説明

光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びに光・電気混載基板

【課題】 既存のアルカリ現像設備で容易にパターン形成でき、耐衝撃性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れることらソルダーレジストとしても利用可能であり、かつ光損失が少なく種々の光集積回路または光配線板に利用できる光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びに光・電気混載基板を提供する。
【解決手段】 (A)酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000であるカルボキシル基含有の線状ポリマー、(B)反応性希釈剤、(C)光重合開始剤、及び(D)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する組成物であり、好ましくは前記エポキシ樹脂(D)が、芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が3,000以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料を用いた光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、既存のアルカリ現像設備で容易にパターン形成でき、耐衝撃性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れることからソルダーレジストとしても利用可能であり、かつ光損失が少なく種々の光集積回路または光配線板に利用できる光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びに光・電気混載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より高速処理が行えるコンピュータを作るために、CPUのクロック周波数は益々増大する傾向にあり、現在では1GHzオーダーを超えるものが出現するに至っている。この結果、コンピュータの中のプリント基板上の銅による電気配線には高周波電流が流れる部分が存在することになるので、ノイズの発生により誤動作が生じたり、また電磁波が発生して周囲に悪影響を与えることが問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、プリント基板上の銅による電気配線の一部を光ファイバーまたは光導波路による光配線に置き換え、電気信号の代わりに光信号を利用することが行われている。
【0004】
高密度実装または小型化の観点からは、電気配線と光配線とが同一の基板上で積み重なっている光・電気混載基板を作ることが望ましいことから、たとえば、電気配線基板上に光ファイバーを絶縁膜にて固定させた基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、光配線として光ファイバーを用いる場合、その屈曲性の限界から、複雑な形状の光配線には対応しきれず、設計の自由度が低くなってしまい、高密度配線あるいは基板の小型化に対応できないという問題がある。
【0005】
このため、電気配線基板の上に光配線として、コア組成とクラッド組成の屈折率差を利用し、光を伝搬させる、いわゆる光導波路を用いた光・電気混載基板の構成がいくつか提案されている。これまで、安価な材料を用いて簡便な作製法が選択できる高分子導波路の検討が多数行われている。例えば、ポリスチレン等の透明性の優れた高分子材料をコアとし、コア材料より屈折率の低い高分子材料をクラッドとした光導波路材料が作製されている(例えば、特許文献2参照)が、耐熱性不足といった欠点が指摘されている。これに対し、耐熱性の高いポリイミド類を用いた低損失、高耐熱の光導波路材料が実現されている(例えば、特許文献3参照)。しかしこれらの方法は、クラッド層の表面にコア構造を形成する際、一枚毎にフォトレジストを用いたコアパターンの形成や反応性イオンエッチングによる凹凸加工が必要であり、生産性や低価格化で問題があった。
【0006】
また、半導体プロセスを用いる方法の適用や感光性高分子あるいはレジストを用いる方法を挙げることができる。特に感光性高分子を用いてコアを形成して導波路を作製する方法は、パターンフィルムを通して紫外線を照射し、パターン形成する方法等が行われ、その作製方法が簡便で低価格化に適している。
【0007】
このようなことから、エチレン性不飽和基含有カルボン酸樹脂を用いたアルカリ現像型の光導波路用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)が、熱硬化性成分を必須としていないため、十分な耐熱性が得られず、更に耐衝撃性、耐溶剤性、耐薬品性に劣るという問題がある。
また、カルボキシル基を有する重合体と重合性反応基を有する化合物及びカチオン重合開始剤を含む光導波路用放射線硬化性樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献5参照)が、カチオン重合性であるため、十分な密着性、電気絶縁性が得られないという問題がある。
【0008】
更に、屈折率変換材料を使用し、紫外線露光することにより露光部位の屈折率を変化させるフォトブリーチング法もまた実現されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、コアおよびクラッド部の屈折率制御が容易でなく、所望とするコア−クラッド間の屈折率差を安定して確保することは困難である。更に、光・電気混載基板として利用するにはあまりにも高温(350℃以上)を必要とする。
従って、優れた特性を有し、安価で加工性の優れた光導波路材料は、未だ無いのが現状である。
【特許文献1】特開平3−29905号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平2−181103号公報(第5−6欄)
【特許文献3】特開平6−265738号公報(第3−5頁、第1図)
【特許文献4】特開2003−149475号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2003−195079号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2004−12635号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光導波路材料用樹脂組成物として、組成の非相溶による屈折率の不均一から生じる白濁、濁りが無く、均一な屈折率分布を有する光導波路材料を提供すること、更に、既存のアルカリ現像設備で容易にパターン形成でき、耐衝撃性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れることからソルダーレジストとしても利用可能であり、かつ光損失が少なく種々の光集積回路または光配線板に利用できる光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びに光・電気混載基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の基本的な態様としては、(A)酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000であるカルボキシル基含有の線状ポリマー、(B)反応性希釈剤、(C)光重合開始剤、及び(D)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する組成物が、既存のアルカリ現像設備で容易にパターン形成でき、耐衝撃性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れることらソルダーレジストとしても利用可能であり、さらに樹脂組成を変えることにより屈折率を自由に、かつ容易に制御でき、光導波路材料として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000であるカルボキシル基含有の線状ポリマー(A)、反応性希釈剤(B)、及び光重合開始剤(C)からなる組成物が、活性エネルギー線照射後、希アルカリ水溶液で現像することにより、容易にパターン形成でき、さらに一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(D)で熱硬化することにより、優れた光学特性を有したまま、耐衝撃性に優れた硬化物を提供することができる。好適な態様においては、前記エポキシ樹脂(D)が、芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が3,000以下であることにより、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)と共に配合した時、分離・白濁すること無く透明性に優れ、かつ耐熱性、密着性、電気絶縁性等にも優れ、光導波路用樹脂組成物として有用な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物であることを見出し、さらに均一に配合された組成物の硬化塗膜が、光透過性や均一な屈折率分布等を有することから、光学特性にも優れたものになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
また、他の態様としては、上記光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物が、弾性率、線膨張係数、ガラス転移温度の調整が容易なことを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、上記光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物から形成されてなる光・電気混載基板型プリント配線板が提供される。即ち、上記光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、光導波路コア層及び/又は光導波路クラッド層、さらにソルダーレジスト層に適用した光・電気混載基板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、既存の設備で容易にパターン形成でき、耐衝撃性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れ、かつ光損失が少なく、均一な屈折率となることから、低価格で光導波路クラッド層及び光導波路コア層が形成できる。
さらに、無機充填剤、特にナノ粒径の充填剤を用いることにより、従来使用されている充填剤と同等の特性向上効果を有し、更に光導波路材料としても光透過性等の光学特性を低下することが無く、弾性率、ガラス転移温度、線膨張係数といった物性を調節することも可能になる。すなわち、耐熱性、リフロー耐性、耐溶剤性、耐薬品性を有する光導波路、及びソルダーレジストに適用可能な組成物が提供でき、更に、光・電気混載基板を安価で、かつ生産性良く提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、(A)酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000であるカルボキシル基含有の線状ポリマー、(B)反応性希釈剤、(C)光重合開始剤、及び(D)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有しており、樹脂組成を変えることにより屈折率を自由に、かつ容易に制御できる。また、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)を含有していることにより、未露光部を希アルカリ水溶液により除去することができ、更に、前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(D)を含有していることにより、熱硬化後、耐衝撃性、平坦性に極めて優れ、かつソルダーレジスト層としての特性を有した硬化物を与えることが可能となる。
以下、本発明に係る光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の各構成成分について、詳細を説明する。
【0014】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に用いられる前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)としては、分子中にカルボキシル基を含有している酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000である公知慣用の線状ポリマーが使用できる。更に分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有の感光性線状ポリマー(A’)が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。
具体的には、下記に列挙するような樹脂が挙げられる。
【0015】
(1)不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合によって得られるカルボキシル基含有の線状ポリマー、
(2)不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、部分的にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有の感光性線状ポリマー、
(3)一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した第二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有の感光性線状ポリマー、
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、一分子中に水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有の感光性線状ポリマー、
(5)二官能エポキシ樹脂に、ジカルボン酸又は二官能フェノール化合物を反応させて得られる二級水酸基含有の線状ポリマーに、さらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有の線状ポリマー、
(6)二官能オキセタン化合物に、ジカルボン酸又は二官能フェノール化合物を反応させて得られる二級水酸基含有の線状ポリマーに、さらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有の線状ポリマー、及び
(7)二官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させて得られるジオール化合物と四塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有の感光性線状ポリマー などが挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
これら線状ポリマーの中で、主鎖に芳香環の無い上記(1)〜(4)の共重合系の線状ポリマーは、黄変等による光吸収を起こすことがなく、好適に用いることができる。
【0016】
上記のようなカルボキシル基含有の線状ポリマー(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になり、また線状であるため、強靭な硬化物を得易くなる。
このようなカルボキシル基含有の線状ポリマー(A)の酸価は、40〜250mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは80〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有の線状ポリマーの酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、250mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
また、このようなカルボキシル基含有の線状ポリマー(A)の重量平均分子量は、2,000〜50,000、好ましくは、5,000〜20,000の範囲が望ましい。重量平均分子量が、2,000未満の場合、塗膜の指触乾燥性が低下し、硬化物の耐衝撃性が得られ難くなるので好ましくない。一方、重量平均分子量が、50,000を越えた場合、現像性が低下するので好ましくない。
上記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明において使用される反応性希釈剤(B)としては、光硬化して、上記カルボキシル基含有樹脂を希アルカリ水溶液に対して不溶化するために使用するものである。その代表的なものとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0018】
これらの反応性希釈剤(B)の配合量としては、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、特に好ましくは5〜50質量部である。(B)成分が5質量部未満の場合、十分な硬化性が得られない。一方、100部以上となった場合、乾燥塗膜の指触乾燥性が悪化したり、物性が非常に劣ったものとなる。
【0019】
本発明において使用される光重合開始剤(C)としては、光重合性組成物において一般的に使用されている光重合開始剤が使用できる。その代表的なものとしては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
これらの光重合開始剤(C)の配合量は、全組成物中に、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。前記配合量が組成物全体量の0.2質量%未満の場合、光硬化性が低下し、露光・現像後のパターン形成が困難になるので好ましくない。一方、10質量%を超えた場合、光ラジカル重合開始剤自体の光吸収により、厚膜硬化性の低下、更には光伝送損失に悪影響を及ぼす可能性を有し、またコスト高の原因となるので好ましくない。
【0021】
本発明において使用されるエポキシ樹脂(D)としては、公知慣用のエポキシ樹脂が使用できるが、光導波路用組成物として用いる場合、二官能エポキシ樹脂、又は芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が2,000以下であるエポキシ樹脂が、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)と配合した時、分離・白濁すること無く透明性に優れた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を与えることができる。特に、芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が3,000以下であるエポキシ樹脂は、耐熱性にも優れており、好ましく用いることができる。
【0022】
このような芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が3,000以下であるエポキシ樹脂(D)としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例:ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウ・ケミカル社製のDEN−431、DEN−438、日本化薬社製のRE−306等)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例:日本化薬社製のEOCN−100、EOCN−102S等)、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(例:日本化薬社製のEPPN−501H、EPPN−502H、ダウ・ケミカル社製のTACTIX742、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1032S50等)、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂(例:ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1031S等)、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂(例:ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート157S70等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例:三菱瓦斯化学社製のTETRAD−X、TETRAD−C等)、複素環含有エポキシ樹脂(例:ナガセ化成工業社製のデナコール EX−301等)などが挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
これらエポキシ樹脂(D)は、熱硬化することにより光導波路塗膜の密着性、耐熱性、電気絶縁性を向上させる。エポキシ樹脂(D)の配合割合としては、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)のカルボキシル基1当量に対して、0.5〜2.0当量であり、好ましくは0.8〜1.6当量の割合である。エポキシ成分の配合割合が、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、0.5当量未満の場合、硬化塗膜の架橋密度が低下し、はんだ耐熱性やリフロー耐性が低くなりやすい。一方、2.0当量を超えると乾燥塗膜の現像性が非常に劣ったものとなる。
【0024】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の線膨張係数を調整したり、耐熱性等の塗膜特性を向上させるために、無機充填剤(E)を配合することができる。このような無機充填剤(E)としては、公知慣用の充填剤、例えば結晶性シリカ、溶融シリカ、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、アスベスト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華、酸化チタン等の無機顔料などが挙げられる。
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジスト及び光導波路用材料として使用可能であるが、ソルダーレジストとして用いる場合、前記無機充填剤(E)の平均粒径は、一般的なソルダーレジストの膜厚から、20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
一方、光導波路用材料に用いる場合、一般的に光導波路に用いられる波長が850nm,1300nm,1550nmであることから、無機充填剤(E)の平均粒径は、800nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは100nm以下であり、かつ最大粒径が850nm以下であることが、光導波路の透過性が増し、光損失が少なくなるので好ましい。
【0025】
このように光導波路材料として用いられる微細な無機充填剤(E)としては、前記反応性希釈剤(B)にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)、XP21/1442、XP21/1500、XP21/1306、XP21/0778、XP21/0568、XP21/1192、XP21/1364、XP21/1425、XP21/0940、XP21/1465、XP21/0638、XP21/0568、XP21/1471、XP21/0930、XP21/0528、XP21/1468、XP21/0687、XP21/1515、XP21/1472、XP21/0942、XP21/1447、XP21/1481(何れも試作品グレード名)などが挙げられる。
また、同様に、前記エポキシ樹脂(D)にナノシリカを分散したものの具体例としては、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)、XP22/0543、XP22/0531、XP22/0540(何れも試作品グレード名)などが挙げられる。
さらに、後述の有機溶剤にナノシリカを分散した日産化学工業社製のオルガノシリカゾル PMA−ST(商品名)などを使用することもできる。
このような前記反応性希釈剤(B)や前記エポキシ樹脂(D)に分散された無機充填剤(E)は、原料保管中に無機充填剤(E)が二次凝集することが少なく、樹脂組成物中に、均一にし分散させることができるので、好ましく用いることができる。
【0026】
これら無機充填剤成分の配合割合は、前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)100質量部に対して、0〜200質量部が適当であり、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜50質量部である。充填剤成分の配合割合が、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、200質量部を超えた場合、組成物の塗布性や流動性が得られなかったり、硬化物の平滑性が得られなくなるので好ましくない。
【0027】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために、さらに有機溶剤(F)を用いることができ、これには例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等の消泡剤;シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤等の分散剤;三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)およびその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)とその誘導体、メラミンとその誘導体、グアナミンとその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミンの塩等の潜在性硬化剤;アセチルアセナートZn、アセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7およびその2−エチルヘキサン酸塩およびフェノール塩、イミダゾール、イミダゾリウム塩、トリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤;オキサゾリン基含有ポリマーなどの高分子相溶化剤などの添加剤を配合することができる。これら添加剤は、単独または組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、例えば、塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性光線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(D)のエポキシ基が反応し、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐吸湿性、PCT耐性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0030】
ここで、塗膜を光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプが適当である。その他、レーザー光源などもダイレクト・イメージング工法を利用して露光用活性光源として直接描画することができる。
また、上記現像に用いられる希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用でき、特に、炭酸ナトリウムが好ましい。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」及び「質量%」を表わす。
〈合成例1〉
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットル容セパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル900g、およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート[日本油脂(株)製パーブチルO]21.4gを仕込み、90℃に昇温後、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、ラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1]109.8gをビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート[日本油脂(株)製パーロイルTCP]21.4gと共にジエチレングリコールジメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに6時間熟成することによってカルボキシル基を有するビニル共重合体溶液を得た。反応は窒素雰囲気下で行った。
【0032】
次に上記ビニル共重合体溶液に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート
[ダイセル化学(株)製サイクロマーA200]363.9g、ジメチルベンジルアミン3.6g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分酸価=108.9mgKOH/g、重量平均分子量=25,000(スチレン換算)のカルボキシル基含有の感光性線状ポリマーを、53.8wt%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA−1ワニスと称す。
【0033】
〈合成例2〉
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットル容セパラブルフラスコに、カルビトールアセテート760g、およびアゾビスイソブチロニトリル7.4gを仕込み、60℃に昇温後、メタクリル酸180.6g、メタクリル酸メチル290.0g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.0gの混合溶液を、3時間かけて滴下し、さらに2時間、60℃で重合を行った。この反応溶液を、徐々に110℃まで加熱し、未反応のアゾビスイソブチロニトリルを分解した。この反応溶液を、約80℃まで冷却後、トリフェニルホスフィン2.0gを加え、ブチルグリシシルエーテル260gを2時間かけて滴下し、その後さらに、6時間付加反応を行った。この反応溶液に、ヘキサヒドロ無水フタル酸208gを加え、赤外吸光分析で、酸無水物の吸収である1780cm−1の吸収が無くなるまで、約6時間反応させ、カルボキシル基含有の線状ポリマー溶液を得た。このようにして、固形分酸価=86.2mgKOH/g、重量平均分子量=34,000のカルボキシル基含有の線状ポリマーを、55.3wt%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA−2ワニスと称す。
【0034】
〈比較合成例〉
温度計、撹拌器、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量=210)210gとカルビトールアセテート96.4gを量り取り、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてトリフェニルホスフィン2.0gを加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、酸価が3.0mgKOH/g以下になるまで、約16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物76.1gを加え、赤外吸光分析により、酸無水物の吸収ピーク(1780cm−1)が無くなるまで、約6時間反応させた。この反応液に、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 96.4gを加え、希釈した後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有の感光性ポリマー溶液は、不揮発分=65wt%、固形物の酸価78mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をR−1ワニスと称す。
【0035】
〈予備試験:相溶性の確認〉
上記合成例1,2及び比較合成例で得られたカルボキシル基含有ポリマーと、市販のカルボキシル基含有の線状ポリマー(ジョンソンポリマー社製のジョンクリル 67(商品名)に対して、種々のエポキシ樹脂を添加して、相溶性を以下のように評価した。その結果を、表1に示した。
尚、表中のエポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により求めた。
○;白濁せずに混ざる。
△;若干の白濁が見られる。
×;完全に白濁する。
【0036】
【表1】


上記のように、線状ポリマーを溶かしている有機溶剤の影響もあるが、多官能エポキシ樹脂の場合、重量平均分子量が大きくなるに従い、線状ポリマーとの相溶性が低下していく傾向がある。
【0037】
〈実施例1〉 光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物(P−1)の調整
下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物(P−1)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

A−1ワニス 100.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
DEN−431(ダウ・ケミカル社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=970)) 60.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0038】
〈実施例2〉 光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物(P−2)の調整
下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物(P−2)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

A−1ワニス 100.0部
NANOCRYL XP21/1364
(Hanse−Chemie社製の
ナノシリカ含有モノマー、固形分=40%) 30.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
DEN−431(ダウ・ケミカル社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=970)) 60.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0039】
〈実施例3〉 光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−3)の調整
市販のスチレン−アクリル酸樹脂であるジョンソンポリマー社製のジョンクリル 67(商品名、固形分酸価=213mgKOH/g、重量平均分子量=12,500)をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに、不揮発分=70%となるように溶かしたワニス(以下、A−3ワニスと称す。)を用いて、下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性光硬化性コア用樹脂組成物(P−3)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

A−3ワニス 100.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
DEN−431(ダウ・ケミカル社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=970)) 60.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0040】
〈実施例4〉 光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−4)の調整
下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−4)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

A−3ワニス 100.0部
NANOCRYL XP21/1364
(Hanse−Chemie社製の
ナノシリカ含有モノマー、固形分=40%) 30.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
DEN−431(ダウ・ケミカル社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=970)) 60.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0041】
〈比較例1〉 光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−5)の調整
下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−5)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

A−3ワニス 100.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
EPPN−201(日本化薬社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=3,930)) 50.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0042】
〈比較例2〉 光硬化性・熱硬化性コア組用樹脂成物(P−6)の調整
下記の配合成分を撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて練肉することにより光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物(P−6)を均一分散し、希釈し、ろ過することにより調整した。

R−1ワニス 100.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15.0部
2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕
−2−モルフォリノプロパン−1−オン 5.0部
EPPN−201(日本化薬社製の
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(Mw=3,930)) 50.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
BYK−310(ビックケミージャパン社製の表面調整剤) 0.3部
【0043】
〈応用例1〉
P−1の光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコートし、80℃で20分間加熱して有機溶剤を揮発させた後、その上から活性エネルギー線を照射して露光した後、150℃の熱風循環式乾燥炉で30分のポストキュアーを行うことにより、膜厚20μmの光導波路下クラッド用硬化膜を形成したシリコンウェハー基板を得た。その上にP−3の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物をスピンコートし、80℃で30分間加熱して有機溶剤を揮発させた後、その上からネガ越しに活性エネルギー線を照射した後、未露光部を1%の炭酸ナトリウム水溶液で現像を行い、150℃の熱風循環式乾燥炉で60分のポストキュアーを行うことにより、膜厚50μmの光導波路コア用樹脂硬化物を形成した。その後、P−1の光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物をコア上にスピンコートし、80℃で20分間加熱して有機溶剤を揮発させた後、その上から活性エネルギー線を照射して露光した後、150℃の熱風循環式乾燥炉で30分のポストキュアーを行うことにより、コア上20μm、下クラッド上70μmの膜厚の光導波路上クラッド用硬化膜を形成し、マルチモード型光導波路を作製した。
このようにして得られた光導波路を、1cmから5cmの間の長さにそれぞれ切り出し、光伝送損失について、カットバック法により測定を行った。
【0044】
〈応用例2〉
応用例1においてP−3の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物の代わりに、P−4の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物を使用し、更にP−1の光硬化性・熱硬化性クラッド用樹脂組成物の代わりに、P−2の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物を使用した以外は同様にしてマルチモード型光導波路を作製した。
このようにして得られた光導波路を、1cmから5cmの間の長さにそれぞれ切り出し、光伝送損失について、カットバック法により測定を行った。
【0045】
〈比較応用例1〉
応用例1においてP−3の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物の代わりに、P−5の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物を使用した以外は同様にしてマルチモード型光導波路を作製した。
このようにして得られた光導波路を、1cmから5cmの間の長さにそれぞれ切り出し、光伝送損失について、カットバック法により測定を行った。
【0046】
〈比較応用例2〉
応用例1においてP−3の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物の代わりに、P−6の光硬化性・熱硬化性コア用樹脂組成物を使用した以外は同様にしてマルチモード型光導波路を作製した。
このようにして得られた光導波路を、1cmから5cmの間の長さにそれぞれ切り出し、光伝送損失について、カットバック法により測定を行った。
【0047】
性能評価:
(a)はんだ耐熱性
得られたマルチモード型光導波路について、JIS C 6481の試験方法に従って、はんだ槽に収容した260℃の溶融はんだに30秒間浸漬し、その後セロハンテ−プ(商品名)をその硬化塗膜の上に指で擦って貼り付けてから引き剥がす、いわゆるピ−リング試験を行い、その1回の試験を1サイクルとして、これを同じ個所で3サイクルまで行った。硬化塗膜の剥離の程度を目視により観察し、以下の基準により評価し、その結果を表2に示した。
○:テープピーリング試験後、剥離等がないもの
×:テープピーリング試験後、剥離を生じるもの
【0048】
(b)リフロー耐性
得られたマルチモード型光導波路について、温度260℃のリフロー炉を通過させることにより、剥がれ、膨れが無いかを目視により観察し、以下の基準により評価し、その結果を表2に示した。
○:リフロー炉を通過後、塗膜に剥がれ、膨れが無い。
×:リフロー炉を通過後、塗膜に剥がれ、膨れを生じるもの。
【0049】
(c)耐薬品性
得られたマルチモード型光導波路について、10%の塩酸水溶液に30分間浸漬した後、硬化塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準により評価し、その結果を表2に示した。
○:全く変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化しているもの
×:顕著に変化しているもの
【0050】
(d)耐溶剤性
得られたマルチモード型光導波路について、プロピレングリコールモノメチルエーテルに30分間浸漬した後、硬化塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準により評価し、その結果を表2に示した。
○:全く変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化しているもの
×:顕著に変化しているもの
【0051】
(e)クラック耐性
得られたマルチモード型光導波路基板を、サーマルショック試験器に入れ、−45℃,15分と125℃,15分のヒートサイクル試験を、300サイクル行い、試験終了後の基板の顕微鏡で観察し、クラックの発生の有無を調べた。
○:クラック等の異常なし。
△:一部にクラック発生。
×:全体に、クラック発生。
【0052】
【表2】

【0053】
表2から明らかなように、応用例1、2のように相溶性の良い組成物を用いた場合は、優れた光透過性を示した。しかし、相溶性の悪い比較応用例1は、光伝送損失1.0dB/cmを超えるものとなった。また、全てにおいてはんだ耐熱性、リフロー耐性、耐薬品性、耐溶剤性は良好な結果であったが、線状ポリマーでないカルボキシル基含有ポリマーからなるP−6を用いた比較応用例2は、クラック耐性に劣っていた。
尚、ナノシリカを含有するP−2,P−4を用いた応用例2は、最もクラック耐性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸価が40〜250mgKOH/gであり、重量平均分子量が2,000〜50,000であるカルボキシル基含有の線状ポリマー、(B)反応性希釈剤、(C)光重合開始剤、及び(D)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(D)が、芳香環又は複素環を有し、エポキシ当量が240g/eq.以下であり、かつ重量平均分子量が3,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有の線状ポリマー(A)が、さらにエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有の感光性線状ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(E)無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光導波路材料用の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物から形成されてなる光・電気混載基板。

【公開番号】特開2006−28419(P2006−28419A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211902(P2004−211902)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】