説明

光導波路用硬化性樹脂組成物、光導波路用硬化性ドライフィルム、光導波路及び光導波路用コア部分の形成方法

分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする光導波路用硬化性樹脂組成物;この組成物からなる光導波路用硬化性ドライフィルム;及び、これらを用いて、下部クラッド層13、コア部分15及び上部クラッド層17の少なくとも一つが形成されて成る光導波路が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路用硬化性樹脂組成物、光導波路用硬化性ドライフィルム、光導波路及び光導波路用コア部分の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化の要求から、光の伝送媒体として光導波路が注目されている。このような光導波路としては、石英系導波路が代表的である。しかし、石英系導波路を製造する為には、特殊な製造装置が必要であり、かつ製造時間が長くかかる。
【0003】
一方、石英系導波路に換えて、フィルムを基材に積層し所定量の光を照射した後に現像するだけで、短時間、かつ低コストで光導波路を形成することができる光導波路形成用放射線硬化性ドライフィルム及びそれを用いた光導波路の製造方法が提案されている(特開2003−202437号公報参照)。
【0004】
また、光導波路を形成する樹脂組成物として、分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基と少なくとも1個のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有カルボン酸樹脂と希釈剤と光重合開始剤を含有する光導波路用樹脂組成物が知られている(特開2003−149475号公報参照)。
【0005】
特開2003−202437号公報には、ドライフィルムを構成するアルカリ現像可能なカルボキシル基含有樹脂成分として、カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物とそれ以外のラジカル重合性化合物から得られ、その軟化温度が20〜150℃の共重合体が記載されている。しかしながら、このカルボキシル基含有樹脂を使用した光導波路形成用ドライフィルムでは、組成物をPETなどの剥離紙に塗装してラミネート化する際や、ラミネート化されたドライフィルムを巻き取ったり、基材に貼付けて光導波路を形成したりするといったハンドリング作業において、ドライフィルムがクラックやワレなどの欠陥を発生し、光導波路の性能が低下するといった欠点がある。
【0006】
特開2003−149475号公報には、その光導波路用樹脂組成物をドライフィルムとして用いる記載は無い。仮に、この樹脂組成物をドライフィルムとして用いたとしても、特開2003−202437号公報記載のドライフィルムと同様に、組成物をPETなどの剥離紙に塗装してラミネート化する際や、ラミネート化されたドライフィルムを巻き取ったり、基材に貼付けて光導波路を形成したりするといったハンドリング作業において、ドライフィルムがクラックやワレなどの欠陥を発生し、光導波路の性能が低下するといった欠点がある。また、特開2003−149475号公報に記載の光導波路用樹脂組成物を溶液として用いた場合も、最終的に得られる光導波路の加工性、折り曲げなどの機械的物性が十分でないので、光導波路を必要な場所に取り付けたり加工する際にクラックやワレなどの欠陥を発生し、光導波路の性能を低下させるといった欠点がある。
【0007】
さらに、両公報の何れに記載のものも、カルボキシル基によるステンレス貯蔵容器などの腐食の問題が発生し、またドライフィルムの貯蔵安定性などの性能が十分でない。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、特に、安定性、塗膜の加工性、機械的性質を低下させないで、優れた性能を有する光導波路を提供し、かつ、そのような優れた光導波路を形成する為に有用な、光導波路用硬化性樹脂組成物、光導波路用硬化性ドライフィルム、及び光導波路用コア部分の形成方法を提供することにある。
【0009】
本発明は、分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする光導波路用硬化性樹脂組成物である。
【0010】
さらに本発明は、分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体であって、その共重合体の軟化温度が0〜300℃である共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする光導波路用硬化性ドライフィルムである。
【0011】
さらに本発明は、下部クラッド層と、コア部分と、上部クラッド層とを有し、これらの下部クラッド層、コア部分及び上部クラッド層の少なくとも一つが、分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体であって、その共重合体の軟化温度が0〜300℃である共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有する光導波路用硬化性ドライフィルムの硬化物から形成されてなることを特徴とする光導波路である。
【0012】
さらに本発明は、下記工程
(1)上記記載の光導波路用硬化性樹脂組成物又は上記記載の光導波路用硬化性ドライフィルムを光導波路用基材に塗装又は貼付けて光導波路のコア部分となる光導波路用樹脂層を設ける工程、
(2)光照射してコア部分となる部分を硬化させる工程、
(3)未硬化層中のブロック化剤を解離して酸性基を発生させる工程、
(4)現像処理により未硬化層を除去してコア部分を形成する工程(上記(3)の工程を同時に行ってもよい)
を含むことを特徴とする光導波路用コア部分の形成方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光導波路の側面(厚み)及び上面方向から見た断面図である。
【図2】図1の切断面を手前方向から見た断面図である。
【図3】本発明に係る光導波路の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物は、分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有する。以下の説明においては、分子中に酸無水基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物を「化合物(a1)」、分子中に酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)を「化合物(a2)」と略すことがある。
【0015】
共重合体(A):
共重合体(A)は、分子中に酸無水基とラジカル重合性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物[化合物(a1)]又は分子中に酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物[化合物(a2)]と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)とのラジカル共重合体である。
【0016】
また、共重合体(A)は、分子中にブロック化されていない酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、それ以外のラジカル重合性化合物との酸性基含有共重合体を製造し、次いで共重合体の酸基をブロック化剤でブロックして得た共重合体であるも場合をも包含する。
【0017】
化合物(a1):
化合物(a1)は、分子中に酸無水基とラジカル重合性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物である。その具体例としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0018】
化合物(a2):
化合物(a2)は、分子中に酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物である。ブロック化される酸基は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。酸基をブロック化するブロック化剤は、tert−ブチル基、tert−BOC基(tert−ブトキシカルボニル基)、及びエーテル結合オレフィン性不飽和基から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
【0019】
例えば、ドライフィルムを基材などに貼付した後、加熱処理によるブロック化剤の解離や、現像液処理による加水分解反応によるブロック化剤の解離により、ブロックが外れ酸性基が復元する。このブロック化剤が外れた後の酸性基は共重合体(A)に結合しているので、未硬化部分(未照射部分)のドライフィルムは所望のアルカリ可溶性を示す。その結果、アルカリ現像液などにより未硬化部分(未照射部分)のドライフィルムが溶解され、光導波路(コア部分等)を良好に形成できる。
【0020】
また例えば、光酸発生剤を併用することにより、光酸発生剤により発生した酸によりブロックを解離し、共重合体(A)に酸性基を復元させ、アルカリ現像液により照射部分のドライフィルムを溶解除去して、光導波路(コア部分等)を良好に形成することもできる。
【0021】
化合物(a2)は、分子中に酸性基とラジカル重合性不飽和基とを含有するラジカル重合性化合物の酸基をブロック化することにより得ることができる。分子中に酸性基とラジカル重合性不飽和基とを含有するラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するラジカル重合性化合物;アクリロイルオキシエチルフォスフェート、メタクリロイルオキシエチルフォスフェート、モノ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)アシッドフォスフェート等のリン酸を含有するラジカル重合性化合物;スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート等のスルホン酸基を含有するラジカル重合性化合物;が挙げられる。
【0022】
化合物(a2)を得る為に用いるブロック化剤としては、例えば、ポリ(tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(tert−ブトキシカルボニルオキシ−α−スチレン)、ポリ(tert−ブトキシスチレン)等のtert−ブチル基又はtert−BOC基を含有するブロック化剤;ビニルエーテル基[式−R−O−CH=CH2(ここで、Rはエチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表わす)]、1−プロペニルエーテル基、1−ブテニルエ−テル基等のエーテル結合オレフィン性不飽和基を含有するブロック化剤;が挙げられる。
【0023】
さらにブロック化剤の具体例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物;2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピランなどの環状ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物;が挙げられる。
【0024】
ラジカル重合性化合物(b):
化合物(b)は、化合物(a)とラジカル共重合反応性を有するものであれば特に制限なく、従来から知られる各種のラジカル重合性化合物を使用できる。この化合物(b)は、例えば、ドライフィルムに使用される共重合体(A)の軟化温度を0〜300℃の範囲に入るように調整するために使用することができる。また例えば、クラッド層の屈折率とコア部分の屈折率との比屈折率差[=(コア屈折率−クラッド屈折率)/コア屈折率]が0.1%以上となるように、コア部分に使用する共重合体(A)中のスチレン量を、クラッド層に用いる共重合体(A)中のスチレン量よりも多くして上記比屈折率差を調整するために使用することもできる。
【0025】
化合物(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビト−ル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキル又はシクロアルキルエステルモノマー;メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキルエステルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマー;ジメチルホスフェートエチルアクリレート、ジエチルホスフェートエチルアクリレートなどのアクリル燐酸エステルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノアクリレート、及びこれらのモノマ−とラクトン(例えば、ε−カプロラクトン等)との付加物等の水酸基含有不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;グリシジル(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとカプリン酸、ラウリン酸、リノール酸、オレイン酸等のモノカルボン酸化合物との付加物、(メタ)アクリル酸と「カージュラE10」(シェル化学社製、商品名)等のモノエポキシ化合物との付加物;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等の鎖状アルキルビニルエーテル;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;アリルグリシジルエーテル、アリルエチルエーテル等のアリルエーテル;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレ−ト等の弗素含有不飽和モノマ−;(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、ビニルカプロラクタム、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトンアクリルアミド等の含窒素不飽和モノマ−などを挙げることができる。また、上記の不飽和化合物は1種又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0026】
化合物(a)と化合物(b)とのラジカル共重合反応は、一般のラジカル共重合反応により共重合体を製造する方法と同様の方法により行うことができる。
【0027】
化合物(a)と化合物(b)との配合割合は、両化合物(a)及び(b)の合計重量を100%とした場合、化合物(a)/化合物(b)は5〜99%/95〜1%の範囲内が好ましく、特に10〜90%/90〜10%の範囲内がより好ましい。
【0028】
共重合体(A)の数平均分子量は、約1000〜200000の範囲内が好ましく、約2000〜80000の範囲内がより好ましい。数平均分子量が1000以上であれば、ドライフィルムの加工性が良好になる傾向にある。また、数平均分子量が200000以下の場合は、一般的にドライフィルムを基材に貼付ける際にドライフィルムを加熱して貼付けを行うが、この加熱により粘度が適度に低下し、貼付け作業性が良好となり、また貼付け後に泡が生じる等の問題も生じ難くなる傾向にある。
【0029】
共重合体(A)において、1分子中の酸無水基及び酸基がブロック化されてなる酸性基の含有量は、平均0.5〜50個であることが好ましく、特に平均1〜10個であることがより好ましい。この含有量が平均0.5以上であれば、アルカリ現像液による現像性が向上し、性能の良い光導波路が得られる傾向にある。また、平均50個以下であれば、アルカリ現像液による溶解性が高くなり過ぎず、シャープな光導波路を形成できる傾向にある。
【0030】
共重合体(A)の軟化温度は、0〜300℃の範囲内であることが好ましく、特に、10〜250℃の範囲内であることがより好ましい。軟化温度が0℃以上であれば、一般的にドライフィルムを基材に貼付ける際にドライフィルムを加熱して貼付けを行うが、この加熱によっても粘着性が低下し難く、貼付け作業性が良好となり、また貼付け後に泡が生じる等の問題も生じ難くなる傾向にある。また、軟化温度が300℃以下であれば、ドライフィルムの貼付け作業性が良好で、かつドライフィルムを貼付ける基材の変質や変形の問題も生じ難い傾向にある。ここで、軟化温度(TMA)については、デュポン社製Thermomechanical Analyserを用いて1mm厚さシートの熱変形挙動により測定される。すなわち、シート上に石英製針をのせ、荷重49gをかけ、5℃/分で昇温していき、針が0.635mm侵入した温度を軟化温度(TMA)とする。
【0031】
重合性不飽和化合物(B):
化合物(B)としては、例えば、ラジカル重合性化合物(b)の具体例として先に挙げた各種化合物を使用することができる。さらに、それ以外に使用可能な化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ以上のポリ(4〜16)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストリールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジイタコネート、エチレングリコールジマレエート等の多価アルコール変性多官能モノマー;その他、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシノールジ(メタ)アクリレート、ピロガロール(メタ)アクリレートなどの多官能重合性不飽和化合物が使用できる。化合物(B)は1種又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0032】
開始剤(C):
開始剤(C)としては、従来から公知のものを使用することができる。その具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルキサントン、チオキサントン、アントラキノンなどの芳香族カルボニル化合物;アセトフェノン、プロピオフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α,α'−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、ジアセチルアセトフェノン、アセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの有機過酸化物;ジフェニルヨードブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロライドなどのジフェニルハロニウム塩;四臭化炭素、クロロホルム、ヨードホルムなどの有機ハロゲン化物;3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンベンズアントロンなどの複素環式及び多環式化合物;2,2'−アゾ(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;鉄−アレン錯体(ヨーロッパ特許152377号公報参照);チタノセン化合物(特開昭63-221110号公報参照)、ビスイミダゾール系化合物;Nーアリールグリシジル系化合物;アクリジン系化合物;芳香族ケトン/芳香族アミンの組み合わせ;ペルオキシケタール(特開平6-321895号公報参照)等が挙げられる。上記した光ラジカル重合開始剤の中でも、ジーtーブチルジパーオキシイソフタレート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、鉄−アレン錯体及びチタノセン化合物は架橋もしくは重合に対して活性が高いのでこのものを使用することが好ましい。
【0033】
また、商品名としては、例えば、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製)、イルガキュア651(チバスペシャリティケミカルズ社製、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤)、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤)、イルガキュア1850(チバスペシャリティケミカルズ社製、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤)、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤)、イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ社製、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤)、ルシリンTPO(BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、カヤキュアDETXS(日本化薬株式会社製)、CGI−784(チバガイギ−社製、チタン錯体化合物)、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171(以上、旭電化工業株式会社製)、イルガキュア261(チバスペシャリティケミカルズ社製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達株式会社製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−102、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−101、BBI−102、BBI−103(以上、みどり化学株式会社製)、Degacure K126(デグサ社製)などが挙げられる。これらの開始剤(C)は、1種単独、あるいは2種以上のものを組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物の各成分の含有量(固形分換算)に関し、共重合体(A)100質量部に対して、化合物(B)の含有量は20〜200質量部が好ましく、30〜100質量部がより好ましく、開始剤(C)の含有量は0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。化合物(B)の含有量が上記各範囲内であると、加工性と機械的安定性が良好となる傾向にある。また、開始剤(C)が0.1質量部以上であれば硬化性が良好となる傾向にあり、20質量部以下であれば貯蔵性が良好となる傾向にあある。
【0035】
本発明光導波路用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ポリエポキシドを配合することができる。ポリエポキシドの具体例としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られたビスフェノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、リン化合物を化学反応させたリン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂を水添して得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂にハロエポキシドを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸類およびエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミン類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂;ビフェノール類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるビフェニル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。中でも、光導波路に必要な耐熱性の改良効果が大きいビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などを配合することが好ましい。本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物においては、酸性基がブロックされているので、このようなポリエポキシドを配合しても増粘したり高分子化したりして塗装が不可能になる恐れが全くない。
【0036】
本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤、反応促進剤、光酸発生剤、光増殖剤などを配合することができる。
【0037】
本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物は、上記した化合物(A)、化合物(B)及び開始剤(C)の各成分を有機溶剤に溶解もしくは分散し、有機溶剤系樹脂組成物として使用することができる。有機溶剤としては、従来から公知の有機溶剤、例えば、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、本発明光導波路用硬化性樹脂組成物は、上記各成分を界面活性剤などにより水に分散し、水性樹脂組成物として使用することができる。
【0038】
本発明の光導波路用硬化性ドライフィルムは、本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物と同様の必須成分を含有するドライフィルムである。ドライフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した有機溶剤系樹脂組成物又は水性樹脂組成物を支持基材に塗装、印刷してウェットフィルムを形成し、次いで重合硬化しない程度の温度で乾燥してドライフィルムを形成することができる。支持基材上に形成されたドライフィルムを剥離して、その単独のドライフィルムを用いて光導波路用材料として使用することができる。また、支持基材からドライフィルムを剥離しないで、光導波路用材料として使用した後に、不必要となった支持基材を剥離することも可能である。
【0039】
支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アラミド、カプトン、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムの何れも使用できるが、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが、コストおよび感光性ドライフィルムとしての良好な特性を得る上で最適であると言える。支持基材の膜厚は、通常1μm〜2mm、特に1μm〜1mmの範囲内が好ましい。
【0040】
また、これら支持基材上に上記した樹脂組成物を塗装又は印刷する方法としては、例えば、ローラー法、スプレー法、シルクスクリーン法などにより行うことができる。ドライフィルムの膜厚は、製造される光導波路に応じて、適宜膜厚を選択すればよいが、通常、1μm〜10mm、特に5μm〜5mmの範囲が好ましい。
【0041】
本発明の光導波路は、下部クラッド層と、コア部分と、上部クラッド層とを有し、これらの下部クラッド層、コア部分及び上部クラッド層の少なくとも一つが、本発明の光導波路用硬化性ドライフィルムの硬化物から形成されてなる。
【0042】
また、本発明の光導波路用コア部分の形成方法は、下記工程を含む。
(1)本発明の光導波路用硬化性樹脂組成物又は本発明の光導波路用硬化性ドライフィルムを光導波路用基材に塗装又は貼付けて光導波路のコア部分となる光導波路用樹脂層を設ける工程、
(2)光照射してコア部分となる部分を硬化させる工程、
(3)未硬化層中のブロック化剤を解離して酸性基を発生させる工程、
(4)現像処理により未硬化層を除去してコア部分を形成する工程(上記(3)の工程を同時に行ってもよい)。
【0043】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明のドライフィルムを用いた光導波路および光導波路の製造方法に関する実施形態の一例をそれぞれ具体的に説明する。
【0044】
(基本的光導波路構成)
図1は、光導波路形成用硬化性ドライフィルムを適用して構成した光導波路の基本的構成を示す断面図である。この図1に示すように、光導波路10は、基板12と、この基板12の表面上に形成された下部クラッド層13と、この下部クラッド層13上に形成された、特定の幅を有するコア部分15と、このコア部分15を含む下部クラッド層13上に積層して形成された上部クラッド層17とを含んで構成されている。そして、コア部分15は、導波路損失が少なくなるように、その側部を含めて、下部クラッド層13および上部クラッド層17により被覆してあり、全体として埋設された状態である。
【0045】
(厚さおよび幅)
以上のような構成の光導波路において、下部クラッド層13、上部クラッド層17、およびコア部分(コア層)15の厚さはそれぞれ特に制限されるものではないが、例えば、下部クラッド層13の厚さを1〜200μm、コア部分15の厚さを1〜200μm、上部クラッド層17の厚さを1〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。また、コア部分15の幅についても特に限定されるものではないが、例えば、1〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0046】
(屈折率)
コア部分15の屈折率は、下部クラッド層13および上部クラッド17のいずれの屈折率と同一もしくは大きくすることが必要である。したがって、波長400〜1,600nmの光に対して、コア部分15の屈折率を1.420〜1.650の範囲内の値とするとともに、下部クラッド層13および上部クラッド層17の屈折率をそれぞれ1.400〜1.648の範囲内の値とすることが好ましい。また、コア部分とクラッド層の比屈折率差は0.1%以上であることが好ましく、特にコア部分の屈折率をクラッド層の屈折率よりも少なくとも0.1%大きい値とすることが好ましい。ここで、比屈折率差は、アタゴ社の多波長アッベ屈折率計DR−M4に850nmの干渉フィルターをセットして、23℃にて各フィルムサンプルの屈折率を測定し、式[(コア部の屈折率−クラッド部の屈折率)/コア部の屈折率]で計算したものである。
【0047】
図2は図1の切断面を手前方向から見た断面図である。光導波路10は、図3に示すような工程を経て形成される。すなわち、下部クラッド層13、コア部分15および上部クラッド層17のいずれか、あるいはすべての層を形成するための光導波路形成用硬化性ドライフィルムを順次、基材上に転写したのち、光線硬化することにより形成することが好ましい。以下の形成例では、特にコア部分15の形成において、本発明の光導波路形成用硬化性ドライフィルムを用いる場合について説明する。
【0048】
(基板の準備)
まず、平坦な表面を有する基板12を用意する。この基板12の種類としては特に制限されるものではないが、例えば、シリコン基板やガラス基板等を用いることができる。
【0049】
(下部クラッド層の形成工程)
用意した基板12の表面に、下部クラッド層13を形成する工程である。具体的には、図3(a)に示すように、基板12の表面に、ベースフィルムが上になるようにカバーフィルムを除去しながら、常圧熱ロール圧着法、真空熱ロール圧着法、真空熱プレス圧着法等の圧着手法を用いて、適当な熱と圧力を加えながら、ドライフィルムを基板上に転写する。そして、この下層用薄膜に、光線を照射することにより硬化させて、下部クラッド層13を形成することができる。なお、下部クラッド層13の形成工程では、薄膜の全面に光線を照射し、その全体を硬化することが好ましい。
【0050】
下部クラッド層13を形成する際の光線の照射量は特に制限されるものでは無いが、波長200nm〜390nm、照度1〜500mW/cm2の光線を、照射量が10〜5,000mJ/cm2となるように照射して、露光することが好ましい。照射される光線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、特に紫外線が好ましい。光線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等を用いることが好ましい。
【0051】
次いで、コア部分を形成する為の光導波路形成用硬化性ドライフィルムを、下部クラッド層13を形成する方法と同様にして、下部クラッド層13の表面にベースフィルムが上になるようにカバーフィルムを除去しながら、常圧熱ロール圧着法、真空熱ロール圧着法、真空熱プレス圧着法等の圧着手法を用いて、適当な熱と圧力を加えながら転写する[(図3(b)]。そして、このコア部形成用層15'に、コア部分が形成されるように光線を照射することにより硬化させる[図3(c)]。次いで、現像液により未硬化部分を除去し、下部クラッド層13表面にコア部分15を形成する[図3(d)]。
【0052】
コア部分15の形成後、コア部分15と下部クラッド層13の上に、図3(e)に示すように、上部クラッド層17形成用ドライフィルムを前記手法と同様にして転写し、プリベークさせて上部クラッド層17を形成する[図3(e)]。その後、上部クラッド層17表面前面から光線の照射を行うことにより、本発明の光導波路を製造することができる[図3(f)]。
【0053】
現像液としては、有機溶媒、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンなどのアルカリ類からなるアルカリ水溶液等を用いることができる。また、アルカリ水溶性を使用する場合、その濃度を、通常0.05〜25重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲内の値とすることが好ましい。なお、このようなアルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤などを適当量添加して、現像液として使用することも好ましい。
【0054】
また、現像時間は、通常30〜600秒間であり、また現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー現像法などの公知の方法を採用することができる。現像液として有機溶媒を用いた場合はそのまま風乾することにより、また、アルカリ水溶液を用いた場合には流水洗浄を、例えば30〜90秒間行い、圧縮空気や圧縮窒素等で風乾させることによって表面上の水分を除去することにより、パターン状被膜が形成される。
【0055】
ブロック化剤を解離するために、加熱処理や赤外線照射を行うことができる。加熱条件は、組成物や添加剤の種類等により変わるが、通常、30〜400℃、好ましくは50〜300℃で、例えば5分間〜72時間の加熱条件とすれば良い。
【0056】
本発明において、特にコア部分に本発明の光導波路形成用硬化性ドライフィルムを使用することにより、繊細なコア形状を形成でき、伝送損失を低下することを防ぐことができる。
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0058】
酸ブロック共重合体(A):
ビニルイソプロピルエーテル54部、アクリル酸72部、及びメチルエチルケトン100部を60℃、2時間反応させて反応物を得た。次いで、得られた反応物45部、メチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、及びアゾビスブチロニトリル1部をトルエン溶媒中で80℃、8時間反応させて酸ブロック共重合体(A)を製造した。
【0059】
酸ブロック共重合体(B):
ビニルイソプロピルエーテル54部、モノ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)アシッドフォスフェート332部、及びメチルエチルケトン100部を60℃、2時間反応させて反応物を得た。次いで、得られた反応物45部、メチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、及びアゾビスブチロニトリル1部をトルエン溶媒中で80℃、8時間反応させて酸ブロック共重合体(B)を製造した。
【0060】
酸ブロック共重合体(C):
ビニルイソプロピルエーテル54部、スルホアクリレート168部、及びメチルエチルケトン100部を60℃、2時間反応させて反応物を得た。次いで、得られた反応物45部、メチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、及びアゾビスブチロニトリル1部をトルエン溶媒中で80℃、8時間反応させて酸ブロック共重合体(C)を製造した。
【0061】
共重合体(D):
アクリル酸10部、メチルメタクリレート80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、及びアゾビスブチロニトリル1部をトルエン溶媒中で80℃、8時間反応させて共重合体(D)を製造した。
【0062】
光導波路用硬化性樹脂組成物1:
酸ブロック共重合体(A)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(商品名イルガキュア907、チバスペシャリティケミカルズ社製)1部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物1を含む固形分50%溶液を得た。
【0063】
光導波路用硬化性ドライフィルム1D:
上記光導波路用硬化性樹脂組成物1を含む溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚25μm)上にナイフエッジコーターで塗布し、80℃で30分乾燥してドライフィルム1Dを作製した。
【0064】
光導波路用硬化性樹脂組成物2:
酸ブロック共重合体(B)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(イルガキュア907)1部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物2を含む固形分50%溶液を得た。
【0065】
光導波路用硬化性ドライフィルム2D:
上記光導波路用硬化性樹脂組成物2を含む溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚25μm)上にナイフエッジコーターで塗布し、80℃で30分乾燥してドライフィルム2Dを作製した。
【0066】
光導波路用硬化性樹脂組成物3:
酸ブロック共重合体(C)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(イルガキュア907)1部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物3を含む固形分50%溶液を得た。
【0067】
光導波路用硬化性ドライフィルム3D:
上記光導波路用硬化性樹脂組成物3を含む溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚25μm)上にナイフエッジコーターで塗布し、80℃で30分乾燥してドライフィルム3Dを作製した。
【0068】
光導波路用硬化性樹脂組成物4:
酸ブロック共重合体(A)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(イルガキュア907)1部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量475g/eq、商品名エポトートYD-011、東都化成製)10部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物4を含む固形分50%溶液を得た。この溶液は30℃で1週間保持しても全く増粘はなく、貯蔵安定性に優れていた。
【0069】
光導波路用硬化性ドライフィルム4D:
上記光導波路用硬化性樹脂組成物4を含む溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚25μm)上にナイフエッジコーターで塗布し、80℃で30分乾燥してドライフィルム4Dを作製した。
【0070】
光導波路用硬化性樹脂組成物5:
共重合体(D)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(イルガキュア907)1部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物5を含む固形分50%溶液を得た。
【0071】
光導波路用硬化性ドライフィルム5D:
上記光導波路用硬化性樹脂組成物5を含む溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚25μm)上にナイフエッジコーターで塗布し、80℃で30分乾燥してドライフィルム5Dを作製した。
【0072】
光導波路用硬化性樹脂組成物6:
共重合体(D)50部、メチルメタクリレート50部、光重合開始剤(イルガキュア 907)1部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポトートYD-011)10部、及びトルエンを配合して、硬化性樹脂組成物6を含む固形分50%溶液を得た。この溶液は20℃で2時間で増粘、ゲル化し、貯蔵安定性が悪かった。
【0073】
<実施例1>
上記光導波路用硬化性樹脂組成物1を含む溶液を、プラスチック基材上にスピンコート法により塗布し、80℃で30分間乾燥させた。次に幅30μmのライン状パターンを有するフォトマスクを介して、波長365nm、照度10mW/cm2の紫外線を100秒間照射して、紫外線硬化させた。次に紫外線照射した樹脂組成物層を有する基板を1.8%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)からなる現像液中に浸漬して、樹脂組成物の未露光部を溶解させ、その後乾燥させた。このようにして幅30μmのライン状パターンを有するコア部分を形成した。この結果、繊細なコア形状のものが形成でき、コア部分の凸部における窪み部の輪郭が明確であった。また、このような窪み部の輪郭が明確なものは、コア部分が上部クラッド層により変形したり、窪みに泡などを巻き込んで光導波路の伝送損失を低下させるものではなかった。
【0074】
<実施例2〜4>
上記光導波路用硬化性樹脂組成物2〜4を含む各溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてコア部分を形成した。その結果、繊細なコア形状のものが形成でき、コア部分の凸部における窪み部の輪郭が明確であった。また、このような窪み部の輪郭が明確なものは、コア部分が上部クラッド層により変形したり、窪みに泡などを巻き込んで光導波路の伝送損失を低下させるものではなかった。
【0075】
<実施例5>
上記光導波路用硬化性ドライフィルム1Dを、プラスチック基材表面に常圧熱ロール圧着法(温度:100℃)にて転写し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。次に、幅30μmのライン状パターンを有するフォトマスクを介して、波長365nm、照度10mW/cm2の紫外線を100秒間照射して、紫外線硬化させた。次に、これを1.8%TMAH水溶液からなる現像液中に浸漬して、ドライフィルムの未露光部を溶解させ、その後乾燥させた。このようにして幅30μmのライン状パターンを有するコア部分を形成した。この結果、繊細なコア形状のものが形成でき、コア部分の凸部における窪み部の輪郭が明確であった。また、このような窪み部の輪郭が明確なものは、コア部分が上部クラッド層により変形したり、窪みに泡などを巻き込んで光導波路の伝送損失を低下させるものではなかった。
【0076】
<実施例6〜8>
上記光導波路用硬化性ドライフィルム2D〜4Dを使用したこと以外は、実施例5と同様にしてコア部分を形成した。その結果、繊細なコア形状のものが形成でき、コア部分の凸部における窪み部の輪郭が明確であった。また、このような窪み部の輪郭が明確なものは、コア部分が上部クラッド層により変形したり、窪みに泡などを巻き込んで光導波路の伝送損失を低下させるものではなかった。
【0077】
<比較例1>
上記光導波路用硬化性樹脂組成物5を含む各溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてコア部分を形成した。その結果、コア部分の凸部における窪み部の輪郭が不明確であった。また、このような窪み部の輪郭が不明確なものは、コア部分が上部クラッド層により変形したり、窪みに泡などを巻き込んで光導波路の伝送損失を低下させるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする光導波路用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ブロック化される酸基が、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1に記載の光導波路用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
酸基をブロック化するブロック化剤が、エーテル結合オレフィン性不飽和基を含有する請求項1に記載の光導波路用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体であって、その共重合体の軟化温度が0〜300℃である共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする光導波路用硬化性ドライフィルム。
【請求項5】
ブロック化される酸基が、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1種の基である請求項4に記載の光導波路用硬化性ドライフィルム。
【請求項6】
酸基をブロック化するブロック化剤が、エーテル結合オレフィン性不飽和基を含有する請求項4に記載の光導波路用硬化性ドライフィルム。
【請求項7】
下部クラッド層と、コア部分と、上部クラッド層とを有し、これらの下部クラッド層、コア部分及び上部クラッド層の少なくとも一つが、分子中に酸無水基及び/又は酸基がブロック化されてなる酸性基とラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(a)と、それ以外のラジカル重合性化合物(b)との共重合体であって、その共重合体の軟化温度が0〜300℃である共重合体(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び重合開始剤(C)を必須成分として含有する光導波路用硬化性ドライフィルムの硬化物から形成されてなることを特徴とする光導波路。
【請求項8】
クラッド層とコア部分の比屈折率差が同一もしくは0.1%以上である請求項7に記載の光導波路。
【請求項9】
下記工程
(1)請求項1に記載の光導波路用硬化性樹脂組成物又は請求項4に記載の光導波路用硬化性ドライフィルムを光導波路用基材に塗装又は貼付けて光導波路のコア部分となる光導波路用樹脂層を設ける工程、
(2)光照射してコア部分となる部分を硬化させる工程、
(3)未硬化層中のブロック化剤を解離して酸性基を発生させる工程、
(4)現像処理により未硬化層を除去してコア部分を形成する工程(上記(3)の工程を同時に行ってもよい)
を含むことを特徴とする光導波路用コア部分の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/080458
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510306(P2006−510306)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003002
【国際出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】