説明

光情報再生装置及び再生方法

【課題】光の利用効率を高め単純な構造とすること及び/又は小型化することが容易な光情報再生装置を提供する。
【解決手段】情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された情報記録層22を備えた光情報記録媒体20から情報を再生する光情報再生装置であって、光源11と、空間的に変調された再生用参照光を再生する参照光生成用パターン13aが形成されたホログラフィック光学素子13と、再生用参照光18を光情報記録媒体の干渉パターンに照射することによって発生する再生光19を検出する光検出器16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報光と記録用参照光との干渉パターンによって情報が記録された情報記録層を備えた光情報記録媒体より情報を再生するための光情報再生装置及び再生方法に関し、特に、空間的に変調された記録用参照光によって記録された干渉パターンから情報を再生するために、空間的に変調された再生用参照光を用いる光情報再生装置及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラフィを利用して記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録は、一般的に、記録用光を構成するイメージ情報を担持した情報光と記録用参照光とを記録媒体の内部で重ね合わせ、そのときにできる干渉パターンを記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された情報の再生時には、その記録媒体に再生用参照光を照射することにより、干渉パターンによる回折によりイメージ情報が再生される。
【0003】
近年では、超高密度光記録のために、ボリュームホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィが実用域で開発され注目を集めている。ボリュームホログラフィとは、記録媒体の厚み方向も積極的に活用して、3次元的に干渉パターンを書き込む方式であり、厚みを増すことで回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量の増大を図ることができるという特徴がある。そして、デジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の記録媒体と記録方式を用いつつも、記録するイメージ情報は2値化したデジタルパターンに限定した、コンピュータ指向のホログラフィック記録方式である。このデジタルボリュームホログラフィでは、例えばアナログ的な絵のような画像情報も、一旦デジタイズして、、これをイメージ情報として記録する。再生時は、このデジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の画像情報に戻して表示する。これにより、再生時にSN比(信号対雑音比)が多少悪くても、微分検出を行ったり、2値化データをコード化しエラー訂正を行ったりすることで、極めて忠実に元の情報を再現することが可能になる。
【0004】
その中でも、情報光の光軸と記録用参照光の光軸とを同軸に配置し、一つの対物レンズによって干渉パターンを記録する方式(コリニア方式)が次世代の記録方式として注目されている(特許文献1及び非特許文献1)。従来のコリニア方式のホログラフィック記録における光情報記録装置の原理を説明する光学系の概略構成を図8(A)に示し、光情報再生装置の原理を説明する光学系の概略構成を図8(B)に示す。
【0005】
図8(A)に示すように、記録装置の光学系は、保護層121、情報記録層122及び反射層123を有する記録媒体120に情報を記録するものであり、光源101、コリメータレンズ102、空間光変調器103及び対物レンズ104を有している。その記録動作を簡単に述べると次のとおりである。まず、光源101から射出された発散光線束をコリメータレンズ102によってほぼ平行光線として空間光変調器103に入射させる。空間光変調器103には空間変調パターン111が表示されており、入射した平行光線を空間的に変調して情報光112と記録用参照光113を生成する。空間変調パターン111には、記録する情報を展開したデジタルパターン情報が中心部分に配置され、円環状の領域に表示された放射状パターンがその周囲に配置されており、中心部分のデジタルパターン情報によって情報光112が生成され、周囲の放射状パターンによって記録用参照光113が生成される(特許文献2)。情報光112及び記録用参照光113は、対物レンズ104によって全体として収束する光線束として記録媒体120に照射され、情報光112及び記録用参照光113のフーリエ変換された空間周波数成分同士の干渉パターンが情報記録層122に記録される。
【0006】
このようにして干渉パターンが記録された光情報記録媒体120から情報を再生するための再生装置の光学系は、図8(B)に示すとおり、光源101、コリメータレンズ102、空間光変調器103及び対物レンズ104に加えて、ビームスプリッタ105及び光検出器106を有している。そして、再生装置では、空間光変調器103には空間変調パターン114が表示されており、光源101及びコリメータレンズ102からの平行光線を空間的に変調して再生用参照光115を生成する。空間変調パターン114には、記録時における記録用参照光を生成した放射状パターンのみが、記録時と同様に配置されており、放射状パターンによって記録用参照光と同様の再生用参照光115が生成される。再生用参照光115は、対物レンズ104によって全体として収束する光線束として記録媒体120の干渉パターンに照射され、干渉パターンによって回折されて再生光116を発生させる。記録媒体120の反射層123によって反射された再生用参照光115及び再生光116は、ビームスプリッタ105によって一部が反射され、光検出器106によって再生光116のデジタルパターン情報が検出される。
【0007】
【特許文献1】特許第3652339号公報
【特許文献2】国際公開第2004/102542号パンフレット
【非特許文献1】堀米秀嘉、他4名「離陸間近のホログラフィック媒体2006年に200Gバイトを実現」、日経エレクトロニクス、2005年1月17日号、p.105−114頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような従来のホログラフィック記録における再生装置において、現状、干渉パターンによる回折効率が低く、照射した再生用参照光115に比べて、再生光116の強度は数十分の1から数百分の1でしかない。このため、検出するのに十分な強度の再生光116を干渉パターンから再生するには、再生用参照光115の強度をさらにその数十倍から数百倍とする必要があった。
【0009】
加えて、再生用参照光115は、空間光変調器103に表示された空間変調パターン114によって生成されるところ、光源101からの光の大部分が使われておらず、光利用効率が低かった。その上、空間光変調器103の画素ピッチが細かいので、再生用参照光115は、回折され、散乱するために、さらに光利用効率の低下をもたらしてしまう。
【0010】
これらの結果、再生装置の光源101としては、大出力レーザーが必要であったので、光学系が高価で大型になってしまう問題点があった。また大出力の光源を使用するため、使用時における消費電力も大きくなり、ランニングコストも高くなる。しかも、大出力の光源は、発生する熱量も大きいので、温度上昇による影響、例えば記録媒体の膨張等によって、SN比及び信頼性が低下する点でも問題であった。さらに、光学系が大型化することから、慣性及び駆動力の点から再生位置へのアクセス速度を速くすることができず、転送速度に対する制限にも繋がっていた。
【0011】
また、コリニア方式において、再生用参照光115の空間変調パターン114は、対物レンズ104の入射瞳面に正確に表示される必要があった。しかしながら、空間光変調器103と対物レンズ104との間には再生光を分離する光学系(ビームスプリッタ105)を配置する必要があり、空間光変調器103を対物レンズ104の入射瞳面に配置することは物理的に困難であった。このため、リレーレンズなどの像を伝達する光学系をさらに配置して、空間光変調器103に表示された空間変調パターン114を対物レンズ104の入射瞳面に伝達していた。このように、従来の再生装置では、光学系が複雑化してしまうと言う問題があった。なお、図8は記録再生動作の原理を説明する概略図であり、リレーレンズなどの像を伝達する光学系は省略している。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を鑑みて、光の利用効率を高めた光情報再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。また、単純な構造とすること及び/又は小型化することが容易な光情報再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。加えて、安価で消費電力も少なくすることができる光情報再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光情報再生装置は、情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された情報記録層を備えた光情報記録媒体から情報を再生する光情報再生装置であって、光源と、空間的に変調された再生用参照光を再生する参照光生成用パターンが形成されたホログラフィック光学素子と、再生用参照光を前記光情報記録媒体の干渉パターンに照射することによって発生する再生光を検出する光検出器とを有することを特徴とする。
【0014】
さらに、上記光情報再生装置において、前記ホログラフィック光学素子を所定の位置に着脱可能に設けることが好ましい。
【0015】
さらに、上記光情報再生装置において、前記ホログラフィック光学素子には複数の参照光生成用パターンが記録されていることが好ましい。
【0016】
さらに、上記光情報再生装置において、前記ホログラフィック光学素子は、再生用参照光の光束と補助参照光の光束とを一定の角度で交差させることよって形成された干渉パターンが参照光生成用パターンとして記録された他の光情報記録媒体であってもよい。また、前記ホログラフィック光学素子は、光源からの光を側端面から入射させる構造であってもよい。
【0017】
さらに、上記光情報再生装置において、前記ホログラフィック光学素子と前記光検出器とが隣接して配置されていてもよい。
【0018】
さらに、上記光情報再生装置において、前記ホログラフィック光学素子の前記光情報記録媒体に対する光学系内における相対的な位置を移動可能に設けてもよい。
【0019】
また、本発明の光情報再生方法は、情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された情報記録層を備えた光情報記録媒体から情報を再生する光情報再生方法であって、光源からの光をホログラフィック光学素子に形成された参照光生成用パターンに照射して前記参照光生成用パターンから空間的に変調された再生用参照光を再生し、前記再生した再生用参照光を前記光情報記録媒体の干渉パターンに照射して前記干渉パターンから再生光を再生し、前記再生した再生光を光検出器によって検出することを特徴とする。
【0020】
さらに、上記光情報再生方法において、前記参照光生成用パターンに照射される前記光源からの光の照射角度を変更することにより、前記ホログラフィック光学素子から異なるパターンに空間的に変調された再生用参照光を再生してもよい。
【0021】
さらに、上記光情報再生方法において、前記ホログラフィック光学素子の前記光情報記録媒体に対する光学系内における相対的な位置を移動させることにより、前記光情報記録媒体に照射される再生用参照光の照射位置又は照射角度を補正してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光情報再生装置及び再生方法においては、ホログラフィック光学素子の参照光生成用パターンは再生効率が高いため、光の利用効率を著しく高めることができた。このため、光源として、従来よりも出力の小さいものを採用することも可能となり、光情報再生装置の小型化、軽量化及び低コスト化を図ることができ、また信頼性を高め、消費電力を低減し、転送速度を高めることも可能である。またホログラフィック光学素子それ自体が、従来の空間光変調器に較べて軽量、安価なものであり、この点からも軽量化及び低コスト化できる。
【0023】
加えて、ホログラフィック光学素子から再生された再生用参照光は、参照光生成用パターンを形成する際に調整することにより、再生用参照光の空間変調パターンが結像する位置(仮想表示面)を適宜設計することができるので、対物レンズの入射瞳面との関係で配置の許容範囲が格段に広がり、光情報再生装置の小型化を実現可能なものとできる。例えば、再生用参照光を生成するホログラフィック光学素子と光検出器とを光軸方向において隣接させることも可能である。
【0024】
その他の効果及び効果の詳細については、以下に述べる実施形態の説明において明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の光情報再生装置における情報の再生の原理を示す説明図である。
【0026】
図1において、光情報再生装置10は、光源11、コリメータレンズ12、ホログラフィック光学素子13、対物レンズ14、ビームスプリッタ15及び光検出器16を有している。再生装置10の動作は、まず光源11からの光をコリメータレンズ12によってほぼ平行光線17とし、ホログラフィック光学素子13に照射する。ホログラフィック光学素子13には、空間的に変調された再生用参照光を再生する参照光生成用パターン13aが形成されており、光源からの平行光線17が参照光生成用パターン13aによって回折され、空間的に変調された再生用参照光18が再生される。ここで再生用参照光18の空間変調パターンは、記録時における記録用参照光の空間変調パターンと同じパターンである。そして、ビームスプリッタ15を通過した再生用参照光18は、対物レンズ14によって全体として収束する光線束として光情報記録媒体20の情報記録層22に記録された干渉パターンに照射され、干渉パターンによって回折されて再生光19を再生する。再生した再生光19は、再生用参照光18と共に、記録媒体20の反射層23によって反射され対物レンズ14を通過し、ビームスプリッタ15によって反射され、光検出器16によって再生光19のデジタルパターン情報が検出される。
【0027】
このように、本発明の光情報再生装置10及び再生方法においては、再生用参照光18を生成するためにホログラフィック光学素子13(HOE:Holographic Optical Element)を利用している。ホログラフィック光学素子13としては、記録時における記録用参照光の空間変調パターンと同じパターンで空間的に変調された再生用参照光と、他の光(以下「補助参照光」という)との干渉パターンによって参照光生成用パターン13aを記録した光情報記録媒体であってもよいし、コンピュータを用いて再生用参照光が再生されるよう計算したパターンを描画装置によって書き込むことで参照光生成用パターン13aを形成してもよい。また、光をホログラフィック光学素子13の側端面から入射させる構造とすることもできる。ホログラフィック光学素子13の参照光生成用パターン13aによる回折は、再生効率(回折効率)を高くすることができる。
【0028】
再生用参照光としては、空間変調パターンによって空間的に変調された回折光でもよいし、さらに対物レンズによってフーリエ変換されたフーリエ像であってもよい。フーリエ像を記録する場合は、対物レンズの入射瞳面に空間変調パターンが表示された再生用参照光を対物レンズによって、補助参照光と交差する位置において収束するように照射して、補助参照光と干渉させればよい。
【0029】
補助参照光としては、平面波を利用すると設計が容易であるが、特に限定されるものではなく、収束光束でも発散光束でもよく、参照光生成用パターン13aを記録する時に使用した補助参照光を再生用参照光の再生時にも使用すればよい。但し、ホログラフィック光学素子13を通過した補助参照光は、再生した再生用参照光と分離する必要があり、例えば図1に示すように、補助参照光である平行光線17の光路と再生用参照光18の光路とが異なる軸となるように、二光束干渉型の構成とすれば、通過した平行光線17(図示していないが、図面左斜め下に進行する)は再生用参照光18の光学系から除外することができる。
【0030】
また、ホログラフィック光学素子13に複数の参照光生成用パターン13aを記録しておくことにより、複数の異なる空間変調パターンの再生用参照光を生成することができる。複数の参照光生成用パターン13aは、例えば異なる位置に記録されるシフト多重記録や、補助参照光の照射角度を変化させて記録される角度多重などを利用することができる。
【0031】
ホログラフィック光学素子13の参照光生成用パターン13aは再生効率が高いため、光の利用効率を著しく高めることができた。このため、光源として、従来よりも出力の小さいものを採用することも可能となり、光情報再生装置の小型化、軽量化及び低コスト化を図ることができ、また信頼性を高め、消費電力を低減し、転送速度を高めることも可能である。またホログラフィック光学素子13それ自体が、従来の空間光変調器に較べて軽量、安価なものであり、この点からも軽量化及び低コスト化できる。
【0032】
加えて、ホログラフィック光学素子13から再生された再生用参照光は、参照光生成用パターン13aを形成する際に調整することにより、再生用参照光の空間変調パターンが結像する位置(仮想表示面)を適宜設計することができるので、対物レンズの入射瞳面との関係で配置の許容範囲が格段に広がり、光情報再生装置の小型化を実現可能なものとできる。例えば、再生用参照光を生成するホログラフィック光学素子13と光検出器16とを光軸方向において隣接させることも可能である。
【0033】
さらに、ホログラフィック光学素子13を着脱可能な構成とすれば、ホログラフィック光学素子13をキーとして情報の再生の選別が可能である。つまり、各ホログラフィック光学素子13には、それぞれ異なる空間変調パターンの再生用参照光が生成されるように参照光生成用パターン13aを形成しておき、あるホログラフィック光学素子13を装置に装着した場合と別のホログラフィック光学素子13を装置に装着した場合とで、光情報記録媒体から再生される情報を異なるものにできる。典型的には、ある特定の空間変調パターンの再生用参照光が生成できるホログラフィック光学素子13でなければ情報が再生できないようにすることができる。
【0034】
以下、より具体的な光情報再生装置について図2〜図6を用いて説明する。図2は、装置30の全体構造を示す概略図であり、参照光生成用パターン43aが形成されたホログラフィック光学素子43を作製する装置と情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された光情報記録媒体70から情報を再生する光情報再生装置が複合されている。図3は図2のホログラフィック光学素子43近傍の光学系(図2において点線の四角で囲った部分)を拡大したものである。なお、図2においてはホログラフィック光学素子作製装置と光情報再生装置とで幾つかの部材を共通させているが、それぞれ分離して独立の装置とすることは容易である。
【0035】
図2において、複合装置30は、光源31、ビームエキスパンダー32、第1の二分の一波長板33(以下、二分の一波長板を「HWP」と略す)、第1の偏光ビームスプリッタ34(以下、偏光ビームスプリッタを「PBS」と略す)、第2のHWP35、ミラー36、第2のPBS37、ミラー38、空間光変調器39、第3のHWP40、ミラー41及び42、光情報記録媒体(ホログラフィック光学素子)43、第1のリレーレンズ系44及び45、第3のPBS46、第2のリレーレンズ系47及び48、アパーチャー49、四分の一波長板50、対物レンズ51、第3のリレーレンズ系52及び53、倍率調整レンズ54、ミラー55、光検出器56を有している。
【0036】
光源31は、コヒーレントな直線偏光の光線束を発生するもので、例えば半導体レーザを用いることができる。光源31から発生した光は、記録時における記録用参照光と同じ波長を有することが好ましく、補助参照光及び再生用参照光を生成する。
【0037】
ビームエキスパンダー32は、図2においては2枚のレンズからなるが、光源31からの光の口径を大きく成形すると共にほぼ平行光線にしている。
【0038】
第1のHWP33及び第1のPBS34は、光量調整手段として機能するものであり、第1のHWP33によってP偏光とS偏光の割合を変更し、第1のPBS34によって一方の偏光を分離することで任意の光量に調整できる。なお、図2は複合装置であるから、光情報記録媒体43に参照光生成用パターンを記録して、ホログラフィック光学素子を製造する必要とホログラフィック光学素子から再生用参照光を再生し、さらに光情報記録媒体70から再生光を参照する必要があり、異なる二つの目的に応じて光量を調整するために第1のHWP33及び第1のPBS34が配置されている。単なる光情報再生装置の場合、光量調整手段を設けなくてもよい。
【0039】
第2のHWP35及び第2のPBS37は、第2のPBS37において分離される2つの光束の光量バランスを調整するものである。第2のPBS37において分離された2つの光束の一方(図3の61)は再生用参照光となり、他の一方(図3の62)は補助参照光となる。なお、第2のHWP35及び第2のPBS37についても、ホログラフィック光学素子を製造する必要があるため配置されたものであり、単なる光情報再生装置の場合は設けなくてもよい。
【0040】
ミラー36は光学系の占有面積を小さくするために光の進路を変更するために配置されている。ミラー38は、第2のPBS37によって分離された光の一方を空間光変調器39に向けて反射するものである。
【0041】
空間光変調器39は、ホログラフィック光学素子43に参照光生成用パターン43aを形成するための再生用参照光を生成するものであり、格子状に配列された多数の画素を有し、各画素毎に出射光の位相又は/および強度を変調することができる透過型又は反射型の空間光変調器を使用することができる。空間光変調器39としては、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)やマトリクス型の液晶素子を使用することができる。DMDは、入射した光を画素ごとに反射方向を変えることで強度を変調したり、入射した光を画素ごとに反射位置を変えることで位相を空間的に変調することができる。液晶素子は、画素ごとに液晶の配向状態を制御することで、入射した光の強度や位相を空間的に変調することができる。例えば、各画素毎に出射光の位相を、互いにπラジアンだけ異なる2つの値のいずれかに設定することによって、光の位相を空間的に変調することができる。図2においては、空間光変調器39としてDMDを採用し、記録時における記録用参照光と同じ空間変調パターンを表示することで、ミラー38から一定角度で入射した光を空間的に変調して再生用参照光(図3の63)を生成している。
【0042】
第3のHWP40は、補助参照光(図3の62)の偏光方向を90度回転させて再生用参照光63の偏光方向と合わせるために配置されている。
【0043】
ミラー41及び42は、第2のPBSから光情報記録媒体43までの光路長を同じにするため配置されており、再生用参照光63がミラー38及びDMD39によって反射されたのと同様に補助参照光62をミラー41及び42によって反射して光情報記録媒体43に入射させる。
【0044】
光情報記録媒体(ホログラフィック光学素子)43は、参照光生成用パターン(図3の43a)が形成されるものであり、参照光生成用パターン43aが形成された後に光情報再生装置で使用される場合はホログラフィック光学素子となる。図2及び3においては透過型の光情報記録媒体であるが、反射型の光情報記録媒体であってもよい。図2及び3の透過型の光情報記録媒体43は、一対の透光性基板の間に感光材料が封入された構造である。
【0045】
これまで述べた光源31から光情報記録媒体43までの構造によって、参照光生成用パターン43aが形成されたホログラフィック光学素子43を作製する装置が機能する。
【0046】
さらに、第1のリレーレンズ系44及び45並びに第2のリレーレンズ系47及び48は、空間光変調器39に表示された再生用参照光63の空間変調パターンを対物レンズ51の入射瞳面に伝達するように配置されている。すなわち、空間光変調器39の表示面からレンズ44までの距離がレンズ44の焦点距離であり、レンズ44からレンズ45までの距離がレンズ44の焦点距離とレンズ45の焦点距離の和であり、レンズ45からレンズ47までの距離がレンズ45の焦点距離とレンズ47の焦点距離の和であり、レンズ47からレンズ48までの距離がレンズ47の焦点距離とレンズ48の焦点距離の和であり、レンズ48から対物レンズ51の入射瞳面までの距離がレンズ48の焦点距離となるように配置されている。
【0047】
ところで、光情報再生装置において、空間光変調器39それ自体は再生用参照光を生成するものではなく、ホログラフィック光学素子43から再生用参照光(図3の64)が再生される。ホログラフィック光学素子43とレンズ44との位置関係は、直接的ではなく、再生された再生用参照光64の空間変調パターンが表示されていた位置(仮想表示面)がレンズ44の焦点距離となるように配置する。図2の構成によれば、空間光変調器39の位置が仮想表示面となる。
【0048】
第3のPBS46及び四分の一波長板50は、光情報記録媒体70から再生した再生光を分離するものであり、光情報記録媒体70に照射される再生用参照光64の偏光方向を四分の一波長板50を照射時と反射時の2回通過させることにより、反射してきた再生用参照光の偏光方向を90度回転させ、第3のPBS46によって分離することができる。同様に、情報光として記録する際に、四分の一波長板50を通過させておくことにより、光情報記録媒体70から再生した再生光は、もう一度四分の一波長板50を通過するので、偏光方向が90度回転し、第3のPBS46によって分離される。
【0049】
アパーチャー49は、第2のリレーレンズ系47及び48の間の焦点位置に配置されており、高次の回折光を除去することができる。
【0050】
対物レンズ51は、入射瞳面に結像した再生用参照光を光情報記録媒体70に照射し、光情報記録媒体21から発生した再生光を入射して射出瞳面に結像させるものである。
【0051】
第3のリレーレンズ系52及び53は、第2のリレーレンズ系47及び48と共に、対物レンズ51の射出瞳面に結像させた再生光を光検出器56まで伝達させるものである。図2においては、その後、倍率調整レンズ54が配置されており、光検出器56に結像する再生光の空間変調パターンの倍率を変更する構成である。ミラー55は、第3のリレーレンズ系52及び53の間の焦点位置に配置されており、光学系の占有面積を小さくするために光の進路を変更するために配置されている。
【0052】
光検出器56は、格子状に配列された多数の画素を有し、各画素毎に受光した光の強度を検出できるようになっており、光の強度を空間的に変調することで形成された空間変調パターンを検出することができる。光検出器56としては、CCD型固体撮像素子やMOS型固体撮像素子を用いることができる。また、光検出器56として、MOS型固体撮像素子と信号処理回路とが1チップ上に集積されたスマート光センサ(例えば、文献「O plus E,1996年9月,No.202,第93〜99ページ」参照。)を用いてもよい。このスマート光センサは、転送レートが大きく、高速な演算機能を有するので、このスマート光センサを用いることにより、高速な再生が可能となり、例えば、G(ギガ)ビット/秒オーダの転送レートで再生を行なうことが可能となる。
【0053】
次に、図2の複合装置30において、光情報記録媒体43に参照光生成用パターン43aを形成する動作について説明する。光学系32〜36によって適宜調整した光源からの光60は、第2のPBS37によって偏光方向が90度異なる2つの光束61、62に分離される(図3)。光束61は、ミラー38によって反射され、空間光変調器39に入射する。空間光変調器39には、図4(A)に示す参照光の空間変調パターンが表示されており、光束61を空間的に変調して再生用参照光63が生成され、光情報記録媒体43に照射される。また、光束62は、第3のHWP40によって偏光方向が90度回転されるので、再生用参照光63の偏光方向と偏光方向が一致する。その後、ミラー41及び42によって反射され、補助参照光62として平面波が光情報記録媒体43に照射される。図2及び3においては、光情報記録媒体43は、再生用参照光63及び補助参照光62の入射角がそれぞれ45度となるように傾けられており、再生用参照光63と補助参照光62が光情報記録媒体43内において90度の交差角で交差するよう配置されている。この結果、再生用参照光63と補助参照光62との干渉パターンが光情報記録媒体43の感光材料に記録され、参照光生成用パターン43aが形成されたホログラフィック光学素子を作製できる。
【0054】
また、光学系の一部を移動可能に設けることにより、再生用参照光63と補助参照光62との交差角を変更することができ、同一位置又は異なる位置に複数の参照光生成用パターン43aを角度多重記録することができる。例えば、ミラー41又はミラー42を回動可能な構成とし、光情報記録媒体43に対する補助参照光62の照射角度を変更させればよい。なお再生用参照光の照射角度を変更することも可能であるが、この場合は、ホログラフィック光学素子を光情報再生装置において使用する際に、ホログラフィック光学素子から再生した再生用参照光の射出角度も各参照光生成用パターン43aによって異なるので、光情報再生装置の構造が複雑化する。このように、角度多重記録すると、補助参照光の照射角度によって、異なる空間変調パターンの再生用参照光を生成することができる。
【0055】
さらに、このホログラフィック光学素子43を用いて、光情報記録媒体70から情報を再生する光情報再生装置の動作について説明する。図5は、再生時の光路を示す図である。図5に示すように、第2のHWP35及び第2のPBS37によって補助参照光62のみを生成し、平面波の補助参照光62をホログラフィック光学素子43の参照光生成用パターン43aに照射する。すると、補助参照光62が参照光生成用パターン43aによって回折された再生用参照光64が再生される。この時の回折効率は非常に高く、光の利用効率を高めることができる。図4(B)は、再生した再生用参照光64の空間変調パターンである。再生用参照光64の空間変調パターンは、第1のリレーレンズ系44及び45並びに第2のリレーレンズ系47及び48によって対物レンズ51の入射瞳面に伝達され、対物レンズ51によってフーリエ変換された像が光情報記録媒体70に照射される。そして、光情報記録媒体70の情報記録層に記録された干渉パターンと回折することで再生光が発生し、発生した再生光は、第3のPBS46によって分離され、第2のリレーレンズ系47及び48、第3のリレーレンズ系52及び53並びに倍率調整レンズ54によって、光検出器56の空間変調パターンが結像される。なお、図示していないが、光情報記録媒体70によって反射された再生用参照光を除去する手段を設けておくことが好ましい。
【0056】
また、図5において、ミラー41又はミラー42を回動可能な構成とし、光情報記録媒体43に対する補助参照光62の照射角度を変更できるように構成し、複数の参照光生成用パターンが角度多重記録されているホログラフィック光学素子から適宜異なる再生用参照光を再生させてもよい。
【0057】
さらに、図5において、ホログラフィック光学素子43の光情報記録媒体に対する光学系内における相対的な位置を移動させることにより、光情報記録媒体70に照射される再生用参照光64の照射位置又は照射角度を補正することができる。例えば、図5において、ホログラフィック光学素子43を再生用参照光64の光軸に対して垂直な方向に平行移動すれば、対物レンズ51によって光情報記録媒体70に照射される再生用参照光の照射角度を変更できる。またホログラフィック光学素子43の参照光生成用パターンとして、再生用参照光のフーリエ像と補助参照光との干渉パターンが記録されている場合、ホログラフィック光学素子43を移動させることにより、対物レンズ51によって光情報記録媒体70に照射される照射位置を補正することができる。その他、照射位置の補正としては、対物レンズ51によって光情報記録媒体70に照射される焦点の位置やフーリー像の倍率なども補正可能である。
【0058】
実際に、図5の装置によって再生された情報のエラービットは3であり、SN比は3.78であった。また、ホログラフィック光学素子43に入射した光の強度に対し、再生した再生用参照光64の0次及び1次回折光の強度(実際に使用される強度)の割合は、13.9%であった。
【0059】
一方、比較例として、従来の光情報再生方法として図6に示す光路で情報を再生した。図6においては、第2のHWP35及び第2のPBS37によって再生用参照光63となる光61のみを生成し、空間光変調器39に表示した空間変調パターンによって空間的に変調して再生用参照光63を生成した。なお、図6ではホログラフィック光学素子43は取り外し、ダミーガラスを配置して実験した。図6の装置によって再生された情報のエラービットは0であり、SN比は4.04であったが、空間光変調器39に入射した光の強度に対し、生成した再生用参照光64の0次及び1次回折光の強度(実際に使用される強度)の割合は、1.41%に過ぎなかった。
【0060】
以上のとおり、本発明の光情報再生装置においては、約10倍の光の利用効率を実現することができた。このため、光源31として1/10の出力のものを利用することができ、また空間光変調器39が必要なくなるので、非常に低コストで光情報再生装置を製造することができる。
【0061】
図7は、他の実施形態であり、光情報再生装置80の光学系を非常に小型のピックアップ装置として集積化した構造である。図7において、光情報再生装置80は、光源81、ホログラフィック光学素子82、部分偏光板83、四分の一波長板84、対物レンズ85及び光検出器86とを有している。
【0062】
図7において、ホログラフィック光学素子82は、側端面から光が入射する端面入射型のHOEである。ホログラフィック光学素子82は、導波路層内に、参照光生成用パターン82aが形成されている。参照光生成用パターン82aは、例えば、あらかじめ再生用参照光が再生されるようにコンピュータを用いて計算したパターンを描写して製造してもよい。そして、端面から光を入射することにより、導波路層内の参照光生成用パターンによって散乱し、再生用参照光が再生される。ここで、ホログラフィック光学素子82から再生する再生用参照光の空間変調パターンの仮想表示面は、対物レンズ85の入射瞳面(再生光にとっての射出瞳面と同位置)に配置されるように計算されている。
【0063】
部分偏光板83は、再生用参照光が通過する部分にのみ偏光板が設けられており、四分の一波長板84と組み合わせることにより、光情報記録媒体70によって反射した再生用参照光93を除去することができる。つまり、ホログラフィック光学素子82から再生した再生用参照光91は、部分偏光板83の偏光方向と一致するようにされているので、部分偏光板83を通過することができる。その後、再生用参照光91が光情報記録媒体70に照射される前に四分の一波長板84を通過し、さらに光情報記録媒体70から反射した再生用参照光93が、再び四分の一波長板84を通過することで90度偏光方向が回転される。この結果、反射した再生用参照光93は、部分偏光板83を通過することができず遮断されるのである。
【0064】
光検出器86は、入射面が対物レンズ85の射出瞳面に位置するように配置され、光情報記録媒体70から再生された再生光92がその入射面に結像し、再生光の空間変調パターンを検出する構成である。光検出器86は光軸方向にホログラフィック光学素子82と隣接して配置されているので、光検出器86の入射面とホログラフィック光学素子82から再生する再生用参照光の空間変調パターンの仮想表示面とが完全に一致する。このような構成とすることにより、非常に光情報再生装置のピックアップを小型化することができるものである。
【0065】
さらに、ホログラフィック光学素子82は、厚いホログラム媒体を用いるなどして波長選択性を高めることが出来るため,側端面から入射する光源81としてシングルモード化されてコヒーレンシーを高めたレーザー光源だけでなく,マルチモード発振した半導体レーザーや,コヒーレンシーの低い発光ダイオードなどの安価な光源を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の光情報再生装置における情報の再生の原理を示す説明図
【図2】本発明の光情報再生装置の一実施形態を示す概略図
【図3】図2の一部拡大図
【図4】(A)は空間光変調器に表示された参照光の空間変調パターン、(B)はホログラフィック光学素子から再生された参照光の空間変調パターンを示す図
【図5】本発明の光情報再生装置の再生時の動作を説明する図
【図6】従来の光情報再生装置の再生時の動作を説明する図
【図7】本発明の光情報再生装置の他の一実施形態を示す概略図
【図8】(A)は従来の光情報記録装置の原理を説明する光学系の概略図、(B)は従来の光情報再生装置の原理を説明する光学系の概略図
【符号の説明】
【0067】
10 光情報再生装置
11 光源
12 コリメータレンズ
13 ホログラフィック光学素子
13a 参照光生成用パターン
14 対物レンズ
15 ビームスプリッタ
16 光検出器
18 再生用参照光
19 再生光
20 光情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された情報記録層を備えた光情報記録媒体から情報を再生する光情報再生装置であって、
光源と、
空間的に変調された再生用参照光を再生する参照光生成用パターンが形成されたホログラフィック光学素子と、
再生用参照光を前記光情報記録媒体の干渉パターンに照射することによって発生する再生光を検出する光検出器とを有することを特徴とする光情報再生装置。
【請求項2】
前記ホログラフィック光学素子を所定の位置に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の光情報再生装置。
【請求項3】
前記ホログラフィック光学素子には複数の参照光生成用パターンが記録されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報再生装置。
【請求項4】
前記ホログラフィック光学素子は、再生用参照光の光束と補助参照光の光束とを一定の角度で交差させることよって形成された干渉パターンが参照光生成用パターンとして記録された他の光情報記録媒体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光情報再生装置。
【請求項5】
前記ホログラフィック光学素子は、光源からの光を側端面から入射させる構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光情報再生装置。
【請求項6】
前記ホログラフィック光学素子と前記光検出器とが隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光情報再生装置。
【請求項7】
前記ホログラフィック光学素子の前記光情報記録媒体に対する光学系内における相対的な位置を移動可能に設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光情報再生装置。
【請求項8】
情報光と記録用参照光との干渉パターンが記録された情報記録層を備えた光情報記録媒体から情報を再生する光情報再生方法であって、
光源からの光をホログラフィック光学素子に形成された参照光生成用パターンに照射して前記参照光生成用パターンから空間的に変調された再生用参照光を再生し、
前記再生した再生用参照光を前記光情報記録媒体の干渉パターンに照射して前記干渉パターンから再生光を再生し、
前記再生した再生光を光検出器によって検出することを特徴とする光情報再生方法。
【請求項9】
前記参照光生成用パターンに照射される前記光源からの光の照射角度を変更することにより、前記ホログラフィック光学素子から異なるパターンに空間的に変調された再生用参照光を再生することを特徴とする請求項8に記載の光情報再生方法。
【請求項10】
前記ホログラフィック光学素子の前記光情報記録媒体に対する光学系内における相対的な位置を移動させることにより、前記光情報記録媒体に照射される再生用参照光の照射位置又は照射角度を補正することを特徴とする請求項8又は9に記載の光情報再生方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−287823(P2008−287823A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133499(P2007−133499)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(500112179)新オプトウエア株式会社 (22)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】