説明

光学部品用硬化性組成物

【課題】透明性に優れ、着色、変質、劣化を起こしにくく、成形性、寸法安定性、耐水性に優れる(メタ)アクリル系光学部品用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】芳香性炭化水素構造を有さず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物を含有し、前記エステル化物の少なくとも一部が、式


で表されるエーテル構造を組成物全量に対して5質量%以上含有し、スルホン酸、スルホン酸塩及び/又はスルホン酸エステルの含有量が組成物全量に対して100ppm以下であり、硬化物のガラス転移温度が−10〜50℃であることを特徴とする、光学部品用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品用硬化性組成物に関する。詳細には、本発明は、光学部品用硬化性組成物の耐候性を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性プラスチックは、ガラスなどの透明性無機材料に比べて成形加工性が良好であることから、光学部材、照明部材、自動車部材などの各種用途に好ましく用いられている。
【0003】
機械強度、成形加工性に優れた透明性プラスチックを得る材料として、従来、硬化性(メタ)アクリル系組成物が知られている。具体的には、エチレンオキシドで変性されたビスフェノールAのジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステルのジアクリレート、およびフェノキシ(エトキシ)エチルアクリレートを含む硬化性(メタ)アクリル系組成物によって形成される光学部品が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、前記文献1に開示された組成物を硬化させて得られる透明性プラスチックでは、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対する耐光性のレベルが充分ではなかった。これは、当該組成物が芳香族炭化水素構造を有するためであると考えられる。
【0005】
かような組成物を硬化させて得られる透明性プラスチックの耐光性レベルは、ガラスなどの透明性無機材料と比較して、経時的な変色という点で未だ不充分である。よって、例えば、太陽電池や屋外電光掲示板などのように、使用時に太陽光に直接曝露されうる光学部品や、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源を利用する発光ダイオード、光ケーブル、表示装置などの光学部品に用いようとすると、経時的な変色や変質の点で大きな課題を残している。
【0006】
一方、アルキレン(オキシ)ジ(メタ)アクリレート、所定の光重合開始剤、および所定の紫外線吸収剤を所定の割合で含有する光硬化性組成物が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
前記文献2に開示された組成物を硬化させて得られる透明性プラスチックは、透明性および耐光性が比較的良好である。しかしながら、ポリオキシアルキレン鎖が短すぎると、硬化時の収縮によって成形の不具合や寸法安定性が不充分となる虞がある。また、ポリオキシアルキレン鎖が長すぎると、耐水性が不充分となる虞がある。
【特許文献1】特開平6−263831号公報
【特許文献2】特許第3055068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の硬化性組成物では、充分に透明性および耐光性に優れ、かつ、寸法安定性、成形性および耐水性にも優れる硬化物が得られるとは限らず、かような硬化物を提供しうる硬化性組成物の開発が強く望まれているのが現状である。
【0009】
そこで本発明は、透明性に優れ、かつ、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対しても着色や変質、劣化を起こしにくく、さらに、成形性や寸法安定性、耐水性にも優れる(メタ)アクリル系光学部品用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を行った。
【0011】
まず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物を含有する従来の組成物において、得られる硬化物の、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対する着色や変質、劣化の要因を探求すべく、組成物の構成成分の種類、含有量、および製造条件等について検討を行った。
【0012】
その結果、本発明者らは、(1)1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物として、芳香族炭化水素構造を有しないものを用いた場合に、上述した短波長領域の光による着色や変質、劣化が抑制されうること、(2)従来の組成物に微量に含有されるスルホン酸誘導体が上述の着色や変質、劣化の要因の一つであること、(3)エステル化物として所定のエーテル構造を有するものを用いると上記の着色や変質、劣化が飛躍的に抑制されうること、(4)硬化物のガラス転移温度が所定の範囲内の値であると、上記の着色や変質、劣化が抑制されうること、を見出した。
【0013】
上記の各知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、芳香族炭化水素構造を有さず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を含有する光学部品用硬化性組成物であって、
前記エステル化物(A)の有する下記化学式1:
【0015】
【化1】

【0016】
で表されるエーテル構造の含有量が、組成物の全量に対して5質量%以上であり、スルホン酸、スルホン酸塩および/またはスルホン酸エステルの含有量が、組成物の全量に対して硫黄原子換算で100ppm以下であり、並びに、組成物の硬化により得られる硬化物のガラス転移温度が−10〜50℃であることを特徴とする、光学部品用硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透明性に優れ、かつ、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対しても着色や変質、劣化を起こしにくく、さらに、成形性や寸法安定性、耐水性にも優れる(メタ)アクリル系光学部品用硬化性組成物が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに制限されることはなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施されうる。
【0019】
本発明は、芳香族炭化水素構造を有さず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を含有する光学部品用硬化性組成物であって、
前記エステル化物(A)の有する下記化学式1:
【0020】
【化2】

【0021】
で表されるエーテル構造の含有量が、組成物の全量に対して5質量%以上であり、スルホン酸、スルホン酸塩および/またはスルホン酸エステルの含有量が、組成物の全量に対して硫黄原子換算で100ppm以下であり、並びに、組成物の硬化により得られる硬化物のガラス転移温度が−10〜50℃であることを特徴とする、光学部品用硬化性組成物である。
【0022】
まず、本発明の光学部品用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、所定のエステル化物(A)を含有する。当該エステル化物(A)は、芳香族炭化水素構造を有さず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物(本明細書中、単に「ポリオール化合物」とも称する)と、(メタ)アクリル酸とから生成しうるエステル化物(A)である。
【0023】
「ポリオール化合物」としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール等のアルカンジオールや、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノールなどが挙げられる。ただし、その他の化合物が用いられてもよい。例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリンなどが用いられてもよい。なお、これらのポリオール化合物は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
硬化性組成物の硬化により得られる硬化物の、光による劣化や変色に対する耐性を向上させるという観点からは、ポリオール化合物が、自身の有する水酸基に対してβ水素を有しない化合物であることが好ましい。かような化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。なかでも、上記の効果に優れるポリオール化合物としては、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、またはトリメチロールプロパンが挙げられる。
【0025】
上記のエステル化物(A)としては、商品が市販されている場合には当該商品を購入して用いてもよいし、自ら調製して用いてもよい。
【0026】
エステル化物(A)を自ら調製する手法としては、例えば、エステル交換法および脱水縮合法が挙げられる。以下、それぞれの手法について簡単に説明する。
【0027】
まず、エステル交換法について説明する。エステル交換法では、ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸エステルとが所定の触媒の存在下で脱アルコール反応(エステル交換反応)を起こすことにより、所定のエステル化物(A)が生成する。
【0028】
エステル交換法において、ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸エステル)は、好ましくは1:1〜1:20であり、より好ましくは1:1.5〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:5である。
【0029】
触媒としては、例えば、アルカリ金属アルコラート、マグネシウムアルコラート、アルミニウムアルコラート、チタンアルコラート、ジブチルスズオキシド、陰イオン交換樹脂などが挙げられる。触媒の使用量は特に制限されないが、反応の総仕込み量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。なお、反応後には触媒を除去することが好ましい。
【0030】
溶媒としては、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、シメンなどが挙げられる。溶媒の使用量は特に制限されないが、反応の総仕込み量100質量部に対して、好ましくは1〜70質量部であり、より好ましくは5〜50質量部であり、さらに好ましくは10〜30質量部である。
【0031】
なお、エステル交換反応中の(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止することを目的として、反応系に重合防止剤を添加することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)およびその誘導体(TEMPO誘導体);ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン;銅塩などが挙げられる。重合防止剤の添加量は特に制限されないが、反応の総仕込み量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜2質量部であり、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0032】
反応温度についても特に制限はないが、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは70〜140℃であり、さらに好ましくは90〜130℃である。
【0033】
続いて、脱水縮合法について説明する。脱水縮合法では、ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸とが所定の触媒の存在下で脱水反応を起こすことにより、所定のエステル化物(A)が生成する。
【0034】
脱水縮合法において、ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸との仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸)は、好ましくは1:1〜1:5であり、より好ましくは1:1.01〜1:2であり、さらに好ましくは1:1.05〜1:1.5である。
【0035】
触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。触媒の使用量は特に制限されないが、反応の総仕込み量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。なお、反応後には触媒を除去することが好ましい。
【0036】
上記の触媒のなかでも、得られる硬化性組成物中のスルホン酸誘導体(硫黄成分)の含有量を低減させうるという観点からは、陽イオン交換樹脂が、触媒として好ましく用いられる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム アンド ハース社製のアンバーリスト(登録商標)やアンバーライト(登録商標)、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)などが挙げられる。なお、陽イオン交換樹脂を触媒として用いる際には、使用前にトルエンやメタノールなどの有機溶媒、または水を用いて充分に洗浄し、スルホン酸誘導体(硫黄成分)の溶出を防止することが好ましい。
【0037】
溶媒の種類および使用量、並びに反応温度は特に制限されない。これらの好ましい形態としては、エステル交換法の溶媒および反応温度について上述した形態が同様に採用されうる。
【0038】
なお、脱水縮合反応中の(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止することを目的として、反応系に重合防止剤を添加することが好ましい。重合防止剤およびその添加量の好ましい形態としては、上記のエステル交換法の欄において説明した形態が同様に採用されうる。
【0039】
本発明の組成物において、前記エステル化物(A)は、その少なくとも一部が、下記化学式1:
【0040】
【化3】

【0041】
で表されるエーテル構造を含有する。かようなエーテル構造がエステル化物(A)中に存在することにより、得られる硬化物の耐水性の低下や吸水率の増加が抑制されうる。
【0042】
エステル化物(A)が上記化学式1のエーテル構造を含有する場合、当該エーテル構造は、エステル化物(A)の有するエステル構造部分に挿入された形態を有する。後述する実施例で用いたエステル化物(A)を例に挙げて説明すれば、合成例1において調製した、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド8モル付加物のジメタクリレート(M−1)は、ネオペンチルグリコールの有する2個の水酸基に、エチレンオキシド単位が合計して平均8個付加し、それぞれの末端のエチレンオキシド基にメタクリル酸がエステル結合してなる構造を有する。本願においては、上記のポリオール化合物の有する水酸基と(メタ)アクリル酸とが直接エステル結合を形成してなる化合物のみならず、M−1のように、上記の化学式1で表されるエーテル構造がエステル構造部分に挿入されてなる化合物もまた、「エステル化物(A)」に含まれるものとする。
【0043】
本発明の組成物において、化学式1で表されるエーテル構造の含有量は、組成物の全量に対して5質量%以上である。エーテル構造の含有量が5質量%未満であると、エーテル構造の存在により発揮される上述の効果が充分に得られない虞がある。硬化物が、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対して硬化物の変色や変質、劣化などを起こしにくい性能(すなわち、耐光性)を向上させるという観点からは、当該エーテル構造の含有量は大きいほど好ましく、化学式1で表されるエーテル構造の含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上である。エーテル構造の含有量の上限は特に制限されないが、硬化物の耐水性を向上させるという観点から、エーテル構造の含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以下である。このエーテル構造の含有量の値は、例えば、かようなエーテル構造を有するエステル化物(A)を製造する際のエーテル構造の前駆体(例えば、エチレンオキシド)の使用量を調節することにより、制御されうる。なお、エーテル構造の含有量の値としては、後述の実施例において詳述する手法により測定される値を採用するものとする。
【0044】
続いて、上記の化学式1のエーテル構造について詳細に説明する。
【0045】
化学式1のエーテル構造は、アルキレンオキシド単位を繰り返し単位とする。また、当該アルキレンオキシド単位は、場合によっては側鎖を有してもよい。ただし、この側鎖は上記の条件を満足する必要がある。かような条件を満足するエーテル構造を生成するには、アルキレンオキシド単位を付加するための前駆体として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシド(1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド)からなる群から選択される1種または2種以上のアルキレンオキシドを用いるとよい。
【0046】
化学式1のエーテル構造において、アルキレンオキシド単位の繰り返し数(化学式1中のn)は、1〜100であるが、好ましくは2〜15であり、より好ましくは4〜10であり、さらに好ましくは6〜10である。nが小さすぎると、充分な耐光性が得られない虞がある。一方、nが大きすぎると、耐水性や復元性が低下する虞がある。ただし、場合によっては、上記の好ましい範囲を外れる数のアルキレンオキシド単位が付加されたエステル化物(A)が用いられてもよい。
【0047】
化学式1で表されるエーテル構造を有するエステル化物(A)としては、商品が市販されている場合には当該商品を購入して用いてもよいし、自ら調製して用いてもよい。
【0048】
エーテル構造を有するエステル化物(A)を自ら調製する手法の一例を挙げると、まず、従来公知の手法によりポリオール化合物の水酸基に所望の数のアルキレンオキシド単位を付加する。その後、得られた化合物と(メタ)アクリル酸(または(メタ)アクリル酸エステル)とを上述したエステル交換法または脱水縮合法でエステル化することによって、エステル化物(A)が生成しうる。なお、所望の数のアルキレンオキシド単位が付加されたポリオール化合物が市販されている場合には、当該商品を購入して、エステル化反応のみを自ら行ってもよい。
【0049】
本発明の硬化性組成物は、上記で説明したエステル化物(A)に加えて、その他の成分を含んでもよい。本発明の組成物がエステル化物(A)に加えて含みうる成分としては、例えば、エステル化物(A)以外の重合性モノマー;(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B);重合性オリゴマー;これら以外のその他の重合体;重合開始剤;これら以外のその他の添加剤が挙げられる。以下、詳細に説明する。
【0050】
エステル化物(A)以外の重合性モノマーが組成物中に添加されると、組成物の粘度の低減や硬化速度の向上といった効果が得られる。かような重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等の単官能(メタ)アクリレート;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル;
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物;
無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の単官能α,β−不飽和化合物;
ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル;
ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;
などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B)としては、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸を50モル%以上含む単量体成分の重合により得られるものであればよく、その具体的な形態は、特に制限されない。また、上記の重合体および/または共重合体(B)としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
かような重合体および/または共重合体(B)の調製に用いられる単量体成分(重合性モノマー)としては、例えば、本発明の組成物に含まれうる重合性モノマーとして上記で例示した化合物が同様に用いられうる。
【0053】
本発明の好ましい形態において、本発明の組成物に含まれうる重合体および/または共重合体(B)は、本発明の組成物の主成分である上記のエステル化物(A)と重合可能な官能基を有する。かような形態によれば、得られる硬化物の光学特性が向上しうる。具体的には、硬化物の靭性や耐水性が向上しうる。
【0054】
エステル化物(A)と重合可能な官能基を有する重合体および/または共重合体(B)を自ら調製する場合には、例えば、以下の5つの方法:
(1)カルボキシル基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、グリシジル基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法、または、グリシジル基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、カルボキシル基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法;
(2)水酸基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、イソシアネート基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法、または、イソシアネート基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、水酸基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法;
(3)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する重合性モノマー並びに(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、ビニルエーテル基および他の重合性基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法、または、ビニルエーテル基および他の重合性基を含有する重合性モノマー並びに(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、水酸基および/またはカルボキシル基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法;
(4)水酸基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、酸無水物基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法、または酸無水物基を含有する重合性モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、水酸基を含有する重合性モノマーとを反応させる方法;
(5)多官能モノマーを含む重合性モノマー組成物を部分的に重合させて、二重結合の一部を重合体の側鎖に残存させる方法、
のいずれかが採用されうる。ただし、その他の方法が用いられてもよいことは勿論である。
【0055】
重合性オリゴマーが本発明の組成物中に添加されると、硬化物の靭性の向上といった効果が得られる。かような重合性オリゴマーとしては、例えば、飽和または不飽和の多塩基酸またはその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と、飽和または不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;
多官能エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;
多官能オキセタン化合物(例えば、4,4’−ビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸のビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メチル]エステル、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるオキセタン(メタ)アクリレート;
飽和または不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;
ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;
ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート;
などが挙げられる。これらの重合性オリゴマーは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上述した重合体以外の重合体が本発明の組成物中に添加されてもよい。例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ケイ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、AS樹脂、EVA樹脂などの重合体が本発明の組成物中に添加されうる。かような重合体が組成物中に添加されると、硬化物の光学特性や力学特性の向上といった効果が得られる。なお、これらの重合体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤を含みうる。組成物中に重合開始剤が含まれると、所定の重合開始要因に応じて、組成物の重合(硬化)が開始される。重合開始剤の形態は特に制限されないが、光重合開始剤(C1)および熱重合開始剤(C2)が例示される。好ましくは、光重合開始剤(C1)が添加される。かような形態によれば、本発明の硬化性組成物を用いた光学部品の製造効率が向上しうる。より好ましくは、光重合開始剤(C1)および熱重合開始剤(C2)の双方が本発明の組成物中に含まれる。かような形態によれば、光重合開始剤の添加に伴う組成物の耐光性の低下が抑制されうる。その結果、光学部品の製造効率がより一層向上しうる。
【0058】
重合開始剤の一例を挙げると、光重合開始剤(C1)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;
などが挙げられる。なかでも、芳香族炭化水素構造を含まないものが好ましく用いられうる。なお、これらの光重合開始剤(C1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
一方、熱重合開始剤(C2)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;
などが挙げられる。なお、これらの熱重合開始剤(C2)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記の熱重合開始剤(C2)が本発明の組成物中に添加される場合、本発明の組成物には、熱重合促進剤がさらに添加されてもよい。熱重合促進剤としては、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム等の金属石鹸;1級、2級、または3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物などが挙げられる。なかでも、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルが好ましく用いられうる。なお、これらの熱重合促進剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
以上、本発明の組成物に添加されうる添加剤の具体例について説明したが、上記以外の添加剤が本発明の組成物中に添加されてもよい。かような添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、揺変化剤、レベリング剤、離型剤などが挙げられる。これらの添加剤の具体的な形態については特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0062】
本発明の組成物を用いてより精密な光学部品の製造を所望する場合、離型剤の選択は慎重に行われるべきである。ここで、離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ナトリウムなどの金属石鹸;
カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸などの脂肪酸;
ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール;
メチルステアレート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ソルビタンモノステアレートなどの脂肪酸エステル;
信越化学工業株式会社の製品である、商品名KF96、KF965、KF410、KF412、KF4701、KF54、KS61、KM244F、KS702、KF725、KS707、KS800Pなどのシリコーン系離型剤;
オムノバ社の製品である、商品名ポリフォックスPF−136A、PF−156A、PF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−651、PF−652、PF−3320などのフッ素系界面活性剤;
などが挙げられる。これらの離型剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、フッ素系界面活性剤が、透明性を保持したまま離型性を発現できるという観点からは、好ましく用いられうる。
【0063】
本発明の硬化性組成物に含まれる各成分の配合比は特に制限されず、硬化性組成物についての従来公知の知見を参照することにより、適宜調節されうる。配合比の一例を挙げると、本発明の組成物において、上記のエステル化物(A)の配合量は、組成物の全量に対して、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、さらに好ましくは30〜85質量%である。このエステル化物(A)の配合量がかような範囲内の値であると、得られる硬化物の耐熱性、寸法安定性、成形性のバランスが向上しうる。また、本発明の組成物において、上記の重合体および/または共重合体(B)の配合量は、組成物の全量に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。この重合体および/または共重合体(B)の配合量がかような範囲内の値であると、特に組成物の硬化時の収縮が効果的に抑制され、硬化物の成形性が向上しうる。さらに、本発明の組成物において、上記の重合開始剤の配合量(光重合開始剤(C1)と熱重合開始剤(C2)との合計量)は、組成物の全量に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.001〜3質量%、特に好ましくは0.001〜2質量%、最も好ましくは0.01〜2質量%である。重合開始剤の配合量が少なすぎると、重合性が低下する虞がある。一方、重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化物の耐光性が低下する虞がある。また、本発明の組成物が光重合開始剤(C1)および熱重合開始剤(C2)の双方を含む場合、これらの配合量の質量比(熱重合開始剤(C2)/光重合開始剤(C1))は、好ましくは1〜100であり、より好ましくは2〜100であり、さらに好ましくは2〜50であり、さらに好ましくは2〜30であり、特に好ましくは3〜20であり、最も好ましくは5〜20である。この質量比が小さすぎると、耐候性向上に対する効果が充分に得られない虞がある。一方、この質量比が大きすぎると、活性エネルギー線による硬化性が低下する虞がある。
【0064】
以上、本発明の組成物における配合量の好ましい形態を説明したが、これらはあくまでも好ましい形態に過ぎず、本発明の技術的範囲がこれらの範囲に制限されるわけではない。従って、場合によっては上記の範囲を外れる配合量が採用されてもよい。
【0065】
本発明の組成物においては、特定の不純物の含有量の上限も規定される。すなわち、本発明の組成物において、スルホン酸、スルホン酸塩および/またはスルホン酸エステル(以下、単に「スルホン酸誘導体」とも称する)の含有量は、組成物の全量に対して硫黄原子換算で100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。組成物中のスルホン酸誘導体の含有量がかような範囲内の値であると、スルホン酸誘導体の存在に起因する硬化物の耐光性の低下と、それに伴う経時的な変色が抑制されうる。なお、スルホン酸誘導体の含有量の値としては、後述の実施例において詳述する手法により測定される値を採用するものとする。
【0066】
組成物中のスルホン酸誘導体の含有量を上記の範囲とするための手法としては、(1)組成物の製造工程においてスルホン酸誘導体を使用しない;または、(2)組成物の製造工程において、スルホン酸誘導体を使用した場合には、当該スルホン酸誘導体を除去する除去工程をさらに行う、という2つの手法が挙げられる。
【0067】
上記の(1)の手法を採用する場合には、従来最も一般的に用いられているスルホン酸誘導体(特に、p−トルエンスルホン酸)以外の化合物(例えば、陽イオン交換樹脂)を触媒として用いた脱水縮合法か、または、金属アルコラート等を触媒として用いたエステル交換法を用いて、エステル化物(A)を製造すればよい。かような手法によれば、スルホン酸誘導体の含有量は理論上はゼロであり、除去工程を付加する必要もないため、製造コストの観点からも好ましい。
【0068】
上記の(2)の手法を採用する場合、除去工程においてスルホン酸誘導体を除去する手段としては、例えば、水またはアルカリ水溶液を用いた洗浄や、塩基性無機塩(例えば、MgO)または陰イオン交換樹脂を用いた吸着濾過などが挙げられる。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、さらに、硬化物のガラス転移温度が所定の範囲内の値を示す点に特徴を有する。ここで、「ガラス転移」とは、非晶質高分子化合物などのガラス状態の物質を加熱した際に、当該物質の熱容量や熱膨張率等の温度依存性が急激に変化する現象をいい、「ガラス転移」の起こる温度を「ガラス転移温度」と称する。なお、本願において、ガラス転移温度の値としては、後述の実施例において詳述する手法(動的粘弾性測定法)により測定される値を採用するものとする。
【0070】
本発明の硬化性組成物の硬化により得られる硬化物のガラス転移温度は−10〜50℃であり、好ましくは0〜45℃であり、より好ましくは0〜35℃であり、さらに好ましくは0〜30℃である。硬化物のガラス転移温度が低すぎると、硬化物の耐水性や復元性が低下する虞がある。一方、硬化物のガラス転移温度が高すぎると、型を用いてレンズシート等の光学部品を製造する際、離型時に割れが生じる虞がある。硬化物のガラス転移温度の値は、例えば、組成物に含有されるエステル化物(A)の有するエーテル構造のアルキレンオキシド単位の繰り返し数(化学式1中のn)や、エステル化物(A)を構成するポリオール化合物の種類、重合体および/または共重合体(B)を構成する単量体の種類などを調節することにより、制御されうる。
【0071】
本発明の硬化性組成物の硬化により得られる硬化物は、上述したように、耐光性に優れる。かような特性を表す指標として、例えば、耐候性試験前後の変色の度合いを示すイエローインデックス変化率(以下、「ΔYI」とも称する)がある。本発明の硬化性組成物の硬化により得られる硬化物のΔYIの具体的な値は特に制限されないが、当該硬化物のΔYIは、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、さらに好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1.1以下であり、特に好ましくは1.0以下であり、最も好ましくは0.5以下である。ただし、硬化物がかような範囲内のΔYIを示す形態のみに、本組成物の技術的範囲が制限されるわけではない。なお、ΔYIの値としては、後述の実施例において詳述する手法により測定される値を採用するものとする。
【0072】
本発明の光学部品用硬化性組成物は、例えば、所望の構造に制御された上記のエステル化物(A)、(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B)、並びに、その他の添加成分を準備し、これらを組成物の製造分野において従来公知の手法により混合することによって、製造されうる。
【0073】
また、場合によっては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B)を部分重合することによって(メタ)アクリル系重合体および/または共重合体と(メタ)アクリル系単量体の混合物を調製し、この混合物に上記のエステル化物(A)およびその他の添加成分を添加することによっても製造されうる。
【0074】
さらに、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体を部分重合により調製し、前記官能基と反応しうる別の官能基を有するメタクリレートを混合して反応させることによって、上記のエステル化物(A)、(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B)、並びに、その他の添加成分の混合物を製造してもよい。
【0075】
本発明の光学部品用硬化性組成物は、硬化により硬化物となる。この性質を利用して、例えば、光学部品(例えば、レンズシート)の製造に用いられうる。組成物を硬化させて硬化物とするための手段は特に制限されず、硬化性組成物の硬化について従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、本発明の組成物が光重合開始剤を含む場合の硬化手段としては、例えば活性エネルギー線の照射が挙げられる。この際、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマ線などの電磁波が挙げられる。
【0076】
紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いることが好ましい。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等が好適である。これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0077】
電子線照射による硬化には、好ましくは10〜500kV、より好ましくは20〜300kV、さらに好ましくは30〜200kVの加速電圧を有する電子線が用いられうる。この際、電子線の照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、さらに好ましくは5〜200kGyである。電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0078】
一方、本発明の組成物が熱重合開始剤(および、必要に応じて熱重合促進剤)を含む場合の硬化手段としては、加熱が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに制限されるわけではない。
【0080】
〔合成例1〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド8モル付加物(以下、「NPG−8EO」とも称する)(456g)、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」とも称する)(400g)、触媒であるジブチルスズオキシド(以下、「DBTO」とも称する)(9.12g)、および重合防止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」とも称する)(45.6mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0081】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−8EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−1)」と称する。
【0082】
得られた化合物(M−1)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0083】
なお、化合物(M−1)は、後述する実施例1〜4、および8において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0084】
〔合成例2〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド6モル付加物(以下、「NPG−6EO」とも称する)(368g)、MMA(400g)、DBTO(7.36g)、および4H−TEMPO(36.8mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0085】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−6EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−2)」と称する。
【0086】
得られた化合物(M−2)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0087】
なお、化合物(M−2)は、後述する実施例5において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0088】
〔合成例3〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−8EO(456g)、MMA(400g)、カリウムt−ブトキシド(以下、「t−BuOK」とも称する)(4.56g)、および4H−TEMPO(45.6mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、4時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0089】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−8EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−3)」と称する。
【0090】
得られた化合物(M−3)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0091】
なお、化合物(M−3)は、後述する実施例6において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0092】
〔合成例4〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−8EO(456g)、メタクリル酸(以下、「MAA」とも称する)(189g)、陽イオン交換樹脂であるアンバーリスト15D(オルガノ株式会社製;トルエンおよび水で各3回洗浄後乾燥させたもの)(25g)、トルエン(50g)、および4H−TEMPO(45.6mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成する水を留去しながら、6時間かけて脱水縮合法によるエステル化反応を行った。
【0093】
反応終了後、陽イオン交換樹脂を濾過により除去し、さらに加熱減圧によってトルエンおよび未反応のMAAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−8EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−4)」と称する。
【0094】
得られた化合物(M−4)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子含有率は6ppmであった。
【0095】
なお、化合物(M−4)は、後述する実施例7において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0096】
〔合成例5〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−8EO(456g)、MAA(189g)、p−トルエンスルホン酸(以下、「PTS」とも称する)(10g)、トルエン(50g)、および4H−TEMPO(45.6mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成する水を留去しながら、6時間かけて脱水縮合法によるエステル化反応を行った。
【0097】
反応終了後、水洗および静置し、水層部を分離する操作を3回繰り返し、さらに加熱減圧によってトルエンおよび未反応のMAAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−8EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−5)」と称する。
【0098】
得られた化合物(M−5)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子含有率は310ppmであった。
【0099】
なお、化合物(M−5)は、後述する実施例8、および比較例1において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0100】
〔合成例6〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−6EO(368g)、アクリル酸エチル(400g)、DBTO(7.36g)、および4H−TEMPO(36.8mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0101】
得られた反応液から未反応のアクリル酸エチルを留去し、エステル化物(A)として、NPG−6EOのジアクリレートを得た。これを「化合物(M−6)」と称する。
【0102】
得られた化合物(M−6)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0103】
なお、化合物(M−6)は、後述する実施例9において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0104】
〔合成例7〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド4モルおよびプロピレンオキシド4モル付加物(以下、「NPG−4EO−4PO」)(512g)、MMA(400g)、DBTO(10.24g)、および4H−TEMPO(51.2mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0105】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、NPG−4EO−4POのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−7)」と称する。
【0106】
得られた化合物(M−7)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0107】
なお、化合物(M−7)は、後述する実施例10において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0108】
〔合成例8〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ブチルエチルプロパンジオールのエチレンオキシド4モル付加物(以下、「BEPD−4EO」とも称する)(336g)、MMA(400g)、DBTO(6.72g)、および4H−TEMPO(33.6mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0109】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、BEPD−4EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−8)」と称する。
【0110】
得られた化合物(M−8)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0111】
なお、化合物(M−8)は、後述する実施例11において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0112】
〔合成例9〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド12モル付加物(以下、「TMP−12EO」とも称する)(662g)、MMA(600g)、DBTO(13.24g)、および4H−TEMPO(66.2mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0113】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、エステル化物(A)として、TMP−12EOのトリメタクリレートを得た。これを「化合物(M−9)」と称する。
【0114】
得られた化合物(M−9)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0115】
なお、化合物(M−9)は、後述する実施例12において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0116】
〔合成例10〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコール(135g)、MMA(400g)、t−BuOK(1.35g)、および4H−TEMPO(13.5mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、4時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0117】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、次いで、水洗によって未反応のネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールモノメタクリレート、およびt−BuOKを除去して、エーテル構造を有しないネオペンチルグリコールジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−10)」と称する。
【0118】
得られた化合物(M−10)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0119】
なお、化合物(M−10)は、後述する比較例2において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0120】
〔合成例11〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド25モル付加物(以下、「NPG−25EO」とも称する)(1204g)、MMA(400g)、DBTO(24.08g)、および4H−TEMPO(120.4mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、8時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0121】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、NPG−25EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−11)」と称する。
【0122】
得られた化合物(M−11)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0123】
なお、化合物(M−11)は、後述する比較例3において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0124】
〔合成例12〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素との混合ガス導入管を備えたフラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物(以下、「BPA−2EO」とも称する)(228g)、MMA(400g)、DBTO(4.56g)、および4H−TEMPO(22.8mg)を入れて攪拌し、110℃に昇温した。昇温後、反応によって生成するメタノールを留去しながら、6時間かけてエステル交換法によるエステル化反応を行った。
【0125】
得られた反応液から未反応のMMAを留去し、BPA−2EOのジメタクリレートを得た。これを「化合物(M−12)」と称する。
【0126】
得られた化合物(M−12)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0127】
なお、化合物(M−12)は、後述する比較例4において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0128】
〔合成例13〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、MMA(190g)、MAA(8.6g)、およびトルエン(463g)を入れて攪拌し、窒素置換後に70℃に昇温した。昇温後、熱重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製;V−65)(0.99g)をトルエン(50g)で希釈した溶液を、発熱に注意しながらゆっくり滴下した。70℃にて3時間反応後、90℃に昇温し、90℃にて2時間反応させて、MMAとMAAとのラジカル重合を完結させた。
【0129】
続いて、メトキノン(0.68g)、メタクリル酸グリシジル(156g)、およびテトラフェニルホスフォニウムブロミド(2.71g)を添加して、空気と窒素との混合ガスを導入しながら100℃に昇温し、酸価が5以下になるまで反応を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサンで再沈後、減圧下でn−ヘキサンを除去し、MMAとMAAとのコポリマーを得た。これを「化合物(P−1)」と称する。
【0130】
得られた化合物(P−1)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、数平均分子量(Mn)は35000であり、重量平均分子量(Mw)は78000であった。
【0131】
さらに、得られた化合物(P−1)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0132】
なお、化合物(P−1)は、後述する実施例2において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0133】
〔合成例14〕
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、MMA(85g)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(新中村化学工業株式会社製;NKエステルM−90G;以下、単に「M−90G」とも称する)(15g)、およびトルエン(100g)を入れて攪拌し、窒素置換後に70℃に昇温した。昇温後、熱重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製;V−65)(1.5g)をトルエン(50g)で希釈した溶液を、発熱に注意しながらゆっくり滴下した。70℃にて4時間反応後、90℃に昇温し、90℃にて1時間反応させて、MMAとM−90Gとのラジカル重合を完結させた。
【0134】
得られたポリマー溶液をn−ヘキサンで再沈後、減圧下でn−ヘキサンを除去し、MMAとM−90Gとのコポリマーを得た。これを「化合物(P−2)」と称する。
【0135】
得られた化合物(P−2)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、数平均分子量(Mn)は14000であり、重量平均分子量(Mw)は25000であった。
【0136】
さらに、得られた化合物(P−2)に含まれる硫黄原子の含有率を誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定したところ、硫黄原子は検出されなかった。
【0137】
なお、化合物(P−2)は、後述する実施例3、および5において、硬化性組成物の製造原料として用いられる。
【0138】
〔実施例1〜12および比較例1〜4〕
下記の表1に示す配合により、実施例1〜12および比較例1〜4の光学部品用硬化性組成物を調製した。組成物を調製する際には、まず、組成物の各成分を充分に混合し、均一な溶液とした。その後、加熱減圧により溶媒を除去して、各成分が良好に分散した組成物を調製した。なお、上記の合成例で調製した各化合物以外の添加成分としては、以下のものを用いた。また、表中の数字は「質量部」を示す。
【0139】
D−1173:光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ スペシャリティ ケミカルズ社製;ダロキュア1173)
PBO:熱重合開始剤;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製;パーブチルO)
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(住友化学株式会社製;スミペックスLG−6A)
PF−656:離型剤;フッ素系界面活性剤(オムノバ ソリューション社製)
【0140】
【表1】

【0141】
〔組成物の特性評価〕
上記の実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、以下の手法により、組成物中のエーテル構造およびスルホン酸誘導体の含有量を測定した。測定により得られた値を下記の表2に示す。
【0142】
<エーテル構造含有量の測定方法>
組成物(15mg)および48%臭化水素酸(200mg)を、5mLのアルミシールバイアル中に入れ、テフロンシリコンセプタムを介して封じ、オーブン中で150℃にて2時間加熱し、臭素酸分解反応を進行させ、組成物中のエーテル構造を臭素化させた。反応終了後、反応液中の臭化物(例えば、1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモブタン、1,4−ジブロモブタンなど)の含有量をガスクロマトグラフィにより測定し、検量線との比較により定量した。定量された臭化物の含有量の値から、組成物中のエーテル構造の含有量を算出した。
【0143】
<スルホン酸誘導体含有量の測定方法>
組成物をトルエンに溶解させ、水を添加後、分液ロートにて水層中にスルホン酸およびスルホン酸塩を抽出した。この水層を分離し、エバポレータを用いて濃縮し、さらに熱風乾燥機を用いて水分を除去した。その後、アセトンに再度溶解させ、ガスクロマトグラフィによりスルホン酸の含有量を測定し、検量線との比較により定量した。
【0144】
一方、上記の分液ロートのトルエン層に再度水を添加し、撹拌しながら100℃にて10時間加熱することにより、スルホン酸エステルをスルホン酸に分解した。次いで、分液ロートを用いて反応液から水層を分離し、エバポレータを用いて濃縮し、さらに熱風乾燥機を用いて水分を除去した。その後、アセトンに再度溶解させ、ガスクロマトグラフィによりスルホン酸の含有量を測定し、検量線との比較により定量した。
【0145】
上記の双方の定量により得られたスルホン酸の含有量を合計し、組成物中のスルホン酸誘導体の含有量とした。なお、下記の表2には、硫黄原子の含有量に換算した値を示す。
【0146】
〔シート状成形体の作製およびその特性評価〕
上記の実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、以下の手法により、0.2mmまたは1mmの厚さを有するシート状成形体を作製し、得られた成形体を用いて、ガラス転移温度および吸水率の測定、および耐候性の評価を行った。得られた結果を下記の表2に示す。なお、組成物の硬化手段については、実施例4でのみ熱硬化を用い、その他の実施例および比較例では紫外線(UV)硬化を用いた。
【0147】
<シート状成形体の作製方法>
紫外線(UV)硬化:ガラス板上にシリコンゴム製スペーサ(厚さ:0.2mmまたは1mm)を配置し、スペーサで囲まれた部位に硬化性組成物を注入した。その上にPETフィルム(厚さ:250μm)をかぶせ、250mW超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:43mJ/cm・秒)を93.2秒間照射し、組成物を硬化させた。室温まで自然冷却後、ガラス板を取り外して、シート状成形体を得た。
【0148】
熱硬化:シリコンゴム製スペーサ(厚さ:0.2mmまたは1mm)が2枚のガラス板で挟持されてなるケース中に硬化性組成物を注入した。その後、60℃の温水中で1時間加熱し、ゆっくりと硬化させた。硬化後、110℃の乾燥機中で2時間ポストキュアした。室温まで自然冷却後、ガラス板を取り外して、シート状成形体を得た。
【0149】
<ガラス転移温度の測定方法>
上記で作製した厚さ0.2mmのシート状成形体を5mm幅の短冊状に切断して試験片とし、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製;RSA−II)を用いて動的粘弾性測定を行い、ガラス転移温度(℃)を測定した。具体的な測定条件は、引張モード、周波数:1Hz、クランプ間距離:25mm、振幅:0.1%、昇温速度:5℃/分に設定した。そして、−40℃から100℃まで昇温した際に損失正接(tanδ)の値がピークとなる温度をガラス転移温度(℃)とした。
【0150】
<吸水率の測定方法>
上記で作製した厚さ1mmのシート状成形体を40mm×40mmの大きさに切断し、試験片としたこと以外は、JIS K 6911に準じて、吸水前の試験片の質量(W1)と吸水後の試験片の質量(W2)とを測定し、下記数式1に従って、吸水率を算出した。
【0151】
【数1】

【0152】
<耐候性の評価方法>
上記で作製した厚さ1mmのシート状成形体を用いて、促進耐候性試験を行った。具体的には、超エネルギー照射試験機(スガ試験機株式会社製)を用い、6時間の光照射(照射強度:100mW/cm、波長:295〜450nm、湿度:70%Rh、温度:60℃)、および6時間の結露(湿度:90%Rh以上、温度:30℃)を1サイクルとして、10サイクル(合計120時間)の耐候性試験を行った。なお、本促進耐候性試験の10サイクルによる変色は、2.5年間の屋外曝露試験における変色とほぼ同等であった。
【0153】
耐候性試験の前後のシート状成形体の変色を、色差計(日本電色工業株式会社製;シグマ90システム)を用いて透過モードで測定した。なお、下記の表2には、測定結果をイエローインデックス変化率(ΔYI)の値として示す。
【0154】
さらに、耐候性試験の前後のシート状成形体の変色および耐水劣化(白化)を、目視にて観察した。表中、「○」は変色および白化が観察されなかったことを示し、「△」は変色および白化がわずかに観察されたことを示し、「×」は著しい変色および白化が観察されたことを示す。
【0155】
〔レンズシートの作製およびその特性評価〕
上記の実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、以下の手法により、レンズシートを作製し、得られたレンズシートについて、耐クラック性および復元性を評価した。得られた結果を下記の表2に示す。なお、組成物の硬化手段については、実施例4でのみ熱硬化を用い、その他の実施例および比較例では紫外線(UV)硬化を用いた。
【0156】
<レンズシートの作製方法>
紫外線(UV)硬化:レンズシート金型およびアクリル樹脂板(厚さ:0.2mm)の間に硬化性組成物を注入した。その後、250mW超高圧水銀ランプを用いて、アクリル樹脂板側から紫外線(主波長:365nm、照射強度:43mJ/cm・秒)を93.2秒間照射し、組成物を硬化させた。室温まで自然冷却後、型を取り外して、レンズシートを得た。
【0157】
熱硬化:レンズシート金型およびアクリル樹脂板(厚さ:0.2mm)の間に硬化性組成物を注入した。その後、60℃のオーブン中で1時間加熱し、ゆっくりと硬化させた。硬化後、110℃の乾燥機中で2時間ポストキュアした。室温まで自然冷却後、型を取り外して、レンズシートを得た。
【0158】
<耐クラック性の評価方法>
上記の手法によりレンズシートを作製する際、型を取り外すときにレンズシートにクラックが生じたか否かを、光学顕微鏡を用いて観察した。表中、「○」はクラックが観察されなかったことを示し、「×」はクラックが観察されたことを示す。
【0159】
<復元性の評価方法>
上記の手法により作製したレンズシートに対し、爪を押し付けて跡をつけた。30分間経過後、爪の押し付け跡が残っているか否かを、目視で観察した。表中、「○」は押し付け跡が観察されなかったことを示し、「×」は押し付け跡が観察されたことを示す。
【0160】
【表2】

【0161】
表2に示す結果から、所定のエステル化物(A)を含有する硬化性組成物において、当該エステル化物(A)の有するエーテル構造の含有量、組成物中のスルホン酸誘導体の含有量、および硬化物のガラス転移温度が所定の範囲内の値であると、耐水性や耐候性、耐クラック性、復元性などの種々の特性に優れることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の光学部品用硬化性組成物は、高度の無色透明性および耐光性が要求される光学部品の製造に、好適に用いられうる。かような光学部品としては、例えば、太陽電池や屋外電光掲示板などのように、使用時に太陽光に直接曝露されうる光学部品や、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源を利用する発光ダイオード、光ケーブル、表示装置などの光学部品が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素構造を有さず、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物(A)を含有する光学部品用硬化性組成物であって、
前記エステル化物(A)の少なくとも一部が、下記化学式1:
【化1】

で表されるエーテル構造を含有し、
前記エーテル構造の含有量が、組成物の全量に対して5質量%以上であり、
スルホン酸、スルホン酸塩および/またはスルホン酸エステルの含有量が、組成物の全量に対して硫黄原子換算で100ppm以下であり、並びに、
組成物の硬化により得られる硬化物のガラス転移温度が−10〜50℃である、
ことを特徴とする、光学部品用硬化性組成物。
【請求項2】
前記エーテル構造の含有量が、組成物の全量に対して5〜65質量%である、請求項1に記載の光学部品用硬化性組成物。
【請求項3】
前記エステル化物(A)が、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドからなる群から選択される1種または2種以上のアルキレンオキシドが付加されてなる化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物である、請求項1または2に記載の光学部品用硬化性組成物。
【請求項4】
前記1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が、水酸基に対してβ水素を有しない化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品用硬化性組成物。
【請求項5】
前記水酸基に対してβ水素を有しない化合物が、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、またはトリメチロールプロパンからなる群から選択される1種または2種以上の化合物である、請求項4に記載の光学部品用硬化性組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体(B)をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部品用硬化性組成物。
【請求項7】
光重合開始剤(C1)および/または熱重合開始剤(C2)をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品用硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−265499(P2006−265499A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89779(P2005−89779)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】