説明

光応答性触媒

【課題】光によって構造が変化して触媒機能性部位の相乗的な機能によって触媒活性を発現することができる新規な光応答性協奏機能触媒を提供する。
【解決手段】式(1)で示される化合物。


(X1、X2、Y1、Y2、Z1及びZ2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリール基又は炭素数3から20のヘテロ環基であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光応答性触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに報告されている光応答性化学変換触媒は限られており(非特許文献1)、光構造変化に伴う触媒機能性部位の相乗的な機能によって触媒活性を発現する光応答性協奏機能触媒に分類できる触媒としては二つの報告があるのみである(非特許文献2及び3)。光応答性協奏機能触媒として分類できるこれらの触媒は、基質分子あるいは基質分子と反応剤の両方の分子認識によって反応の遷移状態形成を有利にする反応テンプレートとして機能する。従って、基質特異性が極度に高い限定的なシステムである。また、生成物がテンプレートに取り込まれることにより触媒の生成物阻害が生じ、触媒効率は低いものである。基本的に、シナジー効果による反応の加速は隣接効果によるものであり、純粋な触媒の活性をシナジー効果で誘起しているわけではない。そのため、不活性型自体に触媒活性が見られ、触媒光応答性が明確でない。また、これまでのところ光応答性触媒によるBasylis-Hillman反応は開発されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 5054-5075
【非特許文献2】JACS 2003,125,2224-2227
【非特許文献3】Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34, 446-448
【非特許文献4】J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2 1995, 1727-1734.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光によって構造が変化して触媒機能性部位の相乗的な機能によって触媒活性を発現することができる新規な光応答性協奏機能触媒を提供することを解決すべき課題とした。また本発明は、多様なカルボニル化合物を活性化できる広い適用性を有する光応答性協奏機能触媒を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、生成物阻害の可能性は低く、また本発明は、明確な光応答性を有する光応答性協奏機能触媒を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、光刺激によって可逆的に構造を変化させるアゾベンゼンを光応答性部位に用い、弱酸性官能基であるトリチルアルコールが二つ接近するか、又は離別することによって酸触媒機能の発現を切り替えることができる光応答性酸触媒を開発することに成功した。本発明の光応答性酸触媒は、触媒分子内の機能性部位が接近し、相乗的に機能することで触媒機能を発現する協奏機能触媒である。また、酸触媒によって加速されるBaylis-Hillman反応において、本発明により提供される隣接した二つのトリチルアルコールが相乗的に機能するcis-アゾベンゼン型触媒は反応を加速し、触媒機能を発現することができた。一方、トリチルアルコールが相乗的に機能し得ないtrans-アゾベンゼン型触媒は、反応をほとんど加速せず、触媒機能が発現しなかった。これらの活性型と不活性型の触媒は、波長の異なる光を照射することで可逆的に切り替えることができる。本発明は上記の知見に基づいて完成したものである。
【0006】
本発明によれば、下記式(1)で示される化合物が提供される。
【化1】

【0007】
(式中、X1及びX2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリーレン基又は炭素数3から20のヘテロ環であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。Y1、Y2、Z1及びZ2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリール基又は炭素数3から20のヘテロ環であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。)
【0008】
好ましくは、X1、X2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素数6から20のアリーレン基であり、Y1、Y2、Z1及びZ2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素数6から20のアリール基である。
【0009】
好ましくは、X1及びX2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Y1、Y2、Z1及びZ2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0010】
好ましくは、本発明によれば、下記式(2)で示されるアゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール)が提供される。
【化2】

(式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0011】
さらに本発明によれば、上記した本発明の化合物からなる光応答性触媒が提供される。
【0012】
好ましくは、本発明の化合物はシス体である。
【0013】
さらに本発明によれば、電子求引性基が結合したアルケンとアルデヒドとを上記した本発明の光応答性触媒の存在下で反応させることを含む、電子求引性基が結合したアルケンをアルデヒドに付加させる方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光応答性協奏機能触媒は、多様なカルボニル化合物を活性化できる一般的な酸触媒であり、広い適用性が期待できる。触媒活性の発現機構は、触媒活性自体を触媒機能性部位のシナジー効果によって発現するものであり、生成物阻害の可能性は少ない。また、不活性型と活性型の触媒活性に大きな差を誘起できるため、明確な光応答性が期待できる。また、本発明の光応答性協奏機能触媒によれば、光応答性のBaylis-Hillman反応を行うことができる。
【0015】
外部刺激によって触媒の活性を可逆的に切り替えることができる本発明の刺激応答性触媒は、不活性型で複数種の触媒が共存可能であり、望みの順序で触媒を活性化できるマルチ触媒システムの構築が可能である。物質供給の基盤を成す化学産業において環境調和性の追求は重要な課題であるが、マルチ触媒システムは、環境調和性を著しく下げる後処理操作を省略したワンポット多段階化学変換を実現する有用な技術である。また、本発明の技術は光エネルギーを化学エネルギーへと直接変換するシステムであり、太陽光エネルギー化学の基盤技術としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の光応答性触媒は、下記式(1)で示される化合物からなる。
【化3】

【0017】
(式中、X1及びX2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリーレン基又は炭素数3から20のヘテロ環であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。Y1、Y2、Z1及びZ2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリール基又は炭素数3から20のヘテロ環であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。)
【0018】
炭素数6から20のアリーレン基としては、フェニレン基、又はナフタレンから誘導される2価の基などを挙げることができる。炭素数6から20のアリール基としては、フェニル基、又はナフタレンから誘導される1価の基などを挙げることができる。炭素数3から20のヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、またはチオフェン環などが挙げられえ、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環でもよい。なお、アゾに連結したX1及びX2はベンゼン環を含む基であることが好ましく、アゾと直接連結する部分はベンゼン環であることが好ましい。特に好ましくは、X1及びX2は、ベンゼン、ナフタレン、インンドール、ベンゾフラン等の一つ以上のベンゼン環を含み、アゾにベンゼン環で結合している。
【0019】
本発明における炭素数6から20のアリーレン基、アリール基、又は炭素数3から20のヘテロ環は、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。低級アルコキシとは、好ましくは炭素数1から10、より好ましくは炭素数1から6、特に好ましくは炭素数1から4のアルコキシを意味する。低級アルキルとは、好ましくは炭素数1から10、より好ましくは炭素数1から6、特に好ましくは炭素数1から4のアルキルを意味する。アリールとしてはフェニルなどを挙げることができる。なお、X1とX2が示す炭素数6から20のアリーレン基又は炭素数3から20のヘテロ環において、アゾ基の隣(オルト位)のうちの一方(即ち、2個あるオルト位のうちの片方)は、置換基を有していないことが好ましい。
【0020】
式(1)で示される化合物(特に好ましくは、アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール))にはシス体とトランス体が存在するが、シス体は触媒機能を発現できる一方、トランス体は触媒機能をあまり発現しない。
【0021】
式(1)で示される化合物は、光照射(例えば、紫外線照射)によりトランス体からシス体へと変換することができ、暗所に置くか、加熱することによりシス体からトランス体へと変換することができる。
【0022】
式(1)で示される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、以下の実施例に記載の方法又はそれに準じた方法により合成することができる。
具体的には、3-アミノ-4-メチル安息香酸メチルを塩酸水溶液に溶かし、冷却する。これに、亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下して溶液Iとする。一方、硫酸銅(II)五水和物を水に溶解し、アンモニア水30 mlを加え、さらに塩酸ヒドロキシルアミン 水溶液を加えて溶液IIとする。上記の溶液Iを溶液IIに加えて撹拌し、生じた沈殿をろ過し、洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶などで精製することによりアゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ジカルボン酸ジメチルを得ることができる。
【0023】
続いて、アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ジカルボン酸ジメチルを THFに溶解し、-20 ℃まで冷却した溶液に臭化フェニルマグネシウム/THF溶液を撹拌しながら滴下し、室温まで昇温する。反応溶液を撹拌後、飽和塩化アンモニア水溶液を添加し、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過・濃縮により粗生成物を得る。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン = 2/1)で精製することにより、本発明の化合物であるアゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール) を得ることができる。
【0024】
本発明の式(1)で示される化合物(特に好ましくは、アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール))からなる光応答性触媒は、Basylis-Hillman反応の触媒として使用することができる。Basylis-Hillman反応とは、触媒の存在下において電子求引性基が結合したアルケンをアルデヒドに付加させる反応である。即ち、本発明によれば、電子求引性基が結合したアルケンとアルデヒドとを、本発明の式(1)で示される化合物の存在下で反応させることによって、電子求引性基が結合したアルケンをアルデヒドに付加させることができる。上記反応を一般式で示すと以下の通りである。
【0025】
【化4】

【0026】
上記の式中、R1は炭化水素基を示し、R2は炭化水素基を示し、エチレン基と結合して環を形成してもよい。R1及びR2が示す炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば、炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から12の炭化水素基などを挙げることができる。
【0027】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
一般的操作:
NMR スペクトルは、JEOL JNM-EX 400 (400 MHz) スペクトル計及びVarian INOVA 400 (400 MHz)で記録した。13C-NMRスペクトルは、ブロードバンドプロトンデカップリングを用いて記録した。残存するCHCl3ピーク又はテトラメチルシランをCDCl3中において1H- 及び13C-NMRのための内部基準として使用した。化学シフトはδ(ppm) 値で表示し、結合定数はヘルツ(Hz)で表示する。以下の略号を使用する: s = singlet, d = doublet, m = multiplet, br s = broad singlet, 及びdd = double-doublet.
【0029】
実施例1:光応答性協奏酸触媒1の合成
【化5】

【0030】
3-アミノ-4-メチル安息香酸メチル (16.0g, 96.9 mmol)を7.4%塩酸水溶液200 mlに溶かし、0 ℃で冷却した。別途調製した亜硝酸ナトリウム水溶液(亜硝酸ナトリウム 7.04 g, 102 mmol、水600 ml)を2時間50分かけて滴下した(これを溶液Iとする)。
【0031】
硫酸銅(II)五水和物 (28.5g, 114 mmol)を水100 mlに溶解し、30%アンモニア水30 mlを加えた。さらに水20 mlに溶解した塩酸ヒドロキシルアミン (8.0 g, 115 mmol)を加えた(これを溶液IIとする)。
【0032】
溶液Iを溶液IIに数回に分けて加え、1時間撹拌し、生じた沈殿をろ過し、蒸留水で洗浄することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)に付し、得られた生成物を再結晶(CH2Cl2/MeOH)することで、アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ジカルボン酸ジメチル(trans-1/cis-1混合物 , 8.05 g, 24.7 mmol)を得た(収率51%)。
【0033】
【化6】

【0034】
アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ジカルボン酸ジメチル((trans-1/cis-1混合物, 163.2 mg, 0.500 mmol)を THF (2.2 ml)に溶解し、-20 ℃まで冷却した。この溶液に臭化フェニルマグネシウム/1.0 M THF溶液2.2ml (2.2 mmol)を撹拌しながら滴下し、その後室温まで昇温した。反応溶液を15時間撹拌後、飽和塩化アンモニア水溶液を添加し、反応を停止させた。ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過・濃縮により粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン = 2/1)に付し、アゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール) (2, 251.7 mg, 0.438 mmol)を得た(収率88 %)。
【0035】
trans-2
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 2.53 (6H, s), 2.83 (2H, s), 7.25-7.31 (24H, m), 7.47(2H, d, J = 1.9 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) ・・(ppm): 17.0, 81.9, 115.4, 127.3, 127.9, 127.9, 1
30.2, 130.9, 137.1, 145.1, 146.7, 150.2
【0036】
cis-2
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 2.05 (6H, s), 2.61 (2H, s), 5.69 (2H, s), 6.93 (6H, d, J = 7.8 Hz), 7.06 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.14-7.29 (16H, m)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) ・・(ppm): 16.7, 81.5, 115.8, 126.4, 127.2, 127.5, 1
28.0, 130.1, 130.8, 145.0, 146.2, 152.9
【0037】
実施例2:光応答性協奏酸触媒1の機能評価:Baylis-Hillman反応への適用
アゾベンゼンビストリチルアルコール触媒2 (trans-2 or cis-2, 28.7mg, 0.05 mmol)をTHF (0.75 ml)に溶解した。この溶液に2-シクロペンテン-1-オン(2, 43μl, 0.50mmol)、3-フェニルプロピオン酸アルデヒド(3, 110μl, 0.750mmol)を順次加え、更に共触媒としてトリブチルホスフィン (25μl, 0.10mmol)を加えた。2時間撹拌後、0.75mlのヘキサンで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し(ヘキサン/エーテル = 1/1)、Baylis-Hilman反応生成物5を得た。化合物5は完全に精製することができなかったため、内部標準物質(ジクロロエタン10.0μl, 0.128 mmol)を試料に添加し、NMRスペクトルより収率を見積もった。
【0038】
無触媒の反応は触媒を加えない以外、同様に行った。
trans-2は80℃で55時間、暗所において加熱することで調製した(trans-2 : cis-2 = >99 : <1)。
cis-2はtrans-2 (0.05 mmol)をTHF 0.5mlに溶解し、紫外光(426 nm)を2時間照射することで調製した(trans-2:cis-2 = 15:85)。
【0039】
【化7】

【0040】
【表1】

【0041】
a: 収率は、内部標準物質1,2-ジクロロエタンに基づいて5を含むカラムクロマトグラフィーの画分のNMRスペクトルから見積もった。
b: 収率は、完全に純粋な異性体の触媒による反応について見積もった。
(トランス又はシス).
c: trans-2 : cis-2 = >99 : <1
d: trans-2 : cis-2 = 15 : 85
【0042】
51)
1H-NMR (CDCl3, δ): 2.02 (2H, m), 2.43 (2H, m), 2.59 (2H, m), 2.71 (1H, m), 2.81 (1H, m), 2.95 (1H, br s), 4.47 (1H, m), 7.18-7.28 (5H, m), 7.43 (1H, m)
【0043】
参考文献
1) M. R. Netherton, G. C. Fu, Org. Lett. 2001, 3, 4295-4298.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物。
【化1】

(式中、X1及びX2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリーレン基又は炭素数3から20のヘテロ環基であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。Y1、Y2、Z1及びZ2は同一又は異なるものであり、炭素数6から20のアリール基又は炭素数3から20のヘテロ環基であり、これらは低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
X1、X2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素数6から20のアリーレン基であり、Y1、Y2、Z1及びZ2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素数6から20のアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X1及びX2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Y1、Y2、Z1及びZ2が、低級アルコキシ、アミン、エステル、アミド、シアノ、ニトロ、クロロ、フッ素、低級アルキル、又はアリールから選択される1以上の置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
下記式(2)で示されるアゾベンゼン-2,2'-ジメチル-5,5'-ビス(ジフェニルメタノール)。
【化2】

(式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の化合物からなる光応答性触媒。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載の化合物がシス体である、請求項5に記載の光応答性触媒。
【請求項7】
電子求引性基が結合したアルケンとアルデヒドとを請求項5又は6に記載の光応答性触媒の存在下で反応させることを含む、電子求引性基が結合したアルケンをアルデヒドに付加させる方法。

【公開番号】特開2012−240990(P2012−240990A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115326(P2011−115326)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】