説明

光情報記録装置

【課題】偏光ホログラフィック記録を利用して、より高効率に情報を記録又は再生することである。
【解決手段】光情報記録装置は、空間変調手段及び情報記録手段を備えている。空間変調手段は、参照光用の偏光及び信号光用の偏光を生成し、前記信号光用の偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、少なくとも複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えることによって前記偏光成分にそれぞれ情報を付加する。情報記録手段は、前記情報が前記偏光成分に付加されることによって生成された前記信号光及び前記参照光を重ね合わせて記録媒体に照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録装置、光情報記録方法、光情報再生装置及び光情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を記録して再生する方法の1つとして光メモリを用いたピット記録方式の情報記録再生方法が知られている。実用化されている光メモリとしては、CD (compact disk), DVD (digital versatile disc 又はdigital video disk)及びBD (blue-ray disk)が知られている。これらの光メモリは、寿命、消費電力及び可搬性において磁気メモリよりも優れているため、将来的な発展が期待されている。
【0003】
従来の光メモリの情報記録密度は、ディスクに照射されるレーザのスポットサイズに依存する。そして、レーザのスポットサイズの限界は、レーザの波長と使用されるレンズの開口数に依存する。このため、光メモリは、記憶容量の向上のためにディスク上のピットサイズの縮小による高密度化及び情報の記録に使用される光の短波長化が図られている。
【0004】
しかしながら、光ディスクの高密度化及び光の短波長化には技術的な限界があることから、新たな方式による情報の記録方法及び再生方法の開発が望まれている。そこで、ホログラムを利用したホログラフィック記録が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
ホログラフィック記録は、光の干渉を利用して情報をホログラムとして情報記録媒体に記録する技術である。このため、ホログラフィック記録によれば、情報を情報記録媒体中に三次元(3D: three dimensional)屈折率分布として三次元的に記録することができる。従って、ホログラフィック記録では、情報記録媒体の厚みを有効活用することによって、より大容量の情報を記録することができる。
【0006】
より具体的には、ホログラフィック記録は、情報を持った信号光と参照光とを互いに干渉させて情報記録媒体に照射することによって情報をホログラムとして情報記録媒体に記録する一方、参照光又は信号光を情報記録媒体に照射することによって情報を持った再生光を再生させる光情報記録再生方式である。
【0007】
更に、ホログラフィック記録の応用として偏光ホログラフィック記録が提案されている(例えば非特許文献1及び非特許文献2参照)。偏光ホログラフィック記録は、偏光特性を有するホログラムを形成させる記録であり、例えば、参照光を構成する偏光と信号光を構成する偏光とが互いに直交する場合には、情報記録媒体における記録面では光の強度分布が一様となり、二光束間の位相差によって周期的な偏光分布が形成されるという性質を利用した光情報記録再生方式である。
【0008】
より具体的には、偏光ホログラフィック記録では、互いに直交する偏光として信号光及び参照光が偏光感受性を有する情報記録媒体に照射される。この場合、偏光感受性を有する情報記録媒体内では、偏光に応じた複屈折が誘起され、偏光ホログラムとして情報が記録される。また、記録された情報の再生は、通常のホログラフィック記録と同様に参照光又は信号光を情報記録媒体に照射することによって行われる。つまり、偏光ホログラフィック記録は、偏光方位(電磁場の振動方位)という自由度を有する光のベクトル波としての性質を利用し、情報を情報記録媒体に3D複屈折分布として記録する光情報記録再生方式である。
【0009】
偏光感受性のない情報記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録では、信号光と参照光の偏光状態が互いに同一であることが必要である。これに対し、偏光ホログラフィック記録では、偏光状態が同一でない信号光と参照光を用いて情報を記録することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第04/102542号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Daisuke Barada, et al., "Volume polarization Holography for optical data storage", 7 February 2011, Proceedings of SPIE Vol. 7957, 79570Q
【非特許文献2】「最新フォトニクスポリマー材料と応用技術」、195−201頁、"第8章 大容量光メモリ"、発行者 辻 賢司、発行所 株式会社シーエムシー出版、2011年5月31日 第1刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の光記録方式は、磁気ディスクや磁気テープ等の磁気記録方式と比較して記憶容量及び情報の媒体への入出力速度において劣るという問題がある。従って、偏光ホログラフィック記録においても、記憶容量、情報の記録速度及び情報の再生速度を向上することが課題となっている。
【0013】
本発明は、偏光ホログラフィック記録を利用して、より高効率に情報を記録又は再生することが可能な光情報記録装置、光情報記録方法、光情報再生装置及び光情報再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態に係る光情報記録装置は、空間変調手段及び情報記録手段を備えている。空間変調手段は、参照光用の偏光及び信号光用の偏光を生成し、前記信号光用の偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、少なくとも複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えることによって前記偏光成分にそれぞれ情報を付加する。情報記録手段は、前記情報が前記偏光成分に付加されることによって生成された前記信号光及び前記参照光を重ね合わせて記録媒体に照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録する。
【0015】
また、本発明の実施形態に係る光情報再生装置は、照射手段及び情報取得手段を備えている。照射手段は、偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分にそれぞれ情報を付加することによって生成された信号光及び偏光として生成された参照光を重ね合わせて照射することによって前記情報が記録された記録媒体に、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方を照射する。情報取得手段は、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方の照射によって前記記録媒体から生じた再生光の異なる偏光方位を有する偏光成分を、複数の撮像素子を用いて受光することによって前記情報を取得する。
【0016】
また、本発明の実施形態に係る光情報記録方法は、参照光用の偏光及び信号光用の偏光を生成し、前記信号光用の偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、少なくとも複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えることによって前記偏光成分にそれぞれ情報を付加するステップと、前記情報が前記偏光成分に付加されることによって生成された前記信号光及び前記参照光を重ね合わせて記録媒体に照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録するステップとを有する。
【0017】
また、本発明の実施形態に係る光情報再生方法は、偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分にそれぞれ情報を付加することによって生成された信号光及び偏光として生成された参照光を重ね合わせて照射することによって前記情報が記録された記録媒体に、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方を照射するステップと、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方の照射によって前記記録媒体から生じた再生光の異なる偏光方位を有する偏光成分を、複数の撮像素子を用いて受光することによって前記情報を取得するステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態に係る光情報記録装置、光情報記録方法、光情報再生装置及び光情報再生方法によれば、偏光ホログラフィック記録を利用して、より高効率に情報を記録して再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図。
【図2】図1に示す第1のコンピュータ装置の2Dコード化部においてコード化された2D画像情報の一例を示す図。
【図3】図1に示す光情報記録再生装置により情報記録媒体に多重に記録可能な画像情報の数を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の第1の変形例を示す構成図。
【図5】第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の第2の変形例を示す構成図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図。
【図7】第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の第1の変形例を示す構成図。
【図8】第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の第2の変形例を示す構成図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図。
【図10】図9に示す第1及び第2のSLMにおいてそれぞれ生成される信号光及び参照光の2D領域の一例を示す図。
【図11】第3の実施形態に係る光情報記録再生装置の変形例を示す構成図。
【図12】図11に示す第1及び第2のSLMにより生成される信号光及び参照光の2D領域の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る光情報記録装置、光情報記録方法、光情報再生装置及び光情報再生方法について添付図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
(構成および機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図である。
【0022】
光情報記録再生装置1は、偏光ホログラフィック記録を利用して偏光感受性を有する情報記録媒体2に情報を記録し、記録された情報を再生する装置である。すなわち、光情報記録再生装置1は、偏光ホログラフィック記録を利用して偏光感受性を有する情報記録媒体2に情報を記録する光情報記録装置と、偏光ホログラフィック記録を利用して偏光感受性を有する情報記録媒体2に記録された情報を再生する光情報再生装置を兼ねた装置である。
【0023】
図1には、情報の記録及び再生の双方が可能な光情報記録再生装置1を示しているが、情報の記録のみを行う光情報記録装置をレコーダとして作製したり、逆に情報の再生のみを行う光情報再生装置をプレーヤとして作製することもできる。また、情報記録媒体2を光情報記録再生装置1、光情報記録装置又は光情報再生装置の構成要素として内蔵することが可能である一方、逆に情報記録媒体2を光情報記録再生装置1、光情報記録装置又は光情報再生装置の構成要素とせずに交換できるようにしてもよい。
【0024】
図1に示す光情報記録再生装置1は、偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5を有する。偏光生成系3は、レーザ光を照射し、照射したレーザ光を信号光として用いられる偏光と参照光として用いられる偏光とに分離する機能と、参照光を情報記録媒体2に照射する機能とを有する。情報記録系4は、偏光生成系3において生成された信号光用の偏光を2つの互いに直交する偏光成分に分離して2つの空間光変調器(SLM: spatial light modulator)6A,6Bを用いてそれぞれ個別に2次元(2D: two dimensional)情報を記録する機能と、情報を記録した2つの偏光成分を互いに重ね合わせて信号光を生成し、生成した信号光を情報記録媒体2に照射する機能とを有する。情報再生系5は、参照光が照射された情報記録媒体2から生じる再生光を互いに直交する2つの偏光成分に分離する機能と、分離して得られた2つの偏光成分に基づいて情報を取得する機能とを有する。
【0025】
従って、偏光生成系3から出力される信号光用の偏光を入射させることが可能な位置に情報記録系4が配置される。更に、偏光生成系3から出力される参照光と、情報記録系4から出力される情報を記録した信号光とが重ね合わさる位置に、情報記録媒体2が配置される。一方、参照光が照射された情報記録媒体2から生成される再生光を入射させることが可能な位置に情報再生系5が配置される。
【0026】
尚、情報の記録のみを行う光情報記録装置には、偏光生成系3及び情報記録系4が備えられる。一方、情報の再生のみを行う光情報再生装置には、偏光生成系3及び情報再生系5が備えられる。
【0027】
また、情報記録媒体2に参照光を照射すれば、信号光に応じた再生光が情報記録媒体2から生成されるが、参照光の代わりに信号光を情報記録媒体2に照射させても、信号光に応じた再生光が情報記録媒体2から生成される。従って、信号光を情報記録媒体2に照射することによって再生光を発生させるようにしてもよい。この場合には、情報の記録機能のない光情報再生装置であっても信号光を生成するための光学系である情報記録系4を備えることが必要である。
【0028】
更に、光情報記録装置としての機能と光情報再生装置としての機能を兼ねた光情報記録再生装置1の場合には、情報記録媒体2に記録された情報の再生時において、信号光又は参照光が情報記録媒体2に照射されないようにする機能が備えられる。図1には、情報記録媒体2に記録された情報の再生時において信号光を遮断するための遮断機構7を偏光生成系3と情報記録系4との間に設けた例を示している。但し、情報記録系4又は情報記録媒体2を移動させるなど他の方式によって情報記録媒体2に信号光又は参照光が照射されないようにしてもよい。
【0029】
遮断機構7は、情報記録媒体2への情報の記録時には偏光生成系3から情報記録系4に出力される信号光用の偏光を通過させる一方、情報記録媒体2に記録された情報の再生時には偏光生成系3から情報記録系4に出力される信号光用の偏光を遮断するように構成されている。遮断機構7は、例えばスライド可能な板状の部材やカメラのシャッターと同様な開閉構造を用いて構成することができる。
【0030】
次に、光情報記録再生装置1における光学素子の詳細構成例について説明する。
【0031】
図1に示す光情報記録再生装置1の偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5は、それぞれ上述した機能を備えるために複数の光学素子を用いて構成した例を示している。具体的には、図1に示す偏光生成系3は、光路Lに沿ってレーザ光源8、減光(ND: neutral density)フィルタ9、第1のミラー10、第1の1/2波長板(HWP: half-wave plate)11、対物レンズ12、第1の空間フィルタ(SF: spatial filter)13、第1のコリメータレンズ14、第2のミラー15、第1の偏光ビームスプリッタ(PBS: polarizing beam splitter)16、第3のミラー17及び第4のミラー18を備えている。情報記録系4は、第2のHWP19、第2のPBS20、第1のSLM6A、第2のSLM6B、第1のコンピュータ装置21、第2のコリメータレンズ22、第2のSF23及び第3のコリメータレンズ24を備えている。情報再生系5は、第3のPBS25、第1の撮像素子26、第2の撮像素子27及び第2のコンピュータ装置28を備えている。尚、第1のコンピュータ装置21及び第2のコンピュータ装置28を共通のコンピュータ装置としてもよい。
【0032】
レーザ光源8としては、例えば波長が532nmの緑色の半導体励起固体 (DPSS: Diode-Pumped Solid-State)レーザを直線偏光として照射することが可能な光源を用いることができる。レーザ光源8の出力先には、レーザ光から不要な成分を除去して減光するためのNDフィルタ9を経由して第1のミラー10が配置される。
【0033】
第1のミラー10で反射したレーザ光の進行方向には、順に第1のHWP11、対物レンズ12、第1のSF13、第1のコリメータレンズ14及び第2のミラー15が配置される。第1のHWP11は、直線偏光であるレーザ光の偏光方位を所望の角度に回転させるための光学素子である。例えば、第1のHWP11は、レーザ光の偏光方位を45度回転させるように調整される。
【0034】
対物レンズ12は、偏光方位が調整されたレーザ光を一旦絞った後に拡大して第1のコリメータレンズ14に入射させるための光学素子である。第1のSF13は、対物レンズ12において一旦絞られた直線偏光から散乱成分等の不要な成分を除去するための光学素子である。また、第1のコリメータレンズ14は、対物レンズ12により拡大された直線偏光をコリメートすることによって所望の幅又は直径を有する平行ビームの直線偏光に変換するための光学素子である。つまり、第1のHWP11、対物レンズ12、第1のSF13及び第1のコリメータレンズ14は、偏光方位を所望の角度に回転させた直線偏光の平行ビームを生成する光学系を形成している。
【0035】
また、第1のコリメータレンズ14において生成された直線偏光の平行ビームを反射させることが可能な位置に第2のミラー15が配置される。更に、第2のミラー15に反射した直線偏光の平行ビームの進行方向には、第1のPBS16が配置される。
【0036】
第1のPBS16は、第2のミラー15に反射した直線偏光の平行ビームを信号光用の直線偏光と参照光用の直線偏光とに分離するための光学素子である。第1のPBS16において分離した信号光用の直線偏光と参照光用の直線偏光とは互いに直交する偏光となる。図1に示す例では、信号光用の直線偏光がs(senkrecht)偏光となり、参照光がp(parallel)偏光となるが、逆でもよい。尚、s偏光は電界成分の振動方向が入射面に垂直な偏光であり、p偏光は電界成分の振動方向が入射面に平行な偏光である。
【0037】
従って、第1のHWP11から偏光方位の角度が45度の直線偏光が出力されるようにすれば、互いに等価な強度を有する信号光用の直線偏光と参照光用の直線偏光とを第1のPBS16において生成することができる。
【0038】
第1のPBS16において反射する信号光用の直線偏光を入射させることが可能な位置には、情報記録系4の第2のHWP19が配置される。一方、第1のPBS16を透過して直線偏光として生成された参照光を反射させて情報記録媒体2に照射することが可能となる位置に第3のミラー17及び第4のミラー18が配置される。
【0039】
情報記録系4の第2のHWP19は、信号光用の直線偏光の偏光方位を所望の角度に回転させるための光学素子である。例えば、第2のHWP19は、信号光用の直線偏光の偏光方位を45度回転させるように調整される。
【0040】
第2のPBS20は、第2のHWP19から出力される信号光用の直線偏光を入射可能な位置に配置される。第2のPBS20は、信号光用の直線偏光を互いに直交する2つの偏光成分に分離するための光学素子である。図1に示す例では、信号光用の直線偏光が第1の偏光成分としてのs偏光と第2の偏光成分としてのp偏光に分離される。従って、第2のHWP19から偏光方位の角度が45度の直線偏光が出力されるようにすれば、互いに等価な強度を有するs偏光とp偏光とを第2のPBS20において生成することができる。
【0041】
第2のPBS20において反射することによって生成されたs偏光を、入射角度を90度として入射させることが可能な位置には、第1のSLM6Aが配置される。一方、第2のPBS20を透過して生成されたp偏光を、入射角度を90度として入射させることが可能な位置には、第2のSLM6Bが配置される。図1には、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bとして反射型液晶SLMを用いた例を示している。SLMとしては、反射型液晶SLMの他、磁気光学空間光変調器(MOSLM: magneto optic spatial light modulator)などが知られている。
【0042】
第1のSLM6A及び第2のSLM6Bは、それぞれ第1のコンピュータ装置21と接続される。そして、第1のSLM6Aは、第1のコンピュータ装置21から第1のSLM6A用に出力される情報に応じてs偏光の偏光方位を画素ごとに回転させることができるように構成される。同様に、第2のSLM6Bは、第1のコンピュータ装置21から第2のSLM6B用に出力される情報に応じてp偏光の偏光方位を画素ごとに回転させることができるように構成される。尚、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bは、互いに独立して同時にs偏光及びp偏光の各偏光方位を回転させることができる。
【0043】
第1のコンピュータ装置21は、入力装置21A及び表示装置21Bを備えている。また、第1のコンピュータ装置21は、プログラムを演算装置21Cに読み込ませることによって、演算装置21Cを情報取得部21D及び2Dコード化部21Eとして機能させたものである。尚、第1のコンピュータ装置21の全部又は一部の機能を得るために回路を用いてもよい。
【0044】
情報取得部21Dは、入力装置21Aからの指示情報に従って、ネットワークを介して、或いは所望のストレージから情報記録媒体2に記録すべき情報を取得する機能を有する。情報記録媒体2には、動画や静止画等の画像の他、音声やテキスト文書データ等のデジタル信号として出力可能なあらゆる情報を記録することが可能である。
【0045】
2Dコード化部21Eは、入力装置21Aからの指示情報に従って、情報取得部21Dにおいて取得された情報を第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの画素に対応する画素を有する2Dのコード化された2つの画像情報に変換し、変換した2つの2D画像情報に従って第1のSLM6A及び第2のSLM6Bを制御する機能を有する。具体的には、2Dコード化部21Eは、2D画像情報を構成する画素の値に応じてs偏光及びp偏光を構成する各画素の偏光方位が回転するように第1のSLM6A及び第2のSLM6Bに個別に制御信号を出力するように構成される。
【0046】
図2は、図1に示す第1のコンピュータ装置21の2Dコード化部21Eにおいてコード化された2D画像情報の一例を示す図である。
【0047】
情報記録媒体2への記録対象となる情報がデジタル情報であれば、情報の種類に依らず図2(A)に示すように0と1の2進数のデータ例として表現することができる。2進数で表された情報は、所定のビット数を単位として図2(B)に示すような白と黒の2値の複数の画素を有する2Dのシンボルイメージで表すことができる。図2(B)は、8ビットの情報を1つのシンボルイメージで表した例を示している。
【0048】
図2(B)に示すシンボルイメージを単位とすると、情報記録媒体2への記録対象となる情報は図2(C)に示すような白と黒の2値の複数の画素を有する2D画像情報にコード化することができる。従って、図2(C)に示す2D画像情報の画素数を第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの画素数に合わせれば、2D画像情報の画素値が0であるか1であるかに応じて、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの対応する画素における偏光方位を回転させることができる。すなわち、第1のSLM6A及び第2のSLM6B により、2D画像情報を偏光方位の分布を有する信号光に変換することができる。例えば、偏光方位の回転角度を90度とすれば、画素ごとにs偏光とp偏光で構成される信号光が第1のSLM6A及び第2のSLM6B において生成される。
【0049】
図2(C)に示す例では、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの画素数に対応する2D画像情報を、ページを単位として計数することが可能なページデータとしている。尚、情報記録系4には、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの2つのSLMが備えられている。このため、同時に2ページの2D画像情報を並行して信号光の2つの偏光成分における偏光方位の画素分布として付加することができる。すなわち、第1の2D画像情報を第1のSLM6Aに、第2の2D画像情報を第2のSLM6Bに、それぞれ出力し、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおいて第1の2D画像情報及び第2の2D画像情報を、ベクトル波としての信号光の2つの偏光成分の偏光方位分布に変換することができる。
【0050】
第1のSLM6A及び第2のSLM6Bに入力される第1の2D画像情報及び第2の2D画像情報並びに第1の2D画像情報及び第2の2D画像情報の元データとなった第1の情報及び第2の情報は、第1のコンピュータ装置21の表示装置21Bに表示させて確認することができる。
【0051】
第1のSLM6A及び第2のSLM6B には、それぞれ信号光用の2つの偏光成分が垂直に入射する。従って、2D画像情報を偏光方位の画素分布として持つ2つの偏光成分は、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bでそれぞれ反射した信号光の偏光成分として第2のPBS20に入射することとなる。このため、第1のSLM6Aにおいて生成された信号光のp偏光成分は、第2のPBS20を透過する。一方、第2のSLM6Bにおいて生成された信号光のs偏光成分は、第2のPBS20において反射する。この結果、第2のPBS20からは、第2のPBS20に入射した信号光用の偏光の入射方向と90度をなす方向に、第1の2D画像情報及び第2の2D画像情報をもち、かつ互いに直交するs偏光成分とp偏光成分を有する信号光が出力される。
【0052】
つまり、情報記録系4の第2のHWP19、第2のPBS20、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bによって、ベクトル波としての性質を有する偏光の2つの偏光成分に、それぞれ情報として空間的な偏光方位の変調が付与される。従って、第2のHWP19、第2のPBS20、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bは、ベクトル波空間変調系として機能している。また、第1のSLM6A及び第2のSLM6B における偏光方位の回転角度を90度とすれば、より強度の強いs偏光成分とp偏光成分を有する信号光を第2のPBS20から出力することができる。
【0053】
第2のPBS20から出力される信号光の光路L上には、順に第2のコリメータレンズ22、第2のSF23及び第3のコリメータレンズ24が配置される。第2のコリメータレンズ22は、平行ビームとなっている信号光を一旦絞った後、所定の幅に拡大して第3のコリメータレンズ24に入射させるための光学素子である。第2のSF23は、第2のコリメータレンズ22によって絞られた信号光から不要な成分を除去するための光学素子である。第3のコリメータレンズ24は、第2のコリメータレンズ22によって拡大された信号光をコリメートすることによって情報記録媒体2上における情報の記録エリアに対応する幅を有する平行ビームを生成するための光学素子である。
【0054】
第3のコリメータレンズ24において生成される平行ビームとしての信号光及び偏光生成系3の第4のミラー18において反射した参照光を重ね合わせて入射させることが可能な位置には、偏光感受性を有する情報記録媒体2がセットされる。偏光感受性を有する情報記録媒体2は、互いに異なる複数の角度から参照光及び信号光を重ね合わせて照射することによってホログラムとして情報を多重に記録することが可能な情報記録媒体である。
【0055】
従って、光情報記録再生装置1に回転テーブル29を設け、偏光感受性を有する情報記録媒体2を回転テーブル29の上に設置するようにしてもよい。すなわち、回転テーブル29の駆動によって情報記録媒体2に異なる角度から信号光及び参照光を重ね合わせて照射できるように構成することができる。
【0056】
或いは、図1に示すように回転テーブル29の回転動作によって情報記録媒体2を傾ける代わりに、光情報記録再生装置1に回転機構を設け、回転機構の駆動によって光情報記録再生装置1の一部又は全体が回転するように構成してもよい。すなわち、情報記録媒体2及び光情報記録再生装置1の一方又は双方を回転させることによって情報記録媒体2に対する光学軸の傾斜を可変制御することができる。
【0057】
偏光感受性を有する情報記録媒体2の材料としては、アゾベンゼン系材料、光反応性分子添加ポリマー、光架橋性高分子液晶などが知られている。実用的な具体例として、厚さ3mm程度のPQ-PMMA(phenanthrenequinone doped polymethylmethacrylate)の膜などを、偏光感受性を有する情報記録媒体2として用いることができる。
【0058】
偏光感受性を有する情報記録媒体2は、直線偏光又は楕円偏光を照射すると、照射した偏光の偏光方位に対応する主軸をもつ複屈折又は二色性等の光学異方性が誘起されるという性質を有する。このため、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いれば、原理的に偏光状態が互いに同一でない信号光と参照光を重ね合わせて照射してもホログラムとして情報を記録することが可能である。
【0059】
偏光感受性を有する情報記録媒体2に入射する信号光は、2つの直交するs偏光成分及びp偏光成分にそれぞれ個別に2D画像情報を記録した信号光である。従って、回転テーブル29を停止させ、情報記録媒体2への信号光の入射角度を固定した状態で同時に2ページ分の2D画像情報を記録することができる。更に、上述したように回転テーブル29を回転させて情報記録媒体2の信号光の入射方向に対する角度を変えることによって、角度の数だけ2D画像情報を順次情報記録媒体2に記録することができる。
【0060】
図3は、図1に示す光情報記録再生装置1により情報記録媒体2に多重に記録可能な画像情報の数を示す図である。
【0061】
図3において縦軸は信号光を構成するベクトル波の2つの偏光成分を示し、横軸は情報記録媒体2の法線方向と信号光の進行方向とのなす角度を示す。図2に示す情報記録系4の場合には、信号光を構成する偏光成分は、互いに直交するs偏光成分とp偏光成分である。
【0062】
従って、図3に示すように、情報記録媒体2の仰角を0度と5度の2通りに固定して情報記録媒体2に順次情報を記録すれば、2つの偏光成分の偏光方位及び情報記録媒体2の2つの角度に対応する2D-IMAGE1, 2D-IMAGE2, 2D-IMAGE3, 2D-IMAGE4の合計4ページ分の2D画像情報をホログラムとして情報記録媒体2に記録することができる。
【0063】
このようにホログラムとして情報が記録された情報記録媒体2に、偏光生成系3から参照光を照射すると信号光に対応する再生光が情報記録媒体2において生成される。
【0064】
情報再生系5の第3のPBS25は、情報記録媒体2において生じた再生光を入射させることが可能な位置に配置される。従って、第3のPBS25は、再生光に含まれるp偏光成分を透過させる一方、再生光に含まれるs偏光成分を反射させるための光学素子である。従って、第3のPBS25において再生光をp偏光とs偏光とに分離することができる。
【0065】
第1の撮像素子26は、第3のPBS25を透過したp偏光を受光することが可能な位置に配置される。一方、第2の撮像素子27は、第3のPBS25で反射したs偏光を受光することが可能な位置に配置される。第1の撮像素子26は、信号光の成分であるp偏光を受光し、p偏光の強度に応じた電気信号に変換して第1の2D画像データとして出力させる光学素子である。また、第2の撮像素子27は、信号光の成分であるs偏光を受光し、s偏光の強度に応じた電気信号に変換して第2の2D画像データとして出力させる光学素子である。
【0066】
図1に示す光学素子の構成例の場合には、第1の撮像素子26において撮像された第1の2D画像データの画素分布は、第1のSLM6Aの制御情報として用いられた2値の第1の2D画像情報の画素分布と等価となる。同様に、第2の撮像素子27において撮像された第2の2D画像データの画素分布は、第2のSLM6Bの制御情報として用いられた2値の第2の2D画像情報の画素分布と等価となる。
【0067】
また、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27としては、相補型金属酸化膜半導体(CMOS: complementary metal oxide semiconductor)や電荷結合素子(CCD Charge Coupled Device)等のイメージセンサを用いることができる。
【0068】
第2のコンピュータ装置28は、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27の各出力側と接続される。第2のコンピュータ装置28は、入力装置28A及び表示装置28Bを備えている。また、第2のコンピュータ装置28は、演算装置28Cにプログラムを読み込ませることによって、フィルタ部28D及び情報再生部28Eとして機能させたものである。尚、第2のコンピュータ装置28の全部又は一部の機能を得るために回路を用いてもよい。
【0069】
フィルタ部28Dは、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27からそれぞれ入力された第1の2D画像データ及び第2の2D画像データにフィルタ処理を施すことにより、ノイズ成分等の不要な信号成分を除去する機能を有する。すなわち、フィルタ部28Dは、図2(C)に示すようなページを単位として計数することが可能なコード化されたページデータを第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27からそれぞれ取得してノイズをカットする機能を備えている。
【0070】
情報再生部28Eは、フィルタ処理後の第1の2D画像データ及び第2の2D画像データに基づいて、第1のコンピュータ装置21の2Dコード化部21Eにおいて第1の2D画像情報及び第2の2D画像情報の元データとなった情報、すなわち情報取得部21Dにおいて情報記録媒体2に記録すべき情報として取得された情報を再生する機能と、再生した情報を表示装置28Bに表示させる機能とを有する。尚、再生された情報が音声である場合には、スピーカに情報を出力するようにしてもよい。また、再生された情報をプリンタに出力するようにしてもよい。
【0071】
フィルタ部28D及び情報再生部28Eを動作させるための指示情報は、入力装置28Aから入力することができる。
【0072】
(動作および作用)
次に光情報記録再生装置1の動作および作用について説明する。最初に、光情報記録再生装置1による情報記録媒体2への情報の記録動作の流れについて説明する。
【0073】
情報記録媒体2を交換することが可能な光情報記録再生装置において、情報記録媒体2に情報を記録する場合には、まず予め回転テーブル29上に偏光感受性を有する偏光ホログラフィック記録用の情報記録媒体2が設置される。
【0074】
次に、光情報記録再生装置1の偏光生成系3において生成される参照光及び情報記録系4において生成される信号光を所定の角度から重ね合わせて情報記録媒体2に照射できるように回転テーブル29が駆動する。また、遮断機構7は、偏光生成系3から情報記録系4に出力される信号光用の偏光を通過させる状態にセットされる。
【0075】
尚、情報記録媒体2を構成要素として内蔵する光情報記録再生装置や情報記録媒体2を回転させる機能のない光情報記録再生装置の場合には、情報記録媒体2の設置や回転テーブル29の回転が実行されず、遮断機構7の駆動によって、情報記録媒体2への情報の記録が可能な状態となる。
【0076】
一方、情報記録系4の第1のコンピュータ装置21では、情報取得部21Dにより、情報記録媒体2に記録すべき情報が取得される。情報記録媒体2に記録すべき情報は、入力装置21Aから情報の特性情報を入力することによって、所望のストレージから情報取得部21Dに入力することができる。次に、2Dコード化部21Eでは、情報取得部21Dにおいて取得されたデジタル情報が、所望の法則に従って白と黒等の2値で表される2Dのコード化された2つの第1の画像情報及び第2の画像情報に変換される。
【0077】
このような情報記録媒体2への記録対象となる情報の取得及び情報記録媒体2のセットが完了すると、偏光生成系3のレーザ光源8から直線偏光のレーザ光が照射される。レーザ光源8から照射されたレーザ光は、NDフィルタ9において不要な成分が除去された後、第1のミラー10に反射する。
【0078】
第1のミラー10で反射したレーザ光は、第1のHWP11に入射し、偏光方位が所定の角度に調整される。ここでは、第1のHWP11においてレーザ光の偏光方位が45度に調整されるものとして説明する。偏光方位が調整されたレーザ光は、対物レンズ12により一旦絞られ、第1のSF13にて不要な成分が除去された後、第1のPBS16の入射面の大きさに応じた幅に拡大される。幅が拡大した直線偏光は、第1のコリメータレンズ14に入射し、直線偏光の平行ビームとなって第2のミラー15に反射する。
【0079】
第2のミラー15で反射した偏光方位が45度の直線偏光は、第1のPBS16に入射する。このため、第1のPBS16からは参照光としてp偏光が透過する。一方、第1のPBS16から信号光用のs偏光が反射する。すなわち、第1のPBS16において偏光方位が45度の直線偏光が、互いに強度が同等な参照光用のp偏光と信号光用のs偏光とに分離される。
【0080】
信号光用のs偏光は、情報記録系4の第2のHWP19に入射する。そして、信号光用のs偏光の偏光方位は、第2のHWP19において所定の角度に回転する。ここでは、第2のHWP19において信号光用の直線偏光の偏光方位が45度に回転するものとして説明する。偏光方位が45度となった信号光用の直線偏光は、第2のPBS20に入射する。
【0081】
このため、第2のPBS20に入射した直線偏光のs偏光成分は第2のPBS20にて反射する一方、直線偏光のp偏光成分は第2のPBS20を透過する。すなわち、信号光用の直線偏光は、第2のPBS20において互いに直交する信号光用のs偏光とp偏光とに分離される。そして、信号光用のs偏光は、第1の偏光成分として第1のSLM6Aに入射する。また、信号光用のp偏光は、第2の偏光成分として第2のSLM6Bに入射する。
【0082】
一方、2Dコード化部21Eは、情報記録媒体2に記録すべき情報の一部が変換された第1の画像情報の画素値に応じて第1のSLM6Aによる偏光方位の回転対象となる画素の位置を制御する。例えば、第1の画像情報の画素値が1となる画素に対応する2D位置の偏光方位のみが90度回転するように第1のSLM6Aが2Dコード化部21Eからの制御信号によって制御される。
【0083】
同様に、2Dコード化部21Eは、情報記録媒体2に記録すべき情報の他の一部が変換された第2の画像情報の画素値に応じて第2のSLM6Bによる偏光方位の回転対象となる画素の位置を制御する。例えば、第2の画像情報の画素値が1となる画素に対応する2D位置の偏光方位のみが90度回転するように第2のSLM6Bが2Dコード化部21Eからの制御信号によって制御される。
【0084】
従って、第1のSLM6Aに入射したs偏光は、第1の画像情報の画素値が1である画素に対応する2D位置における偏光方位が90度回転してp偏光となった画素分布を有する偏光として反射する。すなわち、第1のSLM6Aからは、第1の画像情報の画素値分布に対応するs偏光とp偏光の2D分布を有する信号光が反射する。そして、第1のSLM6Aにて反射した第1の信号光は、第2のPBS20に入射する。
【0085】
同様に、第2のSLM6Bに入射したp偏光は、第2の画像情報の画素値が1である画素に対応する2D位置における偏光方位が90度回転してs偏光となった画素分布を有する偏光として反射する。すなわち、第2のSLM6Bからは、第2の画像情報の画素値分布に対応するs偏光とp偏光の2D分布を有する信号光が反射する。そして、第2のSLM6Bにて反射した第2の信号光は、第2のPBS20に入射する。
【0086】
このため、第2のPBS20に入射した第1の信号光のうち第1の画像情報に対応するp偏光成分は第2のPBS20を透過する。一方、第2のPBS20に入射した第2の信号光のうち第2の画像情報に対応するs偏光成分は第2のPBS20において反射する。この結果、第2のPBS20からは、第1の画像情報に対応するp偏光成分及び第2の画像情報に対応するs偏光成分が合成された信号光が情報記録媒体2に向かって出力される。
【0087】
第2のPBS20から出力された信号光は、第2のコリメータレンズ22に入射して一旦絞られた後、情報記録媒体2上における情報の記録エリアに対応する幅に拡大される。また、第2のコリメータレンズ22により一旦絞られた信号光からは、第2のSF23により不要な成分が除去される。第2のコリメータレンズ22により拡大された信号光は、第3のコリメータレンズ24に入射して平行ビームにコリメートされる。
【0088】
第3のコリメータレンズ24において、情報記録媒体2上における情報の記録エリアに対応する幅を有する平行ビームとして生成された信号光は、情報記録媒体2上における情報の記録エリアに照射される。一方、第1のPBS16を透過したp偏光は、第3のミラー17及び第4のミラー18に順次反射して参照光として情報記録媒体2上における情報の記録エリアに照射される。従って、情報記録媒体2には、信号光と参照光との干渉光が照射される。
【0089】
この結果、情報記録媒体2には、信号光の直交する2つの偏光成分に個別に付加された第1の画像情報に対応する画素分布及び第2の画像情報に対応する画素分布が同時に偏光ホログラムとして記録される。すなわち、信号光を構成するp偏光成分と参照光を構成するp偏光とによる光強度の干渉パターンとともに信号光を構成するs偏光成分と参照光を構成するp偏光とによる光強度の偏光干渉パターンが同時に情報記録媒体2上に3D複屈折分布として記録される。
【0090】
更に、回転テーブル29を駆動し、情報記録媒体2の角度を変えることによって同様な情報の記録が可能である。情報記録媒体2の角度を変えて情報を記録すれば、同一の情報記録媒体2に対して多重に情報を記録することが可能である。
【0091】
次に、光情報記録再生装置1による情報記録媒体2に記録された情報の再生動作の流れについて説明する。
【0092】
情報記録媒体2を交換することが可能な光情報記録再生装置において、情報記録媒体2に記録された情報を再生する場合には、再生すべき情報記録媒体2が回転テーブル29上に設置される。また、再生対象となる情報が記録された際の情報記録媒体2の角度となるように回転テーブル29が駆動する。更に、遮断機構7は、偏光生成系3から情報記録系4に出力される信号光用の偏光を遮断する状態にセットされる。
【0093】
尚、情報記録媒体2を構成要素として内蔵する光情報記録再生装置や情報記録媒体2を回転させる機能のない光情報記録再生装置の場合には、情報記録媒体2の設置や回転テーブル29の駆動は実行されず、遮断機構7の駆動によって、情報記録媒体2に記録された情報の再生が可能な状態となる。
【0094】
次に、偏光生成系3のレーザ光源8から直線偏光のレーザ光が照射される。そうすると、情報の記録時と同様な流れで、第1のPBS16からは参照光としてp偏光が透過する一方、信号光用のs偏光が反射する。但し、信号光用のs偏光は、遮断機構7によって遮断される。従って、情報記録系4には、信号光用のs偏光が入射せず、信号光は生成されない。
【0095】
一方、第1のPBS16を透過したp偏光の参照光は、第3のミラー17及び第4のミラー18に順次反射する。この結果、再生対象となる情報の記録時と同じ偏光状態を有する参照光のみが情報の記録時と同じ角度から情報記録媒体2に照射される。
【0096】
これにより、情報記録媒体2からは、信号光に対応する偏光成分を有する再生光が生じる。すなわち、第1の画像情報に対応する画素分布を有するp偏光成分と、第2の画像情報に対応する画素分布を有するs偏光成分とが合成された再生光が情報記録媒体2から出力される。
【0097】
情報記録媒体2から出力された再生光は、情報再生系5の第3のPBS25に入射する。このため、再生光のp偏光成分は第3のPBS25を透過する一方、s偏光成分は第3のPBS25に反射する。すなわち、再生光は、第3のPBS25において、画素分布として第1の画像情報に対応する情報を持ったp偏光と、画素分布として第2の画像情報に対応する情報を持ったs偏光とに分離される。
【0098】
第1の画像情報に対応する情報を持ったp偏光は、第1の撮像素子26によって受光される。そして、p偏光は第1の撮像素子26において第1の画像情報を表す電気信号に変換されて、第2のコンピュータ装置28に出力される。
【0099】
同様に、第2の画像情報に対応する情報を持ったs偏光は、第2の撮像素子27によって受光される。そして、s偏光は第2の撮像素子27において第2の画像情報を表す電気信号に変換されて、第2のコンピュータ装置28に出力される。
【0100】
すなわち、再生光から分離されたp偏光成分及びs偏光成分は、それぞれ第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27によって同時かつ並行して撮像される。そして、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27によって同時かつ並行して取得された2値の第1の画像情報及び第2の画像情報が第2のコンピュータ装置28に出力される。
【0101】
第2のコンピュータ装置28に入力された第1の画像情報及び第2の画像情報はフィルタ部28Dに与えられる。フィルタ部28Dでは、第1の画像情報及び第2の画像情報のノイズ成分等の不要な画像信号の成分がフィルタ処理によってカットされる。
【0102】
次に、不要な画像信号の成分がカットされた2値の第1の画像情報及び第2の画像情報は、情報再生部28Eに与えられる。情報再生部28Eでは、フィルタ処理後の第1の画像情報及び第2の画像情報並びに第1のコンピュータ装置21の2Dコード化部21Eにおける情報のコード化処理のための法則に基づいて、第1の画像情報及び第2の画像情報の元データとなった情報を生成する。これにより、情報記録媒体2に記録された情報が情報再生部28Eにおいて再生される。そして、情報再生部28Eにおいて再生された情報は、表示装置28Bに表示させることができる。
【0103】
つまり以上のような、光情報記録再生装置1は、光の振動方向を表す電磁場ベクトルを2つの成分に分離できることを利用して、情報の記録時には信号光用の偏光を互いに直交する2つの偏光成分に分離し、分離した2つの偏光成分に2つの画像情報を2つのSLMを用いて独立かつ同時に情報を記録するようにしたものである。また、光情報記録再生装置1は、情報の再生時には、PBSと2つの撮像素子によって再生光を互いに直交する2つ偏光成分に分離し、独立かつ同時に2つの偏光成分から2つの画像情報を再生するようにしたものである。
【0104】
尚、上述した例では、s偏光とp偏光に情報が記録されるようにしたが、s偏光とp偏光以外の互いに直交する2つの偏光成分に、それぞれ個別に画像情報を記録することもできる。或いは、光のベクトル波としての性質を利用し、互いに直交しない2つの偏光成分に、それぞれ個別に画像情報を記録することもできる。
【0105】
すなわち、信号光を構成する直線偏光は、原理的に所望の角度で交差する2つの偏光成分に分離することができる。従って、信号光を互いに直交しない2つの偏光成分に分離し、かつ分離した2つの偏光成分を重ね合わせて情報記録媒体2に照射できるように光学素子を配置すれば、互いに直交しない2つの偏光成分に同時に2つの2D情報を記録し、記録した2つの2D情報を同時に再生することができる。
【0106】
更に、上述した例では、信号光及び再生光の偏光成分を直線偏光としたが、円偏光や楕円偏光としてもよい。例えば、左円偏光と右円偏光は、互いに直交する偏光成分として重ね合わせて直線偏光とすることができる。従って、直線偏光を互いに直交する左円偏光成分と右偏光成分とに分離し、かつ分離した2つの円偏光成分を重ね合わせて情報記録媒体2に照射できるように光学素子を配置すれば、2つの円偏光成分に同時に2つの2D情報を記録し、記録した2つの2D情報を同時に再生することができる。
【0107】
直線偏光及び円偏光は、楕円偏光の一種として含まれる。従って、楕円偏光を2つの直交または直交しない2つの楕円偏光成分に分離し、分離した2つの楕円偏光成分に2つのSLMを用いて同時に2D情報を付加することができる。一方、楕円偏光の再生光を2つの直交または直交しない2つの楕円偏光成分に分離し、分離した2つの楕円偏光成分を2つの撮像素子を用いて撮像することによって同時に2つの2D情報を再生することが可能である。この場合、光学素子の種類及び配置は、信号光、参照光及び再生光として用いられる偏光の種類及び情報を記録する2つの偏光成分の種類に応じて決定すればよい。
【0108】
(効果)
このため、光情報記録再生装置1によれば、データの記録速度及び再生速度を向上させることができる。換言すれば、単位時間当たりに情報記録媒体2に記録できる情報量及び単位時間当たりに情報記録媒体2から読み出すことが可能な情報量を増加させることができる。
【0109】
具体的には、1つのSLM及び1つの撮像素子を備えた光情報記録再生装置に比べてデータの記録速度及び再生速度を原理的に2倍にすることができる。また、光のベクトル波としての性質を利用せずに、信号光の成分ごとに情報を記録しない場合と比べれば、データの記録速度及び再生速度に加えて情報の記憶容量も原理的に2倍にすることができる。
【0110】
加えて、光情報記録再生装置1によれば、2つの2D情報を同時に情報記録媒体2に記録し、かつ同時に2つの2D情報を情報記録媒体2から読み出すことができる。従って、情報記録媒体2への信号光、参照光及び再生光の照射回数を低減させることができる。これにより、情報記録媒体2への負荷を低減することも可能である。
【0111】
このため、光情報記録再生装置1を、データのバックアップ用メモリ、データサーバ用メモリ、映像記録用メモリ等の様々な用途の情報記録再生装置として用いることができる。
【0112】
(第1の変形例)
図1には、光情報記録再生装置1を構成する光学素子群の配置の一例を示したが、偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5に同様な機能が得られれば、他の光学素子群の配置によって光情報記録再生装置を構成することができる。
【0113】
図4は、第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の第1の変形例を示す構成図である。
【0114】
図4に示された光情報記録再生装置1Aでは、球面波の信号光が情報記録媒体2に照射され、球面波の再生光が情報記録媒体2から生じるように偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5を構成する光学素子群の配置を決定した点が図1に示す光情報記録再生装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す光情報記録再生装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0115】
光情報記録再生装置1Aでは、一部の光学素子及びコンピュータ装置34が情報記録系4及び情報再生系5を構成するための共通の構成要素となっている。具体的には、レーザ光源8、NDフィルタ9、複数のHWP30、複数のPBS31、複数のコリメータレンズ32、複数のミラー33、第1のSLM6A、第2のSLM6B、第1の撮像素子26、第2の撮像素子27、コンピュータ装置34及び遮断機構7を図4に示すように配置することによって偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5が構成される。
【0116】
尚、コンピュータ装置34は、図1に示す第1のコンピュータ装置21及び第2のコンピュータ装置28に備えられる各機能を有している。このため、コンピュータ装置34の機能ブロック図は省略する。
【0117】
更に、偏光感受性を有する情報記録媒体2が可動機構35に固定される。可動機構35は、2つのコリメータレンズ32の間に配置され、平行移動及び回転移動できるように構成されている。そして、可動機構35の一次元方向、二次元方向又は三次元方向の平行移動によって、信号光を絞って球面波として情報記録媒体2に照射するコリメータレンズ32の焦点位置に情報記録媒体2の記録部位が位置決めすることができる。
【0118】
従って、情報記録媒体2に参照光を照射すると情報記録媒体2からは球面波として再生光が生じる。再生光の進行方向には、球面波の再生光をコリメートすることによって、所定の幅を有する平行ビームの再生光を生成するコリメータレンズ32が配置される。
【0119】
このような構成を有する光情報記録再生装置1Aによっても図1に示す光情報記録再生装置1と同等な効果を得ることができる。加えて、図4に示す光情報記録再生装置1Aでは、情報記録媒体2に、2D情報をスポット状に記録することができる。しかも可動機構35の駆動によって情報記録媒体2上の情報記録エリアをシフトさせることができる。従って、より多くの2D情報を高密度に情報記録媒体2に記録することができる。
【0120】
尚、図4には平板状の情報記録媒体2を用いた例が示されているが、CDのような円盤状の情報記録媒体を可動機構35によって軸を中心として回転させれば、情報記録エリアを容易にシフトさせて効率的に情報を記録又は情報の読出しを行うことができる。
【0121】
更に、情報記録媒体2が信号光の入射方向に対して傾斜するように可動機構35を回転させれば、情報記録媒体2に情報を多重記録することができる。このため、従来の光ディスク等の記録媒体を用いる場合に比べて極めて容量の大きい情報を情報記録媒体2に高速に記録することが可能である。
【0122】
また、図1に示す光情報記録再生装置1の場合と同様に、情報記録媒体2を回転及び移動させる代わりに、或いは、情報記録媒体2の回転及び移動に加えて、光情報記録再生装置1Aの一部又は全体が回転及び移動するように構成してもよい。この場合には、光情報記録再生装置1Aに、光情報記録再生装置1Aの一部又は全体を回転及び移動させるための可動機構を設ければよい。
【0123】
(第2の変形例)
図1及び図4に示す光情報記録再生装置1、1Aでは、信号光を2つの偏光成分に分離してから2D情報をそれぞれ各偏光成分に同時に記録するようにしたが、信号光を分離せずに2つの偏光成分にそれぞれ2D情報を順次記録することもできる。
【0124】
図5は、第1の実施形態に係る光情報記録再生装置の第2の変形例を示す構成図である。
【0125】
図5に示された光情報記録再生装置1Bでは、信号光を分離せずに2つの偏光成分にそれぞれ2D情報が記録されるように偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5を構成する光学素子群の配置を決定した点が図4に示す第1の変形例の光情報記録再生装置1Aと相違する。他の構成および作用については図4に示す光情報記録再生装置1Aと実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0126】
光情報記録再生装置1Bでは、一部の光学素子及びコンピュータ装置34が情報記録系4及び情報再生系5を構成するための共通の構成要素となっている。具体的には、レーザ光源8、NDフィルタ9、複数のHWP30、複数のPBS31、複数のコリメータレンズ32、複数のミラー33、反射型の第1のSLM6A、透過型の第2のSLM6B、第1の撮像素子26、第2の撮像素子27、コンピュータ装置34及び遮断機構7を図5に示すように配置することによって偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5が構成される。
【0127】
尚、コンピュータ装置34は、図1に示す第1のコンピュータ装置21及び第2のコンピュータ装置28に備えられる各機能を有している。このため、コンピュータ装置34の機能ブロック図は省略する。
【0128】
更に、偏光感受性を有する情報記録媒体2が可動機構35に固定される。可動機構35は、平行移動及び回転移動できるように構成されている。また、コリメータレンズ32によって信号光は球面波としてスポット状に情報記録媒体2に照射される。このため、情報記録媒体2上の情報記録エリアをシフト及び傾斜させながら、多くの2D情報を高密度かつ多重に情報記録媒体2に記録することができる。
【0129】
一方、情報記録系4では、直線偏光の信号光が偏光成分に分離されない。すなわち、レーザ光源8から照射された直線偏光のレーザ光は、偏光生成系3における最初のHWP30において偏光方位が45度に調整されて、PBS31に入射する。これにより、p偏光で構成される参照光はPBS31を透過し、信号光用のs偏光はPBS31において反射する。
【0130】
偏光生成系3のPBS31において反射した信号光用のs偏光は、情報記録系4のHWP30において偏光方位が45度に調整される。そして、信号光用の偏光は、2つのコリメータレンズ32によって幅が拡大された後、PBS31に入射する。更に、PBS31において反射した信号光用のs偏光は反射型の第1のSLM6Aに入射する。
【0131】
第1のSLM6Aでは、第1の画像情報の画素値に応じてs偏光の特定の画素の偏光方位が90度回転する。この結果、第1のSLM6Aから反射したp偏光は、第1の画像情報をコード化した信号光となってPBS31を透過する。PBS31を透過したp偏光の信号光は、2つのコリメータレンズ32によって幅が調整された後、ミラー33に反射してHWP30に入射する。そして、HWP30において偏光方位が所望の角度に調整された信号光は、ミラー33に反射して透過型の第2のSLM6Bに入射する。
【0132】
第2のSLM6Bでは、第2の画像情報の画素値に応じて信号光を構成する偏光の特定の画素の偏光方位が90度回転する。この結果、第1の画像情報及び第2の画像情報を互いに直交する2つの偏光成分としてコード化した信号光が、第2のSLM6Bから出力されることとなる。第1のSLM6Aと第2のSLM6Bとの間に設けられたHWP30において実質的に偏光方位が回転しなければ、第1の画像情報及び第2の画像情報をコード化した2つの偏光成分は、p偏光とs偏光になる。
【0133】
尚、第2のSLM6Bには、第1の画像情報に応じた特定の画素に対応する直線偏光が入射する。従って、第2の画像情報に対応して偏光方位の回転対象となる画素は、第1の画像情報に応じた特定の画素のうちの更に特定の画素となる。
【0134】
第2のSLM6Bから出力された信号光は、2つのコリメータレンズ32によって幅が調整された後、ミラー33に反射して情報記録媒体2への照射用のコリメータレンズ32に入射する。そして、2つの互いに直交する偏光成分に第1の画像情報及び第2の画像情報を個別に記録した信号光が、照射用のコリメータレンズ32によって絞られてスポット状に情報記録媒体2に照射される。一方、偏光生成系3のPBS31を透過したp偏光の参照光は、2つのミラー33に反射して、情報記録媒体2上における信号光の照射位置に平行ビームとして照射される。
【0135】
この結果、情報記録媒体2には、信号光と参照光との干渉により、偏光ホログラムとして第1の画像情報及び第2の画像情報のコード化された情報が記録される。
【0136】
情報の再生時には、図1に示す光情報記録再生装置1の場合と同様に、遮断機構7によって信号光用の偏光が遮断される。このため、偏光生成系3のPBS31を透過したp偏光の参照光のみが、情報記録媒体2上における情報の記録エリアに平行ビームとして照射される。
【0137】
そうすると、情報記録媒体2からは球面波として信号光に対応する再生光が生じ、情報再生系5のコリメータレンズ32によって平行ビームに変換される。平行ビームとなった再生光は、ミラー33に反射して2つのコリメータレンズ32によって幅が調整された後、PBS31に入射する。
【0138】
そして、PBS31を透過した再生光のp偏光成分は第1の撮像素子26によって撮像される。一方、PBS31において反射した再生光のs偏光成分は第2の撮像素子27によって撮像される。第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27によって撮像されたp偏光に対応する第1の画像情報及びs偏光に対応する第2の画像情報は、コンピュータ装置34に出力される。
【0139】
そして、図1に示す光情報記録再生装置1の場合と同様な流れで、コンピュータ装置34においてコード化された第1及び第2の画像情報から情報が取得される。取得された情報は、必要に応じてコンピュータ装置34の表示装置に表示される。
【0140】
つまり、図5に示された光情報記録再生装置1Bは、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bを信号光用の偏光の光路L上に直列に配置したものである。従って、光情報記録再生装置1Bでは、厳密には2つの2D情報が信号光の2つの偏光成分に同時に記録されず、順次記録されることとなる。但し、信号光は光速で進行するため、実用上は、同時に2つの2D情報を信号光に記録できるとみなすことができる。
【0141】
従って、このような構成を有する光情報記録再生装置1Bによれば、図4に示す光情報記録再生装置1Aと同等な効果を得ることができる。加えて、信号光を構成する各画素に、第1の画像情報及び第2の画像情報のいずれかのみをコード化した情報を記録する場合には、図1又は図5に示すように第1のSLM6Aと第2のSLM6Bを並列に配置して同時に信号光の2つの偏光成分に情報を記録する場合に比べて、信号光に記録することが可能な画素分布の数を増加させることができる。また、情報の記録時において信号光の偏光成分同士を重ね合わせないため、偏光成分間における位置ずれによる誤差を低減することができる。
【0142】
尚、上述の例では、HWP30における偏光方位の回転角度を45度とし、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける偏光方位の回転角度を90度とした場合について説明したが、偏光方位の各回転角度を他の所望の角度にしてもよい。
【0143】
また、図1に示すように、信号光を平行ビームとして情報記録媒体2に照射する場合においても、反射型又は透過型の第1のSLM6A及び第2のSLM6Bを信号光の光路L上に直列配置することができる。
(他の変形例)
【0144】
上述した第1の実施形態では、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける画素ごとの偏光方位の回転角度を一定としたが、偏光方位の回転角度を多値としてもよい。すなわち、上述の例では、第1及び第2の画像情報の画素値が2値であり、画素値に対応して2つの偏光成分の偏光方位も2値となるように第1のSLM6A及び第2のSLM6Bが制御される。
【0145】
これに対して、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの制御信号となる第1及び第2の画像情報を多値の画素値を有する画像データとしてもよい。そして、第1及び第2の画像情報の画素値に応じた画素ごとに異なる回転角度で、信号光を構成する2つの異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を回転させることができる。
【0146】
この場合、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bから出力される2つの偏光成分は、それぞれ画素ごとに偏光方位が異なる偏光成分となる。従って、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bから出力される2つの偏光成分を、PBS31を透過又はPBS31において反射させることによってp偏光成分及びs偏光成分を抽出すれば、画素ごとに偏光方位に応じた振幅を有するp偏光及びs偏光を得ることができる。
【0147】
すなわち、第1の画像情報の画素値に対応する振幅の画素分布を有するp偏光と、第2の画像情報の画素値に対応する振幅の画素分布を有するs偏光を、信号光として生成することができる。換言すれば、情報記録媒体2への記録対象となる第1及び第2の画像情報の多値の画素値を偏光成分の画素ごとの振幅に変換して信号光に記録することができる。
【0148】
この場合、図1、図4及び図5に示す光情報記録再生装置1、1A、1Bのように、情報記録媒体2に記録すべき情報を2値の画像情報に一旦コード化しなくても、信号光を構成する2つの偏光成分に記録することが可能である。従って、特に情報記録媒体2に記録すべき情報が静止画データや動画データ等のデジタル画像データである場合には、情報を中間的な2値の画像情報にコード化せずに、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bを介して信号光を構成する2つの偏光成分に記録することが可能となる。
【0149】
また、情報記録媒体2に記録された情報を再生する際には、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27によって直接、静止画データや動画データ等のデジタル画像データを撮像することもできる。
【0150】
逆に、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bに、偏光方位の回転角度を回転させる機能を設けなくても、光学素子の配置によって図1、図4及び図5にそれぞれ示す光情報記録再生装置1、1A、1Bと同様な機能を備えた光情報記録再生装置を構成することができる。
【0151】
すなわち、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bが反射型のSLMであれば、特定の画素に入射した偏光のみを反射させるON/OFFの切換型のSLMとし、かつSLMに入射する偏光及びSLMの特定の画素から反射する偏光の光路上に偏光方位を変える光学素子を配置すれば、信号光を構成する偏光成分の偏光方位を画素ごとに変えることができる。具体例として、ON/OFFの切換型の反射型SLMの前に1/4波長板又はHWPを配置すれば、偏光がSLMへの入射時及び反射時において2回1/4波長板又はHWPを経由することになる。このため、入射させる偏光に対して偏光方位が90度など所定の角度だけ回転した特定の画素からの偏光を得ることができる。
【0152】
尚、ON/OFF切換型のSLMとしては、半導体上に独立して動く極小のミラーを多数敷き詰めたものなどが知られている。
【0153】
一方、図5に示す第2のSLM6Bのように透過型のSLMであれば、特定の画素に入射した偏光のみを透過させるON/OFFの切換型のSLMとし、かつSLMに入射する偏光の光路上及びSLMの特定の画素から反射する偏光の光路上にそれぞれ偏光方位を変える光学素子を配置すれば、信号光を構成する偏光成分の偏光方位を画素ごとに変えることができる。この場合の具体例としては、ON/OFFの切換型の透過型SLMの前後にそれぞれ1/4波長板又はHWPを配置した例が挙げられる。
【0154】
従って、少なくとも複数のSLMを含む光学素子群によって、信号光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を個別に画素ごとに変えることができるということになる。
【0155】
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図である。
【0156】
図6に示された光情報記録再生装置1Cでは、信号光を構成する2つの偏光成分の偏光状態と同じ偏光状態を有する2つの参照光を情報記録媒体2Aに照射できるようにした点が図1に示す光情報記録再生装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す光情報記録再生装置1と実質的に異ならないため同一の構成については図1、図4又は図5において用いた符号を付して説明を省略する。
【0157】
すなわち光情報記録再生装置1Cでは、レーザ光源8、NDフィルタ9、複数のHWP30、対物レンズ12、複数のSF40、複数のPBS31、複数のコリメータレンズ32、複数のミラー33、反射型の第1のSLM6A、反射型の第2のSLM6B、第1の撮像素子26、第2の撮像素子27、第1のコンピュータ装置21、第2のコンピュータ装置28及び遮断機構7を図5に示すように配置することによって偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5が構成される。
【0158】
特に、光情報記録再生装置1Cの偏光生成系3には、2つのPBS31が備えられる。そして、前段のPBS31では、偏光方位が45度などに調整された直線偏光の平行ビームが信号光用のs偏光と参照光用のp偏光とに分離される。前段のPBS31を透過した参照光用のp偏光はHWP30において偏光方位が45度などの直線偏光に調整されて後段のPBS31に入射する。
【0159】
このため、後段のPBS31からは、p偏光の参照光が透過する一方、s偏光の参照光が反射する。すなわち、偏光方位が斜め方向の直線偏光が、PBS31においてp偏光の参照光とs偏光の参照光とに分離される。そして、PBS31から出力されたp偏光及びs偏光はそれぞれミラー33に反射して、平行ビームの参照光として情報記録系4から出力された信号光と重ね合わされて情報記録媒体2Aに照射される。
【0160】
この結果、情報記録媒体2Aには、信号光の直交する2つの偏光成分に個別に付加された第1の画像情報に対応する画素分布及び第2の画像情報に対応する画素分布が同時にホログラムとして記録される。すなわち、信号光を構成するp偏光成分とp偏光の参照光とによる光強度の干渉パターンとともに信号光を構成するs偏光成分とs偏光の参照光とによる光強度の干渉パターンが同時に情報記録媒体2A上に3D屈折率分布として記録される。
【0161】
つまり、図6に示された光情報記録再生装置1Cは、信号光を構成する2つの偏光成分の偏光状態と同じ偏光状態を有する2つの偏光成分に参照光を分離することによって、信号光と参照光とをs偏光同士及びp偏光同士のように同一の偏光状態を有する偏光同士で干渉させて情報記録媒体2Aに情報を記録できるようにしたものである。
【0162】
このため、図6に示された光情報記録再生装置1Cによれば、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合はもちろん、偏光感受性のない情報記録媒体2Aを用いる場合であっても図1に示す光情報記録再生装置1と同様な効果を得ることができる。
【0163】
(第1の変形例)
図7は第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の第1の変形例を示す構成図である。
【0164】
図7に示された光情報記録再生装置1Dでは、信号光を構成する2つの偏光成分の偏光状態と同じ偏光状態を有する2つの参照光を情報記録媒体2Aに照射できるようにした点が図4に示す光情報記録再生装置1Aと相違する。他の構成および作用については図4に示す光情報記録再生装置1Aと実質的に異ならないため同一の構成については図4において用いた符号を付して説明を省略する。
【0165】
すなわち光情報記録再生装置1Dの偏光生成系3では、PBS31において直線偏光から分離される参照光用のp偏光の光路L上にHWP30及び透過型の偏光回折格子(PG: polarization grating)50が順に配置される。このため、参照光用のp偏光は、HWP30において45度などの偏光方位を有する直線偏光に変換される。
【0166】
PG50は、入射する偏光を、互いに異なる回折方向に進行し、かつ互いに異なる偏光方位を有する複数の偏光に分離するための光学素子である。PG50は、例えば、所定の偏光方位で入射する直線偏光を、s偏光及びp偏光に分離するように調整される。このため、HWP30において偏光方位が調整された偏光は、PG50においてs偏光及びp偏光に分離される。
【0167】
PG50において分離されたs偏光及びp偏光は互いに異なる方向に進行してミラー33に反射した後、2つのコリメータレンズ32によって幅が調整される。そして、2つのコリメータレンズ32をそれぞれ透過したs偏光及びp偏光は、ミラー33に反射してそれぞれ平行ビームの参照光として情報記録系4から出力された信号光と重ね合わされて情報記録媒体2Aに照射される。
【0168】
この結果、情報記録媒体2Aには、信号光を構成するp偏光成分とp偏光の参照光とによる光強度の干渉パターンとともに信号光を構成するs偏光成分とs偏光の参照光とによる光強度の干渉パターンが同時に情報記録媒体2A上に3D屈折率分布として記録される。
【0169】
つまり、図7に示された光情報記録再生装置1Dは、図4に示す光情報記録再生装置1Aにおいて参照光をs偏光とp偏光に分離して照射できるようにしたものである。このため、図7に示された光情報記録再生装置1Dによれば、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合はもちろん、偏光感受性のない情報記録媒体2Aを用いる場合であっても図4に示す光情報記録再生装置1Aと同様な効果を得ることができる。
【0170】
(第2の変形例)
図8は第2の実施形態に係る光情報記録再生装置の第2の変形例を示す構成図である。
【0171】
図8に示された光情報記録再生装置1Eでは、信号光を構成する2つの偏光成分の偏光状態と同じ偏光状態を有する2つの参照光を情報記録媒体2Aに照射できるようにした点が図5に示す光情報記録再生装置1Bと相違する。他の構成および作用については図5に示す光情報記録再生装置1Bと実質的に異ならないため同一の構成については図5において用いた符号を付して説明を省略する。
【0172】
すなわち光情報記録再生装置1Eの偏光生成系3では、PBS31において直線偏光から分離される参照光用のp偏光の光路L上にHWP30及び透過型のPG50が順に配置される。このため、HWP30及びPG50によって参照光用のp偏光から参照光用のs偏光及びp偏光が生成される。そして、s偏光及びp偏光をそれぞれ平行ビームの参照光として情報記録系4から出力された信号光と重ね合わされて情報記録媒体2Aに照射することができる。
【0173】
つまり、図8に示された光情報記録再生装置1Eは、図5に示す光情報記録再生装置1Bにおいて参照光をs偏光とp偏光に分離して照射できるようにしたものである。このため、図8に示された光情報記録再生装置1Eによれば、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合はもちろん、偏光感受性のない情報記録媒体2Aを用いる場合であっても図5に示す光情報記録再生装置1Bと同様な効果を得ることができる。
(他の変形例)
【0174】
上述した第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける画素ごとの偏光方位の回転角度を多値とすることができる。すなわち、情報記録媒体2Aへの記録対象となる第1及び第2の画像情報の多値の画素値を偏光成分の画素ごとの振幅に変換して信号光に記録することができる。
【0175】
或いは、第1のSLM6A及び第2のSLM6BをON/OFF切換型のSLMとし、偏光方位を変える光学素子の適切な配置によって、画素ごとに偏光の偏光方位を変えるようにすることもできる。
【0176】
(第3の実施形態)
図9は本発明の第3の実施形態に係る光情報記録再生装置の構成図である。
【0177】
図9に示された光情報記録再生装置1Fでは、信号光と参照光とを互いに異なる光路Lに分離せずに光軸が平行となる互いに異なる領域に生成するようにした点及びコンピュータ装置34の詳細機能が図7に示す光情報記録再生装置1Dと相違する。他の構成および作用については図7に示す光情報記録再生装置1Dと実質的に異ならないため同一の構成については図5において用いた符号を付して説明を省略する。
【0178】
すなわち光情報記録再生装置1Fでは、レーザ光源8、NDフィルタ9、複数のHWP30、複数のPBS31、複数のコリメータレンズ32、複数のミラー33、反射型の第1のSLM6A、反射型の第2のSLM6B、第1の撮像素子26、第2の撮像素子27、コンピュータ装置34及び遮断機構7を図9に示すように配置することによって偏光生成系3、情報記録系4及び情報再生系5が構成される。
【0179】
このような光学素子群の配置を有する光情報記録再生装置1Fでは、情報の記録時に、偏光生成系3において信号光用および参照光用の共通の直線偏光が生成される。具体的には、レーザ光源8から出力されたレーザ光は、NDフィルタ9を経由して2つのHWP30によって例えば45度の偏光方位を有する直線偏光に変換される。そして、直線偏光は、2つのコリメータレンズ32によって第1のSLM6Aのサイズに合わせて幅が拡大される。2つのコリメータレンズ32を経由した直線偏光はミラー33に反射して、信号光用および参照光用の共通の直線偏光としてPBS31に入射する。
【0180】
この結果、直線偏光のs偏光成分は、2つのPBS31に反射して第1のSLM6Aに入射する。また、直線偏光のp偏光成分は、2つのPBS31を透過して第2のSLM6Bに入射する。
【0181】
一方、コンピュータ装置34では、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bから、それぞれ信号光及び参照光を光軸が平行となるような互いに異なる領域から反射させるための第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの制御信号が生成される。
【0182】
図10は図9に示す第1及び第2のSLM6A,6Bにおいてそれぞれ生成される信号光及び参照光の2D領域の一例を示す図である。
【0183】
図10に示すように、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bに入射する各偏光に対してそれぞれ参照光用のエリアと信号光用のエリアを同軸上の異なる2D画素領域として定めることができる。図10は、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの各2Dエリアをそれぞれ中心部側の画素エリアと外周部側の画素エリアの2つのエリアに分割し、中心部側の画素エリアを信号光用のエリアとする一方、外周部側の画素エリアを参照光用のエリアとした例を示している。
【0184】
信号光の画素エリアでは、第1及び第2の実施形態と同様にコンピュータ装置34により第1のSLM6A及び第2のSLM6Bが制御される。すなわち、記録対象となる第1及び第2の2値の2D画像情報の画素値に応じて画素ごとに偏光方位が90度など一定の角度だけ回転するように第1のSLM6A及び第2のSLM6Bが制御される。
【0185】
従って、第1のSLM6Aにおける信号光の画素エリアからは第1の画像情報の画素値に応じた画素分布を有するs偏光成分及びp偏光成分が反射する。具体的には、第1の画像情報の画素値が1である画素ではs偏光の偏光方位が90度回転し、信号光としてp偏光が反射する。逆に、第1の画像情報の画素値が0である画素ではs偏光の偏光方位が回転せずにs偏光が反射する。
【0186】
同様に、第2のSLM6Bにおける信号光の画素エリアからは第2の画像情報の画素値に応じた画素分布を有するs偏光成分及びp偏光成分が反射する。具体的には、第2の画像情報の画素値が1である画素ではp偏光の偏光方位が90度回転し、信号光としてs偏光が反射する。逆に、第2の画像情報の画素値が0である画素ではp偏光の偏光方位が回転せずにp偏光が反射する。
【0187】
一方、第1のSLM6Aにおける参照光の画素エリアの少なくとも一部からは信号光と同じ偏光状態であるp偏光が参照光として反射する。従って、参照光の画素エリアの全ての画素又は予め決定した画素に入射したs偏光の偏光方位が90度回転するように第1のSLM6Aが制御される。
【0188】
同様に、第2のSLM6Bにおける参照光の画素エリアの少なくとも一部からは信号光と同じ偏光状態であるs偏光が参照光として反射する。従って、参照光の画素エリアの全ての画素又は予め決定した画素に入射したp偏光の偏光方位が全て90度回転するように第2のSLM6Bが制御される。
【0189】
この結果、第1のSLM6Aにおいて反射したp偏光の信号光及び参照光は、単一の光束として2つのPBS31を透過する。一方、第2のSLM6Bにおいて反射したs偏光の信号光及び参照光は、単一の光束として2つのPBS31において反射する。従って、第1のSLM6Aにおいて反射したp偏光の信号光及び参照光と第2のSLM6Bにおいて反射したs偏光の信号光及び参照光とが重ね合わさって単一の光束として2つのコリメータレンズ32を経由する。
【0190】
信号光及び参照光は、2つのコリメータレンズ32においてビーム径が調整された後、ミラー33に反射して、信号光及び参照光を情報記録媒体2、2A上における焦点位置に絞るためのコリメータレンズ32に入射する。これにより、信号光及び参照光が互いに干渉した状態で情報記録媒体2、2A上の記録エリアに照射され、信号光のs偏光成分及びp偏光成分としてコード化された第1及び第2の画像情報がスポット状の記録エリアに記録される。
【0191】
一方、情報の再生時には、信号光が遮断され、参照光のみが情報記録媒体2、2A上の記録エリアに照射される。信号光の遮断は、信号光の領域に対応する偏光を遮断機構7によって遮ることによって行うことができる。或いは、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける信号光の画素エリアから信号光が反射しないように第1のSLM6A及び第2のSLM6Bを制御することによって、信号光の遮断を実行することもできる。
【0192】
情報記録媒体2、2Aに参照光のみが照射されと、情報記録媒体2、2Aから再生光が球面波として生じる。発生した再生光は、コリメータレンズ32により平行ビームに変換されてミラー33に反射する。更に、再生光は、2つのコリメータレンズ32においてビーム径が拡大された後、ミラー33に反射してPBS31に入射する。
【0193】
この結果、再生光のs偏光成分は、2つのPBS31において反射し、第1の撮像素子26により撮像される。一方、再生光のp偏光成分は、2つのPBS31を透過し、第2の撮像素子27により撮像される。そして、第1の撮像素子26及び第2の撮像素子27による撮像結果は、第1の画像情報及び第2の画像情報としてコンピュータ装置34に出力される。更に、コンピュータ装置34において第1及び第2の画像情報に基づいて、コード化されていない情報を得ることができる。
【0194】
つまり、図9に示された光情報記録再生装置1Fは、図7に示す光情報記録再生装置1Dにおいて参照光と信号光とを同軸上に1つの光束として生成し、生成した参照光及び信号光を絞って情報記録媒体2、2Aに照射するようにしたものである。
【0195】
従って、図9に示された光情報記録再生装置1Fによれば、図7に示す光情報記録再生装置1Dと同様な効果に加え、信号光と参照光との間における位置ずれによる影響を低減させることができる。また、光学素子群の配置を簡易にすることができる。
【0196】
また、信号光を構成する2つの偏光成分と同じ偏光状態を有する参照光を情報記録媒体2、2Aに照射することができる。このため、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合はもちろん、偏光感受性のない情報記録媒体2Aを用いる場合であっても情報を記録し、記録した情報を再生することができる。尚、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合には、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの一方において参照光の生成を省略することができる。
【0197】
(変形例)
図11は第3の実施形態に係る光情報記録再生装置の変形例を示す構成図である。
【0198】
図11に示された光情報記録再生装置1Gでは、信号光と参照光とを互いに異なる光路Lに分離せずに光軸が平行となる互いに異なる領域に生成するようにした点及びコンピュータ装置34の詳細機能が図5に示す光情報記録再生装置1Bと相違する。換言すれば、図11に示された光情報記録再生装置1Gでは、信号光を分離せずに2つの偏光成分にそれぞれ2D情報が記録されるように、反射型の第1のSLM6A及び透過型の第2のSLM6Bを信号光用の偏光の光路Lに沿って直列に配置した点が図9に示す光情報記録再生装置1Fと相違する。他の構成および作用については図7に示す光情報記録再生装置1D又は図9に示す光情報記録再生装置1Fと実質的に異ならないため同一の構成については図7又は図9において用いた符号を付して説明を省略する。
【0199】
図11に示された光情報記録再生装置1Gでは、偏光生成系3において信号光用および参照光用の共通の直線偏光が生成される。そして、例えば、2つのHWP30において偏光方位を調整することによって生成されたs偏光が、信号光用および参照光用の共通の直線偏光として情報記録系4のPBS31に入射する。このため、s偏光は、PBS31に反射して第1のSLM6Aに入射する。
【0200】
図12は図11に示す第1及び第2のSLM6A,6Bにより生成される信号光及び参照光の2D領域の一例を示す図である。
【0201】
図12に示すように、図10に示す場合と同様に、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bに入射する各偏光に対して参照光用のエリアと信号光用のエリアを同軸上の異なる2D画素領域として定めることができる。
【0202】
第1のSLM6Aの信号光エリアに入射したs偏光は、第1の画像情報の画素値に応じた画素がp偏光となった信号光となって反射する。また、第1のSLM6Aの参照光エリアに入射したs偏光の少なくとも一部は、信号光と偏光状態が同じp偏光の参照光となって反射する。このようにして第1のSLM6Aから反射したp偏光の信号光及び参照光はPBS31を透過し、コリメータレンズ32等の光学素子を経由して第2のSLM6Bに入射する。
【0203】
第2のSLM6Bの信号光エリアに入射したp偏光は、第2の画像情報の画素値に応じた画素がs偏光となった信号光として第2のSLM6Bを透過する。また、第2のSLM6Bの参照光エリアに入射したp偏光は、一部の画素においてs偏光となって第2のSLM6Bを透過する。
【0204】
従って、図12に示すように、第2のSLM6Bの信号光エリアから出力される信号光は、第1のSLM6Aにより偏光方位が90度だけ1回転したp偏光成分と、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの双方により偏光方位が90度だけ2回転したs偏光成分とを含んでいる。また、第2のSLM6Bの参照光エリアからは、s偏光の参照光及びp偏光の参照光の双方が出力される。
【0205】
そして、第2のSLM6Bから出力されたs偏光成分及びp偏光成分をそれぞれ有する信号光及び参照光は、1つの光束となって複数の光学素子を経由した後、絞られて情報記録媒体2、2Aに照射される。これにより、情報が情報記録媒体2、2Aに記録される。
【0206】
一方、情報の再生時には、図9に示された光情報記録再生装置1Fの場合と同様に、信号光の領域に対応する偏光を遮断機構7によって遮るか第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの制御によって参照光のみを情報記録媒体2、2Aに照射することができる。このため、図9に示された光情報記録再生装置1Fの場合と同様な流れで情報を再生することができる。
【0207】
このため、図11に示す光情報記録再生装置1Gによれば、図5に示す光情報記録再生装置1B及び図9に示す光情報記録再生装置1Fにより得られる双方の効果を得ることができる。また、図9に示す光情報記録再生装置1Fの場合と同様に、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合はもちろん、偏光感受性のない情報記録媒体2Aを用いる場合であっても情報を記録し、記録した情報を再生することができる。
【0208】
尚、偏光感受性を有する情報記録媒体2を用いる場合には、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bの一方における参照光エリアの偏光方位の空間変調を省略することができる。
【0209】
上述した変形例の他、第3の実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様に、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける画素ごとの偏光方位の回転角度を多値とすることができる。すなわち、情報記録媒体2、2Aへの記録対象となる第1及び第2の画像情報の多値の画素値を偏光成分の画素ごとの振幅に変換して信号光に記録することができる。
【0210】
(他の変形例)
上述した第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1のSLM6A及び第2のSLM6Bにおける画素ごとの偏光方位の回転角度を多値とすることができる。或いは、第1のSLM6A及び第2のSLM6BをON/OFF切換型のSLMとし、偏光方位を変える光学素子の適切な配置によって、画素ごとに偏光の偏光方位を変えるようにすることもできる。
【0211】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0212】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G 光情報記録再生装置
2、2A 情報記録媒体
3 偏光生成系
4 情報記録系
5 情報再生系
6A 第1の空間光変調器(SLM)
6B 第2の空間光変調器(SLM)
7 遮断機構
8 レーザ光源
9 減光(ND)フィルタ
10 第1のミラー
11 第1の1/2波長板(HWP)
12 対物レンズ
13 第1の空間フィルタ(SF)
14 第1のコリメータレンズ
15 第2のミラー
16 第1の偏光ビームスプリッタ(PBS)
17 第3のミラー
18 第4のミラー
19 第2の1/2波長板(HWP)
20 第2の偏光ビームスプリッタ(PBS)
21 第1のコンピュータ装置
21A 入力装置
21B 表示装置
21C 演算装置
21D 情報取得部
21E 2Dコード化部
22 第2のコリメータレンズ
23 第2の空間フィルタ(SF)
24 第3のコリメータレンズ
25 第3の偏光ビームスプリッタ(PBS)
26 第1の撮像素子
27 第2の撮像素子
28 第2のコンピュータ装置
28A 入力装置
28B 表示装置
28C 演算装置
28D フィルタ部
28E 情報再生部
29 回転テーブル
30 1/2波長板(HWP)
31 偏光ビームスプリッタ(PBS)
32 コリメータレンズ
33 ミラー
34 コンピュータ装置
35 可動機構
40 空間フィルタ(SF)
50 偏光回折格子(PG)
L 光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光用の偏光及び信号光用の偏光を生成し、前記信号光用の偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、少なくとも複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えることによって前記偏光成分にそれぞれ情報を付加する空間変調手段と、
前記情報が前記偏光成分に付加されることによって生成された前記信号光及び前記参照光を重ね合わせて記録媒体に照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録する情報記録手段と、
を備える光情報記録装置。
【請求項2】
前記空間変調手段は、前記信号光用の偏光の光路上に直列に配置された複数の空間光変調器を用いることによって、前記偏光成分にそれぞれ情報を順次付加するように構成される請求項1記載の光情報記録装置。
【請求項3】
前記空間変調手段は、前記信号光用の偏光を前記異なる偏光方位を有する偏光成分に分離し、分離した前記異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、前記複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えるように構成される請求項1記載の光情報記録装置。
【請求項4】
前記空間変調手段は、前記複数の空間光変調器を用いて前記情報に応じた画素ごとに異なる回転角度で前記異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を回転させるように構成される請求項1又は2記載の光情報記録装置。
【請求項5】
前記空間変調手段は、前記情報を2値の画像情報にコード化して前記偏光成分に付加するように構成される請求項1又は2記載の光情報記録装置。
【請求項6】
前記情報記録手段は、偏光感受性を有する記録媒体に偏光ホログラムとして前記情報を記録するように構成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光情報記録装置。
【請求項7】
前記情報記録手段は、前記信号光を構成する前記偏光成分と同じ偏光状態を有する偏光を前記参照光として偏光感受性のない記録媒体に照射することによって、ホログラムとして前記情報を記録するように構成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光情報記録装置。
【請求項8】
前記情報記録手段は、光軸が平行でかつ互いに異なる領域に生成された信号光及び参照光を前記記録媒体に絞って照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録するように構成される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光情報記録装置。
【請求項9】
偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分にそれぞれ情報を付加することによって生成された信号光及び偏光として生成された参照光を重ね合わせて照射することによって前記情報が記録された記録媒体に、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方を照射する照射手段と、
前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方の照射によって前記記録媒体から生じた再生光の異なる偏光方位を有する偏光成分を、複数の撮像素子を用いて受光することによって前記情報を取得する情報取得手段と、
を備える光情報再生装置。
【請求項10】
参照光用の偏光及び信号光用の偏光を生成し、前記信号光用の偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分の偏光方位を、少なくとも複数の空間光変調器を用いて画素ごとに個別に変えることによって前記偏光成分にそれぞれ情報を付加するステップと、
前記情報が前記偏光成分に付加されることによって生成された前記信号光及び前記参照光を重ね合わせて記録媒体に照射することによって前記情報を前記記録媒体に記録するステップと、
を有する光情報記録方法。
【請求項11】
偏光の互いに異なる偏光方位を有する偏光成分にそれぞれ情報を付加することによって生成された信号光及び偏光として生成された参照光を重ね合わせて照射することによって前記情報が記録された記録媒体に、前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方を照射するステップと、
前記参照光及び前記信号光の少なくとも一方の照射によって前記記録媒体から生じた再生光の異なる偏光方位を有する偏光成分を、複数の撮像素子を用いて受光することによって前記情報を取得するステップと、
を有する光情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−37751(P2013−37751A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175029(P2011−175029)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究題目「テラバイト時代に向けたポリマーによる三次元ベクトル波メモリ技術の実用化研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】