説明

光安定性の向上した組成物

【課題】アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の光による変色及び分解を簡便に防止し、光安定化した経口固形組成物を提供する。
【解決手段】 アムロジピンまたはその薬学上許容される塩および酸化鉄を含有し、かつ被覆層を有しない経口固形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアムロジピンを含有する光安定性の向上した経口固形組成物及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるアムロジピンは充分かつ恒常的な血管拡張作用と頻脈をきたし難い性質から、降圧療法の中心的な役割を果たしている。しかし、アムロジピンはジヒドロピリジン系化合物の中では光分解を受けにくい化合物ではあるが、曝光量が多い場合には分解を受け、活性物質としての効力が低下することがある。このため、アムロジピン含有経口固形組成物には光に対する安定性を確保するための技術が必要であった。
従来、光に対して不安定な薬物の製剤化に関しては、薬物の安定化を図るため種々の方法が知られている。例えば、特許文献1には皮膜中に着色剤を分散した軟カプセルに光に不安定な薬物であるニフェジピンを封入した光による分解や変質を防止したニフェジピンの軟カプセルが開示されている。また、特許文献2にはタール系色素やベンガラ等を含有する硬カプセルにより活性型ビタミンD3類を安定化したカプセル製剤が開示されている。これらの技術はいずれも光に不安定な薬物を覆うカプセル皮膜中に着色剤を含有させたものであり、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等への適用は困難である。
【0003】
一方、特許文献3にはジヒドロピリジン誘導体の錠剤に酸化鉄を配合したフィルムをコーティングしてなる光に対して安定化された錠剤が開示されている。しかしながら、この技術ではコーティングを実施することで工程が増え、これに要する時間及び労力は多大となり、コストが高くなる。また、分割を必要とする錠剤ではコーティングによって割線が埋まるなどのトラブルが発生しやすく、分割後には分割面が剥き出しになる為光安定化効果は期待出来ない。更に何らかの理由でコーティングを施すことが出来ない製剤には応用できない。例えば、口腔内崩壊型製剤では、製剤全体にコーティングを施した場合には、口腔内での速崩壊性、速溶解性が損なわれ、その機能を発現できない。また、製剤中の原薬あるいは原薬を含有する粒子のみをコーティングすることで、製剤としては速崩壊性を保持させることは可能であるが、この場合口腔内でそれらコーティングされた製剤の一部が崩壊、溶解しないことから著しく服用し難くなることが予想される。また、特許文献4には遮光剤として酸化チタン並びに着色剤として食用黄色5号、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄を含有する光に安定なピリジン系化合物について開示されている。しかしこの文献で実際に開示されているのはアラニジピンを適切な賦形剤により固体分散化した製剤に着色剤及び遮光剤を含むコート液をスプレーすることを特徴とするものであるから、結局この文献も実質的には被覆層を有する製剤を開示するものである(特許文献4第2頁第1欄第50行〜第2欄第4行および第2頁第2欄第32行〜第3頁第4欄第5行実施例参照)。
【0004】
コーティングを施さない錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の光安定化方法としては、特許文献5に光に不安定な脂溶性薬物に黄色及び赤色の着色剤から選ばれる1種以上の物質を配合してなる光安定性の向上した組成物が開示されている。また、特許文献6には光に不安定な薬物を含有した粉体に着色剤を添加し、湿式造粒してなる経口固形組成物が開示されている。さらに、非特許文献1にはニフェジピンに黄色三二酸化鉄を添加した際に光によって生じる酸化体の生成量の抑制及び主薬含量の低下の抑制ができたことが記載されている。しかしながら、これら文献にはアムロジピンに関しての記載はない。
【0005】
【特許文献1】特開昭55-22645号公報
【特許文献2】特開平4-46122号公報
【特許文献3】特開2003-104888号公報
【特許文献4】特開2003-104887号公報
【特許文献5】特開2000-7583号公報
【特許文献6】特開2000-191516号公報
【非特許文献1】インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics),103(1994)69-76
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の光による変色及び分解を簡便に防止し、光安定化した経口固形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アムロジピンはジヒドロピリジン系化合物としては光安定性が高いため、通常医薬品として使用する範囲での含量低下はほとんど問題とならない。本発明者らは、ニフェジピンとは異なり、アムロジピンにおいては光によって含量低下が検出されない範囲で変色が見られることに着目し、この着色の防止を課題とした。上記非特許文献1には変色については一切記載がないから、当然このような課題そのものの記載も示唆もない。同文献が課題としているのはニフェジピン錠剤を400フットカンデラの光を14日照射すると45%も分解物が生成することを改善することである。一方後述する試験例に示したようにアムロジピン錠剤での酸化体生成は1%程度であるから、分解の程度が全く異なる。従ってアムロジピンに於ける主な課題は着色の防止であり、ニフェジピンに於ける主な課題である含量低下とは全く異なった現象であることが明らかとなった。
【0008】
さらに本発明者らは着色挙動自体もニフェジピンとアムロジピンで全く異なることを見出した。即ち、実際に錠剤を作成して確認したところ、同様に作成したニフェジピンとアムロジピンの錠剤を蛍光灯下に置いた場合に全く異なった着色挙動を示した。ニフェジピンの場合、ニフェジピン自身の色により初めから黄色であるニフェジピンの錠剤は、数時間のうちに錠剤表面が退色しはじめ、その後斑点状に褐色に着色する。一方アムロジピンの場合は初めは白色であり、ニフェジピンよりもはるかにゆっくりと微黄色に着色していく。このことからもニフェジピンの着色反応とアムロジピンの着色反応が全く異なった挙動を示し、ニフェジピンに対する光安定性の向上策がアムロジピンに適用できるかどうかは全く予想できないことを顕著に表している。一方、上記特許文献5及び6において実際に効果を確認しているのはメナテトレノンおよびソファルコンであり、アムロジピンどころか同じ骨格を有するジヒドロピリジン系薬物でさえないから、これらの文献からアムロジピンでの効果を予測することはより困難である。
【0009】
さらに本発明者らは、後述する試験例に示したように、アムロジピンに酸化チタンを配合した場合には光による分解は逆に促進され、安定性は改善されないことを見出した。また、酸化分解を抑制する安定化剤としてはジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の抗酸化剤がよく知られているが、これら抗酸化剤はアムロジピンの酸化により生成する分解物の生成量は抑制するが、変色については全く抑制しないことを見出した。つまり、少なくともアムロジピンにおいては光による分解と変色は必ずしも同じ挙動を示すわけではないことを見出した。このため、アムロジピンに酸化鉄を配合した際の変色抑制効果については全く予想し得なかった。
【0010】
近年、高齢化社会が進み、生理的諸機能の低下または老人性痴呆症などにより、食物摂取機能(咀嚼、嚥下など)の低下したまたは障害のある高齢者が増加している。このような高齢の患者に対して、錠剤で経口投与を行った場合、服用が困難である等の問題が生じてきている。一方、忙しい現代社会において時間および場所を選ばずに服用することができるという利点から、服用時に水を必要とせず、安定かつ低容量で携帯に便利な経口製剤の開発が求められている。本発明者らは種々研究の末、服用性の改善されたアムロジピンの口腔内崩壊型製剤を得ることができた。しかしながら、上述のとおり、口腔内崩壊錠などその機能を発現する上でコーティングが不可能な製剤についてアムロジピンの光安定化を達成できる有効な手段は存在しなかった。このため、本発明者らは、コーティングを施さずに光に対して安定なアムロジピンの錠剤を提供することができれば、口腔内崩壊錠などに応用できると考えた。
【0011】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩に酸化鉄を配合することで、光安定化のために被覆層を必要とすることなく非常に簡便に光安定化されたアムロジピン含有経口固形組成物が得られることを見出した。また当該技術の応用により、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩に酸化鉄を配合することで、非常に簡便に、服用性に優れた口腔内崩壊型製剤の光安定化ができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下のものに関する。
〔1〕 (a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄を含有し、かつ被覆層を有しない経口固形組成物。
〔2〕 実質的に酸化チタンを含有しない経口固形組成物である、〔1〕記載の経口固形組成物。
〔3〕 口腔内崩壊型製剤である、〔1〕または〔2〕記載の経口固形組成物。
〔4〕 以下の(a)〜(d)の成分を含有する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の経口固形組成物。
(a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩
(b)酸化鉄
(c)マンニトール
(d)トウモロコシデンプン
〔5〕 さらにフマル酸ステアリルナトリウムを含有し、経口固形組成物が口腔内崩壊錠である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の経口固形組成物。
〔6〕 (a) アムロジピンまたはその塩の経口固形組成物中含量がアムロジピンとして2〜5重量%であり、
(b)酸化鉄の経口固形組成物中含量が0.03〜2重量%であり、
(c)マンニトールの経口固形組成物中含量が70〜90重量%であり、
(d)トウモロコシデンプンの経口固形組成物中含量が5〜15重量%であり、かつ
(e)フマル酸ステアリルナトリウムの経口固形組成物中含量が1〜3重量%である、
〔5〕記載の経口固形組成物。
〔7〕 酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の経口固形組成物。
〔8〕 (a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄の混合物を含有する、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の経口固形組成物。
〔9〕 (a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄の混合物を造粒して得られる組成物を含有する、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の経口固形組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、非常に簡便に光に安定なアムロジピン含有の経口経口固形組成物を提供することが可能である。また、これによってコーティングを施すことが出来ないアムロジピンの口腔内崩壊錠等の易服用性製剤の光安定化による品質維持が可能となり、高齢者等の嚥下困難な患者や多忙な社会生活を送る人々がどのような場面においても容易に服用することが可能な、光に対して安定なアムロジピン経口固形組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
アムロジピン〔2−(2−アミノエトキシメチル)−4−(2−クロルフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチルピリジン−3,5−ジカルボン酸 3−エチル 5−メチル〕は光学活性中心を有するため、(S)−(−)体および(R)−(+)体が存在するが、本発明にはそれらのいずれかまたは混合物を用いることができる。好ましくは(S)−(−)体およびラセミ体が用いられる。
アムロジピンの薬学上許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。好ましくはベンゼンスルホン酸との塩、即ちベシル酸アムロジピンが挙げられる。
【0015】
本発明において酸化鉄としては黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、三二酸化鉄、ベンガラ及び黒酸化鉄が挙げられ、好ましくは黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、三二酸化鉄が挙げられる。さらに好ましくは黄色三二酸化鉄が挙げられる。
【0016】
これら酸化鉄の適切な配合量は配合する酸化鉄、剤型の種類によって異なるが、例えば黄色三二酸化鉄を含有する錠剤の場合には、多量に配合すると打錠時に黒い斑点ができて品質を損ない、配合量が少なすぎると十分な効果を得られないため、好ましい添加量としては0.01〜10重量%が挙げられる。より好ましい添加量としては0.01〜5重量%が挙げられ、さらに好ましい添加量としては0.03〜2重量%が挙げられ、さらに好ましい添加量としては0.03〜1重量%が挙げられ、特に好ましい添加量としては0.05〜0.5重量%が挙げられる。
【0017】
本発明における酸化鉄の粒子径は医薬品としての品質上、経口固形組成物中に均一に分散、配合できる大きさであれば特に制限はないが、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した場合の体積平均粒子径が0.01〜1.0μm、より好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μmが挙げられる。
【0018】
本発明における経口固形組成物としては、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、細粒剤、顆粒剤等の粒状製剤、錠剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型製剤等の剤形の製剤が挙げられる。より好ましくは、服用時に水を必要としないことから時間、場所を選ばすに服用できるゼリー剤、グミ剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型製剤が挙げられる。さらに好ましくは口腔内崩壊型製剤が、特に好ましくは口腔内崩壊錠が挙げられる。
【0019】
本発明における被覆層とは直接経口投与される単位の最も外側を覆う層であり、PTPシート等の包装は含まない。
具体的には例えば主薬、賦形剤、崩壊剤、結合剤等を乾式造粒または湿式造粒等し、必要に応じて打錠等の成形をして得られる経口固形組成物にフィルム形成性の高分子溶液を噴霧、乾燥するなどして当該経口固形組成物の外側に施す当該経口固形組成物とは異なる組成で形成される外層が挙げられる。フィルム形成性高分子溶液には、通常フィルム形成を阻害しない範囲で各種添加剤が添加される。コーティングとはこのような被覆層の形成を指す。
その他の被覆層としては軟カプセルや硬カプセル等のカプセルが挙げられる。
【0020】
本発明におけるアムロジピンまたはその薬学上許容される塩の含有量に特に制限はないが、アムロジピンは通常1日2.5〜5mgを投与するため、製剤の大きさを考慮してアムロジピンまたはその薬学上許容される塩をアムロジピンとして0.1〜10重量%含有するように配合することが望ましい。より好ましくはアムロジピンまたはその薬学上許容される塩をアムロジピンとして0.25〜6.25重量%含有するよう配合する、さらに好ましくは1〜6.25重量%含有するよう配合する、特に好ましくは2〜5重量%含有するよう配合する。
【0021】
本発明における口腔内崩壊型製剤とは、水なしで口腔内において速やかに溶解又は崩壊させて服用可能で、通常の製剤と同様に水とともに服用することも可能な製剤である。剤型としては散剤、細粒剤、顆粒剤等の粒状製剤と錠剤が挙げられる。
本発明における口腔内崩壊型粒状製剤、口腔内崩壊錠の口腔内での溶解または崩壊時間は通常1分以内、好ましくは45秒以内、より好ましくは30秒以内であることが挙げられる。
本発明における口腔内崩壊型製剤においては、服用性の観点から賦形剤として水溶性賦形剤の添加が好ましい。水溶性賦形剤としては、服用の際良好な甘味を有する水溶性糖アルコール、糖類、甘味を有するアミノ酸類及びこれらの混合物が挙げられ、好ましくは水溶性糖アルコール、糖類、グリシン及びこれらの混合物が挙げられ、特に好ましくは水溶性糖アルコールが挙げられる。
【0022】
本発明における水溶性糖アルコールとは、例えば糖アルコール1gを水に加え、20℃において5分ごとに強く30秒間振り混ぜて約30分以内に溶かす際に、必要な水の量が30ml未満である糖アルコール等が挙げられる。水溶性糖アルコールの例としてはソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられ、これらはその2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。好ましい水溶性糖アルコールとしてはマンニトール、キシリトール、エリスリトールが挙げられ、さらに好ましくはマンニトール、エリスリトールが挙げられ、特に好ましくはマンニトールが挙げられる。本発明における水溶性糖アルコールの含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば50〜99.9重量%が挙げられ、好ましくは、70〜97重量%が挙げられ、より好ましくは、70〜90重量%が挙げられ、特に好ましくは75〜85重量%が挙げられる。
【0023】
本発明における口腔内崩壊型製剤においては、特に崩壊性の観点から崩壊剤を含有することが好ましい。崩壊剤としては例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンが挙げられ、これらはその2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。好ましくはデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンが挙げられる。より好ましくはデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンが挙げられ、さらに好ましくはデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。特に好ましくはデンプンが挙げられる。
【0024】
本発明におけるデンプンとは医薬品に使用可能なあらゆる天然のデンプンに由来するすべてのデンプンを含む。例えば、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプンや可溶性デンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンなどが挙げられ、好ましくはトウモロコシデンプンが挙げられる。これらのデンプンの含有量としては例えば、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%配合する。
【0025】
本発明における口腔内崩壊型製剤においては、結合剤は特に限定されないが、デンプン(部分アルファ化デンプンを含む)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール、アルキルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。崩壊性の観点からは実質的にデンプン以外は使用しないことが望ましい。実質的にとは、当該口腔内崩壊型製剤、特に口腔内での溶解または崩壊速度、および本発明の光安定化効果に影響を与えない量であればその他結合剤の配合を許容することを意味する。
【0026】
本発明の経口固形組成物においては上記成分以外に、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。これらの添加剤としては、実質的に本発明の効果に影響を与えず、一般に医薬品添加剤として添加されるものが挙げられる。例えば、乳糖、トウモロコシデンプン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、グリシン、タルク、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース等の賦形剤、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム等の滑沢剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール、アルキルヒドロキシエチルセルロース等の結合剤、その他着色剤、矯味剤、香料、吸着剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、帯電防止剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0027】
特に、滑沢剤は本発明の錠剤を製造する際に使用されるが、中でもステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムが好適である。
【0028】
また、アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、スクラロース等の高甘味度人工甘味料やペパーミント、スペアミント、メントール、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、パイン、フルーツ、ヨーグルト等の着香剤・香料を配合することもでき、特にアスパルテームとミント系の香料を配合した場合は、より好ましい服用感が得られる。
【0029】
本発明の経口固形組成物の製造方法としては、公知の方法が挙げられるが、例えば造粒法としては、押し出し造粒法、破砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、高速撹拌造粒法が挙げられ、打錠法としては湿式打錠法、直接打錠法等が挙げられる。
【0030】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
錠剤処方(mg)
【0032】
【表1】

1.商品名D−マンニトール(協和発酵工業株式会社)
2.商品名コーンスターチ(XX16)W(日本食品化工株式会社)
3.商品名プルーブ(Penwest Pharmaceuticals社(米国))
4.商品名黄色三二酸化鉄(癸巳化成化成株式会社)
5.商品名三二酸化鉄(キシ化成株式会社)
6.商品名精製脱砒酸化チタン(ザクトレーベンケミエ社(ドイツ))
7.商品名3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(ナカライテスク株式会社)
8.商品名2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(ナカライテスク株式会社)
9.商品名食用黄色5号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
10.商品名食用黄色5号アルミニウムレーキ(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
11.商品名食用赤色5号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
12.商品名食用赤色102号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)

実施例1〜3および比較例1〜8に関しては表1の処方に従い、処方の12倍量の各成分を乳鉢にてよく混合した後、1錠処方量を秤取して油圧式プレス機(理研製)を用いて50kgfの圧力で圧縮し、直径7mmの錠剤を得た。
【0033】
試験例
実施例1〜3および比較例1〜8の製剤について光安定性試験を実施した。蛍光灯4000ルクス×2週間における外観及び酸化体の生成量の結果を表2に示す。なお、酸化体(2-[(2-アミノエトキシ)メチル]-4-(o-クロロフェニル)-6-メチル-3,5-ピリジンジカルボン酸 3-エチルエステル 5-メチルエステル)の定量は液体クロマトグラフ法により分析した。
HPLC分析法
カラム:オクタデシル基結合型シリカゲル(平均粒径5μm、内径4.6×長さ150mm)(ナカライテスク株式会社 商品名COSMOSIL 5C18)
A液:30mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH6.0)/メタノール混液(1:1)
B液:メタノール/30mmolリン酸緩衝液(pH6.0)混液(19:1)
B液:80%→0%のグラジェント
検出器:UV
検出波長:237nm
【0034】
【表2】

(酸化体量は、HPLCの面積百分率値に補正係数の2をかけた数値(酸化体のUV吸収強度がアムロジピンの1/2であるため))
【0035】
表2より、比較例1の光安定化を全く行っていない製剤は外観変化が大きく、酸化体の生成量も1%を越えていることがわかる。これに対し、比較例2の酸化チタンを含有する製剤では変色も抑制されないばかりでなく、酸化体生成量が却って増加した。被覆層を施すことによる光安定化としては遮光効果の強い酸化チタンを用いたコーティングが行われるのが通常であるが、コーティングに代えて酸化チタンを主薬や賦形剤等と混合して製造した製剤は、アムロジピンに関してはかえって光安定性が悪くなることが見出された。従って、被覆力の強い物質を主薬や賦形剤等と混合するという手法で光安定化できるという一般的な考えはアムロジピンには適用できないことがわかった。
【0036】
また、比較例3および4は抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソールおよびジブチルヒドロキシトルエンを添加した製剤であり、比較例6は食用黄色5号アルミニウムレーキを添加した製剤であるが、いずれも酸化体の生成量は抑制できたが外観変化は抑制できなかった。従って抗酸化剤の添加も色素の添加も効果がないことがわかった。
【0037】
その他の黄色、赤色系色素である食用黄色5号、食用黄色3号、および食用赤色102号をそれぞれ添加した製剤である比較例5、7、および8では外観変化及び酸化体生成量とも抑制できなかった。従って、色素の添加は一般には光安定化効果がないことがわかった。
【0038】
以上の通り、遮光剤、抗酸化剤、色素のいずれも一般には酸化体の生成および/または外観変化を抑制することができないことが見出されたのに対し、実施例1〜3の黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を含有する製剤では外観変化、酸化体生成量とも抑制されることがわかった。従って一般的な方法では外観変化および酸化体生成量の両者を抑制できず、アムロジピンと酸化鉄という特定の組み合わせで初めて外観変化および酸化体生成量の抑制が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によって、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の光による変色及び分解を簡便に防止し、光安定化した経口固形組成物を提供することが可能となる。これによって、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の口腔内崩壊型製剤の品質向上が図れると同時に、より簡易的で携帯性に優れた包装形態が可能となり、高齢者や多忙な現代社会人がどこへでも手軽に携帯し、水を摂取することなくあらゆる場面で容易にアムロジピンまたはその薬学上許容される塩を服用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄を含有し、かつ被覆層を有しない経口固形組成物。
【請求項2】
実質的に酸化チタンを含有しない経口固形組成物である、請求項1記載の経口固形組成物。
【請求項3】
口腔内崩壊型製剤である、請求項1または2記載の経口固形組成物。
【請求項4】
以下の(a)〜(d)の成分を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の経口固形組成物。
(a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩
(b)酸化鉄
(c)マンニトール
(d)トウモロコシデンプン
【請求項5】
さらにフマル酸ステアリルナトリウムを含有し、経口固形組成物が口腔内崩壊錠である、請求項1〜4のいずれかに記載の経口固形組成物。
【請求項6】
(a) アムロジピンまたはその塩の経口固形組成物中含量がアムロジピンとして2〜5重量%であり、
(b)酸化鉄の経口固形組成物中含量が0.03〜2重量%であり、
(c)マンニトールの経口固形組成物中含量が70〜90重量%であり、
(d)トウモロコシデンプンの経口固形組成物中含量が5〜15重量%であり、かつ
(e)フマル酸ステアリルナトリウムの経口固形組成物中含量が1〜3重量%である、
請求項5記載の経口固形組成物。
【請求項7】
酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項1〜6のいずれかに記載の経口固形組成物。
【請求項8】
(a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄の混合物を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の経口固形組成物。
【請求項9】
(a)アムロジピンまたはその薬学上許容される塩、および(b)酸化鉄の混合物を造粒して得られる組成物を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の経口固形組成物。


【公開番号】特開2009−46505(P2009−46505A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260095(P2008−260095)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願2005−129150(P2005−129150)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】