説明

光学部材用粘着剤組成物および粘着シート

【課題】光学部材、殊に透明光学プラスチックに対しても良好な接着性を示し、しかも、透明であり、加熱および加湿下においても白化や気泡の発生、剥がれがない粘着剤組成物および該組成物を粘着剤層として用いた粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の光学部材用粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位と共重合可能な不飽和結合を有する単量体から導かれたカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構成単位とを含む重量平均分子量が100万〜300万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)100重量部に対して、重量平均分子量1000〜20万の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B):1〜20重量部と、重量平均分子量500〜2000のスチレン系重合体(C):5〜50重量部と、架橋剤:0.1〜10重量部とを含み、各成分の重量平均分子量の比が、(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量=10〜500かつ(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量=1〜150であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材用粘着剤組成物に関する。さらに本発明は、当該粘着剤組成物を粘着剤層として用いた粘着シート、両面をフィルムセパレータに挟まれた粘着シートおよび光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材に用いられる粘着剤組成物には、透明性が求められるとともに、長期間の使用における加熱、加湿条件下においても、白化や剥がれや発泡が生じないことが求められている。光学部材としては、従来は、樹脂として透明性の高いポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのポリマー、さらに無機物としてガラスなどが使用されており、これらの素材が光学材料として優れた特性を有することが知られている。これらの光学部材を接着する際には、接着部分の透明性が損なわれないようにアクリル系粘着剤が使用されている。
【0003】
こうしたアクリル系粘着剤の粘着性能を向上させるために、アクリル樹脂に他の樹脂を混合することが行われている。
たとえば、粘着剤組成物のプラスチックに対する接着性を向上させるために、アクリル樹脂にスチレン系もしくはα−メチルスチレン系粘着付与樹脂を混合することが知られている(たとえば特許文献1)。しかしながら、アクリル樹脂の吸湿性とスチレン樹脂の吸湿性との間には大きな隔たりがあり、このようなアクリル樹脂とスチレン樹脂の吸湿性の差から、高温多湿環境に長時間晒されると、両者の相溶性が低下し、相分離が生じていた。その結果、耐湿白化を生じていた。
【0004】
また、アクリル樹脂としてカルボキシル基を有する樹脂を用い、これにアミノ基を有する低分子量重合体を混合し、両者の相容性を向上させた粘着剤組成物が知られている(たとえば特許文献2)。実施例においては、アミノ基を有する低分子量重合体として低分子量アクリル重合体が用いられている。しかしながら、より接着性能の向上が求められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−12553号公報
【特許文献2】特開平10−310754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来から使用されていたポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルのような透明光学プラスチックおよびガラスなどに対して大変優れた接着性能を有することに加え、透明であり、加熱および加湿下においても白化や気泡の発生、剥がれがない粘着剤組成物および該組成物を粘着剤層として用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位と共重合可能な不飽和結合を有する単量体から導かれたカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構成単位とを含む重量平均分子量が100万〜300万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、
該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部に対して、
重量平均分子量1000〜20万の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B):1〜20重量部と、
重量平均分子量500〜2000のスチレン系重合体(C):5〜50重量部と、
架橋剤:0.1〜10重量部とを含み、
各成分の重量平均分子量の比が、
(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量=10〜500かつ(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量=1〜150
であることを特徴としている。
【0008】
(A)成分の重量平均分子量は、100万〜200万であることが好ましい。
(C)成分は、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンであることが好ましい。
本発明において、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤を使用することにより(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に存在するカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と架橋剤とが反応して三次元架橋構造を形成する。
【0009】
そして、このように(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に存在するカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、、架橋剤とが、三次元架橋構造物を形成可能に配合されており、該三次元架橋構造物中にスチレン系重合体(C)が存在可能に配合され、かつ該三次元架橋構造物とスチレン系重合体(C)との間隙に、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)が充填可能に配合されてなることが好ましい。
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、透明光学プラスチックからなる光学部材の接着に好適に用いられる。
さらに、本発明のシートあるいはフィルムは、上記組成物を用いて形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着剤組成物ならびに該組成物を粘着剤層として用いた粘着シートおよび光学フィルムは、ポリカーボネートなどの透明光学プラスチックおよびガラスなどの従来の光学部材に対する接着性が良好であるのに加え、透明性が高い。また、加熱および/または加湿下においても白化、気泡の発生、剥がれがない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明は、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位と共重合可能な不飽和結合を有する単量体から導かれたカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構成単位とを含む重量平均分子量が100万〜300万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、
該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)100重量部に対して、
重量平均分子量1,000〜20万の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B):1〜20重量部と、
重量平均分子量500〜2,000のスチレン系重合体(C):5〜50重量部と、
架橋剤:0.1〜10重量部とを含み、
各成分の重量平均分子量の比が、
(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量=10〜500かつ(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量=1〜150
であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物に関する。
【0013】
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、メタアクリル酸またはアクリル酸をいう。
1.(A)成分:アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位と共重合可能な不飽和結合を有する単量体から導かれたカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構成単位とを含む重量平均分子量が100万〜300万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体
【0014】
(A)成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、重量平均分子量が、100万〜300万、好ましくは100万〜200万、より好ましくは100万〜150万である。重量平均分子量が上記範囲にあると、凝集力に優れるため、耐湿熱環境下での気泡の発生防止、剥がれや浮き防止に効果がある。
【0015】
(A)成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、アルキル基の炭素数が1〜12、好ましくは1〜9、より好ましくは4〜9の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1ともいう)とカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有しかつ共重合可能な不飽和結合を有する単量体(a2または官能基単量体ともいう)との共重合体またはa1とa2と任意の単量体(a3ともいう)との共重合体である。
【0016】
a1の例としては、好適範囲の高分子量体が得やすく、耐久性が向上する、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが特に好ましく挙げられる。a1は1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0017】
a2の例としては、カルボキシル基を有する単量体としてアクリル酸、水酸基を有する単量体としてアクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸4-ヒドロキシブチル、アミノ基を含有する単量体としてアクリル酸ジエチルアミノエチルが挙げられる。a2は1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。カルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する単量体を用いるのは、それらが未反応で重合体中に存在することにより架橋剤と反応して三次元架橋構造を形成し、高い粘着力かつ凝集力を発現することが可能だからである。
【0018】
a3の例としては、a1と共重合可能な(メタ)アクリル系単量体であれば、特に限定なく用いることが可能であり、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。また、(メタ)アクリルエステル系マクロマーを用いることも可能である。
【0019】
a1〜a3単量体から導かれる構成単位の共重合比は、a1由来の構成単位:a2由来の構成単位:a3由来の構成単位=35〜99.9:0.1〜15:0〜40が好ましく、70〜99.9:0.1〜10:0〜20がより好ましい。
これらの単量体を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの公知の重合法を採用して(A)成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を得ることができる。
【0020】
2.(B)成分:重量平均分子量1000〜20万の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体
【0021】
(B)成分の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、重量平均分子量が1000〜20万、好ましくは3000〜15万である。(B)成分の重量平均分子量が上記範囲にあると、被着体に対する接着力を低減させることなく、(A)成分と(C)成分との相溶性を向上させることができ、耐湿熱環境下での白化を抑制できる。
【0022】
(B)成分の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、アルキル基の炭素数が1〜12、好ましくは炭素数が1〜9、より好ましくは炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1ともいう)とカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する単量体(b2ともいう)との共重合体、またはb1の単独重合体あるいは2種以上のb1の共重合体であることが好ましい。
【0023】
b1の例としては、特に好ましくはメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが挙げられる。b1は1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
b2の例としては、カルボキシル基を有する単量体として(メタ)アクリル酸、アミノ基を有する単量体としてアクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。b2は1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0024】
b1単量体とb2単量体から導かれる構成単位の共重合比は、b1由来の構成単位:b2由来の構成単位=80〜100:0〜20が好ましく、90〜100:0〜10がより好ましい。
これらの単量体を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの公知の重合法を採用して(B)成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を得ることができる。
【0025】
3.(C)成分:重量平均分子量500〜2,000のスチレン系重合体
(C)成分のスチレン系重合体の重量平均分子量は、500〜2,000、好ましくは800〜1,700、より好ましくは1,000〜1,500である。
【0026】
(C)成分のスチレン系重合体は、スチレンまたはα―メチルスチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとα―メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンおよび2−フェニル−2−ブテン等から選ばれる少なくとも1種以上の単量体との共重合体であってもよい。重合方法としては、塊状重合、懸濁重合等の公知の重合方法が挙げられる。このようなスチレン系重合体は、市販されているものを用いることが出来る。
【0027】
本発明の粘着剤組成物は、上記(A)〜(C)成分の他に架橋剤を含む。架橋剤の例としては、(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアネート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーにトリメチロールプロパンなどと付加反応させたイソシアネート化合物、ビュレット型イソシアネート化合物、さらにはイソシアネートモノマーにポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、エポキシ系架橋剤およびイソシアネート系架橋剤を組み合わせて用いてもよい。本発明の粘着剤組成物は架橋構造を含むことにより、三次元架橋構造を形成し、高い粘着力かつ凝集力を発現することが可能となる。
【0028】
4.重量平均分子量
(A)成分、(B)成分および(C)成分の重量平均分子量は、上記範囲を満たすことに加えて、以下の関係を満たす。
【0029】
(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量=10〜500、好ましくは10〜400、さらに好ましくは10〜300であって、かつ
(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量=1〜150、好ましくは1〜130、さらに好ましくは1〜120である。
【0030】
(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、粘着組成物中で、架橋剤により架橋され、網目構造を形成しているものと考えられる。その網目構造中に分子量の小さい(C)成分のスチレン系重合体が点在していると考えられる。その構成に、(A)成分の重量平均分子量以下で、(C)成分の重量平均分子量以上、すなわちその中間付近の重量平均分子量を有する(B)成分を含有させると、(A)成分の網目構造と(C)成分との間の隙間を(B)成分が埋める構造の組成物となると考えられる。
【0031】
また、(A)成分および(B)成分は、いずれも(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であり、その両者にカルボニル基が存在することから、相溶性が良好で、(A)成分の隙間に(B)成分が入り込むと考えられる。
【0032】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に存在するカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、架橋剤とが、三次元架橋構造物を形成可能に配合されており、該三次元架橋構造物中にスチレン系重合体(C)が存在可能に配合され、かつ該三次元架橋構造物とスチレン系重合体(C)との間隙に、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)が充填可能に配合されていると考えられる。
【0033】
このような構造により、(B)成分の低分子量(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、粘着剤層の表面に現れないため、粘着力を低減させることがない一方で、組成物内部への水分の侵入を防ぐため、高湿度下であっても、白濁、発泡を生じない。
【0034】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の重量平均分子量についての上記比はこのような三成分の重量平均分子量の大小関係をより具体的に表したものである。(A)成分、(B)成分および(C)成分がそれぞれ上記特定の範囲の重量平均分子量を有していても、上記比を満たさないと、(B)成分が網目構造の隙間を埋める機能を果たさないと考えられる。
【0035】
すなわち、(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量の比が上記範囲より大きいと、(A)成分と(B)成分との重量平均分子量の差が大きすぎ、(B)成分が十分に隙間を埋める機能を果たさないと考えられる。よって、加湿熱下では、発泡が生じる。また、経時により(B)成分が粘着表面にブリードし、粘着性能に悪影響を及ぼすこともある。(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量の比が上記範囲より小さいと、(B)成分が大きすぎ、網目を適切に埋めることができないと考えられる。よって、水分が粘着剤組成物中に入り込み、白濁の原因となる。
【0036】
また、(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量の比が上記範囲より大きいと、(B)成分と(C)成分との重量平均分子量の差が大きすぎ、(B)成分が十分に隙間を埋める機能を果たさないと考えられる。よって、加湿熱下では、発泡が生じる。また、経時により(C)成分が粘着表面にブリードし、粘着性能に悪影響を及ぼすこともある。(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量の比が上記範囲より小さいと、(B)成分の重量平均分子量が(C)成分の重量平均分子量よりも小さくなり、(A)成分との相溶性に乏しい。さらに、(B)成分の重量平均分子量が相対的に小さくなり過ぎるため、加湿熱時の凝集力に悪影響を与える。その結果、加湿熱により発泡が生じる。また(B)成分が粘着表面にブリードし、粘着性能に悪影響を及ぼすこともある。
上記三成分の重量平均分子量の比は、各成分の重量平均分子量を調整することにより達成される。
【0037】
5.粘着剤組成物
(1)組成
本発明の粘着剤組成物中の上記(A)〜(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し、(B)成分は1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部配合され、(C)成分は5〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、より好ましくは10〜40重量部配合される。(A)〜(C)成分の配合量が、上記範囲にあると、透明光学プラスチックへの良好な接着性を有しつつ、高湿、高温下における白化、発泡、剥がれ等の発生を防止することができる。
【0038】
架橋剤は、(A)成分100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部配合する。
本発明の粘着剤組成物は、さらにカップリング剤、酸化防止剤、UV吸収剤、微粒子、色素等の各種添加剤等を本発明の粘着剤組成物の物性を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0039】
(2)製造方法
本発明の粘着剤組成物は、上記各成分を攪拌装置等を用いて公知の方法で混合することにより得られる。すなわち、各成分を一括又は順次混合・攪拌することにより得られる。攪拌時間は特に制限はないが、作業性及び生産性の面から室温にて10〜120分程度であればよい。
【0040】
(3)物性
本発明の粘着剤組成物は、ゲル分率が50〜90%であることが好ましく、55〜80%であることがより好ましい。ゲル分率が上記範囲にあると、被着体であるプラスチックに対するハガレや発泡の発生が抑制される。このようなゲル分率は、架橋剤を上記範囲で添加することによって得られる。
【0041】
本発明の粘着剤組成物は、ステンレス鋼(♯280研磨)及びガラス板に対する粘着力が5N/25mm以上であることが好ましく、8N/25mm以上であることがより好ましく、ポリカーボネート板に対する粘着力が7N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましい。粘着力が上記範囲にあると、ガラス、金属、樹脂の各素材に良好な接着力を有する。このような粘着力は上記組成により得られる。また、ステンレス鋼、ガラス板、ポリカーボネート板いずれに対しても、粘着力が20N/25mm以下であれば、リワーク性も付与できる。
【0042】
本発明の粘着剤組成物は、例えば38μmの剥離PETフィルムに10〜50μm厚で塗布し、1.0mm厚のスライドガラスへ粘着層のみを貼り合わせた場合の全光線透過率が90%以上であることが好ましい。また、同様の条件におけるヘイズ値が1.5%以下であることが好ましい。全光線透過率およびヘイズ値が上記範囲にあると、透明性が要求される用途に好適に使用可能である。このような全光線透過率およびヘイズ値は、上記組成により得られる。
【0043】
6.用途
本発明の粘着剤組成物は、接着力および透明性が求められる用途、具体的には樹脂およびガラス等からなる光学部材への接着に好適に用いられる。このような樹脂としては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明光学プラスチックが挙げられる。より具体的には、本発明の粘着剤組成物は、ディスプレイの全面にタッチパネルを搭載する際の貼り合わせ用粘着剤として好適に用いることが出来る。
【0044】
さらに、本発明の粘着剤組成物は樹脂フィルム上に積層して粘着剤層とした粘着シートとして用いることができる。粘着剤層の厚さは一般的に、5〜125μmである。
また、粘着剤組成物層の両面にセパレータフィルムとしての樹脂フィルムを配置して挟置し、使用に際しセパレータフィルムを剥がして粘着剤組成物層のみを被着物に接着することができる。セパレータフィルムの粘着剤組成物層と接触する面は、通常剥離剤層が存在する。この用途においては、粘着剤層の上面およびセパレータフィルム間の剥離剤と粘着剤層の下面およびセパレータフィルム間の剥離剤との強度を異ならせることにより、トランスファ粘着シートとして用いることができる。
【0045】
さらには、芯材としての樹脂フィルムの片面または両面に剥離剤を使用することなく、本発明の粘着剤組成物の層を形成し、粘着剤層の上にさらに剥離剤を介しセパレータフィルムとしての樹脂フィルムを積層して保護し、セパレータフィルムを使用に際し剥離することにより、片面または両面接着シートに用いることができる。
【0046】
本発明粘着剤組成物を剥離剤を介さずに積層する樹脂フィルム、すなわち芯材としては、光学フィルムが好適に挙げられる。光学フィルムを構成する樹脂としては、上記光学部材に用いる樹脂として挙げた樹脂等が挙げられる。セパレータフィルムとする樹脂フィルムに用いる剥離剤には、一般的にSi系やフッ素系が用いられる。セパレータフィルムに用いられる樹脂フィルムとしては表面平滑性の高いPETフィルムが好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本明細書および実施例における各物性は、以下の方法で測定または評価した。
【0048】
(1)重量平均分子量(Mw)
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。条件は以下の通りである。
装置:GPC−8220(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL/7.8mmID×1本 + GMHXL/7.8mmID×2本 + G2500HXL/7.8mmID×1本
媒体:テトラヒドロフラン(略称THF)
流速:1.0mL/min
濃度:1.5mg/ml
注入量:300μL
カラム温度:40℃
【0049】
(2)ゲル分率
粘着剤層をその重量(W1(g))を測定した後、酢酸エチルに浸漬し、23℃の環境に12時間静置した。静置後、目開き46μmの金属メッシュにて、粘着剤層の酢酸エチル溶解部分と非溶解部分とを分離した。非溶解部分を90℃×3時間乾燥させた後、その重量(W2(g))を測定した。試験前重量(W1(g))に対する酢酸エチル非溶解部分の重量(W2(g))百分率を算出し、ゲル分率とした。
ゲル分率(重量%)=(W2/W1)×100
【0050】
(3)粘着力
試料の軽剥離側のセパレーターを剥離し、25μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名 エンブレットS、ユニチカ(株)製)を積層して、測定試料とした。測定試料を25mm幅×100mmにカットし、重剥離側のセパレーターを剥離し、被着体としてのステンレス鋼(SUS(#280研磨))およびガラス板(2.0mm厚)、ポリカーボネート(PC)板(商品名 NF−2000VUNS2 2.0mm厚 三菱瓦斯化学(株)製)のそれぞれに、2kg荷重、300mm/分の速度で3往復して、貼り付けた。貼付20分後に、それぞれの測定試料に対し、180゜剥離を行い、粘着力を測定した(JIS Z 0237 に準拠)。
【0051】
(4)全光線透過率・ヘイズ
試料の軽剥離側のセパレーターを剥がし、試料の剥離面を1μm厚のスライドガラス(品番:S−1111 MATSUNAMI製)に貼り合わせたものと、ポリカーボネート(PC)板(商品名 NF−2000VUNS2 2.0mm厚 三菱瓦斯化学(株)製)に貼り合わせたものとを作成した。さらに、それぞれについて重剥離側のセパレーターを剥がしたものを測定試料として、ヘイズメーター(HM−150型 (株)村上色彩研究所製)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。ここで全光線透過率はJIS K 7361に準じ、ヘイズはJIS K 7136に準じて測定した。
被着体光学物性値 スライドガラス:全光線透過率92.1% ヘイズ0.2%
ポリカーボネート板:全光線透過率89.9% ヘイズ0.8%
【0052】
(5)外観
試料の軽剥離側のセパレーターを剥がし、試料の剥離面をスライドガラス(品番:S−1111 MATSUNAMI製)に貼り合わせたものと、ポリカーボネート(PC)板(商品名 NF−2000VUNS2 2.0mm厚 三菱瓦斯化学(株)製)に貼り合わせたものとを作成した。さらに、それぞれについて重剥離側のセパレーターを剥がして厚さ50μmの光学用ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名コスモシャインA4300 東洋紡(株)製)に貼り合わせ測定試料とした。下記耐熱性試験および耐熱湿性試験を行った測定試料について、目視にて観察し以下の基準で評価した。
問題なし:剥がれ・発泡ともに発生なし
剥がれ:粘着シートの端部に剥がれ発生
発泡有:貼り合わせ面に発泡発生
【0053】
(6)耐熱性試験
(4)および(5)に記載の測定試料を、それぞれさらに85℃の環境に200時間静置し、その後、23℃、湿度65%の環境にて30分調湿してから該測定を行った。
【0054】
(7)耐熱湿性試験
(4)および(5)に記載の測定試料を、それぞれさらに60℃、湿度95%の環境に200時間静置し、その後、23℃、湿度65%の環境にて30分調湿してから該測定を行った。
【0055】
[実施例1]
(i)粘着剤組成物の製造
容量1Lのフラスコにアクリル酸ブチル(BA)95.8重量部、アクリル酸(AA)4.0重量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.2重量部、溶剤として酢酸エチルを仕込み、攪拌しながらフラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、70℃まで加熱した。その後アゾ開始剤を添加し、続けて70℃の保持したまま8時間反応させた後、25℃まで冷却して酢酸エチルで樹脂固形分30%まで希釈し、アクリル共重合体(a)(ポリマーAとする)を合成した(共重合体組成比 BA/AA/2EHA=95.8/4.0/0.2)。この合成した(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)の重量平均分子量は150万であった。
【0056】
この(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部に対し、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてメタクリル酸メチル系低分子量重合体(商品名 MD−5、綜研化学(株)製、重量平均分子量2万)2.0重量部、スチレン系重合体(c)としてα−メチルスチレン・スチレン共重合体(商品名 クリスタレックス3100、理化ハーキュレス(株)製、重量平均分子量1,020、軟化点100℃)(以下KR3100とする)25重量部、エポキシ系架橋剤(商品名 E−5XM、綜研化学(株)製)0.15重量部、イソシアネート系架橋剤(商品名 L45、綜研化学(株)製)0.5重量部配合した粘着剤組成物を調製した。
【0057】
(ii)試料の作成
厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面にシリコーン樹脂系離型剤を塗布した重剥離タイプセパレーター(商品名 セラピールBX9A(RX) 東レフィルム加工(株)製)の離型剤処理面に、乾燥時の粘着剤層厚さが25μmになるよう上記組成物を塗工乾燥した。更に、上記重剥離タイプセパレーターに塗布した離型剤とは離型性の異なるシリコーン樹脂系離型剤を塗布した軽剥離タイプセパレーター(商品名 セラピールMFA(RX)、東レフィルム加工(株)製)を上記粘着剤層面にラミネートした。この接着シートを室温で1週間熟成し、十分にエージングを行った後、各種試験に使用した。
【0058】
[実施例2および3]
(i)において、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0059】
[実施例4]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名B−13、綜研化学(株)製、重量平均分子量5,000)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0060】
[実施例5]
(i)において、スチレン系重合体(c)としてスチレン重合体(商品名FTR−8120 三井化学(株)製、重量平均分子量1,420 軟化点120℃)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0061】
[実施例6]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)として共重合体組成比 BA/AA/2HEA=93.8/6.0/0.2、重量平均分子量120万の共重合体(ポリマーBとする)を用い、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 L45、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0062】
[実施例7]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)として共重合体組成比 BA/AA/2HEA=96.8/0.2/3.0、重量平均分子量150万の共重合体(ポリマーCとする)を用い、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 TD75、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0063】
[実施例8]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)としてアクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸(AA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸イソブチル(iBA)および(メタ)アクリルエステル(MMA)系マクロモノマー(商品名AA−6 東亜合成(株)製)を共重合体組成比 BA/AA/2HEA/EA/iBMA/AA−6=45/0.5/3.0/25/25/1.0、重量平均分子量120万の共重合体(ポリマーDとする)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0064】
[実施例9]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−5M、綜研化学(株)製、重量平均分子量5万)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0065】
[実施例10]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−11M、綜研化学(株)製、重量平均分子量11万)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0066】
[実施例11]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)として共重合体組成比 BA/AA/2HEA=93.8/6.0/0.2、重量平均分子量120万の共重合体(ポリマーB)を用い、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−11M、綜研化学(株)製、重量平均分子量11万)を用い、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 L45、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0067】
[比較例1]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)を用いず、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0068】
[比較例2]
(i)において、スチレン系重合体(c)を用いず、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0069】
[比較例3]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)およびスチレン系重合体(c)を用いず、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0070】
[比較例4]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)として共重合体組成比 BA/AA/2HEA=93.8/6.0/0.2、重量平均分子量120万の共重合体(ポリマーB)を用い、アクリル系低分子量体(b)を用いず、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 L45、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0071】
[比較例5]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)として共重合体組成比 BA/AA/2HEA=96.8/0.2/3.0、重量平均分子量150万の共重合体(ポリマーC)を用い、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)を用いず、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 TD75、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0072】
[比較例6]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)としてアクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸メチル(MA)およびアクリル酸n−ブチル(nBMA)を構成単位とする共重合体組成比 BA/2HEA/MA/nBMA=70/5.0/20/5.0、重量平均分子量65万の共重合体(ポリマーEとする)を用い、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 L45、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0073】
[比較例7]
(i)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(a)としてアクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸(AA)および酢酸ビニル(VAc)を構成単位とする共重合体組成比 BA/AA/VAc=98/2.0/7.0、 重量平均分子量75万の共重合体(ポリマーFとする)を用い、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名 TD75、綜研化学(株)製)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0074】
[比較例8]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−3M、綜研化学(株)製、重量平均分子量300)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0075】
[比較例9]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−25M、綜研化学(株)製、重量平均分子量25万)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0076】
[比較例10]
(i)において、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b)としてアクリル酸ブチル系低分子量重合体(商品名LC−20M、綜研化学(株)製、重量平均分子量20万)を用い、各成分の量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0077】
表1は、ゲル分率および粘着力を、表2は、被着体としてガラスを用いた場合の全光線透過率、ヘイズおよび外観を、表3は、被着体としてポリカーボネート板を用いた場合の全光線透過率、ヘイズおよび外観についての結果を示す。
【0078】
[参考例1]
(i)粘着剤組成物の製造
実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。
【0079】
(ii)試料の作成
厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面にシリコーン樹脂系離型剤を塗布した重剥離タイプセパレーター(商品名 セラピール BX9A(RX)東レフィルム加工(株)製)の離型剤処理面に、乾燥時の接着剤厚さが20μmになるよう上記組成物を塗工乾燥し、粘着剤層上に厚さ38μmの光学用ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名コスモシャインA4300 東洋紡(株)製) を芯材として貼り合わせた。更に、上記重剥離タイプセパレーターに塗布した離型剤とは離型性の異なるシリコーン樹脂系離型剤を塗布した軽剥離タイプセパレーター(商品名 セラピール MFA(RX) 東レフィルム加工(株)製)の離型処理面に乾燥時の接着剤厚さが20μmになるよう上記組成物を塗工乾燥し、先の工程で粘着剤層と貼り合わせた光学用ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の面にラミネートした。この接着シートを室温で1週間放置し、十分にエージングを行った後、各種試験に使用した。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材用途に用いられる粘着シートの粘着剤として用いられる。たとえば、当該粘着剤組成物を粘着剤層として用いた粘着シート、両面をフィルムセパレータに挟まれた粘着シートおよび光学フィルムである。
【0084】
特に本発明は、透明光学プラスチックに優れ接着性を示し、かつ耐湿熱環境下での白化による光学不具合を解消できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位と共重合可能な不飽和結合を有する単量体から導かれたカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構成単位とを含む重量平均分子量が100万〜300万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、
該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)100重量部に対して、
重量平均分子量1000〜20万の低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B):1〜20重量部と、
重量平均分子量500〜2000のスチレン系重合体(C):5〜50重量部と、
架橋剤:0.1〜10重量部とを含み、
各成分の重量平均分子量の比が、
(A)成分の重量平均分子量/(B)成分の重量平均分子量=10〜500かつ(B)成分の重量平均分子量/(C)成分の重量平均分子量=1〜150
であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の重量平均分子量が100万〜200万であることを特徴とする請求項第1項記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンの重合体であることを特徴とする請求項第1項または請求項第2項記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項4】
上記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤であることを特徴とする請求項第1項記載の光学用粘着相組成物
【請求項5】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に存在するカルボキシル基、水酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、架橋剤とが、三次元架橋構造物を形成可能に配合されており、該三次元架橋構造物中にスチレン系重合体(C)が存在可能に配合され、かつ該三次元架橋構造物とスチレン系重合体(C)との間隙に、低分子量(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)が充填可能に配合されていることを特徴とする請求項第1項記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項6】
透明光学プラスチックからなる光学部材の接着に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物を粘着剤層とする粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる層の両面に、フィルムセパレータを配置して挟持してなることを特徴とする粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物からなる層が積層されてなることを特徴とする光学フィルム。

【公開番号】特開2011−246613(P2011−246613A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121401(P2010−121401)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】