説明

光学部品成形用樹脂組成物

【課題】光透過率や屈折率等における優れた光学特性に加えて離型性、耐熱性、機械強度に優れた特性を有する、成形型を用いた成形方法に好適な光学部品用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を含有するトリアルコキシシラン(イ)と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)とをモル比1:99〜90:10の範囲で加水分解、縮合反応することによって得られる重量平均分子量が1500〜30000のラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体、
(B)分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を含有する化合物、及び
(C)重合開始剤
を含有することを特徴とする光学部品成形用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率や屈折率等における優れた光学特性に加えて離型性、耐熱性、機械強度に優れた特性を有する、レンズ等の光学部品成形用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、携帯電話、デジカメ、車載カメラ用などに用いられており、その機器の目的に応じた、優れた光学特性を有するものであることが求められる。また、その機器の使用態様に合わせて、耐熱性、耐候性等の耐久性と、歩留まり良く成形できる生産性とが求められている。このような樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、メタクリル樹脂等の透明性樹脂が使用されてきた。
【0003】
近年、実装コスト低減の目的で、カメラモジュールをハンダリフローにて一括実装する方法が提案されており、リフロー炉での高温熱履歴(260℃)に耐えうるものが求められている。しかしながら、従来のプラスチックレンズでは耐熱性が低く、リフロープロセスに適応することは困難となっていた。
【0004】
一方、半導体と一体化したレンズ付き電子部品を得るためのハンダリフローに耐える耐熱性の光学材料として、不飽和結合を含有する籠型シルセスキオキサンとSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとエチレン性不飽和化合物とからなる硬化成分を用いたレンズ成形用組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−155442号公報
【特許文献2】特開2009−109579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の知見によれば、籠型シルセスキオキサン樹脂を用いた場合は、成型物が脆くなる傾向が強く、機械強度が十分でない。
【0007】
上述の現状に鑑み、本発明は、光透過率や屈折率等における優れた光学特性に加えて離型性、耐熱性、機械強度に優れた特性を有する、成形型を用いた成形方法に好適な光学部品用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を含有するトリアルコキシシラン(イ)と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)とをモル比1:99〜90:10の範囲で加水分解、縮合反応させることによって得られる重量平均分子量が1500〜30000のラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体、(B)分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を含有する化合物、及び(C)重合開始剤を含有することを特徴とする光学部品成形用樹脂組成物である。
本発明はまた、上記樹脂組成物を成形型中で硬化成形してなるレンズでもある。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明の光学部品成形用樹脂組成物は上述の構成により、光透過率、耐候性に優れ、屈折率は光学部品に適している。
(2)本発明の光学部品成形用樹脂組成物は上述の構成により、籠型シルセスキオキサンにおける離型性の不良という現象に対して、ランダム型及び/又はラダー型シルセスキオキサン誘導体を用いることにより、離型性を向上させるという予想外の効果を発揮し、型成形品を製造するのに適している。
(3)本発明の光学部品成形用樹脂組成物は上述の構成により、耐熱性、機械強度に優れた、レンズ等の光学部品素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、上記シルセスキオキサン誘導体(A)、上記化合物(B)及び上記重合開始剤(C)を必須成分とする。
【0011】
本発明におけるシルセスキオキサン誘導体(A)は、(RSiO3/2)nの構造を有するポリシロキサンの誘導体である。上記シルセスキオキサン誘導体(A)は、ラダー型及び/又はランダム型構造のものである。従って、上記シルセスキオキサン誘導体(A)は、好ましくは、ラダー型構造のもののみ、ランダム型構造のもののみ、又は、ラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物のいずれかであり、より好ましくはラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物である。
【0012】
シルセスキオキサン誘導体(A)は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を含有するトリアルコキシシラン(イ)と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)とをモル比1:99〜90:10の範囲で加水分解、縮合反応させることによって得ることができ、加水分解、縮合反応の条件によりラダー型、ランダム型構造のものを得ることができることがすでに知られている。例えば、ラダー型又はランダム型構造体の製造方法としては、本明細書の実施例に記載の方法、又は、特開平6−306173号公報に記載のラダーシリコーンの製造方法等により製造することができる。その際に、必要に応じた触媒の使用、反応温度、溶媒等の事項は当業者に知られており、周知技術に属する事項については、当業者は適宜用いることができる。トリアルコキシシランの加水分解、縮合反応により、一般には籠型構造、ランダム型構造、ラダー型構造のシルセスキオキサンが混合されて生成される可能性があるが、本発明においては、籠型構造体シルセスキオキサンの含有量は少ないほどよく、例えば、シルセスキオキサン誘導体(A)との合計中10重量%より少ないことが好ましく、5重量%より少ないことがより好ましく、従って、ラダー型構造のものとランダム型構造のものとの合計は本発明の組成物中に含有するシルセスキオキサン中、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0013】
トリアルコキシシラン(イ)において、炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−又はt−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、オクチル、イソオクチル、ドデシル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。また炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、ビフェニル、ナフチルを挙げることができる。好ましくは、フェニルである。上記トリアルコキシシラン(イ)としては、具体的には、たとえば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらのうち、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)としては、具体的には、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、これらのうち、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
上記トリアルコキシシラン(イ)と上記トリアルコキシシラン(ロ)との配合モル比は、1:99〜90:10である。トリアルコキシシラン(イ)のモル比が1未満であると硬化後の架橋密度が高くなり、耐熱衝撃性が悪くなるおそれがある。モル比が90より大きいと耐熱性が低くなるおそれがある。好ましくは、5:80〜80:20である。
【0016】
シルセスキオキサン誘導体(A)がラダー型又はランダム型構造体であることは、以下のようにして確かめることができる。すなわち、IR分析による、Si−O−Si結合の逆対照伸縮振動に基づく1100cm-1と1050cm-1付近のダブルピークによってその存在が裏付けられる。
【0017】
ラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体は、例えば、以下のような構造を有する。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式中、複数のXは同一又は異なって(メタ)アクリル基を、複数のYは同一又は異なって炭素数1〜12のアルキル基を表すか、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。
【0020】
本発明におけるシルセスキオキサン誘導体(A)の重量平均分子量は、1500〜30000である。重量平均分子量が1500未満であると、機械強度が不充分となり、30000を超えると、耐熱性が低下する可能性がある。好ましくは2000〜15000である。重量平均分子量は、ポリスチレン換算GPCにより求めた分子量分布から求めた値である。
【0021】
分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を含有する化合物(B)は、希釈剤として用いる。上記化合物(B)としては、例えば、各種のモノ又は多官能アクリレート類を挙げることができ、具体的には例えば、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、o−フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等を挙げることができる。これらのうち、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、o−フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0022】
上記シルセスキオキサン誘導体(A)と上記化合物(B)の配合割合としては、上記シルセスキオキサン誘導体(A)と上記化合物(B)との合計100重量部に対して、上記シルセスキオキサン誘導体(A)が10〜80重量部であることが好ましく、20〜70重量部がより好ましい。上記シルセスキオキサン誘導体(A)が10〜80重量部であると耐熱性が良好であり有利である。
【0023】
本発明において、上記シルセスキオキサン誘導体(A)と上記化合物(B)とは、不飽和結合含有基が反応して重合体を形成し、硬化物となるのであるが、この反応に必要な重合開始剤(C)としては、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物を挙げることができ、例えば、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーエステル及びパーオキシカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種を好適に使用することができる。上記ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアミルケトンパーオキサイド、メチルヘキシルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができ、ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができ、アルキルパーエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミル−パーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等を挙げることができ、パーオキシカーボネートとしては、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。
【0024】
上記重合開始剤(C)の配合量は、開始剤の種類により異なり得るので一概に規定することはできないが、例えば、上記シルセスキオキサン誘導体(A)と上記化合物(B)との合計100重量部に対して、一般的には、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜2重量部がより好ましい。
【0025】
重合反応は、例えば、80〜200℃、1〜60分の条件で反応させることが通常行われている。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他各種のオリゴマー配合することができ、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートオリゴマーなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他の各種の添加剤を配合することができ、例えば、耐熱性、耐候性を向上させる紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0028】
上記紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2′−ヒドロキシ−3′,3′′,4′′,5′′,6′′−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン類などが挙げられる。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0029】
これらの紫外線吸収剤は、シルセスキオキサン誘導体(A)100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0030】
上記光安定剤の具体例としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0031】
これらの光安定剤は、シルセスキオキサン(A)100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0032】
上記酸化防止剤の具体例としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0033】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス−(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が挙げられる。
【0034】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル−ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]等が挙げられる。
【0035】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類が挙げられる。
【0036】
本発明の光学樹脂は、例えば、デジタルカメラや携帯電話搭載カメラ等のカメラ用樹脂レンズ、ピックアップレンズ、プリズム、光導波路、光ディスク等の成形体に使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
合成例1
シルセスキオキサン誘導体(SQ−1)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液5.2g(水酸化テトラメチルアンモニウム11.3mmol)、蒸留水14.6gを仕込んだ後、メチルトリメトキシシラン0.5g(3.0mmol)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン99.5g(343mmol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(SQ−1)を得た。Mwは2882、分散度Mw/Mn=1.4であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm-1と1050cm-1付近のダブルピークを確認した。
【0039】
合成例2
シルセスキオキサン誘導体(SQ−2)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液6.9g(水酸化テトラメチルアンモニウム15.1mmol)、蒸留水19.5gを仕込んだ後、フェニルトリメトキシシラン45.8g(231.0mmol)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン54.2g(231.0mmol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(SQ−2)を得た。Mwは3582、分散度Mw/Mn=1.5であった。IR分析したところ、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0040】
合成例3
シルセスキオキサン誘導体(SQ−3)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK100g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液7.1g(水酸化テトラメチルアンモニウム15.5mmol)、蒸留水20.0gを仕込んだ後、フェニルトリメトキシシラン70.5g(356.0mmol)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン29.5g(119.0mmol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK100gを加え、さらに50gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に減圧下でMIBKを留去して、目的の化合物(SQ−1)を得た。Mwは5178、分散度Mw/Mn=1.4であった。IR分析にて、シルセスキオキサンラダーもしくはランダムポリマーを含むことを支持する、Si−O−Si結合の伸縮振動に基づく1100cm−1と1050cm−1付近のダブルピークを確認した。
【0041】
実施例1〜3、比較例1〜2
表1の配合によりそれぞれ各成分を混合し、目的の樹脂組成物を得た。この組成物を、5分間脱泡撹拌した後、150℃、10分の条件で硬化させ、厚み1mm、10mm×10mmの大きさの試験片を作成した。
【0042】
評価方法
各実施例の組成物及び各比較例の樹脂又は組成物を用いて試験片を作成し、それぞれについて、以下の方法で、性能を評価した。結果を表1に示した。
(1)初期透過率:日立製分光光度計U−2000を用いて、450nmにおける透過率T(%)を測定した。
(2)屈折率、アッベ数:多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ社)を用いて、試料温度25℃にて測定した。
(3)耐熱性:日立製分光光度計U−2000を用いて、260℃、10分曝露後の450nm波長光の透過率T(%)を求めた。
(4)曲げ強度:オリエンテック社製RTC−1350Aを用いて、ASTM−D790に準拠して曲げ強度の測定を行った。
(5)離型性::SUS304鋼板上で所定の大きさに成型した試験片(直径10mm、厚み10mm)を作成し、離型性を観察した。評価基準は以下のとおり。
○;容易に離型する。
△;指に力を入れれば離型する。
×;離型不可。
【0043】
表1中の略号の意味は以下のとおり。
M−106:O−フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製)
IB−X:イソボルニルメタクリレート(共栄社化学株式会社製)
OX−SQ:かご型シルセスキオキサン樹脂(東亜合成株式会社製)
ZEONEX−480R:シクロオレフィンポリマー樹脂(日本ゼオン株式会社)
SI−100L:熱カチオン重合触媒(三新化学工業株式会社製)
パーブチルO:熱ラジカル重合触媒(日本油脂株式会社製)
【0044】
【表1】

【0045】
実施例の結果から、本発明における成形用樹脂組成物を使用した実施例1〜3は、十分な光学特性が有り、離型性、耐熱性、曲げ強度が比較例より優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を含有するトリアルコキシシラン(イ)と(メタ)アクリル基を含有するトリアルコキシシラン(ロ)とをモル比1:99〜90:10の範囲で加水分解、縮合反応することによって得られる重量平均分子量が1500〜30000のラダー型及び/又はランダム型のシルセスキオキサン誘導体、
(B)分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を含有する化合物及び
(C)重合開始剤
を含有することを特徴とする光学部品成形用樹脂組成物。
【請求項2】
トリアルコキシシラン(イ)は、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
トリアルコキシシラン(ロ)は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(B)は、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、o−フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項5】
シルセスキオキサン誘導体(A)と化合物(B)との合計100重量部に対してシルセスキオキサン誘導体(A)を10〜80重量部含有する請求項1〜4のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項6】
重合開始剤(C)は、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーエステル及びパーオキシカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1〜5のいずれか記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の樹脂組成物を成形型中で硬化成形してなるレンズ。

【公開番号】特開2013−23625(P2013−23625A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161170(P2011−161170)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】