射する第4工程と、
前記第2工程乃至前記第4工程と同様の工程を繰り返して、前記複数の反射体の全てで反射された前記入力光を前記遅延光として出力する第5工程と、
を有することを特徴とする光学遅延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33099(P2013−33099A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168507(P2011−168507)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】