光学部品固定機構
【課題】従来の光走査モジュールは、結像レンズの光軸調整が難しい構造であり、コリメータレンズの光軸とレーザ光の光軸との光軸調整後に、コリメータレンズを光軸方向に変位させるフォース調整を行う必要がある。レンズ固定バンドで結像レンズを押さえる構造では、焦点調整における光軸方向の移動により光軸まわりの回転が発生している。
【解決手段】光走査モジュールに用いられる光学部品固定機構は、円筒状の光学部品をその径方向から弾性部材で付勢して支持台に支持固定する。光学部品の外周面には、光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向に凹部と凸部が連続するように複数形成し、弾性部材は光学部品の光軸から見たときに、光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢する。
【解決手段】光走査モジュールに用いられる光学部品固定機構は、円筒状の光学部品をその径方向から弾性部材で付勢して支持台に支持固定する。光学部品の外周面には、光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向に凹部と凸部が連続するように複数形成し、弾性部材は光学部品の光軸から見たときに、光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載され、レーザ光でバーコード等のシンボルから情報を読み取る光走査モジュールのレーザ素子を固定する光学部品固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコード読み取り装置として機能する光走査モジュールには、バーコードから光学的に情報を読み取るためのレーザ素子、例えば半導体レーザ素子が搭載されている。この半導体レーザ素子は、単独部品であり、光走査モジュールのシャーシに光学系と共に実装されている。その際、光学系を実装するレンズ鏡筒のフォーカス調整機構は、公知な構成として、レンズ鏡筒の光軸方向両端にレーザ光を遮らない位置にビスと圧縮バネを配置し、そのビスの押し込み量によってフォーカス調整が行われている。
【0003】
このフォーカス調整時のレンズ鏡筒における付勢は、シャーシ若しくは、フォーカス調整治具に設置された簡易な平板バネで行われている。また、光源から発光されるレーザ光とレンズホルダ内のコリメータレンズの光軸を合わせるための回転調整は、特には考慮されていない。
【0004】
また、光学部品(レンズ鏡筒)の位置出しの従来技術として、例えば、特許文献1には、1つの調整機構が提案されている。この調整機構は、レンズ支持板に結像レンズが挿入できる穴を開け、結像レンズの外周に帯状のレンズ固定バンドが係合できる溝を形成し、レンズ固定バンドによって、レンズ支持板と結像レンズを固定保持している。また、結合レンズの溝幅はレンズ固定バンドより広く設定されており、結像レンズを光軸上で移動できる構造になっている。
【特許文献1】特開2008−32821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような従来の光軸及びフォーカス調整機構は、以下の課題を有している。
第1に、レンズ鏡筒内の結像レンズの中心とコリメータレンズの光軸との間には、部品精度のバラツキ等により単に実装しただけでは、偏芯や傾きによるズレが発生する。このため、シャーシの所定の位置にレンズ鏡筒を配設しても、そのレンズ鏡筒内に収納されているコリメータレンズの光軸は、設計上で所望する半導体レーザからのレーザ光の光軸と一致していない虞がある。
【0006】
第2に、コリメータレンズを通過したレーザ光の出射方向を所望の方向にするために、組立時に、コリメータレンズの光軸と、半導体レーザからのレーザ光の光軸を一致させる光軸調整が必要となる。バーコードリーダの場合、バーコードの白・黒のバーの配列方向における光軸調整が重要であり、それと直交する方向(バーの延在方向)における光軸調整はそれほど重要ではない。よって、バーの配列方向の1軸だけ光軸調整が行われる。
【0007】
第3に、上記1軸の光軸調整を行うに当たり、レンズ鏡筒の中心とコリメータレンズの光軸との偏芯を利用する。つまりレンズ鏡筒のみを回動させることで、コリメータレンズの光軸を変位させて、バーコードの白・黒のバーの配列方向において半導体レーザのレーザ光の光軸と一致させる。
【0008】
第4に、特許文献1では結像レンズの外周は円筒形状に形成されており、円周方向に亘って摩擦抵抗になりえる部位がなく、さらに結像レンズを外部より簡単に回動させることはできず、光軸調整が難しい構造になっている。また、コリメータレンズの光軸とレーザ光の光軸との光軸調整が終了した後には、コリメータレンズを光軸方向に変位させるフォース調整を行う必要がある。
【0009】
前述した特許文献1では、結像レンズを光軸方向に移動させる場合、レンズ固定バンドで結像レンズを押さえているが、光軸まわりの回転方向の固定には考慮されていない。つまり、結像レンズとレンズ固定バンド又はシャーシとの間に、光軸まわりの回転方向のガイドが無いために、結像レンズを光軸方向に移動させるに従って、結像レンズが光軸まわりに回動する可能性があり、既に光軸調整を完了済みであっても、結像レンズの光軸とその前後の光軸がずれてしまう。
【0010】
そこで本発明は、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の光軸と光学系の光軸とのずれ調整及びフォーカス調整と、レーザ光の楕円の長径がバーコードのバー延在方向になる回転調整を行う光走査モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、円筒状の光学部品と、前記光学部品を支持する支持台と、前記支持台に対して前記光学部品をその径方向から弾性的に付勢することで、前記光学部品を前記支持台に固定する弾性部材と、を有する光学部品固定機構において、前記光学部品の外周面には、当該光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向にわたって複数形成し、前記光学部品の光軸から見たときに、前記円周方向にわたって凹部と凸部が連続するように形成され、前記弾性部材は、前記光学部品の光軸から見たときに、前記光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、前記光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して前記光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢する光学部品固定機構を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の光軸と光学系の光軸とのずれ調整及びフォーカス調整と、レーザ光の楕円の長径がバーコードのバー延在方向になる回転調整を行う光走査モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態に係る光走査モジュールについて詳細に説明する。本実施形態の光走査モジュールにおいて、走査するレーザ光を照射する側を走査開口面(以下、正面と称する)とし、その反対側の非走査開口面(以下、背面と称する)とする。ここで、図1(a)は、本実施形態の光走査モジュールにおける構成部位を展開した構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)の光走査モジュールにおける光検出ユニットの外観構成を示す図である。図1(c)は、第1の実施形態の光走査モジュールを正面側から見た外観構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す光走査モジュール全体を背面側上方から見た外観斜視図である。図3は、光走査モジュール全体を背面側下方から見た外観斜視図である。図4は、基材上に実装される構成部位を背面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。図5は、基材上に実装される構成部位を正面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。図6は、基材上に実装される構成部位を上方から見た上面図である。図7は、図6に示す線分B−Bにおける断面構成を示す図である。図8(a)は、図6に示す線分C−Cにおけるレーザ出射軸付近の部分断面の構成を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示す破線円P部の構成を詳細に示す図であり、図8(c)はレンズホルダ外周に設けられた溝間隔を詳細に示す図である。図9は、レンズホルダがシャーシに取り付けられた状態を背面側から見た斜視図である。図10は、レンズホルダと付勢バネとの配置を示す斜視図である。図11(a)、(b)は、光軸方向から見た調整前のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。図12(a)、(b)は、光軸方向から見た調整後のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【0014】
まず、本実施形態の光走査モジュール1の構成について説明する。ここでは、要旨となる光学系を主として説明する。図1(a)乃至図1(c)に示すように、ベース部2には、主として、半導体レーザ素子(以下LD)5を含むレーザ光出射部70と、曲げミラー7と、アクチュエータ14と、光検出ユニット50とが実装される。ベース部材2の上面に取り付けられる基板10には、後述する各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行うための制御回路や読み取ったバーコード信号の信号処理回路等が形成された回路基板からなる制御部が搭載される。
【0015】
また図4乃至図7に示すように、光源として光束例えば、レーザ光を出射するLD5と、コリメータレンズ4を収容するレンズホルダ3と、レーザ光を反射により偏向させてアクチュエータ14に向かわせる偏向手段としての曲げミラー7と、で構成される。
【0016】
本実施形態におけるLD5は、例えば、DVDプレーヤ等で広く採用されている外形φ5.6mm、波長650nmの仕様を用いることで、極めて安価でありながら視認性の高い光源を得ることができる。
【0017】
この構成により、LD5から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ4により平行光化され、出射アパーチャ19を通って所望のスポットサイズに形成され、さらに、曲げミラー7で折り返されて、揺動するアクチュエータ14のセンターミラー17に出射される。この揺動するセンターミラー17により、レーザ光は、走査開口面から、例えば水平方向に繰り返し走査するように走査光として照射される。図6に示すように、照射されるレーザ光として、一点鎖線が出射光路を示し、その反射光として、二点鎖線が戻り光路を示している。照射されたレーザ光は、バーコード面で反射し戻り光として、集光ミラー18に入射する。集光ミラー18は、その戻り光を集光させて、光検出ユニット50に向けて出射する。
【0018】
光検出ユニット50は、フォトダイオード9と、その直前に配置される受光アパーチャ49と、バンドパスフィルタ8とで構成される。これらのうち、受光アパーチャ49は、集光ミラー18方向以外の角度から入射する外乱光を遮断して、戻り光のみを通過させる。さらに、バンドパスフィルタ8は、LD5と同一の波長の光のみを透過させ、正規な信号光以外の外乱光をカットする。このようにして、不要なノイズ成分が除去され、正規な信号成分のみがフォトダイオード9に受光される。
【0019】
制御部51は、基板10(ベース下部部材2b)上に設けられ、DSP等の信号処理エレメントを含み、基板10上に実装された電子部品により構成される電子回路である。また、制御部51は、フレキシブル基板13を介してLD5に接続する。この制御部51は、光走査モジュール内の各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行う。例えば、制御部51は、LD5及びアクチュエータ14を、それぞれに制御して走査光を照射し、受光した戻り光から光検出ユニット50が生成したアナログ信号をバーコードの黒白情報に対応する2値化信号に変換し、外部出力端子52を通じて図示しない外部機器(情報処理装置)に出力する。
【0020】
光走査モジュール1の基材となるベース部2は、レーザ光を照射するための前面開口部(図1を参照)を有する箱形状又は枠形状である。本実施形態では、ベース部2は、ベース下部部材2aとベース上部部材2b(基板10)の2片からなり、ベース下部部材2aには、複数の支柱47が植設され、それらの頂部にはネジ穴44又は位置決め用突起部45が設けられている。これらの支柱47にベース上部部材2bがネジ48によりネジ止めされて、ベース下部部材2aと一体化されている。また、図1に示すように、基板10の上部には基板をシールドする基板シールド11が被せられる。
【0021】
ベース下部部材2a上には、光源、光学系、アクチュエータ及び受光部を構成する部品が実装される。ベース上部部材2bには、制御部51を構成する回路基板が設けられている。また例えば、ベース下部部材2aの下面には、外部機器に据え付けるためのねじ穴や溝等が形成されている。このベース部2は、落下等の衝撃に耐え得る強度を有する、例えば、アルミニウム、ステンレス又は、鉄等の金属部材により形成される。他にも、亜鉛ダイカスト又は、アルミダイカスト等の合金金属や硬質の樹脂を用いることもできる。
【0022】
ベース下部部材2a上に設けられたシャーシ12には、コリメータレンズ4を内蔵したレンズホルダ3が装着され、その後、同一方向から半導体レーザ(以下LD)5が挿嵌される。シャーシ12は、ベース下部部材2aと一体的に形成してもよいし、別体として形成しベース下部部材2aに固着してもよい。LD5は、圧入、接着、カシメ等でシャーシ12に固着される(図1乃至図7を参照)。シャーシ12には、レンズホルダ3を光軸方向に調整するためにレンズホルダ3の全長よりも長いV字面25を有する溝が形成され(図8(a)を参照)、その溝内にレンズホルダ3が装着されている。
【0023】
このV字面25は、シャーシ12内に設けられた溝の底面を挟んで設けられている。これらのV字面25は、レンズホルダ3の外周面上の2箇所で線接触させることで、移動時の摩擦抵抗を減らして、レンズホルダ3におけるコリメータレンズ4の光軸方向に沿った移動及び回転が滑らかに移動できる。また、V字面25とすることでレンズホルダ3の移動した後でも高い位置出し精度が得られる。
【0024】
レンズホルダ3の外周全面には、コリメータレンズ4の光軸方向に沿って列状に複数の溝例えば、V溝が形成されている(図8乃至図10を参照)。尚、本実施形態では、コリメータレンズ4の光軸方向とレンズホルダ3の外周面(円筒面)における母線の方向と一致しているものとする。
【0025】
複数のV溝は、レンズホルダ3の外周面の円周方向に沿って均一に形成される。これらのV溝は、後述する付勢バネ6の下面に対してV溝間の2つの稜線の先端(以下、頂部と称する)で接触するように、且つ2つの稜線の角度が光学系の許容公差以内に設定されて形成されている(図8(a)乃至図8(c)を参照)。
【0026】
このレンズホルダ3の外周面に形成されたV溝の頂部は、エッジではなくシャーシ12に対して滑らかに回転するように微小な曲面(R面)を付けても良い。付勢バネ6は、断面が略コの字状に形成され、その両端部には付勢バネ6をシャーシ12に対して着脱可能にするための爪が形成され、中央部にはレンズホルダ3を押圧する湾曲部が形成されている(図8(a)乃至図10を参照)。
【0027】
この爪を引っ掛ける段差21a、21bがシャーシ12に形成されている(図8(a)を参照)。付勢バネ6は、レンズホルダ3がフォーカス調整時に傾斜しないように、コリメータレンズ4の光軸方向の長さをできるだけ幅広にしたり、爪の位置がレンズホルダ3の中心(コリメータレンズ4の光軸)よりも上になるようにしている。
【0028】
また、付勢バネ6によるレンズホルダ3の付勢力は、0.3〜0.5N程度に設定している。これは、付勢バネ6による付勢力のみがレンズホルダ3に加わっているときはレンズホルダ3が変位せず、また、後述する光軸調整時に組立作業者がレンズホルダ3を回動させようと力を加えたときにはレンズホルダ3を回動させることができる上で好ましい付勢力である。
【0029】
さらに、後述するフォーカス調整時においても組立作業者がレンズホルダ3をコリメータレンズ4の光軸方向に沿って変位させようと力を加えたときには、変位させることができる付勢力となっている。
【0030】
図7に示すように、LD5の光軸上には、絞られた良好にレーザ光を得るための出射アパーチャ19がシャーシ12に設けられている。また、LD5と出射アパーチャ19との間にはレンズホルダ3が配置されるが、レンズホルダ3が光軸方向Zにフォーカス調整ができるように、レンズホルダ3の前後にそれぞれ1mm程度の隙間が確保されている。さらに、図3に示すように、シャーシ12におけるレンズホルダ3の下方には、フォーカス調整用の穴27と、レンズホルダ3の固着用の接着剤を塗布するための穴26がそれぞれ形成されている。
【0031】
図7に示すように、出射アパーチャ19の光軸上には、曲げミラー7が配置される。曲げミラー7には、出射アパーチャ19から出射されたレーザ光を後述するセンターミラー17に向けて屈曲させるレーザ光反射曲面20が形成されている。図6に示すように、曲げミラー7によって折り曲げられた光軸方向にセンターミラー17が設置されている。
【0032】
アクチュエータ14は、ベース下部部材2aに垂直に植設されたシャフト16と、シャフト16に揺動可能に嵌合するミラー本体15と、ハウジングの全面側に設けられてバーコードからの戻り光を受光する集光ミラー18と、集光ミラー18の中央に配置されたセンターミラー17と、ミラー本体15を回動させるための駆動部(図示しない、コイル、マグネット、バネ)及びコイルを加振させる電流を供給するためのFPC13等で構成されている(図1(a)及び図4及び図5を参照)。
【0033】
また図6に示すように、集光ミラー18の光軸方向にバンドパスフィルタ8及び、フォトダイオード9が配置される。フォトダイオード9で生成された信号は、基板10に設けられた処理回路(制御部51)に送出されて処理される。
【0034】
このように構成された光走査モジュールの動作について説明する。尚、以下の説明において、本実施形態の要旨に関わらない構成部材の説明は簡略化している。 半導体レーザ(LD)5から出射されたレーザ光は、略同一光軸上のコリメータレンズ4を通過して平行光に変換され、出射アパーチャ19によって絞られ、曲げミラー7のレーザ光反射曲面20で折り曲げられて、揺動しているセンターミラー17に入射する。センターミラー17で反射されたレーザ光は、揺動による走査光としてバーコード方向に照射させる(図6を参照)。
【0035】
レーザ光はバーコード上で反射し、その反射光(戻り光)として集光ミラー18で集光される。さらに集光された戻り光は、バンドパスフィルタ8を通過して必要な波長の光束のみとなり、フォトダイオード9に入射して、光エネルギーから電気信号に変換される。フォトダイオード9から出力された電気信号は、基板10に設けられた処理回路により、読み取ったバーコード情報として信号処理される(図1乃至図6を参照)。
【0036】
この構成において、レンズホルダ3を適正な位置に位置決めせずに、単にシャーシ12に設置して、レンズの光軸とレーザ光の出射方向とにズレ又は、コリメータレンズ4のフォーカスズレが発生していたならば、最適な光学系とは言えず、バーコード読み取り精度に大きく低下させる。LD5、コリメータレンズ4及び出射アパーチャ19との位置を正確に位置決めすることで、設計に従った良好な読取性能が得られる。そのために、本実施形態では、LD5からのレーザ光の光軸とコリメータレンズ4の光軸とを一致させる光軸調整と、コリメータレンズ4の光軸方向における位置調整、即ちフォーカス調整を行う。
【0037】
この2つの調整作業の順序は、先に光軸調整を実施し、LD5の光軸とコリメータレンズ4の光軸とを一致させた後に、その状態を維持しながらフォーカス調整を実施する。
【0038】
<光軸調整>
第1の実施形態の光走査モジュールにおける光軸調整について説明する。
【0039】
シャーシ12にレンズホルダ3とLD5及びレンズホルダ3を付勢する付勢バネ6のみを搭載した状態でシャーシ12をフォーカス調整治具に載置する。LD5を駆動させてレーザ光を測定面上に出射する。その測定面上に投影されたレーザビーム形状を確認するか、又はビーム径測定器を使用して、表示される波形を確認しながら、バーの配列方向の1軸に直交する光軸に対して左右対称になるようにレンズホルダ3を治具で回動させる。
【0040】
レンズホルダ3は、付勢バネ6によってレンズホルダ3の半径方向から押圧されているものの、その付勢力に抗してレンズホルダ3を回動させる。さらに詳細に説明すると、付勢バネ6には、レンズホルダ3の外周面に形成された複数のV溝によって顕れる隣り合う2つの稜線の頂部(凸部)22a,22bが当接している。よって、レンズホルダ3に回動力が加えられると、これらの2つの頂部のうちの一方が付勢バネ6の付勢力に抗して、付勢バネ6を押し上げ、他方が付勢バネ6から離間する(例えば、図8(b)を参照して、レンズホルダ3を時計まわりに回動させようとした場合について説明すると、凸部22aが付勢バネ6を押し上げ、頂部22bが付勢バネ6から離間する)。
【0041】
さらに、レンズホルダ3に回動力が加えられ、一方の稜線(図8の頂部22a)が付勢バネ6を押し上げきる(頂部22aの高さ位置が最も高くなるところに達する)と、付勢バネ6の付勢力も相まってレンズホルダ3が回動し、一方の頂部22aと、その一方の頂部の隣の頂部(前述した他方の頂部とは反対側の頂部(図8(b)では頂部22aの左隣の頂部)との2点(実際には稜線は光軸方向に延在しているので2線)で付勢バネ6と当接することになる。
【0042】
このように2点で当接することにより、その後、回動力が加えられないと、その状態で安定的に維持されることになる。回動させる治具は、レンズホルダ3の外周面に形成した複数のV溝に噛み合うラックや、摩擦抵抗の大きいゴムなどの弾性部材などが好適する。その回動量はバーコードの白・黒のバーの配列方向の1軸だけ光軸調整を行うため、180度以内となる。
【0043】
図11(a)及び図11(b)には、回転による調整前のコリメータレンズ4が傾斜している状態を示す。図12(a)及び図12(b)には、回転による調整後のコリメータレンズ4の状態を示す。コリメータレンズ4が傾斜している場合には、LD5の光軸(バーコード配列方向の軸)にコリメータレンズ4の光軸が重なるように、レンズホルダ3を回転させる。この時、コリメータレンズ4の光軸に対する偏芯及び傾きはビーム径測定器等で両者を考慮して最適な位置に調整する。
【0044】
<フォーカス調整>
LD5の光軸とコリメータレンズ3の光軸とを、バーコードのバーの配列方向において一致させることができたならば、その後、シャーシ12に形成されているフォーカス調整用の穴27から治具100を挿入する。レンズホルダ3に形成されている切り欠きに治具100を当てつけて、図7に示すように、レンズホルダ3を押し上げないようにしながらレンズホルダ3を光軸方向Zに位置調整する。
【0045】
この時、レンズホルダ3に形成されているV溝の2つの頂部(凸部)が付勢バネ6に当接している。より詳細に説明すると、図8(b)に示す2つの頂部22a,22bが付勢バネ6の湾曲部の中央を挟んで両側に当接している。このため、レンズホルダ3は回動することなく光軸方向に沿って移動させることができる。このような調整を終了した後、シャーシ12に形成されている穴26から接着剤を注入し、シャーシ12に対してレンズホルダ3を固着させる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、コリメータレンズが内蔵されているレンズホルダを回転させて、光源のレーザ光軸とコリメータレンズとの偏芯や傾きを補正できるため良好なビーム径が得られる。さらに、フォーカス調整を行う際、付勢バネ及びレンズホルダに形成したガイドにより、光軸方向の直進性が良好な状態で正確なフォーカス調整が行える。また、正確なフォーカス調整を行うことにより、調整のやり直しがなくなり、組立工数の削減ができる。
【0047】
次に、本発明の第1の実施形態における第1の変形例について説明する。
図13は、第1の実施形態の第1の変形例における光軸方向から見たレンズホルダ部の構成を示す図である。尚、以降に説明する各実施形態及び各変形例は、レンズホルダ部以外は、前述した第1の実施形態と同等の構成であるため詳細な説明は簡略化して、発明の要旨に係わる部材のみを示し、その特徴について説明する。
【0048】
前述した第1の実施形態では、レンズホルダ3の全外周に亘って、溝が形成されている。しかし、実際には、バーコードの白・黒のバーの配列方向の1軸だけの回転調整であるため、レンズホルダ3の外周に形成される溝は、少なくとも180°に亘って設けてあれば実施することができる。本実施形態では、余裕を見て180°+30°程度に亘って溝を形成し、それ以外の部分は、もとの円筒面を残した形状にしたレンズホルダ23として、シャーシ12にレンズホルダ23の曲面部(もとの円筒面)23aが当て付くように構成している。
【0049】
このような構成によれば、前述した第1の実施形態と同じ作用効果を得ることができる。また、第1の実施形態では、レンズホルダのV溝の頂部に加工上で発生したバリを除去している。このバリが存在した場合には、レンズホルダとの回転調整時にかじりが発生し、スムーズに回転ができず、正確な調整ができないことを防止するためである。しかし、本変形例では、レンズホルダ23の曲面部23a、即ち、面上の線でシャーシ12と接触しているため、バリ等の影響を排除でき、且つ溝形成部分が少ないため、加エコストが低減できる。
【0050】
尚、本変形例では、回転調整範囲を180°+30°と設定したが、勿論、この範囲に限定されるものではなく、この範囲を超えて調整する必要がある場合には、適宜、回転調整範囲を増加(つまり、曲面部を少なくする)させてもよく、反対に、メカ加工精度、組立精度及び光学系の改善などによって、LDとコリメータレンズとの偏芯及び相対的な傾きが改善されたならば、レンズホルダの回転調整の角度が微調整でよくなるため、その調整範囲に適宜合わせればよい。
【0051】
次に、本発明の第1の実施形態における第2の変形例について説明する。
図14(a)は、第2の変形例において、光軸方向からレンズホルダ部を見た正面図である。図14(b)は、調整の際にレンズホルダを回動させるための治具を付加した一例を示す斜視図である。
【0052】
この第2の変形例は、第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周に形成された溝をV型ではなく、歯車状に形成したレンズホルダ24に変更した構成である。図14(a)においては、歯車溝を誇張して記載しているが、実際にはもっと微細な溝であり、第1の実施形態で記載したように光学系の公差内でレンズホルダ24の2つの稜線が付勢バネ6に当て付くようになっている。
【0053】
図14(b)に示す回転調整治具60は、エンコーダー55、カップリング56、歯車57、モータ58及び軸59等で構成されている。図14(b)に示す矢印Gは、レーザ光出射方向を示す。本変形例は、治具側にレンズホルダ径よりも小さい径の歯車57を用いれば、歯車57に比べてレンズホルダが微小に回動するため、微調整が可能となる。また、治具側の歯車をモータなどのアクチュエータで回動させ、更に回転量検知のためのエンコーダー、ビーム径測定器と連結させ、ビーム測定器の情報をフィードバックさせることにより回転調整の自動化が実現できる。図14(b)に示している治具は、第2の変形例における発明の要旨ではなく、一般的に考えられる構成である。従って、他にも種々の構成が考えられる。
【0054】
本変形例によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、光軸方向に移動及び、回動方向に回動を自動で調整することができる。
【0055】
次に、本発明の第1の実施形態における第3の変形例について説明する。
【0056】
図15(a)乃至図15(c)は、第1の実施形態に係る第3の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図15(a)は、レンズホルダの上方斜視図であり、図15(b)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図15(c)は、レンズホルダを光軸方向から見た図である。
【0057】
本変形例は、前述した第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周に形成された溝を光軸方向全体に形成せず、非溝形成部30を設けた構成である。本変形例におけるレンズホルダ29には、外周の非溝形成部28に加えて、さらに非溝形成部30を設けている。この非溝形成部30は、V溝が形成された外周面よりも小さい円筒面であって、付勢バネが当接する箇所に一部が掛かるように形成されている。
【0058】
本変形例によれば、第1の実施形態と同等の作用効果を得ることができ、さらに、レンズホルダ29が、付勢バネ6及びV字面25との当接部分が少なくなるため、小さい力でレンズホルダを光軸方向に移動及び、回動方向に回動させることができる。
【0059】
次に、本発明の第1の実施形態における第4の変形例について説明する。
図16(a)乃至図16(c)は、第1の実施形態に係る第4の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。ここで、図16(a)は、レンズホルダの上方斜視図であり、図16(b)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図16(c)はレンズホルダ31を光軸方向から見た図である。尚、この変形例では、シャーシ12をV字状ではなく、レンズホルダ31と同じ円筒状に形成される。
【0060】
本変形例のレンズホルダ31は、上述した第1の変形例(図13参照)のレンズホルダ23においてシャーシ12の内曲面と当接する外周部分に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する2つの突起32が設けられた構成である。これらの突起32は、それぞれ、シャーシ2内曲面の中央を跨ぐように配設される。本実施形態では、レンズホルダ31の中心軸(光軸と一致)に対して45度に開いた外周面上にこれらの突起32が配置されている。
【0061】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、レンズと接触しないため、レンズホルダ32を滑らかに回動させることができる。また、レンズホルダ32はシャーシ12の内曲面には、2本の線で接しているため、光軸方向に移動させる場合でも、小さな力でスムーズに移動させることができる。
【0062】
次に、本発明の第1の実施形態における第5の変形例について説明する。
図17(a)乃至図17(c)は、第1の実施形態に係る第5の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
を示すものである。図17(a)はレンズホルダ33の上方斜視図、図17(b)はシャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図、図17(c)はレンズホルダ33を光軸方向から見た図である。本変形例におけるシャーシ12は、前述した第4の変形例と同じ円筒状の内曲面を有している。
【0063】
本変形例では、第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周全面に形成されたV溝を、全面には形成せず、レンズホルダ33のシャーシ12に当接する部分に、少なくとも2つの角状を有して光軸方向に延在する突起34が設けられた構成である。これらの突起34は、断面が円弧形ではなく、多角形状であり、それらの角部分がシャーシ12の内曲面に接する構成である。
【0064】
本変形例によれば、前述した第4の変形例と同等の効果を得ることができる。本変形例では、突起部の断面が円弧形でなくとも、多角形状の少なくとも2つの角が当接すれば、よいことを示している。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図18(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るレンズホルダ部の構成を示す図である。図18(a)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図18(b)は、光軸方向から見たレンズホルダの外周部と付勢バネとの当接部分を詳細に示す図である。
【0066】
本実施形態の付勢バネ37は、レンズホルダ36の外周面(溝)と当接する部分に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する突起38が設けられる。
この突起38の大きさ(径)は、レンズホルダ36の回転が係止できる大きさが好適し、付勢バネ37の撓み量と、レンズホルダ36の回転調整時の力を考慮して、例えば、0.1mm程度で設けている。この突起38は、付勢バネ37と一体に形成されても、突起38を別部品として製作し、付勢バネ37に固着しても良い。
【0067】
また、レンズホルダ36の外周に形成されるV溝の頂部の先端形状に丸みを付けたR形状に形成し、回転調整時に付勢バネ37のV溝が乗り越え易くしてもよい。
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、付勢バネに設けられた突起が、レンズホルダのV溝に嵌まり込むため、レンズホルダの調整時に、光軸方向の移動の直進性が増して、レンズホルダが回転せずに移動するため調整精度が良くなる。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態における第1の変形例について説明する。
図19(a)、(b)は、第2の実施形態に係る第1の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。図19(a)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図19(b)は、光軸方向から見たレンズホルダ外周部とシャーシとの当接部分を詳細に示す図である。
【0069】
シャーシ12には、搭載するレンズホルダ36の外周部分と当接するV字面25上に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する突起39が設けられている。
この突起39の大きさ(径)は、付勢バネ6の撓み量と、レンズホルダ36の回転調整時の力を考慮して、例えば、0.1mm程度に形成している。また、この突起39は、シャーシ12のV字面25上に一体に形成されても、突起39を別部品として形成してシャーシ12V字面25上に固着しても良い。
【0070】
また、第2の実施の形態と同様にレンズホルダ36のV溝の頂部をR形状にし、回転調整時にシャーシ12の突起39が乗り越え易くしてもよい。
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、前述した第2の実施形態に対して、シャーシを金型で成型する場合には、一体的に突起を成型することができ、容易に製作でき且つコスト低減も可能である。
【0071】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図20(a)乃至図20(c)は、第3の実施形態のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図20(a)は、シャーシに付勢バネを取り付けた光走査モジュールの全体斜視図であり、図20(b)は、光走査モジュール上から見た全体上面図であり、図20(c)は、図20(b)に示すD−D線で切断したレンズホルダの部分断面図である。
【0072】
前述した第1の実施形態における付勢バネ6の形状は、下方に凸となるような円弧状であったが、本実施形態では、逆円弧状、即ち上方に凸となるような円弧状の付勢バネ40を用いている。
【0073】
この付勢バネ40は、レンズホルダ3の外周側から覆うように付勢している。付勢バネ40の中央部の円弧径は、レンズホルダ3の円弧径より大きく、レンズホルダ3の外周面に形成された複数のV溝の頂部のうち、少なくとも2つの頂部が付勢バネ40に当接するように径を設定している。
【0074】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本実施形態は、組立時に、レンズホルダ3に被さる状態で取り付けられるため、嵌め込み作業が容易になる。
【0075】
次に、第3の実施形態における第1の変形例について説明する。
図21(a)乃至図21(c)は、第3の実施形態の第1の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図21(a)は付勢バネ41を搭載した全体斜視図、(b)は全体上面図、(c)は(b)に記載されているE−E線で切断したレンズホルダ部の部分断面図である。
【0076】
本変形例は、前述した第1の実施形態における付勢バネ6の形状を、平板状にした付勢バネ41を用いる。この付勢バネ41は、一端がビス42によりシャーシ12に固定された片持ち支持に取り付けられる。レンズホルダ3のV溝に当接する部分をR形状にして、レンズホルダ3のV溝の2つ以上の頂部に当接させて、さらに確実に押さえるようにしても良い。
【0077】
また、図21(c)に示す付勢バネ41は、片側のみビス42で固定されているが、光軸を中心に左右対称な形状に形成し、付勢バネ41の両端をビス42で固定してもよい。
【0078】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、付勢バネ形状が簡単なため、ビスで固定するスペースがあれば、製造コストが低減できる。
【0079】
以上説明した各実施形態及び各変形例による本発明の光走査モジュールは、コリメータレンズが内蔵されているレンズホルダを回動させて、光源のレーザ光軸に対するコリメータレンズの偏芯や傾きを除去できるため、良好なビーム径が得られ、その後、フオーカス調整を行う際、レンズホルダの外周に形成した溝と付勢バネ及びシャーシに形成したガイドにより、レンズホルダがガイドに沿って移動できるため、光軸方向の直進性が良好になり、正確なフオーカス調整が行える。また、正確なフオーカス調整を行うことにより、調整のやり直しがなくなり、組立工数の削減ができる。光走査モジュールは、バーコードスキャナーに搭載され、前述した効果を得ることができる。
【0080】
以上各実施形態として説明した本発明は、以下の要旨を含んでいる。
(1)レーザ光を発生する光源(半導体レーザ)と、この光源から発生したレーザ光を平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズを保持内蔵するレンズホルダと、レーザ光を目標のバーコード記号に対して窓部(出射アパーチャ)を介して走査ビームとして照射するレーザ光走査部と、バーコード記号で反射した走査ビームの反射光を取り込み、その強度に基づく検出信号を生成するセンサと、レーザ光走査部の駆動を制御し、センサにより生成された検出信号からバーコード情報を生成する信号処理部と、信号処理部により生成されたバーコード情報をバーコードデータ処理装置と送受するための外部接続端子と、上記全てを搭載し、窓部(出射アパーチャ)が形成されているシャーシとからなる光走査モジュールにおいて、レンズホルダをシャーシに当てつけるための付勢バネと、付勢バネ及びシャーシのいずれかには、レンズホルダが容易に光軸周りに回動しないように規制すると共に、光軸方向に移動可能にする凸状に形成されたガイド機能が設けられ、ガイド機能は光軸周りに所定以上の力が加えられたときのみ光軸周りの回動を許可するよう形成されていることを特徴とする光走査モジュール。
【0081】
(2)レンズホルダの外周には光軸方向に複数の溝が形成されていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(3)レンズホルダの外周の溝は光学系許容値である10度以内に形成されていることを特徴とする(2)項に記載の光走査モジュール。
(4)ガイド機能が付勢バネに設けられていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
【0082】
(5)ガイド機能がシャーシに設けられていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(6)レンズホルダが多角形であることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(7)レンズホルダを付勢するバネはシャーシに対してビス又は嵌め込んで固定することを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態の光走査モジュールにおける構成部位を展開した構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)の光走査モジュールにおける光検出ユニットの外観構成を示す図である。図1(c)は、第1の実施形態の光走査モジュールを正面側から見た外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す光走査モジュール全体を背面側上方から見た外観斜視図である。
【図3】図3は、光走査モジュール全体を背面側下方から見た外観斜視図である。
【図4】図4は、基材上に実装される構成部位を背面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、基材上に実装される構成部位を正面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、基材上に実装される構成部位を上方から見た上面図である。
【図7】図7は、図6に示す線分B−Bにおける断面構成を示す図である。
【図8】図8(a)は、図6に示す線分C−Cにおけるレーザ出射軸付近の部分断面の構成を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示す破線円P部の構成を詳細に示す図であり、図8(c)はレンズホルダ外周に設けられた溝間隔を詳細に示す図である。
【図9】図9は、レンズホルダがシャーシに取り付けられた状態を背面側から見た斜視図である。
【図10】図10は、レンズホルダと付勢バネとの配置を示す斜視図である。
【図11】図11(a)、(b)は、光軸方向から見た調整前のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【図12】図12(a)、(b)は、光軸方向から見た調整後のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【図13】図13は、第1の実施形態の第1の変形例における光軸方向から見たレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図14】図14(a)、(b)は、第1の実施形態の第2の変形例におけるレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図15】図15(a)乃至図15(c)は、第1の実施形態に係る第3の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図16】図16(a)乃至図16(c)は、第1の実施形態に係る第4の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図17】図17(a)乃至図17(c)は、第1の実施形態に係る第5の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図18】図18(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係るレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図19】図19(a)、(b)は、第2の実施形態に係る第1の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図20】図20(a)乃至図20(c)は、第3の実施形態のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
【図21】図21(a)乃至図21(c)は、第3の実施形態の第1の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…光走査モジュール、2…ベース部材、2a…ベース下部部材、2b…ベース上部部材、3,23,24,29,31,36…レンズホルダ、4…コリメータレンズ、5…半導体レーザ素子(LD)、6,37,41…付勢バネ、7…曲げミラー、8…バンドパスフィルタ、9…フォトダイオード、10…基板、11…基板シールド、12…シャーシ、13…フレキシブル基板、14…アクチュエータ、15…ミラー本体、16…シャフト、17…センターミラー、18…集光ミラー、19…出射アパーチャ、20…レーザ光反射曲面、21a、21b…段差、22a,22b…凸部、23…レンズホルダ、23a…曲面部(円筒面)、25…V字面、26…穴、27…フォーカス調整用の穴、28,30…非溝形成部、32,34,39…突起、42…ビス、44…ネジ穴、45…位置決め用突起部、47…支柱、48…ネジ、49…受光アパーチャ、50…光検出ユニット、51…制御部、52…外部出力端子、55…エンコーダー、56…カップリング、57…歯車、58…モータ、59…軸、60…回転調整治具、100…治具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載され、レーザ光でバーコード等のシンボルから情報を読み取る光走査モジュールのレーザ素子を固定する光学部品固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコード読み取り装置として機能する光走査モジュールには、バーコードから光学的に情報を読み取るためのレーザ素子、例えば半導体レーザ素子が搭載されている。この半導体レーザ素子は、単独部品であり、光走査モジュールのシャーシに光学系と共に実装されている。その際、光学系を実装するレンズ鏡筒のフォーカス調整機構は、公知な構成として、レンズ鏡筒の光軸方向両端にレーザ光を遮らない位置にビスと圧縮バネを配置し、そのビスの押し込み量によってフォーカス調整が行われている。
【0003】
このフォーカス調整時のレンズ鏡筒における付勢は、シャーシ若しくは、フォーカス調整治具に設置された簡易な平板バネで行われている。また、光源から発光されるレーザ光とレンズホルダ内のコリメータレンズの光軸を合わせるための回転調整は、特には考慮されていない。
【0004】
また、光学部品(レンズ鏡筒)の位置出しの従来技術として、例えば、特許文献1には、1つの調整機構が提案されている。この調整機構は、レンズ支持板に結像レンズが挿入できる穴を開け、結像レンズの外周に帯状のレンズ固定バンドが係合できる溝を形成し、レンズ固定バンドによって、レンズ支持板と結像レンズを固定保持している。また、結合レンズの溝幅はレンズ固定バンドより広く設定されており、結像レンズを光軸上で移動できる構造になっている。
【特許文献1】特開2008−32821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような従来の光軸及びフォーカス調整機構は、以下の課題を有している。
第1に、レンズ鏡筒内の結像レンズの中心とコリメータレンズの光軸との間には、部品精度のバラツキ等により単に実装しただけでは、偏芯や傾きによるズレが発生する。このため、シャーシの所定の位置にレンズ鏡筒を配設しても、そのレンズ鏡筒内に収納されているコリメータレンズの光軸は、設計上で所望する半導体レーザからのレーザ光の光軸と一致していない虞がある。
【0006】
第2に、コリメータレンズを通過したレーザ光の出射方向を所望の方向にするために、組立時に、コリメータレンズの光軸と、半導体レーザからのレーザ光の光軸を一致させる光軸調整が必要となる。バーコードリーダの場合、バーコードの白・黒のバーの配列方向における光軸調整が重要であり、それと直交する方向(バーの延在方向)における光軸調整はそれほど重要ではない。よって、バーの配列方向の1軸だけ光軸調整が行われる。
【0007】
第3に、上記1軸の光軸調整を行うに当たり、レンズ鏡筒の中心とコリメータレンズの光軸との偏芯を利用する。つまりレンズ鏡筒のみを回動させることで、コリメータレンズの光軸を変位させて、バーコードの白・黒のバーの配列方向において半導体レーザのレーザ光の光軸と一致させる。
【0008】
第4に、特許文献1では結像レンズの外周は円筒形状に形成されており、円周方向に亘って摩擦抵抗になりえる部位がなく、さらに結像レンズを外部より簡単に回動させることはできず、光軸調整が難しい構造になっている。また、コリメータレンズの光軸とレーザ光の光軸との光軸調整が終了した後には、コリメータレンズを光軸方向に変位させるフォース調整を行う必要がある。
【0009】
前述した特許文献1では、結像レンズを光軸方向に移動させる場合、レンズ固定バンドで結像レンズを押さえているが、光軸まわりの回転方向の固定には考慮されていない。つまり、結像レンズとレンズ固定バンド又はシャーシとの間に、光軸まわりの回転方向のガイドが無いために、結像レンズを光軸方向に移動させるに従って、結像レンズが光軸まわりに回動する可能性があり、既に光軸調整を完了済みであっても、結像レンズの光軸とその前後の光軸がずれてしまう。
【0010】
そこで本発明は、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の光軸と光学系の光軸とのずれ調整及びフォーカス調整と、レーザ光の楕円の長径がバーコードのバー延在方向になる回転調整を行う光走査モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、円筒状の光学部品と、前記光学部品を支持する支持台と、前記支持台に対して前記光学部品をその径方向から弾性的に付勢することで、前記光学部品を前記支持台に固定する弾性部材と、を有する光学部品固定機構において、前記光学部品の外周面には、当該光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向にわたって複数形成し、前記光学部品の光軸から見たときに、前記円周方向にわたって凹部と凸部が連続するように形成され、前記弾性部材は、前記光学部品の光軸から見たときに、前記光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、前記光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して前記光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢する光学部品固定機構を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の光軸と光学系の光軸とのずれ調整及びフォーカス調整と、レーザ光の楕円の長径がバーコードのバー延在方向になる回転調整を行う光走査モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態に係る光走査モジュールについて詳細に説明する。本実施形態の光走査モジュールにおいて、走査するレーザ光を照射する側を走査開口面(以下、正面と称する)とし、その反対側の非走査開口面(以下、背面と称する)とする。ここで、図1(a)は、本実施形態の光走査モジュールにおける構成部位を展開した構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)の光走査モジュールにおける光検出ユニットの外観構成を示す図である。図1(c)は、第1の実施形態の光走査モジュールを正面側から見た外観構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す光走査モジュール全体を背面側上方から見た外観斜視図である。図3は、光走査モジュール全体を背面側下方から見た外観斜視図である。図4は、基材上に実装される構成部位を背面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。図5は、基材上に実装される構成部位を正面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。図6は、基材上に実装される構成部位を上方から見た上面図である。図7は、図6に示す線分B−Bにおける断面構成を示す図である。図8(a)は、図6に示す線分C−Cにおけるレーザ出射軸付近の部分断面の構成を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示す破線円P部の構成を詳細に示す図であり、図8(c)はレンズホルダ外周に設けられた溝間隔を詳細に示す図である。図9は、レンズホルダがシャーシに取り付けられた状態を背面側から見た斜視図である。図10は、レンズホルダと付勢バネとの配置を示す斜視図である。図11(a)、(b)は、光軸方向から見た調整前のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。図12(a)、(b)は、光軸方向から見た調整後のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【0014】
まず、本実施形態の光走査モジュール1の構成について説明する。ここでは、要旨となる光学系を主として説明する。図1(a)乃至図1(c)に示すように、ベース部2には、主として、半導体レーザ素子(以下LD)5を含むレーザ光出射部70と、曲げミラー7と、アクチュエータ14と、光検出ユニット50とが実装される。ベース部材2の上面に取り付けられる基板10には、後述する各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行うための制御回路や読み取ったバーコード信号の信号処理回路等が形成された回路基板からなる制御部が搭載される。
【0015】
また図4乃至図7に示すように、光源として光束例えば、レーザ光を出射するLD5と、コリメータレンズ4を収容するレンズホルダ3と、レーザ光を反射により偏向させてアクチュエータ14に向かわせる偏向手段としての曲げミラー7と、で構成される。
【0016】
本実施形態におけるLD5は、例えば、DVDプレーヤ等で広く採用されている外形φ5.6mm、波長650nmの仕様を用いることで、極めて安価でありながら視認性の高い光源を得ることができる。
【0017】
この構成により、LD5から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ4により平行光化され、出射アパーチャ19を通って所望のスポットサイズに形成され、さらに、曲げミラー7で折り返されて、揺動するアクチュエータ14のセンターミラー17に出射される。この揺動するセンターミラー17により、レーザ光は、走査開口面から、例えば水平方向に繰り返し走査するように走査光として照射される。図6に示すように、照射されるレーザ光として、一点鎖線が出射光路を示し、その反射光として、二点鎖線が戻り光路を示している。照射されたレーザ光は、バーコード面で反射し戻り光として、集光ミラー18に入射する。集光ミラー18は、その戻り光を集光させて、光検出ユニット50に向けて出射する。
【0018】
光検出ユニット50は、フォトダイオード9と、その直前に配置される受光アパーチャ49と、バンドパスフィルタ8とで構成される。これらのうち、受光アパーチャ49は、集光ミラー18方向以外の角度から入射する外乱光を遮断して、戻り光のみを通過させる。さらに、バンドパスフィルタ8は、LD5と同一の波長の光のみを透過させ、正規な信号光以外の外乱光をカットする。このようにして、不要なノイズ成分が除去され、正規な信号成分のみがフォトダイオード9に受光される。
【0019】
制御部51は、基板10(ベース下部部材2b)上に設けられ、DSP等の信号処理エレメントを含み、基板10上に実装された電子部品により構成される電子回路である。また、制御部51は、フレキシブル基板13を介してLD5に接続する。この制御部51は、光走査モジュール内の各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行う。例えば、制御部51は、LD5及びアクチュエータ14を、それぞれに制御して走査光を照射し、受光した戻り光から光検出ユニット50が生成したアナログ信号をバーコードの黒白情報に対応する2値化信号に変換し、外部出力端子52を通じて図示しない外部機器(情報処理装置)に出力する。
【0020】
光走査モジュール1の基材となるベース部2は、レーザ光を照射するための前面開口部(図1を参照)を有する箱形状又は枠形状である。本実施形態では、ベース部2は、ベース下部部材2aとベース上部部材2b(基板10)の2片からなり、ベース下部部材2aには、複数の支柱47が植設され、それらの頂部にはネジ穴44又は位置決め用突起部45が設けられている。これらの支柱47にベース上部部材2bがネジ48によりネジ止めされて、ベース下部部材2aと一体化されている。また、図1に示すように、基板10の上部には基板をシールドする基板シールド11が被せられる。
【0021】
ベース下部部材2a上には、光源、光学系、アクチュエータ及び受光部を構成する部品が実装される。ベース上部部材2bには、制御部51を構成する回路基板が設けられている。また例えば、ベース下部部材2aの下面には、外部機器に据え付けるためのねじ穴や溝等が形成されている。このベース部2は、落下等の衝撃に耐え得る強度を有する、例えば、アルミニウム、ステンレス又は、鉄等の金属部材により形成される。他にも、亜鉛ダイカスト又は、アルミダイカスト等の合金金属や硬質の樹脂を用いることもできる。
【0022】
ベース下部部材2a上に設けられたシャーシ12には、コリメータレンズ4を内蔵したレンズホルダ3が装着され、その後、同一方向から半導体レーザ(以下LD)5が挿嵌される。シャーシ12は、ベース下部部材2aと一体的に形成してもよいし、別体として形成しベース下部部材2aに固着してもよい。LD5は、圧入、接着、カシメ等でシャーシ12に固着される(図1乃至図7を参照)。シャーシ12には、レンズホルダ3を光軸方向に調整するためにレンズホルダ3の全長よりも長いV字面25を有する溝が形成され(図8(a)を参照)、その溝内にレンズホルダ3が装着されている。
【0023】
このV字面25は、シャーシ12内に設けられた溝の底面を挟んで設けられている。これらのV字面25は、レンズホルダ3の外周面上の2箇所で線接触させることで、移動時の摩擦抵抗を減らして、レンズホルダ3におけるコリメータレンズ4の光軸方向に沿った移動及び回転が滑らかに移動できる。また、V字面25とすることでレンズホルダ3の移動した後でも高い位置出し精度が得られる。
【0024】
レンズホルダ3の外周全面には、コリメータレンズ4の光軸方向に沿って列状に複数の溝例えば、V溝が形成されている(図8乃至図10を参照)。尚、本実施形態では、コリメータレンズ4の光軸方向とレンズホルダ3の外周面(円筒面)における母線の方向と一致しているものとする。
【0025】
複数のV溝は、レンズホルダ3の外周面の円周方向に沿って均一に形成される。これらのV溝は、後述する付勢バネ6の下面に対してV溝間の2つの稜線の先端(以下、頂部と称する)で接触するように、且つ2つの稜線の角度が光学系の許容公差以内に設定されて形成されている(図8(a)乃至図8(c)を参照)。
【0026】
このレンズホルダ3の外周面に形成されたV溝の頂部は、エッジではなくシャーシ12に対して滑らかに回転するように微小な曲面(R面)を付けても良い。付勢バネ6は、断面が略コの字状に形成され、その両端部には付勢バネ6をシャーシ12に対して着脱可能にするための爪が形成され、中央部にはレンズホルダ3を押圧する湾曲部が形成されている(図8(a)乃至図10を参照)。
【0027】
この爪を引っ掛ける段差21a、21bがシャーシ12に形成されている(図8(a)を参照)。付勢バネ6は、レンズホルダ3がフォーカス調整時に傾斜しないように、コリメータレンズ4の光軸方向の長さをできるだけ幅広にしたり、爪の位置がレンズホルダ3の中心(コリメータレンズ4の光軸)よりも上になるようにしている。
【0028】
また、付勢バネ6によるレンズホルダ3の付勢力は、0.3〜0.5N程度に設定している。これは、付勢バネ6による付勢力のみがレンズホルダ3に加わっているときはレンズホルダ3が変位せず、また、後述する光軸調整時に組立作業者がレンズホルダ3を回動させようと力を加えたときにはレンズホルダ3を回動させることができる上で好ましい付勢力である。
【0029】
さらに、後述するフォーカス調整時においても組立作業者がレンズホルダ3をコリメータレンズ4の光軸方向に沿って変位させようと力を加えたときには、変位させることができる付勢力となっている。
【0030】
図7に示すように、LD5の光軸上には、絞られた良好にレーザ光を得るための出射アパーチャ19がシャーシ12に設けられている。また、LD5と出射アパーチャ19との間にはレンズホルダ3が配置されるが、レンズホルダ3が光軸方向Zにフォーカス調整ができるように、レンズホルダ3の前後にそれぞれ1mm程度の隙間が確保されている。さらに、図3に示すように、シャーシ12におけるレンズホルダ3の下方には、フォーカス調整用の穴27と、レンズホルダ3の固着用の接着剤を塗布するための穴26がそれぞれ形成されている。
【0031】
図7に示すように、出射アパーチャ19の光軸上には、曲げミラー7が配置される。曲げミラー7には、出射アパーチャ19から出射されたレーザ光を後述するセンターミラー17に向けて屈曲させるレーザ光反射曲面20が形成されている。図6に示すように、曲げミラー7によって折り曲げられた光軸方向にセンターミラー17が設置されている。
【0032】
アクチュエータ14は、ベース下部部材2aに垂直に植設されたシャフト16と、シャフト16に揺動可能に嵌合するミラー本体15と、ハウジングの全面側に設けられてバーコードからの戻り光を受光する集光ミラー18と、集光ミラー18の中央に配置されたセンターミラー17と、ミラー本体15を回動させるための駆動部(図示しない、コイル、マグネット、バネ)及びコイルを加振させる電流を供給するためのFPC13等で構成されている(図1(a)及び図4及び図5を参照)。
【0033】
また図6に示すように、集光ミラー18の光軸方向にバンドパスフィルタ8及び、フォトダイオード9が配置される。フォトダイオード9で生成された信号は、基板10に設けられた処理回路(制御部51)に送出されて処理される。
【0034】
このように構成された光走査モジュールの動作について説明する。尚、以下の説明において、本実施形態の要旨に関わらない構成部材の説明は簡略化している。 半導体レーザ(LD)5から出射されたレーザ光は、略同一光軸上のコリメータレンズ4を通過して平行光に変換され、出射アパーチャ19によって絞られ、曲げミラー7のレーザ光反射曲面20で折り曲げられて、揺動しているセンターミラー17に入射する。センターミラー17で反射されたレーザ光は、揺動による走査光としてバーコード方向に照射させる(図6を参照)。
【0035】
レーザ光はバーコード上で反射し、その反射光(戻り光)として集光ミラー18で集光される。さらに集光された戻り光は、バンドパスフィルタ8を通過して必要な波長の光束のみとなり、フォトダイオード9に入射して、光エネルギーから電気信号に変換される。フォトダイオード9から出力された電気信号は、基板10に設けられた処理回路により、読み取ったバーコード情報として信号処理される(図1乃至図6を参照)。
【0036】
この構成において、レンズホルダ3を適正な位置に位置決めせずに、単にシャーシ12に設置して、レンズの光軸とレーザ光の出射方向とにズレ又は、コリメータレンズ4のフォーカスズレが発生していたならば、最適な光学系とは言えず、バーコード読み取り精度に大きく低下させる。LD5、コリメータレンズ4及び出射アパーチャ19との位置を正確に位置決めすることで、設計に従った良好な読取性能が得られる。そのために、本実施形態では、LD5からのレーザ光の光軸とコリメータレンズ4の光軸とを一致させる光軸調整と、コリメータレンズ4の光軸方向における位置調整、即ちフォーカス調整を行う。
【0037】
この2つの調整作業の順序は、先に光軸調整を実施し、LD5の光軸とコリメータレンズ4の光軸とを一致させた後に、その状態を維持しながらフォーカス調整を実施する。
【0038】
<光軸調整>
第1の実施形態の光走査モジュールにおける光軸調整について説明する。
【0039】
シャーシ12にレンズホルダ3とLD5及びレンズホルダ3を付勢する付勢バネ6のみを搭載した状態でシャーシ12をフォーカス調整治具に載置する。LD5を駆動させてレーザ光を測定面上に出射する。その測定面上に投影されたレーザビーム形状を確認するか、又はビーム径測定器を使用して、表示される波形を確認しながら、バーの配列方向の1軸に直交する光軸に対して左右対称になるようにレンズホルダ3を治具で回動させる。
【0040】
レンズホルダ3は、付勢バネ6によってレンズホルダ3の半径方向から押圧されているものの、その付勢力に抗してレンズホルダ3を回動させる。さらに詳細に説明すると、付勢バネ6には、レンズホルダ3の外周面に形成された複数のV溝によって顕れる隣り合う2つの稜線の頂部(凸部)22a,22bが当接している。よって、レンズホルダ3に回動力が加えられると、これらの2つの頂部のうちの一方が付勢バネ6の付勢力に抗して、付勢バネ6を押し上げ、他方が付勢バネ6から離間する(例えば、図8(b)を参照して、レンズホルダ3を時計まわりに回動させようとした場合について説明すると、凸部22aが付勢バネ6を押し上げ、頂部22bが付勢バネ6から離間する)。
【0041】
さらに、レンズホルダ3に回動力が加えられ、一方の稜線(図8の頂部22a)が付勢バネ6を押し上げきる(頂部22aの高さ位置が最も高くなるところに達する)と、付勢バネ6の付勢力も相まってレンズホルダ3が回動し、一方の頂部22aと、その一方の頂部の隣の頂部(前述した他方の頂部とは反対側の頂部(図8(b)では頂部22aの左隣の頂部)との2点(実際には稜線は光軸方向に延在しているので2線)で付勢バネ6と当接することになる。
【0042】
このように2点で当接することにより、その後、回動力が加えられないと、その状態で安定的に維持されることになる。回動させる治具は、レンズホルダ3の外周面に形成した複数のV溝に噛み合うラックや、摩擦抵抗の大きいゴムなどの弾性部材などが好適する。その回動量はバーコードの白・黒のバーの配列方向の1軸だけ光軸調整を行うため、180度以内となる。
【0043】
図11(a)及び図11(b)には、回転による調整前のコリメータレンズ4が傾斜している状態を示す。図12(a)及び図12(b)には、回転による調整後のコリメータレンズ4の状態を示す。コリメータレンズ4が傾斜している場合には、LD5の光軸(バーコード配列方向の軸)にコリメータレンズ4の光軸が重なるように、レンズホルダ3を回転させる。この時、コリメータレンズ4の光軸に対する偏芯及び傾きはビーム径測定器等で両者を考慮して最適な位置に調整する。
【0044】
<フォーカス調整>
LD5の光軸とコリメータレンズ3の光軸とを、バーコードのバーの配列方向において一致させることができたならば、その後、シャーシ12に形成されているフォーカス調整用の穴27から治具100を挿入する。レンズホルダ3に形成されている切り欠きに治具100を当てつけて、図7に示すように、レンズホルダ3を押し上げないようにしながらレンズホルダ3を光軸方向Zに位置調整する。
【0045】
この時、レンズホルダ3に形成されているV溝の2つの頂部(凸部)が付勢バネ6に当接している。より詳細に説明すると、図8(b)に示す2つの頂部22a,22bが付勢バネ6の湾曲部の中央を挟んで両側に当接している。このため、レンズホルダ3は回動することなく光軸方向に沿って移動させることができる。このような調整を終了した後、シャーシ12に形成されている穴26から接着剤を注入し、シャーシ12に対してレンズホルダ3を固着させる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、コリメータレンズが内蔵されているレンズホルダを回転させて、光源のレーザ光軸とコリメータレンズとの偏芯や傾きを補正できるため良好なビーム径が得られる。さらに、フォーカス調整を行う際、付勢バネ及びレンズホルダに形成したガイドにより、光軸方向の直進性が良好な状態で正確なフォーカス調整が行える。また、正確なフォーカス調整を行うことにより、調整のやり直しがなくなり、組立工数の削減ができる。
【0047】
次に、本発明の第1の実施形態における第1の変形例について説明する。
図13は、第1の実施形態の第1の変形例における光軸方向から見たレンズホルダ部の構成を示す図である。尚、以降に説明する各実施形態及び各変形例は、レンズホルダ部以外は、前述した第1の実施形態と同等の構成であるため詳細な説明は簡略化して、発明の要旨に係わる部材のみを示し、その特徴について説明する。
【0048】
前述した第1の実施形態では、レンズホルダ3の全外周に亘って、溝が形成されている。しかし、実際には、バーコードの白・黒のバーの配列方向の1軸だけの回転調整であるため、レンズホルダ3の外周に形成される溝は、少なくとも180°に亘って設けてあれば実施することができる。本実施形態では、余裕を見て180°+30°程度に亘って溝を形成し、それ以外の部分は、もとの円筒面を残した形状にしたレンズホルダ23として、シャーシ12にレンズホルダ23の曲面部(もとの円筒面)23aが当て付くように構成している。
【0049】
このような構成によれば、前述した第1の実施形態と同じ作用効果を得ることができる。また、第1の実施形態では、レンズホルダのV溝の頂部に加工上で発生したバリを除去している。このバリが存在した場合には、レンズホルダとの回転調整時にかじりが発生し、スムーズに回転ができず、正確な調整ができないことを防止するためである。しかし、本変形例では、レンズホルダ23の曲面部23a、即ち、面上の線でシャーシ12と接触しているため、バリ等の影響を排除でき、且つ溝形成部分が少ないため、加エコストが低減できる。
【0050】
尚、本変形例では、回転調整範囲を180°+30°と設定したが、勿論、この範囲に限定されるものではなく、この範囲を超えて調整する必要がある場合には、適宜、回転調整範囲を増加(つまり、曲面部を少なくする)させてもよく、反対に、メカ加工精度、組立精度及び光学系の改善などによって、LDとコリメータレンズとの偏芯及び相対的な傾きが改善されたならば、レンズホルダの回転調整の角度が微調整でよくなるため、その調整範囲に適宜合わせればよい。
【0051】
次に、本発明の第1の実施形態における第2の変形例について説明する。
図14(a)は、第2の変形例において、光軸方向からレンズホルダ部を見た正面図である。図14(b)は、調整の際にレンズホルダを回動させるための治具を付加した一例を示す斜視図である。
【0052】
この第2の変形例は、第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周に形成された溝をV型ではなく、歯車状に形成したレンズホルダ24に変更した構成である。図14(a)においては、歯車溝を誇張して記載しているが、実際にはもっと微細な溝であり、第1の実施形態で記載したように光学系の公差内でレンズホルダ24の2つの稜線が付勢バネ6に当て付くようになっている。
【0053】
図14(b)に示す回転調整治具60は、エンコーダー55、カップリング56、歯車57、モータ58及び軸59等で構成されている。図14(b)に示す矢印Gは、レーザ光出射方向を示す。本変形例は、治具側にレンズホルダ径よりも小さい径の歯車57を用いれば、歯車57に比べてレンズホルダが微小に回動するため、微調整が可能となる。また、治具側の歯車をモータなどのアクチュエータで回動させ、更に回転量検知のためのエンコーダー、ビーム径測定器と連結させ、ビーム測定器の情報をフィードバックさせることにより回転調整の自動化が実現できる。図14(b)に示している治具は、第2の変形例における発明の要旨ではなく、一般的に考えられる構成である。従って、他にも種々の構成が考えられる。
【0054】
本変形例によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、光軸方向に移動及び、回動方向に回動を自動で調整することができる。
【0055】
次に、本発明の第1の実施形態における第3の変形例について説明する。
【0056】
図15(a)乃至図15(c)は、第1の実施形態に係る第3の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図15(a)は、レンズホルダの上方斜視図であり、図15(b)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図15(c)は、レンズホルダを光軸方向から見た図である。
【0057】
本変形例は、前述した第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周に形成された溝を光軸方向全体に形成せず、非溝形成部30を設けた構成である。本変形例におけるレンズホルダ29には、外周の非溝形成部28に加えて、さらに非溝形成部30を設けている。この非溝形成部30は、V溝が形成された外周面よりも小さい円筒面であって、付勢バネが当接する箇所に一部が掛かるように形成されている。
【0058】
本変形例によれば、第1の実施形態と同等の作用効果を得ることができ、さらに、レンズホルダ29が、付勢バネ6及びV字面25との当接部分が少なくなるため、小さい力でレンズホルダを光軸方向に移動及び、回動方向に回動させることができる。
【0059】
次に、本発明の第1の実施形態における第4の変形例について説明する。
図16(a)乃至図16(c)は、第1の実施形態に係る第4の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。ここで、図16(a)は、レンズホルダの上方斜視図であり、図16(b)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図16(c)はレンズホルダ31を光軸方向から見た図である。尚、この変形例では、シャーシ12をV字状ではなく、レンズホルダ31と同じ円筒状に形成される。
【0060】
本変形例のレンズホルダ31は、上述した第1の変形例(図13参照)のレンズホルダ23においてシャーシ12の内曲面と当接する外周部分に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する2つの突起32が設けられた構成である。これらの突起32は、それぞれ、シャーシ2内曲面の中央を跨ぐように配設される。本実施形態では、レンズホルダ31の中心軸(光軸と一致)に対して45度に開いた外周面上にこれらの突起32が配置されている。
【0061】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、レンズと接触しないため、レンズホルダ32を滑らかに回動させることができる。また、レンズホルダ32はシャーシ12の内曲面には、2本の線で接しているため、光軸方向に移動させる場合でも、小さな力でスムーズに移動させることができる。
【0062】
次に、本発明の第1の実施形態における第5の変形例について説明する。
図17(a)乃至図17(c)は、第1の実施形態に係る第5の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
を示すものである。図17(a)はレンズホルダ33の上方斜視図、図17(b)はシャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図、図17(c)はレンズホルダ33を光軸方向から見た図である。本変形例におけるシャーシ12は、前述した第4の変形例と同じ円筒状の内曲面を有している。
【0063】
本変形例では、第1の実施形態におけるレンズホルダ3の外周全面に形成されたV溝を、全面には形成せず、レンズホルダ33のシャーシ12に当接する部分に、少なくとも2つの角状を有して光軸方向に延在する突起34が設けられた構成である。これらの突起34は、断面が円弧形ではなく、多角形状であり、それらの角部分がシャーシ12の内曲面に接する構成である。
【0064】
本変形例によれば、前述した第4の変形例と同等の効果を得ることができる。本変形例では、突起部の断面が円弧形でなくとも、多角形状の少なくとも2つの角が当接すれば、よいことを示している。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図18(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るレンズホルダ部の構成を示す図である。図18(a)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図18(b)は、光軸方向から見たレンズホルダの外周部と付勢バネとの当接部分を詳細に示す図である。
【0066】
本実施形態の付勢バネ37は、レンズホルダ36の外周面(溝)と当接する部分に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する突起38が設けられる。
この突起38の大きさ(径)は、レンズホルダ36の回転が係止できる大きさが好適し、付勢バネ37の撓み量と、レンズホルダ36の回転調整時の力を考慮して、例えば、0.1mm程度で設けている。この突起38は、付勢バネ37と一体に形成されても、突起38を別部品として製作し、付勢バネ37に固着しても良い。
【0067】
また、レンズホルダ36の外周に形成されるV溝の頂部の先端形状に丸みを付けたR形状に形成し、回転調整時に付勢バネ37のV溝が乗り越え易くしてもよい。
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、付勢バネに設けられた突起が、レンズホルダのV溝に嵌まり込むため、レンズホルダの調整時に、光軸方向の移動の直進性が増して、レンズホルダが回転せずに移動するため調整精度が良くなる。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態における第1の変形例について説明する。
図19(a)、(b)は、第2の実施形態に係る第1の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。図19(a)は、シャーシに載置されたレンズホルダが付勢バネで付勢されている構成を示す上方斜視図であり、図19(b)は、光軸方向から見たレンズホルダ外周部とシャーシとの当接部分を詳細に示す図である。
【0069】
シャーシ12には、搭載するレンズホルダ36の外周部分と当接するV字面25上に、断面が円弧形で光軸方向に沿ってライン状に延在する突起39が設けられている。
この突起39の大きさ(径)は、付勢バネ6の撓み量と、レンズホルダ36の回転調整時の力を考慮して、例えば、0.1mm程度に形成している。また、この突起39は、シャーシ12のV字面25上に一体に形成されても、突起39を別部品として形成してシャーシ12V字面25上に固着しても良い。
【0070】
また、第2の実施の形態と同様にレンズホルダ36のV溝の頂部をR形状にし、回転調整時にシャーシ12の突起39が乗り越え易くしてもよい。
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、前述した第2の実施形態に対して、シャーシを金型で成型する場合には、一体的に突起を成型することができ、容易に製作でき且つコスト低減も可能である。
【0071】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図20(a)乃至図20(c)は、第3の実施形態のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図20(a)は、シャーシに付勢バネを取り付けた光走査モジュールの全体斜視図であり、図20(b)は、光走査モジュール上から見た全体上面図であり、図20(c)は、図20(b)に示すD−D線で切断したレンズホルダの部分断面図である。
【0072】
前述した第1の実施形態における付勢バネ6の形状は、下方に凸となるような円弧状であったが、本実施形態では、逆円弧状、即ち上方に凸となるような円弧状の付勢バネ40を用いている。
【0073】
この付勢バネ40は、レンズホルダ3の外周側から覆うように付勢している。付勢バネ40の中央部の円弧径は、レンズホルダ3の円弧径より大きく、レンズホルダ3の外周面に形成された複数のV溝の頂部のうち、少なくとも2つの頂部が付勢バネ40に当接するように径を設定している。
【0074】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本実施形態は、組立時に、レンズホルダ3に被さる状態で取り付けられるため、嵌め込み作業が容易になる。
【0075】
次に、第3の実施形態における第1の変形例について説明する。
図21(a)乃至図21(c)は、第3の実施形態の第1の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。図21(a)は付勢バネ41を搭載した全体斜視図、(b)は全体上面図、(c)は(b)に記載されているE−E線で切断したレンズホルダ部の部分断面図である。
【0076】
本変形例は、前述した第1の実施形態における付勢バネ6の形状を、平板状にした付勢バネ41を用いる。この付勢バネ41は、一端がビス42によりシャーシ12に固定された片持ち支持に取り付けられる。レンズホルダ3のV溝に当接する部分をR形状にして、レンズホルダ3のV溝の2つ以上の頂部に当接させて、さらに確実に押さえるようにしても良い。
【0077】
また、図21(c)に示す付勢バネ41は、片側のみビス42で固定されているが、光軸を中心に左右対称な形状に形成し、付勢バネ41の両端をビス42で固定してもよい。
【0078】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。さらに、本変形例は、付勢バネ形状が簡単なため、ビスで固定するスペースがあれば、製造コストが低減できる。
【0079】
以上説明した各実施形態及び各変形例による本発明の光走査モジュールは、コリメータレンズが内蔵されているレンズホルダを回動させて、光源のレーザ光軸に対するコリメータレンズの偏芯や傾きを除去できるため、良好なビーム径が得られ、その後、フオーカス調整を行う際、レンズホルダの外周に形成した溝と付勢バネ及びシャーシに形成したガイドにより、レンズホルダがガイドに沿って移動できるため、光軸方向の直進性が良好になり、正確なフオーカス調整が行える。また、正確なフオーカス調整を行うことにより、調整のやり直しがなくなり、組立工数の削減ができる。光走査モジュールは、バーコードスキャナーに搭載され、前述した効果を得ることができる。
【0080】
以上各実施形態として説明した本発明は、以下の要旨を含んでいる。
(1)レーザ光を発生する光源(半導体レーザ)と、この光源から発生したレーザ光を平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズを保持内蔵するレンズホルダと、レーザ光を目標のバーコード記号に対して窓部(出射アパーチャ)を介して走査ビームとして照射するレーザ光走査部と、バーコード記号で反射した走査ビームの反射光を取り込み、その強度に基づく検出信号を生成するセンサと、レーザ光走査部の駆動を制御し、センサにより生成された検出信号からバーコード情報を生成する信号処理部と、信号処理部により生成されたバーコード情報をバーコードデータ処理装置と送受するための外部接続端子と、上記全てを搭載し、窓部(出射アパーチャ)が形成されているシャーシとからなる光走査モジュールにおいて、レンズホルダをシャーシに当てつけるための付勢バネと、付勢バネ及びシャーシのいずれかには、レンズホルダが容易に光軸周りに回動しないように規制すると共に、光軸方向に移動可能にする凸状に形成されたガイド機能が設けられ、ガイド機能は光軸周りに所定以上の力が加えられたときのみ光軸周りの回動を許可するよう形成されていることを特徴とする光走査モジュール。
【0081】
(2)レンズホルダの外周には光軸方向に複数の溝が形成されていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(3)レンズホルダの外周の溝は光学系許容値である10度以内に形成されていることを特徴とする(2)項に記載の光走査モジュール。
(4)ガイド機能が付勢バネに設けられていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
【0082】
(5)ガイド機能がシャーシに設けられていることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(6)レンズホルダが多角形であることを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
(7)レンズホルダを付勢するバネはシャーシに対してビス又は嵌め込んで固定することを特徴とする(1)項に記載の光走査モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態の光走査モジュールにおける構成部位を展開した構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)の光走査モジュールにおける光検出ユニットの外観構成を示す図である。図1(c)は、第1の実施形態の光走査モジュールを正面側から見た外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す光走査モジュール全体を背面側上方から見た外観斜視図である。
【図3】図3は、光走査モジュール全体を背面側下方から見た外観斜視図である。
【図4】図4は、基材上に実装される構成部位を背面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、基材上に実装される構成部位を正面側の上方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、基材上に実装される構成部位を上方から見た上面図である。
【図7】図7は、図6に示す線分B−Bにおける断面構成を示す図である。
【図8】図8(a)は、図6に示す線分C−Cにおけるレーザ出射軸付近の部分断面の構成を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示す破線円P部の構成を詳細に示す図であり、図8(c)はレンズホルダ外周に設けられた溝間隔を詳細に示す図である。
【図9】図9は、レンズホルダがシャーシに取り付けられた状態を背面側から見た斜視図である。
【図10】図10は、レンズホルダと付勢バネとの配置を示す斜視図である。
【図11】図11(a)、(b)は、光軸方向から見た調整前のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【図12】図12(a)、(b)は、光軸方向から見た調整後のレンズホルダを回転させたときの状態変化を示す図である。
【図13】図13は、第1の実施形態の第1の変形例における光軸方向から見たレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図14】図14(a)、(b)は、第1の実施形態の第2の変形例におけるレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図15】図15(a)乃至図15(c)は、第1の実施形態に係る第3の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図16】図16(a)乃至図16(c)は、第1の実施形態に係る第4の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図17】図17(a)乃至図17(c)は、第1の実施形態に係る第5の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図18】図18(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係るレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図19】図19(a)、(b)は、第2の実施形態に係る第1の変形例のレンズホルダ部の構成を示す図である。
【図20】図20(a)乃至図20(c)は、第3の実施形態のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
【図21】図21(a)乃至図21(c)は、第3の実施形態の第1の変形例のレンズホルダ部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…光走査モジュール、2…ベース部材、2a…ベース下部部材、2b…ベース上部部材、3,23,24,29,31,36…レンズホルダ、4…コリメータレンズ、5…半導体レーザ素子(LD)、6,37,41…付勢バネ、7…曲げミラー、8…バンドパスフィルタ、9…フォトダイオード、10…基板、11…基板シールド、12…シャーシ、13…フレキシブル基板、14…アクチュエータ、15…ミラー本体、16…シャフト、17…センターミラー、18…集光ミラー、19…出射アパーチャ、20…レーザ光反射曲面、21a、21b…段差、22a,22b…凸部、23…レンズホルダ、23a…曲面部(円筒面)、25…V字面、26…穴、27…フォーカス調整用の穴、28,30…非溝形成部、32,34,39…突起、42…ビス、44…ネジ穴、45…位置決め用突起部、47…支柱、48…ネジ、49…受光アパーチャ、50…光検出ユニット、51…制御部、52…外部出力端子、55…エンコーダー、56…カップリング、57…歯車、58…モータ、59…軸、60…回転調整治具、100…治具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の光学部品と、
前記光学部品を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記光学部品をその径方向から弾性的に付勢することで、前記光学部品を前記支持台に固定する弾性部材と、
を有する光学部品固定機構において、
前記光学部品の外周面には、当該光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向にわたって複数形成し、前記光学部品の光軸から見たときに、前記円周方向にわたって凹部と凸部が連続するように形成され、
前記弾性部材は、前記光学部品の光軸から見たときに、前記光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、前記光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して前記光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢することを特徴とする光学部品固定機構。
【請求項2】
前記弾性部材には、前記光学部品の前記2つの凸部の間に介在する突起が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記光学部品の外周面における曲率とは極性が逆の曲率でもって湾曲するように形成されることを特徴としている請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項4】
前記支持台には、前記光学部品の外周面に形成される連続する2つの凸部の間に介在する突起が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項5】
前記光学部品の外周面に形成される連続する2つの凸部でなす角度が10度以内になるように、前記複数の溝が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項6】
前記光学部品に対して所定以上の力量で前記光軸まわりの外力が加えられたときに、前記光学部品が前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持台上で前記光軸まわりに回動しえる程度に前記弾性部材の付勢力が設定されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項7】
光学部品を収納し、母線の方向に沿って外周面上に平行な複数の列状の溝が形成される円筒状のホルダ部と、
前記ホルダ部における離間する少なくとも2つの前記溝間の頂部と当接し、前記ホルダ部を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記ホルダ部を前記母線と交差する方向から隣接する前記溝間の頂部を弾性的に付勢して、前記支持台上で前記ホルダ部の姿勢を保持する弾性部材と、
を具備することを特徴とする光学部品固定機構。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記ホルダ部の外周面における曲率と異なる曲率又は、極性が逆の曲率のいずれかで板状に形成されることを特徴とする請求項7に記載の光学部品固定機構。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記ホルダ部の外周面における曲率とは、極性が逆の曲率を有するように湾曲され、前記ホルダ部の前記溝に嵌合して、前記支持台上での前記ホルダ部の回転を抑止する突起を備えることを特徴とする請求項7に記載の光学部品固定機構。
【請求項10】
前記支持台には、前記ホルダ部の外周面に形成された隣接する2つの頂部の間に嵌合する突起が形成されることを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【請求項11】
前記ホルダ部の外周面に形成される連続する2つの頂部がなす角度が10度以内になるように、前記複数の溝が形成されることを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【請求項12】
前記弾性部材は、前記溝に所定以上の力量で前記光軸まわりの外力が加えられたときに、前記支持台上で前記光軸まわりに回転し、回転後の前記ホルダ部の姿勢を保持可能な付勢力を有することを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【請求項1】
円筒状の光学部品と、
前記光学部品を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記光学部品をその径方向から弾性的に付勢することで、前記光学部品を前記支持台に固定する弾性部材と、
を有する光学部品固定機構において、
前記光学部品の外周面には、当該光学部品の光軸と平行な方向に沿う溝を円周方向にわたって複数形成し、前記光学部品の光軸から見たときに、前記円周方向にわたって凹部と凸部が連続するように形成され、
前記弾性部材は、前記光学部品の光軸から見たときに、前記光学部品の外周面における曲率と異なる曲率となるような板状に形成され、前記光学部品の外周面に形成される少なくとも連続する2つの凸部に対して当接して前記光学部品の径方向に沿って弾性的に付勢することを特徴とする光学部品固定機構。
【請求項2】
前記弾性部材には、前記光学部品の前記2つの凸部の間に介在する突起が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記光学部品の外周面における曲率とは極性が逆の曲率でもって湾曲するように形成されることを特徴としている請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項4】
前記支持台には、前記光学部品の外周面に形成される連続する2つの凸部の間に介在する突起が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項5】
前記光学部品の外周面に形成される連続する2つの凸部でなす角度が10度以内になるように、前記複数の溝が形成されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項6】
前記光学部品に対して所定以上の力量で前記光軸まわりの外力が加えられたときに、前記光学部品が前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持台上で前記光軸まわりに回動しえる程度に前記弾性部材の付勢力が設定されることを特徴とする請求項1記載の光学部品固定機構。
【請求項7】
光学部品を収納し、母線の方向に沿って外周面上に平行な複数の列状の溝が形成される円筒状のホルダ部と、
前記ホルダ部における離間する少なくとも2つの前記溝間の頂部と当接し、前記ホルダ部を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記ホルダ部を前記母線と交差する方向から隣接する前記溝間の頂部を弾性的に付勢して、前記支持台上で前記ホルダ部の姿勢を保持する弾性部材と、
を具備することを特徴とする光学部品固定機構。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記ホルダ部の外周面における曲率と異なる曲率又は、極性が逆の曲率のいずれかで板状に形成されることを特徴とする請求項7に記載の光学部品固定機構。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記ホルダ部の外周面における曲率とは、極性が逆の曲率を有するように湾曲され、前記ホルダ部の前記溝に嵌合して、前記支持台上での前記ホルダ部の回転を抑止する突起を備えることを特徴とする請求項7に記載の光学部品固定機構。
【請求項10】
前記支持台には、前記ホルダ部の外周面に形成された隣接する2つの頂部の間に嵌合する突起が形成されることを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【請求項11】
前記ホルダ部の外周面に形成される連続する2つの頂部がなす角度が10度以内になるように、前記複数の溝が形成されることを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【請求項12】
前記弾性部材は、前記溝に所定以上の力量で前記光軸まわりの外力が加えられたときに、前記支持台上で前記光軸まわりに回転し、回転後の前記ホルダ部の姿勢を保持可能な付勢力を有することを特徴とする請求項7記載の光学部品固定機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−117510(P2010−117510A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290093(P2008−290093)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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