説明

光弾性定数が低いポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】光弾性定数が低く、しかもゲル数が少なく、特に光学用途として好適なポリカーボネート樹脂の製造方法を提案することである。
【解決手段】少なくとも2種類のジオール類とカーボネート前駆物質を用いるポリカーボネートの製造方法であって、下記式(A)で表される環状アセタール系ジオール類の仕込み量が、全ジオール類のモル数を基準として、10〜90mol%の範囲でカーボネート前駆物質を溶融重合する際に、最終真空度を40kPa以下8kPa以上とする工程、8kPa未満1kPa以上にする工程、1kPa未満にする工程において、最終樹脂温度、全ジオールモル数中の残存環状アセタール系ジオール類モル数、および比粘度を制御する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光弾性定数が低く、ゲル数が少ないポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに近年その透明性を生かして光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
【0003】
しかしながら、PC−Aを用いた場合、正の複屈折が高く、光弾性定数が高いことから、光学用途として用いる時に、光学歪みが起こり、様々な問題が起きている。例えば、光学レンズに用いた場合、成形品の複屈折が大きくなるという欠点がある。また、位相差フィルムとして用いた場合、応力による複屈折の変化が大きく、光抜けが起こるという問題があった。
【0004】
そこで、上記課題の解決法の一つとして、脂肪族ジオールとしてスピログリコールを用いたポリカーボネート樹脂が報告されている(特許文献1参照)。脂肪族ジオールを用いたポリカーボネート樹脂の場合、通常のホスゲン法では製造することが困難であり、エステル交換法として知られる方法、すなわち脂肪族ジオールとジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応によって重縮合させる方法が好適に用いられる。
【0005】
エステル交換反応では、ポリカーボネート樹脂を製造する際に、通常200℃〜330℃の温度に加熱しながら重縮合を行うために、高温で長時間の熱履歴を受け、色調等が悪化し、品質的に優れたものを得るのが困難である。そこで色調の悪化を改善する方法としてスピログリコールの鉄イオンの含有量を1ppm以下にする方法(特許文献2参照)、スピログリコールのアルデヒド基および/またはホルミル基の含有量を100ppm以下にする方法(特許文献3参照)、大気中260℃での溶融ハーゼン色相が40番以下のスピログリコールを使用する方法(特許文献4参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記方法で重合したスピログリコール系ポリカーボネート樹脂は色相の悪化は改善されたが、重合中に大量のゲルが発生し、未だ光学フィルム等に用いる際に、品質上大きな問題があった。その為、スピログリコール系のジオールを用いて低い光弾性定数とゲル数の少ない特性を高度に具備するポリカーボネート樹脂を製造する方法は未だ提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−268225号公報
【特許文献2】特開平11−349678号公報
【特許文献3】特開平11−349679号公報
【特許文献4】特開2000−007777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光弾性定数が低く、しかもゲル数が少なく、特に光学用途として好適なポリカーボネート樹脂の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、環状アセタール系ジオール類を含むジオール類とカーボネート前駆物質を溶融重合する際に、最終真空度を40kPa以下8kPa以上とする工程、8kPa未満1kPa以上にする工程、1kPa未満にする工程において、最終樹脂温度、全ジオールモル数中の残存環状アセタール系ジオール類モル数、比粘度を制御することにより、これまで問題となっていたゲル発生を大幅に抑制することを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
1.少なくとも2種類のジオール類とカーボネート前駆物質を用いるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、下記式(A)
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。]
で表される環状アセタール系ジオール類の仕込み量が、全ジオール類のモル数を基準として、10〜90mol%の範囲で下記(i)、(ii)および(iii)の工程順で溶融重合することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
(i)第一工程は、最終真空度が40kPa以下8kPa以上の範囲で最終樹脂温度が160℃以上235℃以下の範囲であり、仕込んだ全ジオールモル数を基準として残存環状アセタール系ジオール類のモル数が1mol%以上30mol%以下になるまでエステル交換させる工程、
(ii)第二工程は、最終真空度が8kPa未満1kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が220℃以上240℃以下の範囲であり、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.2未満にエステル交換させる工程、そして、
(iii)第三工程は、最終真空度が1kPa未満で、最終樹脂温度235℃以上260℃以下の範囲で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.2以上0.6以下にエステル交換させる工程。
【0011】
2.前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類以外のジオール類(B)(以下(B)成分)が、下記式(B1)
【化2】

[式中、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して0〜20の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】

であり、ここでRとR10はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとR10が結合して炭素環または複素環を形成しても良い。R11とR12はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数6〜12のアリール基を表す。R13は炭素原子数1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
で表される芳香族ジオール類(以下(B1)成分)および/または下記式(B2)
【化4】

[式中、R14は炭素原子数2〜18のアルキレン基、炭素原子数4〜20のシクロアルキレン基であり、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含んでも良い。rは0または1の整数を示す。]
で表される脂肪族ジオール類(以下(B2)成分)からなる上記1記載の製造方法。
【0012】
3.前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類成分中に含有するメタンスルホン酸イオンの量が15ppm以下である上記1記載の製造方法。
【0013】
4.前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類が下記式(A1)
【化5】

で表される上記1記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、溶融重合する際に最終真空度、最終樹脂温度、全ジオールモル数中の残存環状アセタール系ジオール類モル数、および比粘度を制御することにより、ゲルの発生を抑制されている。そのため、過剰な原料の精製を行わなくても効率的にゲルの発生を抑制することができ、特に光学用途等に好適なポリカーボネート樹脂を製造することが可能となった。また、原料中のメタンスルホン酸などを極めて少なくすることで、これまでにないゲル数の極めて少ないポリカーボネート樹脂を製造することも可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類を含むジオール成分を用いることを特徴とするものである。
【0016】
(環状アセタール系ジオール類)
本発明で用いられる環状アセタール系ジオール類は、前記式(A)で表される。具体的には、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが例示される。なかでも、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下スピログリコールと略す)が、低い光弾性定数を有するという点から好ましい。
【0017】
本発明においては、前記式(A)に示した(A)成分中に含有するメタンスルホン酸イオンの量は15ppm以下であることが好ましい。より好ましくは8ppm以下、特に好ましくは3ppm以下である。メタンスルホン酸イオンの含有量が15ppmを以下では、重合時の熱により環状アセタール骨格部分が加水分解されにくく、三官能もしくは四官能の水酸基が生成しづらく重合中に架橋反応が起こりにくいため、ゲルの発生が抑制されて好ましい。
【0018】
メタンスルホン酸イオンの含有量が上限以下となる前記(A)成分を得るための方法は特に制限されないが、洗浄、蒸留、再結晶などの精製方法を必要に応じて複数回繰り返したり、これらを組み合わせることにより達成できる。なかでも、前記(A)成分を溶媒に加熱溶解後、冷却して得られた再結晶を濾別し、次いでイオン交換水で洗浄する方法が有効である。
【0019】
ここで用いられる再結晶溶媒としては、前記(A)成分の溶解度が高温において十分に高く、且つ室温付近での溶解度が十分低いものであることが好ましく、さらにこの再結晶の操作によって樹脂の着色成分が除去されるものであればさらに好ましい。このような特性を持つ溶媒としては、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素等が例示される。なかでも、アルコール類が好ましく、特に炭素原子数が1〜10のアルコール類が好ましい。また、上記の溶媒を2種以上混合して用いることもできる。
【0020】
再結晶は公知の方法で実施することができ、前記(A)成分の原料の純度等に応じて2回以上の多数回の再結晶を実施しても良い。再結晶で得られた結晶は、濾過し、洗浄する。洗浄する溶媒としては、イオン交換水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素等が例示される。なかでも、イオン交換水は、メタンスルホン酸イオンをはじめとする陰イオン成分をより効率的に除去することができるため好ましい。その後、適当な方法で乾燥し、溶融重合の原料として用いる。
【0021】
再結晶工程中に吸着剤と接触させる工程を含ませることにより、さらにイオン不純物を低減することができる。すなわち、環状アセタール系ジオール類を溶媒に溶解後、吸着剤と接触させる。その方法としては、溶液中に吸着剤を添加し撹拌を行うバッチ法、カラム中に充填した吸着剤層に溶液を通す流通法のいずれによっても好適に実施される。
【0022】
吸着剤としては、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、等が好適に使用されるが、活性炭が特に好ましい。吸着処理を行った溶液から濾過などの方法により吸着剤を完全に除去した後は、上述した通常の再結晶により環状アセタール系ジオール類の結晶が得られる。
【0023】
また、水洗浄工程を入れることにより、特にメタンスルホン酸イオン等の水溶性イオン不純物を低減することができる。すなわち、前記(A)成分をイオン交換水に接触させ、遠心分離機などで脱水させる方法がある。水洗浄は公知の方法で実施することができ、前記(A)成分の原料の純度等に応じて2回以上の多数回の水洗浄や温水での洗浄を実施すると更にメタンスルホン酸イオン等のイオン不純物を低減することができる。
【0024】
(芳香族ジオール類)
本発明では、前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類以外のジオール類として、前記式(B1)で示される芳香族ジオール類を用いることが、耐熱性や波長分散性の点から好ましい。
【0025】
前記式(B1)のRおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。かかる炭化水素基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜10のアラルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基が挙げられる。一方、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。mおよびnは、夫々独立して0〜4の整数を示す。
【0026】
またRおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。かかる炭化水素基としては、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基、さらに好ましくは炭素原子数1〜4のアルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0027】
pおよびqは、それぞれ−(R−O)−および−(O−R)−の繰り返しの数を表す。pおよびqは、夫々独立して、0〜20の整数、好ましくは0〜12の整数、さらに好ましくは0〜8の整数、特に好ましくは0〜4の整数、最も好ましくは0または1である。
【0028】
前記式(B1)中のWは、前記(W)式であり、ここでRとR10はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとR10が結合して炭素環または複素環を形成しても良い。
【0029】
またR11およびR12はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。R13は炭素原子数1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。
【0030】
具体的には、通常ポリカーボネート樹脂のジオール類として使用されているものであればよく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンなどが例示される。なかでも、ビスフェノールA、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールM、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましく、特にビスフェノールA、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが耐熱性や波長分散性の点から好ましい。例示したジオール類は、2種類以上併用して用いても良い。
【0031】
(脂肪族ジオール類)
本発明では、前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類以外のジオール類として、前記式(B2)で示される脂肪族ジオール類を用いることが光弾性定数の低減、流動性の点から好ましい。
【0032】
前記式(B2)のR14は炭素原子数2〜18のアルキレン基、炭素原子数4〜20のシクロアルキレン基であり、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含んでも良い。rは0または1の整数を示す。脂肪族ジオール類としては、脂肪族直鎖ジオール類と脂環式ジオール類がある。
【0033】
脂肪族直鎖ジオールとしては、炭素原子数は20以下2以上であり、好ましくは10以下2以上、特に好ましくは6以下3以上である。炭素原子数が上限以下では、耐熱性が高く、コストも低く入手しやすいため好ましい。一方、炭素数が下限未満では、沸点が低くなり、仕込み通り重合することが難しいため安定的生産性に問題がある。
【0034】
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコールなどが例示される。なかでも、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールは、柔軟性や流動性付与に優れるため好ましい。
【0035】
一方、脂環式ジオール類としては、特に限定されないが、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物が用いられる。5員環構造、6員環構造を含むことにより耐熱性を高くすることができる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジオール類に含まれる炭素原子数は20以下4以上であり、好ましくは20以下5以上である。この値が大きくなるほど、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が小さくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
【0036】
脂環式ジオール類として下記式(B2−1)(式中、R15は炭素原子数1〜12のアルキル基、水素原子を表す。)が挙げられ、種々の異性体を含有する。具体的には、r=0の場合、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、r=1の場合、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが例示される。
【0037】
【化6】

【0038】
脂環式ジオール類として下記式(B2−2)(式中、sは0または1で表す。)が挙げられ、種々の異性体を含有する。具体的にはr=0の場合、トリシクロデカンジオール、r=1の場合、トリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0039】
【化7】

【0040】
脂環式ジオール類として下記式(B2−3)(式中、tは0または1で表す。)が挙げられ、種々の異性体を含有する。具体的にはr=0の場合、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール、r=1の場合、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノールなどが例示される。
【0041】
【化8】

【0042】
脂環式ジオール類として下記式(B2−4)が挙げられ、種々の異性体を含有する。具体的には、r=0の場合、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール、r=1の場合、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどが例示される。
【0043】
【化9】

【0044】
脂環式ジオール類として下記式(B2−5)が挙げられ、種々の異性体を含有する。具体的には、r=0の場合、1,3−アダマンタンジオールなど、r=1の場合、1,3−アダマンタンジメタノールなどが例示される。
【0045】
【化10】

【0046】
また、ヘテロ原子を含む脂環式ジオール類としては、3員環から10員環までの複素環式ジオール類であって、ヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄原子が挙げられる。なかでも、酸素原子が好ましい。酸素含有複素環式ジオール類としては、具体的には、イソソルビド等の縮合多環式エーテルジオールや1,4−アンヒドロエリスリトール等の環状エーテルジオール等のヘテロ環スピロ化合物が例示される。窒素含有複素環式ジオール類としては、具体的には、3,4−ピロリジンジオール、3,4−ジメチルピペリジンジオール、N−エチル−3,4−ピペリジンジオール、N−エチル−3,5−ピペリジンジオール等が例示される。硫黄含有複素環式ジオール類としては、具体的に、デオキシチオフルクトース等が例示される。
【0047】
好ましい脂環式ジオール類のなかでも、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビドが、耐熱性、光学特性及び機械的性質の点より特に好ましい。
【0048】
なお、上記脂環式ジオール類は、本発明に使用し得る脂環式ジオール類の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。
これらの脂肪族ジオール類は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0049】
(組成比)
本発明の製造方法は、前記式(A)で示される(A)成分と、前記式(B1)または(B2)で示される(B)成分の仕込みのモル比(A/B)が、10/90〜90/10である。好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。(A)成分の割合が下限以上では、得られるポリカーボネート樹脂の光弾性定数が低く、フィルムとして使用するとき、熱による斑が発生しづらく好ましい。また、A成分の割合が上限以下では、フィルムとしたときに結晶化が起こりづらく好ましい。モル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
【0050】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法は、前記のモル比で仕込んだジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる溶融重合法であり、以下に示す第一工程、第二工程、第三工程からなる。
【0051】
第一工程は、最終真空度が40kPa以下8kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が160℃以上235℃以下の範囲であり、仕込んだ全ジオールのモル数を基準として、残存環状アセタール系ジオール類のモル数が1mol%以上30mol%以下となるまでエステル交換させる工程である。最終真空度は、35kPa以下10kPa以上の範囲がより好ましい。また、減圧速度は20kPa/min以下0.5kPa/min以上が好ましい。最終樹脂温度は、180℃〜233℃の範囲がより好ましい。160℃以上では反応が進行しやすく生産性が良好である。また、235℃以下では環状アセタール系ジオール類が分解しづらく、ゲルが発生しにくい。全ジオールモル数中の残存環状アセタール系ジオール類のモル数は、1mol%以上25mol%以下にエステル交換させることがより好ましい。残存環状アセタールジオールのモル数が上限を超える割合で第二工程に移行すると、環状アセタール系ジオール類の分解が起こり、ゲルの発生源となることが推測される。一方、下限未満では重合度が進行しすぎて、溶融粘度が急激に高くなり、収率低下や吐出できないといった問題が起こりやすい。カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下、所定割合のジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するフェノール類を留出させる方法により行われる。反応はその初期から減圧にして生成するフェノール類を留出させながら反応を完結させる。なお、温度は最初常温から除々に加熱して行き、最終温度を途中越えないようにすることが好ましい。
【0052】
第二工程は、最終真空度が8kPa未満1kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が220℃以上240℃以下の範囲であり、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.2未満にエステル交換させる工程である。第二工程では、第一工程で重合せしめたポリカーボネート樹脂をさらに重合せしめる。最終真空度は、6kPa以下2kPa以上の範囲がより好ましい。減圧速度は5kPa/min以下0.1kPa/min以上が好ましい。最終樹脂温度は230℃以上240℃以下の範囲がより好ましい。ポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.05以上0.2未満にエステル交換させることがより好ましい。温度は第一工程の温度から除々に加熱して行き、最終温度を途中越えないようにすることが好ましい。最終重合温度が240℃以下では、残存している環状アセタール系ジオールが分解しづらく、ゲルが発生しにくい。また、220℃以上では、反応が進行しやすく、熱履歴により環状アセタール系ジオール類が分解しづらいためゲルが発生しにくい。最終真空度が8kPa未満では、フェノールの留出が起こりやすく、反応が進行しやすいため、熱履歴により環状アセタール系ジオール類が分解しづらく、ゲルが発生しにくい。最終真空度が1kPa以上の場合、フェノールの留出とともに炭酸ジエステルが留出しづらいため、モルバランスが崩れにくく分子量が伸びやすい。
【0053】
第三工程は、最終真空度が1kPa未満で、最終樹脂温度235℃以上260℃以下の範囲で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.2以上0.6以下にエステル交換させる工程である。第三工程では、第二工程で重合せしめたポリカーボネート樹脂をさらに重合せしめる。最終真空度が1kPa未満では、生成するフェノール類が系内に残存しづらく、樹脂の色相、分解反応が抑制され好ましい。最終真空度は0.5kPa以下がより好ましい。235℃以上では溶融粘度が高くなりすぎず、収率低下や吐出できないといった問題が起こりにくい。また、260℃以下では残存する環状アセタール系ジオール類のオリゴマーが分解しづらく、ゲルが発生しにくいことが推測される。最終樹脂温度は、240℃以上260℃以下の範囲がより好ましい。ポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.25以上0.5以下にエステル交換させることがより好ましい。温度は第一工程の温度から除々に加熱して行き、最終温度を途中越えないようにすることが好ましい。
【0054】
前記エステル交換反応に使用されるカーボネート前駆物質としては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
【0055】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
【0056】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0057】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0058】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が挙げられる。
【0059】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。さらに、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が挙げられる。
【0060】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
【0061】
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
【0062】
第一工程〜第三工程は、不活性ガス雰囲気下および減圧下で加熱しながら攪拌して生成するモノヒドロキシ化合物を留出させることで行なわれる。
【0063】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0064】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等も好ましく用いられる。
【0065】
その中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒の金属化合物1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0066】
また、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0067】
(ゲル数)
本発明の製造方法で重合することでゲル数の少ないポリカーボネート樹脂を得ることができる。本発明のポリカーボネート樹脂からなるフィルム中のゲル数は、好ましくは100個/m以下、より好ましくは50個/m以下、さらに好ましくは30個/m以下であり、ゲル数は少ないほど好ましい。フィルム状物中のゲル数が100個/mを超えると、延伸時にフィルム破断が多発したり、製膜時のフィルターライフが短くなるため問題である。また光学用途の場合、フィルム品質を悪くするため問題である。なお、本発明のフィルム状物のゲル数とは、(株)キーエンス製 カラー3Dレーザー顕微鏡 VK−9700を用いて、フィルム状物1m中に存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有する欠点の数を厚み50μmのフィルムに換算した値である。なお、ゲルは蛍光顕微鏡で光ることから、ごみとの識別も可能である。
【0068】
(比粘度:ηSP
本発明の製造方法で得られる第三工程のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、強度と成形加工性とを両立させやすいことから、0.20〜1.50の範囲が好ましく、0.23〜1.20の範囲がより好ましく、0.25〜1.00の範囲が特に好ましい。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0069】
なお、ポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
【0070】
(光弾性定数)
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂の光弾性定数の絶対値は、好ましくは40×10−12Pa−1以下、より好ましくは35×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは30×10−12Pa−1以下である。絶対値が40×10−12Pa−1を超えると、成形時の残留応力によって生じる複屈折が大きくなりやすい。光弾性定数は未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し測定する。
【0071】
<光学成形品>
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、延伸により所望の波長分散性を実現することができるため特に光学フィルムとして有利に使用することができる。もちろん本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、しかも成形性にも優れているので、光ディスク基板、光学レンズ、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレーなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形品としても有利に使用することができる。
【0072】
<光学フィルム>
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムは、具体的には、具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられ、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムに好適に用いることができる。
【0073】
光学フィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。なかでも、溶液キャスト法、溶融押出法が好ましく、特に生産性の点から溶融押出法が好ましい。
【0074】
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押出し、冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、180〜350℃の範囲であり、200℃〜320℃の範囲がより好ましい。180℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく好ましくない。また、350℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。
【0075】
また本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト法も適用することが出来る。溶液キャスト法の場合は、溶媒としては塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。溶液キャスト法で獲られるフィルム状物中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%を超えると残留溶媒が多いとフィルム状物のガラス転移温度の低下が著しくなり耐熱性の点で好ましくない。
【0076】
本発明の製造方法で得られるポリカーボネートを用いてなる未延伸フィルムの厚みとしては、30〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜300μmの範囲である。かかるフィルム状物をさらに延伸して例えば位相差フィルムとする場合には、光学フィルムの所望の位相差値、厚みを勘案して上記範囲内で適宜決めればよい。
【実施例】
【0077】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した樹脂及び評価方法は以下のとおりである。
【0078】
1.陰イオンの分析
スピログリコールモノマー5gを50mlの純水に懸濁し、70℃の温水バスで2時間加熱し、超音波装置で30分間処理、マイクロフィルターでろ過したろ液をイオンクロマトグラフィー(DIONEX社 DX−320)を用いて、以下の条件でメタンスルホン酸イオンの重量を定量した。
カラム: AS17, 溶離液: KOH水溶液, オーブン温度: 35℃, 流速: 1.5ml/min, グラジエント条件: 溶離液濃度 0mM(0min)→1mM(4min)→1mM(7min)→12mM(14min)→35mM(18min)→35mM(22min)
【0079】
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0080】
3.光弾性定数測定
未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
【0081】
4.ゲル数
厚さ50μmのフィルム状物をカラー3Dレーザ顕微鏡を用いて、500mm×1000mmに存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有するゲル数をフィルム1m中に換算して求めた。
【0082】
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販の3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)86.97部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPAと略す)27.95部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を20kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度220℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度230℃まで昇温を行い、減圧度を6kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度245℃にし、最終真空度を133Paとし合計210分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。なお、市販のSPGのメタンスルホン酸イオンは12.1ppmであった。
【0083】
<フィルムの製造>
次に、(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート樹脂を270℃でフィルム成形することにより厚さ50μmの透明な押出しフィルムを得て、光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
実施例1で使用したSPG85.12部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)45.36部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を10kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度190℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度225℃まで昇温を行い、最終真空度を2kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)、さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度を260℃にし、最終真空度を133Paとし合計220分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0085】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
実施例1で使用したSPG49.7部、BPAの変わりにイソソルビド(以下ISSという)35.8部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を35kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度230℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度235℃まで昇温を行い、最終真空度を6kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)、さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度を250℃にし、最終真空度を133Paとし合計220分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0087】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
実施例1で使用したSPG150部をメタノール10リットルに温度60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶させた。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のイオン交換水で2回リンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶128部を得た。上記精製SPG85.12部、BCF45.36部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を10kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度190℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに60℃/hrの速度で最終樹脂温度225℃まで昇温を行い、最終真空度を2kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度260℃まで昇温を行い、最終真空度を133Paとし合計220分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。なお、このSPGのメタンスルホン酸イオンは1.9ppmであった。
【0089】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
SPG86.97部、BPA27.95部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を20kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度240℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに樹脂温度240℃のまま、20分かけて、最終真空度を4kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度260℃まで昇温を行い、最終真空度を133Paとし合計210分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0091】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
SPG86.97部、BPA27.95部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて最終真空度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに樹脂温度260℃のまま、20分かけて、最終真空度を4kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに1時間かけて最終真空度を133Paとし300分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0093】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
SPG85.12部、BCF45.36部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて最終真空度を30kPaに調整した。60℃/hrの速度で最終樹脂温度170℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに60℃/hrの速度で最終樹脂温度260℃まで昇温を行い、最終真空度を4kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに、最終真空度を133Paとし合計210分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0095】
<フィルムの製造>
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
【0096】
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
SPG49.7部、ISS35.8部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて最終真空度を20kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で最終樹脂温度230℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持し、反応物をサンプリングし、NMRから残存するSPG量を測定した(第一工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度240℃まで昇温を行い、最終真空度を4kPaとし、反応物をサンプリングして比粘度を測定した(第二工程)。さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度280℃まで昇温を行い、最終真空度を133Paとし合計220分間反応を行った(第三工程)。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
【0097】
<フィルムの製造>
得られたポリカーボネート樹脂を15mmφ二軸押出機によりペレット化した。次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1中のSPGは3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、BPAは9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、BCFは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ISSはイソソルビドを示す。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、溶融重合反応中のゲル発生が抑制され、ゲル欠点が少なく、しかも光弾性係数も低い、特に光学用途として好適なカーボネート樹脂を効率よく提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のジオール類とカーボネート前駆物質を用いるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、下記式(A)
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。]
で表される環状アセタール系ジオール類の仕込み量が、全ジオール類のモル数を基準として、10〜90mol%の範囲で下記(i)、(ii)および(iii)の工程順で溶融重合することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
(i)第一工程は、最終真空度が40kPa以下8kPa以上の範囲で最終樹脂温度が160℃以上235℃以下の範囲であり、仕込んだ全ジオールモル数を基準として残存環状アセタール系ジオール類のモル数が1mol%以上30mol%以下になるまでエステル交換させる工程、
(ii)第二工程は、最終真空度が8kPa未満1kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が220℃以上240℃以下の範囲であり、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.2未満にエステル交換させる工程、そして、
(iii)第三工程は、最終真空度が1kPa未満で、最終樹脂温度235℃以上260℃以下の範囲で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.2以上0.6以下にエステル交換させる工程。
【請求項2】
前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類以外のジオール類(B)が、下記式(B1)
【化2】

[式中、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して0〜20の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】

であり、ここでRとR10はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとR10が結合して炭素環または複素環を形成しても良い。R11とR12はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12のアリール基を表す。R13は炭素原子数1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
で表される芳香族ジオール類および/または下記式(B2)
【化4】

[式中、R14は炭素原子数2〜18のアルキレン基、炭素原子数4〜20のシクロアルキレン基であり、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含んでも良い。rは0または1の整数を示す。]
で表される脂肪族ジオール類からなる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類成分中に含有するメタンスルホン酸イオンの量が15ppm以下である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類が下記式(A1)
【化5】

で表される請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−162604(P2011−162604A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24322(P2010−24322)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】