説明

光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着剤層、粘着型光学部材及び画像表示装置

【課題】光学部材等の部材から容易に剥がすことができるリワーク性、および、光学部材に粘着剤層を形成した後、粘着剤の汚れ、浮き、剥がれなどの不具合を生じることなく加工できる加工性あるいは耐久性を満足できる粘着剤層を形成することができる光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着剤層、それを用いた粘着型光学部材、および画像表示装置等を提供することを目的とする。
【解決手段】光学部材用粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、架橋助剤として多官能(メタ)アクリレートを0.01〜30重量部、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤0.01〜10重量部を含有する光学部材用粘着剤組成物を調製する。さらに、このような光学部材用粘着剤組成物から、光学部材用粘着剤層、これを有する光学部材、およびそれらを含む画像表示装置を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離性および接着状態の耐久性に優れる、光学部材用粘着剤組成物、当該粘着剤組成物から得られる光学部材用粘着剤層、このような光学部材用粘着剤層を光学部材の少なくとも片面に有する粘着型光学部材、およびこのような粘着型光学部材を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は携帯電話やパソコンのみならずテレビジョン用途など幅広く且つ物量も増加している。その液晶表示装置等に用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。
【0003】
このような光学部材に用いられる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後には、それに伴う浮きや剥がれが生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下においても対応できる耐久性が要求される。
【0004】
また、光学部材を液晶セルに貼り合わせる際、貼り合わせ位置を誤ったり、貼合せ面に異物が噛み込んだりしたような場合に、光学部材を液晶パネルから剥離し、液晶セルを再利用する場合がある。光学部材を液晶パネルから剥離する際には、液晶セルのギャップを変化させたり、光学部材を破断させるような接着状態にならないこと、すなわち光学部材を容易に剥離できる再剥離性(リワーク性)が必要とされる。しかし、光学部材用粘着剤の耐久性を重視して、単に接着性を向上させるとリワーク性が悪くなる。
【0005】
例えば、高分子ポリマー100重量部に、ガラス転移点が0〜-80℃の重量平均分子量が3万〜10万の低分子量ポリマーを10〜100重量部および多官能化合物を配合した粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物は、剥がれや発泡や白ヌケ現象に対応できるとともに、液晶セルから偏光フィルムを剥離し再貼付けすることができるリワーク性にも優れることが開示されている(特許文献1)。
【0006】
高分子量ポリマーに低分子量ポリマーをブレンドした上記粘着剤組成物は、耐久性に優れ、低分子量成分にて内部応力を吸収させるものではある。しかし、耐久性、再剥離性、応力緩和性のすべてを充分に満足しているとは言えない。特に、光学部材を剥がして液晶セルが再利用する再剥離性については不充分であり、大型化した液晶セルのギャップ破損が起こる可能性が高い。
【0007】
また、近年、パソコンやTVに液晶表示装置が使用されるようになり、大型化が急速に進み、その生産量は急激に増加している。近い将来これらが廃棄物となり、その量は年間10万トン前後で推移すると考えられ、これらの処理が問題である。これらは、たとえばTFT液晶パネルの85重量%程度がガラスで、15重量%程度が偏光フィルムなどの樹脂で構成されている。ガラスは粉砕処理されて、例えば建材用のガラスカレットとして供給されるが、単離の難しさからその量はまだ少ない。
【0008】
従って、ガラスとそれ以外の成分を分離する技術が必要であり、使用済みとなった液晶表示装置のリサイクル方法として、液晶表示装置自体を高温加熱して処理する方法(特許文献2、特許文献3、および特許文献4)や、液晶表示装置の構成材料を分別回収する方法(特許文献5および特許文献6)があるが、熱処理により莫大なエネルギーが必要であったり、特殊な装置が必要であったり、廃アルカリ溶液が生じたりという問題点がある。
【0009】
処理の観点からは、構成材料の分別を円滑に行うことが望ましいが、粘着剤付き反射防止フィルムを被貼着面から完全に剥し取ってリサイクルすることを目的とした、剥離性に優れた粘着剤も開示(特許文献7)されているが、効果として十分とはいえない。
【0010】
現在、光学部材貼り付け用の粘着剤としては、その耐候性や透明性などの利点のために主としてアクリル系粘着剤が一般的に使用されるが、このようなアクリル系粘着剤の架橋方法としては、各種架橋剤が使用されており、アクリルポリマーの官能基と架橋方法の総説が公表されている(非特許文献1)。
【0011】
シランカップリング剤によるゴムの加硫方式の開示(非特許文献2)がある他、非特許文献3には、ハロゲン化ゴムに対してアミノ基含有カップリング剤が有効であるとの報告、およびエポキシ化ゴムには、同様のカップリング剤が加熱により有効であるとの報告があるが、このようなことを応用して、天然ゴムあるいはアミノ基含有シランカップリング剤を添加して加硫天然ゴム系粘着剤を得る方法(特許文献8)ハロゲン含有エラストマにシランカップリング剤とイソシアネート架橋剤を添加した方法(特許文献9)が開示されている。しかしながら、いずれも光学用途としては着色耐候性や再剥離性に劣るものである。
【0012】
特許文献10と11には、光学フィルム用粘着剤組成物にアミノ基含有シランカップリング剤を使用しているが、イソシアネート系架橋剤と架橋促進剤としてジブチルすずジラウレートを添加している。ジブチルすずジラウレートは、有機スズ化合物に分類され環境ホルモン作用を及ぼすことが知られている。有機スズ系架橋促進剤を使用せずに、イソシアネート系架橋剤のみ使用した場合、架橋反応が遅くなり、エージング時間が長くなることで、生産性に劣る結果となる。
【0013】
特許文献12には、酸素雰囲気下で紫外線照射して硬化させた粘着剤の記述があり、放射線を照射した光学部材との貼り合わせ面に低架橋密度層が形成しており耐久性試験に不具合が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002-121521号公報
【特許文献2】特開2000-24613号公報
【特許文献3】特開2000-189939号公報
【特許文献4】特開2000-84531号公報
【特許文献5】特開2002-159955号公報
【特許文献6】特開2001-328849号公報
【特許文献7】特開平11−209708号公報
【特許文献8】特開2003−96419号公報
【特許文献9】特開2006−225634号公報
【特許文献10】特開2007−138056号公報
【特許文献11】特開2007−138057号公報
【特許文献12】特開2005−48003号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】粘着ハンドブック(第3版)、粘着テープ工業会編、2005,2.3.3.2、第31頁
【非特許文献2】M.Akiba and A.S.Hashim.Prog.Polym.Sci.,22,475(1997)
【非特許文献3】S.Yamashita,A.Yamada, M.Ohara and S.Kohjiya, Makromo1.Chem., 186,1373-,2269-(1985).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、大気中で紫外線照射しても表面付近の架橋密度が低下しない粘着剤層が形成でき、再剥離性に優れ、かつ光学部材の大きな伸縮に対しても発泡や浮き、ハガレが生じない優れた耐久性を発揮するとともに、架橋反応の際のエージングが適度な時間に収まり、生産性がよく、架橋密度も良好な光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0017】
また本発明は、前記光学部材用粘着剤組成物により形成された光学部材用粘着剤層、該粘着剤層を有する粘着型光学部材、および粘着型光学部材を含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、このような粘着型光学部材を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粘着剤組成物として、(メタ)アクリル系ポリマーに、架橋助剤およびベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤を加えることで、大気中で紫外線照射しても表面付近の架橋密度が低下しない粘着剤層が形成でき、優れた耐久性と剥離容易性を両立し、かつ架橋後には良好な表面付近の架橋密度が実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、架橋助剤として多官能(メタ)アクリレートを0.01〜30重量部、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤0.01〜10重量部を含有する光学部材用粘着剤組成物、に関する。
【0021】
上記光学部材用粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および炭素数4〜12のアルキル基で水酸基を少なくとも1個含む水酸基含有モノマーを0.05〜2重量%含有し得る。
【0022】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマーであり得る。
【0023】
上記光学部材用粘着剤組成物において、さらに、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、アミノ基含有化合物を0.01〜5重量部含み得る。
【0024】
上記アミノ基含有化合物は、アミノ基含有シランカップリング剤であり得る。
【0025】
上記光学部材用粘着剤層は、上記光学部材用粘着剤組成物に、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2の紫外線を照射して架橋させることにより得られ得る。
【0026】
本発明はまた、光学部材の少なくとも片側に、上記いずれかの光学部材用粘着剤層が形成されている、粘着型光学部材、に関する。
【0027】
本発明はまた、上記粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置、に関する。
【0028】
本発明はまた、光学部材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられた粘着型光学部材の製造方法であって、1)支持体上に上記いずれかの光学部材用粘着剤組成物を適用する工程;2)該光学部材用粘着剤組成物に、活性エネルギー線を照射して架橋処理し、光学部材用粘着剤層を形成する工程;および3)該光学部材用粘着剤層を光学部材に貼り合せる工程を含む、粘着型光学部材の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、再剥離性に優れ、かつ光学部材の大きな伸縮に対しても発泡や浮き、ハガレが生じない優れた耐久性を発揮する。架橋反応に際しては、エージングが適度な時間に収まるために、生産性がよく、また、架橋密度が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、架橋助剤として多官能(メタ)アクリレートを0.01〜30重量部、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤0.01〜10重量部を含有する。
【0031】
ここで、(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上、および炭素数4〜12のアルキル基で水酸基を少なくとも1個含む水酸基含有モノマーを(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、0.05〜2重量%含有し得る。
【0032】
炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとは、直鎖あるいは分岐鎖の4以上の炭素数のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをいい、特に限定されないが、n−ブチル(メタ)クリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、が例示される。これらは単独でも2以上の組合せでも用いられ得る。なかでもn−ブチル(メタ)クリレートまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せが好ましく用いられる。
【0033】
本発明において、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上であり、50.1重量%以上であってもよく、好ましくは、60重量%以上、より好ましくは、65重量%以上である。また、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、99.95重量%以下であり、好ましくは、98重量%以下であり、さらには85重量%以下であってもよい。
【0034】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーには、この他に、水酸基含有モノマーが含まれ得る。水酸基含有モノマーは、好ましくは、炭素数4以上12以下のアルキル基と少なくとも1個の水酸基を含む水酸基含有モノマーが含まれる。ここで、水酸基は、アルキル基の末端に存在することが好ましい。特にアルキル基の炭素数が4〜6のモノマーが好ましいが、限定はされない。
【0035】
このようなモノマーとして、(メタ)アクリロイル基の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、等などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシメチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどがあげられる。これらは、単独でも2以上の組合せでも好ましく用いられる。
【0036】
水酸基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.05重量%以上、好ましくは、0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上用いられる。さらに、水酸基含有モノマーは、2重量%以下、好ましくは、1.5重量%以下、より好ましくは、1重量%以下の割合で用いられる。
【0037】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、前記モノマーの他にその他のモノマーを用いることもできる。その他のモノマーの合計量は、ポリマーを構成するモノマー全体の0〜49.95重量%の割合であり、好ましくは、0.5〜30重量%である。
【0038】
このようなその他のモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有する、不飽和カルボン酸含有モノマーを特に制限なく用いることができる。不飽和カルボン酸含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等があげられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのなかで、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0039】
カルボキシル基含有モノマーは、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、使用する場合には、7重量%までの割合で用いることが好ましく、より好ましくは5重量%までの割合で用いられる。特に、下限はないが、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上の使用量である。
【0040】
他の共重合モノマーとして、例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーがあげられる。芳香族環含有モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0041】
さらに、他の共重合モノマーの成分として、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;などがあげられる。
【0042】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0043】
さらに、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0044】
本発明のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、50万以上であり、より好ましくは70万以上、さらに好ましくは80万以上である。重量平均分子量が50万以上であれば、粘着剤層の耐久性および粘着剤層の凝集力が良好となり、糊残りが生じにくく好ましい。一方、重量平均分子量は特に上限はないが、300万以下であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0045】
このようなアクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られるアクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0046】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0047】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0048】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシドなどをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0050】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0051】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0052】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、たとえば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0054】
本発明の光学部材用粘着剤組成物には、このようなベースポリマー100重量部に対して、架橋助剤として多官能(メタ)アクリレートを0.01〜30重量部、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤0.01〜10重量部を含有する。
【0055】
ここで、架橋助剤として用いられる多官能(メタ)アクリレートとは、重合性の不飽和基を2個以上有する多官能モノマーのことである。このような多官能モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)が挙げられる。
【0056】
このような多官能(メタ)アクリレートは、ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上、好ましくは、0.05重量部以上であり、また、30重量部以下、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは20重量部以下の割合で含まれる。
【0057】
本発明に用いられる光開始剤は、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。例えば本発明で、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤として使用できるものとして、ベンゾフェノンの4量体タイプを主成分とするLAMBSON社製、Speedcure7005、7006、7003、および7020などがあり、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.01〜10重量部が好ましい。0.01重量部より少ないと架橋不足となり、10重量部以上であれば、未反応尭開始剤の残存量が多くなり、耐久性へ悪影響する。好ましくは0.05以上、好ましくは、0.1重量部以上であり、上限としては、10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0058】
さらに、本発明の光学部材用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、アミノ基含有化合物を0.01〜5重量部含むことが好ましい。ベンゾフェノンは水素供与体から水素を引き抜いてラジカルを作るので、アミノ基含有化合物などの水素供与体を系中に添加しておく方がラジカル発生において好ましい。アミノ基含有化合物としては、アミノ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有モノマー、トリエタノールアミンなどが使用可能で、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン (例えば、信越シリコーン社製、KBM-573)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、などが挙げられる。
【0059】
さらに、本発明の光学部材用粘着剤組成物には、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤、有機系架橋剤、または多官能性金属キレートを併用することもできる。
【0060】
有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう)があげられる。エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、スピログリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0061】
イソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0062】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0063】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速い為に好ましい。透明性が要求される用途では、芳香族系のイソシアネート系化合物ではなく、脂肪族や脂環族系イソシアネートが好ましく用いられる。
【0064】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、もし使用する場合には、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート化合物架橋剤を0.05〜2重量部含有してなることが好ましく、0.07〜1重量部含有してなることがより好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0065】
多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0066】
このような架橋剤により、粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0067】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0068】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材の少なくとも片面に、前記粘着剤により粘着剤層を形成したものである。
【0069】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し架橋処理して粘着剤層を形成した後に光学部材に転写する方法、または光学部材に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し架橋処理して粘着剤層を光学部材に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0070】
剥離処理したセパレーターとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0071】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0072】
また、光学部材の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0073】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0074】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、2〜500μm程度である。好ましくは、5〜100μm、より好ましくは、5〜50μmである。
【0075】
本発明の架橋・硬化処理工程において使用される活性エネルギー線は、特に限定されず、例えば、赤外線、可視光線、紫外線が挙げられる。このうち、特に紫外線が好ましい。本発明の粘着剤組成物を用いた場合には、活性エネルギー線を照射する際に、不活性ガス雰囲気にしたり、酸素を遮断するカバーフィルムを塗膜上に被覆したりする必要がなく、作業効率に優れる。
【0076】
例えば紫外線を用いる場合、用いられるポリマーや光架橋剤の種類により適宜決定することができるが、一般的にUVA(320-390nm)とUVB(280-320nm)をあわせた光量が50mJ/cm2〜2000mJ/cm2程度であり、好ましくは100mJ/cm2〜1800mJ/cm2、さらに好ましくは200mJ/cm2〜1700mJ/cm2である。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの有極ランプや無極ランプを用いることができる。紫外線照射は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、グラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、エキシマランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、太陽光などを光照射用光源として用いることができるが、なかでも、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることが好ましい。
【0077】
照射時の温度は、特に限定されるものではないが、支持体の耐熱性を考慮して140℃くらいまでが好ましい。
【0078】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。
【0079】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0080】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0081】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0082】
なお、上記の粘着型光学部材の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学部材のセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0083】
光学部材としては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学部材としては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0084】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0085】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0086】
本発明の粘着型光学部材に使用される光学部材としては、例えば、偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0087】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0088】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0089】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0090】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0091】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0092】
前記透明保護フィルムは、接着剤を塗工する前に、偏光子との接着性を向上させるために、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
【0093】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0094】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、前記位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0095】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0096】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%は、特に記載がなくても、いずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RH(1時間あるいは1週間)である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0098】
<重量平均分子量の測定>
得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をジメチルホルムアミドに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm 計90cm
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度0.1重量%)
・流量:0.8ml/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・注入量:100μl
【0099】
<ゲル分率の測定>
ゲル分率は、架橋処理直後の粘着剤層を約0.1gをとり、これを秤量して重量(W1)を求めた。次いでこれを微孔性テトラフルオロエチレン膜(TEMISH NTF-1122日東電工社製)(膜重量W2)に包み、粘着剤が漏れないように縛った後、サンプル瓶にいれた。酢酸エチルを50cc加えて23℃下で、2日間振とうし、可溶分を抽出した。その後、粘着剤層とフッ素樹脂膜を取り出し、アルミカップ上で120℃、2時間乾燥させ、サンプルを含むフッ素樹脂膜の重量(W3)を測定し、次式(1)によりゲル分率(重量%)を求めた。さらに、上記7日間室温で放置後、および90℃で500時間保存後のゲル分率も同様に求めた。
(W3−W1)/(W2−W1)×100(重量%)・・・(1)
【0100】
(偏光板の作成)
ポリビニルアルコールフィルム(厚さ80μm)を、40℃のヨウ素水溶液中で、元長の5倍に延伸し、その後、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液から引き上げ、50℃で、4分間乾燥させて、偏光子を得た。この偏光子の両側に、ポリビニルアルコール型接着剤を用いて、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着して、偏光板を作成した。
【0101】
実施例1
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、アクリル酸n−ブチル100重量部、アクリル酸0.5重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5重量部、重合開始剤として、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部と酢酸エチル200重量部を投入し、1時間窒素置換した後、窒素気流下で撹拝しながら60℃付近に保って9時間重合反応を行い、重量平均分子量180万のアクリル系ポリマー溶液(I)を調製した。
【0102】
ポリマー溶液(I)の固形分100重量部に対して、架橋助剤としてイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)15重量部、光開始剤としてベンゾフェノンの4量体タイプを主成分とするLAMBSON社製、Speedcure7005を0.7重量部、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-573)0.2重量部、および架橋剤として0.05重量部のイソシアネート架橋剤(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物;三井武田ケミカル社製、D-160N)とを均一に混合撹搾し、アクリル系粘着剤溶液(1)を調製した。
【0103】
(粘着型光学部材の作製)
得られた粘着剤組成物(1)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を256mJ/cm2照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。
【0104】
実施例2
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液(I)の固形分100重量部に対して、架橋助剤としてイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)15重量部、光開始剤としてベンゾフェノンの4量体タイプを主成分とするLAMBSON社製、Speedcure7005を0.5重量部、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-573)0.2重量部、および架橋剤として0.05重量部のイソシアネート架橋剤(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物;三井武田ケミカル社製、D-160N)とを均一に混合撹拝し、アクリル系粘着剤溶液(2)を調製した。
【0105】
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(2)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を256mJ/cm2照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。
【0106】
実施例3
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(2)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を384mJ/cm照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。
【0107】
実施例4
(アクリル系ポリマーの調製)
撹絆羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つロフラスコに、n−ブチルアクリレート100重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5重量部、重合開始剤として2,2'一アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部と共に仕込み、緩やかに撹拝しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って9時間重合反応を行い、重量平均分子量164万のアクリル系ポリマー溶液(II)を調製した。
【0108】
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
得られたアクリル系ポリマー溶液(II)の固形分100重量部に対して、架橋助剤としてイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)15重量部、光開始剤としてベンゾフェノンの4量体タイプを主成分とするLAMBSON社製、Speedcure7005を0.7重量部、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-573)0.2重量部を均一に混合撹拝し、アクリル系粘着剤溶液(3)を調製した。
【0109】
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(3)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を384mJ/cm2照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。
【0110】
比較例1
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(1)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをかぶせて、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を実施例3と同条件で照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムにUVBが吸収されてしまうので、粘着剤に照射される光量は少ない(18mJ/cm2)。
【0111】
比較例2
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
得られたアクリル系ポリマー溶液(I)の固形分100重量部に対して、架橋助剤としてイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)15重量部、光開始剤として(チバスペシャリティケミカル社製、lrgacure184)を0.5重量部、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-573)0.2重量部を均一に混合撹拝し、アクリル系粘着剤溶液(4)を調製した。
【0112】
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(4)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、偏光板と貼り合わせた後ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を実施例3と同条件で照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムにUVBが吸収されてしまうので、粘着剤に照射される光量は少ない(18mJ/cm2)。
【0113】
比較例3
(光学部材用粘着剤組成物の調製)
実施例1で得られたアクリル系ポリマー溶液(I)の固形分100重量部に対して、架橋助剤としてイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成社製、アロニックスM-315)15重量部、特開2005−48003で使用されている光架橋剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−[4-(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー:Esacure-One)0.2重量部、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-573)0.2重量部を均一に混合撹拝し、アクリル系粘着剤溶液(5)を調製した。
【0114】
(粘着型光学部材の作製)
粘着剤組成物(5)をシリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、粘着剤層の乾燥厚さが20μmになるように塗布した。そして、90℃で3分間加熱・乾燥し、その後メタルハライドランプにより、大気中でUVB(280〜320nm)を384mJ/cm2照射して架橋処理した粘着剤層を形成した。該粘着剤層を偏光板に転写して粘着型光学部材を得た。
【0115】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付偏光板(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0116】
<接着力>
実施例および比較例で得られたサンプルを、幅25mm×長さ約100mmに裁断し、厚さ0.5mmの無アルカリガラス板(コーニング社製、1737)に、2Kgのロール1往復で貼り付け、次いで50℃、0.5MPaで30分間オートクレーブ処理して完全に密着させた後、23℃湿度50%の条件に3時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着を測定した。
【0117】
さらに、オートクレーブ処理後、70℃の条件に6時間放置後、23℃、50%RHの条件下に3時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着力(処理接着力:N/25mm)を測定し、加熱後の接着力とした。
【0118】
<耐久性・耐熱試験>
縦24cm、横32cmに裁断した、実施例および比較例で得られた粘着型光学部材を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、#1737)の片面にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理した後、90℃の雰囲気で500時間投入して、粘着型光学部材の剥がれや浮き、発泡がなければ、○とし、あれば×とした。
○:光学部材の剥がれや浮きがない。
×:光学部材の剥がれや浮きがある。
【0119】
(加工性)
架橋処理した直後の粘着剤層を切断し光学部材に貼り付ける際の加工性を下記の基準で評価した。○=問題なく切断でき、光学部材に汚れも発生しない。×=粘着剤層がきれいに切断されない又は光学部材に汚れが発生する。
【0120】
(TEM写真構造)
透過型電子顕微鏡(TEM)写真による粘着剤の断面観察を行う際の構造を下記の基準で評価した。○:照射面側の低い架橋密度層が2μm以下と薄い。×:照射面側の低い架橋密度層が2μmより厚い。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、架橋助剤として多官能(メタ)アクリレートを0.01〜30重量部、分子内にベンゾフェノン骨格を2つ以上有する光開始剤0.01〜10重量部を含有する光学部材用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルを50重量%以上および炭素数4〜12のアルキル基で水酸基を少なくとも1個含む水酸基含有モノマーを0.05〜2重量%含有する請求項1記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマーである、請求項1または2記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、アミノ基含有化合物を0.01〜5重量部含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アミノ基含有化合物が、アミノ基含有シランカップリング剤である、請求項4記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の光学部材用粘着剤組成物に50mJ/cm2〜2000mJ/cm2の紫外線を照射して架橋させることにより得られる光学部材用粘着剤層。
【請求項7】
光学部材の少なくとも片側に、請求項6記載の光学部材用粘着剤層が形成されている、粘着型光学部材。
【請求項8】
請求項7記載の粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置。
【請求項9】
光学部材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられた粘着型光学部材の製造方法であって
(i)支持体上に請求項1から5までのいずれか1項に記載の光学部材用粘着剤組成物を適用する工程
(ii)該光学部材用粘着剤組成物に、活性エネルギー線を照射して架橋処理し、光学部材用粘着剤層を形成する工程
(iii) 該光学部材用粘着剤層を光学部材に貼り合せる工程
を含む、粘着型光学部材の製造方法。

【公開番号】特開2011−231182(P2011−231182A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101084(P2010−101084)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】