光導波路の製造方法、及び光学部品
【課題】超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶に照射した場合であっても、断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路を得ることができるようにする。
【解決手段】フェムト秒レーザを使用して非線形光学結晶2に光導波路3を形成する場合に、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも非線形光学結晶2内での伝播が速くなるように、非線形光学結晶2の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、レーザ光を非線形光学結晶2の照射面に対して垂直方向に走査し、非線形光学結晶2の両端部が略同一径で導波路形状が鼓状の光導波路3を形成する。
【解決手段】フェムト秒レーザを使用して非線形光学結晶2に光導波路3を形成する場合に、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも非線形光学結晶2内での伝播が速くなるように、非線形光学結晶2の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、レーザ光を非線形光学結晶2の照射面に対して垂直方向に走査し、非線形光学結晶2の両端部が略同一径で導波路形状が鼓状の光導波路3を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路の製造方法、及び光学部品に関し、より詳しくはフェムト秒レーザに代表される超短パルスレーザを使用した光導波路の製造方法、及び該製造方法を使用して製造された波長変換素子等の光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非線形光学効果を利用し、固体レーザから発する所定波長のレーザ光を種々の波長に変換する波長変換技術の研究が盛んに行なわれている。この波長変換技術によれば、非線形光学結晶に光導波路を形成し、レーザ光を光導波路に透過させることにより、例えば、入射光の波長に対し出射光の波長が1/2となる第二高調波(Second Harmonic Generation;以下、「SHG」という。)のレーザ光を得ることが可能となる。ここで、非線形光学効果とは、レーザ光が媒体を導波する場合、媒体の応答がレーザ光に比例せず、非線形性を有する現象をいい、このような非線形光学効果を有する非線形光学結晶として、LiNbO3(以下、「LN」という。)やLiTaO3(以下、「LT」という。)等の異方性結晶が知られている。
【0003】
そして、この種の光導波路の作製方法としては、従来よりTi拡散法が知られている。しかしながら、このTi拡散法は、薄膜形成工程や熱拡散工程の他、フォトリソグラフィ技術等を利用して非線形光学結晶上に光導波路をパターニングしなければならず、このため製造工程が複雑であり、長時間を要し、製造コストも高くなるという欠点があった。
【0004】
そこで、最近では、上述のような複雑な製造工程が不要で、短時間での製造が可能なレーザ技術、特に超短パルスレーザを使用した作製方法が注目されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、フェムト秒レーザを使用し、フェムト秒レーザから出射されるレーザ光をLNからなる基板(以下、「LN基板」という。)の内部に集光させて光導波路を作製している。
【0006】
このフェムト秒レーザは、フェムト秒(10-15s)レベルのパルス幅を有する超短パルスのレーザ光を所定の繰り返し周波数で出力することができる。
【0007】
そして、非特許文献1では、レーザ発振器としてTi:サファイア結晶を使用し、パルスエネルギーを1mJ、繰り返し周波数を1kHz、パルス幅を35fs(フェムト秒)に設定し、LN基板にレーザ光を照射し、光導波路を作製している。
【0008】
図26は、非特許文献1に記載された光導波路の作製方法を示している。
【0009】
この非特許文献1では、LN基板101の表面から50〜150μmの深さを集光位置とし、上述のように条件設定されたフェムト秒レーザからのレーザ光102を対物レンズ103(倍率:40倍、開口数:0.65)を介して集光させ、LN基板101を矢印x方向に移動させてレーザ光を走査し、これによりLN基板101の所定位置に光導波路104を形成している。
【0010】
この非特許文献1は、レーザ光の集光位置ではレーザ光からの熱によるダメージを受けるため、前記集光位置には光導波路は形成されないが、集光位置の周囲で歪みが生じ、この歪みにより異常光線の屈折率neを増加させている。そして、ダメージを受けた部分を囲むような形態で光導波路を形成している。
【0011】
尚、この非特許文献1では、上述のように異常光線の屈折率neは増加させることができるが、常光線の屈折率noは変化しなかったことも報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Burghoff, S. Noltz, A.Tunnermann 著、「Origins of waveguiding in femtosecond laser-structured LiNbO3」、 Appl. Phys. A89, p.127-132 、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、非特許文献1では、レーザ光102をLN基板101に対し水平方向に走査して光導波路104を形成しているが、作製された光導波路104は、断面形状が長孔乃至楕円形状となり、したがって円形状乃至略円形状の導波路特性の良好な光導波路を得るのが困難な状況にあった。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶に照射した場合であっても、断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路を得ることができる光導波路の製造方法、及びこの製造方法を使用して製造された光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶の照射面に対し垂直方向に走査させることにより、光導波路の断面形状が円形状乃至略円形状になることを見出した。
【0016】
しかしながら、非線形光学結晶は屈折率分散を有し、通常は波長の短い光に対して屈折率が大きくなることから、波長の短い光は波長の長い光に比べて伝播が遅くなって位相波形が広がってしまう。そしてその結果、形成された光導波路はテーパ状に拡がってしまうという新たな問題点が発生する。
【0017】
そこで、本発明者らが更に鋭意研究を重ねた結果、非線形光学結晶の屈折率分散を考慮し、該非線形光学結晶内では短波長の波長成分を長波長の波長成分よりも伝播が速くなるようにチャープを予め補正しておくことにより、上記問題点を解消できることが分かった。
【0018】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る光導波路の製造方法は、位相の異なる複数の波長成分から超短パルスのパルス幅を有するレーザ光を生成し、前記レーザ光を光軸上に配された非線形光学結晶に所定の繰り返し周波数で照射して光導波路を形成する光導波路の製造方法において、前記複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成することを特徴としている。
【0019】
尚、本発明で、「超短パルス」とは、フェムト秒レベルのパルス幅を有するパルスをいう。
【0020】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であることを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいことを特徴としている。
【0022】
また、上述した非線形光学結晶が周期分極反転構造を有する場合は、非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位にレーザ光を照射することにより、擬似位相整合がなされて良好な光閉じ込め性を得ることができ、エネルギー変換効率の向上を図ることができる。
【0023】
すなわち、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であることを特徴としている。
【0025】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記繰り返し周波数は、200kHz以上であることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記レーザ光の出射源が、フェムト秒レーザであることを特徴としている。
【0027】
さらに、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶がLTで形成されていることを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係る光学部品は、上記いずれかに記載の製造方法を使用して製造されたことを特徴としている。
【0029】
また、本発明の光学部品は、波長変換素子であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光導波路の製造方法によれば、複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成するので、超短パルスの位相波形が広がるのを回避することができる。そしてこれにより光導波路が非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることもなく、断面形状が円形状乃至略円形状の良好な導波路特性を有する光導波路を作製することが可能となる。
【0031】
また、前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であるので、非線形光学結晶の両端部でのパルス幅が略同一となるようにチャープ補正されることとなり、非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることのない良好な導波路特性を有する光導波路を作製することができる。
【0032】
また、前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいので、非線形光学結晶内で短波長の波長成分が長波長の波長成分を追い越すような位相波形となり、略円筒状の導波路形状を有する光導波路を作製することができる。
【0033】
また、前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であるので、擬似位相整合がなされて良好な光閉じ込め性を得ることができ、エネルギー変換効率の向上を図ることができる。
【0034】
また、レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であるので、低エネルギーで光導波路を形成することができ、ダメージを受けるのを極力回避することができる。
【0035】
繰り返し周波数は、200kHz以上であるので、パルスの発生間隔も比較的長く、したがってレーザ光の照射による熱の緩和時間も長くなり、熱を効率良く蓄積させることが可能となる。
【0036】
レーザ光の出射源が、フェムト秒レーザであるので、レーザ光の射出条件を容易に調整することができ、Ti拡散法のような複雑な製造工程を要することなく、短時間でかつ安価な製造コストでもって断面形状が円形乃至略円形状の所望の光導波路を得ることができる。
【0037】
また、本発明の光学部品は、上記いずれかに記載の製造方法を使用して製造されているので、レーザ光を照射することにより、所望波長のSHGレーザ光に変換することができる波長変換素子等の光学部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る光導波路の製造方法を使用して製造された光学部品としての波長変換素子の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】上記光導波路の製造方法に使用される製造装置の一実施の形態を模式的に示した図である。
【図4】パルス圧縮器の構成の一例を模式的に示した図である。
【図5】位相同期している場合の波形図である。
【図6】非線形光学結晶の屈折率分散の一例を示す図である。
【図7】屈折率分散により位相波形に「ずれ」が生じた場合の波形図である。
【図8】チャープ補正をしなかった場合に得られる光導波路の断面図である。
【図9】負のチャープ補正をした場合の波形図、及び光導波路の断面形状を示す図である。
【図10】パルス幅が大きすぎた場合の光導波路の断面図である。
【図11】光学部品としての波長変換素子の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図12】周期分極反転構造を有する非線形光学結晶の一実施の形態を示す斜視図である。
【図13】第2の実施の形態に係る波長変換素子の製造方法を示す図である。
【図14】実施例で使用した光導波路特性評価装置を模式的に示したシステム構成図である。
【図15】実施例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。
【図16】比較例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。
【図17】実施例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【図18】比較例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【図19】試料No.1のA面側から撮像したCCD画像である。
【図20】試料No.1のB面側から撮像したCCD画像である。
【図21】試料No.2のA面側から撮像したCCD画像である。
【図22】試料No.2のB面側から撮像したCCD画像である。
【図23】試料No.3のA面側から撮像したCCD画像である。
【図24】試料No.3のB面側から撮像したCCD画像である。
【図25】試料No.2で観察されたSHGのCCD画像を示す図である。
【図26】非特許文献1に記載された光導波路の作製方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0040】
図1は本発明に係る光導波路の製造方法を使用して製造された光学部品としての波長変換素子の一実施の形態を示す斜視図であり、図2はその縦断面図である。
【0041】
すなわち、この波長変換素子1は、長さ:X、幅:Y、高さ:Zからなる直方体形状の非線形光学結晶2を有し、該非線形光学結晶2のZ方向(高さ方向)に光導波路3が貫設されている。そして、所定波長(例えば、1064nm)の固定レーザから発せられたレーザ光が非線形光学結晶2に入射されると、光導波路3からは波長が1/2(例えば、532nm)に変換されたSHGのレーザ光を出射する。
【0042】
ここで、非線形光学結晶2としては、出射光の応答が入射光に比例せずに非線形性を示し、波長が1/2に変換されて出射されるものであれば特に限定されるものではなく、例えばLT、LN、β−BaB2O4(BBO)等の一軸性結晶、LiB3O5(LBO)、KTiOPO4(KTP)等の二軸性結晶を使用することができるが、これらの非線形光学結晶2の中では熱ダメージに対する耐性が良好なLTを好んで使用することができる。
【0043】
図3は、上記光導波路3の製造に使用される製造装置の一実施の形態を模式的に示した概略図である。
【0044】
すなわち、この製造装置は、超短パルスレーザとしてのフェムト秒レーザ4と、該フェムトレーザ4から出射されるレーザ光5を非線形光学結晶2の集光位置Fに集光させる対物レンズ6とを備えている。
【0045】
フェムト秒レーザ4は、具体的には、Ti:サファイア結晶等の広帯域のレーザ媒質を内蔵した超短パルス発振器7と、該超短パルス発振器7で得られたレーザ光のパルス幅を一旦伸張するパルス伸張器8と、パルス伸張器8で伸張されたパルスを増幅するパルス増幅器9と、該パルス増幅器9を励起させる励起レーザ10と、パルス増幅器9で増幅されたパルスを前記超短パルスに圧縮するパルス圧縮器11とを主要部として備えている。
【0046】
そして、励起源(不図示)からのレーザ光(例えば、波長λが532nmのグリーン光)が超短パルス発振器7に入力されると、該超短パルス発振器7からはフェムト秒レベル(例えば、100fs)のパルス幅を有するレーザ光が出力される。すなわち、この超短パルス発振器7では、位相の異なる複数の波長成分が互いに干渉するように位相を同期させてモード間の位相をロックしながら連続発振し、各波長成分の位相が重なり合うように動作して尖鋭な超短パルスのレーザ光を生成する。
【0047】
このレーザ光は、出力エネルギーが低いため、出力エネルギーを増幅する必要があるが、レーザ光自体は、上述のようにパルス幅が超短であり、尖鋭でピーク出力が高い。したがって、このままの状態で増幅すると光路中に配された各種の光学素子が損傷するおそれがある。そこで、パルス伸張器8でレーザ光のパルス幅をピコ秒レベル(例えば、100ps)に一旦伸張して尖鋭なピーク出力を抑えた状態とし、その後、励起レーザ(例えば、波長λが532nmのグリーン光)を介して励起されたパルス増幅器9で出力エネルギーを増幅する。次いで、パルス圧縮器11では、後述する所定の処理を行ってフェムト秒レベル(例えば、200fs)の超短パルスに圧縮し、該超短パルスのレーザ光5を所定の繰り返し周波数でもってフェムト秒レーザ4から出射する。フェムト秒レーザ4から出射されたレーザ光5を、対物レンズ6を介して非線形光学結晶2の照射面2aの垂直方向の最深部2bに集光させる。そして、非線形光学結晶2を矢印Z方向に移動させることによってレーザ光5を走査させ、これにより導波路形状が略円筒状であって断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路3が作製される。
【0048】
尚、対物レンズ6は、非線形光学結晶2の矢印Z方向の各位置で連続的に集光するような集光光学系で構成され、例えば、倍率10倍以上、開口数0.3以上に設計されたレンズ群を使用することができる。
【0049】
そして、本実施の形態では、パルス圧縮器11で光波の強度変調に伴う位相波形のゆらぎ(以下、「チャープ」という。)を補正している。すなわち、非線形光学結晶2は、屈折率分散を有し、入射されるレーザ光の波長成分に応じて屈折率が変化することから、屈折率分散を考慮してパルス圧縮器11で予めチャープを補正し、これにより光導波路3の両端部が略同一径となるようしている。
【0050】
図4はパルス圧縮器11の一実施の形態としてのプリズム圧縮器を模式的に示す概念図である。
【0051】
このパルス圧縮器11は、第1のプリズム12と、該第1のプリズム12に対し、図中、上下方向の最大離間距離が「L」となるように配された第2のプリズム13と、第2のプリズム13から出射された波長成分を反射させて逆行させる第1のミラー14と、各波長成分が合成されてなる超短パルスのレーザ光を外部に出射させる第2のミラー15とを主要部として構成されている。
【0052】
このパルス圧縮器11では、パルス増幅器9からの位相の異なる複数の波長成分が第2のミラー15を直進し、第1のプリズム12に入射される。この第1のプリズム12では、レーザ光に含まれる波長成分のうち、短波長側の波長成分(以下、「短波長成分」という。)16は長波長側の波長成分(以下、「長波長成分」という。)17よりも大きく回折する。すなわち、可視光領域〜近赤外領域を透過する材料は、通常、正の屈折率分散を有しているため、波長が短くなるほど屈折率は大きく、波長が長くなるほど、屈折率は小さくなる。したがって、第1のプリズム12に入射されたレーザ光は、第1のプリズム12によって、波長成分毎に空間的に分散され、短波長成分16は長波長成分17よりも大きく回折する。その結果、短波長成分16は長波長成分17よりも光路長が長くなり、その結果、長波長成分17は短波長成分16よりも時間的に速く伝播し、第2のプリズム13に入射される。そして、第2のプリズム13内では、長波長成分17が短波長成分16よりも光路長が長くなるため、長波長成分17は短波長成分16よりも時間的に遅く伝播する。
【0053】
このように第1のプリズム12と第2のプリズム13との間では、短波長成分16は長波長成分17よりも光路長が長くなり、第2のプリズム13中では長波長成分17が短波長成分16よりも光路長が長くなるため、短波長成分16と長波長成分17との光路差が略相殺されることとなり、これによりパルス圧縮器11からは位相同期した超短パルスのレーザ光5を出射することができる。
【0054】
図5はパルス圧縮器11から出射される超短パルスの一例を示す図であり、横軸は時間t、縦軸はレーザ強度Iである。また、伝播方向Sは時間tと逆方向である。
【0055】
このようにパルス圧縮器11では、位相の異なる波長成分を重ね合わせることによって、各波長成分の位相を同期させることができ、これにより包絡線18に示すように超短パルスのレーザ光5を出射することができる。
【0056】
しかるに、非線形光学結晶2は屈折率分散を有しており、入力波長に応じて屈折率が異なることが知られている。このためフェムト秒レベル(例えば、100fs以下)の超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶2に入射させた場合、該非線形光学結晶2内でレーザ光は再び波長分散し、位相波形が広がる。したがって、たとえ断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路を作製することができたとしても、導波路形状がテーパ状に拡がり、好ましくない。
【0057】
図6は、非線形光学結晶2の屈折率分散の一例を示す図であり、横軸は波長、縦軸は屈折率である。
【0058】
非線形光学結晶2は、300〜1100nmの可視光〜近赤外領域では、この図6に示すように、波長が長くなると屈折率が小さくなり、波長が短くなると屈折率が大きくなる。
【0059】
このように光の波長成分に応じて屈折率が異なることから回折角度が異なり、非線形光学結晶2内で再び波長成分毎に光路が分散する。そして、各波長成分毎に光路長が異なることとなるため、波長成分に応じて伝播状態も異なる。
【0060】
すなわち、短波長成分の場合は屈折率が大きいので、長波長成分よりも伝播が遅くなり、一方、長波長成分の場合は屈折率が小さいので、短波長成分よりも伝播が遅くなり、その結果、同期した位相波形に「ずれ」が生じることとなる。
【0061】
図7は屈折率分散により位相波形に「ずれ」が生じた場合の波形図であり、横軸が時間t、縦軸はレーザ強度I、時間軸と逆方向が伝播方向Sを示している。
【0062】
この図7のA部及びA′部に示すように、長波長成分が短波長成分に比べて先行して伝播し、一方短波長成分は長波長成分に比べて遅れて伝播するため、位相波形が広がり、包絡線19に示すようにパルス幅は大きくなる。
【0063】
しかも、この位相波形の広がりは、レーザ光5が非線形光学結晶2内を進行するに伴い、大きくなることからパルス幅の広がりが助長され、このため図8に示すように、光導波路3′がテーパ状に拡がってしまい、光導波路3′にクラック等の損傷が発生する原因にもなる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、非線形光学結晶2内では短波長成分の光が長波長成分の光よりも伝播が速くなるようにチャープを補正している。
【0065】
尚、このように短波長成分が長波長成分よりも伝播が速くなるようなチャープ補正を負のチャープ補正といい、長波長成分が短波長成分よりも伝播が速くなるようなチャープ補正を正のチャープ補正という。したがって、本実施の形態では、負のチャープ補正を行い、これにより光導波路3がテーパ状に拡がるのを回避している。
【0066】
そして、このような負のチャープ補正は、例えば第2のプリズム13内の光路長を短波長成分16が長波長成分17よりも短くなるようにすればよく、レンズ収差等を考慮しつつ、最大離間距離Lを調整したり、プリズムの回転角度を調整することにより行うことができる。
【0067】
図9は、負のチャープ補正をした場合のレーザ光の位相波形と導波路形状との関係を示す断面図である。(a)はレーザ光の位相波形を示し、各(i)〜(v)は、横軸が時間t、縦軸がレーザ強度I、時間軸と逆方向が伝播方向Sを示している。また(b)は導波路形状を示し、図(a)の(i)〜(v)が、図(b)の各点(i)〜(v)に対応している。
【0068】
(i)では非線形光学結晶2の屈折率分散の影響により、B部及びB′部に示すように、長波長成分が短波長成分に先行して伝播し、短波長成分は長波長成分に比べて遅れて伝播している。そして、負のチャープ補正をしているので、(ii)ではC部及びC′部に示すように、長波長成分と短波長成分との伝播状態の差は小さくなり、(iii)では長波長成分と短波長成分との伝播状態はほぼ同一となってパルス幅も最小となっている。そして、(iv)ではD部及びD′部に示すように、短波長成分の伝播が長波長成分の伝播を追い越して短波長成分が長波長成分に先行し始めている。そして、(v)ではE部及びE′部に示すように、短波長成分が長波長成分に完全に先行して伝播し、(i)と略反対称の位相波形となる。
【0069】
そして、このように負のチャープ補正を行うことにより、点(i)と点(v)とではパルス幅が同一乃至略同一となり、点(iii)では点(i)や点(v)よりもパルス幅は小さくなり、結果として略円筒状の光導波路3を得ることができる。
【0070】
尚、入射されるレーザ光のパルス幅は、光導波路3の両端部で導波路径が同一乃至略同一となるように、非線形光学結晶2の特性に応じて決定される。すなわち、パルス幅が大きすぎると、負のチャープ補正をしても、図8と同様、出射側のパルス幅が広がってしまい、このため導波路径3′がテーパ状に拡がるおそれがある。
【0071】
一方、パルス幅が小さすぎると、負のチャープ補正をしても、図10に示すように、出射側のパルス幅を入射側と同等にすることができなくなり、導波路径3″がテーパ状に狭くなってしまうおそれがある。
【0072】
このようにパルス幅は、負のチャープ補正を行った場合に導波路径が光導波路3の両端部で同一乃至略同一となるように決定される。
【0073】
また、本実施の形態では、フェムト秒レーザ4から出射される超短パルスのパルスエネルギーは、1.5μJ以下に設定される。これは、パルスエネルギーが1.5μJを超えると、熱エネルギーが大きくなって熱損傷を招くおそれがあるからである。ただし、パルスエネルギーが0.1μJ未満になると、非線形光学結晶2に十分なエネルギーが付与されず、光導波路3を形成するのが困難となる。
【0074】
また、繰り返し周波数は、集光位置Fがダメージを受けることなく所望の歪みを形成することができ、かつ所望の熱蓄積なされるように、所定の繰り返し周波数を設定する必要があり、好ましくは200kHz以上に設定される。
【0075】
すなわち、繰り返し周波数が200kHz未満、例えば、非特許文献1のように1kHzと低い場合は、パルス形状は尖鋭でしかもレーザ強度Iは非常に大きくなるため、非線形光学結晶2は集光位置Fでの熱によるダメージを受けやすく、好ましくない。
【0076】
尚、繰り返し周波数の上限は特に限定されるものではないが、実用的には800kHz以下が好ましい。
【0077】
このように本実施の形態の光導波路の製造方法によれば、複数の波長成分のうち、短波長成分16を長波長成分17よりも非線形光学結晶2内での伝播が速くなるように、非線形光学結晶2の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、レーザ光5を非線形光学結晶2の照射面2aに対して垂直方向に最深部からZ方向に走査し、非線形光学結晶2に光導波路3を形成するので、超短パルスの位相波形が広がるのを回避することができる。そしてこれにより光導波路が非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることもなく、断面形状が円形状乃至略円形状の良好な導波路特性を有する光導波路を作製することが可能となる。
【0078】
また、光導波路3の導波路径は、レーザ光5走査される非線形光学結晶2の両端部で略同一であるので、非線形光学結晶2の両端部でのパルス幅が略同一となるようにチャープ補正されることとなり、非線形光学結晶2内でテーパ状に拡がることのない良好な導波路特性を有する光導波路3を作製することができる。
【0079】
また、非線形光学結晶2の両端部に集光するレーザ光5のパルス幅は、非線形光学結晶5の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいので、上述したように非線形光学結晶2内で短波長成分が長波長成分を追い越すような位相波形となり、略円筒状の導波路形状を有する光導波路3を作製することができる。
【0080】
また、レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であるので、低エネルギーで光導波路を形成することができ、非線形光学結晶2が熱によりダメージを受けるのを極力回避することができる。
【0081】
また、繰り返し周波数は、200kHz以上であるので、パルスの発生間隔が比較的長くなってレーザ項の照射による熱の緩和時間も長くなり、熱を効率良く蓄積させることが可能となる。
【0082】
さらに、前記レーザ光5の出射源が、フェムト秒レーザであるので、レーザ光の射出条件を容易に制御することができ、Ti拡散法のような複雑な製造工程を要することなく、短時間で安価な製造コストでもって所望の光導波路を得ることができる。
【0083】
尚、上記実施の形態では、レーザ光5を照射面2aに対して垂直方向に照射しているが、水平方向に照射した場合はチャープ補正をしても上述したような円形状乃至略略円形状の光導波路を作製するのは困難である。その理由は以下のように推察される。
【0084】
対物レンズ6から出射したレーザ光は、焦点に集光するが、集光した部分は「点」ではなく鼓状を形成するため、焦点におけるエネルギー分布も楕円形状を有すると考えられる。したがって、レーザ光に対して水平方向に走査する場合は、上述のようなチャープ補正をしても円形状乃至略円形状の光導波路を得ることができないばかりか、チャープ補正してパルス幅を広げた場合は、光導波路にクラックが生じるおそれがある。
【0085】
したがって、水平方向に走査する場合は、100fs以下の位相同期した超短パルスで2.0μJ以上の大きなパルスエネルギーを負荷しないと光導波路を形成することができないものと考えられる。しかしながら、この場合は、〔発明が解決しようとする課題〕項でも述べたように、たとえ光導波路を形成できたとしても長孔乃至楕円形状の光導波路しか形成することができず、所望の良好な導波路特性を有する光導波路を形成することはできない。
【0086】
図11は、本発明に係る光学部品としての波長変換素子の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【0087】
この波長変換素子21は、周期分極反転構造を有する非線形光学結晶22のZ軸(光学軸)に対し垂直な方位に光導波路23が形成されている。
【0088】
分極反転構造は、強誘電性を有する非線形光学結晶22の自発分極の方向を180°づつ交互に変換させたものであり、光閉じ込め性に優れているため反転周期長Λを選択することにより、広範囲の波長域で高いエネルギー変換効率を得ることができる。
【0089】
したがって、第1の実施の形態で詳述した方法を周期分極反転構造を有する非線形光学結晶21に適用して光導波路23を作製することにより、光導波路23の断面形状が円形状乃至略円形状であって光閉じ込め性が良好でエネルギー変換効率の高い波長変換素子を得ることができ、高効率にSHGのレーザ光を得ることができる。
【0090】
次に、この第2の実施の形態に係る光導波路22の作製方法を、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0091】
図12は、分極反転周期Λを有する非線形光学結晶22の斜視図である。
【0092】
この非線形光学結晶22は、以下のように作製することができる。
【0093】
すなわち、まず、Z−カットされた非線形光学結晶を用意し、基本波波長(例えば、1064nm)に対し室温で位相整合するように、フォトリソグラフィー技術等を使用して所定周期(例えば、7μm)毎に分極反転用電極を形成する。そして、結晶の+Z面側にプラス、−Z面側にマイナスの電位となるように高圧電源を接続し、結晶の抗電界を超える電圧を印加し、その後分極反転用電極を選択エッチングして除去し、これにより分極反転周期Λを有する非線形光学結晶22が得られる。
【0094】
次いで、図13に示すように、レーザ光24が非線形光学結晶22の分極方向であるZ軸と垂直な方位に照射されるように非線形光学結晶22を光軸上に配する。そして負のチャープ補正がなされたレーザ光を非線形光学結晶22のZ軸に対し垂直方向の最深部を集光位置とし、非線形光学結晶22を矢印X方向に移動させることによりレーザ光24を走査する。そしてこれにより第1の実施の形態と同様、円形状乃至略円形状の光導波路23を有する波長変換素子を得ることができる。
【0095】
すなわち、本第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、負のチャープ補正を行っているので、光導波路23はテーパ状に拡がることもなく、略円筒状となり、光導波路23の断面形状が円形状乃至略円形状の波長変換素子を得ることができる。
【0096】
しかも、非線形光学結晶22は周期分極反転構造を有しているので、光閉じ込め性に優れ、広範囲の波長域で高いエネルギー変換効率を得ることができる。
【0097】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、超短パルスレーザとしてTi:サファイア結晶をレーザ媒質としたフェムト秒レーザを使用しているが、超短パルスのレーザ光を出射できるものであればよく、例えば、超短パルスファイバーレーザを使用することもできる。
【0098】
また、上記実施の形態では、パルス圧縮器11をプリズム圧縮器で形成しているが、回折格子対、チャープ鏡、空間変調器等を使用してもよい。
【0099】
また、上記各実施の形態では、レーザ光を最深部から表面方向に走査しているが、表面から深さ方向にレーザ光を走査してもよい。
【0100】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0101】
〔試料の作製〕
上述した図3の製造装置を使用し、パルス圧縮器で負のチャープ補正を行い、光軸上に配されたx−カットLT基板の最深部から表面方向にレーザ光を走査し、本発明の実施例試料を作製した。
【0102】
尚、フェムト秒レーザとしては、コヒーレント社製RegA9000で再生圧縮したTiサファイアモードロックレーザを使用した。
【0103】
レーザ光の照射条件、及び対物レンズの仕様は、以下の通りである。
【0104】
〈レーザ光の照射条件〉
パルス幅:200fs
繰り返し周波数:250kHz
パルスエネルギー:0.8μJ
走査速度:100μm/s
〈対物レンズの仕様〉
倍率:10倍
開口数:0.3
次に、レーザ光の照射条件及び対物レンズの仕様を以下の通りにし、チャープ補正を行わずに、z−カットLT基板の基板表面から深さ50μmの位置に集光させて横方向(X軸方向)に走査し、比較例試料を作製した。尚、対物レンズの仕様は本発明試料と同様である。
【0105】
〈レーザ光の照射条件〉
パルス幅:64fs
繰り返し周波数:250kHz
パルスエネルギー:2.0μJ
走査速度:100μm/s
〈対物レンズの仕様〉
倍率:50倍
開口数:0.8
〔試料の評価〕
図14は光導波路特性評価装置を模式的に示した構成図である。
【0106】
この評価装置は、レーザ照射側にはレーザ光源31を光軸33a上に案内するミラー34と、レーザ光源31の出力を調整する減光フィルタ(NDフィルタ)35と、偏光方向を制御する半波長板36と、半波長板36から出力されたレーザ光を直線偏光に変換する偏光子37と、偏光子37から出力されたレーザ光の線幅を広げるエキスパンダ38と、エキスパンダ38から出力されたレーザ光を試料32に集光させる対物レンズ39とが順次配され、試料32を介してレーザ照射側と対向する光軸33b上には、対物レンズ40及びCCDカメラ41が配されている。
【0107】
そして、実施例試料及び比較例試料を試料32の位置に配し、レーザ光源31として波長633nmのHe−Neレーザを使用して試料32にレーザ光を照射し、導波路確認を行った。
【0108】
図15は実施例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像であり、図16は比較例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。図中、白色部分が光導波している部分である。
【0109】
次いで、実施例試料及び比較例試料を透過偏光顕微鏡(以下、単に「顕微鏡」という。)で撮像し、断面形状を観察した。
【0110】
図17は実施例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像であり、図18は比較例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【0111】
図16及ぶ図18から明らかなように、比較例試料は、光導波路を作製することができたものの、断面形状が楕円形状になった。
【0112】
これに対し図15及び図17から明らかなように、実施例試料は、円形状乃至略円形状の光導波路を作製できることが分かった。
【実施例2】
【0113】
パルス幅を100fs、200fs、300fsに設定して光導波路を作製した以外は、実施例1の実施例試料と同様の方法・手順で試料No.1(100fs)、試料No.(200fs)、及び試料No.3(300fs)の各実施例試料を作製した。
【0114】
次いで、実施例1と同様の評価装置(図14参照)を使用し、各試料の出射側(以下、「A面」という。)及び入射側(以下、「B面」という。)の双方から光導波を確認した。尚、この実施例2でも、実施例1と同様、レーザ光源として波長633nmのHe−Neレーザを使用した。
【0115】
図19は試料No.1のA面側、図20は試料No.1のB面側の各CCD画像である。
【0116】
同様に、図21は試料No.2のA面側、図22は試料No.2のB面側、図23は試料No.3のA面側、図24は試料No.3のB面側を示している。
【0117】
試料No.1は、図19及び図20から明らかなように、出射側であるA面の断面形状が入射側であるB面の断面形状よりも大きく、したがって入射側から出射側に架けて光導波路がテーパ状に狭くなっていることが分かった。
【0118】
また、試料No.3は、図23及び図24から明らかなように、入射側であるB面の断面形状が出射側であるA面の断面形状よりも小さく、したがって入射側から出射側に架けて光導波路はテーパ状に拡がっていることが分かった。
【0119】
これに対し試料No.2は、図21及び図22から明らかなように、A面側及びB面側の双方共、断面形状が略同一の円形形状を有する光導波路が得られた。これは実施例に使用したLT基板の場合、200fsというパルス幅が、試料のA面とB面の双方において略同径となるように整合されたパルス幅であるためと思われる。
【実施例3】
【0120】
光導波路特性確認装置(図14参照)でレーザ光源として波長1064nmのNd:YVO4レーザを使用し、実施例2の試料No.2の試料にレーザ光を照射した。
【0121】
図25はそのCCD画像であり、波長532nmのSHGのレーザ光が発生することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
断面形状が非線形光学結晶の両端部で略同径の円形乃至略円形形状の光導波路を得ることができ、SHGのレーザ光に容易かつ高効率に変換できる波長変換素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0123】
2 非線形光学結晶
2a 照射面
3 光導波路
4 フェムト秒レーザ
5 レーザ光
22 非線形光学結晶
23 光導波路
24 レーザ光
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路の製造方法、及び光学部品に関し、より詳しくはフェムト秒レーザに代表される超短パルスレーザを使用した光導波路の製造方法、及び該製造方法を使用して製造された波長変換素子等の光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非線形光学効果を利用し、固体レーザから発する所定波長のレーザ光を種々の波長に変換する波長変換技術の研究が盛んに行なわれている。この波長変換技術によれば、非線形光学結晶に光導波路を形成し、レーザ光を光導波路に透過させることにより、例えば、入射光の波長に対し出射光の波長が1/2となる第二高調波(Second Harmonic Generation;以下、「SHG」という。)のレーザ光を得ることが可能となる。ここで、非線形光学効果とは、レーザ光が媒体を導波する場合、媒体の応答がレーザ光に比例せず、非線形性を有する現象をいい、このような非線形光学効果を有する非線形光学結晶として、LiNbO3(以下、「LN」という。)やLiTaO3(以下、「LT」という。)等の異方性結晶が知られている。
【0003】
そして、この種の光導波路の作製方法としては、従来よりTi拡散法が知られている。しかしながら、このTi拡散法は、薄膜形成工程や熱拡散工程の他、フォトリソグラフィ技術等を利用して非線形光学結晶上に光導波路をパターニングしなければならず、このため製造工程が複雑であり、長時間を要し、製造コストも高くなるという欠点があった。
【0004】
そこで、最近では、上述のような複雑な製造工程が不要で、短時間での製造が可能なレーザ技術、特に超短パルスレーザを使用した作製方法が注目されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、フェムト秒レーザを使用し、フェムト秒レーザから出射されるレーザ光をLNからなる基板(以下、「LN基板」という。)の内部に集光させて光導波路を作製している。
【0006】
このフェムト秒レーザは、フェムト秒(10-15s)レベルのパルス幅を有する超短パルスのレーザ光を所定の繰り返し周波数で出力することができる。
【0007】
そして、非特許文献1では、レーザ発振器としてTi:サファイア結晶を使用し、パルスエネルギーを1mJ、繰り返し周波数を1kHz、パルス幅を35fs(フェムト秒)に設定し、LN基板にレーザ光を照射し、光導波路を作製している。
【0008】
図26は、非特許文献1に記載された光導波路の作製方法を示している。
【0009】
この非特許文献1では、LN基板101の表面から50〜150μmの深さを集光位置とし、上述のように条件設定されたフェムト秒レーザからのレーザ光102を対物レンズ103(倍率:40倍、開口数:0.65)を介して集光させ、LN基板101を矢印x方向に移動させてレーザ光を走査し、これによりLN基板101の所定位置に光導波路104を形成している。
【0010】
この非特許文献1は、レーザ光の集光位置ではレーザ光からの熱によるダメージを受けるため、前記集光位置には光導波路は形成されないが、集光位置の周囲で歪みが生じ、この歪みにより異常光線の屈折率neを増加させている。そして、ダメージを受けた部分を囲むような形態で光導波路を形成している。
【0011】
尚、この非特許文献1では、上述のように異常光線の屈折率neは増加させることができるが、常光線の屈折率noは変化しなかったことも報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Burghoff, S. Noltz, A.Tunnermann 著、「Origins of waveguiding in femtosecond laser-structured LiNbO3」、 Appl. Phys. A89, p.127-132 、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、非特許文献1では、レーザ光102をLN基板101に対し水平方向に走査して光導波路104を形成しているが、作製された光導波路104は、断面形状が長孔乃至楕円形状となり、したがって円形状乃至略円形状の導波路特性の良好な光導波路を得るのが困難な状況にあった。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶に照射した場合であっても、断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路を得ることができる光導波路の製造方法、及びこの製造方法を使用して製造された光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶の照射面に対し垂直方向に走査させることにより、光導波路の断面形状が円形状乃至略円形状になることを見出した。
【0016】
しかしながら、非線形光学結晶は屈折率分散を有し、通常は波長の短い光に対して屈折率が大きくなることから、波長の短い光は波長の長い光に比べて伝播が遅くなって位相波形が広がってしまう。そしてその結果、形成された光導波路はテーパ状に拡がってしまうという新たな問題点が発生する。
【0017】
そこで、本発明者らが更に鋭意研究を重ねた結果、非線形光学結晶の屈折率分散を考慮し、該非線形光学結晶内では短波長の波長成分を長波長の波長成分よりも伝播が速くなるようにチャープを予め補正しておくことにより、上記問題点を解消できることが分かった。
【0018】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る光導波路の製造方法は、位相の異なる複数の波長成分から超短パルスのパルス幅を有するレーザ光を生成し、前記レーザ光を光軸上に配された非線形光学結晶に所定の繰り返し周波数で照射して光導波路を形成する光導波路の製造方法において、前記複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成することを特徴としている。
【0019】
尚、本発明で、「超短パルス」とは、フェムト秒レベルのパルス幅を有するパルスをいう。
【0020】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であることを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいことを特徴としている。
【0022】
また、上述した非線形光学結晶が周期分極反転構造を有する場合は、非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位にレーザ光を照射することにより、擬似位相整合がなされて良好な光閉じ込め性を得ることができ、エネルギー変換効率の向上を図ることができる。
【0023】
すなわち、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であることを特徴としている。
【0025】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記繰り返し周波数は、200kHz以上であることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の光導波路の製造方法は、前記レーザ光の出射源が、フェムト秒レーザであることを特徴としている。
【0027】
さらに、本発明の光導波路の製造方法は、前記非線形光学結晶がLTで形成されていることを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係る光学部品は、上記いずれかに記載の製造方法を使用して製造されたことを特徴としている。
【0029】
また、本発明の光学部品は、波長変換素子であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光導波路の製造方法によれば、複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成するので、超短パルスの位相波形が広がるのを回避することができる。そしてこれにより光導波路が非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることもなく、断面形状が円形状乃至略円形状の良好な導波路特性を有する光導波路を作製することが可能となる。
【0031】
また、前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であるので、非線形光学結晶の両端部でのパルス幅が略同一となるようにチャープ補正されることとなり、非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることのない良好な導波路特性を有する光導波路を作製することができる。
【0032】
また、前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいので、非線形光学結晶内で短波長の波長成分が長波長の波長成分を追い越すような位相波形となり、略円筒状の導波路形状を有する光導波路を作製することができる。
【0033】
また、前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であるので、擬似位相整合がなされて良好な光閉じ込め性を得ることができ、エネルギー変換効率の向上を図ることができる。
【0034】
また、レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であるので、低エネルギーで光導波路を形成することができ、ダメージを受けるのを極力回避することができる。
【0035】
繰り返し周波数は、200kHz以上であるので、パルスの発生間隔も比較的長く、したがってレーザ光の照射による熱の緩和時間も長くなり、熱を効率良く蓄積させることが可能となる。
【0036】
レーザ光の出射源が、フェムト秒レーザであるので、レーザ光の射出条件を容易に調整することができ、Ti拡散法のような複雑な製造工程を要することなく、短時間でかつ安価な製造コストでもって断面形状が円形乃至略円形状の所望の光導波路を得ることができる。
【0037】
また、本発明の光学部品は、上記いずれかに記載の製造方法を使用して製造されているので、レーザ光を照射することにより、所望波長のSHGレーザ光に変換することができる波長変換素子等の光学部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る光導波路の製造方法を使用して製造された光学部品としての波長変換素子の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】上記光導波路の製造方法に使用される製造装置の一実施の形態を模式的に示した図である。
【図4】パルス圧縮器の構成の一例を模式的に示した図である。
【図5】位相同期している場合の波形図である。
【図6】非線形光学結晶の屈折率分散の一例を示す図である。
【図7】屈折率分散により位相波形に「ずれ」が生じた場合の波形図である。
【図8】チャープ補正をしなかった場合に得られる光導波路の断面図である。
【図9】負のチャープ補正をした場合の波形図、及び光導波路の断面形状を示す図である。
【図10】パルス幅が大きすぎた場合の光導波路の断面図である。
【図11】光学部品としての波長変換素子の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図12】周期分極反転構造を有する非線形光学結晶の一実施の形態を示す斜視図である。
【図13】第2の実施の形態に係る波長変換素子の製造方法を示す図である。
【図14】実施例で使用した光導波路特性評価装置を模式的に示したシステム構成図である。
【図15】実施例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。
【図16】比較例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。
【図17】実施例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【図18】比較例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【図19】試料No.1のA面側から撮像したCCD画像である。
【図20】試料No.1のB面側から撮像したCCD画像である。
【図21】試料No.2のA面側から撮像したCCD画像である。
【図22】試料No.2のB面側から撮像したCCD画像である。
【図23】試料No.3のA面側から撮像したCCD画像である。
【図24】試料No.3のB面側から撮像したCCD画像である。
【図25】試料No.2で観察されたSHGのCCD画像を示す図である。
【図26】非特許文献1に記載された光導波路の作製方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0040】
図1は本発明に係る光導波路の製造方法を使用して製造された光学部品としての波長変換素子の一実施の形態を示す斜視図であり、図2はその縦断面図である。
【0041】
すなわち、この波長変換素子1は、長さ:X、幅:Y、高さ:Zからなる直方体形状の非線形光学結晶2を有し、該非線形光学結晶2のZ方向(高さ方向)に光導波路3が貫設されている。そして、所定波長(例えば、1064nm)の固定レーザから発せられたレーザ光が非線形光学結晶2に入射されると、光導波路3からは波長が1/2(例えば、532nm)に変換されたSHGのレーザ光を出射する。
【0042】
ここで、非線形光学結晶2としては、出射光の応答が入射光に比例せずに非線形性を示し、波長が1/2に変換されて出射されるものであれば特に限定されるものではなく、例えばLT、LN、β−BaB2O4(BBO)等の一軸性結晶、LiB3O5(LBO)、KTiOPO4(KTP)等の二軸性結晶を使用することができるが、これらの非線形光学結晶2の中では熱ダメージに対する耐性が良好なLTを好んで使用することができる。
【0043】
図3は、上記光導波路3の製造に使用される製造装置の一実施の形態を模式的に示した概略図である。
【0044】
すなわち、この製造装置は、超短パルスレーザとしてのフェムト秒レーザ4と、該フェムトレーザ4から出射されるレーザ光5を非線形光学結晶2の集光位置Fに集光させる対物レンズ6とを備えている。
【0045】
フェムト秒レーザ4は、具体的には、Ti:サファイア結晶等の広帯域のレーザ媒質を内蔵した超短パルス発振器7と、該超短パルス発振器7で得られたレーザ光のパルス幅を一旦伸張するパルス伸張器8と、パルス伸張器8で伸張されたパルスを増幅するパルス増幅器9と、該パルス増幅器9を励起させる励起レーザ10と、パルス増幅器9で増幅されたパルスを前記超短パルスに圧縮するパルス圧縮器11とを主要部として備えている。
【0046】
そして、励起源(不図示)からのレーザ光(例えば、波長λが532nmのグリーン光)が超短パルス発振器7に入力されると、該超短パルス発振器7からはフェムト秒レベル(例えば、100fs)のパルス幅を有するレーザ光が出力される。すなわち、この超短パルス発振器7では、位相の異なる複数の波長成分が互いに干渉するように位相を同期させてモード間の位相をロックしながら連続発振し、各波長成分の位相が重なり合うように動作して尖鋭な超短パルスのレーザ光を生成する。
【0047】
このレーザ光は、出力エネルギーが低いため、出力エネルギーを増幅する必要があるが、レーザ光自体は、上述のようにパルス幅が超短であり、尖鋭でピーク出力が高い。したがって、このままの状態で増幅すると光路中に配された各種の光学素子が損傷するおそれがある。そこで、パルス伸張器8でレーザ光のパルス幅をピコ秒レベル(例えば、100ps)に一旦伸張して尖鋭なピーク出力を抑えた状態とし、その後、励起レーザ(例えば、波長λが532nmのグリーン光)を介して励起されたパルス増幅器9で出力エネルギーを増幅する。次いで、パルス圧縮器11では、後述する所定の処理を行ってフェムト秒レベル(例えば、200fs)の超短パルスに圧縮し、該超短パルスのレーザ光5を所定の繰り返し周波数でもってフェムト秒レーザ4から出射する。フェムト秒レーザ4から出射されたレーザ光5を、対物レンズ6を介して非線形光学結晶2の照射面2aの垂直方向の最深部2bに集光させる。そして、非線形光学結晶2を矢印Z方向に移動させることによってレーザ光5を走査させ、これにより導波路形状が略円筒状であって断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路3が作製される。
【0048】
尚、対物レンズ6は、非線形光学結晶2の矢印Z方向の各位置で連続的に集光するような集光光学系で構成され、例えば、倍率10倍以上、開口数0.3以上に設計されたレンズ群を使用することができる。
【0049】
そして、本実施の形態では、パルス圧縮器11で光波の強度変調に伴う位相波形のゆらぎ(以下、「チャープ」という。)を補正している。すなわち、非線形光学結晶2は、屈折率分散を有し、入射されるレーザ光の波長成分に応じて屈折率が変化することから、屈折率分散を考慮してパルス圧縮器11で予めチャープを補正し、これにより光導波路3の両端部が略同一径となるようしている。
【0050】
図4はパルス圧縮器11の一実施の形態としてのプリズム圧縮器を模式的に示す概念図である。
【0051】
このパルス圧縮器11は、第1のプリズム12と、該第1のプリズム12に対し、図中、上下方向の最大離間距離が「L」となるように配された第2のプリズム13と、第2のプリズム13から出射された波長成分を反射させて逆行させる第1のミラー14と、各波長成分が合成されてなる超短パルスのレーザ光を外部に出射させる第2のミラー15とを主要部として構成されている。
【0052】
このパルス圧縮器11では、パルス増幅器9からの位相の異なる複数の波長成分が第2のミラー15を直進し、第1のプリズム12に入射される。この第1のプリズム12では、レーザ光に含まれる波長成分のうち、短波長側の波長成分(以下、「短波長成分」という。)16は長波長側の波長成分(以下、「長波長成分」という。)17よりも大きく回折する。すなわち、可視光領域〜近赤外領域を透過する材料は、通常、正の屈折率分散を有しているため、波長が短くなるほど屈折率は大きく、波長が長くなるほど、屈折率は小さくなる。したがって、第1のプリズム12に入射されたレーザ光は、第1のプリズム12によって、波長成分毎に空間的に分散され、短波長成分16は長波長成分17よりも大きく回折する。その結果、短波長成分16は長波長成分17よりも光路長が長くなり、その結果、長波長成分17は短波長成分16よりも時間的に速く伝播し、第2のプリズム13に入射される。そして、第2のプリズム13内では、長波長成分17が短波長成分16よりも光路長が長くなるため、長波長成分17は短波長成分16よりも時間的に遅く伝播する。
【0053】
このように第1のプリズム12と第2のプリズム13との間では、短波長成分16は長波長成分17よりも光路長が長くなり、第2のプリズム13中では長波長成分17が短波長成分16よりも光路長が長くなるため、短波長成分16と長波長成分17との光路差が略相殺されることとなり、これによりパルス圧縮器11からは位相同期した超短パルスのレーザ光5を出射することができる。
【0054】
図5はパルス圧縮器11から出射される超短パルスの一例を示す図であり、横軸は時間t、縦軸はレーザ強度Iである。また、伝播方向Sは時間tと逆方向である。
【0055】
このようにパルス圧縮器11では、位相の異なる波長成分を重ね合わせることによって、各波長成分の位相を同期させることができ、これにより包絡線18に示すように超短パルスのレーザ光5を出射することができる。
【0056】
しかるに、非線形光学結晶2は屈折率分散を有しており、入力波長に応じて屈折率が異なることが知られている。このためフェムト秒レベル(例えば、100fs以下)の超短パルスのレーザ光を非線形光学結晶2に入射させた場合、該非線形光学結晶2内でレーザ光は再び波長分散し、位相波形が広がる。したがって、たとえ断面形状が円形状乃至略円形状の光導波路を作製することができたとしても、導波路形状がテーパ状に拡がり、好ましくない。
【0057】
図6は、非線形光学結晶2の屈折率分散の一例を示す図であり、横軸は波長、縦軸は屈折率である。
【0058】
非線形光学結晶2は、300〜1100nmの可視光〜近赤外領域では、この図6に示すように、波長が長くなると屈折率が小さくなり、波長が短くなると屈折率が大きくなる。
【0059】
このように光の波長成分に応じて屈折率が異なることから回折角度が異なり、非線形光学結晶2内で再び波長成分毎に光路が分散する。そして、各波長成分毎に光路長が異なることとなるため、波長成分に応じて伝播状態も異なる。
【0060】
すなわち、短波長成分の場合は屈折率が大きいので、長波長成分よりも伝播が遅くなり、一方、長波長成分の場合は屈折率が小さいので、短波長成分よりも伝播が遅くなり、その結果、同期した位相波形に「ずれ」が生じることとなる。
【0061】
図7は屈折率分散により位相波形に「ずれ」が生じた場合の波形図であり、横軸が時間t、縦軸はレーザ強度I、時間軸と逆方向が伝播方向Sを示している。
【0062】
この図7のA部及びA′部に示すように、長波長成分が短波長成分に比べて先行して伝播し、一方短波長成分は長波長成分に比べて遅れて伝播するため、位相波形が広がり、包絡線19に示すようにパルス幅は大きくなる。
【0063】
しかも、この位相波形の広がりは、レーザ光5が非線形光学結晶2内を進行するに伴い、大きくなることからパルス幅の広がりが助長され、このため図8に示すように、光導波路3′がテーパ状に拡がってしまい、光導波路3′にクラック等の損傷が発生する原因にもなる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、非線形光学結晶2内では短波長成分の光が長波長成分の光よりも伝播が速くなるようにチャープを補正している。
【0065】
尚、このように短波長成分が長波長成分よりも伝播が速くなるようなチャープ補正を負のチャープ補正といい、長波長成分が短波長成分よりも伝播が速くなるようなチャープ補正を正のチャープ補正という。したがって、本実施の形態では、負のチャープ補正を行い、これにより光導波路3がテーパ状に拡がるのを回避している。
【0066】
そして、このような負のチャープ補正は、例えば第2のプリズム13内の光路長を短波長成分16が長波長成分17よりも短くなるようにすればよく、レンズ収差等を考慮しつつ、最大離間距離Lを調整したり、プリズムの回転角度を調整することにより行うことができる。
【0067】
図9は、負のチャープ補正をした場合のレーザ光の位相波形と導波路形状との関係を示す断面図である。(a)はレーザ光の位相波形を示し、各(i)〜(v)は、横軸が時間t、縦軸がレーザ強度I、時間軸と逆方向が伝播方向Sを示している。また(b)は導波路形状を示し、図(a)の(i)〜(v)が、図(b)の各点(i)〜(v)に対応している。
【0068】
(i)では非線形光学結晶2の屈折率分散の影響により、B部及びB′部に示すように、長波長成分が短波長成分に先行して伝播し、短波長成分は長波長成分に比べて遅れて伝播している。そして、負のチャープ補正をしているので、(ii)ではC部及びC′部に示すように、長波長成分と短波長成分との伝播状態の差は小さくなり、(iii)では長波長成分と短波長成分との伝播状態はほぼ同一となってパルス幅も最小となっている。そして、(iv)ではD部及びD′部に示すように、短波長成分の伝播が長波長成分の伝播を追い越して短波長成分が長波長成分に先行し始めている。そして、(v)ではE部及びE′部に示すように、短波長成分が長波長成分に完全に先行して伝播し、(i)と略反対称の位相波形となる。
【0069】
そして、このように負のチャープ補正を行うことにより、点(i)と点(v)とではパルス幅が同一乃至略同一となり、点(iii)では点(i)や点(v)よりもパルス幅は小さくなり、結果として略円筒状の光導波路3を得ることができる。
【0070】
尚、入射されるレーザ光のパルス幅は、光導波路3の両端部で導波路径が同一乃至略同一となるように、非線形光学結晶2の特性に応じて決定される。すなわち、パルス幅が大きすぎると、負のチャープ補正をしても、図8と同様、出射側のパルス幅が広がってしまい、このため導波路径3′がテーパ状に拡がるおそれがある。
【0071】
一方、パルス幅が小さすぎると、負のチャープ補正をしても、図10に示すように、出射側のパルス幅を入射側と同等にすることができなくなり、導波路径3″がテーパ状に狭くなってしまうおそれがある。
【0072】
このようにパルス幅は、負のチャープ補正を行った場合に導波路径が光導波路3の両端部で同一乃至略同一となるように決定される。
【0073】
また、本実施の形態では、フェムト秒レーザ4から出射される超短パルスのパルスエネルギーは、1.5μJ以下に設定される。これは、パルスエネルギーが1.5μJを超えると、熱エネルギーが大きくなって熱損傷を招くおそれがあるからである。ただし、パルスエネルギーが0.1μJ未満になると、非線形光学結晶2に十分なエネルギーが付与されず、光導波路3を形成するのが困難となる。
【0074】
また、繰り返し周波数は、集光位置Fがダメージを受けることなく所望の歪みを形成することができ、かつ所望の熱蓄積なされるように、所定の繰り返し周波数を設定する必要があり、好ましくは200kHz以上に設定される。
【0075】
すなわち、繰り返し周波数が200kHz未満、例えば、非特許文献1のように1kHzと低い場合は、パルス形状は尖鋭でしかもレーザ強度Iは非常に大きくなるため、非線形光学結晶2は集光位置Fでの熱によるダメージを受けやすく、好ましくない。
【0076】
尚、繰り返し周波数の上限は特に限定されるものではないが、実用的には800kHz以下が好ましい。
【0077】
このように本実施の形態の光導波路の製造方法によれば、複数の波長成分のうち、短波長成分16を長波長成分17よりも非線形光学結晶2内での伝播が速くなるように、非線形光学結晶2の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、レーザ光5を非線形光学結晶2の照射面2aに対して垂直方向に最深部からZ方向に走査し、非線形光学結晶2に光導波路3を形成するので、超短パルスの位相波形が広がるのを回避することができる。そしてこれにより光導波路が非線形光学結晶内でテーパ状に拡がることもなく、断面形状が円形状乃至略円形状の良好な導波路特性を有する光導波路を作製することが可能となる。
【0078】
また、光導波路3の導波路径は、レーザ光5走査される非線形光学結晶2の両端部で略同一であるので、非線形光学結晶2の両端部でのパルス幅が略同一となるようにチャープ補正されることとなり、非線形光学結晶2内でテーパ状に拡がることのない良好な導波路特性を有する光導波路3を作製することができる。
【0079】
また、非線形光学結晶2の両端部に集光するレーザ光5のパルス幅は、非線形光学結晶5の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいので、上述したように非線形光学結晶2内で短波長成分が長波長成分を追い越すような位相波形となり、略円筒状の導波路形状を有する光導波路3を作製することができる。
【0080】
また、レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であるので、低エネルギーで光導波路を形成することができ、非線形光学結晶2が熱によりダメージを受けるのを極力回避することができる。
【0081】
また、繰り返し周波数は、200kHz以上であるので、パルスの発生間隔が比較的長くなってレーザ項の照射による熱の緩和時間も長くなり、熱を効率良く蓄積させることが可能となる。
【0082】
さらに、前記レーザ光5の出射源が、フェムト秒レーザであるので、レーザ光の射出条件を容易に制御することができ、Ti拡散法のような複雑な製造工程を要することなく、短時間で安価な製造コストでもって所望の光導波路を得ることができる。
【0083】
尚、上記実施の形態では、レーザ光5を照射面2aに対して垂直方向に照射しているが、水平方向に照射した場合はチャープ補正をしても上述したような円形状乃至略略円形状の光導波路を作製するのは困難である。その理由は以下のように推察される。
【0084】
対物レンズ6から出射したレーザ光は、焦点に集光するが、集光した部分は「点」ではなく鼓状を形成するため、焦点におけるエネルギー分布も楕円形状を有すると考えられる。したがって、レーザ光に対して水平方向に走査する場合は、上述のようなチャープ補正をしても円形状乃至略円形状の光導波路を得ることができないばかりか、チャープ補正してパルス幅を広げた場合は、光導波路にクラックが生じるおそれがある。
【0085】
したがって、水平方向に走査する場合は、100fs以下の位相同期した超短パルスで2.0μJ以上の大きなパルスエネルギーを負荷しないと光導波路を形成することができないものと考えられる。しかしながら、この場合は、〔発明が解決しようとする課題〕項でも述べたように、たとえ光導波路を形成できたとしても長孔乃至楕円形状の光導波路しか形成することができず、所望の良好な導波路特性を有する光導波路を形成することはできない。
【0086】
図11は、本発明に係る光学部品としての波長変換素子の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【0087】
この波長変換素子21は、周期分極反転構造を有する非線形光学結晶22のZ軸(光学軸)に対し垂直な方位に光導波路23が形成されている。
【0088】
分極反転構造は、強誘電性を有する非線形光学結晶22の自発分極の方向を180°づつ交互に変換させたものであり、光閉じ込め性に優れているため反転周期長Λを選択することにより、広範囲の波長域で高いエネルギー変換効率を得ることができる。
【0089】
したがって、第1の実施の形態で詳述した方法を周期分極反転構造を有する非線形光学結晶21に適用して光導波路23を作製することにより、光導波路23の断面形状が円形状乃至略円形状であって光閉じ込め性が良好でエネルギー変換効率の高い波長変換素子を得ることができ、高効率にSHGのレーザ光を得ることができる。
【0090】
次に、この第2の実施の形態に係る光導波路22の作製方法を、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0091】
図12は、分極反転周期Λを有する非線形光学結晶22の斜視図である。
【0092】
この非線形光学結晶22は、以下のように作製することができる。
【0093】
すなわち、まず、Z−カットされた非線形光学結晶を用意し、基本波波長(例えば、1064nm)に対し室温で位相整合するように、フォトリソグラフィー技術等を使用して所定周期(例えば、7μm)毎に分極反転用電極を形成する。そして、結晶の+Z面側にプラス、−Z面側にマイナスの電位となるように高圧電源を接続し、結晶の抗電界を超える電圧を印加し、その後分極反転用電極を選択エッチングして除去し、これにより分極反転周期Λを有する非線形光学結晶22が得られる。
【0094】
次いで、図13に示すように、レーザ光24が非線形光学結晶22の分極方向であるZ軸と垂直な方位に照射されるように非線形光学結晶22を光軸上に配する。そして負のチャープ補正がなされたレーザ光を非線形光学結晶22のZ軸に対し垂直方向の最深部を集光位置とし、非線形光学結晶22を矢印X方向に移動させることによりレーザ光24を走査する。そしてこれにより第1の実施の形態と同様、円形状乃至略円形状の光導波路23を有する波長変換素子を得ることができる。
【0095】
すなわち、本第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、負のチャープ補正を行っているので、光導波路23はテーパ状に拡がることもなく、略円筒状となり、光導波路23の断面形状が円形状乃至略円形状の波長変換素子を得ることができる。
【0096】
しかも、非線形光学結晶22は周期分極反転構造を有しているので、光閉じ込め性に優れ、広範囲の波長域で高いエネルギー変換効率を得ることができる。
【0097】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、超短パルスレーザとしてTi:サファイア結晶をレーザ媒質としたフェムト秒レーザを使用しているが、超短パルスのレーザ光を出射できるものであればよく、例えば、超短パルスファイバーレーザを使用することもできる。
【0098】
また、上記実施の形態では、パルス圧縮器11をプリズム圧縮器で形成しているが、回折格子対、チャープ鏡、空間変調器等を使用してもよい。
【0099】
また、上記各実施の形態では、レーザ光を最深部から表面方向に走査しているが、表面から深さ方向にレーザ光を走査してもよい。
【0100】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0101】
〔試料の作製〕
上述した図3の製造装置を使用し、パルス圧縮器で負のチャープ補正を行い、光軸上に配されたx−カットLT基板の最深部から表面方向にレーザ光を走査し、本発明の実施例試料を作製した。
【0102】
尚、フェムト秒レーザとしては、コヒーレント社製RegA9000で再生圧縮したTiサファイアモードロックレーザを使用した。
【0103】
レーザ光の照射条件、及び対物レンズの仕様は、以下の通りである。
【0104】
〈レーザ光の照射条件〉
パルス幅:200fs
繰り返し周波数:250kHz
パルスエネルギー:0.8μJ
走査速度:100μm/s
〈対物レンズの仕様〉
倍率:10倍
開口数:0.3
次に、レーザ光の照射条件及び対物レンズの仕様を以下の通りにし、チャープ補正を行わずに、z−カットLT基板の基板表面から深さ50μmの位置に集光させて横方向(X軸方向)に走査し、比較例試料を作製した。尚、対物レンズの仕様は本発明試料と同様である。
【0105】
〈レーザ光の照射条件〉
パルス幅:64fs
繰り返し周波数:250kHz
パルスエネルギー:2.0μJ
走査速度:100μm/s
〈対物レンズの仕様〉
倍率:50倍
開口数:0.8
〔試料の評価〕
図14は光導波路特性評価装置を模式的に示した構成図である。
【0106】
この評価装置は、レーザ照射側にはレーザ光源31を光軸33a上に案内するミラー34と、レーザ光源31の出力を調整する減光フィルタ(NDフィルタ)35と、偏光方向を制御する半波長板36と、半波長板36から出力されたレーザ光を直線偏光に変換する偏光子37と、偏光子37から出力されたレーザ光の線幅を広げるエキスパンダ38と、エキスパンダ38から出力されたレーザ光を試料32に集光させる対物レンズ39とが順次配され、試料32を介してレーザ照射側と対向する光軸33b上には、対物レンズ40及びCCDカメラ41が配されている。
【0107】
そして、実施例試料及び比較例試料を試料32の位置に配し、レーザ光源31として波長633nmのHe−Neレーザを使用して試料32にレーザ光を照射し、導波路確認を行った。
【0108】
図15は実施例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像であり、図16は比較例試料の光導波路の断面形状を示すCCD画像である。図中、白色部分が光導波している部分である。
【0109】
次いで、実施例試料及び比較例試料を透過偏光顕微鏡(以下、単に「顕微鏡」という。)で撮像し、断面形状を観察した。
【0110】
図17は実施例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像であり、図18は比較例試料の光導波路の断面形状を示す顕微鏡画像である。
【0111】
図16及ぶ図18から明らかなように、比較例試料は、光導波路を作製することができたものの、断面形状が楕円形状になった。
【0112】
これに対し図15及び図17から明らかなように、実施例試料は、円形状乃至略円形状の光導波路を作製できることが分かった。
【実施例2】
【0113】
パルス幅を100fs、200fs、300fsに設定して光導波路を作製した以外は、実施例1の実施例試料と同様の方法・手順で試料No.1(100fs)、試料No.(200fs)、及び試料No.3(300fs)の各実施例試料を作製した。
【0114】
次いで、実施例1と同様の評価装置(図14参照)を使用し、各試料の出射側(以下、「A面」という。)及び入射側(以下、「B面」という。)の双方から光導波を確認した。尚、この実施例2でも、実施例1と同様、レーザ光源として波長633nmのHe−Neレーザを使用した。
【0115】
図19は試料No.1のA面側、図20は試料No.1のB面側の各CCD画像である。
【0116】
同様に、図21は試料No.2のA面側、図22は試料No.2のB面側、図23は試料No.3のA面側、図24は試料No.3のB面側を示している。
【0117】
試料No.1は、図19及び図20から明らかなように、出射側であるA面の断面形状が入射側であるB面の断面形状よりも大きく、したがって入射側から出射側に架けて光導波路がテーパ状に狭くなっていることが分かった。
【0118】
また、試料No.3は、図23及び図24から明らかなように、入射側であるB面の断面形状が出射側であるA面の断面形状よりも小さく、したがって入射側から出射側に架けて光導波路はテーパ状に拡がっていることが分かった。
【0119】
これに対し試料No.2は、図21及び図22から明らかなように、A面側及びB面側の双方共、断面形状が略同一の円形形状を有する光導波路が得られた。これは実施例に使用したLT基板の場合、200fsというパルス幅が、試料のA面とB面の双方において略同径となるように整合されたパルス幅であるためと思われる。
【実施例3】
【0120】
光導波路特性確認装置(図14参照)でレーザ光源として波長1064nmのNd:YVO4レーザを使用し、実施例2の試料No.2の試料にレーザ光を照射した。
【0121】
図25はそのCCD画像であり、波長532nmのSHGのレーザ光が発生することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
断面形状が非線形光学結晶の両端部で略同径の円形乃至略円形形状の光導波路を得ることができ、SHGのレーザ光に容易かつ高効率に変換できる波長変換素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0123】
2 非線形光学結晶
2a 照射面
3 光導波路
4 フェムト秒レーザ
5 レーザ光
22 非線形光学結晶
23 光導波路
24 レーザ光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相の異なる複数の波長成分から超短パルスのパルス幅を有するレーザ光を生成し、前記レーザ光を光軸上に配された非線形光学結晶に所定の繰り返し周波数で照射して光導波路を形成する光導波路の製造方法において、
前記複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、
前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であることを特徴とする請求項1記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記繰り返し周波数は、200kHz以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ光の出射源は、フェムト秒レーザであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記非線形光学結晶は、LiTaO3で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の製造方法を使用して製造されたことを特徴とする光学部品。
【請求項10】
波長変換素子であることを特徴とする請求項9記載の光学部品。
【請求項1】
位相の異なる複数の波長成分から超短パルスのパルス幅を有するレーザ光を生成し、前記レーザ光を光軸上に配された非線形光学結晶に所定の繰り返し周波数で照射して光導波路を形成する光導波路の製造方法において、
前記複数の波長成分のうち、短波長側の波長成分を長波長側の波長成分よりも前記非線形光学結晶内での伝播が速くなるように、前記非線形光学結晶の有する屈折率分散に基づいてチャープを補正し、
前記レーザ光を前記非線形光学結晶の照射面に対して垂直方向に走査し、前記非線形光学結晶に光導波路を形成することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記光導波路の導波路径は、前記レーザ光が走査される前記非線形光学結晶の両端部で略同一であることを特徴とする請求項1記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記非線形光学結晶の両端部に集光するレーザ光のパルス幅は、前記非線形光学結晶の中央部に集光するレーザ光のパルス幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記非線形光学結晶が周期分極反転構造を有すると共に、前記照射面は、前記非線形光学結晶のZ軸に対し垂直な方位であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光が出射するパルスエネルギーは、1.5μJ以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記繰り返し周波数は、200kHz以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ光の出射源は、フェムト秒レーザであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記非線形光学結晶は、LiTaO3で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の製造方法を使用して製造されたことを特徴とする光学部品。
【請求項10】
波長変換素子であることを特徴とする請求項9記載の光学部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−170287(P2011−170287A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36539(P2010−36539)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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