説明

光導波路および光学式タッチパネル

【課題】光導波路部分(光学式タッチパネルの額縁部分)の厚みを大きくすることなく、外光の強い環境下でも使用できる光導波路と、それを用いた光学式タッチパネルを提供する。
【解決手段】光学式タッチパネルは、光導波路10のオーバークラッド層14に凹部14bを設け、凹部14bに光学式タッチパネルの枠体15を嵌め合い結合することにより、額縁部分を厚くすることなく、外光17がコア12に侵入することを防ぐことができた。さらに、光導波路10と枠体15が一体化しているため、光導波路10の位置合わせ精度が向上し、高い伝送効率が容易に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式タッチパネルに好適に用いられる光導波路と、光学式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を入射または出射する先端を有するコアと、コアを支持するアンダークラッド層と、コアを埋設し、側断面形状が略1/4円弧状である凸レンズ部を有するオーバークラッド層とを備えた光導波路が知られている(例えば特許文献1)。このような光導波路は、コアの先端から出射した発散光を、凸レンズ部で平行光にすることができる。また、凸レンズ部表面に入射した幅の広い平行光を、凸レンズ部でコア先端に集光することができる。その結果、高い光伝送効率を得ることができる。
【0003】
一般的に、光学式タッチパネルはタッチ検出に赤外線を用いるため、日光などの強い外光が検出部に差し込むと、タッチ検出ができなくなることがある。従来の光導波路を用いた光学式タッチパネルは、この問題の解決が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学式タッチパネルはタッチ検出に赤外線を用いるため、日光などの強い外光が検出部に差し込むと、タッチ検出ができなくなることがある。従来の光導波路を用いた光学式タッチパネルは、外光によりタッチ検出精度が低下する問題の解決が不十分であった。本発明の目的は、光導波路部分(光学式タッチパネルの額縁部分)の厚みを大きくすることなく、外光の強い環境下でも使用できる光導波路と、それを用いた光学式タッチパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光導波路は、光導波路のオーバークラッド層に凹部を設け、凹部に光学式タッチパネルの枠体を嵌め合い結合することにより、額縁部分を厚くすることなく、外光がコアに侵入することを防ぐことができる。本発明の光学式タッチパネルは、光導波路と枠体が一体化しているため、光導波路の位置合わせ精度が向上し、容易に高い伝送効率が得られる。
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の光導波路は、光を出射する、または、光が入射する先端を有するコアと、コアを支持するアンダークラッド層と、コアを埋設するオーバークラッド層とを備え、光学式タッチパネルの枠体に接して配置される光導波路であって、
オーバークラッド層は、側断面形状が略1/4円弧状である凸レンズ部と、光学式タッチパネルの枠体に嵌め合い結合される凹部とを有し、
凹部が、コアの先端の中心からオーバークラッド層の凸レンズ部の上端および下端を結ぶ線分と、凸レンズ部の外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲の外にあることを特徴とする。
(2)本発明の光導波路は、コアがアンダークラッド層およびオーバークラッド層よりも屈折率が高く、コアの屈折率とアンダークラッド層およびオーバークラッド層の屈折率の差が0.02〜0.2であることを特徴とする。
(3)本発明の光導波路は、コア、アンダークラッド層およびオーバークラッド層が紫外線硬化樹脂から形成されたことを特徴とする。
(4)本発明の光導波路は、オーバークラッド層の凸レンズ部の曲率半径をDとするとき、曲率半径Dが300μm〜1.5mmであることを特徴とする。
(5)本発明の光導波路は、オーバークラッド層の凸レンズ部の先端からコアの先端までの距離をAとするとき、距離Aが1mm〜5mmであり、距離Aと凸レンズ部の曲率半径Dの比A/Dが2〜6であることを特徴とする。
(6)本発明の光導波路は、オーバークラッド層の凹部の深さが200μm〜900μmであり、凹部におけるオーバークラッド層の残存厚みが100μm〜700μmであることを特徴とする。
(7)本発明の光学式タッチパネルは、上記に記載の光導波路を搭載した光学式タッチパネルであって、光導波路のオーバークラッド層の凹部が、光学式タッチパネルの枠体に嵌め合い結合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学式タッチパネルは、光導波路のオーバークラッド層に凹部を設け、凹部に光学式タッチパネルの枠体を嵌め合い結合することにより、額縁部分を厚くすることなく、外光がコアに侵入することを防ぐことができる。さらに、光導波路と枠体が一体化しているため、光導波路の位置合わせ精度が向上し、高い伝送効率が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の光導波路が光を出射するときの模式図、(b)は本発明の光導波路に光が入射するときの模式図。
【図2】本発明の光導波路の模式図。
【図3】本発明の光導波路の各部の寸法関係の説明図。
【図4】本発明の光学式タッチパネルの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光導波路]
図1に示すように、本発明の光導波路10は、光11aを出射する先端12a(図1(a))、または光11bが入射する先端12a(図1(b))を有するコア12と、コア12を支持するアンダークラッド層13と、コア12を埋設するオーバークラッド層14とを備え、光学式タッチパネルの枠体15(斜線部)に接するように配置される。オーバークラッド層14は、側断面形状が略1/4円弧状の凸レンズ部14aと、枠体15と嵌め合い結合される凹部14bとを有する。枠体15は不透明で、外光(可視光〜赤外光)を遮蔽する。
【0011】
オーバークラッド層14の凹部14bは、コア12の先端12aの中心からオーバークラッド層14の凸レンズ部14aの上端および下端を結ぶ線分と、凸レンズ部14aの外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲16(図の影部分)の外にある。オーバークラッド層14の凹部14bが、もしこの範囲16の内部にはみ出すと、出射する光11aおよび入射する光11bが、凹部14bにより妨げられるおそれがある。本発明の光導波路10は、オーバークラッド層14の凹部14bに、光学式タッチパネルの枠体15が嵌め合い結合されるので、厚みtを厚くすることなく、外光17(例えば日光)がコア12に侵入することを防ぐことができる。
【0012】
さらに、本発明の光導波路10は、機械的寸法精度の高い枠体15と嵌め合い結合され一体化するため、光導波路10の位置精度が向上する。具体的には、出射する光11aの位置精度、および、入射する光11bとコア12の先端12aとの相対位置精度が向上するため、高い光伝送効率が容易に得られる。
【0013】
本発明の光導波路10は、光学式タッチパネルに好適に用いられる。本発明において「光学式タッチパネル」とは、座標入力領域に光線(通常は赤外線)の格子を形成し、指やペンにより遮られた光線の位置と強度を検知することにより、座標認識を行なうものをいう。
【0014】
代表的には図2に示すように、本発明の光導波路20は一つの実施形態として、長辺20a側に並列に配置された複数のコア21の先端21aにて、光の出射または入射を行なう。本発明の光導波路20において、コア21の他端21bは、好ましくは、短辺20b側に形成される。
【0015】
光導波路20の長辺20a側のコア21の先端21aから光11aを出射するとき、コア21の他端21bは、代表的には、発光素子(図示しない)と光学的に結合される。また、光11bが長辺20a側のコア21の先端21aに入射するとき、コア21の他端21bは、代表的には、受光素子(図示しない)と光学的に結合される。
【0016】
光導波路20の最大厚みtは、特に制限はないが、通常50μm〜2mmである。光導波路20の長辺20aの長さLaは、光学式タッチパネルの表示画面の大きさに応じて、適宜設定される。光導波路20の短辺20bの長さLbは、好ましくは、1mm〜15mmである。
【0017】
[コア]
本発明に用いられるコア12は、クラッド層(アンダークラッド層13とオーバークラッド層14をまとめてクラッド層という)よりも屈折率が高く、伝播する光の波長で透明度の高い任意の材料から形成される。コア12を形成する材料は、好ましくは、パターニング性に優れた紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂としては、好ましくは、アクリル系紫外線硬化樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂、シロキサン系紫外線硬化樹脂、ノルボルネン系紫外線硬化樹脂、ポリイミド系紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
【0018】
コア12の、光を伝播する方向に垂直な断面の形状は、特に制限はないが、パターニング性に優れた台形または矩形が好ましい。図2は断面が矩形の場合である。コア12の、光を伝播する方向に垂直な断面の底辺の幅(コア幅)は、好ましくは30μm〜500μmである。コア12の、光を伝播する方向に垂直な断面の高さ(コア高さ)は、好ましくは30μm〜100μmである。
【0019】
[アンダークラッド層]
本発明に用いられるアンダークラッド層13は、コア12よりも屈折率が低い任意の材料から形成される。アンダークラッド層13を形成する材料は、特に制限はないが、成形性に優れた紫外線硬化樹脂が好ましい。紫外線硬化樹脂としては、上記のものの中から適宜、適切なものが選択できる。
【0020】
コア12とアンダークラッド層13との最大屈折率差は、好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.02〜0.2である。
【0021】
上記の紫外線硬化樹脂の屈折率は、紫外線硬化樹脂に導入する有機基の種類と含有量を変化させることにより、適宜、大きく、または小さくすることができる。紫外線硬化樹脂の屈折率は、例えば、環状芳香族性の基(フェニル基など)を樹脂分子中に導入するか、あるいは、樹脂分子中の含有量を増加させることにより、大きくすることができる。他方、紫外線硬化樹脂の屈折率は、例えば、直鎖または環状脂肪族性の基(メチル基、ノルボルネン基など)を樹脂分子中に導入するか、あるいは、樹脂分子中の含有量を増加させることにより、小さくすることができる。
【0022】
アンダークラッド層13の厚みは、好ましくは、10μm〜50μmである。
【0023】
[オーバークラッド層]
本発明に用いられるオーバークラッド層14は、側断面形状が略1/4円弧状である凸レンズ部14aと、光学式タッチパネルの枠体15と嵌め合い結合される凹部14bを有する。凸レンズ部14aは、レンチキュラーレンズ(蒲鉾形レンズ)を長手方向に1/2に切断した形状である。凸レンズ部14aと凹部14bは、例えば、所定の金型に液状樹脂を流し込み、固化または硬化させることにより成形することができる。オーバークラッド層14を形成する材料は、好ましくは、アンダークラッド層13を形成する材料と同一である。
【0024】
図1に示すように、本発明の光導波路10は、コア12の先端12aから出射した発散する光を、凸レンズ部14aで平行な光11aにすることができる。また、凸レンズ部14aの表面に入射した幅の広い平行な光11bを、凸レンズ部14aでコア12の先端12aに集束する光にすることができる。その結果、光の利用効率が向上し、高い光伝送効率を得ることができる。
【0025】
図3は、本発明の光導波路10の各部の寸法関係の説明図である。凸レンズ部14aの曲率半径Dは、好ましくは、300μm〜1.5mmである。凸レンズ部14aの先端から、コア12の先端12aまでの距離Aは、好ましくは、1mm〜5mmである。距離Aと曲率半径Dの比A/Dは、好ましくは、2〜6である。このような設計であれば、コア12の先端12aから出射する光を、凸レンズ部14aで効率よく平行な光11aにすることができる。また、凸レンズ部14aの表面に入射した幅の広い平行な光11bを、コア12の先端12aに効率よく集光することができる。これにより光導波路10の光伝送効率を高くすることができる。
【0026】
図1に示すように、オーバークラッド層14の凹部14bは、出射する光11aおよび入射する光11bを妨げないように、コア12の先端12aの中心からオーバークラッド層14の凸レンズ部14aの上端および下端を結ぶ線分と、凸レンズ部14aの外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲16(影部)の外に形成される。
【0027】
図3に示すオーバークラッド層14の凹部14bの深さCは、好ましくは、200μm〜900μmである。凹部14bの深さCが200μm未満であると、枠体15との嵌め合いが難しくなり、結合精度が低くなるおそれがある。凹部14bの深さCが900μmを超えると、オーバークラッド層14の残存厚みBが小さくなりすぎて、コア12の光伝送に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0028】
凹部14bにおけるオーバークラッド層14の残存厚みBは、好ましくは、100μm〜700μmである。残存厚みBが100μm未満であると、コア12の光伝送に悪影響を及ぼすおそれがある。残存厚みBが700μmを超えると、オーバークラッド層14の凹部14bの深さCが小さくなりすぎて、枠体15との結合精度が低くなるおそれがある。
【0029】
凹部14bの先端とコア12の先端12aとの距離Eは、好ましくは、0mm〜2mmである。距離Eが0mmより小さくマイナスになると、コア12の先端12aが凹部14bの端よりも突き出た形状になるので、外光17がコア12に侵入するおそれがある。距離Eが2mmを越えると、凹部14bの一部が、図1に示す、コア12の先端12aの中心からオーバークラッド層14の凸レンズ部14aの上端および下端を結ぶ線分と、凸レンズ部14aの外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲16の中に入り込み、出射する光11aおよび入射する光11bを妨害するおそれがある。
【0030】
このような寸法関係を満たす設計であれば、外光17の影響がコア12に及ばないようにすると共に、コア12を伝播する光に凹部14bの影響が及ばないようにすることができる。
【0031】
オーバークラッド層14の凹部14bと光学式タッチパネルの枠体15は嵌め合い結合される。その結合手段に特に制限はないが、例えば、オーバークラッド層14の凹部14bの表面に接着剤を塗布し、光学式タッチパネルの枠体15を嵌め込んだ後、接着剤を硬化させる方法などが挙げられる。
【0032】
図4に示すように、本発明の光学式タッチパネル30は、好ましくは、発光素子(図示しない)と、座標入力領域31と、座標入力領域31の周囲に配置された枠体32と、発光素子からの光を導いて座標入力領域31を横断する光線33を生成する発光側光導波路34と、座標入力領域31を横断した光線33を受光する受光側光導波路35と、受光側光導波路35で受光した光の強度を検出する受光素子(図示しない)とを備える。
【0033】
さらに、本発明の光学式タッチパネル30は、好ましくは、発光側光導波路34および受光側光導波路35の少なくとも一方のオーバークラッド層14に形成された凹部14bが、枠体32と嵌め合い結合されてなる。
【0034】
座標入力領域31は、発光側光導波路34から生成される光線33が横断する領域をいう。座標入力領域31は、代表的には、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルなどの表示画面36である。座標入力領域31は、コア12の位置調整を正確に行ない易くするため、矩形のものが好ましい。座標入力領域31の前面(操作者側の面)は、空間でもよいし、耐擦傷性を増すために、表面にガラスパネルやアクリル板を備えてもよい。
【0035】
枠体32は座標入力領域31の周囲に配置される。枠体32を形成する材料は、例えば、アクリル系樹脂である。枠体32は、外光17を遮ってコア12に侵入する光を低減するため、赤外線領域で透過率の低いものが好ましい。
【0036】
発光素子としては、発光側光導波路34を通して、座標入力領域31を横断する光線33を生成するものであれば、任意のものが用いられる。発光素子から出射される光の波長は、好ましくは、近赤外線領域(700nm〜2500nm)のいずれかである。このような発光素子として、例えば、発光ダイオードや半導体レーザーが挙げられる。
【0037】
受光素子は、光信号を電気信号に変換し、受光側光導波路35で受光した光の強度を検出する。受光素子により検出される光の波長は、好ましくは、近赤外線領域(700nm〜2500nm)のいずれかである。このような受光素子としては、例えば、CMOSイメージセンサーや、CCDイメージセンサーが挙げられる。
【実施例】
【0038】
[実施例]
[クラッド層形成用ワニスの調製]
・(成分A)脂環骨格を有するエポキシ系紫外線硬化樹脂(アデカ社製EP4080E) 100重量部
・(成分B)光酸発生剤(サンアプロ社製CPI−200K) 2重量部
以上を混合して、クラッド層形成用ワニスを調製した。
【0039】
[コア形成用ワニスの調製]
・(成分C)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(大阪ガスケミカル社製オグソールEG) 40重量部
・(成分D)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製EX−1040) 30重量部
・(成分E)1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタン(特開2007−070320、実施例2に準じて合成) 30重量部
・上記成分B 1重量部
・乳酸エチル 41重量部
以上を混合して、コア形成用ワニスを調製した。
【0040】
[光導波路の作製]
厚み188μmのポリエチレンナフタレートフィルムの表面に、クラッド層形成用ワニスを塗布し、紫外線を1000mJ/cm照射した後、80℃で5分間加熱処理して、厚み20μmのアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率=1.510)を形成した。
【0041】
上記のアンダークラッド層の表面に、上記のコア形成用ワニスを塗布し、100℃で5分間加熱処理してコア層を形成した後、コア層にフォトマスクを被せて紫外線を2500mJ/cm照射し、さらに100℃で10分間加熱処理した。次に、コア層の紫外線未照射部分をY−ブチロラクトン水溶液で溶解除去して、幅20μm、高さ50μmのコア(波長830nmにおける屈折率=1.592)を複数本形成した。
【0042】
上記のコアに石英製の型を覆い被せ、その内部にクラッド層形成用ワニスを充填し、紫外線を2000mJ/cm照射した後、80℃で5分間加熱処理した。その後、型を剥離して、先端部の側断面形状が略1/4円弧状の凸レンズであり、コアの先端の中心から凸レンズ部の上端および下端を結ぶ線分と、凸レンズ部の外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲の外に凹部を有するオーバークラッド層(波長830nmにおける屈折率=1.510)を形成した。
【0043】
このようにして作製した光導波路は、図3に示す各寸法が、A=4mm、B=0.65mm、C=0.3mm、D=1mm、E=1mmであった。
【0044】
[光学式タッチパネルの作製]
上記の光導波路を4つ用意し、額縁形の枠体(アクリル樹脂製)の各辺に、各光導波路のオーバークラッド層の凹部を接着剤を介して嵌め合い結合し、光導波路の位置決めと固定を行ない、額縁形の光導波路を作製した。次に、上記の額縁形の光導波路を、座標入力領域の周囲に固定した。隣り合う2つの光導波路を発光側光導波路とし、そのコアの末端に、波長850nmの赤外光を出射する発光素子(オプトウエル社製VCSEL)を、紫外線硬化接着剤を介して、光学的に結合した。
【0045】
他の隣り合う2つの光導波路を受光側光導波路とし、そのコアの末端に受光素子(TAOS社製CMOSリニアセンサーアレイ)を、紫外線硬化接着剤を介して、光学的に結合した。
【0046】
このようにして作製した光学式タッチパネルは、発光素子の光の強度を100%とすると、座標入力領域を遮らないとき、受光素子で検知する光の強度は10%であった。また、座標入力領域を通過する光線を指で遮ると、その位置座標を正確に認識することが確認できた。
【0047】
またこの光学式タッチパネルは、従来の光学式タッチパネルでは正常な動作が困難な、照度5400luxの環境下でも、問題なく使用できた。
【0048】
[測定方法]
[屈折率]
クラッド層形成用ワニスおよびコア形成用ワニスを、それぞれシリコンウェハ上にスピンコートにより成膜して屈折率測定用サンプルを作製し、プリズムカプラー(サイロン社製SPA−400)を用いて測定した。
【0049】
[コア幅、コア高さ]
作製した光導波路を、ダイサー式切断機(DISCO社製DAD522)を用いて断面切断し、切断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察、測定した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の光学式タッチパネルは、ATM、券売機、FA装置、コピー機、POS端末、業務用ゲーム機などのような、環境条件が厳しく、負荷の大きいタッチパネルに特に好適である。
【符号の説明】
【0051】
10 光導波路
11a 出射光
11b 入射光
12 コア
12a コアの先端
13 アンダークラッド層
14 オーバークラッド層
14a オーバークラッド層の凸レンズ部
14b オーバークラッド層の凹部
15 光学式タッチパネルの枠体
16 範囲
17 外光
20 光導波路
20a 光導波路の長辺
20b 光導波路の短辺
21 コア
21a コアの先端
21b コアの他端
30 光学式タッチパネル
31 座標入力領域
32 光学式タッチパネルの枠体
33 光線
34 発光側光導波路
35 受光側光導波路
36 表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する、または、光が入射する先端を有するコアと、前記コアを支持するアンダークラッド層と、前記コアを埋設するオーバークラッド層とを備え、光学式タッチパネルの枠体に接して配置される光導波路であって、
前記オーバークラッド層は、側断面形状が略1/4円弧状である凸レンズ部と、前記光学式タッチパネルの枠体に嵌め合い結合される凹部とを有し、
前記凹部は、前記コアの先端の中心から前記オーバークラッド層の凸レンズ部の上端および下端を結ぶ線分と、前記凸レンズ部の外周の円弧とにより囲まれた略扇形の範囲の外にあることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記コアは前記アンダークラッド層および前記オーバークラッド層よりも屈折率が高く、前記コアの屈折率と前記アンダークラッド層および前記オーバークラッド層の屈折率の差は0.02〜0.2であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記コア、前記アンダークラッド層および前記オーバークラッド層が紫外線硬化樹脂から形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記オーバークラッド層の凸レンズ部の曲率半径をDとするとき、曲率半径Dは300μm〜1.5mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記オーバークラッド層の凸レンズ部の先端から前記コアの先端までの距離をAとするとき、距離Aは1mm〜5mmであり、距離Aと凸レンズ部の曲率半径Dの比A/Dは2〜6であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記オーバークラッド層の凹部の深さは、200μm〜900μmであり、前記凹部における前記オーバークラッド層の残存厚みは、100μm〜700μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光導波路を搭載した光学式タッチパネルであって、前記光導波路の前記オーバークラッド層の凹部が、光学式タッチパネルの枠体に嵌め合い結合されたことを特徴とする光学式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−211382(P2010−211382A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55103(P2009−55103)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】