説明

光導波回路

【課題】光導波路にTO効果を低消費電力で発現できるとともに、光導波路の偏波保持特性の低下を抑制できること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる光導波回路は、基板上に形成されたクラッド層と、クラッド層内に形成された光導波路と、クラッド層の上部であって光導波路の上方に形成され、光導波路を加熱するヒータとを備える。クラッド層は、光導波路の両側方に、この光導波路の延伸方向に沿って形成された溝領域を有する。この溝領域には、クラッド層の上面に平行であって光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路の側面に至る深さの溝部と中実部とが交互に形成される。この中実部は、この垂直な方向に溝領域の両端をつなぐように連続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)のチップ内の導波路によってマッハツェンダー干渉計(Mach−Zender Interferometer:MZI)を構成し、このMZIを用いて遅延回路を構成した光導波回路が使用されている。例えば、差動四値位相変調(Differential Quadrature Phase Shift Keying:DQPSK)信号を受信する1ビット遅延干渉計、または光の強度を自在に変化させる可変光減衰器等が、MZIを用いて実現される。
【0003】
これらの光部品において、MZIのアーム光導波路上にマイクロヒータを搭載し、このマイクロヒータに印加する電流量を制御して発熱量を変化させ、これによって、1ビット遅延干渉計のFSR(Free Spectral Range)や可変光減衰器の光分岐比をアクティブに制御することが行われている。なお、これらの制御は、マイクロヒータの発熱量を変化させて発生する熱光学(Thermo Optic:TO)効果によってガラスの屈折率を変化させることにより、各特性を変化させるものである。
【0004】
一方、省電力化の観点からは、マイクロヒータに印加する電流量を可能な限り少なくして、上述した制御を行えることが望ましい。これを実現するために、光導波路の両側方のクラッド層に断熱溝を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
この特許文献1,2では、ヒータが搭載された光導波路の両側方に断熱溝を形成し、この断熱溝によって、ヒータから発した熱がクラッド層等に拡散することを抑制している。この結果、光導波路のコア部の温度を効率的に高められることから、低消費電力でTO効果を発現させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−4342号公報
【特許文献2】特開2004−101949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光導波回路においては、光導波路を伝搬する光の偏波状態が伝搬時に変化しないことを要求される場合がある。この場合、伝搬光の偏波状態を保持する光学特性(以下、偏波保持特性という)を高めた光導波回路が要望される。しかしながら、上述した従来技術では、断熱溝の形成によって光導波路の偏波保持特性が低下するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光導波路にTO効果を低消費電力で発現できるとともに、光導波路の偏波保持特性の低下を抑制することができる光導波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる光導波回路は、基板上に形成されたクラッド層と、前記クラッド層内に形成された光導波路と、前記クラッド層の上部であって前記光導波路の上方に形成され、前記光導波路を加熱するヒータと、を備え、前記クラッド層は、前記光導波路の両側方に、前記光導波路の延伸方向に沿って形成された溝領域を有し、前記溝領域には、前記クラッド層の上面に平行であって前記光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも前記光導波路の側面に至る深さの溝部と中実部とが交互に形成され、前記溝部は、前記垂直な方向に複数列形成され、前記中実部は、前記垂直な方向に前記溝領域の両端をつなぐように連続することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる光導波回路は、上記の発明において、複数の前記溝部の各断面積は、前記光導波路を含み且つ前記クラッド層に平行な面で前記溝領域を切断した場合、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる光導波回路は、上記の発明において、前記中実部は、格子形状に形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる光導波回路は、上記の発明において、前記中実部は、蜂の巣形状に形成されたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる光導波回路は、基板上に形成されたクラッド層と、前記クラッド層内に形成された光導波路と、前記クラッド層の上部であって前記光導波路の上方に形成され、前記光導波路を加熱するヒータと、を備え、前記クラッド層は、前記光導波路の両側方に前記光導波路の延伸方向に沿って形成され、少なくとも前記光導波路の側面に至る深さの溝部を少なくとも一つ含む溝領域を有し、前記光導波路を含み且つ前記クラッド層の上面に平行な面で前記溝部を切断した場合の前記溝部の断面積は、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる光導波回路は、上記の発明において、前記溝領域は、複数の前記溝部を含み、複数の前記溝部の各断面積は、前記光導波路を含み且つ前記クラッド層の上面に平行な面で前記溝領域を切断した場合、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる光導波回路は、上記の発明において、前記クラッド層の熱伝導率に比して低い熱伝導率を有する物質、または前記クラッド層の熱膨張率以上の熱膨張率を有する物質で前記溝部が埋められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる光導波回路は、光導波路にTO効果を低消費電力で発現できるとともに、光導波路の偏波保持特性の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路を適用した半導体レーザモジュールの一構成例を示す概略的な模式図である。
【図2】図2は、本実施の形態1にかかる光導波回路に形成されたMZI素子の一構成例を示す模式図である。
【図3】図3は、図2に示すMZI素子のA−A線要部断面模式図である。
【図4】図4は、図2に示すMZI素子のB−B線要部断面模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2にかかる光導波回路に形成されたMZI素子の一構成例を示す模式図である。
【図6】図6は、図5に示すMZI素子の断面構造および溝構造を示す模式図である。
【図7】図7は、光導波路からの離隔変位に伴う副溝部の断面積の変化を説明する模式図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路の溝領域の変形例1を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路の溝領域の変形例2を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路の溝領域の変形例3を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2にかかる光導波回路の溝領域の変形例1を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2にかかる光導波回路の溝領域の変形例2を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる光導波回路の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。以下、本発明にかかる光導波回路の一例として、波長可変レーザモジュール等の半導体レーザモジュールに適用された光導波回路を例示して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路が適用された半導体レーザモジュールの構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路を適用した半導体レーザモジュールの一構成例を示す概略的な模式図である。図1に示すように、この実施の形態1にかかる半導体レーザモジュール1は、半導体レーザ部2と、光選択素子部3と、増幅部4とを備える。
【0020】
半導体レーザ部2は、半導体レーザ基板20と、半導体レーザ基板20上に形成された半導体レーザアレイ21とを備える。半導体レーザアレイ21は、各々異なる波長のレーザ光を端面から出射するストライプ形状の複数(本実施の形態1では16個)の単一縦モード半導体レーザ素子(以下、半導体レーザ素子と略記する)22を備える。
【0021】
半導体レーザ素子22は、DFB(Distributed FeedBack)レーザ素子(分布帰還型レーザ素子)であり、素子温度を調整することによって、その発振波長を制御することができる。
【0022】
具体的には、各半導体レーザ素子22は、例えば3〜4nm程度の範囲内で発振波長を変化させることができ、各半導体レーザ素子22の発振波長が3〜4nm程度の間隔で並ぶように各半導体レーザ素子22の発振波長が設計されている。これによって、半導体レーザアレイ21は、駆動する半導体レーザ素子22を切り替えるとともに素子温度を制御することによって、単体の半導体レーザ素子よりも広帯域な連続した波長帯域のレーザ光を出射することができる。
【0023】
なお、WDM通信用の波長帯域全体(例えば1.53〜1.56μmのCバンドまたは1.57〜1.61μmのLバンド)をカバーするためには、たとえば、それぞれ3〜4nmの範囲内で発振波長を変化させることが可能な10個以上の半導体レーザ素子22を集積する。これにより、30nm以上の波長帯域に亘って半導体レーザ素子22の発振波長を変化させることができる。
【0024】
光選択素子部3は、本発明の実施の形態1にかかる光導波回路の一例であり、PLC30内に光導波路等を形成して実現される。具体的には、光選択素子部3は、光導波路31,33,35,37と、MZI素子32,34,36とを備える。
【0025】
光導波路31は、複数の半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光をMZI素子32に導く。MZI素子32は、互いに隣接する2つの光導波路31に光学的に結合され、2つの光導波路31から導かれたレーザ光を低損失で合波して出力するような波長特性を有する。光導波路33は、MZI素子32から出力されたレーザ光をMZI素子34に導く。
【0026】
MZI素子34は、光導波路33に光学的に結合され、光導波路33から導かれたレーザ光を低損失で合波して出力するような波長特性を有する。光導波路35は、MZI素子34から出力されたレーザ光をMZI素子36に導く。MZI素子36は、光導波路35に光学的に結合され、光導波路35から導かれたレーザ光を低損失で合波して出力するような波長特性を有する。光導波路37は、MZI素子36から低損失で合波して出力されたレーザ光を増幅部4に導く。
【0027】
このように、光選択素子部3は、16入力,1出力のPLC30からなるMZI型の光選択素子によって構成され、複数(実施の形態1では16個)の半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光を低損失で合波して出力する。
【0028】
増幅部4は、増幅器基板40と、増幅器基板40上に形成された半導体光増幅器41とを備える。半導体光増幅器41は、光導波路37によって導かれたレーザ光を増幅し、増幅されたレーザ光を出力端側に出射する。
【0029】
つぎに、本実施の形態1にかかる光導波回路に形成されたMZI素子32の構成について詳細に説明する。なお、残りのMZI素子34,36は、MZI素子32と同様の構成を有するため、MZI素子32の構成を代表して説明し、MZI素子34,36の説明は省略する。
【0030】
図2は、本実施の形態1にかかる光導波回路に形成されたMZI素子の一構成例を示す模式図である。図3は、図2に示すMZI素子のA−A線要部断面模式図である。図4は、図2に示すMZI素子のB−B線要部断面模式図である。
【0031】
図2〜図4に示すように、MZI素子32は、例えばシリコンからなる基板10の上に形成されたクラッド層11と、クラッド層11内に形成された光導波路12,13と、光導波路12,13を各々加熱するヒータ14,15と、光導波路12,13の延伸方向に沿って光導波路の両側方に形成された溝領域16〜19とを有する。
【0032】
クラッド層11は、基板10上に形成された石英系ガラス材料からなる層である。クラッド層11は、光導波路12の両側方に、光導波路12の延伸方向に沿って形成された溝領域16,17を有する。また、クラッド層11は、光導波路13の両側方に、光導波路13の延伸方向に沿って形成された溝領域18,19を有する。
【0033】
光導波路12,13は、MZI素子32の一対のアーム光導波路であり、クラッド層11に比して屈折率の高いコア部で構成される。なお、図3、図4では、このコア部によって構成されるアーム光導波路である光導波路12,13の断面が図示されている。
【0034】
ヒータ14は、クラッド層11の上部であって光導波路12の上方に形成され、光導波路12を加熱する。また、ヒータ15は、クラッド層11の上部であって光導波路13の上方に形成され、光導波路13を加熱する。これらのヒータ14,15は、例えばタンタル(Ta)系材料等のヒータ材料からなる薄膜ヒータであり、光導波路12,13にTO効果を発現させてMZI素子32の波長特性を調整するためのものである。
【0035】
溝領域16には、クラッド層11の上面に平行であって光導波路12の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路12の側面に至る深さの溝部16aとガラス部16bとが交互に形成される。同様に、溝領域17には、クラッド層11の上面に平行であって光導波路12の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路12の側面に至る深さの溝部17aとガラス部17bとが交互に形成される。
【0036】
溝領域18には、クラッド層11の上面に平行であって光導波路13の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路13の側面に至る深さの溝部18aとガラス部18bとが交互に形成される。同様に、溝領域19には、クラッド層11の上面に平行であって光導波路13の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路13の側面に至る深さの溝部19aとガラス部19bとが交互に形成される。
【0037】
溝部16a,17aは、各溝領域16,17において、クラッド層11上面に平行であって光導波路12の延伸方向に垂直な方向に複数列形成され、溝部18a,19aは、各溝領域18,19において、クラッド層11上面に平行であって光導波路13の延伸方向に垂直な方向に複数列形成される。
【0038】
具体的には、図2〜図4に示すように、クラッド層11の上面に平行であって光導波路12の延伸方向に垂直な方向の軸としてX軸を設定した場合、光導波路12からX軸方向に溝領域17を越えてクラッド層11に至る領域において、溝領域17内では溝部17aとガラス部17bとが交互に形成されている。なお、この溝部17aとガラス部17bとの構造は、図2に示したX軸の位置に限らず、光導波路12の延伸方向の何れの位置にX軸を設定しても、同様に交互になっている。また、このことは、他の溝領域16,18,19内の溝部16a,18a,19aとガラス部16b,18b,19bにおいても同様である。
【0039】
また、光導波路12を含みクラッド層11の上面に平行な面で溝領域16,17を切断した場合、溝部16a,17aの断面は、図2に示すように各々四角形状である。同様に、光導波路13を含みクラッド層11の上面に平行な面で溝領域18,19を切断した場合、溝部18a,19aの断面は、図2に示すように各々四角形状である。
【0040】
一方、ガラス部16b〜19bは、溝領域16〜19内に形成された中実部の一例であり、例えばクラッド層11に溝部16a〜19aを形成することによって形成される。
【0041】
また、図2の破線矢印Ar1に示すように、ガラス部17bは、X軸方向に溝領域17の両端をつなぐように連続する。このガラス部17bの形状は、溝領域17の全体において、図2に示すように段違いの格子形状に形成されている。なお、この溝領域両端をつなぐように連続し、且つ段違いの格子形状に形成されていることは、他のガラス部16b,18b,19bについても同様である。
【0042】
ここで、図1に示した半導体レーザモジュール1においては、光導波路の偏波保持特性の向上および波長特性の調整の低消費電力化の双方が要求される。なお、この偏波保持特性とは、光導波路が伝搬光の偏波状態を保持する光学特性であり、伝搬光の偏波状態は、偏波保持特性の向上に伴って一層保持される。
【0043】
半導体レーザモジュール1の波長特性の調整の低消費電力化は、MZI素子32,34,36の各々について、断熱溝として機能する溝領域(例えば上述した溝領域16〜19)を各光導波路の両側方に形成することによって、各ヒータからの熱の拡散を抑制し、この結果、各光導波路(コア部)の温度を効率的に高めて低消費電力で各光導波路にTO効果を発現できる。
【0044】
しかしながら、従来技術(例えば特許文献1,2参照)では、ヒータからの熱がクラッド層に拡散することを抑制するために、光導波路の両側方に単なる断熱溝を形成している。このため、コア部に対して両側方から応力を加えていたクラッド層のガラスが断熱溝の形成によって除去される。この結果、光導波路に加わっていた応力が解放され、これによって、コア部の両側方から十分に応力を加えることが困難になって、光導波路の偏波保持特性を低下させる。
【0045】
これに対して、MZI素子32,34,36の各溝領域には、図2〜図4の溝領域16〜19に例示したように、クラッド層の上面に平行であって光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも光導波路の側面に至る深さの溝部とガラス部とが交互に形成され、且つ、このガラス部が、この垂直な方向に溝領域の両端をつなぐように連続している。このため、光導波路に加える応力の解放が抑制される。さらに、各溝領域内のガラス部は、この垂直な方向にジグザグ(蛇行)した状態で連続している。このため、応力は光導波路の延伸方向に分散される。
【0046】
これによって、MZI素子32,34,36の各溝領域は、上述した断熱溝としての機能を保持しつつ、これら各溝領域内のガラス部(例えばガラス部16b〜19b)によって、MZI素子32,34,36の各光導波路12,13に対して両側方から十分に応力を加えることができる。この結果、半導体レーザモジュール1内の各光導波路の偏波保持特性の低下を抑制でき、伝搬光の偏波状態を維持することができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態1では、光導波路の両側方であってこの光導波路の延伸方向に沿ってクラッド層に形成した溝領域内に、このクラッド層の上面に平行であって、この光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくともこの光導波路の側面に至る深さの溝部とガラス部とを交互に形成し、且つ、このガラス部が、この垂直な方向に溝領域の両端をつなぐように連続している。
【0048】
このため、クラッド層の上部であって光導波路の上方に形成されたヒータによって、この光導波路(コア部)を効率よく加熱できるとともに、このヒータからの熱がクラッド層に意図せず拡散することを抑制しつつ、光導波路に加わっていた応力の解放を抑制できる。この結果、各光導波路の温度を効率よく高めて各光導波路にTO効果を低消費電力で発現できることから、半導体レーザモジュールの波長特性の調整を低消費電力で実現できる。これとともに、各光導波路(コア部)に対して両側方から十分に応力を加えて、半導体レーザモジュール内の各光導波路の偏波保持特性の低下を抑制し、伝搬光の偏波状態を維持することができる。
【0049】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、光導波路の両側方に形成された溝領域内に、少なくとも光導波路の側面に至る深さの溝部とガラス部とを形成し、且つ、このガラス部が、クラッド層の上面に平行であって光導波路の延伸方向に垂直な方向に溝領域の両端をつなぐように連続していたが、この実施の形態2では、溝領域内に溝部を形成し、光導波路を含み且つクラッド層の上面に平行な面でこの溝部を切断した場合、この溝部の断面積が、光導波路から離隔するに伴って増加するように構成している。
【0050】
この実施の形態2にかかる光導波回路が適用された半導体レーザモジュールは、図1に示した半導体レーザモジュール1のMZI素子32,34,36における溝領域の構造以外、半導体レーザモジュール1と同様の構成を有する。また、本実施の形態2の構成は、この溝領域の溝構造以外、実施の形態1と同じであり、以下の各図面において、同一構成部分には同一符号を付している。
【0051】
以下、本実施の形態2にかかる光導波回路に形成されたMZI素子32の構成について詳細に説明する。なお、残りのMZI素子34,36は、MZI素子32と同様の構成を有するため、MZI素子32の構成を代表して説明し、MZI素子34,36の説明は省略する。
【0052】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる光導波回路に形成されたMZI素子の一構成例を示す模式図である。図6は、図5に示すMZI素子の断面構造および溝構造を示す模式図である。なお、図6には、図5に示すMZI素子32の部分領域5の断面構造および溝構造が示されている。
【0053】
図5に示すように、本実施の形態2にかかるMZI素子32は、上述した実施の形態1の溝領域16〜19に代えて溝領域26〜29を有する。その他の構成は、実施の形態1と同じである。溝領域26〜29の各々は、主および副の2種類の溝部によって構成される。
【0054】
まず、溝領域26,27について説明する。溝領域26,27は、光導波路12の両側方に光導波路12の延伸方向に沿って形成される。溝領域26は、少なくとも光導波路12の側面に至る深さを有する主溝部26aと複数の副溝部26bとからなる。同様に、溝領域27は、少なくとも光導波路12の側面に至る深さを有する主溝部27aと複数の副溝部27bとからなる。
【0055】
主溝部26a,27aは、光導波路12から所定の距離だけ離れた位置に各々形成される。また、光導波路12を含み且つクラッド層11の上面に平行な面で主溝部26a,27aを切断した場合、この主溝部26a,27aの断面積は、光導波路12から離隔する方向について一定である。すなわち、クラッド層11に対する主溝部26a,27aの占める割合は、光導波路12から離隔しても一定である。
【0056】
一方、副溝部26b,27bは、各々主溝部26a,27aの光導波路12側の端部に形成される。また、光導波路12を含み且つクラッド層11の上面に平行な面で副溝部26b,27bを切断した場合、副溝部26b,27bは複数の三角形を主溝部26a,27aの光導波路12側の端部に沿って配置した形状であり、三角形の一辺を主溝部26a,27aの端部に沿って配置し、該三角形の一辺に対向する頂点を光導波路12に向けられるように配置している。したがって、この副溝部26b,27bの断面積は、光導波路12から離隔する方向に増加する。すなわち、クラッド層11に対する副溝部26b,27bの占める割合は、光導波路12から離隔するに伴って増加する。
【0057】
このような主溝部26a,27aは、ヒータ14から発せられた熱がクラッド層11に拡散することを抑制する断熱溝として機能する。一方、副溝部26b,27bは、主溝部26a,27aと同様の断熱溝としての機能と、光導波路12に加える応力の解放を抑制する機能とを兼ね備える。
【0058】
ここで、主溝部26a,27aと光導波路12との各間には、光導波路12の伝搬光の偏波状態を保持するために必要な程度のクラッド層11が存在する。すなわち、主溝部26a,27aと光導波路12との各間のクラッド層11は、副溝部26b,27bが形成されていても、光導波路12に十分な応力を加えて光導波路12の偏波保持特性を確保する。
【0059】
つぎに、溝領域28,29について説明する。溝領域28,29は、光導波路13の両側方に光導波路13の延伸方向に沿って形成される。溝領域28は、少なくとも光導波路13の側面に至る深さを有する主溝部28aと複数の副溝部28bとからなる。同様に、溝領域29は、少なくとも光導波路12の側面に至る深さを有する主溝部29aと複数の副溝部29bとからなる。
【0060】
主溝部28a,29aは、光導波路13から所定の距離だけ離れた位置に各々形成される。また、光導波路13を含み且つクラッド層11の上面に平行な面で主溝部28a,29aを切断した場合、この主溝部28a,29aの断面積は、光導波路13から離隔する方向について一定である。すなわち、クラッド層11に対する主溝部28a,29aの占める割合は、光導波路13から離隔しても一定である。
【0061】
一方、副溝部28b,29bは、各々主溝部28a,29aの光導波路13側の端部に形成される。また、光導波路13を含み且つクラッド層11に平行な面で副溝部28b,29bを切断した場合、副溝部28b,29bは複数の三角形を主溝部28a,29aの光導波路13側の端部に沿って配置した形状であり、三角形の一辺を主溝部28a,29aの端部に沿って配置し、該三角形の一辺に対向する頂点を光導波路13に向けられるように配置している。したがって、この副溝部28b,29bの断面積は、光導波路13から離隔する方向に増加する。すなわち、クラッド層11に対する副溝部28b,29bの占める割合は、光導波路13から離隔するに伴って増加する。
【0062】
このような主溝部28a,29aは、ヒータ15から発せられた熱について、上述した主溝部26a,27aと同様に機能する。また、副溝部28b,29bは、光導波路13側について、上述した副溝部26b,27bと同様に機能する。
【0063】
ここで、主溝部28a,29aと光導波路13との各間には、光導波路13の伝搬光の偏波状態を保持するために必要な程度のクラッド層11が存在する。すなわち、主溝部28a,29aと光導波路13との各間のクラッド層11は、副溝部28b,29bが形成されていても、光導波路13に十分な応力を加えて光導波路13の偏波保持特性を確保する。
【0064】
また、上述した副溝部26b〜29b溝構造は、図6に示す副溝部27bと同様に、例えば、辺部分を光導波路12に対向させた三角柱の形状である。一方、上述した主溝部26a〜29aの溝構造は、図6に示す主溝部27aと同様に、例えば矩形状であり、副溝部26b〜29bに各々連続する。
【0065】
つぎに、光導波路12からの離隔変位に伴う副溝部27bの断面積の変化について詳細に説明する。図7は、光導波路からの離隔変位に伴う副溝部の断面積の変化を説明する模式図である。なお、図7には、図5に示したMZI素子32の部分領域5の上面図が示されている。
【0066】
図7に示すように、光導波路12から溝領域27に至るまでの領域は、クラッド層11であり、溝は形成されていない。例えば、図7に示すX軸方向の位置X1から位置X2の領域は、溝領域27に到達しておらず、溝は存在しない。
【0067】
一方、X軸方向の位置X2から位置X3の領域は、図7に示すように、副溝部27bに到達している。この領域において、上述した副溝部27bの断面積は、位置X2から位置X3に向けて光導波路12から離隔するに伴って増加する。すなわち、この領域において、クラッド層11に対する副溝部27bの占める割合は、光導波路12から離隔するに伴って増加している。
【0068】
また、X軸方向の位置X3から位置X4の領域は、図7に示すように、上述した位置X2から位置X3の領域に比して、さらに光導波路12から離隔変位している。この領域において、上述した副溝部27bの断面積は、位置X3から位置X4に向けて光導波路12から離隔するに伴って増加し、クラッド層11に対する副溝部27bの占める割合は、位置X2から位置X3の領域の場合に比して大きい。すなわち、この副溝部27bの占める割合は、X軸方向の位置X2から位置X4に向けて光導波路12から離隔するに伴って増加し、主溝部27aに達するまで、増加し続ける。なお、この副溝部27bの占める割合は、主溝部27aに到達した位置において最大となる。
【0069】
ここで、本実施の形態2では、MZI素子32,34,36の各光導波路の両側方に溝領域(例えば図5に示した溝領域26〜29)を形成して、ヒータ14,15に例示されるMZI素子32,34,36の各ヒータからの熱がPLC30のクラッド層11に意図せず拡散することを抑制している。これによって、各光導波路(例えば光導波路12,13)の温度を効率よく高めて低消費電力で各光導波路にTO効果を発現できる。この結果、本実施の形態2にかかる光導波回路を適用した半導体レーザモジュールの波長特性の調整を低消費電力で実現可能である。
【0070】
さらに、MZI素子32,34,36の各溝領域では、図5〜図7の溝領域27に例示したように、光導波路を含み且つクラッド層に平行な面で溝領域を切断した場合、この溝領域の光導波路側に形成された副溝部(例えば副溝部27b)の断面積が、光導波路から離隔するに伴って増加するように構成されている。
【0071】
このため、MZI素子32,34,36の各溝領域は、クラッド層に対する副溝部の占める割合を光導波路から離隔するに伴って大きくできる。すなわち、光導波路側方におけるクラッド層の占める割合は、溝領域から光導波路に向かって変位するにつれて徐々に大きくできる。これによって、上述したヒータによる熱の拡散を抑制しつつ、クラッド層から光導波路に加える応力の解放を抑制できる。
【0072】
この結果、半導体レーザモジュールの波長特性の調整を低消費電力で実現しつつ、光導波路と溝領域との間のクラッド層によって、MZI素子32,34,36の各光導波路12,13に対して両側方から十分に応力を加えることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態2では、光導波路の両側方のクラッド層に、この光導波路の延伸方向に沿って、この光導波路の側面に至る溝部を形成し、この光導波路を含み且つクラッド層に平行な面でこの溝部を切断した場合、この溝部の断面積が、この光導波路から離隔するに伴って増加するように構成した。
【0074】
このため、クラッド層の上部であって光導波路の上方に形成されたヒータによって、この光導波路(コア部)を効率よく加熱できるとともに、このヒータからの熱がクラッド層に意図せず拡散することを抑制しつつ、クラッド層に加わっていた応力の解放を抑制できる。この結果、各光導波路の温度を効率よく高めて各光導波路にTO効果を低消費電力で発現できることから、半導体レーザモジュールの波長特性の調整を低消費電力で実現できる。これとともに、各光導波路(コア部)に対して両側方から十分に応力を加えて、半導体レーザモジュール内の各光導波路の偏波保持特性の低下を抑制し、伝搬光の偏波状態を維持することができる。
【0075】
なお、上述した実施の形態1では、光導波路の両側方の溝領域内に段違いの梯子形状のガラス部を形成していたが、これに限らず、溝領域内において、クラッド層に平行であって光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、光導波路の側面に至る深さの溝部とガラス部とが交互に形成され、且つ、このガラス部が、この垂直な方向に溝領域の両端をつなぐように連続していれば、溝領域内の溝部およびガラス部の各断面形状は、所望のものであってもよい。
【0076】
例えば図8に示すように、六角形または台形に形成された溝部56aと蜂の巣形状のガラス部56bとからなる溝領域56と、六角形または台形に形成された溝部57aと蜂の巣形状のガラス部57bとからなる溝領域57とを光導波路12の両側方に各々形成してもよい。
【0077】
ここで、溝部56a,57aは、光導波路12の側面に至る深さを有する。また、図8に示すように、溝領域57内において、光導波路12に垂直なX軸方向に向けて溝部57aとガラス部57bとが交互に形成される。且つ、ガラス部57bは、例えば破線矢印Ar1に示すように、X軸方向に溝領域57の両端をつなぐように連続している。さらに、ガラス部57bは、X軸方向にジグザグした状態で連続している。この構造は、溝領域56においても同様である。
【0078】
この溝領域56,57を形成した場合も、上述した実施の形態1の場合と同様に、ヒータ14によって光導波路12を効率よく加熱できるとともに、ヒータ14からの熱がクラッド層に意図せず拡散することを抑制しつつ、クラッド層に加わっていた応力の解放を抑制できる。この結果、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0079】
なお、溝部の断面は、光導波路を含み且つクラッド層に平行な面で溝領域を切断した場合、上述したように四角形状や六角形状に限らず、三角形以上の多角形であってもよいし、楕円を含む円形状であってもよいし、その他、所望のものであってもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態1では、光導波路を含み且つクラッド層の上面に平行な面で溝領域を切断した場合の各溝部の断面積は、光導波路からの離隔距離が異なる場合であっても、同じ断面積にしていたが、これに限らず、これら各溝部の断面積は、光導波路から離隔するに伴って増加するように構成してもよい。
【0081】
例えば図9に示すように、断面形状が円形状に形成された複数の溝部66a,67aを各々含む溝領域66,67を光導波路12の両側方に各々形成してもよい。溝領域67には、X軸方向に向けて、光導波路12の側面に至る深さの溝部67aとガラス部67bとが交互に形成されている。また、ガラス部67bは、図9の破線矢印Ar1に示すように、X軸方向に溝領域67の両端をつなぐように連続している。
【0082】
一方、溝部67aは、溝領域67内に複数形成され、各溝部67aの断面は、光導波路12を含み且つクラッド層の上面に平行な面で溝領域67を切断した場合、円形状である。これら複数の溝部67aは、X軸方向に複数列形成されるとともに、各溝部67aの断面積は、光導波路12から離隔するに伴って増加する。なお、もう一方の溝領域66内に形成された複数の溝部66aおよびガラス部66bは、上述した溝部67aおよびガラス部67bと各々同様の構造を有する。
【0083】
このように、光導波路12から離隔するに伴って各溝部66a,67aの断面積を増加させている。この結果、上述した実施の形態1の場合に比して、ヒータ14による光導波路12の加熱を効率よく行うことができるとともに、ヒータ14からの熱がクラッド層に意図せず拡散することを一層抑制しつつ、クラッド層に加わっていた応力の解放を一層抑制できる。さらに、溝部66a,67aの断面形状を円形状にすることによって、溝領域67側から光導波路12に加える応力を均一にしている。この結果、光導波路12の偏波保持特性を一層高めることができる。
【0084】
また、例えば図10に示すように、断面形状が三角形状に形成された複数の溝部76a,77aを各々含む溝領域76,77を光導波路12の両側方に各々形成してもよい。溝領域77には、X軸方向に向けて、少なくとも光導波路12の側面に至る深さの溝部77aとガラス部77bとが交互に形成されている。また、ガラス部77bは、図10の破線矢印Ar1に示すように、X軸方向に溝領域77の両端をつなぐように連続している。
【0085】
一方、溝部77aは、溝領域77内に複数形成され、各溝部77aの断面は、光導波路12を含み且つクラッド層の上面に平行な面で溝領域77を切断した場合、三角形状である。これら複数の溝部77aは、X軸方向に複数列形成されるとともに、各溝部77aの断面積は、光導波路12から離隔するに伴って増加する。なお、もう一方の溝領域76内に形成された複数の溝部76aおよびガラス部76bは、上述した溝部77aおよびガラス部77bと各々同様の構造を有する。
【0086】
このように、光導波路12から離隔するに伴って各溝部76a,77aの断面積を増加させている。この結果、上述した実施の形態1の場合に比して、ヒータ14による光導波路12の加熱を効率よく行うことができるとともに、ヒータ14からの熱がクラッド層に意図せず拡散することを一層抑制しつつ、クラッド層に加わっていた応力の解放を一層抑制できる。
【0087】
また、上述した実施の形態2では、溝領域の光導波路側に三角柱型の副溝部を形成していたが、これに限らず、副溝部の形状は、光導波路から離隔するに伴って副溝部の断面積が増加するような形状であれば、くさび型形状の四角柱(台形柱)であってもよいし、半円柱型であってもよい、その他、所望の形状であってもよく、複数の形状の組み合わせであってもよい。
【0088】
例えば図11に示すように、半円柱型に形成された複数の副溝部86b,87bを各々含む溝領域86,87を光導波路12の両側方に各々形成してもよい。溝領域87は、少なくとも光導波路の側面に至る深さの主溝部87aおよび副溝部87bからなり、副溝部87bは、主溝部87aの光導波路12側の端部に複数形成される。これら複数の副溝部87bは、各々半円柱型であり、光導波路12を含み且つクラッド層の上面に平行な面で切断した場合の各副溝部87bの断面積は、光導波路12から離隔するに伴って増加する。
【0089】
すなわち、副溝部87bの占める割合は、図11に示すX軸方向の位置X11から位置X12に向けて光導波路12から離隔するに伴って増加し、位置X12から主溝部87aの端部に向けて光導波路12から離隔するに伴って更に増加する。なお、この副溝部87bの占める割合は、主溝部87aに到達した位置において最大となる。これ以上、光導波路12から離隔した位置では、各副溝部87bは、主溝部87aに連続する。
【0090】
なお、もう一方の溝領域86内に形成された主溝部86aおよび副溝部86bは、上述した主溝部87aおよび副溝部87bと各々同様の構造を有する。このように、副溝部の構造を半円柱型にした場合であっても、上述した実施の形態2の場合と同様の作用効果を奏する。
【0091】
また、上述した実施の形態2では、主溝部の光導波路側の端部に、光導波路から離隔するに伴って断面積が増加する副溝部を形成していたが、これに限らず、溝領域の内部に、光導波路から離隔するに伴って断面積が増加する溝部を形成してもよい。
【0092】
例えば図12に示すように、光導波路12から離隔するに伴って断面積が増加する扇形の溝部を有する溝領域96,97を光導波路12の両側方に形成してもよい。具体的には、溝領域97は、扇形に形成された複数の溝部97aとガラス部97bとを有する。これら複数の溝部97aの各々は、光導波路12の側面に至る深さを有し、光導波路12から離隔するに伴って、その溝幅W1,W2,W3が大きくなる。すなわち、溝幅W1〜W3の大小関係は、W1<W2<W3である。
【0093】
これによって、ヒータ14による光導波路12の加熱を効率よく行うことができるとともに、ヒータ14からの熱がクラッド層に意図せず拡散することを抑制しつつ、クラッド層に加わっていた応力の解放を抑制できる。この結果、上述した実施の形態2の場合と同様の作用効果を奏する。
【0094】
なお、図12に例示したように、光導波路を含み且つクラッド層の上面に平行な面で溝領域を切断した場合に、この光導波路から離隔するに伴って断面積が増加する溝部が溝領域内に形成された溝領域において、ガラス部はX軸方向に溝領域の両端をつなぐように連続してもよいし、連続していなくてもよい。また、この場合の溝部は、1以上であればよく、この溝部の断面形状は、扇形に限らず、三角形以上の多角形でもよいし、楕円を含む円形状でもよい。
【0095】
一方、上述した実施の形態1,2では、溝領域内の溝部を中空にしていたが、これに限らず、PLCを構成するガラス等のクラッド層の熱伝導率に比して低い熱伝導率やクラッド層の熱膨張率以上の熱膨張率を有する物質によって溝領域内の溝部が埋められてもよい。この場合、溝部内に埋められる物質は、エポキシ系樹脂であってもよいし、多孔質ガラスであってもよい。
【0096】
また、上述した実施の形態1,2では、本発明にかかる光導波回路を構成する材料としては、石英系ガラスに限らず、ポリマー系材料等の他の材料であってもよい。さらに、上述した実施の形態1,2では、溝部の深さをクラッドの厚みと同じとしているが、溝部の深さは少なくとも光導波路12の側面に至る深さがあれば本発明の作用効果を奏することができる。
【0097】
さらに、上述した実施の形態2では、主溝部の光導波路側端部に複数の副溝部を形成していたが、これに限らず、溝領域に形成される副溝部は、1以上であればよい。また、主溝部の断面形状は、矩形状に限らず、円形状等の所望の形状であってもよい。
【0098】
また、上述した実施の形態1,2では、本発明にかかる光導波回路の一例として半導体レーザモジュールの光選択素子部を例示したが、これに限らず、本発明にかかる光導波回路は、クラッド層の上部であって光導波路の上方に、この光導波路を加熱するためのヒータが形成された構成を有する光導波回路に適用することができる。特に、光導波路の偏波保持特性を利用する光導波回路に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 半導体レーザモジュール
2 半導体レーザ部
3 光選択素子部
4 増幅部
5 部分領域
10 基板
11 クラッド層
12,13,31,33,35,37 光導波路
14,15 ヒータ
16〜19,26〜29,56,57,66,67,76,77,86,87,96,97 溝領域
16a〜19a,56a,57a,66a,67a,76a,77a,96a,97a 溝部
16b〜19b,56b,57b,66b,67b,76b,77b,96b,97b ガラス部
20 半導体レーザ基板
21 半導体レーザアレイ
22 半導体レーザ素子
26a,27a,86a,87a 主溝部
26b,27b,86b,87b 副溝部
30 PLC
32,34,36 MZI素子
40 増幅器基板
41 半導体光増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたクラッド層と、
前記クラッド層内に形成された光導波路と、
前記クラッド層の上部であって前記光導波路の上方に形成され、前記光導波路を加熱するヒータと、
を備え、
前記クラッド層は、前記光導波路の両側方に、前記光導波路の延伸方向に沿って形成された溝領域を有し、
前記溝領域には、前記クラッド層の上面に平行であって前記光導波路の延伸方向に垂直な方向に向けて、少なくとも前記光導波路の側面に至る深さの溝部と中実部とが交互に形成され、
前記溝部は、前記垂直な方向に複数列形成され、
前記中実部は、前記垂直な方向に前記溝領域の両端をつなぐように連続することを特徴とする光導波回路。
【請求項2】
複数の前記溝部の各断面積は、前記光導波路を含み且つ前記クラッド層に平行な面で前記溝領域を切断した場合、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする請求項1に記載の光導波回路。
【請求項3】
前記中実部は、格子形状に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波回路。
【請求項4】
前記中実部は、蜂の巣形状に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波回路。
【請求項5】
基板上に形成されたクラッド層と、
前記クラッド層内に形成された光導波路と、
前記クラッド層の上部であって前記光導波路の上方に形成され、前記光導波路を加熱するヒータと、
を備え、
前記クラッド層は、前記光導波路の両側方に前記光導波路の延伸方向に沿って形成され、少なくとも前記光導波路の側面に至る深さの溝部を少なくとも一つ含む溝領域を有し、
前記光導波路を含み且つ前記クラッド層の上面に平行な面で前記溝部を切断した場合の前記溝部の断面積は、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする光導波回路。
【請求項6】
前記溝領域は、複数の前記溝部を含み、
複数の前記溝部の各断面積は、前記光導波路を含み且つ前記クラッド層の上面に平行な面で前記溝領域を切断した場合、前記光導波路から離隔するに伴って増加することを特徴とする請求項5に記載の光導波回路。
【請求項7】
前記クラッド層の熱伝導率に比して低い熱伝導率を有する物質、または前記クラッド層の熱膨張率以上の熱膨張率を有する物質で前記溝部が埋められていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光導波回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−211953(P2012−211953A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76546(P2011−76546)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】