説明

光射出角制御フィルム

【課題】液晶パネルの裏面等に保護層が貼り付いて表示に不具合が生じるのを抑制することのできる光射出角制御フィルムを提供する。
【解決手段】一対の透明保護層1・1Aと、この一対の透明保護層1・1Aの間に複数の接着層10を介し介在されて光の透過角度を規制するルーバー層20とを備える。そして、ルーバー層20を複数の光透過層21と遮光層22とを横一列に交互に並べて形成し、透明保護層1・1Aの光射出面2自体を凹凸に粗らして粗面化する。透明保護層1Aの光射出面2を粗して粗面化し、液晶パネルとの接触面積を縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角を制御することのできる光射出角制御フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、カーAV、カーTV、あるいは盗難防止装置等が設置されるが、これら以外にも、図4に示すカーナビゲーション装置30の設置されることが少なくない。このカーナビゲーション装置30は、所定の操作と経路の設定により、自動車の道案内をする機能を有するが、この機能を充実させるためには、運転者の視野角を制限する必要がある。
【0003】
すなわち、カーナビゲーション装置30の視野角を何ら制御しない場合には、カーナビゲーション装置30における液晶表示装置の表示画面がフロントガラスに映りこみ(図4参照)、乗車時の運転者の視認性を低下させることになるからである。
【0004】
この点に鑑み、従来においては、カーナビゲーション装置30における液晶表示装置に、複数の透明保護層の間に光の透過角度を規制するルーバー層を介在させた光射出角制御フィルムを枠形の両面テープ等を介して接着し、光の透過角度を制御するようにしていた(特許文献1参照)が、この場合、組立作業や組み直し作業がきわめて困難になる。
そこで最近においては、カーナビゲーション装置30の液晶パネルと背面光源(バックライト)との間に、光射出角制御フィルムを介在させる手法が主流となっている。
【特許文献1】実願平5‐4971号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光射出角制御フィルムは、以上のように構成され、カーナビゲーション装置30の液晶パネルと背面光源との間に介在されるので、液晶パネルの裏面、あるいは液晶パネル裏面の偏光フィルムに透明保護層が貼り付いてしまい(ブロッキング現象ともいう)、この貼り付きに伴い発生する模様が液晶表示装置に表示されて不具合が生じるという大きな問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、液晶パネルの裏面等に透明保護層が貼り付いて表示に不具合が生じるのを抑制することのできる光射出角制御フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、複数の保護層と、この複数の保護層の間に介在されて光の透過角度を規制するルーバー層とを含み、ルーバー層を複数の光透過層と遮光層とを交互に並べて形成したものであって、
保護層の光射出面を粗面化したことを特徴としている。
【0008】
なお、保護層の光射出面自体を粗らして粗面化することができる。また、保護層に別体の粗面化層を重ね設けて粗面化することができる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における複数の保護層の間に、光の透過角度を規制するルーバー層を直接間接に介在させる場合には、接着層や接着剤等を使用することができる。ルーバー層の光透過層と遮光層とは、複数であれば、適宜数を増減することができる。光透過層は、例えば透明なポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、シリコーンゴム等を使用して形成され、希釈剤の使用の有無を特に問うものではない。
【0010】
遮光層の材料としては、例えば光透過層の材料に酸化鉄黒、カーボンブラック、チタニウムブラック等の各種顔料、アニリンブラック等の各種染顔料、炭酸カルシウム、クレイ、珪藻土、アルミナ、煙露式シリカ、沈降性シリカ等の各種充填剤、金属粉末、カーボンファイバー、天然繊維、合成繊維、金属線等の短繊維粉末等を一種又は二種混合したものが使用される。
【0011】
保護層の光射出面を粗面化する方法としては、例えば印刷、塗装、コーティング、サンドブラストやエンボスロールによる型押し等の方法があげられる。さらに、本発明に係る光射出角制御フィルムは、主に自動車のカーナビゲーション装置に使用されるが、視野角を制限する必要のある装置や他の用途にも適宜使用することができる。
【0012】
本発明によれば、ルーバー層を挟む保護層の光射出面が粗されて凸凹になり、液晶パネルに面接触ではなく、点接触する。したがって、液晶パネルに対する光射出角制御フィルムの密着力や粘着力が弱まる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保護層の光射出面を粗面化して接触部分を減少させるので、液晶パネルの裏面等に保護層が貼り付いて表示に不具合が生じるのを有効に抑制することができるという効果がある。
また、必要に応じて保護層の光射出面自体を粗らして粗面化したり、保護層に別体の粗面化層を重ね設けて粗面化できるので、多様な粗面化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における光射出角制御フィルムは、図1や図2に示すように、一対の透明保護層1・1Aと、この一対の透明保護層1・1Aの間に複数の薄い接着層10を介し介在されて光の透過角度を規制するルーバー層20とを備え、透明保護層1・1Aの光射出面2が粗面化されており、カーナビゲーション装置30の液晶パネル31と背面光源32との間に介在設置される。
【0015】
一対の透明保護層1・1Aは、図2に示すように、光射出角制御フィルムの裏面側に位置して背面光源32に対向接触する透明保護層1と、光射出角制御フィルムの表面側に位置して液晶パネル31の裏面に対向接触する透明保護層1Aとを備え、これら一対の透明保護層1・1Aが相互に対向配置される。各透明保護層1・1Aは、例えば120℃の耐熱性を有する高透明性のプラスチックシートあるいはプラスチックフィルムからなる。
【0016】
透明保護層1・1Aの具体的な材料としては、厚さ0.01〜0.5mm程度、好ましくは厚さ0.05〜0.2mm程度のポリエステル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリサルホン、ポリカーボネート、TAC(トリアセチルセルロース)、シクロオレフィンポリマー等があげられる。
【0017】
透明保護層1・1Aの光射出面2は、図2に示すように、例えばサンドブラストやエンボスロールによる型押し等により、XY方向が連続した多数の凹凸、波形、山形等に直接的に粗されて粗面化される。このとき、光線透過率や輝度の観点から透明保護層1・1A単体のヘイズ(JIS K 7136)を60以下、好ましくは50以下にすると良い。
粗された光射出面2の各凸部は、例えば断面略三角形、略台形、略半円形、略半楕円形、略茸形、不規則な略岩肌形等とされ、液晶パネル31の裏面に接触する部分と非接触の部分が生じる。
【0018】
各接着層10は、例えばプライマーを含有したシリコーン型の接着剤からなり、透明保護層1・1Aあるいはルーバー層20に10〜30μmの厚さでスクリーン印刷されたり、塗布されることにより形成される。
【0019】
ルーバー層20は、図2に示すように、断面略平行四辺形で透明な複数の光透過層21と、断面略平行四辺形で着色された薄型の遮光層22とを備え、これら複数の光透過層21と遮光層22とが横一列に交互に重ねて配列形成される。このルーバー層20は、可視角の範囲、透光性、取扱性に鑑み、0.15〜0.25mmの厚さに形成される。複数の光透過層21と遮光層22とは、所定の厚さのシートに成形されて交互に配列され、加圧加熱して一体化された後、スライスされることにより一体構造のルーバー層20となる。
【0020】
光透過層21と遮光層22の幅(図2の横方向の長さ)は、自由に選択されるが、透明性、光線透過率が光透過層21の幅/遮光層22の幅の比率で決定されること、可視角の範囲が光透過層21の幅、ルーバー層20の厚さにより決定されることを考慮して選択される。具体的には、光透過層21の幅は、80〜200μm、好ましくは110〜160μmの範囲内に設定される。これに対し、遮光層22の幅は、視力に悪影響を及ぼさないよう、3〜50μm、好ましくは5〜20μmの範囲内に設定される。
【0021】
光透過層21の材料としては、例えば市販のシリコーンゴムコンパウンドがあげられ、具体的には、分子鎖末端がヒドロキシシリル基又はビニルシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと有機過酸化物とからなり、一般にミラブルゴムと呼ばれるシリコーンゴム組成物、分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンに、ケイ素原子に結合した水素原子(≡SiH結合)を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を配合した、いわゆる付加反応型のオルガノシリコーンゴム組成物等があげられる。
【0022】
遮光層22は、例えば上記シリコーンゴム組成物に、黒、青、緑、赤、又はその他の色彩が着色されることにより形成される。この遮光層22の材料としては、シリコーンゴム組成物にカーボンブラック、ベンガラ等の黒色、赤色顔料、染料が適宜添加されたものが一般的である。
【0023】
なお、遮光層22に黒色顔料が添加されない場合には、遮光性を確保するため、任意の顔料が添加されるが、このとき、十分な遮光性を確保するため、所定の白色顔料が添加される。この白色顔料の添加量は、遮光性を確保しながら任意の色調が生じるよう選択される。
【0024】
カーナビゲーション装置30の液晶パネル31は、図示しないプリント基板や駆動ICに接続され、裏面に偏光フィルムが選択的に貼着される。背面光源32は、図1に示すように、面状であれば特に限定されるものではないが、例えば白熱ランプ、蛍光灯、薄型のエレクトロルミネセンス(EL)パネル、発光ダイオード等からなる。そして、図1の上方の液晶パネル31に下方から光線(図2の矢印参照)を照射する。
【0025】
上記構成によれば、透明保護層1Aの光射出面2が粗されて粗面化され、液晶パネル31との接触面積が縮小されるので、液晶パネル31の裏面、あるいは液晶パネル31裏面の偏光フィルムに透明保護層1Aが貼り付くのをきわめて有効に抑制防止することができる。したがって、貼り付きに伴い発生する模様が液晶表示装置に表示されて不具合が生じることがない。
【0026】
また、透明保護層1・1Aとして、光射出面2が粗面化された市販のシートやフィルムを利用できるので、作業性や組立性を大幅に向上させることができる。さらに、光透過層21を80〜200μmの幅とするとともに、遮光層22を3〜50μmの幅とすれば、ルーバー層20を透明で平行光線透過率略75%以上、全光線透過率略75%以上、可視角60°〜120°の高性能に形成することができる。
【0027】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、透明保護層1・1A自体を直接粗すのではなく、透明保護層1・1Aの露出面に、光射出面2となる別体の粗面化層3を積層して粗面化するようにしている。
【0028】
粗面化層3を積層する方法としては、例えば硬質のフィラーを含有したアクリル、シリコーン等の樹脂インクをスクリーン印刷、スプレー塗装、バーコータ等により積層形成する方法があげられる。硬質のフィラーとしては、例えばシリカ粉末(二酸化ケイ素粉末)やアクリル系のフィラーを使用することができる。
【0029】
硬質のフィラーには、球状、粉状、フレーク状、相船状、不定形状等の形状があるが、特に限定されるものではない。また、粗面化層3については、アクリルやシリコーン等のベース樹脂100重量部に対してシリカ粉末1〜5重量部、好ましくは2〜3重量部、アクリル系のフィラーを0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部添加したものを使用すると良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0030】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、粗面化の多様化を図ることができるのは明らかである。さらに、粗面化層3の積層に際し、スクリーン印刷法を用いれば、透明保護層1・1Aが脆い材質でも形成することができるとともに、透明保護層1・1Aの被印刷面が粗面や曲面でも確実に印刷でき、しかも、粗面化層3の膜厚を広範囲に亘って制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る光射出角制御フィルムの実施形態におけるカーナビゲーション装置の液晶パネルと背面光源とに光射出角制御フィルムを挟持させた状態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る光射出角制御フィルムの実施形態を示す要部断面説明図である。
【図3】本発明に係る光射出角制御フィルムの第2の実施形態を示す断面説明図である。
【図4】自動車の車内に設置されたカーナビゲーション装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 透明保護層(保護層)
1A 透明保護層(保護層)
2 光射出面
3 粗面化層
10 接着層
20 ルーバー層
21 光透過層
22 遮光層
30 カーナビゲーション装置
31 液晶パネル
32 背面光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保護層と、この複数の保護層の間に介在されて光の透過角度を規制するルーバー層とを含み、ルーバー層を複数の光透過層と遮光層とを交互に並べて形成した光射出角制御フィルムであって、
保護層の光射出面を粗面化したことを特徴とする光射出角制御フィルム。
【請求項2】
保護層の光射出面自体を粗らして粗面化した請求項1記載の光射出角制御フィルム。
【請求項3】
保護層に別体の粗面化層を重ね設けて粗面化した請求項1記載の光射出角制御フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−119365(P2006−119365A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307050(P2004−307050)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】